• 反影

【反影】蒼天のヘヴンズドア ステージ2

マスター:のどか

シナリオ形態
ショート
難易度
難しい
オプション
参加費
1,500
参加制限
-
参加人数
3~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2018/02/20 19:00
完成日
2018/03/03 01:47

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


 色とりどりの光が下りて、3人の少女の姿がシルエットになってステージ上に浮かび上がる。
 真ん中の少女がギターの弦を弾くと、ピンと張りつめた空気を轢き潰すような重低音が会場を震わせた。
「こんなトコまでよく来たな、てめぇら……雁首揃えて今日はとことん、あの世の先の先まで付き合って貰うぜッ!」
 バスドラムの音が迫りくる足音のようにリズムを刻み、そこにベースが音を重ねる。
 切迫感のあるイントロに肺がギュッと鷲掴みにされるような息苦しさを感じる中、ギターの少女――カナデのシャウトが、呼び声となって心臓を殴打した。
 歌声というよりは語り、訴えに近い、腹の中に溜まったマグマを吐き出すかのような圧倒的な脅迫性。
 思わず後ずさってしまうような、だが引くことは許されないような――それが彼女の歌だった。
「――はい、音合わせオッケーです!」
 パッと会場の電気がついてスタッフ達がガヤガヤ動き始めると、少女たちは一息つきながら顔を見合わせて今の感触を確かめあう。
 それから降壇していくカナデに、ルミ・ヘヴンズドア(kz0060)は思わず飛びついて力強く抱きしめていた。
 カナデは一瞬戸惑ったように表情を曇らせたが、すぐに目元に涙を浮かべてその黒い茨のような異形の腕で強く抱きしめ返す。
「ちょっと、誰ですか! 困りますよ、入ってきてもらっちゃ!」
 慌てて駆け寄って来たスタッフをカナデが頭を下げて止めると、もう一度ルミのことを正面から見つめた。
「来ちゃダメだって言ったのに……」
 震える喉から絞り出されたその言葉に、ルミは大きく首を振る。
「何よあの歌、感情ばっかり先走って酷いもんじゃない……やっぱり、私がリードしないとダメなんだから」
 そう言って彼女は、真っ赤な目元で精いっぱいの笑顔を作ってみせた。

 手配してもらったSTAFF札を下げて、一行は「HEAVENS DOOR」の楽屋を訪れる。
 そこには他のメンバーが先に待っていて、方やスマホ片手の気だるげな視線で、方や雑誌に落としていた刃のような視線を彼らへと向けていた。
「で、なんなの?」
 スマホをいじる中学生――いや、小学生にも見える少女に問われてカナデの視線が宙を泳ぐ。
「い、いきなりごめんねっ。招待した友達に、みんなのこと紹介しようかと思って……」
 その取って付けたような言い訳に、スマホ少女は強いウェーブのショートボブをふわりと揺らしながら、不機嫌そうにじっとりとカナデのことを見た。
「あのさぁ、わたしたちアイドルなの。みんな、私たちに会うためにお金払ってるの。その価値がわかる? ねぇ?」
 すると、もう1人のすらっとした長身の少女が無言で間に割って入って2人を見やる。
 それから一行を冷ややかに眺めて、一転、にっこりと朗らかな笑みを作ってみせた。
「堪忍なぁ。フブキちゃんのこと、悪く思わんといて」
「アリス、また関西弁! そんなんだからイメージ壊れるって、寡黙キャラ演じる羽目になるんじゃない!」
「ええ~、しゃーないやん。あ、みなさん麦茶でええかな?」
 フブキと呼ばれた子の剣幕をへらへらと躱しながら、アリスと呼ばれた少女は人数分の紙コップを並べてペットボトルのお茶を注ぎ始める。
「ウチはアリス言います。パートはドラム……って、それは言わんでもええか。見ての通りおしゃべりトークマシンやけど、よろしゅうな。ほれ、フブキちゃんも」
「なによ、ったく……えっと、フブキですっ。ベース頑張ってます。さっきはびっくりさせちゃってごめんね? 今日は楽しんでいってくれると嬉しいなぁ……はいっ、これでいいでしょっ!」
 アリスに小脇を突かれてフブキはトーンを一転、おとぎ話の女の子みたいに上目遣いのキラキラおめめで挨拶をすると、大きくため息をついてどっかりと椅子に腰かけた。
「アリス、お茶」
「はいはい」
 そんな2人の様子を眺めながら、カナデは困ったような表情でハンター達へと頭を下げる。
「ごめんなさい……あの、改めまして私はカナデです。あの時はありがとうございました。それと――」
 カナデが心苦しそうにちらりと隣を見やると、そこには思いつめて口をもごもごさせるルミの姿があった。
 彼女は震える足で一歩前に踏み出すと、メンバーたちへと頭を下げる。
「カナデの友達のルミ、です……その……“はじめまして”」

