ゲスト
(ka0000)
蜘蛛の巣に囚われし
マスター:一要・香織

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 5~7人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/01/24 07:30
- 完成日
- 2018/01/29 02:19
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
南へと延びる街道を一台の馬車が進んでいた。
北に下った小さな町で雑貨屋を営む父親、そして母親と少年が一人。馬車にはその3人の人影があった。
これから大きな街まで仕入れに向かうのだ。
幌の無い馬車には暖かな日差しが降り注ぎ、柔らかい風が頬を撫でた。
町の外にめったに出られないリュカにとって、この仕入の道中は冒険の様なワクワクするひと時だった。
「あとどれくらいで着くの?」
リュカが馬の手綱を握る父親に尋ねると、
「目の前に林が見えるだろ? そこを抜けたら、見えてくるぞ」
振り返った父親は笑みを浮かべクシャリとリュカの頭を撫でた。
やがて馬車は林に入り、地面から飛び出る石でガタガタと車体が揺れる。
「わっ」
一際大きな石に乗り上げ車体が跳ねると、リュカが驚いた様に小さな悲鳴を漏らした。
「大丈夫か?」
心配した父親が馬を止めた。
「うん、ビックリしただけ……」
リュカは眉を寄せ心配そうに見る父親に、頷いて見せた。
蹄の音が止み林の中には静寂が広がる。
刹那、風もないのにガサガサと木々が揺れる音が辺りに響き、同時に目の前にいる父親の上に黒い影が落ちた。
「ん?」
リュカは不思議に思い、父親の後ろを覗き込み…………悲鳴を上げた。
「わあぁぁぁぁぁーーーーー」
目を見開き、引きつる顔に恐怖を浮かべ硬直したかと思うと、その体は一瞬にして上空に引き上げられた。
その奇怪な出来事に父親が振り返ると…………そこには大人よりも遥かに大きな蜘蛛が、高い木々の上に蜘蛛の巣を作り出し、リュカを捕えている。
吐き気がする程の気色悪い色に、鋭い目をギラギラ光らせ、巣に引き上げたリュカに向かい、更に糸を吐き出した。
「うぅ……」
リュカは苦し気に体を捩り何とか逃げ出そうとしているが、粘着性の糸はリュカが動く度にきつく巻き付いていった。
「リュカーー!」
母親が悲痛な叫びを上げると、蜘蛛の意識はリュカから母親へと向けられた。
「っひ……」
そのギラつく目に射られた母親が恐怖に後ずさると、今度は母親に向かい、蜘蛛は糸を飛ばした。
瞬く間に繭の様に糸に包まれた母親は、リュカの隣に並べられる。
「マ、マ……」
その白い塊を母親と認識したのか……リュカの口から母親を呼ぶ小さな声が零れた途端、リュカの意識は無くなった……。
茫然と成す術もなくその状況を眺めていた父親は、ハッとした様に馬の手綱をしならせた。
パチンッと背を叩くと、馬は勢いよく駆け出す。
「ちくしょう……必ず助けてやるからな!」
そう漏らし父親は後ろを振り返った。
「っ!!」
振り返って目にしたのは、繭の様な塊となった母親に、蜘蛛が噛みつく瞬間―――。
赤い液体が飛び散り繭は白から赤へと変わる……。
目を見開き、無念に歯を食い縛り、父親は更に馬の背を叩く。
グンッとスピードを上げた馬と並走するように何かが蠢く気配を感じるも、父親は林を抜け大きな街に着くまで馬の脚を止めることはなかった。
●ハンターオフィス
「助けてくれーーー」
ハンターオフィスに飛び込んだ父親は受付の女性に助けを求めた。
「どうしました? 落ち着いて話して下さい」
苦し気に呼吸をする父親の背を擦りながら受付の女性が促すと
「北にある林で、妻と息子が蜘蛛の雑魔に襲われた!」
そう口を開いた父親の唇は刻みに震えている……。
「妻は……殺されたが、息子は生きてるかもしれない! 助けてくれ!!」
その話声を聞いたハンター達が父親の元に集まりだした。
「息子さんが、捕まっているのね? 急がないと」
「雑魔は一匹か?」
ハンターの問いに、父親は首を振った。
「いや、多分他にもいる……一匹じゃない」
逃げる自分を追いかける様に蠢いていた気配を思い出し、父親は体を震わせた。
その姿に、ハンター達は顔を見合わせ頷いた。
「行こう!!」
北に下った小さな町で雑貨屋を営む父親、そして母親と少年が一人。馬車にはその3人の人影があった。
