• 黒祀

【黒祀】追撃の中の撤退戦

マスター:赤山優牙

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/12/07 22:00
完成日
2014/12/13 09:45

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ルルック

オープニング

【ラプト・フラジオ】と呼ばれる組織がある。
 呼ばれる、と言ってもそう呼ぶ人間は限られている。何しろその存在を知る者が少ないのに加えて、組織の特性からしておいそれとその名を口にするわけにはいかないからだ。
 ――目標を確認。現在地――。
 ――了解。引き続き監視にあたれ――。
 町の尖塔に上って単眼鏡を覗いたまま、口元の小型通信機で報告する男。単眼鏡の先には野原に『羊たち』が犇めく景色が広がっており、見ているだけで不快になりそうだ。
 男の傍には「第六商会」と書かれたエプロンが丸められて置かれている。第六商会。王国中に店舗を持ち、リゼリオなどとも交易を行う商店であるが、それは本来の姿ではない。
 王国貴族シャルシェレット家の有する諜報機関。それが、第六商会=ラプト・フラジオの正体であった。

●追撃
 ベリアル及びクラベルの一行は、先刻から続くニンゲンたちの襲撃に頭を悩ませていた。
「ええい、ニンゲンどもめ、羽虫の如きしつこさよ! 今一度私の力を見せてやらねばならぬようだな!」
「やめて。気を失った貴方の身体を島まで運ぶなんて、私はしたくないわ」
「ならばどうせよと言うのだ、私のクラベルよ」
「……私が殿軍を務めるから先に帰っていて。面倒だけれど、仕方がないわ。マテリアルの枯渇した貴方なんてただの豚羊だもの」
「メェ!?」
 クラベルはびしびしと文字通り鞭を打って主を先に行かせ、背後を振り返る。
 ニンゲンの追撃部隊はなかなかの規模で、こちらの現有戦力では迎撃に多少手間取りそうだ。傲慢の歪虚たる自分たちが負けることなどありはしないが、王都強襲で力を消耗した現状では苦しいことに変わりはない。島まで直接転移するには回復する時間がないし、さてどうするか。
 クラベルは自ら最後尾について敵先頭の騎馬を鉄針の投擲で殺しつつ、思案する。と、唐突に隣に『影』が顕現した。長身の『影』がクラベルとニンゲンの間に割って入る。

 ――これは……?

(フラベルの気配がするのに、フラベルじゃない?)
 その者から感じられる雰囲気は、クラベルに違和感を覚えさせた。
 フラベルは死んだ。
 だが、目の前に現れた者は、どこか懐かしい気配を感じさせる様な……。
(誰?)
 その『影』は形を成し、1人の歪虚が表れた。
 背中には金色の幾何学模様が美しい黒い翼。左腕にはドラゴンの様な鱗と鍵爪。
「クラベル様……ここは、私にお任せを」
 どこかで聞いた事のある様な声だった。
 誰だが思い出せない。
 だが、ここは、この者に任せよう。
 クラベルは頷き、この場から立ち去るのであった

●交差
 突如現れた歪虚らしき存在に騎士達は戸惑った。
 が、功名心が慎重をかき消す。
「ま、待って」
 騎士の1人が声をあげたが、全員が突撃していく。
「愚かな」
 歪虚が左腕を一振りした。
 たちまち、2人ばかりが馬もろとも地面に転がる。それを避けきれなかった騎士数名が落馬した。
「う、馬から降りろ!」
 残った騎士が馬から降り、剣を構えた。
「これは、退くべきです!」
 先程、制止の声をあげた騎士が声をあげる。
 その騎士も馬から降りていた。それは、倒れた仲間を助ける為であったのだが。
「『鉄壁の騎士』と呼ばれる貴女が、ここは退けというのか。こやつを倒せば、敵将の首は目の前だぞ」
「こちらが死んでしまったら、意味がありません!」
「団長の為にも、我らは退くわけにはいかん! 全員、突撃!」
 残った騎士達が一斉に歪虚へ向かっていく。
 それを歪虚は、左腕の鍵爪、右手に持った黒い剣で騎士達をなぎ倒していった。
「後は、貴様だけだ……」
 歪虚の言葉通り、この戦場で立っているのは、『鉄壁の騎士』のみだけとなった。
 他の者は、深手を負って、地面に転がっている。
 早急に手当てしなければ、命の危険が十分にあるのは分かっていた。
(せめて……人手があれば……)
 自分が囮になっている間に、彼らを救い出す事ができるだろう。
 だが、仲間が全員倒れた今では、それは叶わない。
 そう思った時、横から誰かが向かってくる。
(ハンター!?)
 見れば、ハンター達の装備や服は汚れている。
 別の戦場で追撃戦に参加していたのだろう。
 そして、帰途でこの場を偶然通りがかったのに違いない。
「ハンターの皆さん、ご助力、感謝申し上げます!」
 これなら、深手を負った仲間達を救う事ができるはず。
 『鉄壁の騎士』と呼ばれた彼女は、歪虚に向き合うと、覚醒状態に入る。
「覚醒者か……ならば、こちらも相応の力で応じようではないか」
 歪虚が不敵な笑みを浮かべた。

