ゲスト
(ka0000)
迷宮のコボルド
マスター:CESSNA

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/01/19 22:00
- 完成日
- 2018/01/27 00:13
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
とある山間の村から1キロ程離れた場所に、大きな廃坑があった。
廃坑はかつて辺りで鉱業が盛んであった頃の名残であるが、ある時からここにコボルドが住み着くようになってしまった。
コボルド達はあっという間に数を増やし、次第に村にも被害が及ぶようになってきた。
困った村人達は共同で資金を募り、ハンターオフィスにコボルドの退治を依頼したのであった。
依頼は熟練のハンターの手により、すぐに解決された。
……かに見えたが。
それから1カ月後のことである。
その村の若者が、再びハンターオフィスに現れた。
「……つまり、その坑道にまたコボルドが住み着いてしまった、ということですか?」
オフィスの受付嬢が尋ねると、村の代表の若者は渋面を作って頷いた。
「ええ。そう、そうなんです。お世話になったばかりなのに、こんなことを言うのは気が引けるんですけど、どうも前に来てくださったハンターさんが、問題の坑道の出入り口を一つしか塞いでいかなかったみたいでしてね。他の所からまたコボルド達が中に入り込んじゃったみたいなんです」
若者は腕を組み、さりげなく愚痴を続けた。
「いや、私達にも問題はあったんですけどね。「出入口は3つある」って、ちゃんと伝えておかなかったって。……でも、こう言っちゃ何なんですが、以前いらっしゃったハンターさん達、「アタシ達、プロだから全部わかってる」っつって、ちっとも俺達の話に耳を貸してくれなかったんですよね。「たかがコボルドでしょ? 素人が余計な口挟むんじゃないわよ」みたいな雰囲気もすごく顔つきから滲み出ていたし……っていうか、ぶっちゃけそう愚痴っているのが聞こえたし。
だから、あえて深くは突っ込まずにプロにお任せしたんですけどもねー……」
受付嬢は苦笑し、それとなく依頼人をなだめた。
「それは残念なことでしたね。次はきっと、親切な方が担当してくださるでしょう。
ところで、ご依頼の詳細を確認させていただきたいのですが、よろしいですか?」
若者はサッと気分を切り替えると、話に移った。
「あ、はい。えっと……何からお話しましょう? とりあえず、依頼としてはコボルド共を退治して、今度こそは完全に坑道を封鎖してきてもらいたいってことなんですけども」
「コボルド達はどのくらいの数が住み着いているのか、わかりますか?」
「いやー……確かめる手段がないんで、正確な数はなんとも。でも、両手で収まる数でないのは確かです。アイツら、繁殖力がとんでもないんで、今もどんどん増えていると思います」
「わかりました。それでは、現場の坑道の広さについて伺っても?」
「はい。坑道はすーっごく広いんです。深さこそそんなに無いんですけども、とにかく水平に広がっていて。あちこちに横穴があって、迷宮のように入り組んでいます。一度入ったら二度と出られないって、俺達は子供の頃から耳にタコができる程聞かされてきました。
今は明かりもないし、あちこち崩れていて足場も良くない。危険なガスが溜まっている場所もあります」
「なるほど。それは難しいですね。……坑道の内部に詳しい方、もしくは地図などはあるのでしょうか?」
「俺の親父が昔そこで働いていたので、案内できるはずです。地図はありませんが、頼めば描いてくれるでしょう。
ただ……あの親父、おっそろしく下手な絵を描くので。役に立つかどうかは微妙です。……俺なら、なんとか読めないことも無いんですけど……」
「そうですか。他に何か、そちらから伝えておきたい事などはありますか?」
聞かれて若者は少し考える素振りを見せ、付け加えた。
「そしたら、個人的なお願いで申し訳ないんですが」
「はい」
「実は親父、この頃とみに足が悪くなってきていて。あんまり長い距離は歩けないんですよね。気持ちの方は元気なもんで、自分からは絶対言いやしないんですが。……とは言え、お袋や俺としては、もう若くないんだし、あんまり無茶はしないでほしいと思ってるんです。ハンターさん達には、本当に本当に申し訳ない話なんですが……」
「了解しました」
受付嬢は頷き、依頼をまとめた。
彼女は若者が村で募ってきたという依頼金を受け取り、言った。
「では、これにて受付は終了となります。次こそは良心的なハンターさん達が集まってくれることを、私も心よりお祈りしております」
廃坑はかつて辺りで鉱業が盛んであった頃の名残であるが、ある時からここにコボルドが住み着くようになってしまった。
