ゲスト
(ka0000)
【虚動】漢と男と決戦兵器
マスター:近藤豊

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/12/05 12:00
- 完成日
- 2014/12/07 10:31
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
5年前に起こった王国を襲う災厄、その再来たるイスルダ島の歪虚の襲来は、クリムゾンウェストの世界を駆け巡り、震撼させた。
異界より到来したラッツィオ島での戦い、そして帝国に再び姿を現した剣機の歪虚。
世界を覆ういくつもの邪悪の影は、各国、各地域の首脳陣をリゼリオへと呼び集める。
人類の明日を、如何に守るべきか。
異世界リアルブルーの人々も交えた会合により、人類の希望は二つの兵器に託される。
一つは、蒼き世界の機械の巨人、サルヴァトーレ・ロッソに眠る戦闘装甲機「CAM」。
だがそれは、必要な燃料の入手に苦慮し、動くことはあたわなかった。
一つは、帝国の練魔院にて研究されてきた魔導アーマー。
長年の研究の結果、稼働実験にまで漕ぎ着けた、新たなる力。
そして世界は、二つの力を合わせることを選択する。
魔導アーマーの動力をCAMに搭載する実験が提唱され、世界はそれに向けて動き出した。
仮に実験が成功すれば、人類は歪虚に対抗する大きな手段を得るだろう。
だが……。
と、かっこいいスタートを切る依頼だったが、この状況をあの馬鹿が見逃すはずもなかった。
「おーい、給仕~」
「ですから、給仕じゃありません。執事です。執事のキュジィです」
地下城『ヴェドル』で、いつものやり取りをするヨアキム(kz0011)とキュジィ。
既に代わり映えのしない老年夫婦のような会話だが、今日はひと味違った。
ヨアキムに怪しい笑みが浮かぶ。
「うっ、ヨアキム様。その笑みはまさか……」
「察しがいいな。給仕。
聞けば、辺境にCAMと魔導アーマーってぇのが来るらしいじゃねぇか。
だったら、俺等ドワーフも兵器作って参戦するしかねぇだろ!」
無駄に力の入るヨアキム。
こういうヨアキムがロクな事をしないのは毎度恒例。
早くもキュジィの頭に痛みが走り始める。
「何をされたんですか?」
「よくぞ聞いた! 俺等辺境のドワーフが叡智を結集して作った新兵器、とくと拝みやがれ!」
ヨアキムは、背後にあった白い布を取り払う。
そこにはショッキングピンクに彩られた騎士用の鎧甲冑があった。色使いからセンスを疑いたくなるが、肩に装着したマントには『魔道海女』と書かれ、胸の部分には黒く太い文字で『GAM』と書かれている。
「こ、これは……」
「どうだ! リアルブルーで粋な武将と名高い『魔道海女』の名前を背負った最終決戦兵器――その名もGAMだ。
ちなみにGAMは『ガッツだ 熱く 燃え上がれ』の略だからな」
また何処かのハンターに騙されたらしいヨアキムが、勝手に暴走して意味不明な代物を生み出してしまったようだ。
キュジィは工房を取り仕切るカペラ(kz0064)の愚痴を思い浮かべて頭を抱えている。
「ビビったか? たじろいだか?
このGAMを稼働実験場へ持ち込んで、早速お披露目と行こうじゃねぇか。
……えーと、こいつを着るにはっと」
「え? 着るんですか?」
「当たり前じゃねぇか。これだけで動く訳ねぇだろ」
キュジィは、呆気に取られた。
どうやら兵器が持ち込まれる事は分かったが、何の実験をするかは理解していないようだ。心底馬鹿で残念なドワーフ王だが、これでも辺境ドワーフでは敬われているんです。
「おーい、給仕。ちょっとこの脚部の留め金を止めてくれ。こいつ着て現地まで歩いて行くから、しっかり止めないとな」
「え? 徒歩で行くのですか?
……そうですねそうですね。お披露目したいですよね。でも、疲れちゃうから途中からは馬車にしましょうよ」
「そうか……そうだよなぁ。馬車からGAMでカッコ良く飛び出したら、モテモテだろうなぁ」
ヨアキムが馬鹿な妄想に入り浸る裏で、キュジィは思い切りため息をついた。
●
辺境――マギア砦に続く街道。
「もう、なんでこんなに日差しが強いのよ! お肌荒れちゃうじゃない!
