バレンタインが終わっていた……だと?

マスター:水貴透子

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2018/02/26 22:00
完成日
2018/03/06 06:25

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


バレンタインデー、それは普段女性にモテない男性も義理チョコという名の好意を受け取ることが出来る日である。
つまり、モテない男性こそバレンタインはドキドキ☆ビッグイベントと言っても過言ではないのだ。

※※※

「な、なんだってーーーー!?」

ハンターズソサエティに一人の男性の声が響き渡った。
彼の名は「チョコホ・シイ」という、強くもなければ弱くもないという平々凡々なハンターである。
彼は誰よりもバレンタインを楽しみにしていた。
それは、甘いもの好きということだけではなく、バレンタインに義理チョコという名の好意が貰えるからだ。

「お、俺が依頼で寝込んでいた間に……バレンタインが終わっていた、だと?」

そう、彼はバレンタイン前に受けた依頼によって重症を負ってしまい、数日前に目覚めたばかり。
つまり、バレンタイン中は意識不明の重体だったということだ。

「俺がどれだけバレンタインを楽しみにしていたか……おまえに分かるか!? 俺は1年間、バレンタインを待っていたんだ!」

チョコホは案内人に詰め寄るのだが、彼女に取ってみれば「知るか、そんなこと」状態だ。

「くそう、この鬱憤を雑魔にぶつけてやるーーーーーーっ!」

そう叫びながら、まだ怪我も酷いはずなのに彼はハンターズソサエティを飛び出して行ってしまった。

「……すみませんけど、彼だけでは雑魔退治は厳しいと思うので追いかけてもらえませんか?」

申し訳なさそうに話しかけてくる案内人に、数名のハンターたちがため息をつくのだった。

リプレイ本文

■チョコが欲しいハンターに巻き込まれた者たち

「……お、おおう、チョコが欲しいからって大怪我してるのに出て行くってすごいのだ」
 ネフィリア・レインフォード(ka0444)は、チョコホの意味不明な行動力に妙に感心していた。
「なるほど、そんなにチョコが欲しかったんだね! 偶然だけど、ざくろもチョコ持ってるよ!」
 時音 ざくろ(ka1250)は、バッと持っていたチョコを取り出す。しかし、ここで時音が勘違いをしていることに誰かツッコミを入れるべきだったのだろう。なぜなら、チョコホが求めているのは『女の子からチョコがもらえる』ということであり、どんなに可愛くても、どんなに女性より女性らしくても、時音は『男』である。
「まぁ、とりあえずチョコを欲しがってたんだろ? ならあげればいいじゃないか」
「そうだよね、チョコホが喜ぶように、ざくろもプレゼントするつもりだよ」
 ミリア・ラスティソード(ka1287)の言葉に、時音が頷く。しかし、どんなに可愛くても……(略)
「チョコが貰えずにヤケになるなんて馬鹿なことを……! 仕方ない、ここは私がチョコを渡してやろうじゃないか。バレンタインは過ぎているのになぜチョコを持っているのかなんて聞いてはいけない。別にチョコを渡す相手がいなかったわけじゃない……そう、別にぼっちバレンタインを過ごしたわけじゃない……! 違うと言っているだろう!」
 エメラルド・シルフィユ(ka4678)は、誰からもツッコミが入っていないのに答えていて、知り合いである時音以外のハンターたちから(あれ、なんかちょっと危ない人?)という視線を向けられていた。
「チョコだんずか~、おらのにっちゃも『チョコは男を狂わせる』と言っでたんず」
 うんうん、と頷いているのは杢(ka6890)だ。今回の依頼では最年少であり、まだ6歳という年齢もあって、バレンタインの真意などはまったく分かっていない純真無垢な子供だ。
「とりあえずニャスね、件のチョコホちゃんを探しに行った方がいいんニャスよ。それにしても、チョコホちゃんの気持ち、分かるニャスよ。ミアもどら焼きの特売日を1日間違えてた時があったニャスからね、あの絶望感と言ったら……!」
 ミア(ka7035)は、どら焼きの特売日を間違えた時のことを思い出したのか、グググッと拳を握りしめながら怒りに震えている。
「まぁまぁ、落ち着いて」
 サフィ・ロジエラ・アパーシア(ka7063)は苦笑しながら、怒りに震えるミアをなだめる。
「とりあえず、パパッと雑魔を倒して、チョコホにチョコを渡しに行くのだー♪」
 ネフィリアの言葉にハンターたちは頷くのだが、少しだけ趣旨が変わっていることに案内人は不安を隠すことが出来なかった。

