捻くれお嬢様と星の丘

マスター:ゆくなが

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2018/01/13 12:00
完成日
2018/01/18 20:34

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 あの星空を、今でも覚えている。
 お父様と喧嘩して、夜中に屋敷を飛び出して。
 走って、走って、走り続けて、肺が痛くなっても走り続けてたどり着いた、丘からみた星空。
 あの丘は、どこかしら。
 遮二無二走ったから、場所はよく覚えていない。
 そこで眠ってしまって、気がついたら屋敷のベッドに寝かされていた。
 お父様に聞けばわかるのだろう。でも、ぜひ自分の力でもう一度。
 あの丘にたどり着きたいものだわ……

「アメルお嬢様、危険なことはもうおやめくださいまし」
 屋敷の門で家令が言った。
「こんな夜更けでなくても、お散歩はできるじゃありませんか」
 口うるさいことである。私はすかさず反論する。
「放って置いてください。私だってもう16歳ですよ? 自分の身ぐらい自分で守れます」
「しかし、お嬢様はハンターではありませんし、お体も強くはありません。もし今後夜中の散歩を続けられるというのなら、護衛のものをどうぞつけてくださいまし」
 ハンターではない。
 そう、私は覚醒者ではない。
 でも、それがなんだというのだろう?
 体は弱かったけれど、頑張って鍛錬して、強くなったつもりだ。だから、何かあっても自分でなんとかできるはずだ。
 にしても、こう毎回家令にぐちぐち言われていてはせっかくの深夜の逍遥もまったくつまらない。
「わかりました。護衛をつければいいのですね?」
 私は落ち着け払って、物分かりのいい娘のようにいう。
「左様でございます。お父様が選りすぐった抜群のハンターたちを……」
「じゃ、私が直接見繕います。それで構いませんね」
「は?」
 家令はきょとんとした。
「ですから、父の直属の部下は嫌だと言ったのです。私は自由に散歩したいのです。なので、私が直接ハンターオフィスに依頼を出します。そこでハンターを雇います。それで構いませんね」
「しかし、それでは……」
「なにが問題だというのです。これであなたとお父様の思惑通りじゃなくって? いいでしょう。今日は家にいてあげます。さっそく明日依頼を出しますからね。それまではおとなしくしてあげます。それではおやすみなさい。いい夢をご覧になって」


 かくして、あなたたちハンターは令嬢アメル・ボルコンスの夜の逍遥のための護衛を引き受けることになった。
「来ましたね。早速行きますよ」
 アメルは屋敷前できっちり防寒具をまとって、ランタンそして地図を持って待っていた。
 栗色の豊かな髪に、つり上がった目元。いかにも気の強そうな少女である。
「きっと、あなたたちは夜を歩くことなんて慣れてらっしゃるのでしょう。私、探している場所があるの。ですので、あなたたちは黙ってついてきてくだされば結構です」
 高圧的な態度でアメルは言う。
 もし何かがあったらハンターたちの指示に従うようにと注意するが、彼女は鼻で笑った。
「ふん。覚醒者だからっていい気にならないで。私だって武芸の心得くらい――ひっ!」
 アメルは情けない声を立てて、ハンターたちの後ろに隠れた。
 がさがさと音がして、木陰から鳥が飛んでいったのだ。
 気まずい時間が流れる。
 アメルは姿勢を正して、ひとつ咳払いをした。
「えーと、このように私は大変聞き分けのいい娘です。あなたたちがハンターだか知りませんが、何かあったら言うことを聞いてあげなくもないので、よく覚えておくように」

 アメルの父親は、有名なハンターだ。
 しかし、そのひとり娘であるアメルは覚醒者の素質を持たなかった上に体も弱かった。
 父親が有名であるがゆえに、小さい頃から彼女はハンターとしての素質を吟味され、また落胆されて来たのだ。
 それが、もともと高かったアメルのプライドを捻じ曲げてしまった。
 人に会えば高圧的な態度を取り、ハンターと聞けばまず辛辣に値踏みする。そんなとげとげしい殻を纏うようになってしまった。
 大きくなって体も丈夫になり、多少は武芸も身についたが、それは一般人と比較すると多少強いという程度。
 夜の散歩も、そんな劣等感を払拭したくてわざわざ怖いのに敢行している節があるのだ。
 そんな捻くれた彼女であるが、根は優しいと信じたい。