コボルド達はあっという間に数を増やし、次第に村にも被害が及ぶようになってきた。
困った村人達は共同で資金を募り、ハンターオフィスにコボルドの退治を依頼したのであった。
依頼は熟練のハンターの手により、すぐに解決された。
……かに見えたが。
それから1カ月後のことである。
その村の若者が、再びハンターオフィスに現れた。
「……つまり、その坑道にまたコボルドが住み着いてしまった、ということですか?」
オフィスの受付嬢が尋ねると、村の代表の若者は渋面を作って頷いた。
「ええ。そう、そうなんです。お世話になったばかりなのに、こんなことを言うのは気が引けるんですけど、どうも前に来てくださったハンターさんが、問題の坑道の出入り口を一つしか塞いでいかなかったみたいでしてね。他の所からまたコボルド達が中に入り込んじゃったみたいなんです」
若者は腕を組み、さりげなく愚痴を続けた。
「いや、私達にも問題はあったんですけどね。「出入口は3つある」って、ちゃんと伝えておかなかったって。……でも、こう言っちゃ何なんですが、以前いらっしゃったハンターさん達、「アタシ達、プロだから全部わかってる」っつって、ちっとも俺達の話に耳を貸してくれなかったんですよね。「たかがコボルドでしょ? 素人が余計な口挟むんじゃないわよ」みたいな雰囲気もすごく顔つきから滲み出ていたし……っていうか、ぶっちゃけそう愚痴っているのが聞こえたし。
だから、あえて深くは突っ込まずにプロにお任せしたんですけどもねー……」
受付嬢は苦笑し、それとなく依頼人をなだめた。
「それは残念なことでしたね。次はきっと、親切な方が担当してくださるでしょう。
ところで、ご依頼の詳細を確認させていただきたいのですが、よろしいですか?」
若者はサッと気分を切り替えると、話に移った。
「あ、はい。えっと……何からお話しましょう? とりあえず、依頼としてはコボルド共を退治して、今度こそは完全に坑道を封鎖してきてもらいたいってことなんですけども」
「コボルド達はどのくらいの数が住み着いているのか、わかりますか?」
「いやー……確かめる手段がないんで、正確な数はなんとも。でも、両手で収まる数でないのは確かです。アイツら、繁殖力がとんでもないんで、今もどんどん増えていると思います」
「わかりました。それでは、現場の坑道の広さについて伺っても?」
「はい。坑道はすーっごく広いんです。深さこそそんなに無いんですけども、とにかく水平に広がっていて。あちこちに横穴があって、迷宮のように入り組んでいます。一度入ったら二度と出られないって、俺達は子供の頃から耳にタコができる程聞かされてきました。
今は明かりもないし、あちこち崩れていて足場も良くない。危険なガスが溜まっている場所もあります」
「なるほど。それは難しいですね。……坑道の内部に詳しい方、もしくは地図などはあるのでしょうか?」
「俺の親父が昔そこで働いていたので、案内できるはずです。地図はありませんが、頼めば描いてくれるでしょう。
ただ……あの親父、おっそろしく下手な絵を描くので。役に立つかどうかは微妙です。……俺なら、なんとか読めないことも無いんですけど……」
「そうですか。他に何か、そちらから伝えておきたい事などはありますか?」
聞かれて若者は少し考える素振りを見せ、付け加えた。
「そしたら、個人的なお願いで申し訳ないんですが」
「はい」
「実は親父、この頃とみに足が悪くなってきていて。あんまり長い距離は歩けないんですよね。気持ちの方は元気なもんで、自分からは絶対言いやしないんですが。……とは言え、お袋や俺としては、もう若くないんだし、あんまり無茶はしないでほしいと思ってるんです。ハンターさん達には、本当に本当に申し訳ない話なんですが……」
「了解しました」
受付嬢は頷き、依頼をまとめた。
彼女は若者が村で募ってきたという依頼金を受け取り、言った。
「では、これにて受付は終了となります。次こそは良心的なハンターさん達が集まってくれることを、私も心よりお祈りしております」
リプレイ本文
●出発
依頼解決のため、ハンター達はまず、依頼人とその父親の家へと向かった。人数分の地図の複製と、現場の注意点を確認するためである。
「皆様が安心して生活できるよう尽力いたします」
依頼人達に、極めて丁寧にトラウィス(ka7073)が挨拶をする。淡々としてはいるものの、彼の態度には不思議な誠実さがあった。
次いで、ひょっこりと顔を出した燐火(ka7111)が、やや不器用に、心のこもった調子で言い添えた。
「あの、2回目の依頼なので、不安かと思いますが、少しでも払拭できれば……と、思います」
依頼人達は集まった面々のやる気を見て、いたく感動した。以前とは大違いである。
