ゲスト
(ka0000)
【幻兆】JOY TO THE WORLD
マスター:近藤豊

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~4人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/03/01 19:00
- 完成日
- 2018/03/03 15:23
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
ノアーラ・クンタウ要塞管理者ヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032)が、四大精霊イクタサ(kz0246)と交渉している頃。
その裏では、また別の動きがあった。
「おらっ! おめぇら、キリキリ働きやがれ!」
大幻獣テルル(kz0218)は、愛機カマキリと共に地下道で瓦礫の撤去を行っていた。
先日、歪虚の青木燕太郎(kz0166)がチュプ大神殿を急襲。部族会議にとって唯一の入口であった地下が崩壊してしまった。
イクタサがへそを曲げた原因でもある遺跡入口の崩壊。部族会議としても放置する訳にはいかず、瓦礫の撤去作業が続いていた。
テルルも古代文明の遺跡を調査したいが為に、せっせとカマキリで岩を破壊している。
「休んでる暇はねぇぞ! おら、砕いた岩を持っていきやがれ!」
一緒に瓦礫を片付けるドワーフ達に発破を掛けるテルル。自分はカマキリに乗って瓦礫撤去するだけだが、ドワーフ達の多くは肉体使って掘り進めている。
「テルルさんはその魔導アーマーに乗っているからいいじゃないですか。俺達もその魔導アーマーが欲しいです」
「馬鹿野郎! カマキリは一機しかねぇんだよ。前にヨアキムの奴が改造した魔導アーマーがあったろ! アレ持って来い!」
「あれは鉱石採掘用なんですよ」
「だったら、代わりを持って来いよ! ハンターに言えば何とかしてくれんだろ!」
ドワーフへ無理難題を言い放つテルル。
遺跡への興味と渇望が強すぎて、他の事はどうでも良くなっている。既に目が血走るテルルを前に、ドワーフは恐れ戦く他なかった。
「あれ? そういや、ヨアキムはどうした?」
「ああ、兄貴なら地上へ行きましたよ?」
ドワーフの返答にテルルの短い導火線に火が付いた。
「ふざけんなっ! 早く連れ戻して来いっ!」
●
「おい、給仕」
「給仕じゃありません。執事のキュジィです。それより、いいんですか? 瓦礫の片付けを放置して……」
辺境ドワーフ王のヨアキム(kz0011)と執事のキュジィ(kz0078)は、アルナス湖の湖畔にいた。
ここは未だに怠惰が現れる可能性もある場所だ。歴戦のハンターでもなければ、あまり長居して良い場所では無い。湖にそって生い茂る森を西に向かって歩き続けている。
「テルルさんも怒り出すので、早く地下道へ戻った方が……」
「給仕、おかしいと思わねぇか? 大神殿ってぇなら、人がやってくるはずだろ? なんで入口が地下にあるんだ?
あの入口だって、ロックワンが作った道に面してた。どう考えてもあれが正式な入口とは思えねぇ」
「……あっ」
ヨアキムの一言でキュジィは気付いた。
あの瓦礫の山を退かせば遺跡には入れるだろう。だが、考えてみればあの入口は正式な入口なのだろうか。
ロックワンが掘った道に面した遺跡の壁が破壊されて出来たイレギュラーの道と見るのが自然だ。
「確かにそうですね」
「どっかに正式な入口があってもおかしくはねぇよな」
「でも、その入口は地面に埋まっているかもしれませんよ?」
「かもしれねぇ。だが、遺跡が発見された後で遺跡に現れた『歪虚』がいやがったろ」
キュジィの脳裏に浮かぶ一人の歪虚。
そいつは地下の入口を部族会議の戦士が守っていたにも関わらず、瞬く間に遺跡を制圧している。もし、地下道から侵入していれば戦士達も助けを早く呼ぶことができたはずだ。
「コーリアスですね」
「ああ。奴は地下道を使ってねぇ。別の道を使ってるはずだ。
考えられるとすれば、遺跡の正門ってとこか? そうでなけりゃ、あんなに簡単に遺跡を制圧できねぇはずだ。うちの連中も守ってたんだ。そこまで柔に鍛えちゃいねぇよ」
ヨアキムの指摘に、キュジィは震えた。
この徘徊も遺跡への入口を探しているのだ。コーリアスが本当に入口を使っているなら、入口はまだ使えるに違いない。
「ヨアキム様……本当にヨアキム様ですよね? 歪虚じゃないですよね?」
「あん? 当たり前じゃねぇか。ワシはドワーフ王だ。強いて言えば酒を……ん? なんだ、ありゃ?」
ヨアキムの視界に入ったのはアルナス湖畔に佇む石のモニュメント。
大きな石が複数立てられ、円を描くように配置されている。
「石、ですね。この場所は部族会議にも報告はありません」
「ただの石じゃねぇぞ。これ、見てみろ」
ヨアキムに指し示された石を、キュジィは覗き込んだ。