 アメルは持参した地図を元に道を探しているらしかった。
「きっと、この道です。いえ、この道で間違いありません」
 アメルは前方の道を指差す。
 その道は、木々が高く茂った、星光の届かない、鬱蒼とした不気味な道だった。
「さ、行きますよ?」
 そう言いつつ、アメルはどう見てもおっかなびっくり歩いていくのだった。
街道は上り坂だった。
「け、結構な雰囲気じゃありません? 歪虚でも出て来そうで、大変スリリングです。護衛のしがいがあるで――ひゃっ!?」
 きりりと空気が引き締まる。
 歪虚の気配だ。
 あなたたちは警戒を強める。
「な、なんですの? なにかあったんですの?」
 アメルは、異状を察したが具体的な危機まではわからない。ただ、あなたたちが武器を構えるのをおろおろして見ている。
 そして、暗がりから、矢が飛んで来た。
 アメルに向かって飛んで来た矢を、ひとりのハンターが弾き返す。
「え、矢? じゃ、本当に歪虚が?」
 アメルはパニックのあまり、手近なハンターにしがみついた。
 左右の街道からスケルトンがわらわらとあなたたちを囲むように現れた。
 その数11体。
 手には、安物らしい剣や弓を持っている。大方、この辺りを根城にしていた山賊か何かの成れの果てであろう。
「数が、多いんじゃありません? 大丈夫ですよね? 大丈夫ですよね?」
 アメルはしきりに確認してくる。
「お願いです。言うことを聞きますから、私を守ってください……え? 動いにくいから離せですって? い、嫌です、だって、怖いじゃありませんか! いえ、怖くなんかないんですけど、怖いじゃありませんか!」
 アメルは完全に支離滅裂なことを言い、ひとりのハンターにしがみついていた。
 ついに、スケルトンたちは歯をガチガチならして襲いかかって来た。
「助けて、お父様――――!」
 アメルはただ叫ぶばかりだった。

リプレイ本文

●時は少し遡る
「来ましたね。早速行きますよ」
 アメル・ボルコンスが高圧的に雇ったハンターたちに言った。
「わふーっ。アメルさん、よろしくですー!」
 しかし、アルマ・A・エインズワース(ka4901)はそれを気にしない様子でこたえる。
「あなたたちは黙ってついてきてくだされば結構です」
 その高慢な口ぶりに、キャリコ・ビューイ(ka5044)は内心ムッとした。
「雇い主とはいえ、おまえは非戦闘員だ。なにかあったら、俺たちの指示に従ってもらう」
「ふん。覚醒者だからっていい気にならないで」
 アメルはふいっと顔をそらして言った。
「しかし、その覚醒者に依頼を出したのもおまえ自身のはずだがな」
 キャリコはアメルにちくりと皮肉を言ってやった。
「おまえの父親は有名なハンターだと聞くが……」
「ええ、そうですとも。私のお父様は、あなたたちよりもずっとすごいハンターなんです。……けれど、私は」
 アメルは誇らしげに父のことを語った。しかし、言葉の後半部分では声のトーンが落ちてしまう。
 キャリコは、まだアメルの抱えるものについて確信はできなかったが、若干態度を和らげつつ、さらなる問いかけをしようとした時、空気が張り詰めた。
「わぅ? わふーっ」
 そして、暗がりから、矢がアメルに向かって飛んで来た。
 アメルの側にいた時音 ざくろ(ka1250)が矢を払いおとす。
 その方向を、アルマは素早く確認した。