 それは、楽屋へ向かう廊下でのこと。
「――記憶が……ない?」
 問い返すルミに、カナデは小さく首を縦に振る。
「記憶だけじゃないの……少なくともこの世界にいる人はみんな、ルミちゃんのことを知らなくって……ヘヴンズドアも3人チームってことに……」
「そんな……!」
 詰め寄ろうとして、だが目の前の彼女にそんなことしても仕方がない事を理解して、踏み出しかけた足を止める。
「記憶……もしかしてあの歪虚が?」
「たぶん……そうだと思う。ねぇ、あんなの、“あの時”は居なかったよね……?」
 縋るように手を取った彼女に、ルミはただ小さく――そしてハッキリと、うなずく事しかできなかった。


「記憶を失わせる歪虚か……厄介なもんじゃな」
 前回の調査報告をしていたとき、ナディア・ドラゴネッティ(kz0207)は眉間に皺を寄せながらうーんと腕をくんで小さな身体をひねっていた。
「おそらくは、現場でハンター達が聞いた謎のノイズ――いえ、歌のせいだと思います。あれこそがあの巻貝歪虚の力で、あの虚無の調査における最大の障害です」
 いつにもなく真面目な様子のルミの報告に、ナディアは小難しそうにその瞳を覗き見る。
「おぬしは……“当時”あの場にいたんじゃな?」
 その問いかけに、ルミは一瞬間を置いてから頷く。
「はい。ルミちゃん――ううん、あたしは“ヘヴンズドア”のメンバーとしてあの時、あのステージに立っていました。それからVOIDの襲撃を受けて、こっちの世界に飛ばされて……あの日のことは、今でも夢に見ます。だから、断言できるの。あんな歪虚、いませんでした」
 その言葉に、ナディアはうーんと小さく唸る。
「先の大規模な戦闘で、虚無にはそれを作り出した管理者のような歪虚がいて、おそらくそれを倒すことでその空間の謎は解決する――と思われておる。だとすると、その巻貝歪虚がその虚無の管理者ということになるのかのう」
「ええ、もしくは――」
 言いかけて、ルミは言葉を飲み込んだ。
 彼女が何かを隠したていであったのをナディアも見逃しはしなかったが、かといってあえて催促することもしなかった。
「あのっ、次の調査にも私が同行させてもらえませんか……?」
「それは構わんが、その……大丈夫か? おそらく、この旅はおぬしにとって辛いものになるぞ……」
 ナディアの言葉に、ルミはおびえたように肩を震わせる。
 だが、その瞳だけは強い意志を持って、彼女のことを見返した。
「分かっているつもりです……でも、行きたいんです」

