• 初心

【初心】薔薇にまつわる白い影

マスター:三田村 薫

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
LV1~LV20
参加人数
3~4人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2018/03/10 12:00
完成日
2018/03/13 02:07

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●ハンターオフィスにて
 急募! 花壇に現れる幽霊の撃退!
 そんな文言を目にしてやって来たあなたたちに、眼鏡におさげの職員は説明します。
「とある町に、すごくお花が好きなおばあさんがいました。彼女は親を若い内に亡くしましたがその家を相続し、母が残した庭園のお手入れを生きがいにしていました。結婚して子どもも生まれ孫も生まれました」
 職員は昔話でもするかのように話しました。まるで物語のようです。

「ですが、時間は無情にも流れ、旦那さんは先にお墓に、本人も加齢による生活能力の低下もろもろで、老人専用の療養所に入ってしまいます。その際に、庭園の花も町の人たちに配って全て処分しました」
 あなたたちは職員の話を黙って聞いています。その様子に職員は満足そうです。

「とても綺麗な庭園を町の人たちは愛していたので、簡単に取り壊すのも可哀想だ。せめて彼女が天寿を全うするまでは置いておこう。そう思って、おばあさんのおうちはまだそのまま、置いてあります。ですが……」
 眼鏡がきらり、と光りました。

「ですが、おばあさんが使っていた部屋の窓、その真下に当たる花壇に、薔薇が残っていました。処分できなかったのか忘れていたのかはわかりませんが……とにかく残っていました。赤い薔薇です。枯れるのも忍びないけど、撤去してしまうのも心苦しい。そう思って、町の人たちは気がついた時には水をあげたりお手入れしてたりしていたのですが……」
 そこで職員は思わせぶりに笑います。

「どうやっても、素人芸ではない手入れがされているのです。町の花屋さんは知らないと言います。さて、一体誰が? 町の人は誰も自分だと言いませんでした。正直者ですね。つっても嘘吐いたところで、やってみろって言われたらできないからなんだけどね」
 けらけらと笑う職員は、やや不真面目に見えるかも知れません。

「で、ここからが本題。そのおばあさんの花壇の前に、夜中に白い人影がやってくると言う噂が随分前からありました。おばあさんが療養所に入る前からね。町の人はだーれも自分だと言いません。言わなくて正解でした」
 どういう意味だろう。あなたたちは首を傾げます。職員はにたぁ、と口角を上げました。

「最近になってから、その人影は刃物を持っていると言うからです」

●ハンターオフィスにて・その二
「ま、そういう感じです~長ったらしい説明にお付き合いありがとございました!」
 職員はぺこん、と頭を下げると、お手持ちの資料の二枚目をご覧ください、と続けます。
「要約すると、おばあさんの家の前に夜な夜な現れる白い幽霊っぽい何者かの正体を突き止め、もし歪虚であるなら討伐してくださいってことですね。え? 歪虚じゃなかった場合? 危ない人なら警察ですね~! とは言え、歪虚の可能性は低いんじゃないかと思いますう」
 資料の二枚目には、関係者の現在について書かれています。おばあさんは一応は健在で、療養所にも行けば面会できるとのこと。
「ただねぇ、おばあさん、ちょっとばかしぼんやりさんになっててですねぇ、町の人がしらせたら、それは天使だわって言うんです」
 天使? どういうことだろう。あなたたちは首を傾げました。職員はあなたたちの戸惑いを察しますが、
「精霊って感じもしないですしねぇ。ま、そんなわけでまずはそのおばあさんに話を聞くのもお勧めです。じゃ、以上よろしくお願いしまーす!」
 肝心なことは何も教えてくれませんでした。おばあさんに話を聞くしかないようです。