馬鹿っ! 太陽の、馬鹿っ!」
街道沿いを歩く一人の『男』。
上半身は裸、下半身は女性物下着にガーダーベルト。網タイツを着用している。
外見だけに着目すれば、何処に出しても恥ずかしい生粋の変態だ。
「この辺に醜くて馬鹿なドワーフがいるって聞いたんだけどぉ~。何処に行けばいいのかしら~」
オイルを塗って筋肉のキレを誇張しながら体をくねらせる男。
お食事時に家族で見たら噴き出す事間違いなしだが、この男――実は歪虚側の存在である。
「醜いドワーフなんかぁ~、超美しくてぇ~麗しい~あたしが~、踏んづけちゃうんだから!」
見る者に精神的ダメージを仕掛ける変態が、ヨアキムへ迫ろうとしていた。
異界より到来したラッツィオ島での戦い、そして帝国に再び姿を現した剣機の歪虚。
世界を覆ういくつもの邪悪の影は、各国、各地域の首脳陣をリゼリオへと呼び集める。
人類の明日を、如何に守るべきか。
異世界リアルブルーの人々も交えた会合により、人類の希望は二つの兵器に託される。
一つは、蒼き世界の機械の巨人、サルヴァトーレ・ロッソに眠る戦闘装甲機「CAM」。
だがそれは、必要な燃料の入手に苦慮し、動くことはあたわなかった。
一つは、帝国の練魔院にて研究されてきた魔導アーマー。
長年の研究の結果、稼働実験にまで漕ぎ着けた、新たなる力。
そして世界は、二つの力を合わせることを選択する。
魔導アーマーの動力をCAMに搭載する実験が提唱され、世界はそれに向けて動き出した。
仮に実験が成功すれば、人類は歪虚に対抗する大きな手段を得るだろう。
だが……。
と、かっこいいスタートを切る依頼だったが、この状況をあの馬鹿が見逃すはずもなかった。
「おーい、給仕~」
「ですから、給仕じゃありません。執事です。執事のキュジィです」
地下城『ヴェドル』で、いつものやり取りをするヨアキム(kz0011)とキュジィ。
既に代わり映えのしない老年夫婦のような会話だが、今日はひと味違った。
ヨアキムに怪しい笑みが浮かぶ。
「うっ、ヨアキム様。その笑みはまさか……」
「察しがいいな。給仕。
聞けば、辺境にCAMと魔導アーマーってぇのが来るらしいじゃねぇか。
だったら、俺等ドワーフも兵器作って参戦するしかねぇだろ!」
無駄に力の入るヨアキム。
こういうヨアキムがロクな事をしないのは毎度恒例。
早くもキュジィの頭に痛みが走り始める。
「何をされたんですか?」
「よくぞ聞いた! 俺等辺境のドワーフが叡智を結集して作った新兵器、とくと拝みやがれ!」
ヨアキムは、背後にあった白い布を取り払う。
そこにはショッキングピンクに彩られた騎士用の鎧甲冑があった。色使いからセンスを疑いたくなるが、肩に装着したマントには『魔道海女』と書かれ、胸の部分には黒く太い文字で『GAM』と書かれている。
「こ、これは……」
「どうだ! リアルブルーで粋な武将と名高い『魔道海女』の名前を背負った最終決戦兵器――その名もGAMだ。
ちなみにGAMは『ガッツだ 熱く 燃え上がれ』の略だからな」
また何処かのハンターに騙されたらしいヨアキムが、勝手に暴走して意味不明な代物を生み出してしまったようだ。
キュジィは工房を取り仕切るカペラ(kz0064)の愚痴を思い浮かべて頭を抱えている。
「ビビったか? たじろいだか?
このGAMを稼働実験場へ持ち込んで、早速お披露目と行こうじゃねぇか。
……えーと、こいつを着るにはっと」
「え? 着るんですか?」
「当たり前じゃねぇか。これだけで動く訳ねぇだろ」
キュジィは、呆気に取られた。
どうやら兵器が持ち込まれる事は分かったが、何の実験をするかは理解していないようだ。心底馬鹿で残念なドワーフ王だが、これでも辺境ドワーフでは敬われているんです。
「おーい、給仕。ちょっとこの脚部の留め金を止めてくれ。こいつ着て現地まで歩いて行くから、しっかり止めないとな」
「え? 徒歩で行くのですか?
……そうですねそうですね。お披露目したいですよね。でも、疲れちゃうから途中からは馬車にしましょうよ」
「そうか……そうだよなぁ。馬車からGAMでカッコ良く飛び出したら、モテモテだろうなぁ」
ヨアキムが馬鹿な妄想に入り浸る裏で、キュジィは思い切りため息をついた。
●
辺境――マギア砦に続く街道。
「もう、なんでこんなに日差しが強いのよ! お肌荒れちゃうじゃない!
馬鹿っ! 太陽の、馬鹿っ!」
街道沿いを歩く一人の『男』。
上半身は裸、下半身は女性物下着にガーダーベルト。網タイツを着用している。
外見だけに着目すれば、何処に出しても恥ずかしい生粋の変態だ。
「この辺に醜くて馬鹿なドワーフがいるって聞いたんだけどぉ~。何処に行けばいいのかしら~」
オイルを塗って筋肉のキレを誇張しながら体をくねらせる男。
お食事時に家族で見たら噴き出す事間違いなしだが、この男――実は歪虚側の存在である。
「醜いドワーフなんかぁ~、超美しくてぇ~麗しい~あたしが~、踏んづけちゃうんだから!」
見る者に精神的ダメージを仕掛ける変態が、ヨアキムへ迫ろうとしていた。
リプレイ本文
「初めまして、エルバッハ・リオン(ka2434)と申します。よろしければエルとお呼びください。よろしくお願いします」
パンプキンヘッドを外しエンジェルドレスをなびかせて挨拶をするエル。
その対象は……肩に装着したマントには『魔導海女』と書かれたショッキングピンクの鎧甲冑。辺境ドワーフが産みだした可哀想な兵器『GAM』と、それに搭乗するドワーフ王ヨアキム(kz0011)であった。
「おう、エル。よろしくな!