リプレイ本文

●重なり合う縁
「縁があるわね……手伝うわ、ソルラ」
 シエラ・ヒース(ka1543)が笑顔で鉄壁の騎士に呼び掛ける。
 ソルラは急遽、応援に駆け付けたハンター達の中にシエラがいた事に驚いた表情を浮かべた。
「これはまた……深追いし過ぎましたかね?」
 米本 剛(ka0320)が周囲の状況を見渡しながら、そんな言葉を発す。
 騎士達の焦る気持ちもわかるが、これでは歪虚の追撃どころではない。
「功を焦ってヘマしやがって……バカ野郎が」
 厳しい口調で言い放ったジャック・J・グリーヴ(ka1305)。
 倒れている騎士のうち数名は、即死状態だ。残り10人ばかしが悲鳴や苦痛をあげている。
「倒れている者がいるのなら助けるまでですね、ジャック兄さん」
「気に食わねぇが此処で潰せる相手じゃねぇようだしな。騎士共を助けるのが最優先だ」
 ロイ・I・グリーヴ(ka1819)の言葉に、ジャックは歪虚を睨みつけながら応える。
「ネル・ベルさん? 前に会った時と雰囲気が変わっているように見えますけど……」
 腕に隠し括りつけたロープをこっそりと確認しながら、Uisca Amhran(ka0754)が歪虚に話しかける。
 以前、王都近くの林の中で会った時から、それほど日は経っていない。
 なのに、この歪虚は、背中に翼を、左腕に竜の鍵爪と鱗の様なものを持っている。
「貴様は、この前、林の中で会った奴か」
 ネル・ベルという名の歪虚がニヤリと笑った。
 今すぐ襲って来ないのは余裕の表れなのか。それとも……。
「あれが件……戦友に聞いた話だと『イケ・メン』でしたっけ?」
「聞いていたのと、ちょっと違う……けど……」
 米本の軽口に、十色 エニア(ka0370)が、歪虚を見てそんな感想を述べた。
 友人からは翼や竜の鍵爪みたいな話は聞いていない。
「ソルラ、此処は引き受けるから、あなたは、怪我した人との面通し、頼むわね」
「シエラさん……わかりました。でも、無茶はしないで下さいね」
 一瞬、間があったが、ソルラはその提案を受け入れる。
 倒れている騎士をよく知っているのは自分しかいない事、少し後方で待っている馬は自分の馬だという事。
 戦闘するよりも救助にまわった方が良いと判断した為だ。
「みんなと協力、お願いね。手早く終わらせて、戻ってきてね」
「はい。皆さん、よろしくお願いします」
 丁寧に頭を下げるソルラ。
「お会いできて光栄です……が、とりあえず、今は、無事撤退するのが先決ですな」
 米本が携帯品のテントを広げる。簡易担架にするつもりなのだ。
「こういう展開は男としちゃ燃えるわな! 十色、きっちり、潰してこいや」
「はい、ジャックさん。救援の方、よろしくお願いします」
 ジャックが十色に檄を飛ばす。
 彼の分も背負い、しっかりと戦うと心の中で十色は誓った。
 風の精霊を宿した片刃のナイフを力強く握る。
「救助が済んだら、助けに来て下さいね」
 Uiscaが短杖と盾を構えてから、ロイにお願いをする。
「必要であれば、援護も入れますね」
 彼は小型の銃を確かめ、笑顔で答えた。
 そして、迅速に救助活動に入る、米本とジャック、ロイ、ソルラの4人。
 歪虚には残り3人で挑む事になる。
(それにしても……よくよく不利な条件下に縁があるわね、私たち)
 シエラが、くすりと笑いを含ませながら、心の中で、ソルラに話しかけたのであった。

