家畜を穿つ群れ

マスター:ザント

シナリオ形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~4人
サポート
0~20人
マテリアルリンク
報酬
少なめ
相談期間
5日
締切
2018/02/08 09:00
完成日
2018/02/16 00:21

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

「かーっ酒が美味い!」
 草木も眠る真夜中、牧場内に併設された見張り小屋で牧場従業員のザックは人知れずウォッカを飲んでいた。
 小さいながらも困窮せず黒字を出し続けるこの牧場は、一族だけで経営されており、ザックも牧場主の父親に小さい頃から仕事を手伝わされていた。
 大きくなってから任され出したこの不寝番も、これで何度目かも最早ザック自身にも分からない。
 酒が飲めるようになってからは、こうして父親はもちろん家族全員にバレないように酒を飲みつつ、一生懸命世話をして育て上げた外にいる家畜たちを見守るのがザックの楽しみの一つだ。
(つまり、決して暇だから酒を飲んでいるとかサボリとかじゃあない)
 誰に言い訳をするでもなく、ザックはそう思いグラスにある少なくなったウォッカを飲み干すと、熱い息を漏らしてお代わりを注ぐ。
(しっかし、今日はいい月夜だな。明かりがなくても手元までよく見えるし……なにより、酒が進む。こういうのを確か、月見酒と言うんだったか)
 酒が回り始めた頭で、ザックはどこかで聞いた単語を思い出しながらグラスを傾ける。
「……ェェェ」
「ん?」
 酒を飲むザックの耳に聞き慣れた羊の鳴き声が届いた。
「なんだ?」
 ザックはグラスを置いて耳を澄ますが、声どころか音すら聞こえない。
 先程までと変わらない静かな夜だ。
 ザックは先程の声は気のせいか、外にいる羊が寝ぼけて鳴いたのだろうと思い、特に気にせずにグラスへと手を伸ばした。
 その時だった。
 破裂音と共にグラスが飛び上がりながら砕け散ったのは。
「……は?」
 じわじわと床に酒の染みが出来るのをザックは呆然と眺める。
「な、なにが……」
 ザックは原因を探るべく、染みの向こうにある壁に半ば無意識で目を向け、天井近くの壁に突き刺さりもがく血塗られた細長い甲虫を見つけて何が起こったのかぼんやりと理解した。
「う……うわぁ!」
 ただの農民であるザックには弱点はもちろん対処法や正体など見当もつかないが、一つだけ分かる事があった。
(ここは危険だ! 早く逃げないと!)
 ザックは取るものも取らずに見張り小屋を飛び出すと、母屋に向かって全力で走り出す。
「うわぁあああああああ!」
 見張り小屋から破裂音が連続で鳴り響くのを背中越しに聞きながら、すぐ後ろで風切り音が何度も鳴るのを感じながら、ザックは母屋に飛び込んだ。
 その際、勢い余って擂り潰した薬草が入った瓶を割ってしまったが、今のザックに気にする暇はなく、すぐに近くの物影へと隠れる。
 強烈な薬草の臭いが部屋を満たしていく中で、扉を荒々しく開く音と瓶が割れる音を聞きつけたのか、家の奥から父親が顔を覗かせた。
「ザック、なんの騒ぎだ?」
「親父! 部屋に戻ってろ!」
「この臭い……お前、薬草の瓶を割っただろう。母さんに怒られるぞ」
 呆れたような顔で言う父親にザックは大声で怒鳴りつけた。
「いいから早く隠れろ! 変な虫が襲って……来ない?」
 言葉の途中で先程まで間断なく鳴っていた破裂音と風切り音もしなくなっていたのに気づいた。
(た、助かったのか?)
 少し待って音がしないと確信し、ザックは助かったと理解すると急に力が抜けて大きな安堵のため息を吐いた。
「……は、はぁぁぁ」
 そんな様子のザックを見て親父は訝しんだ表情を浮かべる。
「おい、ザック」
「なんだよ、親父」
「お前、顔が赤いな。酒でも飲んでいたのか?」
「だったら何だって……あ」
 気づいた時には既に遅しで、ザックは顔を真っ青にして父親の表情を窺う。
「こんの……大馬鹿野郎がぁ!」
 そして顔を真っ赤にした父親の怒りの拳がザックの頭に炸裂した。