まあ、ワシとこのGAMがあれば何の心配もねぇがな! ぶわっはっは!」
いつも以上にご機嫌なヨアキム。
心配はいらないと言い張っているが、十中八九何も考えていない。
行き当たりばったりの人生だが、それがドワーフ王ヨアキムの生き様である。
「GAM……拠点防衛とかなら使えるでしょうか?」
「あん? 何か言ったか?」
「いいえ。何でもありません」
ヨアキムの問いに、エルは笑顔で微笑み返す。
デザインセンスが皆無である事以上に機動性や隠密性に難がある。兵器として問題を抱えているが、ヨアキム本人が気に入っているのだから優しく見守ってやるべきだろう。
「あれ~? 珍しい逸品だと思ったら、ただの鎧じゃないですか~。
CAMモドキを見に来たのにちょっと違いました~」
エリセル・ゼノル・グールドーラ(ka2087)は、GAMの前で軽く肩を落とす。
辺境ドワーフが産みだした兵器があると聞いてきたのだが、実際に現れたのはドワーフのおっさんが着たピンクの鎧があるだけ。CAMのような人型兵器を想像していただけに落胆も大きい。
「ただの鎧じゃねぇ! こいつは決戦兵器の『GAM』だ!
こいつがあれば歪虚なんか拳でぶっ倒してやる!」
叫ぶように力説するヨアキム。
いや、そんなもん着て素手で闘うつもりだったのか。
それに対してエリセルの反応は冷たい。
「ふぅ~ん。じゃあ、『GAM』の動力源ってなんなんですか~」
「根性」
最早一方通行の会話が繰り返されると察知したエリセルは、思い切りため息をついた。
『よろしくお願いします。
……少しでも力になれるよう、精一杯、頑張ります』
スケッチブックを片手にメイ=ロザリンド(ka3394)は、優しく微笑み掛ける。
スケッチブックを提示された段階で、ヨアキムも事情を何となく察する。馬鹿であってもこれぐらいは気遣いできるんです。
「おう。でも、やべぇとなったらいつでもワシのGAMを頼るんだ。ワシが守ってやるからな」
力説するヨアキムの前で、メイは軽く笑顔が引きつった。
動く度にガチャガチャ鳴り響く鎧甲冑。
遠くに居ても存在をアピールしてしまう色彩とデザイン。
装甲を厚くし過ぎてヨアキムであっても早く動けない、犠牲となった機動性。
どれをとっても可哀想な兵器であった。
ハンターの一堂がドン引く中、GAMを褒めちぎる者が一人。
「スゴい、格好が良いのだ。実にイカしたフォルム。流石、小父殿!」
腕をブンブン回し全身で感情表現するミルフルール・アタガルティス(ka3422)。
鎧にガンガン指紋を付けまくり、容赦なくGAMによじ登る。
「ぶわっはっは! そうか。GAMはカッコイイだろう!」
「小父殿! これは口から炎を出したり、胸から飛び道具がでたり、四次元に通じる魔法の道具を所持しているのであろう!」
「ふふ。こいつに搭乗すると口内炎ができ、胸だけじゃ無く全身から汗が噴き出し、異次元を越えるような不思議な臭いを発しているぞ。既に汗に混じって酸っぱい臭いが『GAM』中に……」
既にダメフラグが立っているGAM。
どうやら通気性にも難があるようだ。
「……なぁ、CAMがどうなったら、アレになるんだ?」
「私に聞かないでよ、仕事なんだからやる事やりましょ?」
GAMを目にした元CAMのパイロット岩動 巧真(ka1115)は、元同僚のリラ・L=ローズレ(ka1123)に声をかける。
CAMパイロットから見ても異様な光景だったらしく、巧真もリラに話さずにはいられなかった。もっとも、リラから見ても意味不明な光景なのだから聞かれても困る訳だが……。
「さぁ、お仕事の時間よ」
リラは巧真をつれて歩き出す。
こうしてハンター達による馬鹿のお守りが始まった。
●
「……ぜぇぜぇぜぇ」
街道をゆくGAMとヨアキム。
行程の半分程度まで到達したが、早くも息を切らせている。
通気性が悪い上に、今日は晴天。
太陽の熱を元気一杯に吸収した甲冑は、着ている者の水分を奪い去っていく。さすがのヨアキムもグロッキーであった。
「うっ、凄く汗臭そうですぅ~」
エリセルは思わずたじろいだ。
ただでさえ風呂に入らないヨアキムだ。そこへGAMによる灼熱地獄。GAMの中はおそらくこの世の物には存在し得ない不思議な臭気を封じ込めている。
『大丈夫ですか?』
ヨアキムの体を案じるメイ。
こんな馬鹿に心を砕くとは、何と優しい。
だが、当のヨアキムは返事をするのも大変そうだ。
「……ああ。さすがにちょっときついな」
『脱げばよろしいのでは?』
「こいつは一人では着られねぇんだ。だから着て行かねぇと……」
『では、現地で誰かに着せてもらえば良かったのではないでしょうか?』
「……あ!!」
メイの一言で大事な事に気付いたヨアキム。
そう、始めから甲冑を脱いで現地で誰かに着せてもらえば良かったのだ。
そうすればこの灼熱地獄を体感する必要はなかった。馬鹿の為せる匠の技である。
「くぅ~。何たる不覚! ワシとした事が!