アティニュス(ka4735)は巧みな話しぶりで、彼らの話を聞き出していった。
「崩れやすい場所や、仮にコボルドが潜むとしたらどんな場所があり得るか、わかれば教えてください」
ステラ・レッドキャップ(ka5434)はその隣で、ペンを片手に方眼紙に向かっていた。彼が地図の複製係だ。
(ハンターの信頼にも関わるし、ちょっとはやる気出してやるか)
ステラはおよそ人類の作とは思われぬ老人の荒ぶる地図を、依頼人の解説の下、どうにか人数分描き下した。
アティニュスとの応答から、ガスの溜まる危険地帯等の注意もしっかりと描き込んである。
その間、ユルゲンス・クリューガー(ka2335)は坑道封鎖用のツルハシやシャベルをまとめて借りに行っていた。力仕事も、彼には容易い仕事だ。
「彼奴らめは放っておけば際限なく増えると聞く。早々に駆除せねばな」
彼は気力十分。足取りも軽く用意を済ませた。
ネーナ・ドラッケン(ka4376)、蓬仙 霞(ka6140)、そしてファリス(ka2853)は、話の合間に依頼人に言葉を掛けていた。
「こんにちは! 僕はネーナというよ。よろしくね」
気さくな彼女に、若者はちょっと戸惑う。余程前回のハンターが不愛想だったのだろう。ネーナはそんな彼に構わず、問いかけた。
「ねぇ、君は一緒に来ないのかい? 今度こそ仕事の顛末を見届けたいとか、そういうことはない?」
「え、いや、俺は……でも……」
どもる若者に、ファリスがにっこりと優しく微笑んだ。
「無理はしなくていいと思うの。コボルドは悪しき存在。だから、きちんとファリス達が駆除してくるの」
「……」
なおも迷う若者の心を蓬仙が汲んだ。
「大丈夫。……そんなに悲しい顔をしなくても、ちゃんと僕らは戻ってくるよ」
若者はそれを聞いて素直に頷き、改めてハンター達の凛々しさを眩しく思った。
かくして、出発の準備が整った。
●探索
現場に到着した一行は、計画通り二手に分かれて行動を開始した。2つの入口から同時に侵入し、1つを侵入と同時に封鎖、コボルドを追い詰める作戦である。
ファリス、ネーナ、アティニュス、燐火のAグループが入り口を塞ぎ、ユンゲルス、ステラ、蓬仙、トラウィスのBグループが、もう片方の入り口から入った。
魔導スマホやトランシーバーは、坑道の広さと複雑さのためにグループ間の通信手段としてはあまり役に立ちそうになかったため、ハンター達は落ちあう場所を決め、各自の用意した明かりを持ち、地図を頼りに坑道を巡ることにした。
●Aグループの様子
Aグループでは、ガスや粉塵を警戒してマスクを持ってきたアティニュスが先頭に立ち、探索を行っていた。
殿には身軽なネーナがつき、常時後方を警戒している。彼女はまた、コボルドの足跡を探りつつ、相手の動向を見張っていた。
「正確な数は測り切れないね。けど、この辺りは特に行来が激しいようだ。気を付けた方がいいかもしれない」
ファリスはマッピング中の燐火に話しかけていた。
「調子はどう?」
「あっ、さ、さっき道が崩れていた所以外は、今のところ地図通りです。あ、ありがとう、ございます!」
応じてファリスが笑う。歳の近い2人が会話していると、どことなく姉妹のような和やかな雰囲気だった。
彼女達は地図を参考に進みつつも、並行してマッピングも行っていた。事前の情報収集とこの作業のおかげで、これまで大きなトラブルも無い。ネーナなどは時折、「資料にするんだ」と坑道内の写真を撮ったりもしていた。
だが、入り口から数キロ程行ったところで、ふいにアティニュスが立ち止まった。何か物音を聞きつけたという。
折悪しく段差の大きな場所で、先の見通しが悪かった。
ネーナが前へ進み出た。
「僕が偵察に行ってくるよ」
言うなり彼女は壁を伝い、難無く様子を窺ってきて状況を伝えた。
「アティニュスの言う通りだったよ。下の方が少し開けていて、そこに20匹程コボルドが溜まっていた。まだこちらには気付いていないみたいだね」
敵と聞き、燐火が緊張でふるりと身を震わせる。ファリスはそんな彼女の手を握り、
「私が行くの!」
と胸の前に杖を構えた。
ファリスと共に、アティニュスが前線に出ることになった。長い道程である。役割分担が必須だった。
「では、明かりの方をお願いしますね」
アティニュスに頼まれ、燐火が頷く。ネーナは先に壁を伝ってロープを張り、戦闘に出る二人が降りるのを手伝った。
戦闘役の2人が降り立った時、コボルド達は未だ侵入者に気付かず騒いでいた。
アティニュスはファリスと、ちょうど降りてきたばかりの燐火とネーナに一度視線を送り、それを合図に電光石火で飛び出した。
覚醒した彼女の肌は浅黒く、髪は白く染まっている。