リプレイ本文

 無機質な廊下の片隅で、カメラのフラッシュが一瞬辺りを眩く照らす。
 すぐさまビーっと出て来た現像写真を振りながら眺めて、キヅカ・リク(ka0038)は満足げに頷く。
「うん、これでOKだ。みんなありがとう」
 言いながら、傍らの椅子に並べた大量の写真を1枚ずつ仕分けしていく。
「記憶がなくなっても、この写真のヤツらは味方だって分かるわけか」
「それを記した書置きに我々が気づけば、な」
 仕分けを手伝いながら、ジャック・J・グリーヴ(ka1305)とエアルドフリス(ka1856)は、自分の顔がそっくりそのまま写し出された写真を興味深げに眺める。
「一度経験した記憶はあるけど『現場』での俺たちはそうとは限らないからね」
 ジュード・エアハート(ka0410)は、前回の出来事をびっしりと書き残したメモ帳を片手に、ポリポリとペンで頭を掻く。
「あっ、みんなちゃんとリボンの準備はできてる?」
 ふと辺りを見渡した彼の言葉に、ハンター達は一様に自分の身体のどこかに巻き付けたリボンを掲げ、指し示す。
「厄介なものだよね、記憶障害ってのは」
「訳も分からない所に放り出される孤独と恐怖。記憶が戻ってからの後悔……そう何度も経験したいものではないかな」
 ソフィア =リリィホルム(ka2383)の言葉に答えた天王寺茜(ka4080)は、苦笑こそしていたものの、きゅっと奥歯を強く噛み締める。
 その傍らで、カナデの手を取ったルミがその黒い茨のような腕を優しく撫でていた。
 決して人間の女性のものではないそれは、確かに彼女の肌の一部に見えた。
 そんな2人の様子をファインダー越しに見つめて、シェリル・マイヤーズ(ka0509)は静かにそのシャッターを切る。
「カナデ嬢――と言ったかな。少し話を聞かせて貰えないだろうか?」
「は、はい……」
 エアルドフリスの問いに、カナデは幾分緊張した様子で頷く。
「まず、君はいつからこの空間にいる?」
 カナデは伏し目がちに何かを考えてから、小さく首を横に振る。
「正しくどのくらいかは……この世界ではずっと2013年10月のままで。目を覚ますといつも搬入口に着いたワゴン車の中で……」
「すまない、質問が悪かった。今、目を覚ますと――と口にしたが、なら終わるのはどの段階だ?」
「VOID――歪虚がホールになだれ込んできて、それからしばらくするとふっと世界が真っ白になって……気づくとまた」
「その時、あなたは何をしてるの?」
 ふとソフィアが口を挟んで、カナデは言葉を詰まらせる。
「あの……色々でした。どこかに隠れている時があれば、逃げていた時もある。でも……ここしばらくはずっと、ステージの上で歌っていました。私には……何をどうする事もできなかったから」
 言いながら、カナデは小さく肩を震わせる。
 ソフィアは慌てて頭を下げて謝ると、ふと眉間に皺を寄せて自分の仮説を否定した。
 彼女の死がループの引き金――ではないということ。
 エアルドフリスが話を戻すように、カナデの瞳を見る。
「ループはどれくらい繰り返されている?」
「3桁を越えたくらいから数えるのも嫌になって……今、何度目なんでしょうか」
 歯切れの悪い返答は、彼女自身本当に分かっていないのを容易に想像させた。
「次で最後だ。ループのたびに、何か変化する事はあったか?」
「基本的には……なかったと思います」
「基本的に、というと?」
「は、初めのうちは、私もいろいろな事をしました……でも、どれも根本的な解決にはならなかったんです。最後に世界は巻き戻る……それが変わることはなくって。前のループで行ったことが、次のループに影響を与えることも……」
 震えるカナデの肩を、ルミがそっと抱き留める。
 そんな様子を見ながら、エアルドフリスは静かに頭を下げた。
「……辛い事を思い出させた。だが、状況は理解できた。ありがとう」
 彼女の言葉を統括するならば、このループはまるで――そう、双六で「スタートへ戻る」のマスを引いた時のよう。
 それまでのすべて無かった事にして、先にどんなマスがあるのかの記憶だけを残してスタートまで戻される。
「そんな世界で……カナデさんは、どんな想いで生きて来たんでしょう」
 口にして、ルナ・レンフィールド(ka1565)は思わず彼女から目を逸らしてしまう。
 その答えは想像してもしきることができないし、事実、誰も答えることができなかった。
「それに加えてこの虚無じゃあ、いたはずのルミがいなかったことになってるんだろ?」
 そして、ふと口にしたジャックの問いが最大の謎。
 何1つ変化の起きないというループの中で、唯一“初めから欠けている”存在。
「それに関しては――私、気になることがあるんです」
 茜が拭いきれない不安を無理やり自信へ変えるように頷いて、まっすぐにカナデとルミを見る。
「これから言う私のお願い……考えて貰えないかな。2人にとって辛いかもしれないけど、私は、あの日のLH044がこんな形で繰り返されているなんて我慢できない」
 言いながら目を伏せた茜の瞳には、悲しみや怒り、後悔に恥辱――言葉では表しきれない様々な感情が渦巻いて、暗い輝きを灯す。
 だが、それを自分自身で振り切るようにして、もう一度2人の姿を見返した。
「時を進めるために、力を貸して――」

 それから時が進んで、楽屋で挨拶を終えたハンター達はそれぞれの時間を過ごしていた。
「改めて初めまして、ジュードって呼んでね。記者をやってて……お話とか聞かせてくれたら嬉しいなぁって」
 ペンとメモ帳を手にニコニコと愛想を振りまくジュードに、化粧台の椅子に腰かけたフブキが胡散臭そうな表情を浮かべてみせた。
「……っていうか、その前に何その服。コスプレ?」
「クリムゾンウェストって国では……これが普通なんだ」
 世界交流を知らない時代の彼女達にとって、ハンター達の戦闘衣装は確かに何かのコスプレにしか見えない。
 取材っぽくシャッターを切りながらすかさずフォローを入れたシェリルに、ジュードは被せるように頷くと、フブキたちも「そんな国があるのか」程度には腑に落ちてくれたようだ。
「取材はええけど、それならカナデちゃんもおらんと――ってあれ、カナデちゃんは?」
「あっ……それなら、さっきトイレに行くって?」
 咄嗟のルナの返答に、楽屋に残った者達はほっと胸を撫でおろす。
 そして2人に感づかれない程度に、一様にちらりと視線をドアの先へと向けた。
 
 先ほど写真撮影と問答をした廊下の隅で、リクとカナデは長椅子に隣り合わせて腰かけていた。
 目の前の壁に張られたライブのポスターを眺めるリクと対照的に、カナデはどこか沈んだ赴きで視線を床へと落としていた。
「つまり……この世界は現実ではない、ということなんですね?」
「厳密に言えば語弊はあるかも。でも、そう考えられている」
「そして管理者を倒すと……全部、消えちゃうんですね」
「……おそらくは」
 一切ぼかすことなく、リクは答える。
「……そっ……かぁ」
 カナデの口から漏れたのは――大きな大きな溜息だった。
「諦めたつもりでした……何回も。でもほら、マンガとかでよくあるじゃないですか。惨劇のループの中で、その記憶を持ち続けている主人公が少しずつ問題を解決していって、最後には明るい未来へ歩いていくようなお話――きっとそういうのなんだって、ここまで来たんです。でも、そっか……全部、無駄……なんだ……」
「無駄なんかじゃない! 諦めなかったから君は、ルミちゃんは、もう一度出会うことができた。だけど――」
 この狂獄に捕らわれている人々は、きっともう――
「でも、よかった……ルミちゃん、生きてるんだ……生きてたんだ……」
 茨の腕で顔を覆って、カナデの嗚咽が廊下に響く。
「……君にこれを預けておくよ」
「これは……?」
 リクが小さな装置を長椅子の上に置くと、彼女は泣き腫らした真っ赤な瞳でそれを見た。
「ボイスレコーダーみたいなものだと思って。使うにはマテリアル操作が必要なんだけど……君なら、使えるんじゃないかな」
 そう口にして立ち上がると、リクは彼女を見下ろすようにしてまっすぐその瞳を見つめる。
「僕たちは巻貝歪虚を倒してみせる。だけどもし、それでこの虚無が終わらなかった時は――」

