ゲスト
(ka0000)
押し寄せるトカゲ雑魔の波
マスター:なちゅい

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/01/16 19:00
- 完成日
- 2018/01/21 20:36
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
グラズヘイム王国。
クリムゾンウェストの半島尖端に位置する国家。王都イルダーナを中心とした千年王国なる名を冠する大国だ。
王国は北西にある北萩の島「イスルダ島」を歪虚から奪還すべく、王国は騎士団を中心に戦力を送り込んでいた。
多くの犠牲を伴い、この度ようやくその奪還に成功した状況である。
国内の騎士達は長らくの悲願を達成し、改めて王国内で発生している歪虚、雑魔への対処を行う者も出始めていた。
国土の大半が平野となだらかな丘陵からなるグラズヘイムにおいて、王国北東部は珍しい山岳地帯である。
その中のとある山に歪虚が住み着き、麓にまでトカゲ雑魔が勢力を伸ばしてきていた。
大きく、その麓にある人の住む集落は、南西部と北東部の湖の畔にある2ヶ所。
南側の集落民はすでに古都アークエルスへと避難し、幾許か経つ。
その集落には3人のエルフが詰めており、入れ代わりやってくるハンターと協力して小規模な外壁を築きつつ、山から下りてくるトカゲ雑魔と交戦を繰り返していた。
最近では、この地はちょっとした前線基地の様相も見せ始めている。入れ代わり訪れるハンターの力を駆り、最近3mほどの高さのやぐらが増築されて相手の動きをいち早く気付くことができるようになった。
トカゲ雑魔達も馬鹿正直にこちらの集落を攻めることも多いのだが、山に潜む歪虚が雑魔に指示を出しているのだろう。時に、思いもしない咆哮から雑魔が襲い来ることがある。
例えば、トカゲ雑魔は北東部の集落を襲ってきたこともある。その際は、ハンター達が撃退したのだが……。
雑魔の脅威を覚えながらもその山と共に生きる人々は集落を離れられず、今もなお雑魔に覚えながら生活を送っているとのこと。
最近、そちらには聖堂戦士団の一隊が駆けつけたという話もあり、なんとか事なきを得ているという情報もある。
ある日の夜中のこと。
やぐらで監視を行っていたのはエルフ3人組の1人、皮肉屋のルイスが弓の手入れをしながら山に注意を向けていると。
「動いたな……」
彼は遠くで動く黒い影を見逃さない。いくら夜闇の中とはいえ、エルフの目はしっかりと数体のトカゲ雑魔を捉えていた。
そいつらはゆっくりと森の中へと移動していく。
おそらくは3体。大が1体と小が2体。もちろん、こちらの集落に攻めてくるつもりだろう。
ルイスはじっと、そいつらの動きを注視する。
念の為にとトランシーバーを使って仲間達に近況を伝えつつ、敵が森より出てくるタイミングを警戒しつつ緊張を強めていく。
……だが、敵は夜明けになっても、森から出てくる気配はない。森の奥で息を潜めているようだ。
「面倒なことになったな」
「そうですね……」
朝になり、エルフのリーダー、アルウェスが溜息をつく。魔術師ドミニクもまた額に眉を寄せる。
下手に森へと戦力を移動させると、相手は隙を突いて集落を狙うつもりだろう。
今なら、支援に来てくれているハンターがいてくれることもあり、動くことは可能だ。
こうして、エルフ達が話ができている状況も、やぐらなどを使って監視してくれるハンターがいてこそ。
「敵襲だ!」
その時、やぐらにいたハンターが叫ぶ。
「森からか!?」
アルウェスがトランシーバー越しに監視役に伝えるが、そのハンターは拒否して続ける。
「正面から、大トカゲが2体降りてこちらに近寄ってきている。話にあった森の方には現状、動きがないようだ」
ともあれ、正面の大トカゲ雑魔の迎撃をせねばならない。
多少補強はしたとはいえ、集落手前の防壁が破られれば、基地として使用する集落が破壊されてしまい、撤退を余儀なくされる。
「今、この場所を失うわけにはいかない。この場に詰めているハンター達にも声をかけてほしい」
森に潜む雑魔も気にはなるが、今は正面のトカゲの対応が優先。エルフ達はハンター達と手早く作戦を練り、その迎撃に当たるのだった。
グラズヘイム王国。
クリムゾンウェストの半島尖端に位置する国家。王都イルダーナを中心とした千年王国なる名を冠する大国だ。
王国は北西にある北萩の島「イスルダ島」を歪虚から奪還すべく、王国は騎士団を中心に戦力を送り込んでいた。
多くの犠牲を伴い、この度ようやくその奪還に成功した状況である。
国内の騎士達は長らくの悲願を達成し、改めて王国内で発生している歪虚、雑魔への対処を行う者も出始めていた。
国土の大半が平野となだらかな丘陵からなるグラズヘイムにおいて、王国北東部は珍しい山岳地帯である。
その中のとある山に歪虚が住み着き、麓にまでトカゲ雑魔が勢力を伸ばしてきていた。
大きく、その麓にある人の住む集落は、南西部と北東部の湖の畔にある2ヶ所。
南側の集落民はすでに古都アークエルスへと避難し、幾許か経つ。
その集落には3人のエルフが詰めており、入れ代わりやってくるハンターと協力して小規模な外壁を築きつつ、山から下りてくるトカゲ雑魔と交戦を繰り返していた。
最近では、この地はちょっとした前線基地の様相も見せ始めている。入れ代わり訪れるハンターの力を駆り、最近3mほどの高さのやぐらが増築されて相手の動きをいち早く気付くことができるようになった。
トカゲ雑魔達も馬鹿正直にこちらの集落を攻めることも多いのだが、山に潜む歪虚が雑魔に指示を出しているのだろう。時に、思いもしない咆哮から雑魔が襲い来ることがある。
例えば、トカゲ雑魔は北東部の集落を襲ってきたこともある。その際は、ハンター達が撃退したのだが……。
雑魔の脅威を覚えながらもその山と共に生きる人々は集落を離れられず、今もなお雑魔に覚えながら生活を送っているとのこと。
最近、そちらには聖堂戦士団の一隊が駆けつけたという話もあり、なんとか事なきを得ているという情報もある。