■メインは戦闘? いいえ、チョコホにチョコをあげるのがメインです。

 ハンターたちがやってきたのは、雑魔がいるとされている荒野。昼、しかも障害物がほとんどないため戦闘をする上ではハンターたちに有利と言っても過言ではないかもしれない。
「お、あそこに鳥さん発見なのだ♪ そこの鳥さん、遊ぶなら僕と遊ぶのだー♪」
 そう言いながら、ネフィリアは「ロケットナックル」で攻撃を仕掛ける。しかし、相手は鳥型ということもあり、ネフィリアの攻撃は避けられてしまう。
「むぅ、お空飛ぶなんて卑怯なのだ! 降りてくるのだー!」
 攻撃を避けられて悔しがるネフィリアだったけれど「……なーんて、僕が言うと思ったら大間違いなのだ♪」と不敵な笑みを浮かべる。
「チョコホさん、見かけないんだんずけど、どこ行ったんだんずかね?」
 杢は『龍矢 シ・ヴァユ』で、ネフィリアの攻撃を避けた雑魔に光の矢を突きさす。
「そっちばかり気にしてていいの?」
 そう言いながら、時音は『ジェットブーツ』を使用して、体勢を崩した鳥型雑魔のところまでジャンプをした後『デルタレイ』で攻撃を仕掛けた。
「こっちは、まだチョコホを探すって任務があるんだから、あんまり手間かけさせないでほしいな」
 ため息をつきながら、ミリアは『リボルバー ピースメーカー』で鳥型雑魔に攻撃を仕掛ける。
「ただでさえ、これから人探しをしなければいけないというのに……!」
 エメラルドは、大きなため息をついた後『ホーリーライト』で攻撃を仕掛ける。
 鳥型雑魔自体、あまり大した強さはないのだろう。7名のハンターたちの攻撃にまったく対応出来ていない。恐らく、ここに集まったハンターたちは、個々でも倒すのに苦労はしないだろう。
「それにしても、チョコホちゃんいないニャスねぇ~。どうして先に出たはずのチョコホちゃんがいないのか不思議ニャスね……」
 ミアの言葉に「確かに不思議だんずね、どこかで迷ってるなら探した方がええだんずね」と杢が言う。
「ちょっと待って欲しいですわ。ほとんど一本道に近い場所、しかもこんな開けた場所でどうやって道に迷うはずはないかと思いますわ。きっと傷の具合が悪くなって、どこかで倒れているんじゃ……」
 サフィは『ジャッジメント』で、鳥型雑魔が移動出来ないように阻害する。
「まぁ、とりあえずコイツを倒してからってことかな」
 ミリアは『アサルトライフル ファナーリクL37』に武器を持ち変えて、攻撃を仕掛けながら言う。
 結局、空を飛んでいるという厄介な点はあったけれど、それ以上にハンターたちの実力の方が高かったため、力を合わせることで苦労なく倒すことが出来た。

■雑魔退治は終了したけど、肝心のチョコホは?