きっとこれも歪虚の仕業に違いねぇ!」
いや、お前の馬鹿は歪虚の仕業じゃ無いから……。
「おい。気のせいじゃねぇよな?」
そう行ったのは、前方を歩く巧真。
その言葉にリラも聞き返した。
「何よ?」
「良い天気、青い空」
「見れば分かるわ」
「ガーダーを付けた変態」
「だから、見れば……は?」
リラは思わず聞き返す。
巧真が指差した先には、ガーターベルトに女性物の下着を着用した男がいる。上半身の筋肉を誇示するべく両腕を頭の後ろで組みながらゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。
「何あれ?」
「オレに聞くな。
そうか、やっぱり見間違いじゃないか。こっちも負けず劣らずだけどよ。明らかにアレはこっちに向かって来るよな」
夢でない事に落胆する巧真。
残念ながら前方からやってくる変態は現実で、今から嫌でもこいつと絡まなければならないのだから気が重くなる。
「あら? いい男もいるじゃない?」
近づいてきた男は巧真に色目を使い出す。
次の瞬間、巧真の背筋に悪寒が走り抜ける。
どうやらこいつは普通の変態じゃない。変態の上に変態を乗せた特上級の変態だったようだ。
「また変な人が現れましたね。誰かのお知り合いでしょうか」
リオンはマジカルステッキを握りしめる。
戦闘態勢に入るのも無理はない。だが、当の変態はリオンの警戒を気にせず、勝手に話を進め始める。
「悪いけど、女子と関わる暇はないの。イケメンなら呼び止めても良いけど。
……あら? ちょっと。その鎧、イカすじゃない?」
どうやら、変態はターゲットをGAMへ移したようだ。
「こいつはダメだ。ワシはGAMで格好良く登場するんだからな」
露骨に断るヨアキム。
だが、変態はヨアキムがいたと分かった瞬間に顔色が変わる。
「まあ! こんな美しい鎧の中から、どうしてばっちぃドワーフが出てくるのよ!
インチキよ! 金返せ!」
金なんか誰も借りてないのだが、怒りだした事だけはハンターに伝わる。
そして、変態に向かってミルフルールが一歩前へ出る。
「そのような装いで寒くないかと案じておったが、漢と漢女の正装は己の筋肉というもの!
その筋肉っ、ただ者ではないなっ!」
さすが脳筋と呼ばれるミルフルールだけあって、相手の筋肉で危険な香りを察知した。
もっとも、危ない奴だって事は見ただけで分かるけど。
「我はルル。ミルフルール・アタガルティスだ。
其文字の御名、お聞かせ願おう」
「あたしはMrs.ホージー。歪虚一の美を標準装備した罪深き乙女……」
「歪虚!?」
次の瞬間、ハンター達は一気に警戒を強める。
人間だったら困るが、歪虚だったら容赦はいらない。
さっさと目の前の変態を屠りたい。
「野郎っ! てめぇはこのワシが……」
「硬ぇからって前に出んなっつってんだろーが! ほら後ろだ!」
前に出ようとするヨアキムの前に回り込む巧真。
敵の狙いはGAMである事は明確。ハンター達は事前に取り決めていた役割に別れて行動を開始する。
「我の想いを力に……」
ミルフルールはヨアキムにプロテクションを施す。
ど変態ではあるが、あの筋肉は本物。もし攻撃を仕掛けられたら……そう考えるだけで恐ろしさを感じずには居られない。
「護衛のお仕事ですから、GAMには近づかないで欲しいですぅ」
エリセルはショートソードで変態を斬りつける。
ショートソードの刃が変態の肌を走る。
――しかし。
「!? な、なんか変な感触ですぅ~」
ショートソードは確実に変態の肌を捉えていた。
だが、妙な感触がエリセルへと伝わる。明らかにおかしい。
見れば変態の肌にはできているはずの傷がない。
「来るなっつってんだろ!」
巧真は、変態に向かってアサルトライフルを放つ。
撃ち出される弾丸が、変態に向かって突き刺さる――はずだったが、変態は気色悪い笑顔を浮かべるだけで傷一つ付いていない。
「ちょっと~。そんなんで艶やかなかつ玉のようなあたしの肌を傷つけられると思ってるの~?
