ゲスト
(ka0000)
書物の字が消える謎を追え
マスター:狐野径

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/02/13 07:30
- 完成日
- 2018/02/20 20:32
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●小さな図書館での出来事
グラズヘイム王国にとある地域にある町グローノースの図書館で事件が起こっていた。
「なぜ……本の字がきえているんだ?」
司書に指摘されて館長が本を見ると中から字が消えていた。
「誰かのいたずらしたにしては手が込みすぎている」
書籍の外側と同じく、誰かが何度も手に取った紙の色をしているのだ。それだけ月日が経っているのがうかがえる書物であり、これまで字がなかったという話はない。いたずらだったとして、それ相応の紙を見つけ、似たような書籍に仕立て上げないとならないのだから相当な手間がかかる。
それも一冊や二冊ではない。十冊以上の書籍から文字が消えている。
「これは……」
どうしたものかと悩む。領主に報告をするべきか、調査をしてから告げるか悩ましい状況だ。
「それ以外の被害はないのかな?」
館長は司書たちに問いかけた。司書たちは異口同音に「異変はない」と言う。
館長は首をひねった。ふと、窓辺に飾っている切り花が枯れていることに気づいた。
「こらこら、年末年始忙しかったからと言って、これはダメだろう?」
「待ってください! その切り花、一昨日持ってきたんですよ!」
司書が声をあげた。
「そういえば、最近、花が良くないのか前の切り花もすぐに駄目になったわよね?」
別の司書も声をあげた。季節柄仕方がないことでもあるのだが、あまりにも早く駄目になるのは事実。
これが異変か否か、館長には判断がつかなかった。
●絵本からも字が消えた
ルゥルは馬に乗って隣町グローノースの図書館にやってきた。彼女が住む小さな町にはないため、馬に揺られてやってこないとならない。
「……転移門使えば、アークエルスの図書館も使えるんですよね……」
思わず考えて、生唾を飲み込む。いつも使う図書館の何倍も何十倍も大きな図書館だという。
「行きたいですー」
転移門を使うにはハンターオフィスの職員を説得しないとならない。なぜなら、ルゥルが勝手に使うことは保護者代理から許されないことだからである。
「みぎゃあ」
寒空の下、図書館に到着した。馬から下りると、いつもの位置に紐を括り付けた。
図書館の中は温かいため、ルゥルは帽子を外し、コートの前を開けた。
「返却です」
ルゥルはカウンターに本を並べた。
手続きが終わると借りる為の本を探しに行く。
「そろそろバレンタインデーなのです。リアルブルーには色々な風習があるのですよ。お花もらったり、チョコレート食べたり……チョコレート」
ルゥルはレシピの本を手にする。
「そういえば、カカオという材料はエトファリカの南で採れるそうですね」
取りに行くとこからしたら、どれだけ大変でも、楽しいか考える。
たまたまとった絵本というにはタイトルも作者の表記も、中身のなにもない。
「借りていくです。あと、あ……あれ? この絵本、字がないのです?」
ルゥルはページを繰る。
「……みぎゃ、頭が悪い子には字が読めないのですう?」
ルゥルはおろおろした。司書に尋ねる。
「え? それはないですよ……、大体……っ! 館長! この絵本も字がなくなっています」
司書は思わず大きな声を出してしまう。
ルゥルが目をぱちくりさせる。
館長は司書を目でしかりつけた後、絵本を見て唇を噛む。
「これは……」
「どうしたのです? ルゥルが頭悪いから見えないわけではないんですね?」
「ふふっ……笑って済まないね。そういうことじゃないから、安心してくださいね」
館長は微笑む。
「事件なら、私も解決するです!」
ルゥルは元気よく手をあげる。
「えっ!?」
「私はハンターなのです」
「……」
館長と司書は数秒考える。ハンターには外見子どももいるが、実際仕事上付き合いがあるわけでもないため分からない。
入館証を作るにあたり、住所や氏名、保護者など書き記してはいる。
とりあえず、ルゥルを適当にあしらったのち、ハンターに依頼を出すことにしたのだった。
●こっそり
依頼を受け付けたロビン・ドルトスは視線を感じていた。視線の元に気づいて、ずっこける。窓にルゥルが張り付いて見ているのだ。
「……ルゥルちゃん」
眼鏡の位置を直しながら、扉に向かい、外でルゥルに声をかけた。
「図書館がピンチならば、私も頑張るのです」
「……依頼を受けるには……保護者の許可を受けること」
「み、みぎゃああああ」
「それに、今、ルゥルちゃん、持ってるのワンドかアクセサリーだけだろう?」
その指摘にルゥルは反論すらできない。もしものためにお小遣いをためて防具を強化したりしたが、今日は着ていない。
保護者については師匠ならば「いいぞ」と言ってくれるだろうが、保護者代理のエクラ教司祭マークは不許可に決まっている。
ロビンに追い返され「早く帰るんだよ」としっかり見届けられたのだった。
街道を暫く行って、ロビンがいないことを確認後、ルゥルは街に戻った。そのまま馬を連れたまま、図書館に戻る。
「きっと、夜に事件が起こるのです! だから、こっそり、見張りをするのです!」
夜の図書館に張るべく、夕方の街でうろうろしていた。徐々に日がかげり、人が消えていく中、ルゥルは寂しくなってくる。
「おなかすいたのです……」