そこには石の正面に文字が刻まれている。
『力ある者よ。
我を見よ。
大自然の力を借りて見極めた者にのみ道は開かれる』
「何の事でしょう?」
「分からねぇ。だが、この石の文字を見ろよ。雨風に晒されてきたはずなのに、全く劣化してねぇ。まるで、昨日今日刻んだみてぇだ」
それはキュジィも気になっていた。
考えられる事は、この石が古代文明の産物であるという事。ならば、ここが入口である可能性は高い。
「地下道から侵入したのとは訳が違うからな。ここから入れば、何か新しい事が分かるかもな」
ヨアキムは石に彫られた文字をじっと見つめていた。
その裏では、また別の動きがあった。
「おらっ! おめぇら、キリキリ働きやがれ!」
大幻獣テルル(kz0218)は、愛機カマキリと共に地下道で瓦礫の撤去を行っていた。
先日、歪虚の青木燕太郎(kz0166)がチュプ大神殿を急襲。部族会議にとって唯一の入口であった地下が崩壊してしまった。
イクタサがへそを曲げた原因でもある遺跡入口の崩壊。部族会議としても放置する訳にはいかず、瓦礫の撤去作業が続いていた。
テルルも古代文明の遺跡を調査したいが為に、せっせとカマキリで岩を破壊している。
「休んでる暇はねぇぞ! おら、砕いた岩を持っていきやがれ!」
一緒に瓦礫を片付けるドワーフ達に発破を掛けるテルル。自分はカマキリに乗って瓦礫撤去するだけだが、ドワーフ達の多くは肉体使って掘り進めている。
「テルルさんはその魔導アーマーに乗っているからいいじゃないですか。俺達もその魔導アーマーが欲しいです」
「馬鹿野郎! カマキリは一機しかねぇんだよ。前にヨアキムの奴が改造した魔導アーマーがあったろ! アレ持って来い!」
「あれは鉱石採掘用なんですよ」
「だったら、代わりを持って来いよ! ハンターに言えば何とかしてくれんだろ!」
ドワーフへ無理難題を言い放つテルル。
遺跡への興味と渇望が強すぎて、他の事はどうでも良くなっている。既に目が血走るテルルを前に、ドワーフは恐れ戦く他なかった。
「あれ? そういや、ヨアキムはどうした?」
「ああ、兄貴なら地上へ行きましたよ?」
ドワーフの返答にテルルの短い導火線に火が付いた。
「ふざけんなっ! 早く連れ戻して来いっ!」
●
「おい、給仕」
「給仕じゃありません。執事のキュジィです。それより、いいんですか? 瓦礫の片付けを放置して……」
辺境ドワーフ王のヨアキム(kz0011)と執事のキュジィ(kz0078)は、アルナス湖の湖畔にいた。
ここは未だに怠惰が現れる可能性もある場所だ。歴戦のハンターでもなければ、あまり長居して良い場所では無い。湖にそって生い茂る森を西に向かって歩き続けている。
「テルルさんも怒り出すので、早く地下道へ戻った方が……」
「給仕、おかしいと思わねぇか? 大神殿ってぇなら、人がやってくるはずだろ? なんで入口が地下にあるんだ?
あの入口だって、ロックワンが作った道に面してた。どう考えてもあれが正式な入口とは思えねぇ」
「……あっ」
ヨアキムの一言でキュジィは気付いた。
あの瓦礫の山を退かせば遺跡には入れるだろう。だが、考えてみればあの入口は正式な入口なのだろうか。
ロックワンが掘った道に面した遺跡の壁が破壊されて出来たイレギュラーの道と見るのが自然だ。
「確かにそうですね」
「どっかに正式な入口があってもおかしくはねぇよな」
「でも、その入口は地面に埋まっているかもしれませんよ?」
「かもしれねぇ。だが、遺跡が発見された後で遺跡に現れた『歪虚』がいやがったろ」
キュジィの脳裏に浮かぶ一人の歪虚。
そいつは地下の入口を部族会議の戦士が守っていたにも関わらず、瞬く間に遺跡を制圧している。もし、地下道から侵入していれば戦士達も助けを早く呼ぶことができたはずだ。
「コーリアスですね」
「ああ。奴は地下道を使ってねぇ。別の道を使ってるはずだ。
考えられるとすれば、遺跡の正門ってとこか? そうでなけりゃ、あんなに簡単に遺跡を制圧できねぇはずだ。うちの連中も守ってたんだ。そこまで柔に鍛えちゃいねぇよ」
ヨアキムの指摘に、キュジィは震えた。
この徘徊も遺跡への入口を探しているのだ。コーリアスが本当に入口を使っているなら、入口はまだ使えるに違いない。
「ヨアキム様……本当にヨアキム様ですよね? 歪虚じゃないですよね?」
「あん? 当たり前じゃねぇか。ワシはドワーフ王だ。強いて言えば酒を……ん? なんだ、ありゃ?」
ヨアキムの視界に入ったのはアルナス湖畔に佇む石のモニュメント。
大きな石が複数立てられ、円を描くように配置されている。
「石、ですね。この場所は部族会議にも報告はありません」
「ただの石じゃねぇぞ。これ、見てみろ」
ヨアキムに指し示された石を、キュジィは覗き込んだ。
そこには石の正面に文字が刻まれている。
『力ある者よ。
我を見よ。
大自然の力を借りて見極めた者にのみ道は開かれる』
「何の事でしょう?」