これから大きな街まで仕入れに向かうのだ。
幌の無い馬車には暖かな日差しが降り注ぎ、柔らかい風が頬を撫でた。
町の外にめったに出られないリュカにとって、この仕入の道中は冒険の様なワクワクするひと時だった。
「あとどれくらいで着くの?」
リュカが馬の手綱を握る父親に尋ねると、
「目の前に林が見えるだろ? そこを抜けたら、見えてくるぞ」
振り返った父親は笑みを浮かべクシャリとリュカの頭を撫でた。
やがて馬車は林に入り、地面から飛び出る石でガタガタと車体が揺れる。
「わっ」
一際大きな石に乗り上げ車体が跳ねると、リュカが驚いた様に小さな悲鳴を漏らした。
「大丈夫か?」
心配した父親が馬を止めた。
「うん、ビックリしただけ……」
リュカは眉を寄せ心配そうに見る父親に、頷いて見せた。
蹄の音が止み林の中には静寂が広がる。
刹那、風もないのにガサガサと木々が揺れる音が辺りに響き、同時に目の前にいる父親の上に黒い影が落ちた。
「ん?」
リュカは不思議に思い、父親の後ろを覗き込み…………悲鳴を上げた。
「わあぁぁぁぁぁーーーーー」
目を見開き、引きつる顔に恐怖を浮かべ硬直したかと思うと、その体は一瞬にして上空に引き上げられた。
その奇怪な出来事に父親が振り返ると…………そこには大人よりも遥かに大きな蜘蛛が、高い木々の上に蜘蛛の巣を作り出し、リュカを捕えている。
吐き気がする程の気色悪い色に、鋭い目をギラギラ光らせ、巣に引き上げたリュカに向かい、更に糸を吐き出した。
「うぅ……」
リュカは苦し気に体を捩り何とか逃げ出そうとしているが、粘着性の糸はリュカが動く度にきつく巻き付いていった。
「リュカーー!」
母親が悲痛な叫びを上げると、蜘蛛の意識はリュカから母親へと向けられた。
「っひ……」
そのギラつく目に射られた母親が恐怖に後ずさると、今度は母親に向かい、蜘蛛は糸を飛ばした。
瞬く間に繭の様に糸に包まれた母親は、リュカの隣に並べられる。
「マ、マ……」
その白い塊を母親と認識したのか……リュカの口から母親を呼ぶ小さな声が零れた途端、リュカの意識は無くなった……。
茫然と成す術もなくその状況を眺めていた父親は、ハッとした様に馬の手綱をしならせた。
パチンッと背を叩くと、馬は勢いよく駆け出す。
「ちくしょう……必ず助けてやるからな!」
そう漏らし父親は後ろを振り返った。
「っ!!」
振り返って目にしたのは、繭の様な塊となった母親に、蜘蛛が噛みつく瞬間―――。
赤い液体が飛び散り繭は白から赤へと変わる……。
目を見開き、無念に歯を食い縛り、父親は更に馬の背を叩く。
グンッとスピードを上げた馬と並走するように何かが蠢く気配を感じるも、父親は林を抜け大きな街に着くまで馬の脚を止めることはなかった。
●ハンターオフィス
「助けてくれーーー」
ハンターオフィスに飛び込んだ父親は受付の女性に助けを求めた。
「どうしました? 落ち着いて話して下さい」
苦し気に呼吸をする父親の背を擦りながら受付の女性が促すと
「北にある林で、妻と息子が蜘蛛の雑魔に襲われた!」
そう口を開いた父親の唇は刻みに震えている……。
「妻は……殺されたが、息子は生きてるかもしれない! 助けてくれ!!」
その話声を聞いたハンター達が父親の元に集まりだした。
「息子さんが、捕まっているのね? 急がないと」
「雑魔は一匹か?」
ハンターの問いに、父親は首を振った。
「いや、多分他にもいる……一匹じゃない」
逃げる自分を追いかける様に蠢いていた気配を思い出し、父親は体を震わせた。
その姿に、ハンター達は顔を見合わせ頷いた。
「行こう!!」
リプレイ本文
抜ける様な青空とは裏腹に、その林は背筋を這うような悪寒を感じさせる。
蜘蛛型雑魔の討伐に集まったハンター達は、その林の入り口で一様に顔を顰めた。
「私、蜘蛛はあまり得意ではないのだ……」
紅媛=アルザード(ka6122)は苦笑いを浮かべ、それでも強い眼差しで林の奥を見据えた。
「まだ巨大ゴキブリじゃなくてよかった……でも蜘蛛も厄介ですね……」
同調するように星空の幻(ka6980)が口を開く。
「行くニャスよ」
ミア(ka7035)の声にハンター達は頷き、駆け出した。
「まずは少年の救出が最優先だな」
走りながらレイア・アローネ(ka4082)が呟くと、
「ああ」