「その後、夜が明けてから牧場を調査した所、小屋の外に居た羊や牛などの全ての家畜は無数に貫通した傷を受けて死んでいるのを発見。見張り小屋も同様に無数の突き破ったような穴が空いていて、内部は無残な状態となっていたそうです。依頼人と息子さんの証言も含めて判断すると……恐らく、スクィードビートルだと思われます」
 ハンターズ・ソサエティの女性職員は元ハンターとしての知識を活かして敵の正体の予想を此方に伝え、続いて敵の情報を教えてくれた。
「スクィードビートルは角が杭のように鋭く尖って進化し、発達した脚力で自分を銃弾と同じ速さで打ち出して攻撃してくる甲虫です。姿は甲殻に包まれたバッタで、大きさは七センチ程の大型イモムシと同等の大きさ。羽は退化しているので飛行は出来ません。肉食で、森や草原などの虫が居そうな場所に群れを作って生息しています。狩りと自衛の時以外は襲うような話は聞いたことがなく……正直、今回のような突然家畜を大量に襲ったり、個人を執拗に襲うといった話は聞いた事がありません。もし余裕があればその辺りも調べていただけると助かります」
 職員は最後に自分の意見とお願いを口にすると依頼内容を説明し始めた。
「依頼主は牧場主のゴードンさん。依頼主の話では見張り小屋の壁に空いた穴は三十近く。母屋へ行くまでの地面に二十近くの掘り返したような跡があったとの事でしたので、恐らく総数は五十近くだと思われます。依頼主はその全ての討伐を希望していましたが……先程お伝えした通り、スクィードビートルはイモムシほどの大きさですので全ての討伐は難しいとお伝えしたところ、最低でも半分以上の討伐。全ての討伐は可能であればという事で了承して頂きました。そして今回、襲われた家畜が居た場所に原因があるか、それかまた同じ場所に集まってくるかもしれないとお思いになられたようで、討伐を行う場所の指定がありました。他の家畜が犠牲にならないように、襲われた家畜が居た柵内と見張り小屋……そして当日は外泊をするらしいので、母屋を含めたその周辺で討伐を行ってください」
 説明を終えて職員は口を潤すためにグラスに入った水を飲み。
「後、当たり所が悪いとスクィードビートルが貫通しますので、注意してくださいね」
 と、注告しながら朗らかに笑った。