「スン」
「きゅ」
肩の上に載ったフェレットのフレオや頭の上が定位置のパルムのポルムは短く鳴いた。なんといったかはルゥルには分からないが、きっと慰めてくれていると思ったのだった。
グラズヘイム王国にとある地域にある町グローノースの図書館で事件が起こっていた。
「なぜ……本の字がきえているんだ?」
司書に指摘されて館長が本を見ると中から字が消えていた。
「誰かのいたずらしたにしては手が込みすぎている」
書籍の外側と同じく、誰かが何度も手に取った紙の色をしているのだ。それだけ月日が経っているのがうかがえる書物であり、これまで字がなかったという話はない。いたずらだったとして、それ相応の紙を見つけ、似たような書籍に仕立て上げないとならないのだから相当な手間がかかる。
それも一冊や二冊ではない。十冊以上の書籍から文字が消えている。
「これは……」
どうしたものかと悩む。領主に報告をするべきか、調査をしてから告げるか悩ましい状況だ。
「それ以外の被害はないのかな?」
館長は司書たちに問いかけた。司書たちは異口同音に「異変はない」と言う。
館長は首をひねった。ふと、窓辺に飾っている切り花が枯れていることに気づいた。
「こらこら、年末年始忙しかったからと言って、これはダメだろう?」
「待ってください! その切り花、一昨日持ってきたんですよ!」
司書が声をあげた。
「そういえば、最近、花が良くないのか前の切り花もすぐに駄目になったわよね?」
別の司書も声をあげた。季節柄仕方がないことでもあるのだが、あまりにも早く駄目になるのは事実。
これが異変か否か、館長には判断がつかなかった。
●絵本からも字が消えた
ルゥルは馬に乗って隣町グローノースの図書館にやってきた。彼女が住む小さな町にはないため、馬に揺られてやってこないとならない。
「……転移門使えば、アークエルスの図書館も使えるんですよね……」
思わず考えて、生唾を飲み込む。いつも使う図書館の何倍も何十倍も大きな図書館だという。
「行きたいですー」
転移門を使うにはハンターオフィスの職員を説得しないとならない。なぜなら、ルゥルが勝手に使うことは保護者代理から許されないことだからである。
「みぎゃあ」
寒空の下、図書館に到着した。馬から下りると、いつもの位置に紐を括り付けた。
図書館の中は温かいため、ルゥルは帽子を外し、コートの前を開けた。
「返却です」
ルゥルはカウンターに本を並べた。
手続きが終わると借りる為の本を探しに行く。
「そろそろバレンタインデーなのです。リアルブルーには色々な風習があるのですよ。お花もらったり、チョコレート食べたり……チョコレート」
ルゥルはレシピの本を手にする。
「そういえば、カカオという材料はエトファリカの南で採れるそうですね」
取りに行くとこからしたら、どれだけ大変でも、楽しいか考える。
たまたまとった絵本というにはタイトルも作者の表記も、中身のなにもない。
「借りていくです。あと、あ……あれ? この絵本、字がないのです?」
ルゥルはページを繰る。
「……みぎゃ、頭が悪い子には字が読めないのですう?」
ルゥルはおろおろした。司書に尋ねる。
「え? それはないですよ……、大体……っ! 館長! この絵本も字がなくなっています」
司書は思わず大きな声を出してしまう。
ルゥルが目をぱちくりさせる。
館長は司書を目でしかりつけた後、絵本を見て唇を噛む。
「これは……」
「どうしたのです? ルゥルが頭悪いから見えないわけではないんですね?」
「ふふっ……笑って済まないね。そういうことじゃないから、安心してくださいね」
館長は微笑む。
「事件なら、私も解決するです!」
ルゥルは元気よく手をあげる。
「えっ!?」
「私はハンターなのです」
「……」
館長と司書は数秒考える。ハンターには外見子どももいるが、実際仕事上付き合いがあるわけでもないため分からない。
入館証を作るにあたり、住所や氏名、保護者など書き記してはいる。
とりあえず、ルゥルを適当にあしらったのち、ハンターに依頼を出すことにしたのだった。
●こっそり
依頼を受け付けたロビン・ドルトスは視線を感じていた。視線の元に気づいて、ずっこける。窓にルゥルが張り付いて見ているのだ。
「……ルゥルちゃん」
眼鏡の位置を直しながら、扉に向かい、外でルゥルに声をかけた。
「図書館がピンチならば、私も頑張るのです」
「……依頼を受けるには……保護者の許可を受けること」
「み、みぎゃああああ」
「それに、今、ルゥルちゃん、持ってるのワンドかアクセサリーだけだろう?」
その指摘にルゥルは反論すらできない。もしものためにお小遣いをためて防具を強化したりしたが、今日は着ていない。
保護者については師匠ならば「いいぞ」と言ってくれるだろうが、保護者代理のエクラ教司祭マークは不許可に決まっている。
ロビンに追い返され「早く帰るんだよ」としっかり見届けられたのだった。
街道を暫く行って、ロビンがいないことを確認後、ルゥルは街に戻った。そのまま馬を連れたまま、図書館に戻る。
「きっと、夜に事件が起こるのです! だから、こっそり、見張りをするのです!」
夜の図書館に張るべく、夕方の街でうろうろしていた。徐々に日がかげり、人が消えていく中、ルゥルは寂しくなってくる。
「おなかすいたのです……」
「スン」
「きゅ」
肩の上に載ったフェレットのフレオや頭の上が定位置のパルムのポルムは短く鳴いた。なんといったかはルゥルには分からないが、きっと慰めてくれていると思ったのだった。
リプレイ本文
●なんかいる