 ――僕が、君を討つ。

 ハッキリと口にして、カナデの肩がビクリと震える。
 だが、その身体で彼女はかすかに――だがしっかりと首を縦に振っていた。
 
 その頃、ソフィアはがらんとした会場の席に腰かけて、着々と進む設営の様子を眺めていた。
 本当に「生きた人間の生活が見える」その光景は、虚無の特異さを際立たせる。
 しばらくして彼女はピョンと椅子から飛び降りると、そのまま手頃なスタッフへと声を掛けた。
「あの、ごめんなさいっ。楽屋ってどっちでしたっけ……?」
 上目遣いで尋ねる彼女に、男性スタッフはドキリとして顔を赤らめながら視線を泳がせる。
「キミ、また迷ったの? ステージの左手側の扉から入って、真っすぐだよ」
「ありがとうございます! わたし、いっつも道を覚えるのが苦手で……」
「よかったら、案内しようか? もしくは、時間があるならロビーのカフェでも――」
「本当に、ありがとうございました~!」
 満面の笑みで握手をしてから、伸ばした手を宙に漂わせるスタッフを尻目にソフィアは会場を去って行く。
 実は1時間ほど前、彼には全く同じ質問をしてあったのだが――
「返事は普通……か」
 小さく息を吐きながら腕を組む。
 この世界が記憶か何かから投影されてできたものであることは、おそらく間違いない。
 だが、そこにいる人々はちゃんと実態のある人間で、先ほどの握手の温もりも偽りには感じなかった。
 だからこそ、余計にムカムカとした感覚が喉元までせり上がって来る。
「――本当に胸糞悪い世界」
 擦れた表情で吐き捨てて、彼女は楽屋へ足を向けていた。
 