「分からねぇ。だが、この石の文字を見ろよ。雨風に晒されてきたはずなのに、全く劣化してねぇ。まるで、昨日今日刻んだみてぇだ」
それはキュジィも気になっていた。
考えられる事は、この石が古代文明の産物であるという事。ならば、ここが入口である可能性は高い。
「地下道から侵入したのとは訳が違うからな。ここから入れば、何か新しい事が分かるかもな」
ヨアキムは石に彫られた文字をじっと見つめていた。
リプレイ本文
アルナス湖畔でハンター達を待っていたのは、ドワーフ王ヨアキム(kz0011)と執事のキュジィだった。
ハンターの視界に広がるアルナス湖の雄大な景色をバックに、ヨアキムは一人腕を組んで思案している。
「……きたか」
そう呟くとヨアキムは腰掛けていた岩から立ち上がる。
明らかに雰囲気から違う。お馬鹿な空気は一掃され、ドワーフ王らしき威厳すら感じられる。
(皆さん、ヨアキム様はお酒が入っていないようで『絶好調』みたいです。くれぐれも、お ね が い しますね)
ハンター達に小声で話し掛けるキュジィ。
キュジィにとってしてもヨアキムがこんな真面目な状況は初めてなのだろう。
なるべくなら、真面目モードを長く継続させたい所だ。
「……ん? 何をこそこそ喋ってやがる。早速モニュメントを見てもらうか」
ヨアキムは、自身が発見したモニュメントを指し示した。
ハンター達は促されるままに石碑へ視線を向ける。
そこには――。
『力ある者よ。
我を見よ。
大自然の力を借りて見極めた者にのみ道は開かれる』
力強い文字でそう書かれていた。
「古代文明の文字、なんですよね? これ」
七夜・真夕(ka3977)は、文字にそっと手を触れる。
硬く冷たい感覚が指先に伝わる。
「ああ、間違いねぇ。解読を進めてたヴェルナーの所にいる奴にも確認はした。ワシもちったぁ読めねぇ訳じゃねぇからな」
「え!? そうなの?」
ヨアキムの言葉に一瞬驚くクレール・ディンセルフ(ka0586)。
いつもは筋肉と馬鹿の隠し子のようなヨアキムとは思えない発言だったからだ。
「おいおい、これでもワシはドワーフ王だぞ? 地下の遺跡を徘徊するにゃ、ちったぁ読めた方が便利なんだよ。それより、どうだ? 何とかできそうか?」
ヨアキムは、ハンターに問いかける。
既にヨアキムも様々な行動を試しているが、まったく反応しなかったようだ。だからこそ、ハンターを召喚して謎解きの救援要請をした訳だ。
「私は探求する。我らが祖。古き民の伝承。彼らが遺せし叡智。その一端を知り、触れる為に。私が持てる知恵を振り絞ろう」
独自のマテリアル理論を持つ雨を告げる鳥(ka6258)は、解読に自信を見せる。
感情の起伏に乏しいが、これでもチュプ大神殿の入り口を発見する決意を固めているようだ。
そして、もう一人――解読に自信を持つハンターがいた。
「謎の石碑に隠されたメッセージを解き明かし、真の入り口を見つけろってか。なんとも浪漫溢れる話じゃねぇか。オッケオッケ、このデスドクロ様に全部任せておきな」
デスドクロ・ザ・ブラックホール(ka0013)はマントを風で靡かせながら、はっきりと断言してみせる。
他のハンターとは異なる不思議なオーラ全開で石碑に全力投球。
キュジィも何だか分からないが、集まったメンバーなら何とかしてくれる気がする。
「皆さん、是非お願いしますね!」
「こうぐわーーっと湖が割れて、テロテロテロン♪って効果音と共に入り口が顔を出す瞬間を……ばっちり見せてやろうじゃねぇか。グーーハハハハ!」
高笑いと共に早くも勝利宣言するデスドクロ。
開く際に効果音が鳴るかは分からないが、ハンター達のチャレンジはこうして始まった。
●
が、ハンター達は謎解きに難航する。
「……!」
デスドクロは中腰の体勢で下から上へと流れるように、顔を動かして睨み付ける。
リアルブルーで言えば不良高校生独特の睨み付け方なのだが、キュジィにとっては理解不能な動きである。
「あの……デスドクロ様、何を?」
「……ん? 見て分からんか。
今回の謎解きで重要な事は、『一発で正解に辿り着く必要が無い』という事だ」
「確かに、扉が開くかどうかが大切で間違った回数は問題ではありませんね」
「そうだ。言うなれば、チャンスは無限にある。だからこそ、ありとあらゆるアクションを試す。それが正解へと至る近道ってもんよ」
立ち上がって胸を張るデスドクロ。
指摘通り、間違った回数は問題にならない。最終的に正解へ到達して扉を開ける事ができれば成功なのだ。ならば、考え得るアクションをすべて試しても失敗にはならない。
「なるほど、素晴らしい意見です。ですが、さっきの睨むポーズは何なのでしょう?」
「うむ。今一度石碑を見ろ。『我を見よ』って書いてあるからな。じっくりと見させてもらっていたのだ」
その言葉でキュジィはデスドクロの行動を思い返した。
石碑を前に至近距離まで近づいたかと思えば、遠くから見たりもしていた。また左や右に移動したかと思えば、寝そべったってみたりもしていた。あれは様々な角度から石碑を見ようと試みていた。