リプレイ本文


 牧場に着いた四人は、すぐにザックとその父親から話を聞いたが、職員から伝えられたこと以上の事はなかった。
 だが、朗報というべきか、襲われた夜からぱったりと襲撃がない事と、襲撃時にザックが割った瓶の薬草と同じ物を借りられたというのは喜ばしい事だった。
「借りた薬草瓶を使えば、これが苦手かどうか調べられるな」
「あぁ、これで再現が可能になった」
 久延毘 羽々姫(ka6474)の呟きに紫炎(ka5268)も頷く。
「それに、今のところまた来たって事がなかったのは良かったよね」
「そうだな」
 嬉しそうに言う時音 ざくろ(ka1250)に、エメラルド・シルフィユ(ka4678)も同意する。
(これを機会にスクィードビートルの生態を解明し、レポートにまとめてギルドへ報告するべきだな。今後の一助になってくれれば幸いだ)
 エメラルドは今後同じ事を起こさないべく、スクィードビートルの生態を明かそうと、紫炎と同様に意気込む。
「まずは被害が大きい場所と被害がない場所を調べようと思っているが、貴公らはどうする?」
「そうなると……家畜が殺された場所と見張り小屋か」
 羽々姫の言葉に紫炎は頷き、最初に調べる場所が決まる。
「土の中も調べるんだよね?」
「そうだな。調べるなら徹底的にするべきだ。確か農具小屋があったな。そこに何かないだろうか」
「えーと……あったあった」
 ざくろの質問にエメラルドはそう答え、羽々姫が農具小屋を見つけた。
「ん? 農具小屋って事は……」
「何をしてるんだ。早く探すぞ」
「あ、ちょっ」
 羽々姫の制止も聞かず、エメラルドは農具小屋の扉を開けた。いや、開けてしまった。
「うっ」
「む……」
「ぅげっ……くっさ!」
 扉が開くと同時に、離れた場所にいたざくろと紫炎の所まで届くほどの凝縮された臭いが周辺に漏れ出した。
「ぐはっ……」
 すぐ近くに居たエメラルドはもろにくらってしまい、口と鼻を抑えると、顔を青ざめさせながら涙目でざくろたちよりも遠くへと走って逃げた。
「に、臭いがきついね」
「道具に染み付いてしまっているんだろうな」
「あ、あの中からスコップを出すのかよ。あたしは嫌だぞ!」
「私もだ! 絶対に近づかんぞ!」
「私が出そう」
 女性陣の断固拒否の姿勢を見て、紫炎がささっと農具小屋からスコップを取り出す。
「まずは見張り小屋の前にこれを調べよう」
 紫炎の言葉で、三人は母屋の脇に無数にある掘り起こされた穴を見る。
「見た感じは結構深くまで掘られている。ただの穴だといいが……」
 紫炎はそのままスコップで穴を掘り始める。
 エメラルドがいち早く紫炎の意図に気づいた。
「これだけ穴が多いと巣の可能性もあるという事か」
「あっそうか」
「なるほどな」
 ざくろと羽々姫も納得の声を上げる。
「まぁ、その心配は杞憂だったようだ」
 穴の底まで掘り終え、何も無い事を確認した紫炎は掘り返した穴を埋める。
「次は見張り小屋か」
 四人はすぐ近くにある見張り小屋へと移動する。
 見張り小屋は襲撃時のままのようで、壁は穴だらけ。
 中では、外から中へ何かが壁を突き破ってきた無数の痕跡や床に散らばるガラス片と木片たちが、襲撃者と襲撃時の凄まじさを物語っている。
「これは、凄まじいな」
「予想はしていたが、やはりスクィードビートルの突進力が高いということだな」
「映画の銃撃戦の後みたいだな……」
「うん……」
 それを見て、四人は出身世界によって反応の差はあれど、スクィードビートルの脅威を再認識する。
(見張り小屋の壁は木の板一枚。これを突き破って、グラスも砕いてから壁に突き刺さる程の勢いと貫通力。スクィードビートルが向かってきた時、どれほどの威力か確かめてみるか)
 紫炎は人知れずにそう決めると、見張り小屋を見回すが、特筆すべき点は酒瓶とグラスと床のシミのみ。
「この床のシミが一番大きいな」
 羽々姫が床に散乱するガラス片を足で退かすと、シミとなっている部分を指でこすり、その指の匂いを嗅ぐ。
「酒のシミだ」
「でも、変だよね。出入り口に向かって何本も線が伸びる形のシミって……」
 ざくろの言う通り、大きなシミから太い線と細い線がいくつも出入り口に向かって伸びている。
「当時はザックさん以外は居なかったはずだから、この線はスクィードビートルが付けたのはほぼ間違いないよね」
「この様子だと何体も酒に群がったようだな」
「虫なのに酒が好きみたいだな」
「酒に群がる、か。となると……」
 四人は零しただけではありえない形のシミの発見で、推測の域でしかなかったものが確信になっていくのを感じ始めていた。
「最後に家畜が殺された柵を調べよう」
 考え込んでいた紫炎の言葉に頷き、四人はザックに教えてもらった家畜が殺されていた柵へと向かい、そのまま入る。
 四人はたっぷりと時間を掛け、土の下まで襲撃のあった柵内を調べ尽すが、問題はなにもなかった。
 被害がなかった柵の中も調べてみたが、そちらも全く同じで、問題は見つからなかった。
 そこで四人は結論を出す。
 牧場自体に問題や原因はなく、他に原因があると。
「やはり、酒か?」
「でも、直接お酒の匂いに引き付けられてるのか、飲んだ人に引き付けられるのかわからないね……」
 エメラルドの呟きに、ざくろがそこから二つの可能性をあげる。
「実際に調べるべきだな」
「酒単体なら開けて置けばいいな」
「もう片方は誰かが酒を飲まないといけないね」
「やはり飲まないと駄目か。忠実に再現するなら飲むべきなのだろうが……」
 全員が、実際に酒を使うことに賛成するが、問題は酒を飲む人。
「あたしは未成年だから無理だぞ」
「ざくろも未成年だから法を破るわけにもいかないし……そうだ、エメラルド、代わりに飲んでくれないかな?」
「わ、私が?」
 友人のお願いに、エメラルドは目を丸くする。
「馬鹿を言え! 私は聖導士だぞ! 酒を飲みながら戦うなど……!」
「じゃあ、紫炎にお願いするしかないけど……」
 ざくろが紫炎を見るが、紫炎は首を横に振った。
「私は武器で戦う。酒など言語道断だ」
「私もだ!」
「ほんの少しでいいから。ほろ酔いくらいだから」
「だが……」
「エメラルドは、今回は魔法主体で戦うんだよね?」
「あ、あぁ。剣での戦いの方が得手ではあるが……これも修行不足故のことだ」
「なら、呼気っていうのかな。お酒の匂いが一杯するだろうから、お酒を飲んだ人に引き寄せられるなら、スクィードビートルも引き寄せられると思うんだ。それなら剣でも戦えるんじゃないかな。それでも心配ならざくろが守るから」
「……わかった。私に任せろ!」
 ざくろの最後にダメ押しで、エメラルドは言いくるめられた。
 その後ろで、羽々姫は自分が持ってきた火酒「一人の夜」を取り出した。
「再現なら、ウォッカと同じ蒸留酒の一人の夜だよな?」
「ああ、後は、夜になるのを待ってからか」
 問題が解決し、紫炎は羽々姫の質問には答えながら落ち始めた太陽を見上げ、そう呟いた。