●そして現在
「みなさん、配置につくです!」
 敵の襲来を見て、アルマがすかさず仲間たちに声をかける。
 アメルは恐怖のあまり、ざくろに抱きついて、がたがた震えている。
「さっきは、離してっていちゃって、ごめんね。びっくりしてしまったものだから……」
 ざくろは優しくアメルに言う。
「大丈夫、アメルはざくろが守るから…だから彼奴らをやっつける迄、そのまましっかり離さないでいて」
 にっこり、ざくろは笑った。
 アメルはこくりと、その言葉に頷いた。
「お嬢さんは任せたぜ、時音」
 トリプルJ(ka6653)が陽気な声で言う。灯火の水晶球に照らされて、敵の姿が浮かび上がる。
 退路側には4体の剣を持つスケルトンと、大剣を持つスケルトンがいた。
「そっちはどうだ?」
「剣を持っているものが4体だ」
 進路側にいる鳳凰院ひりょ(ka3744)がこたえる。
「こんなときに敵に遭遇するなんて、うーん、ツイてない!」
 アルフィ(ka3254)が口を尖らせて言う。しかし、すぐに表情をくるりと変えて続けた。
「でも、この先にはなにかわくわくすることがありそうな予感! そのためにも、とにかく、ここを切りぬけなくちゃ!」
 スタッフをくるくる回して、アルフィが武器を構えた。
「弓のスケルトンが2体みえるです!」
 アルマは月眼点液βを使い、暗闇を見通して言った。
「わふ! キャリコさん、弓持ってる子、半分こですーっ」
「了解した」
 キャリコが、身の丈以上もある魔導銃で、射撃体勢をとる。
「まずは、数的不利を覆す! 時音、アメルの事は頼む。……さぁ、俺が相手だ。掛かって来い!」
 ひりょが駆け出し、ソウルトーチを発動した。
「展開超機導結界……一歩たりとも近づけさせはしない!」
 ざくろはディヴァインウィルを展開し、自身とアメルの周囲に不可侵の結界を張った。
 アメルは結界の中で、ざくろの胸に顔を埋めていた。
 しかし、そこへキャリコが声をかける。
「怖ければ、目を瞑っていると良い。だが、勇気が有るのなら……目を開き、自分の糧にしろ」
「わ、わかっていますわ。このくらい平気ですもの! 私が、誰の娘だと思っているのです!」
「……そうか。なら安心だな」
 キャリコはそのまま、照準を的に合わせる。
「……さて、新装備の試し撃ちだ……良い的が沢山居るな」
 スコープを覗き込み、キャリコは敵の姿を捉えた。
 ひび割れた骸骨に、わずかばりの頭髪が残った、みすぼらしい姿である。森の中で、彼は再び矢をつがえていた。
 その時、清浄なる歌声が聞こえた。
 アメルがそちらに視線を移すと、そこには先に行くにつれ金色になる髪をなびかせたアルフィの姿があった。
 レクイエムを聞いた弓のスケルトンは痙攣し、つがえようとしていた矢をとり落とした。
「いまだよ、キャリコお兄さん!」
 そして、「応報せよアルコル」の引き金が引かれた。
 耳を弄する銃声が辺りにこだまする。
「いまので、倒れたんですの……? でも、敵はまだたくさん……」
「わふー。アメルさん、大丈夫ですっ。怖いのは、お片付けしちゃうですっ。見ててほしいですー!」
 アルマは覚醒状態により、幻影の黒衣を纏い、牙は鋭く瞳の紅い吸血鬼じみた姿になっていた。右腕からは、蒼い炎が噴き出している。
「わふっ!」
 アルマの前に、青く輝く三角形が出現する。その頂点から流星が、敵に向かって飛来する。
 森の中で、流星が弾けた。そして、弓を持っていた、もう一体のスケルトンも粉々になり、塵となって夜の闇の中に消えて言った。
「まだまだ行くですよーっ」
 三角形の残った2つの頂点から、またも流星が飛び出した。軌跡を描く青い光は星の雫のようだ。流星は、退路側に居る剣をもつスケルトンの内の2体へと殺到した。
「さて、ここから先は行かせねえぜ?」
 トリプルJが武器を構えていう。
 残った3体の剣のスケルトンと、その奥に控える大剣のスケルトン――この者たちの間では比較的いい拵えをしているので、生前はリーダーであったのだろう――はがちがち歯を鳴らして威嚇する。
「いい音階だ。戦闘時にはうってつけのBGMだろうさ。……けれど、お嬢さんの夜の散策にはむいちゃいねえなぁ」
 トリプルJの影が伸びた。
「まずはその足、奪わせてもらうぜ」
 その影は大剣のスケルトンの影に絡みつき、彼の行動を縛った。
 スケルトンたちは剣を掲げて走り出した。
「まだまだ!」
 トリプルJは全身のマテリアルを練り上げる。そして、スケルトンの進路上に青龍翔咬波をぶっぱなした。
「てめぇの相手は、この俺様だって言ってるだろ?」
 トリプルJは不敵に笑った。


「ひりょお兄さん! いくよ!」
「頼んだ!」
 アルフィが、セイクリッドフラッシュで4体の敵を一気に攻撃する。
 夜の中で光による攻撃は目にも鮮やかだ。
 その光の中を1体の敵が抜けてきた。彼は、ひりょに向かって剣を一閃振り抜いた。
 ひりょはそれを、弾いたが、肩口が浅く斬りつけられた。しかし、そんな傷を物ともしないように、敵の振り抜いた剣を持つ右腕を下から上へ切り上げる。
「まだ特訓途中の技だが……。まずは1体!」
 さらに、ひりょは自らのマテリアルを刀に纏わせ、スケルトンの胴を両断し、消滅させた。
 しかし、次から次へとスケルトンはひりょに攻撃を仕掛ける。
 剣の一振りが、ひりょの太ももを切り裂いた。
「回復するね!」
 アルフィのヒールがひりょの傷を癒して行く。しかし、全快には程遠い。
 ソウルトーチで敵を惹きつける作戦は成功していた。そのぶん、ダメージはひりょに蓄積されていくのだ。
「この程度で負けていられない!」
 ひりょは、剣を思い切り振って、敵の攻撃を弾き返す。そしてすぐさま攻撃へと転じた。
「うん、骸骨なんかに負っけないぞー!」


