ゲスト
(ka0000)
【反影】ターミネイトマシンワールド
マスター:真太郎

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/01/25 12:00
- 完成日
- 2018/01/31 16:47
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
『グラウンド・ゼロ』に幾つも点在する黒いドーム状の『虚無』。
その一つに符術士のハマーを隊長とした4人のハンターが探索のため足を踏み入れる。
入った途端、目についたのは瓦礫。
そこは何らかの戦闘で破壊された跡が無数に残る廃墟の町だった。
「ここは、いったい……?」
ハマーが困惑気味に周囲を見渡す。
「ずいぶんと荒廃した世界っすね」
魔導アーマー「プラヴァー」に乗ってきた猟撃士のアズマが率直な感想を述べる。
「だが人工物があるなら文明を持った人がいるはずだ。まずは人を探そう」
ハマーが指示を出した時、どこからか『タタタン』という炸裂音が響いてきた。
「銃声っすね。どうやら何かが戦闘中らしい。行こうぜ隊長」
アズマは音が聞こえてきた方角に当たりを付けたらしく、プラヴァーをそちらに向けて走り出した。
「おいアズマ! 勝手に先行するな!」
ハマーが制止したがアズマは止まらなかった。
「仕方ない、俺達も行くぞ」
ハマー達もアズマを追って走り出す。
先行するアズマの目に比較的損傷の少ない建物が見えてくる。
その建物の前では塹壕と土嚢で作られた防衛陣地があり、20人程の兵士らしき人が重火器や軽火器を放っていた。
「隊長。兵士がいます、一体何と戦ってんだ?」
兵士達の放つ火線へ目を向けると、建物へ侵攻する機械群が見えた。
「なんだありゃあ……」
最も数が多いのは2m程の大きさで、蜘蛛のような平たい形状の多脚型の機械。
虫型以外にも全長は3.5m程の人型の機械もいる。
機械群の後方には5m近い大きさの砲塔が見えた。
いや、それはただの砲塔ではない。
多脚を蠢かせて動く自走式多脚砲台だった。
その砲身が火を吹き、不気味な飛来音がどんどん近づいてくる。
「伏せろー!」
兵士の誰かが叫んだ直後、陣地に着弾して炸裂。
悲鳴が上がり、血肉が飛び散った。
「来てくれメディック!」
「タカシをミンチにしやがってコンチクショー!」
兵士達が猛然と反撃を行う。
「やりやがったなぁー!!」
アズマもプラヴァーを駆って戦場に飛び込むと虫型の1体にマシンガンを撃ち放つ。
「アズマ! 勝手に戦闘を始めるな! ここがどういう世界か分かってないんだぞ!」
ハマーがトランシーバーでアズマに怒鳴る。
『人が殺されてるのをむざむざ見てられないっすよ! 敵はどうせ狂気に寄生された機械っす。殺っちまいましょう!』
プラヴァーが倒した虫型の機械は歪虚の死に様と同じように黒い塵となって霧散した。
アズマの言うとおり機械群が歪虚である事は間違いないようだ。
「仕方ない……。アズマと兵士を援護するぞ」
ハマーはプラヴァーに『加護符』を施すため符を抜いた。
しかし術が発動しない。
「何故だ?」
もう一度試してみたが、やはり符は何の反応も示さない。
それに覚醒しても体の動きが妙に鈍い。
「私もユグディラも魔法が使えないわ」
他の仲間やユグディラもスキルが使えないらしい。
しかしアズマのプラヴァーは普通に戦えているように見える。
「どういう事なんだ……」
しかし考えても分かるはずもない。
「アズマ、俺達は兵士と合流して話を聞いてみる。援護してくれ」
『了解っす』
3人はアズマが弾幕を張ってくれている間に兵士達の陣地に飛び込んだ。
「援軍か? 助かる。俺は第13陣地司令のタカ。君らはどこの所属だ?」
「ハンターズソサイエティのハンターだ」
ハマーが迎えてくれた司令のタカに答える。
「ハンターズソサイティ? 知らないな、特殊部隊か?」
(どうやらここはクリムゾンウェストではないらしいな)
ハマーは怪しまれないように言葉を選びながらタカ司令から話を聞いた。
そうして分かった事は。
突如として現れた謎の生命体が機械に寄生して人類を襲い始めた。
人類は抵抗したが、機械兵器が次々と敵に奪われてしまうため常に劣勢で、どんどんと追い込まれてしまっている。
この世界の人間はスキルを使えないどころかマテリアルの事も知らない。
要約するとこの3つだった。
(結局スキルが使えない理由は分からなかった。スキルが使えないのでは俺達の力は半減以下だ。どうする……?)
ハマーが悩んでいるとアズマから通信が入った。
『隊長。ここは俺が抑えとくんで、CAMか魔導アーマー使える援軍連れてきて下さい』
「しかしお前一人では」
『ぶっちゃけ。スキル使えない隊長達がいても足手まといっす』
「くっ……」
正論を言われて二の句もつけない。
「……分かった。すぐに戻ってくるから耐えててくれ」
『俺の実力は知ってるっしょ。俺なら1人でも1ヶ月は持ちこたえられるっすよ』
アズマは大仰に言って通信を切った。
「司令、更に援軍を連れてきますので耐えてて下さい」
「援軍の当てがあるのか? ならばすぐにでも頼む」
ハマー達はこの世界に最初に現れた場所へ向かう。
そこを通過すると何事もなく元の世界へ戻れた。
ハマーは直ちにハンターオフィスへ急行した。
「大至急ハンターを揃えてくれ! スキルが使えない場所だ。CAMか魔導アーマーが必須だ!!」
ハマーもプラヴァーに乗ると集まったハンターと共に虚無に戻ってくる。
半日近い時が経っていたため既に日は落ちており、周囲は真っ暗だ。
なのに虚無入ると、急に周囲が明るくなった。
「なっ!?」
見上げると太陽がまだ昼前の位置にある。
「何故だ……」
「ずいぶんと荒廃した世界っすね」
不意に横からアズマの声が聞こえてきた。
見るとプラヴァーに乗ったアズマがいる。
「アズマ! 無事だったか」
「え? あぁ、無事に入れたっすね」
「入れた?」
「あれ? 隊長いつの間にプラヴァーに乗ってきたんすか?」
「いつの間にって……急いで戻って乗ってきたんだが」
「え!? 急いで戻ったってこんな一瞬で取ってこれっこないっすよ…‥って、あれ? 何で他の連中も乗ってんですか?」
「お前何を言って……」
ハマーがアズマとの噛み合わない会話を不審に思っていると『タタタン』という炸裂音が響いてきた。
「銃声っすね。どうやら何かが戦闘中らしい。行こうぜ隊長」
「待てアズマ!」
制止したが止まらないアズマを追うと、兵士達の陣地が見えてくる。
「隊長。兵士がいます、一体何と戦ってんだ? って、なんだありゃあ……」
(これは……)
その光景にハマーの中で違和感と既視感がどんどんと膨らんでゆく。
不意に不気味な飛来音がどんどん近づいてきた。
「伏せろー!」
兵士の誰かが叫んだ直後、陣地に着弾して炸裂。
悲鳴が上がり、血肉が飛び散った。
「来てくれメディック!」
「タカシをミンチにしやがってコンチクショー!」
兵士達が猛然と反撃を行う。
「やりやがったなぁー!!」
アズマもプラヴァーを駆って戦場に飛び込むと虫型の1体にマシンガンを撃ち放つ。
(同じ光景だ……)
ハマーは異常な既視感で頭がどうにかなりそうだった。