●おばあさんの思い出
 あら、あなたたちも天使の話を聞きに来たの? そう。嬉しいわ。私の大事な思い出だもの。
 私がうんと小さい頃……いくつだったかしらねぇ。もう忘れちゃった。歳ね。
 ある日、風邪をひいて熱を出してしまってね。すごく心細かったの。昼間にずっと寝ていたせいで、夜は妙に目が冴えてしまっていて、その晩はずっと明るい月を見ていた。
 そしたら、ふふ、天使が窓辺にやって来たのよ!
 とても綺麗な女の人だった。白い肌、白にも見える金髪。とんがった耳が、ぴんとしてその先が月の光を集めるように輝いていたの。
 天使は窓辺の薔薇をうっとりと見つめていて、私はその天使を見てうっとりとしてしまった。そんなことをしている内に、天使は私が彼女を見ていたことに気付いてしまったの。彼女ははっとして、少し怯えた顔で私を見たわ。私、熱があるせいかしらね? お話したい。そう思って窓を開けたの。夜風が気持ちよかったのを覚えてる。
「あなた天使でしょう?」
 彼女はそうとも違うとも言わなかった。青い目が困ったようにこちらを見ていたの。
「私がここに来たことは誰にも言わないでほしい」
 私の問いには答えないで、彼女は小さな声で私に言った。
「もちろん! 絶対内緒にするわ……だからね、天使さん、私のお熱を下げてください」
 そう言ってお祈りのポーズをして頭を垂れると、彼女が戸惑ったのがわかった。突然お祈りだなんて、私何を考えていたのかしらね? 全部熱のせいだわ。それととても美しい天使と薔薇のせい!
「わ、わかった。うん、こうして、撫でてやろう……こ、これで明日には下がっている筈だ……」
 そんなことをまごまごと言いながら、彼女は私の頭を何回か撫でると去って行った。勝手に人間界に降りていたことがわかったら怒られるのね。
 熱? 下がらなかったわ。でも次の日は気分良く過ごせたからやっぱり天使だったのね。
 でも、もし天使じゃなくて、この世の生き物だったとしたら……私なんかよりうんとおばあさんになっていると思うわ。彼女がしわしわのよぼよぼになっているところなんて、あまり想像できないけどね。

リプレイ本文

●予想
「刃物とは物騒ですね……オフィスの方は、歪虚の可能性は低いとのことですが、それでも住民の安全は最優先ですから」
 アンネマリー・リースロッド(ka0519)が資料を見ながら言うと、同じように文字を追っていた無道(ka7139)が頷いた。
「そうだな。刃物がどんなものかにもよるが、あのご婦人に良い報告ができればいいな」
「それなんですけど、わたくしちょっと予想したことがあります」
 オルガ(ka7107)が二人の顔を見て言うと、アンネマリーと無道は続きを促すように見返した。
「ずばり、薔薇を気に入ったエルフさんが時々様子を見に来ているのではないのかと!」
「その可能性は俺も考えた」
 無道が頷いた。
「雑魔や歪虚のような感じはしない。ご婦人の話から考えて、エルフの可能性は高いな」
 そう言ってアンネマリーを見る。美しい容姿、尖った耳、金髪に白い肌をした彼女は、なんとなく老婦人の話した「天使」の特徴と一致するように見えた。
「とはいえ油断はしない」
 どの道、まずは聞き込みだ。アンネマリーの希望で、もう一度老婦人に面会を求めることにした。

●伝えたいこと
「まあ、あらあら、あなたたちまた会いに来てくださったの? 天使様には会えたかしら?」
「いいえ、まだなんです」
 アンネマリーが首を横に振る。老婦人は少し残念そうだ。
「それでですね、お宅を調べる許可を頂きたくて今日は参りました」
「まあ。結構よ。どうぞお好きになさって」
「ありがとうございます。それと、あの薔薇の来歴をおたずねしても?」
「来歴? ああ、あの薔薇がどうしてあそこにあるかって? あれはね、私が生まれたときに植えられたの! とはいえあれは三代目よ」
「薔薇は上手くいけば三十年もつこともあると言いますが……」
 オルガが目を丸くした。
「本当に、花がお好きで、お手入れなさってたんですね」
「ええ、もちろんよ」
 老婦人は微笑む。アンネマリーがその様子を見ながら、考えた。もしかしたら、彼女は天使の正体を知っているのではないか? けれど、相手が名乗り出ないことを慮って天使であると言い続けているのではないか。
「おばあ様、私たちは、最近目撃される人、が本当に天使様なのかを調べています。もし本当に天使様だったら、何か伝えたいことはありますか?」
「そうねぇ」
 老婦人は天井を見上げて少し考えると、やがて微笑んでアンネマリーを見た。
「あなたは私の思い出、かしらね」