彼女は手前にいたコボルド数匹の足を一閃にして斬りつけ、勢いよく転ばせた。傷の深さからすると、最早致命傷である。
突然の襲撃にパニックを起こしたコボルド達を、アティニュスはさらに数匹、斬り伏せた。
どうにか反撃に出てきたコボルド達の鋭い爪を何度か弾き返した後、彼女は足場の悪さを避け、あえて肩に傷を浴びながら反撃に入った。
「くらえ!」
袈裟斬りされたコボルドの悲鳴が坑道に響く。直後、アティニュスは素早く身を退いた。
怒りに駆られた残りのコボルド達が一斉に彼女へ群がっていく。
そこへファリスが、待ってましたとばかりにライトニングボルトを放った。輝く雷撃に、大勢のコボルドが一時に葬られる。
全身を柔らかな光で包み、天使のような6枚の白い羽を背負った彼女は、暗い坑道の中で一層神々しい。
彼女はまだ息のある敵をファイアアローで撃った。鮮やかな炎の矢の軌跡が一瞬、坑道内を広く照らす。
その瞬間、目敏くももう1匹物影に潜んでいることに気付いたアティニュスが叫んだ。
「ネーナ、後ろだ!」
ネーナは振り向きざま、躊躇わずダガーを振り抜いた。
彼女の刃はコボルドの凶悪な牙と擦れ違いに、相手の喉笛を切り裂いた。
コボルドが悲鳴をあげる間もなく、力無く地面へ倒れ込む。
ファリスは戦闘の終わりに、ホッと胸を撫で下ろした。
燐火は目をぱちくりとさせて明かりを掲げつつ、次こそはと気を引き締めた。
その後、彼女達は交代で遭遇したコボルド達と戦いつつ、合流地点まで進んでいった。
●Bグループの様子
こちらでは、ランタンを腰に下げたユルゲンスが先頭に立っていた。
「ほう、如何にも亜人共が好みそうな穴蔵よな」
ユルゲンスの落ち着いた声が狭い坑道に響く。高さ2メートルちょいしかない道の中で、彼は実に窮屈そうだった。
続くマッピング担当のステラは対照的に小柄であり、いとも簡単に進んでいく。すぐ後ろのトラウィスが持っている事前に用意した地図と、現在作成中の地図とを見比べつつ、彼らは用心深く進んでいた。
一番後ろの蓬仙は道に迷わぬよう、要所毎にナイフで番号を刻んでいっていた。
トラウィスの、
「出口への最短ルートにも目印を付けておきましょう。脱出時等に効率化できるかと思われます」
という提言を受け、その印も付けている。
歩きながら、ステラが話した。
「聞いた感じだと、廃坑になった理由とコボルドが集まっている理由とは関係無さそうだったな。キッチリ全滅させて入り口を塞ぎさえすれば、再発は無さそうだ」
彼の言葉に、蓬仙が頷いた。
「そうだね。けれど、一度失敗している依頼だ。慎重にいかないとね」
「もちろん。……っと、ちょっと静かに」
ステラが人差し指を口元に添える。彼の鋭敏な感覚が、いち早く敵の気配を察したのだ。
一同は辺りを警戒した。
集中すると、少し距離を置いて、後方からコボルドの一団が近付きつつあるのがわかった。厄介なことには、前方からも複数の足音が迫ってきていた。
細道ゆえ、全員で戦うことは難しい。蓬仙は照明役を担うため、トラウィスと位置を交代した。前方からの敵はユルゲンスが迎え撃つ態勢である。ステラは隊列の間に控え、援護を担った。
やがて示し合わせたかのように、両方向から同時にコボルドが襲い掛かってきた。
「ほう、出たか! 掛かってくるがいいわ!」
ユルゲンスの只ならぬ殺気に気圧され、コボルド達が足並みを乱す。彼はその隙を突いて果敢に踏み込み、激しい一撃をコボルド達に浴びせた。派手な血飛沫を立て、敵がバタバタと倒れる。後続のコボルド達はその壮絶な光景に思わず怯んだ。
ユルゲンスはすかさずその群れの中へ身を躍らせ、渾身の一撃を食らわせた。そのままの流れで傍らの一団も斬り付ける。
浅いと見るや、彼は即座に相手に詰め寄り追撃を加えた。
しかし、数が多い。その上坑道の幅は3メートルも無い。ユルゲンスが刃を振り回せぬタイミングを計り、コボルド達が一挙に押し掛かってきた。
「ぬぅっ!」
鋭い爪の乱撃を刃で受けるユルゲンス。こうも一時に大勢で押しかけられると突き放すのは難しい。
その時、ステラの声が響いた。
「気を付けろ! 投げるぜ!」
マテリアルの充実した彼のナイフが、ユルゲンスに迫るコボルドの眼球を見事に貫いた。
機を逃さず、ユルゲンスがコボルド達を蹴り飛ばす。彼は気力を充実させ、渾身の一撃を敵に見舞った。
後方のトラウィスは、複数の敵を相手に奮戦、健闘していた。覚醒状態である。
獰猛に掛かってくる爪や牙をガントレットで滑らかにいなし、武器の重量を活かして積極的に反撃に打って出た。彼の巨大な機械拳は、コボルドの頭を叩き潰すのに十分な威力を誇る。
だが、潰しても砕いても、次から次へと湧いてくる。
「……くっ!」
そしてユルゲンス同様、坑道の狭さが仇となった。彼は武器の取り回せぬ隙を突かれ、攻撃を食らった。ライトを片手に刀を操る蓬仙やステラの手助けもあって事無きを得たが、それでも傷は浅くなかった。