メイム(ka2290)は図書館に入る前に【ファミリアアイズ】で周囲の確認をした。外観から何かの侵入経路がわかるかもしれないし、潜んでいるかもしれない。
「あんず、飛んで」
桜型妖精のあんずがブツブツ言いながら飛んでいく。メイムは見えた物にピクリと眉を動かした。
「なんか関係ないのがいる」
カティス・フィルム(ka2486)がキョトンとなる。
「関係ないのですか? これから侵入しようとしているわけではないのですね?」
カティスにメイムは「たぶん違う、いるだけ」と答えた。
レオナ(ka6158)とアユイ(ka7133)がメイムが指摘した場所に向かった。そこにはエルフの子どものルゥル(kz0210)と連れの馬がおり、妖精をじっと見ている。二人に気づいて、おろおろ始めた。
「みぎゃ」
「……みぎゃ?」
アユイはルゥルの言葉を聞いて思わず反芻する。なんとなく驚きの声だとは察した。
「危ないですよ。夜なのに?」
「ル、ルゥルはハンターなのです! 図書館の、図書館に出る迷惑な人を解決するのです!」
レオナは困惑するが、ここに放置はできない。二人は仲間のところにルゥルを連れて行った。
ミオレスカ(ka3496)は大きなけがをうっかり負ってしまったらしい。
「す、すみません」
「お姉さん、大丈夫ですか!?」
うっかりで済ましていいのかわからないが、ルゥルが駆け寄り心配した。
トリプルJ(ka6653)は重体のミオレスカを気にし、小さなルゥルに溜息と苦笑が浮かぶ。
「あー、で、まずは事情を聞こうか……」
トリプルJに促され、ルゥルは語った。
結果、このままルゥルを帰すには遠すぎるし、オフィスに届けるにも時間が惜しいし、一人で行動させると危険もないとは言い切れないため、ミオレスカと一緒にいることで解決した。
●話を聞いてみる
カランカラン――一階の扉が開くと取り付けられた鐘の音がした。出迎えてくれた館長のロジャー・ハームに連れられて二階にある司書室に向かった。見える範囲の図書館は、どこか懐かしい雰囲気のある小さな図書館で、何か問題が起こりそうには思えなかった。
「……あれ?」
「みぎゃ」
明るい司書室で館長のロジャーは一行を改めてみたとき、ルゥルに気づいた。ハンターがかくかくしかじかと説明し、いることを納得してもらう。
「切り花が枯れていたとうかがっているのですが、何か所か置いているんですか?」
カティスの問いにロジャーはうなずく。
「そこの窓とカウンターの裏にあるんです」
すでに新しい花に変えられているが、元気がないようにも見える。
「両方とも枯れていたんですか?」
ロジャーはうなずく。
「冬は傷みやすいから気にしていなかったんですが」
「館内の地図はありますでしょうか?」
レオナにロジャーは一枚の紙を手渡す。
「どうぞお使いください。狭い図書館ですから不要かもしれませんが」
「いえ、親切にありがとうございます。そういえば、窓はこの時期は閉めていますか?」
「時々、空気の入れ替えはしますよ」
しかし、きちんと鍵は掛けているという。
「そうですよね。入館者の出入りは?」
「カウンターにいる人が見ている状況ですね」
レオナは夜の戸締りなどについても質問する。夜間はさすがに無人になり、鍵は夜遅い人と朝来る人、領主の三本あるという。暖房器具の煙突はパイプ式で人は通れないとのこと。
「花が枯れた以上、生体エネルギーを使用して出現したり、字を奪ったりしていると思うが……あまり歪虚の仕業に思えなくてなぁ……」
トリプルJはうーむと眉間にしわ寄せる。
「公共の図書館じゃ危険な隠し部屋もなさそうだ。で、可能性をつぶしていくと英霊・精霊・幻獣あたりのいたずらにしか思えなくてなぁ」
ロジャーが「隠し部屋はさすがにないですよ。屋根裏はありますけれど」と苦笑する。その言葉にハンターは反応した。屋根裏や食糧貯蔵のための地下室とまでいかないが棚みたいなものに何かは潜みやすいのではないか、と。
「文字が消え始めたのはいつくらいですか?」
アユイは淡々と尋ねる。
「えっと……気づいたのは一週間前で十五冊です」
司書室の机にそれは並んでいる。
ハンターたちはそれぞれ手にして中を確認する。表紙も中も字はない。ただ、絵だけは残っている。
「これが歪虚の仕業なら、祓ってみればわかるわよね」
メイムがにっこりとほほ笑む。そして、【祓いしもの】を使おうとした。
「……いや、待ってくれ……それはすべてあくまで負のマテリアルを防ぐスキルだよな」
トリプルJは他の者に問いかけるように見るが、反応が鈍い。
メイムが少し慌てた。
「ということは……意味がない?」
符術師であるレオナは浄化という概念から少し考えて口を開いた。
「そもそも、祓うといっても、字がないことが『生命力を奪われた』と同じならば、戻ることはないかもしれません」
メイムは「選択肢消せないか」とため息ついた。
「お姉さん……元気を出してくださいです」
ルゥルが慰めた。
(ああ、マテリアルの気配がするのぉ。もっと欲しい、もっと欲しい! しかし……これは、ハンターであるよのう)
それは冷静であることに努めた。今、発見されることは一つもいいことはないのがわかっているからだった。
ミオレスカは椅子に座って仲間の会話を聞いていた。
「何かさんは恋の物語が好きなのでしょうか? 話ができるといいです」
そして友達になれればと続ける。同意を示すハンターも多い。
それにしても、ミオレスカはこの部屋に入ってから体が異様に重く感じていた。
その上、ロジャーが疲れているように見えるのは気のせいだろうか?