「何なのだここは……」
その一つに符術士のハマーを隊長とした4人のハンターが探索のため足を踏み入れる。
入った途端、目についたのは瓦礫。
そこは何らかの戦闘で破壊された跡が無数に残る廃墟の町だった。
「ここは、いったい……?」
ハマーが困惑気味に周囲を見渡す。
「ずいぶんと荒廃した世界っすね」
魔導アーマー「プラヴァー」に乗ってきた猟撃士のアズマが率直な感想を述べる。
「だが人工物があるなら文明を持った人がいるはずだ。まずは人を探そう」
ハマーが指示を出した時、どこからか『タタタン』という炸裂音が響いてきた。
「銃声っすね。どうやら何かが戦闘中らしい。行こうぜ隊長」
アズマは音が聞こえてきた方角に当たりを付けたらしく、プラヴァーをそちらに向けて走り出した。
「おいアズマ! 勝手に先行するな!」
ハマーが制止したがアズマは止まらなかった。
「仕方ない、俺達も行くぞ」
ハマー達もアズマを追って走り出す。
先行するアズマの目に比較的損傷の少ない建物が見えてくる。
その建物の前では塹壕と土嚢で作られた防衛陣地があり、20人程の兵士らしき人が重火器や軽火器を放っていた。
「隊長。兵士がいます、一体何と戦ってんだ?」
兵士達の放つ火線へ目を向けると、建物へ侵攻する機械群が見えた。
「なんだありゃあ……」
最も数が多いのは2m程の大きさで、蜘蛛のような平たい形状の多脚型の機械。
虫型以外にも全長は3.5m程の人型の機械もいる。
機械群の後方には5m近い大きさの砲塔が見えた。
いや、それはただの砲塔ではない。
多脚を蠢かせて動く自走式多脚砲台だった。
その砲身が火を吹き、不気味な飛来音がどんどん近づいてくる。
「伏せろー!」
兵士の誰かが叫んだ直後、陣地に着弾して炸裂。
悲鳴が上がり、血肉が飛び散った。
「来てくれメディック!」
「タカシをミンチにしやがってコンチクショー!」
兵士達が猛然と反撃を行う。
「やりやがったなぁー!!」
アズマもプラヴァーを駆って戦場に飛び込むと虫型の1体にマシンガンを撃ち放つ。
「アズマ! 勝手に戦闘を始めるな! ここがどういう世界か分かってないんだぞ!」
ハマーがトランシーバーでアズマに怒鳴る。
『人が殺されてるのをむざむざ見てられないっすよ! 敵はどうせ狂気に寄生された機械っす。殺っちまいましょう!』
プラヴァーが倒した虫型の機械は歪虚の死に様と同じように黒い塵となって霧散した。
アズマの言うとおり機械群が歪虚である事は間違いないようだ。
「仕方ない……。アズマと兵士を援護するぞ」
ハマーはプラヴァーに『加護符』を施すため符を抜いた。
しかし術が発動しない。
「何故だ?」
もう一度試してみたが、やはり符は何の反応も示さない。
それに覚醒しても体の動きが妙に鈍い。
「私もユグディラも魔法が使えないわ」
他の仲間やユグディラもスキルが使えないらしい。
しかしアズマのプラヴァーは普通に戦えているように見える。
「どういう事なんだ……」
しかし考えても分かるはずもない。
「アズマ、俺達は兵士と合流して話を聞いてみる。援護してくれ」
『了解っす』
3人はアズマが弾幕を張ってくれている間に兵士達の陣地に飛び込んだ。
「援軍か? 助かる。俺は第13陣地司令のタカ。君らはどこの所属だ?」
「ハンターズソサイエティのハンターだ」
ハマーが迎えてくれた司令のタカに答える。
「ハンターズソサイティ? 知らないな、特殊部隊か?」
(どうやらここはクリムゾンウェストではないらしいな)
ハマーは怪しまれないように言葉を選びながらタカ司令から話を聞いた。
そうして分かった事は。
突如として現れた謎の生命体が機械に寄生して人類を襲い始めた。
人類は抵抗したが、機械兵器が次々と敵に奪われてしまうため常に劣勢で、どんどんと追い込まれてしまっている。
この世界の人間はスキルを使えないどころかマテリアルの事も知らない。
要約するとこの3つだった。
(結局スキルが使えない理由は分からなかった。スキルが使えないのでは俺達の力は半減以下だ。どうする……?)
ハマーが悩んでいるとアズマから通信が入った。
『隊長。ここは俺が抑えとくんで、CAMか魔導アーマー使える援軍連れてきて下さい』
「しかしお前一人では」
『ぶっちゃけ。スキル使えない隊長達がいても足手まといっす』
「くっ……」
正論を言われて二の句もつけない。
「……分かった。すぐに戻ってくるから耐えててくれ」
『俺の実力は知ってるっしょ。俺なら1人でも1ヶ月は持ちこたえられるっすよ』
アズマは大仰に言って通信を切った。
「司令、更に援軍を連れてきますので耐えてて下さい」
「援軍の当てがあるのか? ならばすぐにでも頼む」
ハマー達はこの世界に最初に現れた場所へ向かう。
そこを通過すると何事もなく元の世界へ戻れた。
ハマーは直ちにハンターオフィスへ急行した。
「大至急ハンターを揃えてくれ! スキルが使えない場所だ。CAMか魔導アーマーが必須だ!!」
ハマーもプラヴァーに乗ると集まったハンターと共に虚無に戻ってくる。
半日近い時が経っていたため既に日は落ちており、周囲は真っ暗だ。
なのに虚無入ると、急に周囲が明るくなった。
「なっ!?」
見上げると太陽がまだ昼前の位置にある。
「何故だ……」
「ずいぶんと荒廃した世界っすね」
不意に横からアズマの声が聞こえてきた。
見るとプラヴァーに乗ったアズマがいる。
「アズマ! 無事だったか」
「え? あぁ、無事に入れたっすね」
「入れた?」
「あれ? 隊長いつの間にプラヴァーに乗ってきたんすか?」
「いつの間にって……急いで戻って乗ってきたんだが」
「え!? 急いで戻ったってこんな一瞬で取ってこれっこないっすよ…‥って、あれ? 何で他の連中も乗ってんですか?」
「お前何を言って……」
ハマーがアズマとの噛み合わない会話を不審に思っていると『タタタン』という炸裂音が響いてきた。
「銃声っすね。どうやら何かが戦闘中らしい。行こうぜ隊長」
「待てアズマ!」
制止したが止まらないアズマを追うと、兵士達の陣地が見えてくる。
「隊長。兵士がいます、一体何と戦ってんだ? って、なんだありゃあ……」
(これは……)
その光景にハマーの中で違和感と既視感がどんどんと膨らんでゆく。
不意に不気味な飛来音がどんどん近づいてきた。
「伏せろー!」
兵士の誰かが叫んだ直後、陣地に着弾して炸裂。
悲鳴が上がり、血肉が飛び散った。
「来てくれメディック!」
「タカシをミンチにしやがってコンチクショー!」
兵士達が猛然と反撃を行う。
「やりやがったなぁー!!」
アズマもプラヴァーを駆って戦場に飛び込むと虫型の1体にマシンガンを撃ち放つ。
(同じ光景だ……)
ハマーは異常な既視感で頭がどうにかなりそうだった。
「何なのだここは……」
リプレイ本文
R7エクスシアに乗って虚無の世界へ入った星野 ハナ(ka5852)はスキルが使えない事を検証するため『人機一体』を使ってみたが、R7の外見は全く変化しなかった。
「うわ、マジでスキルが使えないですぅ」
R7エクスシアの「エーデルワイス弐型」に乗る沙織(ka5977)も『アルケミックパワー』を試してみたが、やはり発動しない。