トラウィスは粗方敵が片付き、残った相手との距離が開いたのを見て取ると、すぐに自身の前に光の三角形を展開した。
狙いは一瞬のうちに定まる。
放たれた3本のビームは、散っていた3匹の頭部を一辺に貫いた。
怯え惑う残党。だがトラウィスに慢心は無い。彼はヒーリングを使用し、いくらか傷を癒して戦いを続けた。
こうして、押し寄せたコボルド達は殲滅された。
一行は隊列を立て直した後、戦闘を繰り返しながら、合流地点へと急いだ。
●待ち伏せ
合流地点付近では互いの距離が縮まり、用意していた通信手段が役に立つようになった。ハンター達はお互いの無事を喜び、進捗を語り合った。
「こちらは概ね順調でしたよ。想定より戦闘が多くなってしまいましたが、取りこぼしは無いでしょう。そちらはどうでしたか?」
アティニュスの問いに、蓬仙が答えた。
「うん、こっちも大きな問題は無かったよ。他の出入り口も、見た所無さそうだった」
「では、念のために最後に一通り歩いて終了にしましょうか」
一行は最後の探索へ出掛けた。だが、道中には最早コボルドの気配は一切無く、掃討作戦は完遂されたかに思われた。
「後は出口を塞ぐだけ、か」
ステラがフゥと一息吐く。疲れているようだ。
広大な坑道を隈なく探索し、相当数の戦闘をこなした後である。彼だけでなく、誰しもに疲労の色が滲んでいた。
ハンター達は予めつけておいた目印を辿り、帰路に着いた。
「ああ、とってもお腹が空いたの」
「ぼ、僕も……」
一番前を歩くファリスと燐火の会話に、ユルゲンスが大いに頷いた。
「うむ。村に着く頃には、夕食には丁度良い時間よ」
そんなこんなで一行が出口に差し掛かった折、ふと最後尾のネーナが首を傾げた。
「待って、おかしい」
皆が立ち止まる。ネーナはじっくりと辺りを見ながら、呟いた。
「妙だな。新しい足跡がある。向こうへ続いている……?」
と、急に出口が陰り、待ち伏せていた十数匹のコボルドが凄まじい勢いで突撃してきた。ハンター達が外に用意していたツルハシやハンマーを手にしている。
「きゃああ!」
最も出口の近くにいたファリスが叫ぶ。コボルド達のツルハシが今まさに彼女に降りかからんとしていた。
隣の燐火が咄嗟に攻撃に移ろうとしたが、間に合いそうもない。
咄嗟にユルゲンスが身を擲って2人とコボルドの間に割って入った。コボルド達の容赦無い攻撃の嵐が彼を襲った。
「ぐっ! 何のこれしき!」
ユルゲンスが力を振り絞り、体当たりでコボルトを押し返す。
燐火はその合間に覚醒を終えていた。
覚醒した彼女の髪はグラデーションがかった朱色。両頬には3本、傷のような赤い模様が入り、犬歯が伸び、目の色も金に変わっている。
彼女は凛として言った。
「ボクには、た、戦う力があるんです! 臆病なのは理解していますが、し、芯まで臆病者にはなりたくありませんっ!」
彼女は練り上げたマテリアルを身に纏い、敢然とコボルドの群れに挑んでいった。
素早い拳がコボルドを打つ。横から攻撃を食らうも、怯まず打ち続ける。
仲間からのフォローもあったが、長い探索を経た今、十分な余力を残しているのは彼女のみであった。
燐火は時に敵を投げ飛ばし、追い詰めては打ち込み、戦い抜いた。
最後の1匹の顎に拳を叩き込んだ時、彼女はようやく覚醒を解いて、一息を吐いた。
「ありがとうなの、燐火さん!」
ファリスが燐火に駆け寄り、晴れやかな笑顔を見せる。
燐火は彼女に、照れた笑みを返した。
それから一同は入り口を念入りに塞ぎ、坑道を後にした。
●祝宴
村に戻った一行は、盛大な祝宴でもって迎えられた。探索から封鎖の様子を詳らかに報告してくれた、トラウィスを始めとするハンター達を、村人達は心から信用したのだった。
「ありがとうございます! 本当に、本当に!」
はしゃいでいる依頼人の若者に、蓬仙は
「ね、言った通りでしょ?」
と優しく告げた。彼のハンターへの信頼度が激増したのは、言うまでもない。
依頼人の父親は、冒険を高らかに歌うネーナの竪琴にしみじみと聞き入っていた。彼女の音色はとりわけ村人達の心に深く沁みた。
こうして、村に平和が戻ったのだった。
依頼解決のため、ハンター達はまず、依頼人とその父親の家へと向かった。人数分の地図の複製と、現場の注意点を確認するためである。
「皆様が安心して生活できるよう尽力いたします」
依頼人達に、極めて丁寧にトラウィス(ka7073)が挨拶をする。淡々としてはいるものの、彼の態度には不思議な誠実さがあった。
次いで、ひょっこりと顔を出した燐火(ka7111)が、やや不器用に、心のこもった調子で言い添えた。
「あの、2回目の依頼なので、不安かと思いますが、少しでも払拭できれば……と、思います」