●町での聞き込み
 依頼を受けたハンターたちがやって来た、と聞いて、町役場の人間は目撃者を数人集めた。役場の会議室で、ハンターたちと目撃者たちが向かい合う。
「いくつかおたずねしたいことがあります」
 事前の打ち合わせで、聞きたいことは決まっていた。まず刃物について。大きさや種類のことだ。どんな刃物であるかによって、相手の目的を推察できる。次に件の影が現れる日の特徴、時間やその前後の天候、月の光の強さなどだ。これによって張り込みの日を選べる。
「刃物は、そんな大きなもんじゃなかったよ。月明かりにきらっと一瞬だけ光るような」
「月明かりに? と言うことは、月の光が強い日も来ていたのですね?」
 無道が尋ねると、その住人は戸惑ったように頷いた。
「お、おう。特に決まった条件の日にって感じじゃないぜ。なあ?」
「そうですねぇ、あたしが見たときは曇りだったわぁ。刃物持ってるかまではわからなかったけど」
「前はそう頻繁にってわけでもなかった。最近だよなぁ、見る人が増えたの」
「何か、お心当たりはありますか?」
「うーん、綺麗だからほれぼれしていたとか……? だったら一輪くらい持ち帰りそうなものだけど」
 住人はそう言って肩を竦めた。
「最後にもう一つ。町の皆さんは、薔薇のお手入れをどの程度されていたんですか?」
 オルガが手を挙げて尋ねた。
「まあ、雑草抜いたり、枯れかかった葉っぱ千切ったり、花屋は枝切ったりもしてたけど、まあ自分の仕事があるからなぁ、そんなきっちりとはやってなかったみたいだ。それが、気がついたら余計な枝がすぱっと全部なくなってすっきり、綺麗になってるもんだから皆びびったよなぁ」
「そうですか……ありがとうございます」
 これは実際に現場を見るしかなさそうだ。

●現場検証
「すごい、余計な枝が全て伐採されているようです」
 件の薔薇を見て、オルガが目を丸くした。
「確かに、徹底的ですね。うーん、自分の仕事がある花屋さんじゃこれは無理でしょう」
 最後に切ってから大分経つらしい。だが、最後に白い影が目撃されたのは、恐らくそれよりも後だろうと言うのが、オルガの見立てだ。
「来たのにどうして手入れをしていなかったんだ?」
 無道が呟いた。
「お手入れが目的ではなかったのかもしれません」
 アンネマリーが、花壇から部屋の中を覗き込みながらそれに答える。かつては人が住んでいたその家。白い影はどんな思いでここに立っていたのだろうか?
「恐らく、目撃された刃物は園芸用のハサミじゃないかと思うのですが」
「そうですよね。でなきゃお手入れできませんもの」
「なぜ最近になって刃物が目立つようになったか、だな。オルガ、どうだ? 園芸のハサミはやっぱり用途によって使い分けたりするのか?」
「そうですね、種類はいくつかあるんですけど、このサイズの薔薇で、ハサミの大きさが極端に変わることはないかと思います」
「すると、最近になって刃物の種類を変えた可能性は低い、か……あずまやを見て来よう」
 無道はそう言って、敷地内に足を踏み入れた。かつての庭園に、足跡は一つもない。誰かがここに来た、と言うことは考えにくい。
「庭園に誰かが立ち入った様子はありませんね。花壇の方にも遺留物はありませんでした」
 後からやって来たアンネマリーが、庭園に視線を投げかける。
「最初から花壇の薔薇が目的だったのかもしれないな」
「園芸道具は……ああ、もう残っていないのか」
「恐らく、引き払うときに全部片付けてしまったのでしょう。やはり刃物は自前」
「今日も来るでしょうか」
 オルガが呟いた。
「最近目撃が増えたと聞きます。今日も来る可能性はそこまで低くないのでは?」
「一理ある」
 無道が頷いた。
「待ち伏せするか」

●白い影
 花壇から隠れられる、あずまやの一角に、三人は身を潜めた。薔薇の手入れが目的であるならば、刃傷沙汰になることもあるまいが、仮に園芸用だったとしても刃物を持っていることは間違いない。不心得者だったときの為に、アンネマリーは捕縛用のロープも用意している。
 夜の町は静かだった。その静けさの中で待って、どれくらい経っただろうか。通りを歩く小さな足音がして、三人は顔を見合わせた。足音は、家の前で止まる。少し身を乗り出さないと花壇は見えない。三人がそろそろと顔を出すと、花壇の前に白っぽい人影が見えた。金髪が、月明かりに照らされて白く輝いている。その手には、小ぶりの園芸用のハサミが握られていた。その人物は、じっと薔薇を見下ろして何かを迷っているようにも見える。
「……間違いなさそうだな」
 無道が囁くと、アンネマリーとオルガも頷いた。三人はそっとあずまやから花壇に近づいて行く。
「天使様」
 アンネマリーが声を掛けると、その人影ははっと顔を上げた。尖った耳、整った顔立ち。間違いない、エルフの女性だろう。彼女は同じエルフのアンネマリーを見ると、一瞬だけ安堵したような顔になるが、一緒にいる無道とオルガを見て再び警戒したような顔になる。
「失礼。街の人からこの庭園に何か不思議な者が出没している、と聞いてな。用心のために俺達が張り込んでいたのだが……こんな時間に何用かな?」
 無道が穏やかに語りかけると、そのエルフはちらりとアンネマリーを見た。彼女はその視線に応えて穏やかな声音で言葉を紡ぐ。
「この場所を荒らす気はありません。お話しませんか?」
「話すことなどない」
「では、もし薔薇の事や何か懸念があっての行動ならお手伝いさせて頂けませんか?」
「私一人で十分だ」
「ではせめて目的を。町の人がハンターオフィスに通報しました」
 オルガが言うと、エルフは信じられないものを見る目で三人を見る。
「何だって?」
「ですが、ここの家主だったおばあ様がそれは天使だから、悪いものではないからと仰るので、私たちは穏便に事を済ませたいと考えているのです」
 アンネマリーが続けた。
「おばあ様に、あなたに伝えることがあるかおたずねしています。あなたは私の思い出。そう、おばあ様はおっしゃっていました。あなたにとってもそうだったのですか?」
「覚えてたのか、あの子は。人間は、私たちよりも早く老い、忘れてしまうと思っていた」
「覚えてらっしゃいました」
「私も覚えてるよ」
 エルフはそう言うと、長く息を吐いた。
「話しても構わないか?」
「ええ」
 オルガが頷いた。エルフは語り始めた。