端から見れば様々なデスドクロを疲労していたようにも見えるが、本人はいたって真面目だったのだ。
「そうでしたか。ですが、石碑に変化はありませんね」
「そのようだな。単に見るのではないようだな」
「もう少しメッセージを細かく見た方がいいのでは? たとえば……ここ」
真夕が指し示した場所はメッセージの『力ある者』という部分だ。
「この『力ある者』は、私達の覚醒者だと思うわ」
覚醒者――つまり、この場にいるハンターも該当者である。
その言葉にヨアキムが膝を打った。
「その考え方は間違いねぇ。大神殿を巡礼する者がいるとすれば、それを率いる者がいたはずだ。そいつは部族の長老、あるいは戦士ってとこだろうよ」
「はい。ですから、まずは覚醒者なら誰でもできるモノを試してみましょう」
円形に並べられた石のモニュメント。
その円の中央に立った真夕は、大きく息を吐き出した後に――覚醒。
正のマテリアルが全身を駆け巡る。
――しかし。
「……反応はねぇみてねぇだな」
「ダメですか」
「いや、考え方は悪くねぇはずだ。覚醒した後に何かをすると考えるのが自然だ」
「自然……大自然……つまり、逆説的には通常で絶対に起こりえない何かを覚醒者が加えるって事?」
ヨアキムの言葉から、別の推論を導き出したクレール。
メッセージを別の視点から見るという手法もある。クレールはその推論をゆっくりと脳裏で練り上げる。
「覚醒者が訪れるなら、利便性を考えてクラスに依存しない方がいいかも。それなら……マテリアルヒーリング?」
クレールは石碑に近づくとマテリアルヒーリングを試みた。
だが、クレール自身の体が暖かな光で包まれただけで大きな変化は見られない。
「これもダメかー」
「案外、利便性を考えなくてもいいかもしれねぇな。多くの人が大神殿に訪れたと仮定しても、王国や帝国からこの大神殿まで来ていなかった可能性もある。辺境の部族だけが崇めていたりしてな」
「! 私は推測する。チュプ大神殿は大精霊イクタサを祀ったもの。ならば、イクタサが司る風と闇が関係している可能性は高い」
雨を告げる鳥も、新たな推論を述べた。
チュプ大神殿は、大精霊イクタサを祀った神殿だ。
そして、イクタサが司るのは風と闇。この扉と何か関係あるかもしれない。
「おお、そうだ。大神殿はイクタサを祀ってたはずだ。そこに鍵があるかもしれねぇな」
「私は更に推測する。コーリアスが入り口をこじ開けたという事実を合わせて考えるならば、『錬金の到達者』としても練成できず、歪虚に墜ち果てた者では決して生み出せないモノ。
即ち……正のマテリアルこそが鍵ではないか」
雨を告げる鳥も真夕に近い答えを導き出していた。
あの『錬金の到達者』として名を馳せたコーリアスですら、扉を『こじ開けた』というのであれば、正のマテリアルも鍵の一つではないか。
覚醒してから行う何か――それがこの扉を開け放つ重要な要素だ。
「私は探す。こじ開けたのであれば、何か痕跡が……」
「あ、待って。これじゃないかしら?」
真夕が歓喜と驚嘆が混じった声を上げる。
覚醒状態のままマテリアルを感じる『集中』を使ってみた。
『見よ』というメッセージから視覚に依存した事柄だと考えたが故だ。そのおかげでマテリアルの流れを真夕は感じ取る事ができた。
「マテリアルはちょうど、石のモニュメントを円で囲むように流れてるわ。一部歪みもあるから、それがこじ開けた結果だと思うの」
「ふむ。ならば、扉はこの石のモニュメント全体かもしれんな」
デスドクロは振り返りながら周囲を見回した。
仮に扉が開くのであれば、その場所だけにマテリアルが流れればいい。
扉を開く仕掛けが石のモニュメント全体にある可能性もあるが、扉を開く事で石のモニュメント全体に何か動きがあると考える方が自然だろう。
「私は探す。モニュメントの図案から類似した術式を」
雨を告げる鳥は、モニュメント全体をスクロールに模写すると自らの記憶と付き合わせていった。
もし、雨を告げる鳥が持つ魔術知識と類似した術式がないかを。
だが、同じような術式は記憶に浮かんで来ない。
「私は問う。ドワーフ王ならば、地下に広がる大神殿の位置関係を」
「ああ、大神殿の位置を正確に把握しようってぇんだな? よし」
そう言いながら雨を告げる鳥の書いたスクロールに何かを書き加えようとするヨアキム。
――だが。
「フハハハハ! 一人で馬鹿をやっているのも癪だ。ヨアキム、馳走してやろう」
「あ! ダメですよ!」
デスドクロの行為にキュジィが叫ぶも、もう遅い。
デスドクロが差し出した焼酎をヨアキムは一気に飲み干してしまった。
「……う~、数日ぶりの酒はやっぱ効くなぁ!」
「そうであろう!」
「ん? 何をしようとしてたんだっけ? 確か、ワシの腹筋だけで紙相撲が出来るか世紀の大実験だったかな?」
アルコールが脳にまで到達したらしく、いつもの馬鹿がみんなの前に帰ってきた。