赤い頭巾をふわりと揺らし、ステラ・レッドキャップ(ka5434) が言葉短く応える。
重なり合った木々が時折暗い影を作り、日差しとのコントラストにハンターは目を細めた。
林の奥に進むにつれ、雑魔の気配は次第に濃くなる。
林に入った時から頭上を中心に周囲を警戒していたフィリテ・ノート(ka0810) は、辺りの音に耳を澄ませた。
しかし、聞こえてくるのは擦れあう葉の音……そしてハンターの足音と息遣いだけ……。
鳥のさえずりや、小動物の鳴き声は聞こえてこない。
雑魔という異質な存在が、この森に住み着く動物たちをも危険にさらしているのだ。
そう強く感じた鞍馬 真(ka5819)は、唇を噛み締め更に速く地面を蹴った。
林の中を真っ直ぐに延びる道を進むと、少し拓けたその場所に眉を顰めるモノを見た。
覗いた空を遮る様に、網目模様に張られた巣。
巣の隅には赤く色付く繭が浮かび、ポタポタと赤い雫を垂らしていた。
その反対側に体を糸で縛られ苦しげに顔を歪めたリュカが置かれていた。
「あそこだ」
真は視線の先を鋭く睨むと、巣を形成する糸を巻き付けている木に当たりをつけ、瞬脚と壁歩きを使い一気に木を駆け上がった。
同時に地上のハンター達は各々武器を掲げ辺りに意識を集中させる。
駆け上がった真が太い枝の上に立った瞬間、向かいの木から禍々しい色の巨大な蜘蛛が姿を現した。
蜘蛛が音もなく巣の上に立つと、その振動でリュカと母親の身体が小さく揺れる。
真はリュカを視線の端に納めながら、蜘蛛を鋭く見据え、自身もゆっくりと糸に足を乗せた。
蜘蛛は縦の糸に沿いながら真を目掛け、その長い足を動かし始めた。
刹那、レイアが蜘蛛の側の木に衝撃波を放って巣を揺らし、蜘蛛の意識をこちらに向けさせる。
「あなたの相手は私たちよ」
同時にフィリテは直線上にリュカの姿が無いかを確認し、集中で高めた魔力でアイスボルトを唱える。
蜘蛛の足元にはキラキラと光る氷が張り付き、その足を僅かに止めた。
間髪入れずミアの気功波が蜘蛛に衝撃を与える。
身体を震わせた蜘蛛は地上のハンター達へと意識を向けた。
目標を確認した蜘蛛は糸を吐き出そうと向きを変え、足を大きく広げて体を僅かに低くした。
白い影がハンターの視界を横切り、それ自体が武器であるかのように、糸は地面に鋭く刺さった。
次の瞬間、樹上の真が勢いよく蜘蛛を蹴り飛ばし、弾き飛ばされるように蜘蛛は巣から転げ落ちる。
「ふっ、こっちだぜ」
この瞬間を待ってましたとばかりに、ステラは着地した蜘蛛に向かい、重撃弾を装填したライフルを構えた。
空気を震わす大きな音をさせ弾丸が飛び出すと、蜘蛛の周囲に着弾しその動きを封じる。
直後、
「みんな、見て!」
グラムの悲鳴にも似た声が響き、皆が視線を向けると……喧騒を聞き集まって来たのか、新たな蜘蛛が二体現れた。
地面を這う様に蠢く蜘蛛は威嚇する様にカチカチと顎を鳴らす。
「お出ましだな」
レイアが静かに呟くと、魔剣を掲げ攻めの構えで一体に向かい踏み込んだ。
「これ以上の悲劇は広げさせない!」」
それを援護するように、紅媛が円舞のステップを踏み後を追う。
蜘蛛は自分の間合いにレイアが入ったことを確認すると太く長い足を持ち上げ、一気に踏みつぶそうと素早く足を振り降ろす。
レイアはその丸太の様な足を剣で流し避けると、魔剣を翻し、渾身の一撃をお見舞いした。
斬撃は蜘蛛の胴体に大きな傷を生み出した。
間髪空けず、紅媛の疾風剣がレイアの作った傷痕を上書きする。
一方、グラムの悲鳴を聞いたフィリテはウォーターシュートを唱えた。
鉄球の如く重たい塊となった水が、蜘蛛を目掛けて飛び、その体を吹き飛ばした。
「メキッ」
蜘蛛の身体は近くの木にめり込み、幹に大きな亀裂を生みだす。
「ホント、気持ち悪いんだから、急に現れないでよね」
怒気を露わにし、フィリテが怒鳴ると、冷たい空気を纏ったグラムがチェイサーを構えた。
蜘蛛には向けず、蜘蛛から少し離れた地面に転がる岩を目掛けて発砲すると、弾丸は岩に弾かれて軌道を変え、蜘蛛の腹に命中した。
瞬間、纏った冷気によって蜘蛛の動きが止まる。
真は着地の衝撃さえ与えぬ様にケープに包まれたリュカを優しく抱えながら、巣から飛び降りた。
周囲を警戒する仲間の元に歩み寄ると、その小さな体を地面に横たえる。
「リュカ君は無事だ。だけど、母親は……」
真は苦々しく言葉を飲んだ。
「ああ、俺も一目見たとき、直感でそう思った」