あたしのお肌はちょっぴりオイリーだから、そういう武器は滑って当たらないの。残念ね~」
よく見れば変態の体は、オイル塗れだ。
てっきり筋肉を綺麗に見せる為のオイルかと思ったが、変態の肌から滲み出た油のようだ。それが物理攻撃を無効化しているらしい。そう考えるとこれ程気色悪い変態はいない。
「さぁ、さっさとその美しい鎧をあたしに寄越しなさい。愛と美の化身たるあたしが、その鎧を着こなして社交界にデビューしてあげるんだから」
「センスの悪い鎧ですが、守らねばなりませんので……失礼します、ねっ!」
物理攻撃がダメならば、とリラはファイアアローで変態に攻撃を仕掛ける。
炎をオイルのせいで無効化されると思ったが……。
「きゃ!」
放たれる炎の矢を見て、変態は慌てて回避行動を取る。
「あ、危ないじゃない! そんな攻撃されたら、あたしが傷つくじゃ無い! 心じゃ無く、体が」
「……あ、魔法は効果あるんだ」
リラの攻撃によってあっさり白状する変態。
自分自身で能力を暴露する辺り、ヨアキムと同類の馬鹿みたいだ。
物理攻撃は効果がないようだが、魔法攻撃の効果はバツグンだ。
「そうと分かれば簡単ですね」
エルバッハがウインドスラッシュで攻撃。
吹き荒れる風が、変態の周囲に生成される。
変態も慌てて逃げ惑う。
「きゃー! 風よ! 風があたしを翻弄するの!」
「オイル等に頼って痛みを乗り越えんとは、筋肉がないておる。
……筋肉の悲しみを知れっ!」
変態の逃走方向を先読みしていたミルフルールは、変態が移動する場所に向かってシャドウブリットを放つ。
「え?」
事態に気付いた変態が振り返った瞬間、シャドウブリットが直撃。
黒い塊によりもたらされた衝撃が、変態の体を吹き飛ばす。
「げぶぅ!」
派手に地面へ転がり滑っていく変態。
どうやら自分のオイルが原因で衝撃以上に地面を転がっているようだ。
数メートル先まで転がった後で、大木に衝突。激しく後頭部を強打したようだ。
「痛いじゃない!
……あ、あたしの網タイツの穴が! あたしの自慢の網タイツなのに!」
変態は一人大騒ぎ。
転がっている間に網タイツに穴が空いてショックを受けている。心が折られたのか、泣き叫んでその場から動こうとしない。
心配するのは網タイツじゃなくてお前の頭の方だよ、とハンター達は思うのだが、これ以上刺激しても面倒なのでGAMを連れて移動を開始する。
『行きましょう。誰も怪我をされなくて良かったです』
GAMの傍らで、メイは先程の戦闘がなかったかのようなに笑みを浮かべる。
確かに魔法攻撃で撃退した為、怪我人が出なかった。
怪我人が出ればマテリアルヒーリングを使うつもりだったのだが、怪我人がいない事は幸いだった。
「そうだな。……しかし、あいつは何なんだ?」
がしゃがしゃと金属音を立てながら歩くヨアキム。
ヨアキムもかなりの馬鹿なのだが……。
今回の任務は変態の撃退ではなく、この馬鹿の護衛。さっさと予定の場所までGAMを連れていかなければならない。そういう意味では肉体的ではなく、精神的に辛い依頼だったのかもしれない。
遠く離れていくGAMの後ろ姿に、変態は悲しみに塗れた声を叫ぶ。
「……今度会ったら酷いんだから! 覚えてなさいよ!」
●
その後ハンター達は所定の場所へ到着。
馬車にGAMを押し込んで、任務は無事終了となった。
「よっこらしょ。ようやく休めるな」
「熱中症になると悪いですから、お水を飲んで下さいね~」
エリセルは、息を止めて水を差しだした。
既にヨアキムの周囲からは強烈な臭いを発している。近づくだけでも危険な気がするエリセル。GAMが量産された暁には、兵器として役立てるのかもしれない。
「おお、悪いな!」
ヨアキムはエリセルに差し出された水を一気に飲み干す。
あれだけ汗をかいていたのだ。水を飲みたくなるのも当然だろう。
「小父殿! ついにGAMがお披露目だ」
「うむ。しかし、今回の行動でGAMの問題点が見えてきたぞ。
そこでワシはお披露目の前にGAMの改修へ着手する」
「おおっ!」
興奮するミルフルール。
その後ろではハンター達が呆気に取られていた。移動するだけで苦労したGAMの運用を諦めるどころか、さらに手を加えてようとしている。ゴミにいくら手を加えてもゴミにしかならないのだが……。
「そうだ。実験場に現れた時が、『GAMマークII』のお披露目だ。ぶわっはっは!」
ご機嫌のヨアキム。
ちなみに読み方は『ぎゃむまーくあいあい』だ。
「本物のCAMを見て驚くだろうな、きっと。
それより、リラ。あの変態、どう思う?」
GAMを遠巻きに眺めていた巧真は、リラに話し掛ける。
「どうって……。ああいう性格なのは、しつこく付きまとうんじゃない?」
「だよなぁ。物理攻撃が効かないってぇのはかなり厄介だ。馬鹿のおかげで能力を使いこなしてねぇようだがな」
見るからに近づいてはいけない変態だが、歪虚は歪虚。
今回は依頼に従って撃退しただけだが、討伐依頼が出ればあの変態を倒さなければならない。
それ以上に今後も奇怪な歪虚が増えてくると考えると……。
「最悪だな、ほんと」
頭を抱えたくなる巧真であった。
パンプキンヘッドを外しエンジェルドレスをなびかせて挨拶をするエル。
その対象は……肩に装着したマントには『魔導海女』と書かれたショッキングピンクの鎧甲冑。辺境ドワーフが産みだした可哀想な兵器『GAM』と、それに搭乗するドワーフ王ヨアキム(kz0011)であった。
「おう、エル。よろしくな!