●追撃の中の撤退
 倒れている騎士の近くに広げられるテントと空気の抜けたゴムボート。
「後で使い物にならなくても構いませんので」
 米本がそう言って、テントの材料で簡易担架を手早く作る。
「……人力じゃ限界があるからな。人間様は道具を使ってナンボだ」
 ジャックがゴムボートの空気を入れる場所を探す。
 それを見て、ロイが声をかけた。
「ジャック兄さん。もしかして、悠長に空気を入れるおつもりですか?」
「ば、ば、馬鹿いえ! そんな事あるわけねぇだろ」
 入れるつもりだったんだとロイは内心思いながらも口にはしなかった。
「ほら、乗せるの、てめぇも手伝え」
 空気が入っていなくても、そこそこの大きさはある。重傷者を乗せて、テントの材料で固定していく。
 担架作りが終わった米本が、ゴムボートの先にロープをくくりつけている。
「お待たせしました」
 そこへ、ソルラが自分の馬を連れてきた。
「お、おう」
 顔を赤面させながら、照れ隠しの為、視線を変えるジャック。
 しかし、ソルラはそんな様子にも気付かず、彼に近づいた。
「この子は賢いから、きっと、皆さんの命令も聞いてくれますよ」
 馬を撫でながら爽やかな笑顔のソルラ。
「ちょっと、ジャック兄さん押さないで下さいよ」
「そ、そんなんじゃねぇよ! ほら、次の奴乗せるぞ」
 兄弟2人が重傷者をボートに乗せて行く。
 騎士達の鎧でゴムボートが傷つかない様にとも思ったが、気にしている場合ではなさそうだ。
 ロイがコートを敷いたが、どちらかというと、運ぶ際の重傷者への衝撃を和らげる為だろう。
「少しでも動ける方は、装備を外して下さい」
 ロイの呼び掛けに、何人かが身体を動かす。
 一方、重傷者の中でも危険な状態の騎士から、米本が回復をかけていく。
「八百万の神々よ……癒し力を!」
 もちろん、完全に回復するわけではないが、少しは時間を稼げるはずだ。
 回復を受けて、少し動ける様になった騎士が、自ら即席担架の上に転がった。
 それを、ソルラが引っ張って、後方へ下がっていく。
「お願い出来ますか」
 ロイがロープを馬に括りつけて、体を優しく撫でた。
 馬はゆっくりと、進んでいく。なるほど、ソルラが言う通り、頭の良い馬だ。
「しっかりして下さい。意識を失うと人は重くなります、どうぞご助力を」
 運ばれるボートの上に転がっている重傷者に話かけるロイ。
 しかし、その騎士は意識が朦朧としているようだ。
「おい、てめぇ! おねんねするんじゃねぇぞ」
 ジャックがその騎士に無慈悲な言葉をかけた。
「ハ、ハンターごときに……」
「なんだよ。元気じゃねぇか」
 ニヤリと笑うジャック。騎士の口元も緩んだ。
(ジャック兄さん、さすがです)
 頼もしい兄だと思いながら、ロイは前線の方を注視する。
 全員の撤退が完了するまで、油断はできない。
 万が一にも接近する時は、足を狙うつもりだ。
 それは米本も同様に思っていた。歪虚や雑魔が別の所から伏兵が来た場合も、彼は身体を張って立ち塞がる気でいる。
「歪虚との戦闘は一武人として興味がありますが……まずは自分がしなければならない事をするのが一番です」
 チラリと戦況を確認しつつ、米本はそう独り言を呟いた。