ステラも苦虫を噛み潰したような表情で相槌を打つ。
二人の会話を聞いていたミアが、その重い雰囲気を一蹴するように大きな声を上げる。
「現実の悪夢はすぐに終わらせるニャスよ」
そう言って不敵に笑みを浮かべた。
レイアと紅媛は蜘蛛から大きく間合いを取っていた。
蜘蛛は足を素早く踏み鳴らし、毛を逆立てるように小刻みに震えている。
再び間合いに踏み込もうと、レイアが姿勢を低くした、刹那、蜘蛛が方向を変え尻を持ち上げた。
矢の様に勢いよく放たれた糸が、少し先の蜘蛛と対峙しているフィリテの身体に巻き付いた。
明後日の方法からの攻撃に対応できなかったフィリテはバランスを崩す。
「マズイ」
「危ない」
レイアと紅媛が同時に声を上げると、紅媛は糸を吐き出す蜘蛛の間合いに飛び込み、一撃を与えようと大太刀を振りあげた。だが同時に蜘蛛も足を振り上げ、太刀と足が十文字に交差する。
押し切ろうと力を込めるものの蜘蛛の脚が素早く振られ、紅媛を掠めた。
レイアはフィリテと蜘蛛を繋ぐ糸を斬ろうと駆け出した。
しかし、そのタイミングを待ちわびた様に、蜘蛛は足を踏ん張り尻を大きく振る。
その勢いは糸を伝い、フィリテの身体は宙に投げだされた。
「わっわっ!」
フィリテは慌てた声を上げるが身体は拘束されて身動きが出来ない。
地面に叩き付けられそうな状態に、レイアが息を飲んだ瞬間、再び蜘蛛が尻を振り、フィリテの身体はレイアに向かって飛んだ。
「っ!!」
驚きながらも、その体を受け止めたレイアは勢いで木に叩き付けられた。
「レイア!」
息を飲んだ紅媛の高い声が響く。
「くっ……」
レイアは衝撃に歯を食い縛り、すぐさまフィリテの身体に巻き付く糸を断ち切った。
「ありがとう、レイア」
お礼を言うも、フィリテは既に蜘蛛を睨み付けている。
「ああ、こちらは問題ない」
レイアの無事が分かるとすぐさま、
「凍てつく氷の刃よ飛べ。アイスボルトーーー!」
フィリテの凛とした声が辺りに響いた。
氷の矢は空中でキラリと輝くと蜘蛛を貫き、その身体を瞬時に凍らせる。
直後、紅媛が横一閃に薙いだ次元斬の斬撃が、寸分のずれもなく蜘蛛を両断した。
ビクッと大きく身体を跳ねさせた蜘蛛は末端からボロボロと崩れ出し塵となって消えた。
フィリテの身体が傾いたかと思うと、その身体は吸い寄せられるように少し先で足を踏み鳴らしていた蜘蛛の方へ飛んで行く。
蜘蛛の連携の様な行動に眉を寄せ、真がグラムの隣に立ち並んだ。
「悲しみは絶対に絶ってみせる……」
グラムが自分に言い聞かせる様に呟くと、それに合わせて瞳が赤く点滅した。
その赤く漏れた光を合図にする様に、真が蜘蛛の横の木を目掛け駆け出した。
地面を強く蹴り跳躍すると木の幹に足を掛け、今度は幹を蹴る。
身体は宙を舞い、黒く長い髪の毛がフワリとなびく。
刹那、身体を捻ると手の中のカオスウィースを振り上げた。
同時にグラムは威嚇射撃で蜘蛛の行動を阻害する。
怒った様にたたらを踏んだ蜘蛛の脚が、次の瞬間、真によって根元から斬り落とされた。
グラムは威嚇射撃後、続け様引き金を引く。
またしても銃口は蜘蛛から逸らし、飛び出した弾丸は数回軌道を変え蜘蛛の黒曜の目に着弾し茶色い液体を飛び散らせた。
蜘蛛は身体を急激に縮め、体中を強張らせたかと思うと、今度は解放するように一気に足を伸ばした。
予想外の行動に、目を見開いた真の腹部に、鋭い蹴りが直撃し、真の身体は後方へと飛ばされる。
グラムも驚いたように目を見張ったが、瞬時にチェイサーを掲げ冷気を纏った弾丸を放った。
「この程度、リュカ君の痛みに比べたら……」
着地後、真はそう呟くと直ぐに瞬脚を使って間合いを詰め、跳躍して渾身の一撃を蜘蛛の腹に叩き込んだ。
蜘蛛は仰け反り動きを止めると、身体は塵に変わり風に攫われ消えて行った。
護る様にリュカの前に立ったミアは、強く地面を踏みしめた。
「ミアも蜘蛛が嫌いか?」
揶揄う様に呟くステラに、ミアは改めてまじまじと巨大蜘蛛を見つめる。
「そうでもないニャスが、こんなに大きいと迫力はあるニャスな」
身体を覆う毛の様なふわふわした体毛にリアルな顎、目。
こうも異常な大きさでは、普通の蜘蛛とは比べるべくもない。
「違いねぇ。なら、さっさと片付けようぜ」
口元に笑みを浮かべ赤い頭巾から覗く金の髪をサラリと揺らし、ステラはヴァールハイトを掲げた。
ステラの愛銃は爆発音を響かせると弾丸を繰り出す。