ある日の夜中のこと。
やぐらで監視を行っていたのはエルフ3人組の1人、皮肉屋のルイスが弓の手入れをしながら山に注意を向けていると。
「動いたな……」
彼は遠くで動く黒い影を見逃さない。いくら夜闇の中とはいえ、エルフの目はしっかりと数体のトカゲ雑魔を捉えていた。
そいつらはゆっくりと森の中へと移動していく。
おそらくは3体。大が1体と小が2体。もちろん、こちらの集落に攻めてくるつもりだろう。
ルイスはじっと、そいつらの動きを注視する。
念の為にとトランシーバーを使って仲間達に近況を伝えつつ、敵が森より出てくるタイミングを警戒しつつ緊張を強めていく。
……だが、敵は夜明けになっても、森から出てくる気配はない。森の奥で息を潜めているようだ。
「面倒なことになったな」
「そうですね……」
朝になり、エルフのリーダー、アルウェスが溜息をつく。魔術師ドミニクもまた額に眉を寄せる。
下手に森へと戦力を移動させると、相手は隙を突いて集落を狙うつもりだろう。
今なら、支援に来てくれているハンターがいてくれることもあり、動くことは可能だ。
こうして、エルフ達が話ができている状況も、やぐらなどを使って監視してくれるハンターがいてこそ。
「敵襲だ!」
その時、やぐらにいたハンターが叫ぶ。
「森からか!?」
アルウェスがトランシーバー越しに監視役に伝えるが、そのハンターは拒否して続ける。
「正面から、大トカゲが2体降りてこちらに近寄ってきている。話にあった森の方には現状、動きがないようだ」
ともあれ、正面の大トカゲ雑魔の迎撃をせねばならない。
多少補強はしたとはいえ、集落手前の防壁が破られれば、基地として使用する集落が破壊されてしまい、撤退を余儀なくされる。
「今、この場所を失うわけにはいかない。この場に詰めているハンター達にも声をかけてほしい」
森に潜む雑魔も気にはなるが、今は正面のトカゲの対応が優先。エルフ達はハンター達と手早く作戦を練り、その迎撃に当たるのだった。
リプレイ本文
●
グラズヘイム王国北東部。
山岳部であるこの地域の山の一つに歪虚、そしてトカゲ雑魔達が住み着いている。
その手前側。山の南西方向にある集落へと、ハンター達は訪れていた。
「玉兎・恵でっす。よろしくお願いしますね」
玉兎・恵(ka3940)は、この地に詰めているエルフ達へと挨拶する。
「折角配下が増えたからね。恵に手伝ってもらって練習だよ!」
今回、グリフォンのグリちゃんに乗ってきた恵は、主である玉兎 小夜(ka6009)と参戦だ。
「って、不意打ちな防衛戦かぁ……。……ま、首が狩れればなんてもいいや」
状況を確認し、小夜は少しローテンション。とはいえ、首狩りウサギの彼女は今日も獲物の首を狙う。
「嫌な感じのする山ですね?」
金髪に緑の瞳を持つ、カメリア(ka6669)は何かを正面の山に感じて。
その山には、トカゲトカゲとトカゲばかり。どうしてコンナに増えたものやらと、彼女は嘆息してしまう。
「トカゲ型雑魔の襲撃……ですか? 何度も、襲撃が為される……というのも、気になりますよね」
この状況について、天央 観智(ka0896)は仲間に語りかけるように、自身の考えを展開する。
雑魔の行動に理屈など求めても仕方はないのかもしれないが、生き物を見かけたから襲うという程度のものなのか。それとも、集落の場所自体に何かあるのだろうか。
「まぁ……どちらにしろ、今出来る事は、集落を防衛して……雑魔を撃退する事だけ、ですけれど」
初めてこのトカゲ雑魔に対するメンバー達は、その原因を探ることが多いようだった。
一方で、すでに参加経験のあるメンバーは、またも現れるトカゲに辟易としているようで。
「トカゲを倒してもこれでは切りがなく。そろそろ打開策を」
同族のエルフであるレオナ(ka6158)の言葉に、エルフのリーダー、アルウェスは頭を悩ませる。護ってばかりでは、いずれ集落に攻め込まれても仕方がないのはわかっているのだが。
「そうだな……」
雑魔を仕切る歪虚らしき影も、彼は目にしていた。空を飛来している存在がそれであるのは間違いない。
避難した集落民の為にも、どうにかして早期に手を打ちたいところ。
「ここで言っても仕方ありませんね。まず目の前の脅威の対処を」
「こちらに攻め込んできた敵を、倒さねばならんな」
山の中は、それから。カメリアの言葉に、エルフの中で皮肉屋のルイスが頷いた。確かに、目の前に差し迫った問題を片付けなければ始まらない。
「先日ほど大きい個体は居ないようですが……。何匹か森に潜んでいるようですし、油断は禁物ですね」
エルフのドミニクが広げた地図を見ながら、ヴァルナ=エリゴス(ka2651) が呟く。
「いざとなれば貴方に一跳びして貰う事になります。頼みますよ、ガスト」
ヴァルナが呼びかけると、傍にいたリーリーのガストは信頼する彼女に頬を寄せながら一声鳴いた。
「何回襲ってきたって、私達がやっつけちゃうんだから!!」
ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)は刻令ゴーレム「Volcanius」、ニンタンク『大輪牡丹』を従えてきている。今回もまた、トカゲ雑魔どもを蹴散らす心積もりだ。
「唐突の襲撃、でも、私のやる事は変わらない」
腰に下げた2本の剣に、アリア・セリウス(ka6424)は視線を落とす。
「喪われぬ為に。そして、繋ぐ為に――継承という幻月の刃を」
この山岳部において、戦い続けた共や人に恥じぬように。その二つの刃に、彼女は通した想いを鋭く響かせるだけだとアリアは考える。
「雑魔が来たぞ!」
そこで、やぐらから声が響く。正面から大トカゲ2体が迫って来ている。
「さて……、決着はまだ遠そうですが、地道に削るとしましょう」
ヴァルナに同意するメンバー達はもはや一刻の猶予もないと、連れてきたユニットを引きつれ、あるいは乗り、山の方へと移動していくのである。
●
敵に向かいながら、戦闘準備を整えるメンバー達。
「あなた達は森の警戒を」