 日が完全に落ち、空が漆黒に染まり切った夜。
 四人は、依頼主の言う通りに被害のあった柵とその周辺で準備をしていた。
 母屋から少し離れた柵の傍に酒を置き、母屋と見張り小屋の陰に二人一組で隠れて観察する作戦だ。
「寄ってくる時間も考えて、そろそろ始めるとしよう」
「んじゃ、開けるぞー」
 紫炎のゴーサインで、羽々姫は缶ビールを開け、そしてそのまま紫炎と共に母屋の陰に隠れる。
 エメラルドも自分の役割をこなすべく酒瓶に手を伸ばすが、その前にざくろが手にとって開ける。
「せっかくだし、ざくろがお酌してあげるね」
「それはありがたいな」
 ざくろによってコップに赤みがかった酒が少量だけ注がれ、エメラルドはそれを飲み始める。
「引き受けてくれてありがとう。エメラルド」
「大人にしか出来ない事だ。気にするな」
 にこっと笑いながらお礼を言うざくろに、エメラルドは早くも酔いが回っているのか、赤ら顔で応えた。
 そんなエメラルドの対応にざくろは特に気にせず、缶ビールが並べられている場所に酒瓶を置き、見張り小屋の陰へと戻る。
 そしてエメラルドは口を押さえて、あまり酒の臭いを外に出さないようにする。
 柵の外に並べられた栓が開いたビールと酒。
 見張り小屋の陰には、酒を飲んだ人。
 前者はすぐに効果が分かるが、後者は別だ。
 酒以外の理由で引き寄せられるのなら、隠れていても反応するが、隠れて反応しないなら酒に引き寄せられるだということだ。
 酒特有のアルコール臭が周囲に漂ってからしばらく。
 それらは来た。
「ギッ」
 月の明りを反射する緑の甲殻を持った七センチ程のバッタのような甲虫。
 その頭部らしき場所は杭のように鋭く尖っている。
 間違いなくスクィードビートルだ。
 スクィードビートルたちはゾロゾロと……虫が移動するには少し遠い所にある森の方向からやって来ると、そのまま脇目も振らずに置かれた酒に集まっていく。
 これで酒の匂いに集まるということは確認された。
 酒を飲んでも、匂いさえ感じさせずに隠れていればやり過ごせるということも。
 スクィードビートルが酒の周辺へと集まってすぐ、牧場に破裂音とガラスが割れる音が響いた。
 一匹のスクィードビートルが突進で酒瓶を割ったのだ。
 それに続くように他のスクィードビートルも次々と突進して酒と共に様々な方向へと飛び散っていく。
 それを見たざくろが小屋の陰からジェットブーツを使って一息で柵の延長線上に移動すると、三十度扇状に赤白く輝く無数の熱線を、続いて紫炎が次元斬を集まっている箇所に向かって放ち、スクィードビートルたちを熱線で貫き、両断する。
 だが、三匹がそれらを回避し、派手な技だったからか残りのスクィードビートルたちがざくろのいる見張り小屋の方へと向かい始めた。
 羽々姫はそこへ向かって、練り上げたマテリアルを一気に放出した。
 一直線に放たれたそれは、軌道上に居た多くのスクィードビートルを吹き飛ばしていく。
 続いて、エメラルドが借り受けた薬草の瓶をスクィードビートルの後方へと投げた。
 ガラスが割れる小さい音と共に、漂っているアルコール臭に勝るとも劣らない強烈な薬草の臭いが周囲を漂い出す。
「ギィッ」
「ギギッ」
 薬草の臭いで苦しみ出すスクィードビートルたちを見て、四人はチャンスだと判断して一気に畳み掛けにいく。
 ざくろは、逃げ出そうとする七匹のスクィードビートルたちの後ろへと移動すると青白く輝く光線を放った。
 光線は直線上にいたスクィードビートルたちを瞬時に凍らせ、その命を奪う。
 次に羽々姫が飛び出し、スクィードビートルに向かって拳を叩きつけて籠手越しに潰し。
 エメラルドは七匹が集まっている場所へと移動すると、自身から出た光の波動を周囲へと放った。
 四匹を逃してしまったが、三匹が衝撃を受けたかのようにバラバラに吹き飛び、残骸が柵に叩きつけられて体液を飛び散らせる。
 紫炎は、五匹のスクィードビートルを狙いやすい位置に移動し、斬馬刀で薙ぎ払い、一匹が回避したが、残りの四匹を両断する。
 だが、回避したスクィードビートルはお返しと言わんばかりに紫炎に向かって突進をして来た。
「くっ」
 横と縦の体感速度の差に紫炎は驚くが、見切って回避する。
 そして、柵内では多くの仲間を殺されたからか、ざくろに向かって三匹が一斉に突進をする。
「うわっ! ちょ、あっ」
 ざくろは二匹をかわしたが、三匹目はかわせず足に直撃を受けた。
 だが、鈍い音と共に、スクィードビートルが弾かれる。
「チャンス!」
 ざくろは弾かれたスクィードビートルに向かってメイスを振り下ろし、そして仕留めた。
「よっと」
 紫炎がかわしたスクィードビートルに、羽々姫は拳を振り下ろし、潰す様に仕留める。
「もう一度っ」
 ざくろのかわしたスクィードビートルへと近づき、エメラルドはもう一度、光の波動を放ち、二匹とも衝撃を受け、バラバラになった。
「……もう、いないな?」
「多分、ね」
「あぁ……」
「って事は……」
 周りに気配がない事を確認し、四人は息を吐いた。
「これで、この牧場は救われたな」
 エメラルドの呟きの通り、スクィードビートルの生態も明らかになり、襲撃した群れも全滅。
 この牧場は救われたのだった。