蜘蛛の周りを囲む様に着弾し、移動を阻害すると、ミアはその隙を見逃さずジャマダハルを蜘蛛の脚に突き刺した。
関節部分に突き刺さったジャマダハルは、ミアが引っ張っても抜けない。
「やばいニャス……」
ポツリ、そう漏らした刹那、蜘蛛がその足に刺さった物を振り払う様に振り回し、ジャマダハルを握り締めたミアまでもが飛ばされた。
遠心力も相まって、ミアの身体が宙に浮かんだ時、ジャマダハルは蜘蛛から抜けた。
しかし、投げ出されたミアの身体は樹上に形成されていた巣に直撃し、網目模様の巣が大きな波の様に揺れる。
その揺れで、赤く染まった繭が転がった……。
「ったく、人間は嫌になるぜ……」
無意味な事と知りながら、せめて綺麗な状態で家族に帰したい。
その思いがステラを突き動かし、駆け出したステラは母親が地面に落下する前にその繭を受け止めた。
ハンターとは言え、小柄なステラにはなかなかの衝撃だ……。
「ステラお姉ちゃん! 大丈夫?」
周囲の状況に気を配っていたグラムの心配そうな声が響いた。
眉を顰めて立ち上がるステラと同時にミアが樹上から飛び降りた。
「怒ったニャスよ」
ミアは目を細めて鋭く蜘蛛を睨むと、蜘蛛の意識を錯乱させるようにジグザグに跳躍し間を詰める。
ステラは再び威嚇射撃を放ち、蜘蛛の行動を抑制した。
ミアは一際高く飛び上がりクルリと身体を回転させると落下の勢いに任せて、でっぷりと膨れた腹に研ぎ澄まされた鋭い一撃を叩き込んだ。
雑魔は一瞬にして塵に変わり、ミアが着地した風圧で散り散りになった。
戦闘の終わったハンター達は、新たな雑魔がいないか辺りを探索し終えると、リュカと母親を抱え上げ、林を後にした。
心配した父親の姿が林の入り口にあった。
数歩歩いては向きを変え、また数歩歩き、両手をもみ合わせる。
ハンターの姿を見つけると駆け寄り、息を飲んだ。
「リュカ君は無事だ」
紅媛が優しく声を掛けると、父親は安堵の息を吐いた。
ステラが抱えていたリュカを渡すと、父親は小さな笑みを見せた。
リュカは糸から解放され穏やかな顔で眠っている。
しかし、
「つ、妻は……」
そう、苦し気に尋ねた。
真は抱きかかえていた赤く染まった繭を、父親の足元に置いた。
「既に……」
それだけ呟き、真は瞳を伏せた。
「いえ、……本当に、ありがとうございます」
父親は唇をわなわなと震わせ、静かに涙を流した。
「お母さんを助けられなくて、私たちも……」
フィリテの震えた声は、言葉よりも遥かにハンター達の気持ちを伝えた。
「大切な人を失うことがどんなに辛いか、私たちも知っている」
真が励ますように父親を見つめ言葉を掛けると、引き継ぐようにグラムも口を開いた。
「だから、辛い思いをする人が一人でも減る様に、私たちは戦い続けるの」
これはハンターの意思だ、とそう強く感じさせる言葉に父親は頭を下げた。
「ありがとうございます」
林の中からは、先程まで聞こえなかった鳥のさえずりが聞こえてくる。
それはまるで励ます様に、悲しむ様に、悼む様に、そして、前を見据え歩き出せと叱責する様に、涙を流す父親の耳に届いた。
「街に戻って、……息子が起きたら全部話します」
涙を拭った父親の瞳には力強い光が宿っていた。
「大丈夫なの?」
グラムが心配そうに尋ねると、
「リュカは強い子です。すぐには無理かもしれませんが、母親の死を受け入れ、きっと……母親の分まで生きてくれます」
そう答えた父親は、優しく愛に溢れた眼差しでリュカを包んだ。
「リュカちゃん……お母さんとの、家族の想い出はなくならないニャス。忘れないでね、ニャス」
ミアはそう言うとリュカの頭を優しく撫でた。
父親は馬車にリュカと母親を乗せ、夕日の中を進み始めた。
茜色に染まる父親の背を見据えながら、ハンター達は更なる悲しみが生み出されぬ為に戦い続けようと、誓ったのだった。
蜘蛛型雑魔の討伐に集まったハンター達は、その林の入り口で一様に顔を顰めた。
「私、蜘蛛はあまり得意ではないのだ……」
紅媛=アルザード(ka6122)は苦笑いを浮かべ、それでも強い眼差しで林の奥を見据えた。
「まだ巨大ゴキブリじゃなくてよかった……でも蜘蛛も厄介ですね……」
同調するように星空の幻(ka6980)が口を開く。
「行くニャスよ」
ミア(ka7035)の声にハンター達は頷き、駆け出した。
「まずは少年の救出が最優先だな」
走りながらレイア・アローネ(ka4082)が呟くと、
「ああ」