イェジドのコーディに跨ったアリアは、エルフ達にそう告げてから飛び出す。
エルフ達が注視する森の方向。潜むトカゲ雑魔に動きは未だ見られぬが、カメリアが魔導バイクで移動を開始し、後についてくる刻令ゴーレム「Gnome」の庭師さんに、穴を掘るようにと指示していた。
そばでは、ワイバーン「Fannan」を駆るレオナが森の香りを漂わせつつ飛来してきていて。
彼女は敵が現われたときの保険として、かすかな小さな残光をいくつも残しながら地縛符を展開した上で正面のトカゲ対応に当たる。
その途中でも、レオナはイヤリングの通信機能を使い、逐一エルフ達と交信を行っていたようだ。
正面からやってくる大トカゲ2体には、数人のメンバーが当たっている。
唯一、CAM……魔導型デュミナス射撃戦仕様に搭乗する観智もその1人。相手の出方を見ていた彼も、トランシーバーを通話状態としていた。
さらに、観智は森へと戦火が及ぶのを懸念し、デュミナスのサブ武器をプラズマライフルへと変更して戦いに臨む。
魔導バイク「トカゲども! 兎を食えない分際ででしゃばるな!」に跨る小夜は、ユグディラ「キャス・パリューグ」に操縦を任せ、トカゲへと向かう。
「うさぎさんに遅れない様にお願いね。グリちゃん」
叫びかける小夜のやや後方には、グリちゃんで滑空する恵がいる。
覚醒して猫耳と尻尾を生やした彼女は高い場所を意にも介せず飛んでいき、相手の出方を見定めていた。
大トカゲはにじり寄るように歩いてきていたが、獲物を……ハンターの姿を捉えてからの動きは素早い。
飛びかかってくる雑魔をレーダーで捕捉した観智が先んじて、スナイパーライフルで相手の体を射抜いていく。
後方のルンルンも仲間を巻き込まぬようにと配慮しながら、ニンタンク『大輪牡丹』の大砲から炸裂断を発射する。
着弾したマテリアルの弾丸は周囲に霰玉を撒き散らし、トカゲ雑魔どもの体を傷つけるが、それしきで倒れる相手ではない。
飛び込みながら大きく身体を水平回転させるトカゲ。
全身に黄金の燐光を纏うヴァルナはガストに大きく跳躍させることでそれを避けてみせる。
敵の手前に着地した彼女は、マテリアルを充満させた魔剣「クラウ・ソラス」で切りかかる。
「トカゲども! 兎を食えない分際ででしゃばるな!」
大声で叫ぶ小夜は側頭部に垂らす耳を揺らしつつもう1体の大トカゲ目掛け、聖罰刃「ターミナー・レイ」での二連撃を浴びせかける。
攻撃の為にと止まった主を見て、恵もグリちゃんから降りてから虹の弓より牽制射撃を射掛ける。
トカゲどもは止まらない。そいつらは先に進みながらも、ハンター達へと直接のしかかり、大きな口で食らいつこうとしてくるのだった。
●
正面から堂々と襲い来る大トカゲ雑魔2体。
観智はデュミナスによる射撃を続け、大トカゲの体力を削る。
「正面から突破等されるのも問題だけれど……」
左手の森に潜むという雑魔の動向にも、観智は注意を払う。
「防備の薄い所に回り込まれて、集落に被害が出るのも問題なので……」
その視界には、覚醒の影響か契約した精霊の幻が浮かぶ。レーダーも併用しつつ、彼は周辺の動体反応に留意していた。
白雪のようなマテリアルを舞わせたアリアもすぐ森に移動できるような位置取りをしながら、マテリアルを伝達した聖弓「ルドラ」で弓を射掛けていく。
そのアリアの言葉で森を見つめるエルフ達。
相手が出れば、報告を出した上で威嚇射撃。そこまでならば、アルウェス達も問題ないのだが。
「相手を止める為なら、私ごと射貫いても構わない」
優先すべきなのはどちらか。それだけだと、アリアは言った。そうならないようにと、アルウェスは願いながら、弓を握ったまま森を見つめる。
ワイバーンに騎乗するレオナは、結界を展開して正面対応をしている仲間達の防御を高める。Fannanも魔竜牙「エルプシオン」を使いながら、対する大トカゲに炎を浴びせかけていた。
歌を歌って大トカゲを威圧するヴァルナは、ガストに相手の正面か側面に張り付くよう指示を出しながらも、マテリアルを満たした魔剣での攻撃を続ける。
恵は視力と感覚にマテリアルを集中させ、矢を射掛けていた。
地面を駆ける小夜も続けざまに、聖罰刃を浴びせかけていく。
キャス・パリューグが響かせる緩やかな曲調の歌によって、集中力を高める小夜はトカゲの背中へと飛び乗って。
「背中にのっかられて、抵抗できるかっ?」
右目から残光を残しながら移動する彼女は、そこから相手の首を狙う。
ただ、そこは危険な位置には違いない。敵に振りほどかれれば、一気に劣勢になってしまうからだ。
「かなり危ない位置だけど……」
だが、小夜を襲う敵の攻撃に合わせて放たれた矢は敵の体を貫き、どす黒い血を流す。
シャアアアアア……。
目から光を失った雑魔は大きな音を立てて崩れ落ち、霧散していく。
相手を射抜いていた矢は、恵が射掛けたもの。さすがは嫁だと小夜は両目を細めていた。
一方、森と集落の間にいたカメリア。
大きな穴を掘っていた。庭師さんを含め、カメリアは精霊に祈りを捧げてオーラ状の障壁を包んでいく。
「痛いのは嫌ですしね?」
2m弱の間隔をあけて掘られた穴は、すでに3つ目。あえて穴の間に間隔をあけているのは、小さなトカゲ産を誘い込めるようにとは、カメリアの談である。
実際に、ルンルンは穴と穴の間に地縛符を仕掛けていた。
「ジュゲームリリカル……ルンルン忍法土蜘蛛の術! 符を場に伏せてターンエンドです」
これが効果を発揮してくれればいいが。
そんなことを考えていると、森に動きが。
タイミングを図ったかのように、木々の合間から姿を現したトカゲ雑魔達が集落を目指して動き出したのだった。
●
森から現われたのは、事前にエルフのルイスが見ていたとおり、大1体、小2体のトカゲ雑魔達だ。
(独りでは、個人的に火力が足りないし……。連絡して……)
雑魔の出現に気付いた観智は、すぐさまトランシーバーでエルフ達へと通達する。
「森から雑魔が現われました」
正面の雑魔を相手にしていたメンバーも、そちらへと動き出す。
エルフ達も気付いたようだったが、攻撃にはしばし躊躇を見せる。