まあ、ワシとこのGAMがあれば何の心配もねぇがな! ぶわっはっは!」
いつも以上にご機嫌なヨアキム。
心配はいらないと言い張っているが、十中八九何も考えていない。
行き当たりばったりの人生だが、それがドワーフ王ヨアキムの生き様である。
「GAM……拠点防衛とかなら使えるでしょうか?」
「あん? 何か言ったか?」
「いいえ。何でもありません」
ヨアキムの問いに、エルは笑顔で微笑み返す。
デザインセンスが皆無である事以上に機動性や隠密性に難がある。兵器として問題を抱えているが、ヨアキム本人が気に入っているのだから優しく見守ってやるべきだろう。
「あれ~? 珍しい逸品だと思ったら、ただの鎧じゃないですか~。
CAMモドキを見に来たのにちょっと違いました~」
エリセル・ゼノル・グールドーラ(ka2087)は、GAMの前で軽く肩を落とす。
辺境ドワーフが産みだした兵器があると聞いてきたのだが、実際に現れたのはドワーフのおっさんが着たピンクの鎧があるだけ。CAMのような人型兵器を想像していただけに落胆も大きい。
「ただの鎧じゃねぇ! こいつは決戦兵器の『GAM』だ!
こいつがあれば歪虚なんか拳でぶっ倒してやる!」
叫ぶように力説するヨアキム。
いや、そんなもん着て素手で闘うつもりだったのか。
それに対してエリセルの反応は冷たい。
「ふぅ~ん。じゃあ、『GAM』の動力源ってなんなんですか~」
「根性」
最早一方通行の会話が繰り返されると察知したエリセルは、思い切りため息をついた。
『よろしくお願いします。
……少しでも力になれるよう、精一杯、頑張ります』
スケッチブックを片手にメイ=ロザリンド(ka3394)は、優しく微笑み掛ける。
スケッチブックを提示された段階で、ヨアキムも事情を何となく察する。馬鹿であってもこれぐらいは気遣いできるんです。
「おう。でも、やべぇとなったらいつでもワシのGAMを頼るんだ。ワシが守ってやるからな」
力説するヨアキムの前で、メイは軽く笑顔が引きつった。
動く度にガチャガチャ鳴り響く鎧甲冑。
遠くに居ても存在をアピールしてしまう色彩とデザイン。
装甲を厚くし過ぎてヨアキムであっても早く動けない、犠牲となった機動性。
どれをとっても可哀想な兵器であった。
ハンターの一堂がドン引く中、GAMを褒めちぎる者が一人。
「スゴい、格好が良いのだ。実にイカしたフォルム。流石、小父殿!」
腕をブンブン回し全身で感情表現するミルフルール・アタガルティス(ka3422)。
鎧にガンガン指紋を付けまくり、容赦なくGAMによじ登る。
「ぶわっはっは! そうか。GAMはカッコイイだろう!」
「小父殿! これは口から炎を出したり、胸から飛び道具がでたり、四次元に通じる魔法の道具を所持しているのであろう!」
「ふふ。こいつに搭乗すると口内炎ができ、胸だけじゃ無く全身から汗が噴き出し、異次元を越えるような不思議な臭いを発しているぞ。既に汗に混じって酸っぱい臭いが『GAM』中に……」
既にダメフラグが立っているGAM。
どうやら通気性にも難があるようだ。
「……なぁ、CAMがどうなったら、アレになるんだ?」
「私に聞かないでよ、仕事なんだからやる事やりましょ?」
GAMを目にした元CAMのパイロット岩動 巧真(ka1115)は、元同僚のリラ・L=ローズレ(ka1123)に声をかける。
CAMパイロットから見ても異様な光景だったらしく、巧真もリラに話さずにはいられなかった。もっとも、リラから見ても意味不明な光景なのだから聞かれても困る訳だが……。
「さぁ、お仕事の時間よ」
リラは巧真をつれて歩き出す。
こうしてハンター達による馬鹿のお守りが始まった。
●
「……ぜぇぜぇぜぇ」
街道をゆくGAMとヨアキム。
行程の半分程度まで到達したが、早くも息を切らせている。
通気性が悪い上に、今日は晴天。
太陽の熱を元気一杯に吸収した甲冑は、着ている者の水分を奪い去っていく。さすがのヨアキムもグロッキーであった。
「うっ、凄く汗臭そうですぅ~」
エリセルは思わずたじろいだ。
ただでさえ風呂に入らないヨアキムだ。そこへGAMによる灼熱地獄。GAMの中はおそらくこの世の物には存在し得ない不思議な臭気を封じ込めている。
『大丈夫ですか?』
ヨアキムの体を案じるメイ。
こんな馬鹿に心を砕くとは、何と優しい。
だが、当のヨアキムは返事をするのも大変そうだ。
「……ああ。さすがにちょっときついな」
『脱げばよろしいのでは?』
「こいつは一人では着られねぇんだ。だから着て行かねぇと……」
『では、現地で誰かに着せてもらえば良かったのではないでしょうか?』
「……あ!!」
メイの一言で大事な事に気付いたヨアキム。
そう、始めから甲冑を脱いで現地で誰かに着せてもらえば良かったのだ。
そうすればこの灼熱地獄を体感する必要はなかった。馬鹿の為せる匠の技である。
「くぅ~。何たる不覚! ワシとした事が!