 その後、四人はザックたちの帰宅を待ち、報告を行った。
 全滅させたと聞いて、ザックはもちろん家族全員がとても感謝していた。
 その後、四人はスクィードビートルが来た方角にある森に来ていた。
 羽々姫がスクィードビートルが牧場まで来た理由の調査も必要だと言い、三人も同意して森へと赴いていた。
「うーん、生態系が崩れたとかじゃないのかな。奥に行けばわかるのかな」
「あまり奥に行くと危険が増える。やめておくべきだ。それよりも」
 森の奥に行こうとするざくろを制止する紫炎の後ろで、エメラルドは屈んで木の低い部分を眺める。
「羽はないが、突進力で飛ぶことは出来る甲虫だ。こういった部分に痕跡が残っている可能性が……」
「ん?」
「どうかしたのか?」
 不意に、ざくろが何かに気付き、見回す。
「ほんの少しだけどお酒の匂いがする」
「こんな森の中でか?」
「うん……あそこからみたい」
 羽々姫の問いに、ざくろは少し離れた木の洞を指差す。
 よく見ると、その周りには古い牧場で見た傷があった。
「当たりだな」
 エメラルドは木の洞を覗き、中にある物を取り出した。
「果実などが発酵して出来た酒のようだな」
 エメラルドの手には、発酵して崩れたであろう果実があった。
 それとは別にもう一つ、果実ではないものも。
「肉片か?」
「そのようだ。この肉からも酒の匂いがするから、恐らくだが。スクィードビートルは肉を酒に漬けていたんじゃないか?」
「そう仮定として考えると、あの牧場で家畜を襲ったのも頷けるな」
 この肉を作るのに必要な酒の匂いにつられて行けば、大量の肉。
 ザックが襲われたのは、大切な材料を奪った敵だと思ったのだろう。
「実際に確認した方が良いのだろうが、この森の中から探し出すのは骨が折れるな。それに、あの群れしかいないという可能性もある」
「今回はこれで終わりという事だな」
「なら、とっとと帰ろうぜ。あたし、疲れたな」
「ざくろも疲れたよ」
 疲れたことを主張する未成年組に、大人組は肩を竦めると、四人は街へと戻っていった。

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MVP一覧

  • 雨垂れ石の理
    久延毘 羽々姫ka6474

重体一覧

参加者一覧

  • 神秘を掴む冒険家
    時音 ざくろ(ka1250
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • 悲劇のビキニアーマー
    エメラルド・シルフィユ(ka4678
    人間(紅)|22才|女性|聖導士
  • 聖盾の騎士
    紫炎(ka5268
    人間(紅)|23才|男性|舞刀士
  • 雨垂れ石の理
    久延毘 羽々姫(ka6474
    人間(蒼)|19才|女性|格闘士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/02/04 01:28:29
アイコン 相談卓
久延毘 羽々姫(ka6474
人間(リアルブルー)|19才|女性|格闘士(マスターアームズ)
最終発言
2018/02/07 22:35:02