『優先すべきはどちらか、というだけよ』
そんな言葉をかけたアリアも遊撃に動き出している。彼女ごと相手を射抜くわけには……、しばしエルフ達が躊躇していると。
穴を避けて移動しようとする小トカゲ2体。その内の1体がレオナの仕掛けた地縛符に引っかかり、動けなくなっていた。
「今です大輪牡丹ちゃん、忍砲火炎地獄!」
魔導拡声機「ナーハリヒト」を使ってルンルンがしっかりと自分の声を届けると、ニンタンク『大輪牡丹』が砲撃を行う。
新手がまた現れるかもしれないと踏んだルンルンは、敢えてトカゲを自らが仕掛けた罠へとすぐ掛からぬようにと考えたのだが、それが裏目に出てしまう。
小トカゲ1体は後ろに下がってしまい、大トカゲと分かれて穴のサイドから回り込んできたのだ。
カメリアは穴を掘り終えた庭師さんに、防壁を補強させに集落へと向かわせる。
その一方、自身は丁度自分の方へと向かってきた小トカゲに応戦を開始し、複数の符を使って展開した結界でそいつの体を焼き払う。
「大トカゲが突破しそうです」
レオナがフリーになっている大トカゲを見て、トランシーバーへと告げる。
その知らせを受け、アルウェス達も弓に矢を番えて射始める。ドミニクも炎の矢を放っていたようだ。
レオナもまたFannanに炎を吐かせ、応戦を行う。
そこへ、正面の敵を対応していたアリアが現れる。オーラを纏って身体能力を高めたイェジドのコーディが一気に距離を詰めていたのだ。
アリアは魔導剣「カオスウィース」の刀身にマテリアルで満たしつつ、接近する。
「蜥蜴に歌も舞も判らなくても、刃の鋭さと危うさは、その身で知れるでしょう。――双刃で旋律を刻むわ」
そうして、彼女は歌うようにステップしてリズムをとり、張り付いた大型に正面から両手に持つ魔導剣と刀「和泉兼重」で切りかかる。
さらに、加速したアリアは龍を思わせる瞳で見据えた敵を、オーラの斬撃で追撃して見せた。
「森から現われた雑魔は、アリアとレオナが対応中よ」
グリちゃんで飛び上がった恵は周囲を見回し、戦況を皆に伝える。
その上で、マテリアルを集中させた恵はグリちゃんに降下させつつ、牽制の矢で仲間を援護していく。
「これは引き掴む鉤爪。龍からは命を! 勇士へは首を!」
恵が飛ばす矢の方向に近づく小夜は聖罰刃を大上段に構え、一気に気を練る。
「キャス・パリューグの支援も受けた次元斬を受けてみろ!」
自身の連れるユグディラの歌を耳にする彼女は、猛然と大トカゲの全身を切り刻む。
一定範囲の攻撃ではあるが、図体のでかい大トカゲであれば、仲間に被害が及ぶ心配はなかったようだ。
前線の大トカゲ1体には、ヴァルナが対し続けていた。
「ガスト、そのままいきましょう」
彼女はうまく、森側の敵を仲間が抑えているのを目にし、防壁にとって脅威である大トカゲを攻め込んでいたのだ。
できるだけ頭、脚を狙ってヴァルナは刃を浴びせ、トカゲ雑魔の動きを封じようと努める。
序盤の仲間達の攻撃もあって、相手はもうフラフラだ。
「光の方が効いているようですね」
手にする魔剣には炎と光の属性がある。ヴァルナはその両方を試して切りかかっていた。
ガストのキックで援護してもらいながら、彼女は光纏う一閃で大トカゲの体を断ち切る。
爆ぜ飛ぶその大トカゲを見て一息つくヴァルナだったが、一難さってまた一難。今度は正面からもトカゲの援軍がやってきたのだった。
●
「正面、大1体、小2体が接近してきます」
ヴァルナは無線を使って仲間に伝達し、そのまま向かい来る大トカゲの抑えに回る。
臨機応変に雑魔の対応していた観智が手薄になった正面側に砲撃を叩き込んでいたが、キャス・パリューグの警戒によって気付いた小夜もそちらに回って。
「そっちもいたか!」
彼女はそちらに向かって、やや適当に斬撃を浴びせかけていく。
「此は地獄。かくて郷遠し憤怒のうずめき叫ばん!」
フリーになっていた小トカゲへと、刃を大きく振り下ろす小夜。
主が向かえば、グリちゃんを駆る恵が近づく。小夜を狙う別の小トカゲに対して牽制の一矢を飛ばしていた。
森から出てきた雑魔を抑えるメンバー達。
レオナはもし、敵の数が4体を越えたらFannanに光線を発射させることも考えていたが、結局それだけの敵を纏めて相手にすることがなかったのは、幸いと言うべきか。
詠唱を繰り返し、仲間に防御結界を展開しながら、彼女は交戦を続ける。
「ジュゲームリリカルクルクルマジカル……ルンルン忍法五星花! 煌めいて星の花弁☆」
ルンルンも符を飛ばし、できるだけ、大小トカゲを纏めて結界内に収めて焼き払おうとしていく。防壁まで下がらせたニンタンク『大輪牡丹』も射撃で支援してくれる。
観智が正面、森側の両方に支援射撃を行ってはいるが、あちらもこちらもと動く彼はなかなか仲間のカバーにうまく回っていた。
ただ、それだけに被弾も増える。一気に距離を詰めてきた小トカゲの舌を食らう機会も多かったようだ。
散開する形となるハンター達。
森側にいたメンバーは徐々にそちらの雑魔を疲弊させる。
エルフ達の矢を受け、怯む小トカゲ。
レオナはFannanの銃撃を浴びて動きを止めたそいつを符の結界で包んで灼き払うと、そいつは奇声を上げて消滅していった。
アリアは自らの地縛符に掛かっていた小トカゲが動き出すのに気付いてはいたが、彼女は防壁を崩す可能性が高い大トカゲを優先し、ルンルンと攻め立てていた。
「今ですニンタンクちゃん、シノビ礫!」
自らのゴーレムに近づく敵へ、ルンルンが指示を出すと、ニンタンク『大輪牡丹』はキャニスター弾をバラ撒く。
その間、その小トカゲには、もう1体の小トカゲが倒れたことでカメリアが回っていて。
小トカゲはハンターの包囲網を抜けて、集落に迫っていた。
その手前には、庭師さんが立ち塞がることとなる。
「多少手荒なこともできると、見せておかないとですね?」
カメリアも足止めから攻撃に転じ、自らの強固な意志を示して相手にプレッシャーを与える。
そこに飛んで来る観智の砲撃。さらに、庭師さんが前線に立ち、聖盾剣「アレクサンダー」でそいつの体を刻む。
脅威の移動力を持つ小トカゲだが、一気に攻め立てれば攻め崩すのは難しくはない。