(奇妙な事件が起こっているのですから仕方がないですよね)
ミオレスカは納得した。
●そこに現れたモノ
館内を見て回る前に、一つでも問題を減らそうと、屋根裏部屋を見ることにした。ロジャーが梯子を用意する。
「ここは頻繁に出入りするのですか?」
レオナにロジャーは「月に一度くらい」と言う。
「本についての資料など、あまり使わないものを置いてあるんです」
「最後に入ったのはいつですか?」
アユイにロジャーは「二週間より前」と答えた。
「それって何かいても気づきにくいということよね」
メイムは天井を見上げた。
「先に確認することは効率がいいことですね……でも、多く人がいると驚かせてしまうかもしれません」
カティスは「何か」を好意的に考えていた。花が好きだけれど愛でられない、恋愛に興味のあるが人前に現れるのが苦手なものだと。
「私はここにいますので」
ルゥルがミオレスカの座る椅子をそのまま押して隅っこに行く。
「じゃ、俺様が行くかな」
トリプルJが梯子を上っていく。戸を開ける前に何かいる気配がないか探る。
嫌な予感がした。
(精霊とか英霊とかじゃねーってことかあ?)
一旦下りる。
「念のためだ……ミオレスカとルゥルは館長連れて別の部屋にいてくれるか?」
「分かりました」
「移動は任せてください」
ルゥルがミオレスカの椅子を押して移動していく。絨毯敷でたまたま滑るからロジャーも文句は言わない。ロジャーは隣の部屋に二人と向かう。
「扉開けておきますか?」
アユイは護衛についておくべきかとも逡巡するが、ここで防げば関係なかった。
「何かあったらあたしも動くよ」
メイムとアユイが扉の側で廊下にすぐ出られる位置に待機した。
壁際にレオナとカティスが寄る。
「そんなに怖い感じなのですか?」
カティスは不安そうにするがトリプルJは「用心だ」と告げる。
「何がいるからってすぐに危険とは限らん」
「そうですね、気をつけすぎる問題はありません」
レオナは符を取り出し、いつでも援護できる。
トリプルJが梯子を上る。
そして、戸を押し開けた。鍵はあるわけではない。
「相棒……何か見つけたら……」
トリプルJの連れのフクロウはすぐに警戒を示す。
下から灯が入っているため、屋根裏に光は差し込んでいる。灯火の水晶球の元、周囲を見た。
それは、素早く近づくと鉄扇をトリプルJにたたきつけた。
「っ!?」
トリプルJは不意打ちを回避しかかり、梯子から転落する。
「大丈夫ですか?!」
「来ますっ……」
カティスとレオナな声が重なった。
それはトリプルJの上をクッションに着地し、床に下りた。
「ぐっ」
それはドレスを着た女性のようだった。ドレスの着こなしがどこかぎこちない。頭には一枚の布をかぶっており、表情は伺いにくい。手には鉄扇を持ち、ハンターを見下すように見つめる。
「おんしら、何のためにここにおる?」
怒りを隠すようなきつい声だ。
「……あ、えっと……」
カティスは何か話しかけてみようと考える。歪虚だからといって彼女がすぐに敵になるとは限らない。しかし、問いたかったことを口にしていいのか悩んだ。
「なぜ、字を消したのですか?」
レオナがずばりと問う。この存在が消したか否かが重要だ。
「……字を消す? ああ、妾のモノにしただけだのう」
「そんなことしてどうなのよ」
メイムの言葉に相手はさげすむ視線を送る。
「妾のモノにしたと言ったではないか?」
「うー」
メイムはその得たものはどうなったか問い直したかったが、一旦黙った。
「恋愛物だそうですね。恋に何かあるのですか? どなたか待っているとか」
カティスの言葉に女性は柳眉を逆立てる。
「そもそも……恋とは何だ? 愛とはなんであろう?」
「それは感情です! 出会ってみないと分からないものです」
カティスは特定の人を思い出し、胸の奥が熱くなる。
「よく、わからないことを言う小娘だのう」
それはカティスに冷たい視線を向ける。
「なあ……食う必要がないなら、古新聞というのは落としどころして……」
トリプルJは慌てて転がって避けた。女性が、足を素早く上げ、彼の腹めがけてたたきつけようとしたのだった。
「目的はなんだ?」
アユイはナイフに手を置きながらも、トリプルJの行動をうかがう。彼が彼女の足元にいることもあり、動くならば合わせるつもりだ。
「貴様らになぜ言わねばならぬ? そもそも妾は……探すものがある……」
「何を?」
メイムは念のため、防御のための盾をとる。
「どこにいくんだ?」
トリプルJが女性を足止めしようとしたとき、レオナが符術の【黒曜封印符】を放つ。
「……貴様……」
女性はレオナに一気に近づき鉄扇をただたたきつけた。
「うっ」
「こちらに」
カティスは持っている魔法が敵に効かないため、負傷したレオナをそれの前から離した。
トリプルJも起き上がり、すでにその歪虚にこぶしを叩き込む。寸前で回避される。