「覚醒者としてのスキルが使用出来ないという事はどういう事なのでしょう……。魔導CAMが動くのだから覚醒者でなくなったとかそういう事は無いと思うのですが……。昔、スキルのマテリアルを吸収できる王が、ロッソの砲撃は吸収出来なかった事がありましたが、何か関係が……?」
沙織は原因を考えてみたが、情報量が少なく結論は見出だせなかった。
魔導アーマー「プラヴァー」の「三毛丸といっしょ」に乗る保・はじめ(ka5800)が虚無に入る前に『式符』で作っておいた式神も今は符に戻っていた。
「外で発動してきたスキルも持続できないようですね」
「生身では半分しか力が出ないというのも本当のようです。CAMに乗ってきて正解でしたね」
冷泉 緋百合(ka6936)はオファニムの「ヴァルキューレ」のコクピット内で覚醒時でも体のキレが鈍い事を確かめた。
「それ故になかなか興味深い場所だ。未だ知らぬと書いて未知!」
魔導型デュミナスの「月光」に乗る久我・御言(ka4137)は不可解な虚無の世界に興味津々だ。
「はっはー、いるじゃんいるじゃんうじゃうじゃと」
根っからのバトルジャンキーなゾファル・G・初火(ka4407)はガルガリンの「ガルちゃん」で今にも飛び出していきそうだ。
「待ってゾファルさん。まず私がマテリアルライフルで突破口を開きます。突撃はそれからで」
「分かったよ……」
友人の冷泉に窘められたため、ゾファルは渋々待った。
「ならば私もこのアマテラスを放とう。スキルウェポンの能力が使えるかも試したいからな」
久我が[SW]試作波動銃「アマテラス」を構える。
「頼みます。ハマーさんとアズマさんは兵士達の防衛をお願いします」
「了解した」
ハマーは既に戦端を開いているアズマの支援に向かった。
「機体スキルも本当に使えるか試しておきます」
保は『マテリアルレーダー』を発動させた。
「っ!?」
その結果に目を見張る。
なぜならレーダーには機械群だけでなく、兵士やアズマも歪虚だと感知されていたからだ。
(やはりそうですか)
しかしその結果はある程度予想していた事だった。
(汚染地域で人間が生き続けられるはずがないと思っていたんです)
とはいえ、瀕死の兵を懸命に助けているメディックや機械群と必死に戦っている兵士の様子は、一般に言われる歪虚と同じ存在とは思えない。
(彼らは邪神に喰われて取り込まれた者達で、ここは邪神の世界の住人と化した者達が演ずる舞台なのかもしれない。神霊樹ネットワークが大精霊の見る夢であったように、虚無の世界は滅びの記録を元にした邪神の見る夢なのでは?)
保はレーダーの結果と推論を皆に伝えた。
「……つまりこれは邪神の過去視で、神霊樹の御親戚みたいなものって事ですかぁ」
同じような推論を行っていたハナは保の説に納得する。
「興味深いな。こんな場合でも無ければじっくりと見学してみたいものだ」
久我の瞳に強い好奇心が宿る。
「どうりで聞いていた話と同じで違う訳です……」
沙織も自身の抱いていた違和感に合点がいった。
「それにしても兵士まで歪虚ですか……」
「まだか? まだか? もう行っていい?」
冷泉がどう行動するか悩んでいると、虚無での現象に全く興味のないゾファルが焦れて催促してくる。
「もし兵士も攻撃してきたら敵と一緒にぶっとばしゃいいじゃん」
ゾファルの言い分は極論だが正論でもあった。
「……そうですね。考えるのは後にして、まずは目の前の敵を倒しましょう」
そう結論づけた冷泉は久我のデュミナスと共に先行する。
「はい。ともかく、人命救助のため、敵機を迎撃します!」
沙織はR7を陣地が『イニシャライズオーバー』の範囲に入る位置まで進ませるとCAMシールドで兵士達を庇うようにして立つ。
(おかしな言動から取り込まれつつあるのではないかと思っていましたが、もしかしたら既に……)
保はアズマの事が気になっていたが、今は敵を側面から攻撃するため大通りの脇へ向かった。
冷泉のオファニムは大通りに立つと、CAMの身の丈とほぼ変わらない全長7mのマテリアルキャノン「タスラム」を抱えるようにして構えた。
少し離れた位置では久我のデュミナスが試作波動銃「アマテラス」の砲身を大通りで蠢く機械群に向ける。
照準は共にゾロゾロと向かい来る虫型の密集部。
冷泉は『マジックエンハンサー』も発動。魔導エンジンが唸りを上げてマテリアルを高めてゆく。
そして魔導エンジンが臨界に達した瞬間、冷泉はオファニムのアクティブスキル『マテリアルライフル』をタスラムの砲身から撃ち放った。
久我も同時にアマテラス固有のアクティブスキル『マテリアルビーム』を撃ち放つ。
眩い2条の閃光が射線上にいた虫型を呑み込んで走る。
その光が収まった後には、虫型のものと思われる機械の残骸が点々と横たわっており、虫型の3分1が戦闘不能になっていた。
「はっはー、死にたい奴から前に出ろってンジャン」
それらの残骸を踏み潰しながらゾファルのガルガリンが『アクティブスラスター』を吹かして敵中に突撃してゆく。
もちろん残っている虫型は突出してきたゾファルにバルカンやカノン砲を放ったが、ガルガリンは『マテリアルカーテン』を展開して全て弾き飛ばす。
ゾファルは虫型の攻撃は無視し、一直線に人型を狙う。
人型もマシンガンを放ってきたが斬艦刀「雲山」を前面に翳して防ぎながら更に接近。
「喰らえー!」
『スキルトレース』によって『クリムゾンウェスタンラリアット』を脚部で行おうとしたが、発動しない。
「……あれ?」
そのためガルガリンは人型の前で屈むだけになった。
人型は隙だらけのガルガリンにソードを振り下ろしてくる。
「うわっ!」
咄嗟に『マテリアルカーテン』を展開しつつ腕を交差させて受け止めた。
「なんだよ、スキルトレースもダメなのかよっ!」
正確には効力を失っているスキルがスキルトレースで発動されたのだ。
ゾファルは強引にソードを力で押し返すと、武器を構え直す。
「ま、使えないなら使えないで仕切り直すだけじゃん」
ゾファルは不敵な笑みを浮かべて人型に斬りかかった。
そうしてゾファルが敵の目を引いている隙に、沙織はミサイルランチャー「レプリカント」で虫型に照準を合わせる。
「二時の方向! 接近中の敵機を狙います」
ランチャーの射出口が開放し、煙の尾を引きながら10発のミサイルが乱れ飛ぶ。
狙い違わず次々と着弾してゆくミサイルは虫型を粉微塵に爆散させた。
保はゾファルを狙って背を向けている虫型に照準を合わせ、DAR「クルファナー」を撃つ。
3点バーストで放たれた弾丸は虫型の装甲を貫いて機能停止させた。
だが保に気づいた虫型の何体かがカノン砲で反撃してくる。
その内の1発が腕部に命中したが、巨人用全身鎧「堅牢なるミラク」の装甲がへこんだ程度で軽傷だ。
「新たに手に入れたこの全身鎧があれば、そう容易くエンブレムに傷を付けさせはしません!」
保はプラヴァーの腕部装甲にペイントしたユグディラの三毛丸の姿を象ったエンブレムを何度なく損壊した苦い経験があるのだ。
「でも、鎧で隠れてしまうんですよね。鎧の上から、改めてペイントしましょうか?」
そんな本末転倒な事を考えながら、別の虫型にも攻撃を加えた。
仲間達が攻撃を始めたのに合わせてハナは[SW]量産型フライトパックの『フライトブースト』を発動。
「Fly High!」