「アメル、平気?」
 結界の中で、ざくろがアメルを気遣う。
「平気、ではありませんね……。けれど、キャリコさんの言うように、目をそらすわけには行きません。私はあなたたちの雇い主ですから」
 その時である。
 1体のスケルトンがトリプルJの放った青龍翔咬波を避けて、まろぶようにざくろたちの方へ躍り出た。
 アメルの顔には一瞬恐怖が浮かぶが、しかし、ざくろにひしと抱きつくことで、精神を落ち着けたようだった。
「大丈夫。それに、策はひとつじゃない」
ざくろは、仲間を信頼した様子で、静かに言った。
「わぅ!」
 アルマがそのスケルトンを見て目を輝かせ、一歩前に出た。
「遊んでくれるんです?」
 そう言いながら、紺碧の流星を展開する。
「でも……お散歩邪魔する嫌な子は、じゅっ、ですー」
 仮借のない流星の煌めきが、スケルトンを木っ端微塵にした。
 アルマの声は本当に楽しそうで、戦場にいることを忘れるくらい無邪気だった。


 セイクリッドフラッシュで、1体のスケルトンが塵になって消えて言った。
「残り5体。 状況は覆ったな?」
 ひりょはソウルエッジを展開する。
「さあ、ここを突破してアメルお姉さんの散歩の続きをするんだ!」
 アルフィが声高く宣言して、光の魔法を展開する。
 その攻撃によろめいた、スケルトンにひりょの斬撃が打ち倒し、横合いから迫っていたもう1体も返す刀で両断した。
 こうして、ついに、進路側のスケルトンは退治されたのだ。


「これで、残るはあの大剣のスケルトンだけだね」
 ざくろの言うように退路側も残りはリーダースケルトンのみとなっていた。
 ざくろは最初の宣言通り、アメルを突き放すこともなく、抱きつかれるままにしていた。それがアメルにどれほど安心感を与えたか想像に難くない。
 アメルはハンターたちの戦いぶりに感心していた。
「これが、戦場、なんですね」
 アメルは自分の言った言葉にゾッとしたらしく、ざくろにより強く抱きついた。
「……ざくろさん、怖く、ないんですの?」
「怖いよ」
 ざくろはあっさり言った。そして言葉を続ける。
「怖いって気持ちは自然だと思うよ……ざくろだってこの世界に来るまでは、十数年普通の地球人だったから、今でも時々怖いもん」
「え、そうなんですか?」
「そうだよ。でも、怖がってる女の子を放ってなんて置けないもん」
 そうして、ざくろは涼やかに笑った。
 その時、打撃音が響いた。
「どうだい、取り巻きを失った気持ちはよっ!」
 トリプルJの鎧徹しがスケルトンの体を打ち上げた音だった。
 さらに、キャリコのハウンドバレッドも飛来し、スケルトンの体を貫いて行く。
 スケルトンも、大地を踏みしめ、よろけるの防ぎ、その大剣を片手で軽々と持ち上げ、トリプルJに斬りかかる。
 トリプルJはそれを、パリィブローブで受け止めたが、切っ先が肩を貫いていた。
 しかし、リジェネレーションによってみるみる傷をふさぐ。
「ひとりでもなかなかやるじゃねえの」
 トリプルJはニヤリと笑った。拳に力を込める。
「だが、それもここで終わりだ。俺様たちにも、進むべき道があるんでな」
 トリプルJを受け止める大地に罅が入った。それほどまでに、彼が力を込めている証拠である。
「あばよ!」
 風が唸りを上げる。
 ねじ込むように放たれた鎧徹しは、敵の肋骨を破壊し、そして脊柱を粉々にして、ついには敵を葬り去った。
「……終わったか」
 退路側にかけつけたひりょが言った。
 その言葉に安堵したのか、アメルは地面にへたり込んだ。
「大丈夫!?」
 ざくろが聞くも、アメルは大丈夫だ、と答える。
「喉が渇いただろう、ちょっと飲め」
 トリプルJがジュースをアメルに差し出した。
 アメルはそれを受け取って、少しずつ飲んで行く。その度に、落ち着きを取り戻して行くようだった。
「慌てなくてもあんたの行きたい場所は逃げねぇよ。のんびり行こうぜ、お嬢さん?」
 アメルもようやく立ち上がる。
「皆様、全員無事ですよね?」
 アメルは周囲を確認した。トルプルJ、ざくろ、アルマ、キャリコ、ひりょ、そして……
「あれ? アルフィさんは……」
「うらめしや〜」
「ひょああ!?」
 アメルは飛び上がって驚いた。そして再び側にいたざくろに抱きついた。振り返ると、そこにはいたずらな笑みを湛えたアルフィがいた。
「えへへ、驚いた?」
「もうっ、そんなことしてないでさっさと行きますよ!?」
 アメルは顔を真っ赤にしていたが、どうやら戦闘前の元気を取り戻したらしかった。
「にしても、アメルお姉さんの行きたいところって、夜じゃないとダメなところなのかな?」