「そういうことやめてくれるかな!」
「なし崩しというやつだ」
メイムとアユイが足止めと攻撃に移る。
「邪魔だのう」
部屋は狭いため戦いに向かないため、歪虚は廊下に逃げた。
隣の部屋では窓からルゥルが覗いている。
「ルゥルさん、そこで見ていただけると助かります」
ミオレスカに指示をもらい頑張っている。ミオレスカは自分のうっかりを口惜しく思う。
「はっ……こ、これはあれが見られる……わけではないですね」
このようなうっかりでは謎の存在は見られないはずだ。
司書室から音がする。
「館長さんは私の後ろにいてくださいね。ルゥルさんは見つからないように見張りをしてくださいね」
ルゥルは「了解です」と手をあげて返事して、用心する。
灯は消すべきかミオレスカは判断に迷うが、灯があるからこそ来る危険性もあると考え、消した。
廊下を駆け抜けるドレス姿の女性が一瞬目に移る。
メイムとトリプルJが追撃こそかけていないが、全速で追いかけていく。
「……先ほどのが……それにしても布の下が不自然に見えましたが……」
ミオレスカは何事のなく通り過ぎてくれたので安堵した。気になることがあってもそれを確認するすべが今はなかった。
メイムとトリプルJはそれが扉から出ていくのを見た。
待てともいえないし、どこかに行けというのも困るような気がする。
「……とりあえず、図書館の問題は解決したということだな」
「そういうことになるね……って歪虚が町にいるってあり? ばれなけれいるのか……」
長い間いれば周囲に影響は出ていく。しかし、汚染が進むまでいなければばれにくい。
「領主に言う案件だよな」
「まずは戻って報告とオフィスに行って、ルゥルを送ってくる」
二人は戻る際、鍵はかけておいたのだった。
●おうちは明日
司書室に戻ると、隣の部屋にいた三人も来ていた。
「結局は……歪虚なのですか?」
ロジャーの表情は冷静なままだが、青ざめているのは否めない。
「そういうことになるな」
トリプルJはが答える。
汚染がゼロでないために、切り花が一番影響を受けたらしい。このままい続ければ、本が白紙になるだけでなく、職員にも影響が出ていただろう。
「消すとどうなるっていうのがわからなかったよね」
メイムは眉間にしわを寄せる。
「そうですね。でも、この状況でその力を振るわれていたら、危険でもあります」
レオナは唇をきゅと結ぶ。もし、あの歪虚が戦う気で攻撃して来たらこの程度では済まなかったと感じていた。
「この文字が消えてしまった本はどうするのですか?」
ロジャーはアユイに「リストと照合して購入しなおす予定」と告げた。
「内容の復元……するにはそれが手っ取り早いということですか」
購入できない本があると困るだろうが、そこは考えていると考える。
「恋の物語が好きだったのですか?」
「引っかかることはあるようですわ……でも、明確にはおっしゃいませんでした」
ミオレスカにカティスはしおれて告げた。
「……あ、ルゥル、保護者には連絡入れておいたの?」
メイムに問われた瞬間、ルゥルがブワッと冷や汗をかいた。
「どうしたんですか? 具合でも悪いんですか?」
アユイはまじめに問うが、トリプルJが笑う。
「そういうこともあるだろう?」
「ルゥルさん……」
ミオレスカはくすりと笑った。
「そうだ、ルゥル。お菓子を作るとしてキノコ味のチョコ、キノコ型のチョコ、キノコみたいなマシュマロどれがいい?」
不意の質問にルゥルはキョトンとなるが「キノコはなんでもよいのです」と答えたのだった。ただ、ルゥルの目は妙にギラギラしている。
「……眠いけれど、やる気だけは満ちているんですね」
カティスはルゥルの様子を見て微笑んだ。
「さて、外は寒いし早く移動しよう」
トリプルJが促したのだった。
ロジャーを家に送る組とハンターのオフィスにルゥルを連れて向かうのに分かれる。
歪虚は町に消えたため、どこに行ったのかはわからない。注意喚起は必要だろう。
それは足を止め、月を見上げた。
「妾はどこに向かえばよいのか。離れたいと思ったのは事実でもあるが……なぜ、何に?」
それは町の外に向かって足を進めた。
メイム(ka2290)は図書館に入る前に【ファミリアアイズ】で周囲の確認をした。外観から何かの侵入経路がわかるかもしれないし、潜んでいるかもしれない。
「あんず、飛んで」
桜型妖精のあんずがブツブツ言いながら飛んでいく。メイムは見えた物にピクリと眉を動かした。
「なんか関係ないのがいる」
カティス・フィルム(ka2486)がキョトンとなる。
「関係ないのですか? これから侵入しようとしているわけではないのですね?」
カティスにメイムは「たぶん違う、いるだけ」と答えた。
レオナ(ka6158)とアユイ(ka7133)がメイムが指摘した場所に向かった。そこにはエルフの子どものルゥル(kz0210)と連れの馬がおり、妖精をじっと見ている。二人に気づいて、おろおろ始めた。