依頼人達は集まった面々のやる気を見て、いたく感動した。以前とは大違いである。
アティニュス(ka4735)は巧みな話しぶりで、彼らの話を聞き出していった。
「崩れやすい場所や、仮にコボルドが潜むとしたらどんな場所があり得るか、わかれば教えてください」
ステラ・レッドキャップ(ka5434)はその隣で、ペンを片手に方眼紙に向かっていた。彼が地図の複製係だ。
(ハンターの信頼にも関わるし、ちょっとはやる気出してやるか)
ステラはおよそ人類の作とは思われぬ老人の荒ぶる地図を、依頼人の解説の下、どうにか人数分描き下した。
アティニュスとの応答から、ガスの溜まる危険地帯等の注意もしっかりと描き込んである。
その間、ユルゲンス・クリューガー(ka2335)は坑道封鎖用のツルハシやシャベルをまとめて借りに行っていた。力仕事も、彼には容易い仕事だ。
「彼奴らめは放っておけば際限なく増えると聞く。早々に駆除せねばな」
彼は気力十分。足取りも軽く用意を済ませた。
ネーナ・ドラッケン(ka4376)、蓬仙 霞(ka6140)、そしてファリス(ka2853)は、話の合間に依頼人に言葉を掛けていた。
「こんにちは! 僕はネーナというよ。よろしくね」
気さくな彼女に、若者はちょっと戸惑う。余程前回のハンターが不愛想だったのだろう。ネーナはそんな彼に構わず、問いかけた。
「ねぇ、君は一緒に来ないのかい? 今度こそ仕事の顛末を見届けたいとか、そういうことはない?」
「え、いや、俺は……でも……」
どもる若者に、ファリスがにっこりと優しく微笑んだ。
「無理はしなくていいと思うの。コボルドは悪しき存在。だから、きちんとファリス達が駆除してくるの」
「……」
なおも迷う若者の心を蓬仙が汲んだ。
「大丈夫。……そんなに悲しい顔をしなくても、ちゃんと僕らは戻ってくるよ」
若者はそれを聞いて素直に頷き、改めてハンター達の凛々しさを眩しく思った。
かくして、出発の準備が整った。
●探索
現場に到着した一行は、計画通り二手に分かれて行動を開始した。2つの入口から同時に侵入し、1つを侵入と同時に封鎖、コボルドを追い詰める作戦である。
ファリス、ネーナ、アティニュス、燐火のAグループが入り口を塞ぎ、ユンゲルス、ステラ、蓬仙、トラウィスのBグループが、もう片方の入り口から入った。
魔導スマホやトランシーバーは、坑道の広さと複雑さのためにグループ間の通信手段としてはあまり役に立ちそうになかったため、ハンター達は落ちあう場所を決め、各自の用意した明かりを持ち、地図を頼りに坑道を巡ることにした。
●Aグループの様子
Aグループでは、ガスや粉塵を警戒してマスクを持ってきたアティニュスが先頭に立ち、探索を行っていた。
殿には身軽なネーナがつき、常時後方を警戒している。彼女はまた、コボルドの足跡を探りつつ、相手の動向を見張っていた。
「正確な数は測り切れないね。けど、この辺りは特に行来が激しいようだ。気を付けた方がいいかもしれない」
ファリスはマッピング中の燐火に話しかけていた。
「調子はどう?」
「あっ、さ、さっき道が崩れていた所以外は、今のところ地図通りです。あ、ありがとう、ございます!」
応じてファリスが笑う。歳の近い2人が会話していると、どことなく姉妹のような和やかな雰囲気だった。
彼女達は地図を参考に進みつつも、並行してマッピングも行っていた。事前の情報収集とこの作業のおかげで、これまで大きなトラブルも無い。ネーナなどは時折、「資料にするんだ」と坑道内の写真を撮ったりもしていた。
だが、入り口から数キロ程行ったところで、ふいにアティニュスが立ち止まった。何か物音を聞きつけたという。
折悪しく段差の大きな場所で、先の見通しが悪かった。
ネーナが前へ進み出た。
「僕が偵察に行ってくるよ」
言うなり彼女は壁を伝い、難無く様子を窺ってきて状況を伝えた。
「アティニュスの言う通りだったよ。下の方が少し開けていて、そこに20匹程コボルドが溜まっていた。まだこちらには気付いていないみたいだね」
敵と聞き、燐火が緊張でふるりと身を震わせる。ファリスはそんな彼女の手を握り、
「私が行くの!」
と胸の前に杖を構えた。
ファリスと共に、アティニュスが前線に出ることになった。長い道程である。役割分担が必須だった。
「では、明かりの方をお願いしますね」
アティニュスに頼まれ、燐火が頷く。ネーナは先に壁を伝ってロープを張り、戦闘に出る二人が降りるのを手伝った。
戦闘役の2人が降り立った時、コボルド達は未だ侵入者に気付かず騒いでいた。
アティニュスはファリスと、ちょうど降りてきたばかりの燐火とネーナに一度視線を送り、それを合図に電光石火で飛び出した。
覚醒した彼女の肌は浅黒く、髪は白く染まっている。