きっとこれも歪虚の仕業に違いねぇ!」
いや、お前の馬鹿は歪虚の仕業じゃ無いから……。
「おい。気のせいじゃねぇよな?」
そう行ったのは、前方を歩く巧真。
その言葉にリラも聞き返した。
「何よ?」
「良い天気、青い空」
「見れば分かるわ」
「ガーダーを付けた変態」
「だから、見れば……は?」
リラは思わず聞き返す。
巧真が指差した先には、ガーターベルトに女性物の下着を着用した男がいる。上半身の筋肉を誇示するべく両腕を頭の後ろで組みながらゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。
「何あれ?」
「オレに聞くな。
そうか、やっぱり見間違いじゃないか。こっちも負けず劣らずだけどよ。明らかにアレはこっちに向かって来るよな」
夢でない事に落胆する巧真。
残念ながら前方からやってくる変態は現実で、今から嫌でもこいつと絡まなければならないのだから気が重くなる。
「あら? いい男もいるじゃない?」
近づいてきた男は巧真に色目を使い出す。
次の瞬間、巧真の背筋に悪寒が走り抜ける。
どうやらこいつは普通の変態じゃない。変態の上に変態を乗せた特上級の変態だったようだ。
「また変な人が現れましたね。誰かのお知り合いでしょうか」
リオンはマジカルステッキを握りしめる。
戦闘態勢に入るのも無理はない。だが、当の変態はリオンの警戒を気にせず、勝手に話を進め始める。
「悪いけど、女子と関わる暇はないの。イケメンなら呼び止めても良いけど。
……あら? ちょっと。その鎧、イカすじゃない?」
どうやら、変態はターゲットをGAMへ移したようだ。
「こいつはダメだ。ワシはGAMで格好良く登場するんだからな」
露骨に断るヨアキム。
だが、変態はヨアキムがいたと分かった瞬間に顔色が変わる。
「まあ! こんな美しい鎧の中から、どうしてばっちぃドワーフが出てくるのよ!
インチキよ! 金返せ!」
金なんか誰も借りてないのだが、怒りだした事だけはハンターに伝わる。
そして、変態に向かってミルフルールが一歩前へ出る。
「そのような装いで寒くないかと案じておったが、漢と漢女の正装は己の筋肉というもの!
その筋肉っ、ただ者ではないなっ!」
さすが脳筋と呼ばれるミルフルールだけあって、相手の筋肉で危険な香りを察知した。
もっとも、危ない奴だって事は見ただけで分かるけど。
「我はルル。ミルフルール・アタガルティスだ。
其文字の御名、お聞かせ願おう」
「あたしはMrs.ホージー。歪虚一の美を標準装備した罪深き乙女……」
「歪虚!?」
次の瞬間、ハンター達は一気に警戒を強める。
人間だったら困るが、歪虚だったら容赦はいらない。
さっさと目の前の変態を屠りたい。
「野郎っ! てめぇはこのワシが……」
「硬ぇからって前に出んなっつってんだろーが! ほら後ろだ!」
前に出ようとするヨアキムの前に回り込む巧真。
敵の狙いはGAMである事は明確。ハンター達は事前に取り決めていた役割に別れて行動を開始する。
「我の想いを力に……」
ミルフルールはヨアキムにプロテクションを施す。
ど変態ではあるが、あの筋肉は本物。もし攻撃を仕掛けられたら……そう考えるだけで恐ろしさを感じずには居られない。
「護衛のお仕事ですから、GAMには近づかないで欲しいですぅ」
エリセルはショートソードで変態を斬りつける。
ショートソードの刃が変態の肌を走る。
――しかし。
「!? な、なんか変な感触ですぅ~」
ショートソードは確実に変態の肌を捉えていた。
だが、妙な感触がエリセルへと伝わる。明らかにおかしい。
見れば変態の肌にはできているはずの傷がない。
「来るなっつってんだろ!」
巧真は、変態に向かってアサルトライフルを放つ。
撃ち出される弾丸が、変態に向かって突き刺さる――はずだったが、変態は気色悪い笑顔を浮かべるだけで傷一つ付いていない。
「ちょっと~。そんなんで艶やかなかつ玉のようなあたしの肌を傷つけられると思ってるの~?