「ちょ、チョコォ……お、俺の、チョコォォォ……」
 戦闘終了後、這いつくばりながらゾンビのような声をあげながらやってくる人物がいた。
 誰がどう見てもチョコホである。つつけば昇天しそうな傷でありながらも、動けているのはチョコへの執念の強さということだろう。
「チョコが欲しいのだ? なら、ちょうど持ってるからあげるのだ♪ ハート型のチョコだよ♪」
「おおお! とりあえずなぜ通りすがりのキミがチョコを持っているのか分からないが受け取るよ!」
「……やけに説明的なのだ、まぁ、今回は気にしたらいけないことが多いから気にするな、なのだ♪」
 ネフィリアから渡されたチョコを嬉しそうに開けたチョコホだったが、中身を見た途端固まった。
「こ、これは……!」
「チョコはハート型がいいって聞いたから、作ってみたのだ♪ 姉妹には受けなかったけど」
 ネフィリアは不思議そうに首を傾げながら言う。喜ばれなかった理由、それは彼女が渡したチョコを見れば誰もが分かる。ハート、確かにハートである。しかし、可愛らしいハートではなく、リアルな心臓(ハート)型チョコのため、妙に生々しさを覚えるのだ。しかもチョコの中にはストロベリーソースで血も再現しているからこそ、余計に気味悪く感じてしまう。
「あんれまぁ……見だごとねぇチョコだんずねぇ。おら、食べたくはねぇけどすごいだんず!」
 子供というものは無邪気である。
「おらもチョコホさんにチョコ持ってきただんずよ。友チョコって言うんだんず」
「えっ、いや、おらはチョコが欲しいんじゃなくて、女の子からの行為が欲しいんだんず」
 なぜかチョコホに口調が移っているが、それに気づくことなく杢はチョコを差し出し、傷ついたチョコホを『救急セット』で治療し始めた。
「チョコホ! 私はお前にチョコを受け取って欲しいんだ!」
 やや走ってチョコホに近づいたせいか、エメラルドは頬が少し赤い。
 ――そう、まるで乙女が恥じらうかのような錯覚を起こさせるほどに。
「俺に春が来た!? えっ、重症で匍匐前進した甲斐あった!? 初対面だけど甘酸っぱい春万歳!」
「チョコホさん。何言ってるかおら全然分からないだんずよ」
 杢が真顔でツッコミを入れている。既にチョコホが痛い人だと気づいたのか、先ほどの純真な少年の顔ではなく『何このおっさん言うてるんだんず?』のような表情を見せている。
「初対面……確かにそうだな、しかし私はお前のことを(一時間ほど)前から(ハンターズソサエティで話を聞いて)知っている」
「ええっ。何このフォーリンラブ展開! 傷が痛いのに、幸せでちょっと痛みが軽くなったよ!?」
「気のせいでニャスかねぇ……ミアには、すっごく大事な言葉が抜けてるように思えるニャスよ」
「奇遇なのだ♪ 僕もまったく同じ意見♪」
 あまりに焦ってしまっているせいか、大切な言葉を抜かしてしまい、エメラルドはとんでもない誤解を招いていることに気づいていない。そのことに気づいているのは、エメラルド以外のハンターたちだ。
「ちょ、ちょっと待って! ざくろもエメラルド(のチョコ)が欲しい!」
「まさかの三角関係ニャスよ」
「大人って、なんで話をややこしくしたがるだんずか? それが大人になるってことだんずか?」
「違うからね? チョコホさんのような人ばかりではないですわよ。むしろ他はまっとうですわ」
 目が死んでいる杢にサフィが慌てて説明をする。
「……俺は、重傷を経て、バレンタイン不参加により最高のモテ期を得たのか……!?」
「チョコホ~、おまえチョコが欲しいんだろ? こっち来いよ、チョコやるぞー」
 そう言いながら、ミリアは持っていたチョコを取り出そうとするが、手が滑ってしまいチョコが鎧(しかも胸部分)に入ってしまった。
「あー、すまん。鎧の中に入ってしまった。取りづらいから取ってくれるか?」
「ええっ!? なんというラッキーなスケベ!」
 チョコホは顔を赤らめながら喜びかけたが、すぐにハッと正気に戻った。
「なぜだ、男子ならドキドキシチュエーションなのに、なぜかこう……グッと来ない」
「失礼だな、おまえ」
「……そうか! 恥じらいがないから燃えないんだ! 男は嫌がる――「じちょーーーーう!」ぐはっ」
 最低なことを言おうとしたチョコホに、サフィの教育的鉄拳が決まる。
「未成年もいる中、なんてことを言おうとするんですの!? 大体バレンタインを楽しみにしていたことはわかりますけど、その状態で無理をして命を落としたらどうなさるのです? 滑稽! チョコが欲しくて星に帰った男、とでも記事にされたいんですの!?」
 サフィは大人しく説教をするつもりだったが、チョコホのあまりの無謀さにちょっと理性がキレてしまったようだ。
「す、すまない……ふたりの美女に言い寄られたのなんて初めてなんで――」
「……ん? ふたり? ちょ、ちょっと待って! ざくろも入ってない!?」
「オウ、イエース」
「ざくろ男! 男だから!」
「……ノー、そんなウソイリマセーン」
「嘘じゃないから!」
「待て! そんなに慌てなくても、私(のチョコはまだ余ってる。当然ざくろの分も、これ)はお前のものだ! どこにも行きやしない!」
 更なる燃料を投下したことに、エメラルドは気づいていない。
「チョコホちゃん、チョコホちゃん」
 ミアは苦笑しながら、チョコホの肩に手をポンと置く。
「これから(誤解だったという)現実に打ちのめされるだろうけど、強く生きるニャスよ」
 この後に待ち受けるであろうことを想像して、ミアはチョコホを慰める。
「いやいや、俺は最高の現実を迎えてるから! っていうか、なんでキミたちここにいるの?」
「……それって、最初に聞くべきだよね。なんでまったく知らない人からチョコもらってるの、なんで春を築こうとしてるのだ」
 最初こそ、ネフィリアも好意的にチョコホを見ていた部分があるが『女からチョコがもらえれば誰でもいい』的な態度を取る彼にどんどん冷めた態度を取っていく。
「とりあえず、チョコホさんはチョコが食べたい目的は達成できだんずね」
「そういえば、これが欲しかったんですわね。あまり高価なものではありませんけど……」
 サフィは思い出したように、持ち物からチョコを取り出して、チョコホに渡す。
「つ、つまり、キミも俺争奪戦に加わるということで「冗談じゃありませんわ!」がふっ」
「はっ、またもやついツッコミを入れてしまいましたわ……」
「あっ、ミアもあるよ! 帰ってから渡そうかなって思ってたけど、今渡す「俺、こんなにモテてもいい――「寝言は寝てから言うものニャスよ?」すみません……」
 ニコニコと笑顔は崩さないけど、有無を言わさない雰囲気を感じて、チョコホは慌てて謝る。