彼女は手前にいたコボルド数匹の足を一閃にして斬りつけ、勢いよく転ばせた。傷の深さからすると、最早致命傷である。
突然の襲撃にパニックを起こしたコボルド達を、アティニュスはさらに数匹、斬り伏せた。
どうにか反撃に出てきたコボルド達の鋭い爪を何度か弾き返した後、彼女は足場の悪さを避け、あえて肩に傷を浴びながら反撃に入った。
「くらえ!」
袈裟斬りされたコボルドの悲鳴が坑道に響く。直後、アティニュスは素早く身を退いた。
怒りに駆られた残りのコボルド達が一斉に彼女へ群がっていく。
そこへファリスが、待ってましたとばかりにライトニングボルトを放った。輝く雷撃に、大勢のコボルドが一時に葬られる。
全身を柔らかな光で包み、天使のような6枚の白い羽を背負った彼女は、暗い坑道の中で一層神々しい。
彼女はまだ息のある敵をファイアアローで撃った。鮮やかな炎の矢の軌跡が一瞬、坑道内を広く照らす。
その瞬間、目敏くももう1匹物影に潜んでいることに気付いたアティニュスが叫んだ。
「ネーナ、後ろだ!」
ネーナは振り向きざま、躊躇わずダガーを振り抜いた。
彼女の刃はコボルドの凶悪な牙と擦れ違いに、相手の喉笛を切り裂いた。
コボルドが悲鳴をあげる間もなく、力無く地面へ倒れ込む。
ファリスは戦闘の終わりに、ホッと胸を撫で下ろした。
燐火は目をぱちくりとさせて明かりを掲げつつ、次こそはと気を引き締めた。
その後、彼女達は交代で遭遇したコボルド達と戦いつつ、合流地点まで進んでいった。
●Bグループの様子
こちらでは、ランタンを腰に下げたユルゲンスが先頭に立っていた。
「ほう、如何にも亜人共が好みそうな穴蔵よな」
ユルゲンスの落ち着いた声が狭い坑道に響く。高さ2メートルちょいしかない道の中で、彼は実に窮屈そうだった。
続くマッピング担当のステラは対照的に小柄であり、いとも簡単に進んでいく。すぐ後ろのトラウィスが持っている事前に用意した地図と、現在作成中の地図とを見比べつつ、彼らは用心深く進んでいた。
一番後ろの蓬仙は道に迷わぬよう、要所毎にナイフで番号を刻んでいっていた。
トラウィスの、
「出口への最短ルートにも目印を付けておきましょう。脱出時等に効率化できるかと思われます」
という提言を受け、その印も付けている。
歩きながら、ステラが話した。
「聞いた感じだと、廃坑になった理由とコボルドが集まっている理由とは関係無さそうだったな。キッチリ全滅させて入り口を塞ぎさえすれば、再発は無さそうだ」
彼の言葉に、蓬仙が頷いた。
「そうだね。けれど、一度失敗している依頼だ。慎重にいかないとね」
「もちろん。……っと、ちょっと静かに」
ステラが人差し指を口元に添える。彼の鋭敏な感覚が、いち早く敵の気配を察したのだ。
一同は辺りを警戒した。
集中すると、少し距離を置いて、後方からコボルドの一団が近付きつつあるのがわかった。厄介なことには、前方からも複数の足音が迫ってきていた。
細道ゆえ、全員で戦うことは難しい。蓬仙は照明役を担うため、トラウィスと位置を交代した。前方からの敵はユルゲンスが迎え撃つ態勢である。ステラは隊列の間に控え、援護を担った。
やがて示し合わせたかのように、両方向から同時にコボルドが襲い掛かってきた。
「ほう、出たか! 掛かってくるがいいわ!」
ユルゲンスの只ならぬ殺気に気圧され、コボルド達が足並みを乱す。彼はその隙を突いて果敢に踏み込み、激しい一撃をコボルド達に浴びせた。派手な血飛沫を立て、敵がバタバタと倒れる。後続のコボルド達はその壮絶な光景に思わず怯んだ。
ユルゲンスはすかさずその群れの中へ身を躍らせ、渾身の一撃を食らわせた。そのままの流れで傍らの一団も斬り付ける。
浅いと見るや、彼は即座に相手に詰め寄り追撃を加えた。
しかし、数が多い。その上坑道の幅は3メートルも無い。ユルゲンスが刃を振り回せぬタイミングを計り、コボルド達が一挙に押し掛かってきた。
「ぬぅっ!」
鋭い爪の乱撃を刃で受けるユルゲンス。こうも一時に大勢で押しかけられると突き放すのは難しい。
その時、ステラの声が響いた。
「気を付けろ! 投げるぜ!」
マテリアルの充実した彼のナイフが、ユルゲンスに迫るコボルドの眼球を見事に貫いた。
機を逃さず、ユルゲンスがコボルド達を蹴り飛ばす。彼は気力を充実させ、渾身の一撃を敵に見舞った。
後方のトラウィスは、複数の敵を相手に奮戦、健闘していた。覚醒状態である。
獰猛に掛かってくる爪や牙をガントレットで滑らかにいなし、武器の重量を活かして積極的に反撃に打って出た。彼の巨大な機械拳は、コボルドの頭を叩き潰すのに十分な威力を誇る。
だが、潰しても砕いても、次から次へと湧いてくる。
「……くっ!」