ハンターとキュジィは、思わず大きなため息をついた。
●
「……はぁ、はぁ。これもダメか」
クレールは肩で息をしている。
覚醒したまま視線を合わせようと陽掴飛びで移動したり、フライングスレッドで空中から視線を合わせようとしても結果は変わらなかった。
「マテリアルリンクも効果はなかったみたいですわ」
真夕も石碑を対象にしてマテリアルリンクを試みてみたが、周囲に変化は現れなかった。
「マテリアルリンクでは『大自然の力を借りて見極める』のとはちょっと違うかもしれませんね。意外にもっと単純かもしれませんね」
真夕を励ますようにキュジィは言葉をかける。
既にヨアキムとデスドクロは暇を持て余して酒盛りを始める始末。
そんなヨアキムを遠目で見つめる悲しそうなキュジィ。
だが、ヒントは思わぬ所になる。
「私は思う。物事は単純……」
雨を告げる鳥は、石のモニュメントの中央に立つ。
そして、石碑に向かってシャドウブリットを放った。
「私は気付く。石碑に傷が無いから攻撃はされていないとは、物理攻撃はされていないという事。魔法攻撃は分からない」
黒い塊が石碑に目掛けて飛んでいく。
しかし、衝突の寸前で黒い塊は石碑に吸収される。
同時にモニュメントが揺れ、円形のまま地下へと吸い込まれていく。
「これは、エレベーター?」
真夕は、自分の体に重力がかかっている事を実感している。
地面が下がっている。天井をみれば、左右から壁が伸びてゆっくりと閉まっていく。
まさか、漆黒の闇を進むのか。
そう思われた矢先、周囲の壁が青白い文様を浮かべて光り始める。
「どうやら、扉は無事に開けたみたいね」
疲労を感じていたクレールは、肩の荷が下りた気分だ。
「おお!? 知らぬ間に地面が降りているではないか! まさか、俺様の力が知らぬ間に発動か?」
「何でもいいじゃねぇか! 何でも来い、ワシがぶっ飛ばしてやるから!」
すっかり出来上がったヨアキムを乗せて、エレベーターは地下に向かって進んでいく。
●
「おいっ、お前ぇら! 何かやりやがったのか!」
エレベーターが地下へ到着。ハンター達はチュプ大神殿へと運ばれてきた。
その姿を見かけた大幻獣のテルル(kz0218)であるが、何故か大興奮の様子だ。
「あ、テルル。地下の入り口にあった瓦礫を取り除いたのね」
真夕は、テルルの姿を見て思いだした。
おそらく地下から入り口を塞いでいた瓦礫を撤去したのだろう。ならば、この遺跡の変化に驚いても仕方ない。
「む、この状況は……」
デスドクロが周囲を見回せば、チュプ大神殿の石壁に青白い文様が浮かび上がって青白く光っている。まるで電灯が付いたかのように明るい。
これが地下とは思えない程だ。
「これなら、灯火の水晶球が無くても見渡せる。」
「私は思う。正規の入り口から人が入る事で、大神殿が目覚めた」
クレールの言葉に付け加えるように、雨を告げる鳥は率直な感想を口にした。
仮に今までの神殿が眠りについていたとするなら、今の神殿は覚醒状態。早速壁に近づいて文様を調べ始める。
「私は記憶する。この文様、魔術の術式とも異なる独特の文様」
「お、気付いたのか。こいつぁ古代文明の神殿で見かける奴だ。俺っちにも分からねぇが、他にはなかなかねぇ代物みてぇだな」
雨を告げる鳥の言葉に反応するテルル。
訳知り顔で胸を張るが、テルル自身もこの文様については分からないようだ。
古い文献を引っ張り出せば何か分かるかもしれない、と感じた雨を告げる鳥は魔導カメラで文様を撮影し始めた。
「この文明……クリムゾンウェストと毛色が違う技術体系にも見えない?」
「調べてみないと分からないわね。調査してみないと……」
真夕の言葉を受けて、クレールは大神殿の地図を二種類作成し始める。
一つは現状判明している地図。もう一つは新しい変化があった場所を書き込む地図。
二つの差が分かれば、持ち帰っても検討する事は可能だ。
興奮冷めあらぬハンターとテルル。
そんな横では、飲んだくれた親父達が変わらぬ様子で酒を酌み交わす。
「……久しぶりの酒は酔いが早ぇな」
「無理をするな。休んではどうだ?」
「馬鹿野郎、これぐれぇで……」
そう言って立ち上がろうとするヨアキム。
しかし、足がもつれて大きく尻餅をつく。
大きな振動が大神殿に響く。
「ヨアキム様、いきなり飲むからですよ!」
「そう言ったって、お前ぇよ……」
キュジィに助けられながら、痛みに耐えて立ち上がるヨアキム。
だが――次の瞬間、ヨアキムの後ろにあった壁が動き出す。
「な!?」
「え? 何?」
ヨアキムが驚く以上に驚嘆したのはクレールだった。
地図を作成している最中から、壁の形が変わり始めたのだ。
そして、変化が終わる頃には新たな入り口らしき通路が口を開いていた。
「……これって、もしかして自動ドア?」
静かに、そして強い体を震わせる真夕。
辺境というクリムゾンウェストの西方最果ての地に眠っていた遺跡。
古代文明――ハンター達は改めてそれに触れたのかもしれない。