赤い頭巾をふわりと揺らし、ステラ・レッドキャップ(ka5434) が言葉短く応える。
重なり合った木々が時折暗い影を作り、日差しとのコントラストにハンターは目を細めた。
林の奥に進むにつれ、雑魔の気配は次第に濃くなる。
林に入った時から頭上を中心に周囲を警戒していたフィリテ・ノート(ka0810) は、辺りの音に耳を澄ませた。
しかし、聞こえてくるのは擦れあう葉の音……そしてハンターの足音と息遣いだけ……。
鳥のさえずりや、小動物の鳴き声は聞こえてこない。
雑魔という異質な存在が、この森に住み着く動物たちをも危険にさらしているのだ。
そう強く感じた鞍馬 真(ka5819)は、唇を噛み締め更に速く地面を蹴った。
林の中を真っ直ぐに延びる道を進むと、少し拓けたその場所に眉を顰めるモノを見た。
覗いた空を遮る様に、網目模様に張られた巣。
巣の隅には赤く色付く繭が浮かび、ポタポタと赤い雫を垂らしていた。
その反対側に体を糸で縛られ苦しげに顔を歪めたリュカが置かれていた。
「あそこだ」
真は視線の先を鋭く睨むと、巣を形成する糸を巻き付けている木に当たりをつけ、瞬脚と壁歩きを使い一気に木を駆け上がった。
同時に地上のハンター達は各々武器を掲げ辺りに意識を集中させる。
駆け上がった真が太い枝の上に立った瞬間、向かいの木から禍々しい色の巨大な蜘蛛が姿を現した。
蜘蛛が音もなく巣の上に立つと、その振動でリュカと母親の身体が小さく揺れる。
真はリュカを視線の端に納めながら、蜘蛛を鋭く見据え、自身もゆっくりと糸に足を乗せた。
蜘蛛は縦の糸に沿いながら真を目掛け、その長い足を動かし始めた。
刹那、レイアが蜘蛛の側の木に衝撃波を放って巣を揺らし、蜘蛛の意識をこちらに向けさせる。
「あなたの相手は私たちよ」
同時にフィリテは直線上にリュカの姿が無いかを確認し、集中で高めた魔力でアイスボルトを唱える。
蜘蛛の足元にはキラキラと光る氷が張り付き、その足を僅かに止めた。
間髪入れずミアの気功波が蜘蛛に衝撃を与える。
身体を震わせた蜘蛛は地上のハンター達へと意識を向けた。
目標を確認した蜘蛛は糸を吐き出そうと向きを変え、足を大きく広げて体を僅かに低くした。
白い影がハンターの視界を横切り、それ自体が武器であるかのように、糸は地面に鋭く刺さった。
次の瞬間、樹上の真が勢いよく蜘蛛を蹴り飛ばし、弾き飛ばされるように蜘蛛は巣から転げ落ちる。
「ふっ、こっちだぜ」
この瞬間を待ってましたとばかりに、ステラは着地した蜘蛛に向かい、重撃弾を装填したライフルを構えた。
空気を震わす大きな音をさせ弾丸が飛び出すと、蜘蛛の周囲に着弾しその動きを封じる。
直後、
「みんな、見て!」
グラムの悲鳴にも似た声が響き、皆が視線を向けると……喧騒を聞き集まって来たのか、新たな蜘蛛が二体現れた。
地面を這う様に蠢く蜘蛛は威嚇する様にカチカチと顎を鳴らす。
「お出ましだな」
レイアが静かに呟くと、魔剣を掲げ攻めの構えで一体に向かい踏み込んだ。
「これ以上の悲劇は広げさせない!」」
それを援護するように、紅媛が円舞のステップを踏み後を追う。
蜘蛛は自分の間合いにレイアが入ったことを確認すると太く長い足を持ち上げ、一気に踏みつぶそうと素早く足を振り降ろす。
レイアはその丸太の様な足を剣で流し避けると、魔剣を翻し、渾身の一撃をお見舞いした。
斬撃は蜘蛛の胴体に大きな傷を生み出した。
間髪空けず、紅媛の疾風剣がレイアの作った傷痕を上書きする。
一方、グラムの悲鳴を聞いたフィリテはウォーターシュートを唱えた。
鉄球の如く重たい塊となった水が、蜘蛛を目掛けて飛び、その体を吹き飛ばした。
「メキッ」
蜘蛛の身体は近くの木にめり込み、幹に大きな亀裂を生みだす。
「ホント、気持ち悪いんだから、急に現れないでよね」
怒気を露わにし、フィリテが怒鳴ると、冷たい空気を纏ったグラムがチェイサーを構えた。
蜘蛛には向けず、蜘蛛から少し離れた地面に転がる岩を目掛けて発砲すると、弾丸は岩に弾かれて軌道を変え、蜘蛛の腹に命中した。
瞬間、纏った冷気によって蜘蛛の動きが止まる。
真は着地の衝撃さえ与えぬ様にケープに包まれたリュカを優しく抱えながら、巣から飛び降りた。
周囲を警戒する仲間の元に歩み寄ると、その小さな体を地面に横たえる。
「リュカ君は無事だ。だけど、母親は……」
真は苦々しく言葉を飲んだ。
「ああ、俺も一目見たとき、直感でそう思った」