■その後は……

 無事にチョコホを確保して、雑魔も退治したことでハンターたちはハンターズソサエティに帰還した。そこで、チョコホは案内人にこっぴどく叱られるのだけど、最後までエメラルドと時音は自分を競って争っているのだと勘違いをして、他のハンターたちに妙な噂が流れてしまっていた。
 今回の任務に参加したハンターは、事情を知っているため誤解を解いていたのだけれど、誤解が解ける暇がないほど、チョコホが吹聴して回っていた。
「……モテないおにーさんほど、怖いものはないのだ♪」
 うんうん、と頷くネフィリアに「おら、あんな大人にはならねだんずよ」と子供ながら大人のことをちょっと理解してしまった杢が呟く。
「今さらながらに思うが、私に恥じらいがないとか失礼なことを言ったチョコホ、許さん……!」
 怒るの遅いよ!? とツッコミを入れたいハンターたちだが『触らぬミリアにたたりなし』の状態になっているため、あえて誰も何も言わなかった。
「結局、あの方は一体何がしたかったのかしらね……」
「さぁ……? とりあえず美人さんにチョコもらえて、満足したんじゃないニャスか?」
「……なぜ、私がチョコホにベタボレだという噂が消えてくれないんだ」
 サフィとミアが話している隣では、エメラルドががっくりとうなだれている。まさか自分の言葉足らずがこのような状況を生み出しているとは夢にも思わないだろう。
 今回のハンターたちは、ひとつだけ学んだことがある。
 それは、執念深いモテない男には関わらない、とういうことだった。

END

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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 爆炎を超えし者
    ネフィリア・レインフォード(ka0444
    エルフ|14才|女性|霊闘士
  • 神秘を掴む冒険家
    時音 ざくろ(ka1250
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • 英雄譚を終えし者
    ミリア・ラスティソード(ka1287
    人間(紅)|20才|女性|闘狩人
  • 悲劇のビキニアーマー
    エメラルド・シルフィユ(ka4678
    人間(紅)|22才|女性|聖導士
  • いけ!ぷにっ子スナイパー
    杢(ka6890
    ドラグーン|6才|男性|猟撃士
  • 天鵞絨ノ風船唐綿
    ミア(ka7035
    鬼|22才|女性|格闘士
  • 断罪の光杭で裁きし守護者
    サフィ・ロジエラ・アパーシア(ka7063
    人間(紅)|22才|女性|聖導士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談・提案・宣言卓
ミリア・ラスティソード(ka1287
人間(クリムゾンウェスト)|20才|女性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2018/02/26 05:33:04
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/02/25 23:50:32