ハンターの視界に広がるアルナス湖の雄大な景色をバックに、ヨアキムは一人腕を組んで思案している。
「……きたか」
そう呟くとヨアキムは腰掛けていた岩から立ち上がる。
明らかに雰囲気から違う。お馬鹿な空気は一掃され、ドワーフ王らしき威厳すら感じられる。
(皆さん、ヨアキム様はお酒が入っていないようで『絶好調』みたいです。くれぐれも、お ね が い しますね)
ハンター達に小声で話し掛けるキュジィ。
キュジィにとってしてもヨアキムがこんな真面目な状況は初めてなのだろう。
なるべくなら、真面目モードを長く継続させたい所だ。
「……ん? 何をこそこそ喋ってやがる。早速モニュメントを見てもらうか」
ヨアキムは、自身が発見したモニュメントを指し示した。
ハンター達は促されるままに石碑へ視線を向ける。
そこには――。
『力ある者よ。
我を見よ。
大自然の力を借りて見極めた者にのみ道は開かれる』
力強い文字でそう書かれていた。
「古代文明の文字、なんですよね? これ」
七夜・真夕(ka3977)は、文字にそっと手を触れる。
硬く冷たい感覚が指先に伝わる。
「ああ、間違いねぇ。解読を進めてたヴェルナーの所にいる奴にも確認はした。ワシもちったぁ読めねぇ訳じゃねぇからな」
「え!? そうなの?」
ヨアキムの言葉に一瞬驚くクレール・ディンセルフ(ka0586)。
いつもは筋肉と馬鹿の隠し子のようなヨアキムとは思えない発言だったからだ。
「おいおい、これでもワシはドワーフ王だぞ? 地下の遺跡を徘徊するにゃ、ちったぁ読めた方が便利なんだよ。それより、どうだ? 何とかできそうか?」
ヨアキムは、ハンターに問いかける。
既にヨアキムも様々な行動を試しているが、まったく反応しなかったようだ。だからこそ、ハンターを召喚して謎解きの救援要請をした訳だ。
「私は探求する。我らが祖。古き民の伝承。彼らが遺せし叡智。その一端を知り、触れる為に。私が持てる知恵を振り絞ろう」
独自のマテリアル理論を持つ雨を告げる鳥(ka6258)は、解読に自信を見せる。
感情の起伏に乏しいが、これでもチュプ大神殿の入り口を発見する決意を固めているようだ。
そして、もう一人――解読に自信を持つハンターがいた。
「謎の石碑に隠されたメッセージを解き明かし、真の入り口を見つけろってか。なんとも浪漫溢れる話じゃねぇか。オッケオッケ、このデスドクロ様に全部任せておきな」
デスドクロ・ザ・ブラックホール(ka0013)はマントを風で靡かせながら、はっきりと断言してみせる。
他のハンターとは異なる不思議なオーラ全開で石碑に全力投球。
キュジィも何だか分からないが、集まったメンバーなら何とかしてくれる気がする。
「皆さん、是非お願いしますね!」
「こうぐわーーっと湖が割れて、テロテロテロン♪って効果音と共に入り口が顔を出す瞬間を……ばっちり見せてやろうじゃねぇか。グーーハハハハ!」
高笑いと共に早くも勝利宣言するデスドクロ。
開く際に効果音が鳴るかは分からないが、ハンター達のチャレンジはこうして始まった。
●
が、ハンター達は謎解きに難航する。
「……!」
デスドクロは中腰の体勢で下から上へと流れるように、顔を動かして睨み付ける。
リアルブルーで言えば不良高校生独特の睨み付け方なのだが、キュジィにとっては理解不能な動きである。
「あの……デスドクロ様、何を?」
「……ん? 見て分からんか。
今回の謎解きで重要な事は、『一発で正解に辿り着く必要が無い』という事だ」
「確かに、扉が開くかどうかが大切で間違った回数は問題ではありませんね」
「そうだ。言うなれば、チャンスは無限にある。だからこそ、ありとあらゆるアクションを試す。それが正解へと至る近道ってもんよ」
立ち上がって胸を張るデスドクロ。
指摘通り、間違った回数は問題にならない。最終的に正解へ到達して扉を開ける事ができれば成功なのだ。ならば、考え得るアクションをすべて試しても失敗にはならない。
「なるほど、素晴らしい意見です。ですが、さっきの睨むポーズは何なのでしょう?」
「うむ。今一度石碑を見ろ。『我を見よ』って書いてあるからな。じっくりと見させてもらっていたのだ」
その言葉でキュジィはデスドクロの行動を思い返した。
石碑を前に至近距離まで近づいたかと思えば、遠くから見たりもしていた。また左や右に移動したかと思えば、寝そべったってみたりもしていた。あれは様々な角度から石碑を見ようと試みていた。
端から見れば様々なデスドクロを疲労していたようにも見えるが、本人はいたって真面目だったのだ。
「そうでしたか。ですが、石碑に変化はありませんね」
「そのようだな。単に見るのではないようだな」
「もう少しメッセージを細かく見た方がいいのでは? たとえば……ここ」
真夕が指し示した場所はメッセージの『力ある者』という部分だ。
「この『力ある者』は、私達の覚醒者だと思うわ」
覚醒者――つまり、この場にいるハンターも該当者である。