噴出したジェットを推進力にしてR7を上空にまで舞い上がらせる。
そして高度30mに達した所で進路を砲型へ向け、『アクティブスラスター』も使って更に飛ぶ。
「あははっ、本当に飛べてますぅ~♪」
ハナは『フーファイター』で機体を制御しようとしたが、ここでは発動しないためR7がふらつき始める。
「うひゃあ!?」
慌てて手動で制御し、機体を安定させた。
ハナに少し遅れて冷泉も[SW]フライトフレーム「ヴォラーレ」の『フライトシステム』でオファニムを舞い上がらせる。
そして砲型へ向かって飛ぶ道すがら、眼下の虫型に『プラズマクラッカー』を撃ち放った。
高出力プラズマ弾は虫型ではなく地面に着弾する。
だが外した訳ではない。
プラズマ弾は地面で爆発し、プラズマエネルギーを周囲に撒き散らす。
周囲の虫型はその余波を喰らって爆散した。
だがその攻撃に気づいた他の虫型が上空のオファニムへ向けて一斉にバルカンを掃射した。
冷泉は回避しようとしたが、飛行中は機体の機動性が半減するため避けきれず、オファニムに次々と弾痕が刻まれる。
「このっ!」
冷泉は再び『プラズマクラッカー』を放って虫型を黙らせた。
だが不意に重い飛来音が迫ってくる。
砲型が大型砲を撃ち放ってきたのだ。
回避は、間に合わない。
着弾の衝撃がオファニムを襲う。
胸部装甲がグシャリとひしゃげた。
続けて爆発の衝撃が来る。
胸部装甲が吹っ飛び、四肢と頭部が焼かれた。
コクピットの冷泉も衝撃で振り回され、ヘッドマウントディスプレイに映る景色もグルグル回る。
操縦桿を強く握って体を安定させると、機体を制御しようとしたが上手く動かない。
感覚的に降下しているのは分かった。
『フライトシステム』の効果が切れていて墜落している。
すぐに再発動して墜落を止める。
急いで機体のダメージチェック。
全身に酷いダメージを負っていたが、幸い駆動系は無事だった。
だが安心したのも束の間、背面から着弾の衝撃が走る。
見ると、人型がマシンガンを放ってきていた。
反射的に機体を捻ってプラズマライフル「イナードP5」を向けたが有効射程範囲外だ。
『マテリアルライフル』なら射程内だが、味方も巻き込みかねない位置で撃てず、反撃の手はない。
「くっ……」
人型が再びマシンガンを放とうとしてくる。
「させるかぁーー!!」
ゾファルは人型が撃つ前に『アクティブスラスター』で突っ込み、斬艦刀「雲山」で斬りかかった。
斬撃は避けられたが、攻撃は中断させる。
しかし先程まで交戦していた人型に背を向ける形になったため、後ろからマシンガンで撃たれた。
だが『マテリアルカーテン』を展開して銃弾を防ぐ。
「ここは俺様ちゃんに任せて冷泉ちゃんは大砲ぶっつぶしてくるじゃん」
ゾファルは2体の人型と冷泉のR7の間に立って告げた。
「ありがとうゾファルさん」
この場はゾファルに任せると冷泉は『フライトシステム』で砲型に向かって飛び立った。
ゾファルは人型の気を自分に向けるため斬艦刀を横薙ぎに振るう。
8mの巨大過ぎる刃は大通り脇の建物に当たったが、建物を粉砕しながら人型に迫る。
人型は盾で防いだが斬艦刀の威力を殺しきれず、盾ごと左腕を斬り飛ばされた。
だがもう一体の人型がガルガリンの横に回り込んでマシンガンを撃ってくる。
斬撃を放った直後で体が開いており、回避も防御も間に合わなかったが、弾丸は装甲で弾く事ができた。
ゾファルは『アサルトダイブ』で突進するように間合いを詰め、[SA]魔導剣「テルブリンカー」で『スペルブレード』を発動させながら突く。
魔導剣から伸びたマテリアルの刃は人型の胸を貫通する。
胸に穴の空いた人型はよろめきながらも更にマシンガンを撃ってきた。
魔導剣で防ごうとしたが、弾丸は剣を弾いてガルガリンの装甲を貫いた。
「お?」
先程は弾く事ができた弾丸が貫通したのでゾファルは軽く驚いた。
更に、片腕になった人型がソードに黒い光のオーラのような物を纏わせながら斬りかかってくる。
「なにソレ? 必殺技か何か?」
斬艦刀で防いだが勢いを殺しきれず、ガルガリンの肩に黒光刃が喰い込んだ。
「その光で威力を上げれるのか? いいじゃんいいじゃん! こういうの待ってたんだよ」
ゾファルは斬艦刀で振り上げて人型のソードを弾くと、がら空きになった胴を魔導剣の『スペルブレード』で薙ぎ払う。
マテリアルの刃は体を半ばまで断ったが、人型はなおもソードで攻撃してきた。
『マテリアルカーテン』を展開。
黒光刃はカーテンを貫通し、装甲も貫いたが、威力を大きく削ぐ。
ゾファルは振り上げていた斬艦刀を振り下ろして人型を両断。1体目を塵へと還す。
だが2体目が後ろに回り込んでマシンガンを撃ってくる。
よく見るとその弾丸も黒い光のオーラを纏っていた。
「なーるほど。さっきもそれを使ってたってわけか」
ゾファルは最後の『マテリアルカーテン』を展開。
弾丸はカーテンを貫いて機体に弾痕を穿ったが、ゾファルは構わず『アクティブスラスター』を吹かしつつ斬艦刀を振りかぶる。
そして大上段から振り下ろした斬艦刀は人型の右腕をマシンガンごと両断した。
人型は残った左腕でソードを抜こうとする。
「トドメじゃーん!」
だがそれより先に振り下ろした斬艦刀を逆袈裟で斬り上げ、体も両断して息の根を止めた。
その頃上空ではハナが砲型の近くまで接近していた。
しかしある程度接近したところで気づかれたのか、砲型が大型砲を放ってきた。
不気味な飛来音と共に砲弾が迫り、辛くも回避できたが砲弾はR7の間際を通過していった。
「あっぶないですぅ……」
だが更に接近すると、今度は砲型の上面装甲の一部が次々と開いてゆき、そこから10数発ものミサイルが撃ち放たれてきた。
ハナは機体を上下に小刻みに振って回避しようとしたが、飛行中は機動性が半減するため避けきれない。
直撃する寸前にCAMシールドで身を庇ったが、全てのミサイルを防ぎ切る事はできず、数発が直撃してダメージを負った。
それでも爆煙を抜けて砲型の直上にまで到る。
「こういう時じゃないと真上から敵を斬り下ろすって試せないですし、いきますよぅ」
機体の向きを水平から真下に替え、『アクティブスラスター』で降下を開始。
降下中に『フライトブースト』が切れたので再発動。
砲型が機銃で対空迎撃を行ってきたがシールドで防ぎながら降下を続ける。
そして砲型と交錯する瞬間、[SW]試作錬機剣「NOWBLADE」で斬り下ろす。
「せっかくのスキルが使えない恨み思いしれですぅ!」
マテリアルの刃で装甲を裂きながら着地。砲型に縦一文字の斬痕を刻んだ。
だが砲型はすぐに機体各所に装備された機銃で猛烈な銃撃を浴びせてきた。
ハナはシールドで防ぎつつNOWBLADEで今度は脚を斬る。
両断まではできず、逆にR7を蹴り飛ばそうとしてきたが、後ろに飛び跳ねて避け、更に斬る。
「いったい何回斬れば倒せるでしょぉかぁ?」
もう一体の砲型は冷泉が相手をしていた。
砲型から一定の距離を開けた場所に着地し、プラズマライフルを構える。
だが砲型からは10数発ものミサイルが飛んできた。
オファニムは満身創痍に近い状態だ。
避けきれなければ大破しかねない。
「高機動タイプのヴァルキューレならこのくらい!」
降り注ぐミサイル群の間をオファニムが縫うように駆ける。