「――なるほど。つまり、みんな元々はソロデビューする予定だったんだね?」
 ペンを走らせるジュードへアリスがにこやかに頷くと、フブキがその頭をポカリと小突く。
「そんな言い方したら、個人じゃ売れないみたいじゃない!」
「ええ~、そんなつもりなかったんやけど」
 指でチョキチョキ「カットカット!」と示しながら喚く彼女は、自分が代わるとでも言いたげに隣へどっかりと腰かける。
「マネージャーがユニットの方が絶対売れるっていうから仕方なく……よ!」
「その方がお互いに高め合える……っと」
 イイ感じに言葉を解釈しながらメモを取っていく記者ジュード。
「確かに『ヘルダイバー』って曲、すごく印象的な曲だったね。えっと……こういうのエモいっていうんだっけ?」
「おーきに! ウチらの十八番ナンバーやからなぁ」
「独特な音律だったな。歌と言うよりは語りや説法に近いような」
 音合わせの様子を思い起こすエアルドフリスに、フブキは大きなため息をつく。
「カナデったら1人じゃろくに音が合わせられないのよ。だからあんな、音階関係なしに叫ぶだけの歌ばっかりで」
「あれはあれで完成されてるー、ウチは思うよ?」
「他にボーカルを兼任できる人とかはいないのかな?」
 その問いに2人は渋い顔で唸る。
「ウチはダンス専攻やったしなぁ。ドラムは趣味で」
「わたしもパンクはそんなに。せっかく演奏はスペシャリストのチームなんだから、ボーカル探しても良いと思うのに」
「キーボードもおらんしな」
 その言動に、不審な点は見受けられない。
 純粋なバンドチームとして、「何でそういうメンバーがいないのか」という話をしているだけに見える。
 だから、ジュードはあえて一歩踏み込んだ。
「じゃあ、お2人から見てこのユニットのセールスポイントってどこかな?」
 その言葉に再び押し黙る2人。
 それから、先にポツリと言葉を漏らしたのはアリスだった。
「思えば、ウチらよくコンセプトのエモさだけで売れたなぁ」
「――ごめん、道に迷っちゃったよ」
 そんな時、リクがカナデを引き連れて楽屋へと戻って来た。
 どこかギクシャクした様子の2人に、外で何が語られていたのかハンター達は理解する。
「カナデさん、ちょうど良かった!」
 その姿を見つけて、隅のテーブルで作業をしていたルナが表情を綻ばせる。
 傍らには神妙な面持ちで五線譜とにらめっこするルミと、興味深そうにそれを覗き込むシェリル。
 2人もルナに釣られて顔を上げて、手元の紙束を重ね合わせた。
「ルミちゃんの衣装は見当たらなかったけど、この楽譜はナイスアイディアだよシェリルちゃん」
「私は音楽の知識……ない、けど。ルナがいてくれて、助かった」
 シェリルは揃えた五線譜に目を落として、それからルミの背中を優しく押す。
 彼女はどこか気の引けた足取りでカナデの元へと歩み寄ると、手にした楽譜を彼女へ差し出した。
 それは、前回の虚無突入の際にハンター達が聞いた怪曲を譜面に落としたもの。
 朧げな記憶を頼りにした作業だったが、終始曲に耳を澄ませていたルナがその旋律を辿ると、思いのほかすらすらとルミが譜面へと書き起こしていく。
 それは初めからその曲を知っているかのようで――その姿は、どこかルナの瞳に狂気じみて映っていた。
「ルミちゃん、これって……?」
 楽譜を受け取ったカナデは、さっと目を通すなり困惑した様子でルミの顔を見た。
 ルミもどこか煮え切らない様子で五線譜を見つめ、それから茜に目配せをする。
「茜さん。カナデも来たし、そろそろ始めよっか♪」
「あっ……うん、そうだね!」
 その言葉に、茜は抱えていた大きな楽器ケースを開く。
 中に入っていたショルダーキーボードをルミへと手渡すと、フブキとアリスの方へ向かって頭を下げた。
「あのっ、皆さんをプロの音楽家と見込んで、ぜひ彼女の演奏を聴いて貰いたいんです」
 彼女と一緒にキーボードを首から下げたルミも頭を下げると、カナデがメンバーの2人へと口添えする。
「突然のことだけど、彼女、すっごく上手なの。だから、聞いてくれないかな……?」
「なによ、訳わかんないけど……まあ聞くくらいなら」
 茜とアカネが胸を撫でおろすと、準備のできたルミへ目配せをして、ルミもまた頷き返した。
 楽屋のプレイヤーから“この世界”のヘヴンズドアのナンバーを流し、キーボードの伴奏を重ねるルミ。
 それは楽曲にぽっかりと空いた漠然とした物足りなさを綺麗に埋めるように繊細で、だけども強引に引っ張る彼女の人柄を表すように天真爛漫な音だった。
「へ~、ええやんええやん! なに、実は同業者さん?」
「いや、そういう訳じゃないんだけど……」
 かつての仲間のキッパリとしたコメントに、思わず視線を落とすルミ。
 すかさず助け船を出すように、茜が言葉を挟んだ。
「あのっ、良かったら彼女をヘヴンズドアのメンバーに入れて貰えませんか……? 今回のライブだけで良いんです! お願いします!」
「わ、私からもお願い! 理由は……その、言えないんだけど。今日のライブに、彼女の力が必要なの……!」
 しどろもどろと、だけど要点はハッキリと、カナデも言葉を添える。
 驚いて面食らったフブキとアリスはお互いに顔を見合わせて、それからフブキの方がきっぱりと口を開いた。
「ダメよ」
「そこを何とか……!」
 食い下がる茜に、フブキは冷たく首を振る。
「そんなの、できるわけがないでしょう。ステージ構成だって大きく変えなきゃいけないし……何より、私たちはプロなの。そこにいきなりだなんて――あたしは、絶対に許せない」
「ごめんなぁ。めっちゃいい演奏やし、ウチは面白いと思うんやけど……事務所の事もあるし、ウチらでOKは出せへん」
「そう……ですか」
 事務所まで出されてしまうと、茜もそれ以上口を出すことができなかった。
 そんな様子を壁際から眺めていたジャックは、汗ばんだ手でぎゅっとキーボードのネックを握るルミの小さな背中を静かに見つめていた。