その言葉にヨアキムが膝を打った。
「その考え方は間違いねぇ。大神殿を巡礼する者がいるとすれば、それを率いる者がいたはずだ。そいつは部族の長老、あるいは戦士ってとこだろうよ」
「はい。ですから、まずは覚醒者なら誰でもできるモノを試してみましょう」
円形に並べられた石のモニュメント。
その円の中央に立った真夕は、大きく息を吐き出した後に――覚醒。
正のマテリアルが全身を駆け巡る。
――しかし。
「……反応はねぇみてねぇだな」
「ダメですか」
「いや、考え方は悪くねぇはずだ。覚醒した後に何かをすると考えるのが自然だ」
「自然……大自然……つまり、逆説的には通常で絶対に起こりえない何かを覚醒者が加えるって事?」
ヨアキムの言葉から、別の推論を導き出したクレール。
メッセージを別の視点から見るという手法もある。クレールはその推論をゆっくりと脳裏で練り上げる。
「覚醒者が訪れるなら、利便性を考えてクラスに依存しない方がいいかも。それなら……マテリアルヒーリング?」
クレールは石碑に近づくとマテリアルヒーリングを試みた。
だが、クレール自身の体が暖かな光で包まれただけで大きな変化は見られない。
「これもダメかー」
「案外、利便性を考えなくてもいいかもしれねぇな。多くの人が大神殿に訪れたと仮定しても、王国や帝国からこの大神殿まで来ていなかった可能性もある。辺境の部族だけが崇めていたりしてな」
「! 私は推測する。チュプ大神殿は大精霊イクタサを祀ったもの。ならば、イクタサが司る風と闇が関係している可能性は高い」
雨を告げる鳥も、新たな推論を述べた。
チュプ大神殿は、大精霊イクタサを祀った神殿だ。
そして、イクタサが司るのは風と闇。この扉と何か関係あるかもしれない。
「おお、そうだ。大神殿はイクタサを祀ってたはずだ。そこに鍵があるかもしれねぇな」
「私は更に推測する。コーリアスが入り口をこじ開けたという事実を合わせて考えるならば、『錬金の到達者』としても練成できず、歪虚に墜ち果てた者では決して生み出せないモノ。
即ち……正のマテリアルこそが鍵ではないか」
雨を告げる鳥も真夕に近い答えを導き出していた。
あの『錬金の到達者』として名を馳せたコーリアスですら、扉を『こじ開けた』というのであれば、正のマテリアルも鍵の一つではないか。
覚醒してから行う何か――それがこの扉を開け放つ重要な要素だ。
「私は探す。こじ開けたのであれば、何か痕跡が……」
「あ、待って。これじゃないかしら?」
真夕が歓喜と驚嘆が混じった声を上げる。
覚醒状態のままマテリアルを感じる『集中』を使ってみた。
『見よ』というメッセージから視覚に依存した事柄だと考えたが故だ。そのおかげでマテリアルの流れを真夕は感じ取る事ができた。
「マテリアルはちょうど、石のモニュメントを円で囲むように流れてるわ。一部歪みもあるから、それがこじ開けた結果だと思うの」
「ふむ。ならば、扉はこの石のモニュメント全体かもしれんな」
デスドクロは振り返りながら周囲を見回した。
仮に扉が開くのであれば、その場所だけにマテリアルが流れればいい。
扉を開く仕掛けが石のモニュメント全体にある可能性もあるが、扉を開く事で石のモニュメント全体に何か動きがあると考える方が自然だろう。
「私は探す。モニュメントの図案から類似した術式を」
雨を告げる鳥は、モニュメント全体をスクロールに模写すると自らの記憶と付き合わせていった。
もし、雨を告げる鳥が持つ魔術知識と類似した術式がないかを。
だが、同じような術式は記憶に浮かんで来ない。
「私は問う。ドワーフ王ならば、地下に広がる大神殿の位置関係を」
「ああ、大神殿の位置を正確に把握しようってぇんだな? よし」
そう言いながら雨を告げる鳥の書いたスクロールに何かを書き加えようとするヨアキム。
――だが。
「フハハハハ! 一人で馬鹿をやっているのも癪だ。ヨアキム、馳走してやろう」
「あ! ダメですよ!」
デスドクロの行為にキュジィが叫ぶも、もう遅い。
デスドクロが差し出した焼酎をヨアキムは一気に飲み干してしまった。
「……う~、数日ぶりの酒はやっぱ効くなぁ!」
「そうであろう!」
「ん? 何をしようとしてたんだっけ? 確か、ワシの腹筋だけで紙相撲が出来るか世紀の大実験だったかな?」
アルコールが脳にまで到達したらしく、いつもの馬鹿がみんなの前に帰ってきた。
ハンターとキュジィは、思わず大きなため息をついた。
●
「……はぁ、はぁ。これもダメか」
クレールは肩で息をしている。
覚醒したまま視線を合わせようと陽掴飛びで移動したり、フライングスレッドで空中から視線を合わせようとしても結果は変わらなかった。
「マテリアルリンクも効果はなかったみたいですわ」
真夕も石碑を対象にしてマテリアルリンクを試みてみたが、周囲に変化は現れなかった。
「マテリアルリンクでは『大自然の力を借りて見極める』のとはちょっと違うかもしれませんね。意外にもっと単純かもしれませんね」