ボロボロの身でありながらも機動力までは奪われていなかったのだ。
そしてオファニムは主の操縦に応え、全てのミサイルを避けきったのだった。
爆煙でけぶる中、冷泉はプラズマライフルを構え直し、トリガーを引く。
放たれたマテリアルの光線は砲型を直撃。
しかし砲型の進行も攻撃も止まらない。
冷泉は機銃やミサイルを避け続けながら攻撃を続行した。
2体の人型を倒し終えたゾファルは砲型に向かった。
「メインディッシュをいただくじゃん」
2体の砲型はハナと冷泉の攻撃で損傷していたが、まだ健在だ。
ゾファルの接近に気づいた砲型は大型砲を発射。唸りを上げて砲弾が飛んでゆく。
ゾファルは斬艦刀をやや斜めにして前面に翳した。
砲弾は斬艦刀を直撃。
鋼と鋼がぶつかり合う甲高い激突音が響く。
衝撃でガルガリンの足が地面に僅かに沈み込み、肩関節、腰部、膝関節が負荷の損傷で嫌な音を立てる。
だが全力で踏ん張って衝撃に耐え、砲弾を刃に反って受け流す。
砲弾はガルガリンの斜め後方で炸裂した。
「すげー衝撃。さすが大口径じゃん」
ゾファルは楽しげに口元を歪めて更に突進。
「何本減らせば自重を支えられなくなるか賭けようぜ」
砲型は機銃を浴びせてきたが全て装甲で弾き、斬艦刀で脚を薙ぎ払う。
前脚が一本切断された砲型は傾いたがまだ倒れない。
冷泉は傾いて一番荷重のかかっている脚の関節をマテリアルライフルで撃ち抜く。
すると関節部から脚が折れ、砲型は前倒しに倒れた。
砲型は機銃掃射を続けながら残った脚で体勢を立て直そうとするが、その前にゾファルが更に脚を切断。
倒れて狙いやすくなった胴体部上面を冷泉が撃ち抜いてゆくと、砲型はやがて動きを止め、徐々に塵となっていった。
「はっはー、接近すれば大した事ないじゃん。もう1体もやるぞ冷泉ちゃん」
ハナに切り刻まれていた砲型はゾファルと冷泉の参戦で耐えきれなくなり、すぐに破壊された。
一方、陣地では着実に虫型の数を減らしていたが、人型が陣地の近くまで迫ってきていた。
「それ以上は行かせんよ」
久我は『アクティブスラスター』で陣地と人型の間に割って入ると可変機銃「ポレモスSGS」の近接モードで斬りかかった。
人型は盾で受け止め、ソードで反撃してくる。
久我はポレモスSGSの側面の盾で受け止めると、そのまま射撃モードに切り替えて近距離から発射。
不意を突かれた人型は回避も防御もできず直撃。
再び近接モードにして畳み掛けようとしたが、盾で防がれる。
人型は更に反撃してきたが避け、久我は少し距離を取った。
すると思惑通り人型が追ってきたため、攻撃を避けつつ沙織のR7の射線上に誘導してゆく。
久我の動きから意図を察した沙織は事前の打ち合わせ通り魔銃「ナシャート」を構えた。
「お願いね、エーデルワイス」
沙織の前に久我のデュミナスがやってきた。
デュミナス越しに人型と虫型も見える。
だが魔銃の照準器にはデュミナスの背だけが映っている。これでは撃てない。
「沙織くん!」
久我は合図と共に[SW]量産型フライトパックの『フライトブースト』で機体を真上に上昇させた。
魔銃の照準器からデュミナスが消え、人型と虫型だけが入る。
「マテリアルライフル発射!」
魔銃から放たれた『マテリアルライフル』の光が人型を貫き、虫型も呑み込んで走る。
虫型より高機動な人型だが、完全な不意打ちでは回避も防御もできなかった。
久我は上空からポレモスSGSで人型の頭を撃ち抜くと、近接モードに切り替えながら降下。
そのまま損傷した頭を一気に刺し貫き、人型を破壊した。
大通りの脇から攻撃を行っていた保も人型の攻撃を受けていた。
『スペルスラスター』を噴射させて放たれてきたマシンガンを避けならが側面に回り込んで、クルファナーで反撃。
だが盾で受け止められ、更にマシンガンを撃たれる。
「意外と防御が硬いですね。それなら……」
保はハマーと連絡を取った後『スペルスラスター』で人型の周りを周回するように走りながら攻撃を行った。
すると人型も銃口でプラヴァーを追いながら足も動かす。
そうして人型を翻弄しつつ誘導し、銃口が追いきれなくなってプラヴァーから反れた瞬間足を止めて合図を送る。
「今です!」
保、ハマー、アズマのプラヴァーがそれぞれ違う位置から人型を一斉に攻撃。
3方向からの十字砲火を受けた人型は全てを防ぎ切る事はできず被弾していった。
その隙を逃さず保がクルファナーを連射する。
だが人型は弾丸を喰らいながらも猛然と突進してきた。
咄嗟にミラージュグレイブで防ごうとしたが防ぎきれず、ソードがプラヴァーを斬り裂く。
「エンブレムは!?」
真っ先に三毛丸エンブレムに心配をしてしまう保だが、体はちゃんと反撃のため動いている。
『スペルステーク』を発動し、カウンター気味にグレイブを人型に突き入れた。
だが人型はグレイブに貫かれながらもソードに黒いオーラを纏わせて振りかぶる。
「それを食らうと不味そうです」
保はブレイブから手を放すと『スペルスラスター』と踵部のローラーの逆回転で後退しながらソードを避ける。
そして有効射程に入った瞬間クルファナーを発砲し、人型にトドメを刺したのだった。
敵を倒し終えると陣地の兵士達から歓声を上がった。
「やったぞ!」
「うおぉー! 勝ったー!」
「支援に感謝する。俺は第13陣地司令のタカ。君らはどこの所属の者だ?」
「俺達はハンターズソサイエティのハンターっす」
「ハンターズソサイティ? 知らないな、特殊部隊か?」
タカ司令とアズマの会話にハマーは表情を曇らせた。
「皆、アズマの様子がおかしい。一旦撤退しよう」
「何言ってんすか隊長。俺の何処がおかしいんすか?」
ハマーの提案にアズマが抗議する。
「アズマさんは時計お持ちですぅ? 時間はどうなってますぅ?」
ハナの質問に答えたアズマの時間は他の者と半日以上ずれていた。
「あれ? おかしいっすね」
「死んで巻き戻しに巻き込まれるのか観測者が居るのか分かりませんがやな感じですぅ。私たちの記憶が改変される前に1度戻った方が良いかもですぅ」
「私も自分達に影響が出ない内に撤退するのが良いと思います」
ハナと冷泉はそう言い。他の者も撤退を支持する。
「俺全然普通なんっすけどねぇ……」
渋るアズマを連れてハンター達は虚無を出た。
しかし虚無の外にアズマの姿はなかった。
「アズマ? 何故いない!」
ハマーが虚無に戻るとアズマがいた。
「ずいぶんと荒廃した世界っすね」
「戻るぞアズマ」
「え?」
ハマーはアズマの腕を掴んで虚無を出た。
しかし虚無を出た途端、掴んでいた腕の感触が消える。
「どういう事だ……」
保が虚無内で撮った写真にはアズマも兵士も町も映っている。
しかし何度試してもアズマを連れ出す事はできなかった。
「うわ、マジでスキルが使えないですぅ」
R7エクスシアの「エーデルワイス弐型」に乗る沙織(ka5977)も『アルケミックパワー』を試してみたが、やはり発動しない。
「覚醒者としてのスキルが使用出来ないという事はどういう事なのでしょう……。魔導CAMが動くのだから覚醒者でなくなったとかそういう事は無いと思うのですが……。昔、スキルのマテリアルを吸収できる王が、ロッソの砲撃は吸収出来なかった事がありましたが、何か関係が……?」