 開演まであと十数分を数えるころ、舞台袖にマテリアルの淡い輝きが漏れた。
「どう? 調子良くなったとか、逆に気分悪いとかない?」
「いえ……特には」
 手にしたカートリッジの蓋を閉じながら訪ねたソフィアに、カナデは申し訳なさそうに首を振る。
「う~ん、そっか」
 悩まし気な表情で、ソフィアは次いでステージ方向へと別のカートリッジを向けた。
「汚染を受けている訳ではないのか……」
 動向を眺めていたエアルドフリスは一層眉間に皺を寄せる。
 導き出される答えは、彼女はそもそもそういう存在である――ということ。
「あっ、あとこれ、お守りだから持っててくれると嬉しいな」
「ありがとう、ございます」
 カナデとルミにマテリアルを込めた符を渡して、ソフィアはもう一枚別の符を客席方向へと投げ込む。
 符はふわりと闇の中を飛翔して、天井付近でぴたりと静止した。
「カナデ、セッティング!」
「あっ、うん!」
 フブキに声を掛けられ、カナデはハンター達に一礼して暗転するステージへと駆けて行く。
 開演してしまえば「あの時」がやってくる。
 そうすれば記憶を失って、きっとこれ以上の調査は無意味なものになってしまう。
「ねぇ……ルミちゃん。あの曲、ほんとは知ってるんだよね?」
 ふと投げかけられたルナの言葉に、ルミはビクリと肩を揺らした。
「やっぱり私……ここはカナデさんの“未練”が作った世界なんじゃないかって思う。だからきっと、あの歪虚の歌はヘヴンズドアに関係があると思うの」
「……3人じゃない……4人の、ヘヴンズドア」
 強調するように、シェリルが付け加える。
「お願い、歌ってくれませんか? この世界を、囚われたカナデさん達を救えるのは、貴方だけだと思うから――」
 ルミは俯いて何も答えない。
 その表情はステージの闇が深く掛かって、伺い知ることができなかった。
「――考えろ、思考を止めるんじゃねぇ」
 不意に静寂を破ったジャックの言葉に、皆が一斉に振り向く。
 集まった――主に女性の――注目に彼はバツが悪そうに視線を泳がせたが、途切れさせずに言葉を続ける。
「この虚無がカナデって奴の記憶なんじゃねぇかってのは俺も同意見だ。お前たちはよ、ずいぶん無理をしてたんじゃねぇのか? みんな、正反対の性格を演じて……他の奴らはまだ器用にこなせるかもしれねぇが、カナデはそうじゃねぇように見える。相当な負担だったはずだ。そしてこの世界にはルミ、お前がいない――その理由は定かじゃねぇが、少なくとも『居ない』形で回っている。もしかしたら……お前の存在も、カナデにとって負担になってたんじゃねぇかと俺は考えてる」
 彼の言葉にルミは思う所があったのか、怯えたように震えるばかり。
 このままでは埒があかないと、ジャックは畳みかける。
「もしそうならよ、カナデをどうにかしねぇといけねぇ。その感情を、記憶を、いい方向に変えるしかねぇだろ。それが出来んのはメンバーで、今この世界に居ないお前だけだ。だから何度でも言う。考えろ、思考を止めるんじゃねぇ――」

 ――天国への扉を開けんのはお前の役目だろ、ルミ・ヘヴンズドア。
 
 その言葉に、ルミはいつしか顔を上げて――そして惚けた様子で、ジャックの横顔を眺めていた。
 それから一瞬、ぼっと顔を赤らめると、熱を冷ますように頭を振って舞台袖から逃げるように駆け出していた。
「ルミちゃん!?」
「大丈夫、私がいく」
「わ、私も!」
 慌てて追いすがるリクを振り切る彼女をシェリルと茜が追う。
 会場の照明が一斉に落ちたのは、その直後だった。
「――こんなトコまでよく来たな、てめぇらァ!」
 やがてカナデの絶叫が響いてライブが開演する。
 爆発的な歓声と共にステージに光が灯り、一曲目『ヘルダイバー』の重音がビリビリと会場を震わせた。
 ハンター達はいささか緊張した赴きで「その時」を待つ。
 やがて報告と寸分違わぬタイミングで爆発音が響き――天井が崩れ落ちていた。
 
「今のって……!」
「……始まったんだ」
 思わず声を荒げた茜に、シェリルは瞳を金色に染めながらチリチリとうなじが焼け付く思いを感じる。
 ルミは気にも留めない様子で持ち込んだバッグを引っ張り出すと、勢いに任せてそれを開いた。
「それって……?」
 中のモノを見て目を丸くする茜にルミはメイク台の化粧セットを突きつけて、同じくシェリルへも目配せをする。
「時間がない。着つけとメイク、手伝って!」
「……分かった。じゃあこれ……私から」
 シェリルが手渡したのは小さな銀色のブローチ。
「一緒にいるって……印」
「……うん」
 ブローチを握り締めながら力強く頷いて、ルミは制服のホックをプチりと外した。

 会場では悲鳴と怒声、嗚咽、そして奇声が入り混じる。
 繰り返される惨劇そのものを止めることはできない。
「皆さん! 落ち着いて逃げてください!」
 ルナの澄んだ声が響いて、大きい身振りで客たちを非常口へと促す。
 いくら記憶の幻影だと割り切っても、人々を見捨てることはできない。
「巻貝は!?」
「まだ! 前の時も少し時間があったはず……!」
 ジュードの言葉に「ならば」と、エアルドフリスはマテリアルを練り上げ氷の蛇を顕現する。
 蛇は身をくねらせて眼前のVOIDに絡みつくと、その氷牙を分厚い甲殻に突き立てた。
「な、なんなんこれ! 映画の撮影!?」
 お約束の文句を放つアリスの前にソフィアが滑り込むと、飛び掛かって来たVOIDをその剣で受け止める。
 その横っ面にジャックの銃弾が叩き込まれて、異形はステージ上で崩れ落ちた。
「あ、アンタたち軍人……だったの?」
「説明めんどくさいから、そういう事にしておいて!」
 軽やかにステージ前へ踊り出たジュードは、2丁の銃で迫る敵を足止めしながら笑いかける。
「ルミちゃん達は何をしてるんだ……!?」
 盾でVOIDの圧を押し返しながら、彼女らの去って行った方を気に掛けるリク。
 だがその時、キーンと耳を劈く高周波が脳を揺さぶった。
 頭を抱えて見渡すと、客席の中央の空に浮かび上がる巻貝歪虚の姿があった。
 叫び声のような音の波が、膨大な情報となって脳内に一気になだれ込む。
 耳を塞いでも止めどなく溢れ出すその音――歌に、覚悟していてなおハンター達は膝を折ってしまう。
 ぼんやりと、視界が霞む。
 ぼんやりと、思考も歪む。
 まるでドロドロに溶けたスープの中を漂うような温もり。
 温かい、柔らかい、きもちいい――もう、どうでもいい。