●ネル・ベル戦
「フラベルさんを討伐したのは、私達の部隊です。貴方も惨めに討伐される番ですね」
「あなたが恨みを持つ人達は、わたしの友達だから、わたしの首でも持っていたら、向こうから来るかもね?」
 Uiscaと十色の分かりやすい挑発。
 歪虚はそれに動じた様子はない。
「今の私は貴様らを凌駕する。今の内、何とでも言うといい。貴様らはどの道、物言わない死体になるのだからな」
「お帰りはあちら、よ」
 獣の様な力強い瞳でシエラが薙刀を振りかざし、重たい一撃を見舞う。
 それを剣で受け止める歪虚。一歩二歩と下がった。
 開いた空間をすかさず十色が詰め寄せると至近距離から魔力によって集められた水の球をぶつける。
 当たるのも気にせず、歪虚が黒い剣を振るった。
 十色の周囲に吹き抜ける風で剣の軌道が若干逸れ、深くは入らなかったものの、腿を切り裂く。
「まだ3割も力を出していないのに、この程度か」
 歪虚の余裕の表情。
 そこへ、Uiscaが仲間から託されたお守りを握りしめながら、輝く光弾を放つ。
 それは、再び体重をかけて重い一撃を繰り出そうとするシエラを援護する形となった。
「姉さまは貴方と戦いたがっていたので、これはその分です!」
 歪虚はそれを鱗で覆われている左腕で、受け止めた。
「それなりに、戦えるというわけか」
「貴方より上手に戦えますわ」
 Uiscaはわざと笑顔で挑発する。
 そこへ、シエラが全体重をかけた一振り。歪虚は剣で受け止める。
 体勢を整える為に数歩後ろに下がる歪虚。
「なるほど、少しでも私を後ろに下げるつもりなのか」
 ハンター達の意図に気がついたようだ。
 瀕死の騎士達を少しでも避難させる事に。
「つまり、貴様らが奴らの盾となると。だが、それは、貴様らの油断だ!」
 火球を作りだすと、それをシエラに叩きつける。
 全身をやけどの様な激しい痛みに襲われながらも、彼女は再び薙刀を構えた。
「女は痛みと血に強いのよ」
 笑顔で薙刀を振りかぶる。
 その隙を埋める様に、十色が歪虚の翼に向かって水球を撃った。
「ぇと……ネル……なんとかさん! その力でなにを成すのかな?」
「知れた事。フラベル様の仇を討つまでだ!」
 鍵爪を振るう。
 咄嗟にナイフで爪先を防いだものの、衝撃までは吸収しきれない。
 その場で片膝をついた十色を庇う様にUiscaが盾を構えて前に出た。
「ならば、貴様から死ね!」
 左腕の鍵爪を振りあげる。それに合わせて盾を上げた。
 が、それは歪虚のフェイントだった。歪虚の持つ黒い剣先がUiscaの左胸に突き刺さる。
「ウィスカさん!」
 彼女の名を呼ぶ十色の悲痛な声。
 だが、何事もなかったかの様にUiscaは隠し持っていた縄を歪虚に投げつけていた。
 偶然か奇跡か。歪虚の剣先はわずかにズレ、彼女の左腕を切り裂いただけだった。
「貴方がフラベルさんの部下なら瞬間転移もありえそうですからね」
 こうしていれば、安易に転移もできないはずだ。
「命拾いした割りには懲りてないな!」
 歪虚は剣を手放すと、紐をグッと引っ張る。
 その力に抗う事ができず、唇が奪われるのではないかという程、顔と身体を引き寄せられるUisca。
 恐怖で一瞬、表情を強張らせた。
「なかなか、美しいではないか。貴様は連れて帰るぞ」
「離しなさい!」
 怒りのこもった叫び声と共に、シエラが薙刀を歪虚に叩きつけ様とする。
 それを歪虚は左腕で受け止めようとしたが、その腕を十色が咄嗟に持ち替えた鞭で阻害した。
 Uiscaが縄を自身の腕から外し、歪虚を押しのける様に後方へ逃れる。
 バランスを崩した所にシエラの強烈な一撃が入った。
「き、貴様ら!」
 よろめく歪虚は憤怒の表情。
 鍵爪の腕を宙に一振りすると、無数の火球が現れた。
「この一つ一つが、先程作ったものと一緒だぞ」
 不気味な微笑み。
 そして、猛烈な攻撃が来る……3人は身構えた。
 刹那、歪虚自身から炎のオーラが噴き出したのであった。
 悶え苦しむ歪虚。無数の火球と合わさり業火となる。

●爆発
 異変は突然現れた。
「まずいです!」
 米本の言葉の意味をジャックとロイは直ぐに理解できた。
 仲間が対峙している歪虚の全身から炎の様なものが吹き出ていた。
 しかし、歪虚自身は苦しんでいる様にも見える。
 なにか尋常でない事が発生している様だ。
「ジャック兄さん! 急がないと!」
「言われるまでもねぇ!」
 別の重傷者をゴムボートに乗せ、兄弟2人で最後に残った騎士を両脇から抱えて避難する。
 米本は回復をその騎士にかけた。
「『蒼』の宗教観を持った聖導士で申し訳ありませんが……回復は回復ですよ」
「か、かたじけない……」
「貴殿で最後です。頑張りましょう」
 庇うように後ろにまわり、歪虚を正面に視界の中に捉える。
「シエラさん……」
 ソルラが心配そうな表情で歪虚と向きあう彼女の名を呼んだ。