真夕を励ますようにキュジィは言葉をかける。
既にヨアキムとデスドクロは暇を持て余して酒盛りを始める始末。
そんなヨアキムを遠目で見つめる悲しそうなキュジィ。
だが、ヒントは思わぬ所になる。
「私は思う。物事は単純……」
雨を告げる鳥は、石のモニュメントの中央に立つ。
そして、石碑に向かってシャドウブリットを放った。
「私は気付く。石碑に傷が無いから攻撃はされていないとは、物理攻撃はされていないという事。魔法攻撃は分からない」
黒い塊が石碑に目掛けて飛んでいく。
しかし、衝突の寸前で黒い塊は石碑に吸収される。
同時にモニュメントが揺れ、円形のまま地下へと吸い込まれていく。
「これは、エレベーター?」
真夕は、自分の体に重力がかかっている事を実感している。
地面が下がっている。天井をみれば、左右から壁が伸びてゆっくりと閉まっていく。
まさか、漆黒の闇を進むのか。
そう思われた矢先、周囲の壁が青白い文様を浮かべて光り始める。
「どうやら、扉は無事に開けたみたいね」
疲労を感じていたクレールは、肩の荷が下りた気分だ。
「おお!? 知らぬ間に地面が降りているではないか! まさか、俺様の力が知らぬ間に発動か?」
「何でもいいじゃねぇか! 何でも来い、ワシがぶっ飛ばしてやるから!」
すっかり出来上がったヨアキムを乗せて、エレベーターは地下に向かって進んでいく。
●
「おいっ、お前ぇら! 何かやりやがったのか!」
エレベーターが地下へ到着。ハンター達はチュプ大神殿へと運ばれてきた。
その姿を見かけた大幻獣のテルル(kz0218)であるが、何故か大興奮の様子だ。
「あ、テルル。地下の入り口にあった瓦礫を取り除いたのね」
真夕は、テルルの姿を見て思いだした。
おそらく地下から入り口を塞いでいた瓦礫を撤去したのだろう。ならば、この遺跡の変化に驚いても仕方ない。
「む、この状況は……」
デスドクロが周囲を見回せば、チュプ大神殿の石壁に青白い文様が浮かび上がって青白く光っている。まるで電灯が付いたかのように明るい。
これが地下とは思えない程だ。
「これなら、灯火の水晶球が無くても見渡せる。」
「私は思う。正規の入り口から人が入る事で、大神殿が目覚めた」
クレールの言葉に付け加えるように、雨を告げる鳥は率直な感想を口にした。
仮に今までの神殿が眠りについていたとするなら、今の神殿は覚醒状態。早速壁に近づいて文様を調べ始める。
「私は記憶する。この文様、魔術の術式とも異なる独特の文様」
「お、気付いたのか。こいつぁ古代文明の神殿で見かける奴だ。俺っちにも分からねぇが、他にはなかなかねぇ代物みてぇだな」
雨を告げる鳥の言葉に反応するテルル。
訳知り顔で胸を張るが、テルル自身もこの文様については分からないようだ。
古い文献を引っ張り出せば何か分かるかもしれない、と感じた雨を告げる鳥は魔導カメラで文様を撮影し始めた。
「この文明……クリムゾンウェストと毛色が違う技術体系にも見えない?」
「調べてみないと分からないわね。調査してみないと……」
真夕の言葉を受けて、クレールは大神殿の地図を二種類作成し始める。
一つは現状判明している地図。もう一つは新しい変化があった場所を書き込む地図。
二つの差が分かれば、持ち帰っても検討する事は可能だ。
興奮冷めあらぬハンターとテルル。
そんな横では、飲んだくれた親父達が変わらぬ様子で酒を酌み交わす。
「……久しぶりの酒は酔いが早ぇな」
「無理をするな。休んではどうだ?」
「馬鹿野郎、これぐれぇで……」
そう言って立ち上がろうとするヨアキム。
しかし、足がもつれて大きく尻餅をつく。
大きな振動が大神殿に響く。
「ヨアキム様、いきなり飲むからですよ!」
「そう言ったって、お前ぇよ……」
キュジィに助けられながら、痛みに耐えて立ち上がるヨアキム。
だが――次の瞬間、ヨアキムの後ろにあった壁が動き出す。
「な!?」
「え? 何?」
ヨアキムが驚く以上に驚嘆したのはクレールだった。
地図を作成している最中から、壁の形が変わり始めたのだ。
そして、変化が終わる頃には新たな入り口らしき通路が口を開いていた。
「……これって、もしかして自動ドア?」
静かに、そして強い体を震わせる真夕。
辺境というクリムゾンウェストの西方最果ての地に眠っていた遺跡。
古代文明――ハンター達は改めてそれに触れたのかもしれない。
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遺跡探索相談卓!! クレール・ディンセルフ(ka0586) 人間(クリムゾンウェスト)|23才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2018/03/01 07:46:12 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/02/25 14:59:37 |