 ――1つだけ、訂正して。
 
 まどろみのなかで、だれかのこえがする。
 
 ――あたしは「ルミ・ヘヴンズドア」じゃない。
 
 もはやだれのこえかはわからないけれど、はっきりと、それだけはききとれた。

 ――「朱鷺戸るみ」……あたしが、みんな纏めて天国へ連れて行ってあげる!
 
 声が溢れた。
 同時に色も溢れる。
 この色は――記憶。
 消えかけた、スープに溶けたはずの記憶が、1つ1つハッキリとした色になって還っていく。
「ここは……」
 舞台袖で、シェリルは消えかけた自分の記憶がハッキリと戻っているのを感じていた。
 ルミが登壇するのを見送って、それから歪虚の歌が頭の中に響いて――
 はっとステージを見ると、そこにはステージ衣装でマイクを握り締めるルミの姿があった。
「ルミ、これ……!」
 茜が投げたショルダーキーボードをキャッチして、慣れた手つきで首から下げる。
「大丈夫、ルミちゃんなら出来るよ! 一緒に歌った私が言うんだから!」
 ルナの声援に笑顔で頷いて、ルミは驚いた様子で自分を見つめるカナデへ視線を向ける。
「カナデ。“忘れた”なんて、言わせないから――」
 キーボードの和音が会場のスピーカーから盛大に零れる。
 それに合わせるように、大きく頷いたカナデのギターが軽やかな音を発した。
「――ノッキン・オン・ヘヴンズドア!」
 響くのはルミの歌声。
 それが曇天をかき消すようにして、割れそうな頭の痛みが引いていくのを感じる。
「頭が……痛くない? ううん、それよりもこの歌!」
 頭を振りながら、ジュードは会場に響くセッションに驚きを隠せない。
 そう、これは確かにあの巻貝が奏でていた――
「巻貝の歌に逆らうな! 曲に……彼女たちのセッションに身を委ねるんだ!」
「そういう事か……!」
 エアルドフリスの言葉に、リクは弾かれたように客席へと飛び出した。
 真っすぐに巻貝の姿を捉えて、曲のリズムに合わせて引き金を引く。
 一条のマテリアルの光が輝いて、機導砲がその甲殻を穿つ。
「スキルが使える! だったら……」
 己の内にマテリアルを練り上げながら、ルナはあの楽譜の譜面を脳裏に思い起こす。
「今回は特別版です! 奏で謳いましょう。狂詩曲『蒼天の扉』――」
 ステージに並んで重ねられたルナのコーラスが、蒼い輝きとなって周囲の敵を包み込んでいく。
 光を受けたVOID達は一斉にその動きを鈍らせるが、その原因を理解してか一斉にステージ上へと迫る。
「ステージが台無しになるだろうがッ!」
 その時、ビリビリと会場を震わせる怒声と共に歪虚達の視線が一斉に傍らのジャックの方へと向いていた。
「ちゃんと扉は開けたな……ならこっから先は俺様の仕事だ」
「……ヘマすんじゃないわよ!」
 ルミの減らず口にジャックは微かに笑うと、構えた大型の魔導銃を引き付けた敵群へと乱れ打つ。
「ははは、強引なのは変わっとらんなぁ」
「ほんと、台無しも台無しじゃないの! どうしてくれるのよルミ!」
 突然響いた声に、ルミは弾かれたように振り向く。
「アリス……フブキ……!」
 挨拶代わりに響いたドラムとベースがセッションにさらに音を重ねていく。
 先ほどよりも大きなうねりとなった音楽に、巻貝歪虚の光が弱々しく点滅していくのが見えた。
「安心して演奏して……みんなは私が守るから。だから……止まっちゃだめ」
 立ちはだかるシェリルの背は、ステージ上から見ればとても小さい。
 なのに力強い――胸に付けたブローチに触れて、ルミはしっかりと頷く。
「巻貝が弱ってる! 一気にサビまで行くよ!」
 機杖へ持ち替えた茜は、眼前に創り出した三角の陣から光線を放つ。
 巻貝は1本、2本とフワフワ回避をしてみせるも、3本目がその中心を捉えた。
 爆光に目を晦ませず、ソフィアの銃撃が息を吐かずに叩き込まれてその硬い表面に僅かにヒビが入る。
「かったぁ……!」
「だが、効いてないわけではなさそうだ」
 巻貝から四方八方へ伸びる光の触腕を転がるようにして避けながら、エアルドフリスは杖を振るう。
 絶対零度の息吹が床を滑るように広がって、突き出た氷晶の針が群がる化物を縫い留める。
「僕がなんとか動きを止めてみる……だから、その隙に!」
 言うが否や、リクはパイプ椅子をなぎ倒して巻貝へと駆け出していた。
 伸びる数多の触腕を盾で受け流しながら眼前まで迫ると、振り上げた機剣を一思いに振り下ろす。
 ――が、手ごたえはない。
 触腕が彼の剣を絡めとるようにして、その刃を表皮に届かせることはしなかった。
 しかし、リクは口元に笑みを浮かべて全身のマテリアルを剣へと流し込んだ。
「受け止めたな――」
 強烈な雷撃が会場を明るく照らす。
 受け止めた触腕をアース線のようにして固い殻の内部まで稲妻を浴びせられた歪虚は、初めて直接、赤ん坊のような激しい嗚咽を漏らした。
「――今だッ!」
 叫ぶリクに、ジュードがその銃口を貝殻の亀裂へと定める。
 リボルバーの銃身に注ぎ込まれたマテリアルが淡い輝きとなって溢れ出すと、ジュードは引き金へと指をかけた。
「お休み……今度はこんな惨劇じゃない、幸せな夢を見るんだよ」
 