「2人は退いて! 私はもう一撃入れてみるわ!」
 なにが起こっているのか、わからない。
 わかるのは、目の前の歪虚の様子が破裂寸前の風船の様な気がする事だけだ。
 Uiscaと十色がシエラの言葉通り後退する。
 薙刀を力強く振るう。歪虚は避けようもせず、ただ、なにか苦しみ悶えていた。
「シエラさん!」
 十色の声が聞こえた。
 咄嗟に武器を投げ捨てると両腕で頭を守る様に身構えるシエラ。


 歪虚を中心に大爆発が発生した。


 もし、その爆発の範囲内に重症を負った騎士がいれば、危険だっただろう。
 爆風を感じながらジャックはそう思った。
(俺様の目の前で、死ぬんじゃねぇぞ)
 至近距離で爆発に巻き込まれたであろうシエラの身を案じる。
 それは仲間の誰もが、そして、きっと、この場にいない彼女を心配する人も思った事だろう。
 土煙りの中、シエラが身構えた姿のまま立っていた。
 その彼女にソルラが駆け寄って抱きしめる。
「シエラさん! 無茶しすぎです!」
「やあね、大丈夫よ」
 泣き出しそうなソルラにシエラはニッコリと笑みを浮かべる。
「あれは……」
 上空を東北の方角にヨロヨロと飛んでいく歪虚の姿をロイは見逃さなかった。
 既に射撃や魔法が届く距離ではないようだ。
「今日は騎士さん達の救助が優先なので、次に会えるのを楽しみにしてますよ。イケメンさん」
 Uiscaが、飛び去って行く歪虚に向かってそんな言葉を呟いた。 


 10名の重症の騎士達はハンター達の助力により、命を取り留めた。
 彼らがソルラと共に、ある小隊を結成する事になるのだが、それはまた別の話である。


 おしまい。


●歪なパズルピース
 人気のない街道脇の大木に寄りかかる様に倒れ込むネル・ベル。
「おのれ、ハンター共……」
 いや、違う。ハンターだけではない。
 自身の身体に発生した事態を制御できなかった事が原因だ。
 傲慢に属する歪虚が自身を反省するなど普通はあり得ない。
「より強くならなければ……フラベル様のために!」
 ボロボロと翼と左腕の鱗や鍵爪が塵となっていく。
 フラベルに直接手を下したのはハンターに違いない。だが、そもそもの元は王国であるはずだ。
「この屈辱。ハンターにも、王国に住まう全ての人間にも味わせるぞ。必ず……」
 急速に全身から力が抜けて行く中、ネル・ベルはそう誓った。
 翼と鱗が全て消え去り、塵が彼の周りに舞った。その塵も次々と消えていく。
 完全に力を使い果たしたのか、意識が朦朧としてきた。
 その時、薄れていく意識と視界の中に、緑色の髪の少女が現れる。
 赤い色のローブがやけに鮮やかだ。
「だれ……だ……」
 確認する前に、彼の意識は途切れるのであった。

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MVP一覧

  • ノブレス・オブリージュ
    ジャック・J・グリーヴka1305
  • 縁を紡ぐ者
    シエラ・ヒースka1543

重体一覧

参加者一覧

  • 王国騎士団“黒の騎士”
    米本 剛(ka0320
    人間(蒼)|30才|男性|聖導士
  • 【ⅩⅧ】また"あした"へ
    十色・T・ エニア(ka0370
    人間(蒼)|15才|男性|魔術師
  • 緑龍の巫女
    Uisca=S=Amhran(ka0754
    エルフ|17才|女性|聖導士
  • ノブレス・オブリージュ
    ジャック・J・グリーヴ(ka1305
    人間(紅)|24才|男性|闘狩人
  • 縁を紡ぐ者
    シエラ・ヒース(ka1543
    エルフ|20才|女性|霊闘士
  • 名誉騎士
    ロイ・I・グリーヴ(ka1819
    人間(紅)|18才|男性|疾影士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/12/02 22:59:21
アイコン 相談卓
米本 剛(ka0320
人間(リアルブルー)|30才|男性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2014/12/07 20:25:49