沙織は原因を考えてみたが、情報量が少なく結論は見出だせなかった。
魔導アーマー「プラヴァー」の「三毛丸といっしょ」に乗る保・はじめ(ka5800)が虚無に入る前に『式符』で作っておいた式神も今は符に戻っていた。
「外で発動してきたスキルも持続できないようですね」
「生身では半分しか力が出ないというのも本当のようです。CAMに乗ってきて正解でしたね」
冷泉 緋百合(ka6936)はオファニムの「ヴァルキューレ」のコクピット内で覚醒時でも体のキレが鈍い事を確かめた。
「それ故になかなか興味深い場所だ。未だ知らぬと書いて未知!」
魔導型デュミナスの「月光」に乗る久我・御言(ka4137)は不可解な虚無の世界に興味津々だ。
「はっはー、いるじゃんいるじゃんうじゃうじゃと」
根っからのバトルジャンキーなゾファル・G・初火(ka4407)はガルガリンの「ガルちゃん」で今にも飛び出していきそうだ。
「待ってゾファルさん。まず私がマテリアルライフルで突破口を開きます。突撃はそれからで」
「分かったよ……」
友人の冷泉に窘められたため、ゾファルは渋々待った。
「ならば私もこのアマテラスを放とう。スキルウェポンの能力が使えるかも試したいからな」
久我が[SW]試作波動銃「アマテラス」を構える。
「頼みます。ハマーさんとアズマさんは兵士達の防衛をお願いします」
「了解した」
ハマーは既に戦端を開いているアズマの支援に向かった。
「機体スキルも本当に使えるか試しておきます」
保は『マテリアルレーダー』を発動させた。
「っ!?」
その結果に目を見張る。
なぜならレーダーには機械群だけでなく、兵士やアズマも歪虚だと感知されていたからだ。
(やはりそうですか)
しかしその結果はある程度予想していた事だった。
(汚染地域で人間が生き続けられるはずがないと思っていたんです)
とはいえ、瀕死の兵を懸命に助けているメディックや機械群と必死に戦っている兵士の様子は、一般に言われる歪虚と同じ存在とは思えない。
(彼らは邪神に喰われて取り込まれた者達で、ここは邪神の世界の住人と化した者達が演ずる舞台なのかもしれない。神霊樹ネットワークが大精霊の見る夢であったように、虚無の世界は滅びの記録を元にした邪神の見る夢なのでは?)
保はレーダーの結果と推論を皆に伝えた。
「……つまりこれは邪神の過去視で、神霊樹の御親戚みたいなものって事ですかぁ」
同じような推論を行っていたハナは保の説に納得する。
「興味深いな。こんな場合でも無ければじっくりと見学してみたいものだ」
久我の瞳に強い好奇心が宿る。
「どうりで聞いていた話と同じで違う訳です……」
沙織も自身の抱いていた違和感に合点がいった。
「それにしても兵士まで歪虚ですか……」
「まだか? まだか? もう行っていい?」
冷泉がどう行動するか悩んでいると、虚無での現象に全く興味のないゾファルが焦れて催促してくる。
「もし兵士も攻撃してきたら敵と一緒にぶっとばしゃいいじゃん」
ゾファルの言い分は極論だが正論でもあった。
「……そうですね。考えるのは後にして、まずは目の前の敵を倒しましょう」
そう結論づけた冷泉は久我のデュミナスと共に先行する。
「はい。ともかく、人命救助のため、敵機を迎撃します!」
沙織はR7を陣地が『イニシャライズオーバー』の範囲に入る位置まで進ませるとCAMシールドで兵士達を庇うようにして立つ。
(おかしな言動から取り込まれつつあるのではないかと思っていましたが、もしかしたら既に……)
保はアズマの事が気になっていたが、今は敵を側面から攻撃するため大通りの脇へ向かった。
冷泉のオファニムは大通りに立つと、CAMの身の丈とほぼ変わらない全長7mのマテリアルキャノン「タスラム」を抱えるようにして構えた。
少し離れた位置では久我のデュミナスが試作波動銃「アマテラス」の砲身を大通りで蠢く機械群に向ける。
照準は共にゾロゾロと向かい来る虫型の密集部。
冷泉は『マジックエンハンサー』も発動。魔導エンジンが唸りを上げてマテリアルを高めてゆく。
そして魔導エンジンが臨界に達した瞬間、冷泉はオファニムのアクティブスキル『マテリアルライフル』をタスラムの砲身から撃ち放った。
久我も同時にアマテラス固有のアクティブスキル『マテリアルビーム』を撃ち放つ。
眩い2条の閃光が射線上にいた虫型を呑み込んで走る。
その光が収まった後には、虫型のものと思われる機械の残骸が点々と横たわっており、虫型の3分1が戦闘不能になっていた。
「はっはー、死にたい奴から前に出ろってンジャン」
それらの残骸を踏み潰しながらゾファルのガルガリンが『アクティブスラスター』を吹かして敵中に突撃してゆく。
もちろん残っている虫型は突出してきたゾファルにバルカンやカノン砲を放ったが、ガルガリンは『マテリアルカーテン』を展開して全て弾き飛ばす。
ゾファルは虫型の攻撃は無視し、一直線に人型を狙う。
人型もマシンガンを放ってきたが斬艦刀「雲山」を前面に翳して防ぎながら更に接近。
「喰らえー!」
『スキルトレース』によって『クリムゾンウェスタンラリアット』を脚部で行おうとしたが、発動しない。
「……あれ?」
そのためガルガリンは人型の前で屈むだけになった。
人型は隙だらけのガルガリンにソードを振り下ろしてくる。
「うわっ!」
咄嗟に『マテリアルカーテン』を展開しつつ腕を交差させて受け止めた。
「なんだよ、スキルトレースもダメなのかよっ!」
正確には効力を失っているスキルがスキルトレースで発動されたのだ。
ゾファルは強引にソードを力で押し返すと、武器を構え直す。
「ま、使えないなら使えないで仕切り直すだけじゃん」
ゾファルは不敵な笑みを浮かべて人型に斬りかかった。
そうしてゾファルが敵の目を引いている隙に、沙織はミサイルランチャー「レプリカント」で虫型に照準を合わせる。
「二時の方向! 接近中の敵機を狙います」
ランチャーの射出口が開放し、煙の尾を引きながら10発のミサイルが乱れ飛ぶ。
狙い違わず次々と着弾してゆくミサイルは虫型を粉微塵に爆散させた。
保はゾファルを狙って背を向けている虫型に照準を合わせ、DAR「クルファナー」を撃つ。
3点バーストで放たれた弾丸は虫型の装甲を貫いて機能停止させた。
だが保に気づいた虫型の何体かがカノン砲で反撃してくる。
その内の1発が腕部に命中したが、巨人用全身鎧「堅牢なるミラク」の装甲がへこんだ程度で軽傷だ。
「新たに手に入れたこの全身鎧があれば、そう容易くエンブレムに傷を付けさせはしません!」
保はプラヴァーの腕部装甲にペイントしたユグディラの三毛丸の姿を象ったエンブレムを何度なく損壊した苦い経験があるのだ。
「でも、鎧で隠れてしまうんですよね。鎧の上から、改めてペイントしましょうか?」
そんな本末転倒な事を考えながら、別の虫型にも攻撃を加えた。
仲間達が攻撃を始めたのに合わせてハナは[SW]量産型フライトパックの『フライトブースト』を発動。
「Fly High!」
噴出したジェットを推進力にしてR7を上空にまで舞い上がらせる。
そして高度30mに達した所で進路を砲型へ向け、『アクティブスラスター』も使って更に飛ぶ。
「あははっ、本当に飛べてますぅ~♪」