 ――銃声が鳴り響き、巻貝が砕けた。

 露になった光の胎児、そのお腹に大きく開いた銃痕から眩い光が漏れる。
 幾重ものオーロラのような波となったそれは虚無中へと広がって、触れた先から蔓延るVOIDO達の身体をガラス細工のように粉々に砕いていく。
 やがて世界からVOIDの姿が消え去ったころ――静寂を破く、溢れんばかりの歓声が会場を包み込んでいた。
「これは……」
 流石のジャックも狼狽えた様子でその光景を見渡す。
 ステージを見上げる大勢の観客が、盛大な声援と共に4色のペンライトを振っていた。
「歪虚は消滅した……でも」
 ソフィアが周囲を見渡すと、会場には先ほどまでの惨状の痕跡など何一つなく、人の亡骸も、崩れたセットも、天井の穴も、すべて元通りになっている。
 まるで、何もなかったかのように。
「ど、どういう事?」
「時が進んでる……歪虚の襲撃が無いままに?」
 状況が呑み込めずに戸惑うルナと茜だったが、そんな彼女達とは裏腹にエアルドフリスの深灰の瞳がカナデの姿を捉えていた。
「エアさん……どうしたの?」
 心配そうに寄り添うジュードに耳も傾けず、彼はただ真っすぐに真実を受け止める。
「やはり、君が……」
「あの歪虚が消えたとき、私も感じました……全て理解したんです」
 そう語るカナデの表情はとても落ち着いていて、どこか慈愛に満ちていた。
「私が……いえ、厳密には“私たち”がこの虚無の管理者。私が永遠のライブを願って……あの歪虚がそれを形にした」
「つまり……虚無を消すには、カナデを消さないといけない……ということ」
「そんな……!」
 シェリルの問いにカナデが頷くと、ルミは居た堪れなくなって彼女の下へと駆けだす。
 だが、彼女はそれを無言で制すると、視線をまっすぐリクへと向けてほほ笑んだ。
「リクさん。最期にお願い、聞いてもらえませんか?」
「……何かな」
「もう少しだけ時間を貰えせんか。この蓄音石も……そんなに長くは待たせません。最期に、もう1ループだけ――」

 ――ヘヴンズドア、ラストライブを。

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MVP一覧

  • 約束を重ねて
    シェリル・マイヤーズka0509
  • ノブレス・オブリージュ
    ジャック・J・グリーヴka1305
  • 赤き大地の放浪者
    エアルドフリスka1856

重体一覧

参加者一覧

  • 白き流星
    鬼塚 陸(ka0038
    人間(蒼)|22才|男性|機導師
  • 空を引き裂く射手
    ジュード・エアハート(ka0410
    人間(紅)|18才|男性|猟撃士
  • 約束を重ねて
    シェリル・マイヤーズ(ka0509
    人間(蒼)|14才|女性|疾影士
  • ノブレス・オブリージュ
    ジャック・J・グリーヴ(ka1305
    人間(紅)|24才|男性|闘狩人
  • 光森の奏者
    ルナ・レンフィールド(ka1565
    人間(紅)|16才|女性|魔術師
  • 赤き大地の放浪者
    エアルドフリス(ka1856
    人間(紅)|30才|男性|魔術師
  • 大工房
    ソフィア =リリィホルム(ka2383
    ドワーフ|14才|女性|機導師
  • 語り継ぐ約束
    天王寺茜(ka4080
    人間(蒼)|18才|女性|機導師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談するとこです。
天王寺茜(ka4080
人間(リアルブルー)|18才|女性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2018/02/19 22:28:53
アイコン 質問卓
鬼塚 陸(ka0038
人間(リアルブルー)|22才|男性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2018/02/19 01:48:11
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/02/15 19:45:07