ステラも苦虫を噛み潰したような表情で相槌を打つ。
二人の会話を聞いていたミアが、その重い雰囲気を一蹴するように大きな声を上げる。
「現実の悪夢はすぐに終わらせるニャスよ」
そう言って不敵に笑みを浮かべた。
レイアと紅媛は蜘蛛から大きく間合いを取っていた。
蜘蛛は足を素早く踏み鳴らし、毛を逆立てるように小刻みに震えている。
再び間合いに踏み込もうと、レイアが姿勢を低くした、刹那、蜘蛛が方向を変え尻を持ち上げた。
矢の様に勢いよく放たれた糸が、少し先の蜘蛛と対峙しているフィリテの身体に巻き付いた。
明後日の方法からの攻撃に対応できなかったフィリテはバランスを崩す。
「マズイ」
「危ない」
レイアと紅媛が同時に声を上げると、紅媛は糸を吐き出す蜘蛛の間合いに飛び込み、一撃を与えようと大太刀を振りあげた。だが同時に蜘蛛も足を振り上げ、太刀と足が十文字に交差する。
押し切ろうと力を込めるものの蜘蛛の脚が素早く振られ、紅媛を掠めた。
レイアはフィリテと蜘蛛を繋ぐ糸を斬ろうと駆け出した。
しかし、そのタイミングを待ちわびた様に、蜘蛛は足を踏ん張り尻を大きく振る。
その勢いは糸を伝い、フィリテの身体は宙に投げだされた。
「わっわっ!」
フィリテは慌てた声を上げるが身体は拘束されて身動きが出来ない。
地面に叩き付けられそうな状態に、レイアが息を飲んだ瞬間、再び蜘蛛が尻を振り、フィリテの身体はレイアに向かって飛んだ。
「っ!!」
驚きながらも、その体を受け止めたレイアは勢いで木に叩き付けられた。
「レイア!」
息を飲んだ紅媛の高い声が響く。
「くっ……」
レイアは衝撃に歯を食い縛り、すぐさまフィリテの身体に巻き付く糸を断ち切った。
「ありがとう、レイア」
お礼を言うも、フィリテは既に蜘蛛を睨み付けている。
「ああ、こちらは問題ない」
レイアの無事が分かるとすぐさま、
「凍てつく氷の刃よ飛べ。アイスボルトーーー!」
フィリテの凛とした声が辺りに響いた。
氷の矢は空中でキラリと輝くと蜘蛛を貫き、その身体を瞬時に凍らせる。
直後、紅媛が横一閃に薙いだ次元斬の斬撃が、寸分のずれもなく蜘蛛を両断した。
ビクッと大きく身体を跳ねさせた蜘蛛は末端からボロボロと崩れ出し塵となって消えた。
フィリテの身体が傾いたかと思うと、その身体は吸い寄せられるように少し先で足を踏み鳴らしていた蜘蛛の方へ飛んで行く。
蜘蛛の連携の様な行動に眉を寄せ、真がグラムの隣に立ち並んだ。
「悲しみは絶対に絶ってみせる……」
グラムが自分に言い聞かせる様に呟くと、それに合わせて瞳が赤く点滅した。
その赤く漏れた光を合図にする様に、真が蜘蛛の横の木を目掛け駆け出した。
地面を強く蹴り跳躍すると木の幹に足を掛け、今度は幹を蹴る。
身体は宙を舞い、黒く長い髪の毛がフワリとなびく。
刹那、身体を捻ると手の中のカオスウィースを振り上げた。
同時にグラムは威嚇射撃で蜘蛛の行動を阻害する。
怒った様にたたらを踏んだ蜘蛛の脚が、次の瞬間、真によって根元から斬り落とされた。
グラムは威嚇射撃後、続け様引き金を引く。
またしても銃口は蜘蛛から逸らし、飛び出した弾丸は数回軌道を変え蜘蛛の黒曜の目に着弾し茶色い液体を飛び散らせた。
蜘蛛は身体を急激に縮め、体中を強張らせたかと思うと、今度は解放するように一気に足を伸ばした。
予想外の行動に、目を見開いた真の腹部に、鋭い蹴りが直撃し、真の身体は後方へと飛ばされる。
グラムも驚いたように目を見張ったが、瞬時にチェイサーを掲げ冷気を纏った弾丸を放った。
「この程度、リュカ君の痛みに比べたら……」
着地後、真はそう呟くと直ぐに瞬脚を使って間合いを詰め、跳躍して渾身の一撃を蜘蛛の腹に叩き込んだ。
蜘蛛は仰け反り動きを止めると、身体は塵に変わり風に攫われ消えて行った。
護る様にリュカの前に立ったミアは、強く地面を踏みしめた。
「ミアも蜘蛛が嫌いか?」
揶揄う様に呟くステラに、ミアは改めてまじまじと巨大蜘蛛を見つめる。
「そうでもないニャスが、こんなに大きいと迫力はあるニャスな」
身体を覆う毛の様なふわふわした体毛にリアルな顎、目。
こうも異常な大きさでは、普通の蜘蛛とは比べるべくもない。
「違いねぇ。なら、さっさと片付けようぜ」
口元に笑みを浮かべ赤い頭巾から覗く金の髪をサラリと揺らし、ステラはヴァールハイトを掲げた。
ステラの愛銃は爆発音を響かせると弾丸を繰り出す。