そしてユルゲンス同様、坑道の狭さが仇となった。彼は武器の取り回せぬ隙を突かれ、攻撃を食らった。ライトを片手に刀を操る蓬仙やステラの手助けもあって事無きを得たが、それでも傷は浅くなかった。
トラウィスは粗方敵が片付き、残った相手との距離が開いたのを見て取ると、すぐに自身の前に光の三角形を展開した。
狙いは一瞬のうちに定まる。
放たれた3本のビームは、散っていた3匹の頭部を一辺に貫いた。
怯え惑う残党。だがトラウィスに慢心は無い。彼はヒーリングを使用し、いくらか傷を癒して戦いを続けた。
こうして、押し寄せたコボルド達は殲滅された。
一行は隊列を立て直した後、戦闘を繰り返しながら、合流地点へと急いだ。
●待ち伏せ
合流地点付近では互いの距離が縮まり、用意していた通信手段が役に立つようになった。ハンター達はお互いの無事を喜び、進捗を語り合った。
「こちらは概ね順調でしたよ。想定より戦闘が多くなってしまいましたが、取りこぼしは無いでしょう。そちらはどうでしたか?」
アティニュスの問いに、蓬仙が答えた。
「うん、こっちも大きな問題は無かったよ。他の出入り口も、見た所無さそうだった」
「では、念のために最後に一通り歩いて終了にしましょうか」
一行は最後の探索へ出掛けた。だが、道中には最早コボルドの気配は一切無く、掃討作戦は完遂されたかに思われた。
「後は出口を塞ぐだけ、か」
ステラがフゥと一息吐く。疲れているようだ。
広大な坑道を隈なく探索し、相当数の戦闘をこなした後である。彼だけでなく、誰しもに疲労の色が滲んでいた。
ハンター達は予めつけておいた目印を辿り、帰路に着いた。
「ああ、とってもお腹が空いたの」
「ぼ、僕も……」
一番前を歩くファリスと燐火の会話に、ユルゲンスが大いに頷いた。
「うむ。村に着く頃には、夕食には丁度良い時間よ」
そんなこんなで一行が出口に差し掛かった折、ふと最後尾のネーナが首を傾げた。
「待って、おかしい」
皆が立ち止まる。ネーナはじっくりと辺りを見ながら、呟いた。
「妙だな。新しい足跡がある。向こうへ続いている……?」
と、急に出口が陰り、待ち伏せていた十数匹のコボルドが凄まじい勢いで突撃してきた。ハンター達が外に用意していたツルハシやハンマーを手にしている。
「きゃああ!」
最も出口の近くにいたファリスが叫ぶ。コボルド達のツルハシが今まさに彼女に降りかからんとしていた。
隣の燐火が咄嗟に攻撃に移ろうとしたが、間に合いそうもない。
咄嗟にユルゲンスが身を擲って2人とコボルドの間に割って入った。コボルド達の容赦無い攻撃の嵐が彼を襲った。
「ぐっ! 何のこれしき!」
ユルゲンスが力を振り絞り、体当たりでコボルトを押し返す。
燐火はその合間に覚醒を終えていた。
覚醒した彼女の髪はグラデーションがかった朱色。両頬には3本、傷のような赤い模様が入り、犬歯が伸び、目の色も金に変わっている。
彼女は凛として言った。
「ボクには、た、戦う力があるんです! 臆病なのは理解していますが、し、芯まで臆病者にはなりたくありませんっ!」
彼女は練り上げたマテリアルを身に纏い、敢然とコボルドの群れに挑んでいった。
素早い拳がコボルドを打つ。横から攻撃を食らうも、怯まず打ち続ける。
仲間からのフォローもあったが、長い探索を経た今、十分な余力を残しているのは彼女のみであった。
燐火は時に敵を投げ飛ばし、追い詰めては打ち込み、戦い抜いた。
最後の1匹の顎に拳を叩き込んだ時、彼女はようやく覚醒を解いて、一息を吐いた。
「ありがとうなの、燐火さん!」
ファリスが燐火に駆け寄り、晴れやかな笑顔を見せる。
燐火は彼女に、照れた笑みを返した。
それから一同は入り口を念入りに塞ぎ、坑道を後にした。
●祝宴
村に戻った一行は、盛大な祝宴でもって迎えられた。探索から封鎖の様子を詳らかに報告してくれた、トラウィスを始めとするハンター達を、村人達は心から信用したのだった。
「ありがとうございます! 本当に、本当に!」
はしゃいでいる依頼人の若者に、蓬仙は
「ね、言った通りでしょ?」
と優しく告げた。彼のハンターへの信頼度が激増したのは、言うまでもない。
依頼人の父親は、冒険を高らかに歌うネーナの竪琴にしみじみと聞き入っていた。彼女の音色はとりわけ村人達の心に深く沁みた。
こうして、村に平和が戻ったのだった。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/01/17 20:07:15 |
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相談用です。 アティニュス(ka4735) 人間(リアルブルー)|16才|女性|舞刀士(ソードダンサー) |
最終発言 2018/01/19 19:05:53 |