「この程度の戦力で攻め入ったことを、後悔してもらいましょうか」
カメリアの展開した幾度目かの結界内で、そいつは雑魔としての活動を終えていった。
残る森側の大トカゲも、かなり追い込んでいる。
纏めて倒せなかったのは痛いが、ニンタンク『大輪牡丹』の砲撃で傷む敵に符を飛ばす。
光につつまれども、大トカゲはなかなかに体力が高く、倒れない。
ルンルンの加勢を受けながらも、アリアは両手の刃で敵を刻む。
「二つの月の刃を廻しましょう、幻月の斬閃、舞うが如く」
『幻月』。その言葉通りに、彼女は手にする2つの刃で月を描いていく。
2つの刃はトカゲの喉元深くまで食い込んでいき、さらにオーラの刃が相手の口の中へと飛ぶ。
その内臓を裂かれた敵はついに潰え、叫びを上げて消え去ってしまった。
一息ついたアリア。だが、正面の小トカゲが集落に向かうのを察して。
「ジュゲームリリカル……。ルンルン忍法カプセルニンジャ! いでよ、レクサス、アキラ」
ただ、そこで、ルンルンが動いていった。先ほどの失策を取り戻すかのように、彼女は式神を呼び出して。
「ニンタンクちゃんと合わせて、V作戦発動です」
2体の式神とニンタンク『大輪牡丹』。数で抑えられて小トカゲは動きを封じられることとなる。
小夜、恵の攻撃で相当傷ついていたそいつに、ルンルンは『大輪牡丹』に大声で呼びかけた。
「今ですニンタンクちゃん、シノビ礫!」
砲塔から発せられるキャニスター弾。巻き散らされた霰玉によって、そのトカゲは消し飛んでいく。
もう一方の小トカゲは、小夜、恵が次は逃がさじと連携をとる。
恵の妨害射撃は的確に相手の頭や脚を射抜く。未だ、相手の首を取っていないと小夜は相手を空間ごと切り刻む。
手ごたえは十分。斬撃のいくつかが見事の小トカゲの首を断ち切り、その身体を消滅させた。
「キャス・パリューグ、皆を癒して」
すると、呼びかけに応えたキャス・パリューグはリュートの音色を響かせ、前線で戦う仲間の傷を癒す。
相手の波状攻撃で、ハンター達もかなり傷ついてきている。
カメリアなどはスキルを使い果たしたのか、拳銃「ワン・オブ・サウザンド」で応戦を始めている状況だ。
それでも、残るは大トカゲ1体。これ以上の敵は現れないと踏み、ヴァルナは光の剣で粘り強く相手を攻め立てて。
「終わりです……!」
魔剣の一太刀で彼女は相手の頭部を両断する。顔面を上下にずらして消え去る最後のトカゲ雑魔。
リーリー、ガストに乗ったまま、深く息をついたヴァルナは纏っていた燐光を消していったのだった。
●
無事、トカゲ雑魔を殲滅できたハンター達。
恵はすぐさま、ご主人様の姿を確認する。
「おっつかれぇ!」
キャス・パリューグを抱き上げてくるくる回転する小夜。彼女はこちらを見つめる視線に気付いて。
「……って、こっちだけじゃなくてぇ! 恵も、ありがとぉ! がんばったよー!」
恵を抱きしめた小夜は、そのまま勢いで彼女の体も回転させていく。
その傍らでは、カメリアが庭師さんに掘らせた穴を再び埋めさせる。
「正式に堀を作るにせよ、適当にあけた穴は邪魔になるでしょうしね?」
「堀……か」
なるほどと頷くアルウェス。石壁を築くよりも比較的手早く作業は進むと判断した彼は早速、他のエルフやハンターらと話を始めていたようである。
「それにしても、単純ながら作戦めいた動きをする辺り、普通の雑魔とはちょっと違うような……」
誰かが入れ知恵をしている可能性が高いと、ヴァルナも考える。
そこで、一通り集落の状況を確認し終えたレオナが、占術で山の方角を占ってみる。
「やはり、いますね……」
その時、空を飛ぶ何かが山へと飛んでいくのが見えた。
常駐しているわけではないようだが、歪虚は確かにこの山を根城にしている。ハンター達はそれを確信したのだった。
グラズヘイム王国北東部。
山岳部であるこの地域の山の一つに歪虚、そしてトカゲ雑魔達が住み着いている。
その手前側。山の南西方向にある集落へと、ハンター達は訪れていた。
「玉兎・恵でっす。よろしくお願いしますね」
玉兎・恵(ka3940)は、この地に詰めているエルフ達へと挨拶する。
「折角配下が増えたからね。恵に手伝ってもらって練習だよ!」
今回、グリフォンのグリちゃんに乗ってきた恵は、主である玉兎 小夜(ka6009)と参戦だ。
「って、不意打ちな防衛戦かぁ……。……ま、首が狩れればなんてもいいや」
状況を確認し、小夜は少しローテンション。とはいえ、首狩りウサギの彼女は今日も獲物の首を狙う。
「嫌な感じのする山ですね?」
金髪に緑の瞳を持つ、カメリア(ka6669)は何かを正面の山に感じて。
その山には、トカゲトカゲとトカゲばかり。どうしてコンナに増えたものやらと、彼女は嘆息してしまう。
「トカゲ型雑魔の襲撃……ですか? 何度も、襲撃が為される……というのも、気になりますよね」
この状況について、天央 観智(ka0896)は仲間に語りかけるように、自身の考えを展開する。
雑魔の行動に理屈など求めても仕方はないのかもしれないが、生き物を見かけたから襲うという程度のものなのか。それとも、集落の場所自体に何かあるのだろうか。
「まぁ……どちらにしろ、今出来る事は、集落を防衛して……雑魔を撃退する事だけ、ですけれど」
初めてこのトカゲ雑魔に対するメンバー達は、その原因を探ることが多いようだった。
一方で、すでに参加経験のあるメンバーは、またも現れるトカゲに辟易としているようで。
「トカゲを倒してもこれでは切りがなく。そろそろ打開策を」
同族のエルフであるレオナ(ka6158)の言葉に、エルフのリーダー、アルウェスは頭を悩ませる。護ってばかりでは、いずれ集落に攻め込まれても仕方がないのはわかっているのだが。
「そうだな……」
雑魔を仕切る歪虚らしき影も、彼は目にしていた。空を飛来している存在がそれであるのは間違いない。
避難した集落民の為にも、どうにかして早期に手を打ちたいところ。
「ここで言っても仕方ありませんね。まず目の前の脅威の対処を」