蜘蛛の周りを囲む様に着弾し、移動を阻害すると、ミアはその隙を見逃さずジャマダハルを蜘蛛の脚に突き刺した。
関節部分に突き刺さったジャマダハルは、ミアが引っ張っても抜けない。
「やばいニャス……」
ポツリ、そう漏らした刹那、蜘蛛がその足に刺さった物を振り払う様に振り回し、ジャマダハルを握り締めたミアまでもが飛ばされた。
遠心力も相まって、ミアの身体が宙に浮かんだ時、ジャマダハルは蜘蛛から抜けた。
しかし、投げ出されたミアの身体は樹上に形成されていた巣に直撃し、網目模様の巣が大きな波の様に揺れる。
その揺れで、赤く染まった繭が転がった……。
「ったく、人間は嫌になるぜ……」
無意味な事と知りながら、せめて綺麗な状態で家族に帰したい。
その思いがステラを突き動かし、駆け出したステラは母親が地面に落下する前にその繭を受け止めた。
ハンターとは言え、小柄なステラにはなかなかの衝撃だ……。
「ステラお姉ちゃん! 大丈夫?」
周囲の状況に気を配っていたグラムの心配そうな声が響いた。
眉を顰めて立ち上がるステラと同時にミアが樹上から飛び降りた。
「怒ったニャスよ」
ミアは目を細めて鋭く蜘蛛を睨むと、蜘蛛の意識を錯乱させるようにジグザグに跳躍し間を詰める。
ステラは再び威嚇射撃を放ち、蜘蛛の行動を抑制した。
ミアは一際高く飛び上がりクルリと身体を回転させると落下の勢いに任せて、でっぷりと膨れた腹に研ぎ澄まされた鋭い一撃を叩き込んだ。
雑魔は一瞬にして塵に変わり、ミアが着地した風圧で散り散りになった。
戦闘の終わったハンター達は、新たな雑魔がいないか辺りを探索し終えると、リュカと母親を抱え上げ、林を後にした。
心配した父親の姿が林の入り口にあった。
数歩歩いては向きを変え、また数歩歩き、両手をもみ合わせる。
ハンターの姿を見つけると駆け寄り、息を飲んだ。
「リュカ君は無事だ」
紅媛が優しく声を掛けると、父親は安堵の息を吐いた。
ステラが抱えていたリュカを渡すと、父親は小さな笑みを見せた。
リュカは糸から解放され穏やかな顔で眠っている。
しかし、
「つ、妻は……」
そう、苦し気に尋ねた。
真は抱きかかえていた赤く染まった繭を、父親の足元に置いた。
「既に……」
それだけ呟き、真は瞳を伏せた。
「いえ、……本当に、ありがとうございます」
父親は唇をわなわなと震わせ、静かに涙を流した。
「お母さんを助けられなくて、私たちも……」
フィリテの震えた声は、言葉よりも遥かにハンター達の気持ちを伝えた。
「大切な人を失うことがどんなに辛いか、私たちも知っている」
真が励ますように父親を見つめ言葉を掛けると、引き継ぐようにグラムも口を開いた。
「だから、辛い思いをする人が一人でも減る様に、私たちは戦い続けるの」
これはハンターの意思だ、とそう強く感じさせる言葉に父親は頭を下げた。
「ありがとうございます」
林の中からは、先程まで聞こえなかった鳥のさえずりが聞こえてくる。
それはまるで励ます様に、悲しむ様に、悼む様に、そして、前を見据え歩き出せと叱責する様に、涙を流す父親の耳に届いた。
「街に戻って、……息子が起きたら全部話します」
涙を拭った父親の瞳には力強い光が宿っていた。
「大丈夫なの?」
グラムが心配そうに尋ねると、
「リュカは強い子です。すぐには無理かもしれませんが、母親の死を受け入れ、きっと……母親の分まで生きてくれます」
そう答えた父親は、優しく愛に溢れた眼差しでリュカを包んだ。
「リュカちゃん……お母さんとの、家族の想い出はなくならないニャス。忘れないでね、ニャス」
ミアはそう言うとリュカの頭を優しく撫でた。
父親は馬車にリュカと母親を乗せ、夕日の中を進み始めた。
茜色に染まる父親の背を見据えながら、ハンター達は更なる悲しみが生み出されぬ為に戦い続けようと、誓ったのだった。
依頼結果
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作戦会議 星空の幻(ka6980) オートマトン|11才|女性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2018/01/24 00:22:25 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/01/22 23:52:35 |