あたしのお肌はちょっぴりオイリーだから、そういう武器は滑って当たらないの。残念ね~」
よく見れば変態の体は、オイル塗れだ。
てっきり筋肉を綺麗に見せる為のオイルかと思ったが、変態の肌から滲み出た油のようだ。それが物理攻撃を無効化しているらしい。そう考えるとこれ程気色悪い変態はいない。
「さぁ、さっさとその美しい鎧をあたしに寄越しなさい。愛と美の化身たるあたしが、その鎧を着こなして社交界にデビューしてあげるんだから」
「センスの悪い鎧ですが、守らねばなりませんので……失礼します、ねっ!」
物理攻撃がダメならば、とリラはファイアアローで変態に攻撃を仕掛ける。
炎をオイルのせいで無効化されると思ったが……。
「きゃ!」
放たれる炎の矢を見て、変態は慌てて回避行動を取る。
「あ、危ないじゃない! そんな攻撃されたら、あたしが傷つくじゃ無い! 心じゃ無く、体が」
「……あ、魔法は効果あるんだ」
リラの攻撃によってあっさり白状する変態。
自分自身で能力を暴露する辺り、ヨアキムと同類の馬鹿みたいだ。
物理攻撃は効果がないようだが、魔法攻撃の効果はバツグンだ。
「そうと分かれば簡単ですね」
エルバッハがウインドスラッシュで攻撃。
吹き荒れる風が、変態の周囲に生成される。
変態も慌てて逃げ惑う。
「きゃー! 風よ! 風があたしを翻弄するの!」
「オイル等に頼って痛みを乗り越えんとは、筋肉がないておる。
……筋肉の悲しみを知れっ!」
変態の逃走方向を先読みしていたミルフルールは、変態が移動する場所に向かってシャドウブリットを放つ。
「え?」
事態に気付いた変態が振り返った瞬間、シャドウブリットが直撃。
黒い塊によりもたらされた衝撃が、変態の体を吹き飛ばす。
「げぶぅ!」
派手に地面へ転がり滑っていく変態。
どうやら自分のオイルが原因で衝撃以上に地面を転がっているようだ。
数メートル先まで転がった後で、大木に衝突。激しく後頭部を強打したようだ。
「痛いじゃない!
……あ、あたしの網タイツの穴が! あたしの自慢の網タイツなのに!」
変態は一人大騒ぎ。
転がっている間に網タイツに穴が空いてショックを受けている。心が折られたのか、泣き叫んでその場から動こうとしない。
心配するのは網タイツじゃなくてお前の頭の方だよ、とハンター達は思うのだが、これ以上刺激しても面倒なのでGAMを連れて移動を開始する。
『行きましょう。誰も怪我をされなくて良かったです』
GAMの傍らで、メイは先程の戦闘がなかったかのようなに笑みを浮かべる。
確かに魔法攻撃で撃退した為、怪我人が出なかった。
怪我人が出ればマテリアルヒーリングを使うつもりだったのだが、怪我人がいない事は幸いだった。
「そうだな。……しかし、あいつは何なんだ?」
がしゃがしゃと金属音を立てながら歩くヨアキム。
ヨアキムもかなりの馬鹿なのだが……。
今回の任務は変態の撃退ではなく、この馬鹿の護衛。さっさと予定の場所までGAMを連れていかなければならない。そういう意味では肉体的ではなく、精神的に辛い依頼だったのかもしれない。
遠く離れていくGAMの後ろ姿に、変態は悲しみに塗れた声を叫ぶ。
「……今度会ったら酷いんだから! 覚えてなさいよ!」
●
その後ハンター達は所定の場所へ到着。
馬車にGAMを押し込んで、任務は無事終了となった。
「よっこらしょ。ようやく休めるな」
「熱中症になると悪いですから、お水を飲んで下さいね~」
エリセルは、息を止めて水を差しだした。
既にヨアキムの周囲からは強烈な臭いを発している。近づくだけでも危険な気がするエリセル。GAMが量産された暁には、兵器として役立てるのかもしれない。
「おお、悪いな!」
ヨアキムはエリセルに差し出された水を一気に飲み干す。
あれだけ汗をかいていたのだ。水を飲みたくなるのも当然だろう。
「小父殿! ついにGAMがお披露目だ」
「うむ。しかし、今回の行動でGAMの問題点が見えてきたぞ。
そこでワシはお披露目の前にGAMの改修へ着手する」
「おおっ!」
興奮するミルフルール。
その後ろではハンター達が呆気に取られていた。移動するだけで苦労したGAMの運用を諦めるどころか、さらに手を加えてようとしている。ゴミにいくら手を加えてもゴミにしかならないのだが……。
「そうだ。実験場に現れた時が、『GAMマークII』のお披露目だ。ぶわっはっは!」
ご機嫌のヨアキム。
ちなみに読み方は『ぎゃむまーくあいあい』だ。
「本物のCAMを見て驚くだろうな、きっと。
それより、リラ。あの変態、どう思う?」
GAMを遠巻きに眺めていた巧真は、リラに話し掛ける。
「どうって……。ああいう性格なのは、しつこく付きまとうんじゃない?」
「だよなぁ。物理攻撃が効かないってぇのはかなり厄介だ。馬鹿のおかげで能力を使いこなしてねぇようだがな」
見るからに近づいてはいけない変態だが、歪虚は歪虚。
今回は依頼に従って撃退しただけだが、討伐依頼が出ればあの変態を倒さなければならない。
それ以上に今後も奇怪な歪虚が増えてくると考えると……。
「最悪だな、ほんと」
頭を抱えたくなる巧真であった。
依頼結果
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依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 リラ・L=ローズレ(ka1123) 人間(リアルブルー)|17才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2014/12/03 22:15:52 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/12/03 07:03:54 |