「みぎゃ」
「……みぎゃ?」
アユイはルゥルの言葉を聞いて思わず反芻する。なんとなく驚きの声だとは察した。
「危ないですよ。夜なのに?」
「ル、ルゥルはハンターなのです! 図書館の、図書館に出る迷惑な人を解決するのです!」
レオナは困惑するが、ここに放置はできない。二人は仲間のところにルゥルを連れて行った。
ミオレスカ(ka3496)は大きなけがをうっかり負ってしまったらしい。
「す、すみません」
「お姉さん、大丈夫ですか!?」
うっかりで済ましていいのかわからないが、ルゥルが駆け寄り心配した。
トリプルJ(ka6653)は重体のミオレスカを気にし、小さなルゥルに溜息と苦笑が浮かぶ。
「あー、で、まずは事情を聞こうか……」
トリプルJに促され、ルゥルは語った。
結果、このままルゥルを帰すには遠すぎるし、オフィスに届けるにも時間が惜しいし、一人で行動させると危険もないとは言い切れないため、ミオレスカと一緒にいることで解決した。
●話を聞いてみる
カランカラン――一階の扉が開くと取り付けられた鐘の音がした。出迎えてくれた館長のロジャー・ハームに連れられて二階にある司書室に向かった。見える範囲の図書館は、どこか懐かしい雰囲気のある小さな図書館で、何か問題が起こりそうには思えなかった。
「……あれ?」
「みぎゃ」
明るい司書室で館長のロジャーは一行を改めてみたとき、ルゥルに気づいた。ハンターがかくかくしかじかと説明し、いることを納得してもらう。
「切り花が枯れていたとうかがっているのですが、何か所か置いているんですか?」
カティスの問いにロジャーはうなずく。
「そこの窓とカウンターの裏にあるんです」
すでに新しい花に変えられているが、元気がないようにも見える。
「両方とも枯れていたんですか?」
ロジャーはうなずく。
「冬は傷みやすいから気にしていなかったんですが」
「館内の地図はありますでしょうか?」
レオナにロジャーは一枚の紙を手渡す。
「どうぞお使いください。狭い図書館ですから不要かもしれませんが」
「いえ、親切にありがとうございます。そういえば、窓はこの時期は閉めていますか?」
「時々、空気の入れ替えはしますよ」
しかし、きちんと鍵は掛けているという。
「そうですよね。入館者の出入りは?」
「カウンターにいる人が見ている状況ですね」
レオナは夜の戸締りなどについても質問する。夜間はさすがに無人になり、鍵は夜遅い人と朝来る人、領主の三本あるという。暖房器具の煙突はパイプ式で人は通れないとのこと。
「花が枯れた以上、生体エネルギーを使用して出現したり、字を奪ったりしていると思うが……あまり歪虚の仕業に思えなくてなぁ……」
トリプルJはうーむと眉間にしわ寄せる。
「公共の図書館じゃ危険な隠し部屋もなさそうだ。で、可能性をつぶしていくと英霊・精霊・幻獣あたりのいたずらにしか思えなくてなぁ」
ロジャーが「隠し部屋はさすがにないですよ。屋根裏はありますけれど」と苦笑する。その言葉にハンターは反応した。屋根裏や食糧貯蔵のための地下室とまでいかないが棚みたいなものに何かは潜みやすいのではないか、と。
「文字が消え始めたのはいつくらいですか?」
アユイは淡々と尋ねる。
「えっと……気づいたのは一週間前で十五冊です」
司書室の机にそれは並んでいる。
ハンターたちはそれぞれ手にして中を確認する。表紙も中も字はない。ただ、絵だけは残っている。
「これが歪虚の仕業なら、祓ってみればわかるわよね」
メイムがにっこりとほほ笑む。そして、【祓いしもの】を使おうとした。
「……いや、待ってくれ……それはすべてあくまで負のマテリアルを防ぐスキルだよな」
トリプルJは他の者に問いかけるように見るが、反応が鈍い。
メイムが少し慌てた。
「ということは……意味がない?」
符術師であるレオナは浄化という概念から少し考えて口を開いた。
「そもそも、祓うといっても、字がないことが『生命力を奪われた』と同じならば、戻ることはないかもしれません」
メイムは「選択肢消せないか」とため息ついた。
「お姉さん……元気を出してくださいです」
ルゥルが慰めた。
(ああ、マテリアルの気配がするのぉ。もっと欲しい、もっと欲しい! しかし……これは、ハンターであるよのう)
それは冷静であることに努めた。今、発見されることは一つもいいことはないのがわかっているからだった。
ミオレスカは椅子に座って仲間の会話を聞いていた。
「何かさんは恋の物語が好きなのでしょうか? 話ができるといいです」
そして友達になれればと続ける。同意を示すハンターも多い。
それにしても、ミオレスカはこの部屋に入ってから体が異様に重く感じていた。
その上、ロジャーが疲れているように見えるのは気のせいだろうか?