 森を抜けると、一気に視界が広がった。そこは小高い丘になっており、空には宝石を一面に撒いたような満天の星空が広がっていた。
「僕、お星様すきですっ。僕のお名前、お星様と一緒ですー」
 アルマがぴょんぴょんと大型犬のように跳ねて空を見上げていた。とんがった耳が、まるで犬の尻尾のように楽しそうに動いている。
「ここがアメルの目的地か……星が綺麗、最高の宝物だね」
 ざくろは言った。微笑みながらアメルの方を見ると、彼女は青い目から一筋の涙をこぼしていた。
 アメルはハンカチを取り出して涙を拭った。そして誰に聞かれるともなく、この場所の思い出を語った。
 父と喧嘩して家を飛び出したこと。そしてたどり着いた場所であること。その時も星空が美しかったこと。それを、また見たいと思っていたこと。
「わふ、アメルさんのお父さんはお強いです?」
 アルマはきいた。
「もちろんです」
「僕とどっちが強いですー?」
「あなたも強いけれど、お父様に決まっています! 私のお父様は世界一のハンターですもの」
 アメルは胸を張ってこたえる。そして、アメルは顔を伏せて、思い詰めたように言った。
「……けれど、私は……。でも、きっとこのままじゃいけないんだと思います」
「アメルは確かにハンターではない。だが、その気丈さ、その心は決してハンターに負けてないさ」
 と、ひりょ。
「そんな。私はそこまでたいそうな者ではありません」
「それでも、アメルの信念がこうしてまたここにたどり着くことを可能にしたんだ。それは確かなことだろう。俺たちが証人だ」
「私……怖くても、立ち向かえる人間になりたい。例えば、あなたのように」
 アメルはざくろの方を見つめた。
「アメルお姉さん、ざくろお兄さんにベタ惚れだねえ」
 アルフィがちゃちゃを入れた。
「? ざくろさんは女の人でしょう?」
 そこで、ざくろの顔が真っ赤になった。
「待って……ざくろ、男! 男!」
 その言葉をきいて、今度はアメルの顔も真っ赤になった。
 それをトルプルJは可笑しそうにくつくつ笑って見ていた。そして、取り出したマカロンを、アメルに勧めた。
「せっかくの夜のピクニックだ、納得して良い思い出にして帰ろうぜ?」
「私、ここまでしてもらっていいのかしら……」
 アメルはちょっと戸惑ったようだ。
「どうした。随分殊勝じゃないか」
 と、キャリコ。
「だって、私、あなたたちに辛く当たりましたわ」
「おまえにも事情があったんだ。気にしてないさ」
 キャリコは無表情ではあるが、どこか温度のある口調で言った。
「きらきら、きれいですーっ」
 ハンターたちはそれぞれのスタイルで星空を満喫する。
「みなさま、本当にありがとう。今日のことは生涯忘れませんわ」
 アメルは言った。その顔には優しい微笑みが浮かんでいた。

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重体一覧

参加者一覧

  • 神秘を掴む冒険家
    時音 ざくろ(ka1250
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • 星々をつなぐ光
    アルフィ(ka3254
    エルフ|12才|女性|聖導士
  • うら若き総帥の比翼
    ひりょ・ムーンリーフ(ka3744
    人間(蒼)|18才|男性|闘狩人
  • フリーデリーケの旦那様
    アルマ・A・エインズワース(ka4901
    エルフ|26才|男性|機導師
  • 自在の弾丸
    キャリコ・ビューイ(ka5044
    人間(紅)|18才|男性|猟撃士
  • Mr.Die-Hard
    トリプルJ(ka6653
    人間(蒼)|26才|男性|霊闘士

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依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/01/07 22:47:18
アイコン 護衛&骸骨退治! 相談卓
アルフィ(ka3254
エルフ|12才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2018/01/11 22:25:17