「こちらに攻め込んできた敵を、倒さねばならんな」
山の中は、それから。カメリアの言葉に、エルフの中で皮肉屋のルイスが頷いた。確かに、目の前に差し迫った問題を片付けなければ始まらない。
「先日ほど大きい個体は居ないようですが……。何匹か森に潜んでいるようですし、油断は禁物ですね」
エルフのドミニクが広げた地図を見ながら、ヴァルナ=エリゴス(ka2651) が呟く。
「いざとなれば貴方に一跳びして貰う事になります。頼みますよ、ガスト」
ヴァルナが呼びかけると、傍にいたリーリーのガストは信頼する彼女に頬を寄せながら一声鳴いた。
「何回襲ってきたって、私達がやっつけちゃうんだから!!」
ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)は刻令ゴーレム「Volcanius」、ニンタンク『大輪牡丹』を従えてきている。今回もまた、トカゲ雑魔どもを蹴散らす心積もりだ。
「唐突の襲撃、でも、私のやる事は変わらない」
腰に下げた2本の剣に、アリア・セリウス(ka6424)は視線を落とす。
「喪われぬ為に。そして、繋ぐ為に――継承という幻月の刃を」
この山岳部において、戦い続けた共や人に恥じぬように。その二つの刃に、彼女は通した想いを鋭く響かせるだけだとアリアは考える。
「雑魔が来たぞ!」
そこで、やぐらから声が響く。正面から大トカゲ2体が迫って来ている。
「さて……、決着はまだ遠そうですが、地道に削るとしましょう」
ヴァルナに同意するメンバー達はもはや一刻の猶予もないと、連れてきたユニットを引きつれ、あるいは乗り、山の方へと移動していくのである。
●
敵に向かいながら、戦闘準備を整えるメンバー達。
「あなた達は森の警戒を」
イェジドのコーディに跨ったアリアは、エルフ達にそう告げてから飛び出す。
エルフ達が注視する森の方向。潜むトカゲ雑魔に動きは未だ見られぬが、カメリアが魔導バイクで移動を開始し、後についてくる刻令ゴーレム「Gnome」の庭師さんに、穴を掘るようにと指示していた。
そばでは、ワイバーン「Fannan」を駆るレオナが森の香りを漂わせつつ飛来してきていて。
彼女は敵が現われたときの保険として、かすかな小さな残光をいくつも残しながら地縛符を展開した上で正面のトカゲ対応に当たる。
その途中でも、レオナはイヤリングの通信機能を使い、逐一エルフ達と交信を行っていたようだ。
正面からやってくる大トカゲ2体には、数人のメンバーが当たっている。
唯一、CAM……魔導型デュミナス射撃戦仕様に搭乗する観智もその1人。相手の出方を見ていた彼も、トランシーバーを通話状態としていた。
さらに、観智は森へと戦火が及ぶのを懸念し、デュミナスのサブ武器をプラズマライフルへと変更して戦いに臨む。
魔導バイク「トカゲども! 兎を食えない分際ででしゃばるな!」に跨る小夜は、ユグディラ「キャス・パリューグ」に操縦を任せ、トカゲへと向かう。
「うさぎさんに遅れない様にお願いね。グリちゃん」
叫びかける小夜のやや後方には、グリちゃんで滑空する恵がいる。
覚醒して猫耳と尻尾を生やした彼女は高い場所を意にも介せず飛んでいき、相手の出方を見定めていた。
大トカゲはにじり寄るように歩いてきていたが、獲物を……ハンターの姿を捉えてからの動きは素早い。
飛びかかってくる雑魔をレーダーで捕捉した観智が先んじて、スナイパーライフルで相手の体を射抜いていく。
後方のルンルンも仲間を巻き込まぬようにと配慮しながら、ニンタンク『大輪牡丹』の大砲から炸裂断を発射する。
着弾したマテリアルの弾丸は周囲に霰玉を撒き散らし、トカゲ雑魔どもの体を傷つけるが、それしきで倒れる相手ではない。
飛び込みながら大きく身体を水平回転させるトカゲ。
全身に黄金の燐光を纏うヴァルナはガストに大きく跳躍させることでそれを避けてみせる。
敵の手前に着地した彼女は、マテリアルを充満させた魔剣「クラウ・ソラス」で切りかかる。
「トカゲども! 兎を食えない分際ででしゃばるな!」
大声で叫ぶ小夜は側頭部に垂らす耳を揺らしつつもう1体の大トカゲ目掛け、聖罰刃「ターミナー・レイ」での二連撃を浴びせかける。
攻撃の為にと止まった主を見て、恵もグリちゃんから降りてから虹の弓より牽制射撃を射掛ける。
トカゲどもは止まらない。そいつらは先に進みながらも、ハンター達へと直接のしかかり、大きな口で食らいつこうとしてくるのだった。
●
正面から堂々と襲い来る大トカゲ雑魔2体。
観智はデュミナスによる射撃を続け、大トカゲの体力を削る。
「正面から突破等されるのも問題だけれど……」
左手の森に潜むという雑魔の動向にも、観智は注意を払う。
「防備の薄い所に回り込まれて、集落に被害が出るのも問題なので……」
その視界には、覚醒の影響か契約した精霊の幻が浮かぶ。レーダーも併用しつつ、彼は周辺の動体反応に留意していた。
白雪のようなマテリアルを舞わせたアリアもすぐ森に移動できるような位置取りをしながら、マテリアルを伝達した聖弓「ルドラ」で弓を射掛けていく。
そのアリアの言葉で森を見つめるエルフ達。
相手が出れば、報告を出した上で威嚇射撃。そこまでならば、アルウェス達も問題ないのだが。
「相手を止める為なら、私ごと射貫いても構わない」
優先すべきなのはどちらか。それだけだと、アリアは言った。そうならないようにと、アルウェスは願いながら、弓を握ったまま森を見つめる。
ワイバーンに騎乗するレオナは、結界を展開して正面対応をしている仲間達の防御を高める。Fannanも魔竜牙「エルプシオン」を使いながら、対する大トカゲに炎を浴びせかけていた。
歌を歌って大トカゲを威圧するヴァルナは、ガストに相手の正面か側面に張り付くよう指示を出しながらも、マテリアルを満たした魔剣での攻撃を続ける。
恵は視力と感覚にマテリアルを集中させ、矢を射掛けていた。
地面を駆ける小夜も続けざまに、聖罰刃を浴びせかけていく。
キャス・パリューグが響かせる緩やかな曲調の歌によって、集中力を高める小夜はトカゲの背中へと飛び乗って。