(奇妙な事件が起こっているのですから仕方がないですよね)
ミオレスカは納得した。
●そこに現れたモノ
館内を見て回る前に、一つでも問題を減らそうと、屋根裏部屋を見ることにした。ロジャーが梯子を用意する。
「ここは頻繁に出入りするのですか?」
レオナにロジャーは「月に一度くらい」と言う。
「本についての資料など、あまり使わないものを置いてあるんです」
「最後に入ったのはいつですか?」
アユイにロジャーは「二週間より前」と答えた。
「それって何かいても気づきにくいということよね」
メイムは天井を見上げた。
「先に確認することは効率がいいことですね……でも、多く人がいると驚かせてしまうかもしれません」
カティスは「何か」を好意的に考えていた。花が好きだけれど愛でられない、恋愛に興味のあるが人前に現れるのが苦手なものだと。
「私はここにいますので」
ルゥルがミオレスカの座る椅子をそのまま押して隅っこに行く。
「じゃ、俺様が行くかな」
トリプルJが梯子を上っていく。戸を開ける前に何かいる気配がないか探る。
嫌な予感がした。
(精霊とか英霊とかじゃねーってことかあ?)
一旦下りる。
「念のためだ……ミオレスカとルゥルは館長連れて別の部屋にいてくれるか?」
「分かりました」
「移動は任せてください」
ルゥルがミオレスカの椅子を押して移動していく。絨毯敷でたまたま滑るからロジャーも文句は言わない。ロジャーは隣の部屋に二人と向かう。
「扉開けておきますか?」
アユイは護衛についておくべきかとも逡巡するが、ここで防げば関係なかった。
「何かあったらあたしも動くよ」
メイムとアユイが扉の側で廊下にすぐ出られる位置に待機した。
壁際にレオナとカティスが寄る。
「そんなに怖い感じなのですか?」
カティスは不安そうにするがトリプルJは「用心だ」と告げる。
「何がいるからってすぐに危険とは限らん」
「そうですね、気をつけすぎる問題はありません」
レオナは符を取り出し、いつでも援護できる。
トリプルJが梯子を上る。
そして、戸を押し開けた。鍵はあるわけではない。
「相棒……何か見つけたら……」
トリプルJの連れのフクロウはすぐに警戒を示す。
下から灯が入っているため、屋根裏に光は差し込んでいる。灯火の水晶球の元、周囲を見た。
それは、素早く近づくと鉄扇をトリプルJにたたきつけた。
「っ!?」
トリプルJは不意打ちを回避しかかり、梯子から転落する。
「大丈夫ですか?!」
「来ますっ……」
カティスとレオナな声が重なった。
それはトリプルJの上をクッションに着地し、床に下りた。
「ぐっ」
それはドレスを着た女性のようだった。ドレスの着こなしがどこかぎこちない。頭には一枚の布をかぶっており、表情は伺いにくい。手には鉄扇を持ち、ハンターを見下すように見つめる。
「おんしら、何のためにここにおる?」
怒りを隠すようなきつい声だ。
「……あ、えっと……」
カティスは何か話しかけてみようと考える。歪虚だからといって彼女がすぐに敵になるとは限らない。しかし、問いたかったことを口にしていいのか悩んだ。
「なぜ、字を消したのですか?」
レオナがずばりと問う。この存在が消したか否かが重要だ。
「……字を消す? ああ、妾のモノにしただけだのう」
「そんなことしてどうなのよ」
メイムの言葉に相手はさげすむ視線を送る。
「妾のモノにしたと言ったではないか?」
「うー」
メイムはその得たものはどうなったか問い直したかったが、一旦黙った。
「恋愛物だそうですね。恋に何かあるのですか? どなたか待っているとか」
カティスの言葉に女性は柳眉を逆立てる。
「そもそも……恋とは何だ? 愛とはなんであろう?」
「それは感情です! 出会ってみないと分からないものです」
カティスは特定の人を思い出し、胸の奥が熱くなる。
「よく、わからないことを言う小娘だのう」
それはカティスに冷たい視線を向ける。
「なあ……食う必要がないなら、古新聞というのは落としどころして……」
トリプルJは慌てて転がって避けた。女性が、足を素早く上げ、彼の腹めがけてたたきつけようとしたのだった。
「目的はなんだ?」
アユイはナイフに手を置きながらも、トリプルJの行動をうかがう。彼が彼女の足元にいることもあり、動くならば合わせるつもりだ。
「貴様らになぜ言わねばならぬ? そもそも妾は……探すものがある……」
「何を?」
メイムは念のため、防御のための盾をとる。
「どこにいくんだ?」
トリプルJが女性を足止めしようとしたとき、レオナが符術の【黒曜封印符】を放つ。
「……貴様……」
女性はレオナに一気に近づき鉄扇をただたたきつけた。
「うっ」
「こちらに」
カティスは持っている魔法が敵に効かないため、負傷したレオナをそれの前から離した。
トリプルJも起き上がり、すでにその歪虚にこぶしを叩き込む。寸前で回避される。
「そういうことやめてくれるかな!」
「なし崩しというやつだ」