ハナは『フーファイター』で機体を制御しようとしたが、ここでは発動しないためR7がふらつき始める。
「うひゃあ!?」
慌てて手動で制御し、機体を安定させた。
ハナに少し遅れて冷泉も[SW]フライトフレーム「ヴォラーレ」の『フライトシステム』でオファニムを舞い上がらせる。
そして砲型へ向かって飛ぶ道すがら、眼下の虫型に『プラズマクラッカー』を撃ち放った。
高出力プラズマ弾は虫型ではなく地面に着弾する。
だが外した訳ではない。
プラズマ弾は地面で爆発し、プラズマエネルギーを周囲に撒き散らす。
周囲の虫型はその余波を喰らって爆散した。
だがその攻撃に気づいた他の虫型が上空のオファニムへ向けて一斉にバルカンを掃射した。
冷泉は回避しようとしたが、飛行中は機体の機動性が半減するため避けきれず、オファニムに次々と弾痕が刻まれる。
「このっ!」
冷泉は再び『プラズマクラッカー』を放って虫型を黙らせた。
だが不意に重い飛来音が迫ってくる。
砲型が大型砲を撃ち放ってきたのだ。
回避は、間に合わない。
着弾の衝撃がオファニムを襲う。
胸部装甲がグシャリとひしゃげた。
続けて爆発の衝撃が来る。
胸部装甲が吹っ飛び、四肢と頭部が焼かれた。
コクピットの冷泉も衝撃で振り回され、ヘッドマウントディスプレイに映る景色もグルグル回る。
操縦桿を強く握って体を安定させると、機体を制御しようとしたが上手く動かない。
感覚的に降下しているのは分かった。
『フライトシステム』の効果が切れていて墜落している。
すぐに再発動して墜落を止める。
急いで機体のダメージチェック。
全身に酷いダメージを負っていたが、幸い駆動系は無事だった。
だが安心したのも束の間、背面から着弾の衝撃が走る。
見ると、人型がマシンガンを放ってきていた。
反射的に機体を捻ってプラズマライフル「イナードP5」を向けたが有効射程範囲外だ。
『マテリアルライフル』なら射程内だが、味方も巻き込みかねない位置で撃てず、反撃の手はない。
「くっ……」
人型が再びマシンガンを放とうとしてくる。
「させるかぁーー!!」
ゾファルは人型が撃つ前に『アクティブスラスター』で突っ込み、斬艦刀「雲山」で斬りかかった。
斬撃は避けられたが、攻撃は中断させる。
しかし先程まで交戦していた人型に背を向ける形になったため、後ろからマシンガンで撃たれた。
だが『マテリアルカーテン』を展開して銃弾を防ぐ。
「ここは俺様ちゃんに任せて冷泉ちゃんは大砲ぶっつぶしてくるじゃん」
ゾファルは2体の人型と冷泉のR7の間に立って告げた。
「ありがとうゾファルさん」
この場はゾファルに任せると冷泉は『フライトシステム』で砲型に向かって飛び立った。
ゾファルは人型の気を自分に向けるため斬艦刀を横薙ぎに振るう。
8mの巨大過ぎる刃は大通り脇の建物に当たったが、建物を粉砕しながら人型に迫る。
人型は盾で防いだが斬艦刀の威力を殺しきれず、盾ごと左腕を斬り飛ばされた。
だがもう一体の人型がガルガリンの横に回り込んでマシンガンを撃ってくる。
斬撃を放った直後で体が開いており、回避も防御も間に合わなかったが、弾丸は装甲で弾く事ができた。
ゾファルは『アサルトダイブ』で突進するように間合いを詰め、[SA]魔導剣「テルブリンカー」で『スペルブレード』を発動させながら突く。
魔導剣から伸びたマテリアルの刃は人型の胸を貫通する。
胸に穴の空いた人型はよろめきながらも更にマシンガンを撃ってきた。
魔導剣で防ごうとしたが、弾丸は剣を弾いてガルガリンの装甲を貫いた。
「お?」
先程は弾く事ができた弾丸が貫通したのでゾファルは軽く驚いた。
更に、片腕になった人型がソードに黒い光のオーラのような物を纏わせながら斬りかかってくる。
「なにソレ? 必殺技か何か?」
斬艦刀で防いだが勢いを殺しきれず、ガルガリンの肩に黒光刃が喰い込んだ。
「その光で威力を上げれるのか? いいじゃんいいじゃん! こういうの待ってたんだよ」
ゾファルは斬艦刀で振り上げて人型のソードを弾くと、がら空きになった胴を魔導剣の『スペルブレード』で薙ぎ払う。
マテリアルの刃は体を半ばまで断ったが、人型はなおもソードで攻撃してきた。
『マテリアルカーテン』を展開。
黒光刃はカーテンを貫通し、装甲も貫いたが、威力を大きく削ぐ。
ゾファルは振り上げていた斬艦刀を振り下ろして人型を両断。1体目を塵へと還す。
だが2体目が後ろに回り込んでマシンガンを撃ってくる。
よく見るとその弾丸も黒い光のオーラを纏っていた。
「なーるほど。さっきもそれを使ってたってわけか」
ゾファルは最後の『マテリアルカーテン』を展開。
弾丸はカーテンを貫いて機体に弾痕を穿ったが、ゾファルは構わず『アクティブスラスター』を吹かしつつ斬艦刀を振りかぶる。
そして大上段から振り下ろした斬艦刀は人型の右腕をマシンガンごと両断した。
人型は残った左腕でソードを抜こうとする。
「トドメじゃーん!」
だがそれより先に振り下ろした斬艦刀を逆袈裟で斬り上げ、体も両断して息の根を止めた。
その頃上空ではハナが砲型の近くまで接近していた。
しかしある程度接近したところで気づかれたのか、砲型が大型砲を放ってきた。
不気味な飛来音と共に砲弾が迫り、辛くも回避できたが砲弾はR7の間際を通過していった。
「あっぶないですぅ……」
だが更に接近すると、今度は砲型の上面装甲の一部が次々と開いてゆき、そこから10数発ものミサイルが撃ち放たれてきた。
ハナは機体を上下に小刻みに振って回避しようとしたが、飛行中は機動性が半減するため避けきれない。
直撃する寸前にCAMシールドで身を庇ったが、全てのミサイルを防ぎ切る事はできず、数発が直撃してダメージを負った。
それでも爆煙を抜けて砲型の直上にまで到る。
「こういう時じゃないと真上から敵を斬り下ろすって試せないですし、いきますよぅ」
機体の向きを水平から真下に替え、『アクティブスラスター』で降下を開始。
降下中に『フライトブースト』が切れたので再発動。
砲型が機銃で対空迎撃を行ってきたがシールドで防ぎながら降下を続ける。
そして砲型と交錯する瞬間、[SW]試作錬機剣「NOWBLADE」で斬り下ろす。
「せっかくのスキルが使えない恨み思いしれですぅ!」
マテリアルの刃で装甲を裂きながら着地。砲型に縦一文字の斬痕を刻んだ。
だが砲型はすぐに機体各所に装備された機銃で猛烈な銃撃を浴びせてきた。
ハナはシールドで防ぎつつNOWBLADEで今度は脚を斬る。
両断まではできず、逆にR7を蹴り飛ばそうとしてきたが、後ろに飛び跳ねて避け、更に斬る。
「いったい何回斬れば倒せるでしょぉかぁ?」
もう一体の砲型は冷泉が相手をしていた。
砲型から一定の距離を開けた場所に着地し、プラズマライフルを構える。
だが砲型からは10数発ものミサイルが飛んできた。
オファニムは満身創痍に近い状態だ。
避けきれなければ大破しかねない。
「高機動タイプのヴァルキューレならこのくらい!」
降り注ぐミサイル群の間をオファニムが縫うように駆ける。
ボロボロの身でありながらも機動力までは奪われていなかったのだ。
そしてオファニムは主の操縦に応え、全てのミサイルを避けきったのだった。