「背中にのっかられて、抵抗できるかっ?」
右目から残光を残しながら移動する彼女は、そこから相手の首を狙う。
ただ、そこは危険な位置には違いない。敵に振りほどかれれば、一気に劣勢になってしまうからだ。
「かなり危ない位置だけど……」
だが、小夜を襲う敵の攻撃に合わせて放たれた矢は敵の体を貫き、どす黒い血を流す。
シャアアアアア……。
目から光を失った雑魔は大きな音を立てて崩れ落ち、霧散していく。
相手を射抜いていた矢は、恵が射掛けたもの。さすがは嫁だと小夜は両目を細めていた。
一方、森と集落の間にいたカメリア。
大きな穴を掘っていた。庭師さんを含め、カメリアは精霊に祈りを捧げてオーラ状の障壁を包んでいく。
「痛いのは嫌ですしね?」
2m弱の間隔をあけて掘られた穴は、すでに3つ目。あえて穴の間に間隔をあけているのは、小さなトカゲ産を誘い込めるようにとは、カメリアの談である。
実際に、ルンルンは穴と穴の間に地縛符を仕掛けていた。
「ジュゲームリリカル……ルンルン忍法土蜘蛛の術! 符を場に伏せてターンエンドです」
これが効果を発揮してくれればいいが。
そんなことを考えていると、森に動きが。
タイミングを図ったかのように、木々の合間から姿を現したトカゲ雑魔達が集落を目指して動き出したのだった。
●
森から現われたのは、事前にエルフのルイスが見ていたとおり、大1体、小2体のトカゲ雑魔達だ。
(独りでは、個人的に火力が足りないし……。連絡して……)
雑魔の出現に気付いた観智は、すぐさまトランシーバーでエルフ達へと通達する。
「森から雑魔が現われました」
正面の雑魔を相手にしていたメンバーも、そちらへと動き出す。
エルフ達も気付いたようだったが、攻撃にはしばし躊躇を見せる。
『優先すべきはどちらか、というだけよ』
そんな言葉をかけたアリアも遊撃に動き出している。彼女ごと相手を射抜くわけには……、しばしエルフ達が躊躇していると。
穴を避けて移動しようとする小トカゲ2体。その内の1体がレオナの仕掛けた地縛符に引っかかり、動けなくなっていた。
「今です大輪牡丹ちゃん、忍砲火炎地獄!」
魔導拡声機「ナーハリヒト」を使ってルンルンがしっかりと自分の声を届けると、ニンタンク『大輪牡丹』が砲撃を行う。
新手がまた現れるかもしれないと踏んだルンルンは、敢えてトカゲを自らが仕掛けた罠へとすぐ掛からぬようにと考えたのだが、それが裏目に出てしまう。
小トカゲ1体は後ろに下がってしまい、大トカゲと分かれて穴のサイドから回り込んできたのだ。
カメリアは穴を掘り終えた庭師さんに、防壁を補強させに集落へと向かわせる。
その一方、自身は丁度自分の方へと向かってきた小トカゲに応戦を開始し、複数の符を使って展開した結界でそいつの体を焼き払う。
「大トカゲが突破しそうです」
レオナがフリーになっている大トカゲを見て、トランシーバーへと告げる。
その知らせを受け、アルウェス達も弓に矢を番えて射始める。ドミニクも炎の矢を放っていたようだ。
レオナもまたFannanに炎を吐かせ、応戦を行う。
そこへ、正面の敵を対応していたアリアが現れる。オーラを纏って身体能力を高めたイェジドのコーディが一気に距離を詰めていたのだ。
アリアは魔導剣「カオスウィース」の刀身にマテリアルで満たしつつ、接近する。
「蜥蜴に歌も舞も判らなくても、刃の鋭さと危うさは、その身で知れるでしょう。――双刃で旋律を刻むわ」
そうして、彼女は歌うようにステップしてリズムをとり、張り付いた大型に正面から両手に持つ魔導剣と刀「和泉兼重」で切りかかる。
さらに、加速したアリアは龍を思わせる瞳で見据えた敵を、オーラの斬撃で追撃して見せた。
「森から現われた雑魔は、アリアとレオナが対応中よ」
グリちゃんで飛び上がった恵は周囲を見回し、戦況を皆に伝える。
その上で、マテリアルを集中させた恵はグリちゃんに降下させつつ、牽制の矢で仲間を援護していく。
「これは引き掴む鉤爪。龍からは命を! 勇士へは首を!」
恵が飛ばす矢の方向に近づく小夜は聖罰刃を大上段に構え、一気に気を練る。
「キャス・パリューグの支援も受けた次元斬を受けてみろ!」
自身の連れるユグディラの歌を耳にする彼女は、猛然と大トカゲの全身を切り刻む。
一定範囲の攻撃ではあるが、図体のでかい大トカゲであれば、仲間に被害が及ぶ心配はなかったようだ。
前線の大トカゲ1体には、ヴァルナが対し続けていた。
「ガスト、そのままいきましょう」
彼女はうまく、森側の敵を仲間が抑えているのを目にし、防壁にとって脅威である大トカゲを攻め込んでいたのだ。
できるだけ頭、脚を狙ってヴァルナは刃を浴びせ、トカゲ雑魔の動きを封じようと努める。
序盤の仲間達の攻撃もあって、相手はもうフラフラだ。
「光の方が効いているようですね」
手にする魔剣には炎と光の属性がある。ヴァルナはその両方を試して切りかかっていた。
ガストのキックで援護してもらいながら、彼女は光纏う一閃で大トカゲの体を断ち切る。
爆ぜ飛ぶその大トカゲを見て一息つくヴァルナだったが、一難さってまた一難。今度は正面からもトカゲの援軍がやってきたのだった。
●
「正面、大1体、小2体が接近してきます」
ヴァルナは無線を使って仲間に伝達し、そのまま向かい来る大トカゲの抑えに回る。
臨機応変に雑魔の対応していた観智が手薄になった正面側に砲撃を叩き込んでいたが、キャス・パリューグの警戒によって気付いた小夜もそちらに回って。
「そっちもいたか!」
彼女はそちらに向かって、やや適当に斬撃を浴びせかけていく。
「此は地獄。かくて郷遠し憤怒のうずめき叫ばん!」
フリーになっていた小トカゲへと、刃を大きく振り下ろす小夜。
主が向かえば、グリちゃんを駆る恵が近づく。小夜を狙う別の小トカゲに対して牽制の一矢を飛ばしていた。
森から出てきた雑魔を抑えるメンバー達。
レオナはもし、敵の数が4体を越えたらFannanに光線を発射させることも考えていたが、結局それだけの敵を纏めて相手にすることがなかったのは、幸いと言うべきか。
詠唱を繰り返し、仲間に防御結界を展開しながら、彼女は交戦を続ける。