メイムとアユイが足止めと攻撃に移る。
「邪魔だのう」
部屋は狭いため戦いに向かないため、歪虚は廊下に逃げた。
隣の部屋では窓からルゥルが覗いている。
「ルゥルさん、そこで見ていただけると助かります」
ミオレスカに指示をもらい頑張っている。ミオレスカは自分のうっかりを口惜しく思う。
「はっ……こ、これはあれが見られる……わけではないですね」
このようなうっかりでは謎の存在は見られないはずだ。
司書室から音がする。
「館長さんは私の後ろにいてくださいね。ルゥルさんは見つからないように見張りをしてくださいね」
ルゥルは「了解です」と手をあげて返事して、用心する。
灯は消すべきかミオレスカは判断に迷うが、灯があるからこそ来る危険性もあると考え、消した。
廊下を駆け抜けるドレス姿の女性が一瞬目に移る。
メイムとトリプルJが追撃こそかけていないが、全速で追いかけていく。
「……先ほどのが……それにしても布の下が不自然に見えましたが……」
ミオレスカは何事のなく通り過ぎてくれたので安堵した。気になることがあってもそれを確認するすべが今はなかった。
メイムとトリプルJはそれが扉から出ていくのを見た。
待てともいえないし、どこかに行けというのも困るような気がする。
「……とりあえず、図書館の問題は解決したということだな」
「そういうことになるね……って歪虚が町にいるってあり? ばれなけれいるのか……」
長い間いれば周囲に影響は出ていく。しかし、汚染が進むまでいなければばれにくい。
「領主に言う案件だよな」
「まずは戻って報告とオフィスに行って、ルゥルを送ってくる」
二人は戻る際、鍵はかけておいたのだった。
●おうちは明日
司書室に戻ると、隣の部屋にいた三人も来ていた。
「結局は……歪虚なのですか?」
ロジャーの表情は冷静なままだが、青ざめているのは否めない。
「そういうことになるな」
トリプルJはが答える。
汚染がゼロでないために、切り花が一番影響を受けたらしい。このままい続ければ、本が白紙になるだけでなく、職員にも影響が出ていただろう。
「消すとどうなるっていうのがわからなかったよね」
メイムは眉間にしわを寄せる。
「そうですね。でも、この状況でその力を振るわれていたら、危険でもあります」
レオナは唇をきゅと結ぶ。もし、あの歪虚が戦う気で攻撃して来たらこの程度では済まなかったと感じていた。
「この文字が消えてしまった本はどうするのですか?」
ロジャーはアユイに「リストと照合して購入しなおす予定」と告げた。
「内容の復元……するにはそれが手っ取り早いということですか」
購入できない本があると困るだろうが、そこは考えていると考える。
「恋の物語が好きだったのですか?」
「引っかかることはあるようですわ……でも、明確にはおっしゃいませんでした」
ミオレスカにカティスはしおれて告げた。
「……あ、ルゥル、保護者には連絡入れておいたの?」
メイムに問われた瞬間、ルゥルがブワッと冷や汗をかいた。
「どうしたんですか? 具合でも悪いんですか?」
アユイはまじめに問うが、トリプルJが笑う。
「そういうこともあるだろう?」
「ルゥルさん……」
ミオレスカはくすりと笑った。
「そうだ、ルゥル。お菓子を作るとしてキノコ味のチョコ、キノコ型のチョコ、キノコみたいなマシュマロどれがいい?」
不意の質問にルゥルはキョトンとなるが「キノコはなんでもよいのです」と答えたのだった。ただ、ルゥルの目は妙にギラギラしている。
「……眠いけれど、やる気だけは満ちているんですね」
カティスはルゥルの様子を見て微笑んだ。
「さて、外は寒いし早く移動しよう」
トリプルJが促したのだった。
ロジャーを家に送る組とハンターのオフィスにルゥルを連れて向かうのに分かれる。
歪虚は町に消えたため、どこに行ったのかはわからない。注意喚起は必要だろう。
それは足を止め、月を見上げた。
「妾はどこに向かえばよいのか。離れたいと思ったのは事実でもあるが……なぜ、何に?」
それは町の外に向かって足を進めた。
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図書館捜索 ミオレスカ(ka3496) エルフ|18才|女性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2018/02/13 07:25:04 |
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【質問卓】 メイム(ka2290) エルフ|15才|女性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2018/02/11 21:17:58 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/02/09 23:18:02 |