爆煙でけぶる中、冷泉はプラズマライフルを構え直し、トリガーを引く。
放たれたマテリアルの光線は砲型を直撃。
しかし砲型の進行も攻撃も止まらない。
冷泉は機銃やミサイルを避け続けながら攻撃を続行した。
2体の人型を倒し終えたゾファルは砲型に向かった。
「メインディッシュをいただくじゃん」
2体の砲型はハナと冷泉の攻撃で損傷していたが、まだ健在だ。
ゾファルの接近に気づいた砲型は大型砲を発射。唸りを上げて砲弾が飛んでゆく。
ゾファルは斬艦刀をやや斜めにして前面に翳した。
砲弾は斬艦刀を直撃。
鋼と鋼がぶつかり合う甲高い激突音が響く。
衝撃でガルガリンの足が地面に僅かに沈み込み、肩関節、腰部、膝関節が負荷の損傷で嫌な音を立てる。
だが全力で踏ん張って衝撃に耐え、砲弾を刃に反って受け流す。
砲弾はガルガリンの斜め後方で炸裂した。
「すげー衝撃。さすが大口径じゃん」
ゾファルは楽しげに口元を歪めて更に突進。
「何本減らせば自重を支えられなくなるか賭けようぜ」
砲型は機銃を浴びせてきたが全て装甲で弾き、斬艦刀で脚を薙ぎ払う。
前脚が一本切断された砲型は傾いたがまだ倒れない。
冷泉は傾いて一番荷重のかかっている脚の関節をマテリアルライフルで撃ち抜く。
すると関節部から脚が折れ、砲型は前倒しに倒れた。
砲型は機銃掃射を続けながら残った脚で体勢を立て直そうとするが、その前にゾファルが更に脚を切断。
倒れて狙いやすくなった胴体部上面を冷泉が撃ち抜いてゆくと、砲型はやがて動きを止め、徐々に塵となっていった。
「はっはー、接近すれば大した事ないじゃん。もう1体もやるぞ冷泉ちゃん」
ハナに切り刻まれていた砲型はゾファルと冷泉の参戦で耐えきれなくなり、すぐに破壊された。
一方、陣地では着実に虫型の数を減らしていたが、人型が陣地の近くまで迫ってきていた。
「それ以上は行かせんよ」
久我は『アクティブスラスター』で陣地と人型の間に割って入ると可変機銃「ポレモスSGS」の近接モードで斬りかかった。
人型は盾で受け止め、ソードで反撃してくる。
久我はポレモスSGSの側面の盾で受け止めると、そのまま射撃モードに切り替えて近距離から発射。
不意を突かれた人型は回避も防御もできず直撃。
再び近接モードにして畳み掛けようとしたが、盾で防がれる。
人型は更に反撃してきたが避け、久我は少し距離を取った。
すると思惑通り人型が追ってきたため、攻撃を避けつつ沙織のR7の射線上に誘導してゆく。
久我の動きから意図を察した沙織は事前の打ち合わせ通り魔銃「ナシャート」を構えた。
「お願いね、エーデルワイス」
沙織の前に久我のデュミナスがやってきた。
デュミナス越しに人型と虫型も見える。
だが魔銃の照準器にはデュミナスの背だけが映っている。これでは撃てない。
「沙織くん!」
久我は合図と共に[SW]量産型フライトパックの『フライトブースト』で機体を真上に上昇させた。
魔銃の照準器からデュミナスが消え、人型と虫型だけが入る。
「マテリアルライフル発射!」
魔銃から放たれた『マテリアルライフル』の光が人型を貫き、虫型も呑み込んで走る。
虫型より高機動な人型だが、完全な不意打ちでは回避も防御もできなかった。
久我は上空からポレモスSGSで人型の頭を撃ち抜くと、近接モードに切り替えながら降下。
そのまま損傷した頭を一気に刺し貫き、人型を破壊した。
大通りの脇から攻撃を行っていた保も人型の攻撃を受けていた。
『スペルスラスター』を噴射させて放たれてきたマシンガンを避けならが側面に回り込んで、クルファナーで反撃。
だが盾で受け止められ、更にマシンガンを撃たれる。
「意外と防御が硬いですね。それなら……」
保はハマーと連絡を取った後『スペルスラスター』で人型の周りを周回するように走りながら攻撃を行った。
すると人型も銃口でプラヴァーを追いながら足も動かす。
そうして人型を翻弄しつつ誘導し、銃口が追いきれなくなってプラヴァーから反れた瞬間足を止めて合図を送る。
「今です!」
保、ハマー、アズマのプラヴァーがそれぞれ違う位置から人型を一斉に攻撃。
3方向からの十字砲火を受けた人型は全てを防ぎ切る事はできず被弾していった。
その隙を逃さず保がクルファナーを連射する。
だが人型は弾丸を喰らいながらも猛然と突進してきた。
咄嗟にミラージュグレイブで防ごうとしたが防ぎきれず、ソードがプラヴァーを斬り裂く。
「エンブレムは!?」
真っ先に三毛丸エンブレムに心配をしてしまう保だが、体はちゃんと反撃のため動いている。
『スペルステーク』を発動し、カウンター気味にグレイブを人型に突き入れた。
だが人型はグレイブに貫かれながらもソードに黒いオーラを纏わせて振りかぶる。
「それを食らうと不味そうです」
保はブレイブから手を放すと『スペルスラスター』と踵部のローラーの逆回転で後退しながらソードを避ける。
そして有効射程に入った瞬間クルファナーを発砲し、人型にトドメを刺したのだった。
敵を倒し終えると陣地の兵士達から歓声を上がった。
「やったぞ!」
「うおぉー! 勝ったー!」
「支援に感謝する。俺は第13陣地司令のタカ。君らはどこの所属の者だ?」
「俺達はハンターズソサイエティのハンターっす」
「ハンターズソサイティ? 知らないな、特殊部隊か?」
タカ司令とアズマの会話にハマーは表情を曇らせた。
「皆、アズマの様子がおかしい。一旦撤退しよう」
「何言ってんすか隊長。俺の何処がおかしいんすか?」
ハマーの提案にアズマが抗議する。
「アズマさんは時計お持ちですぅ? 時間はどうなってますぅ?」
ハナの質問に答えたアズマの時間は他の者と半日以上ずれていた。
「あれ? おかしいっすね」
「死んで巻き戻しに巻き込まれるのか観測者が居るのか分かりませんがやな感じですぅ。私たちの記憶が改変される前に1度戻った方が良いかもですぅ」
「私も自分達に影響が出ない内に撤退するのが良いと思います」
ハナと冷泉はそう言い。他の者も撤退を支持する。
「俺全然普通なんっすけどねぇ……」
渋るアズマを連れてハンター達は虚無を出た。
しかし虚無の外にアズマの姿はなかった。
「アズマ? 何故いない!」
ハマーが虚無に戻るとアズマがいた。
「ずいぶんと荒廃した世界っすね」
「戻るぞアズマ」
「え?」
ハマーはアズマの腕を掴んで虚無を出た。
しかし虚無を出た途端、掴んでいた腕の感触が消える。
「どういう事だ……」
保が虚無内で撮った写真にはアズマも兵士も町も映っている。
しかし何度試してもアズマを連れ出す事はできなかった。
依頼結果
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/01/24 11:16:58 |
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質問卓 保・はじめ(ka5800) 鬼|23才|男性|符術師(カードマスター) |
最終発言 |
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相談卓 保・はじめ(ka5800) 鬼|23才|男性|符術師(カードマスター) |
最終発言 2018/01/25 09:18:17 |