「ジュゲームリリカルクルクルマジカル……ルンルン忍法五星花! 煌めいて星の花弁☆」
ルンルンも符を飛ばし、できるだけ、大小トカゲを纏めて結界内に収めて焼き払おうとしていく。防壁まで下がらせたニンタンク『大輪牡丹』も射撃で支援してくれる。
観智が正面、森側の両方に支援射撃を行ってはいるが、あちらもこちらもと動く彼はなかなか仲間のカバーにうまく回っていた。
ただ、それだけに被弾も増える。一気に距離を詰めてきた小トカゲの舌を食らう機会も多かったようだ。
散開する形となるハンター達。
森側にいたメンバーは徐々にそちらの雑魔を疲弊させる。
エルフ達の矢を受け、怯む小トカゲ。
レオナはFannanの銃撃を浴びて動きを止めたそいつを符の結界で包んで灼き払うと、そいつは奇声を上げて消滅していった。
アリアは自らの地縛符に掛かっていた小トカゲが動き出すのに気付いてはいたが、彼女は防壁を崩す可能性が高い大トカゲを優先し、ルンルンと攻め立てていた。
「今ですニンタンクちゃん、シノビ礫!」
自らのゴーレムに近づく敵へ、ルンルンが指示を出すと、ニンタンク『大輪牡丹』はキャニスター弾をバラ撒く。
その間、その小トカゲには、もう1体の小トカゲが倒れたことでカメリアが回っていて。
小トカゲはハンターの包囲網を抜けて、集落に迫っていた。
その手前には、庭師さんが立ち塞がることとなる。
「多少手荒なこともできると、見せておかないとですね?」
カメリアも足止めから攻撃に転じ、自らの強固な意志を示して相手にプレッシャーを与える。
そこに飛んで来る観智の砲撃。さらに、庭師さんが前線に立ち、聖盾剣「アレクサンダー」でそいつの体を刻む。
脅威の移動力を持つ小トカゲだが、一気に攻め立てれば攻め崩すのは難しくはない。
「この程度の戦力で攻め入ったことを、後悔してもらいましょうか」
カメリアの展開した幾度目かの結界内で、そいつは雑魔としての活動を終えていった。
残る森側の大トカゲも、かなり追い込んでいる。
纏めて倒せなかったのは痛いが、ニンタンク『大輪牡丹』の砲撃で傷む敵に符を飛ばす。
光につつまれども、大トカゲはなかなかに体力が高く、倒れない。
ルンルンの加勢を受けながらも、アリアは両手の刃で敵を刻む。
「二つの月の刃を廻しましょう、幻月の斬閃、舞うが如く」
『幻月』。その言葉通りに、彼女は手にする2つの刃で月を描いていく。
2つの刃はトカゲの喉元深くまで食い込んでいき、さらにオーラの刃が相手の口の中へと飛ぶ。
その内臓を裂かれた敵はついに潰え、叫びを上げて消え去ってしまった。
一息ついたアリア。だが、正面の小トカゲが集落に向かうのを察して。
「ジュゲームリリカル……。ルンルン忍法カプセルニンジャ! いでよ、レクサス、アキラ」
ただ、そこで、ルンルンが動いていった。先ほどの失策を取り戻すかのように、彼女は式神を呼び出して。
「ニンタンクちゃんと合わせて、V作戦発動です」
2体の式神とニンタンク『大輪牡丹』。数で抑えられて小トカゲは動きを封じられることとなる。
小夜、恵の攻撃で相当傷ついていたそいつに、ルンルンは『大輪牡丹』に大声で呼びかけた。
「今ですニンタンクちゃん、シノビ礫!」
砲塔から発せられるキャニスター弾。巻き散らされた霰玉によって、そのトカゲは消し飛んでいく。
もう一方の小トカゲは、小夜、恵が次は逃がさじと連携をとる。
恵の妨害射撃は的確に相手の頭や脚を射抜く。未だ、相手の首を取っていないと小夜は相手を空間ごと切り刻む。
手ごたえは十分。斬撃のいくつかが見事の小トカゲの首を断ち切り、その身体を消滅させた。
「キャス・パリューグ、皆を癒して」
すると、呼びかけに応えたキャス・パリューグはリュートの音色を響かせ、前線で戦う仲間の傷を癒す。
相手の波状攻撃で、ハンター達もかなり傷ついてきている。
カメリアなどはスキルを使い果たしたのか、拳銃「ワン・オブ・サウザンド」で応戦を始めている状況だ。
それでも、残るは大トカゲ1体。これ以上の敵は現れないと踏み、ヴァルナは光の剣で粘り強く相手を攻め立てて。
「終わりです……!」
魔剣の一太刀で彼女は相手の頭部を両断する。顔面を上下にずらして消え去る最後のトカゲ雑魔。
リーリー、ガストに乗ったまま、深く息をついたヴァルナは纏っていた燐光を消していったのだった。
●
無事、トカゲ雑魔を殲滅できたハンター達。
恵はすぐさま、ご主人様の姿を確認する。
「おっつかれぇ!」
キャス・パリューグを抱き上げてくるくる回転する小夜。彼女はこちらを見つめる視線に気付いて。
「……って、こっちだけじゃなくてぇ! 恵も、ありがとぉ! がんばったよー!」
恵を抱きしめた小夜は、そのまま勢いで彼女の体も回転させていく。
その傍らでは、カメリアが庭師さんに掘らせた穴を再び埋めさせる。
「正式に堀を作るにせよ、適当にあけた穴は邪魔になるでしょうしね?」
「堀……か」
なるほどと頷くアルウェス。石壁を築くよりも比較的手早く作業は進むと判断した彼は早速、他のエルフやハンターらと話を始めていたようである。
「それにしても、単純ながら作戦めいた動きをする辺り、普通の雑魔とはちょっと違うような……」
誰かが入れ知恵をしている可能性が高いと、ヴァルナも考える。
そこで、一通り集落の状況を確認し終えたレオナが、占術で山の方角を占ってみる。
「やはり、いますね……」
その時、空を飛ぶ何かが山へと飛んでいくのが見えた。
常駐しているわけではないようだが、歪虚は確かにこの山を根城にしている。ハンター達はそれを確信したのだった。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/01/11 21:48:43 |
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相談卓 玉兎 小夜(ka6009) 人間(リアルブルー)|17才|女性|舞刀士(ソードダンサー) |
最終発言 2018/01/16 04:05:32 |