●あの日のこと
「あの日のことは良く覚えてるよ。私は当時反抗期で、里を飛び出してここまで来た。そしたら、私をねぎらうみたいに綺麗な薔薇があるじゃないか。ご褒美だったと思ったね。人間は皆寝静まったと思ったのに、あの子突然起きるもんだから」
 エルフは自嘲的に笑った。
「馬鹿みたいだ。私みたいな、かわいげのない奴を天使、だなんて言うんだから。しかも、お熱下げて、なんて。私を怪しい奴だとは思わなかったんだ。他人は自分を映す鏡って言うけどほんとだよ。天使の様に心が綺麗なのは彼女の方さ」
「最近になってまた来るようになったのは、薔薇が気に入ったからですか? とは言っても何十年も経ってますよね?」
 オルガが首を傾げた。エルフは目を細める。
「あの子が年寄りの入る療養所に入ったって聞いてさ。あの子がいないんじゃろくな手入れもできないだろって思って見に来たんだ。そしたら案の定って感じ」
「なるほど、それであなたは、おばあさんの為に手入れをしていたわけだな」
「そういうことさ」
「最近になって刃物が目撃されるようになったのは……ハサミはその前から持っていましたよね? そうでないとお手入れができませんし」
 アンネマリーが尋ねると、エルフは同族をしばらく見つめてから長い息を吐いた。
「お前はわかるだろうけど、私は……もうすぐ里から出られなくなる。こうやって人里に来ることも難しくなる。だから、思い出に花を持って帰ろうと思った。でもできなかった。あの茎をハサミなんかで切ってしまって、あの子に悪いことが起こったらって思ってしまって……どうしても切れなかった。そんなこと何回も繰り返してた」
「あ、それで立ち止まってたから刃物が人目についたのですか?」
 オルガが思いついた様に呟く。無道も得心がいったように息を吐く。エルフは頷いた。
「そうなんじゃないのか、多分。私は毎回ハサミ持ってきたし……全く、馬鹿だろう?」
 じわりと、その青い瞳に涙が浮かんだ。
「たった一度会っただけの人間にそこまで思い入れして」
「そんなことはない」
 無道が首を横に振った。彼は少し間を空けてから、申し出る。
「この庭園の主に……会ってくれないだろうか? 天使として」
 エルフは無道の顔を見つめてしばらく黙っていたが、やがて頷いた。

●再会
「まあ!」
 翌日、療養所に老婦人を訪ねると、彼女はエルフを見て一目でそれとわかったらしい。
「あなた、まあ! 天使様じゃないの! 人里に降りて大丈夫なの!」
「大丈夫になった」
 エルフはむすっとした顔で彼女を見下ろした。だが、寿命が見えているその老いた姿に何か感じたのか、目尻に涙が浮かんでいる。老婦人は嬉しそうに笑った。
「あのね、天使様。私、昨日から頭が痛いのよ。治してくださる?」
 老婦人はそう言って頭を下げた。そのつむじは既に髪の毛が薄くなり掛かっている。エルフはしばらくその頭をじっと見つめていた。老婦人は動かない。
「……その頭の下げ方だけは変わらないんだな、お前は」
 エルフは呟くと、そっと白いものの混じるその頭を撫でた。優しい微笑みが浮かんでいる。三人は少し離れたところでそれを見守った。

●提案
「ところで、提案なんですけど」
 面会を終えてから、療養所を出たところでオルガが言った。
「町の人とのお話し合いをおすすめしますよ。おばあさんのお家を借りて薔薇の管理人として町の人にも知ってもらうなどしたらいかがですか?」
「な、何を言っているんだお前は」
「だって、もう今まで通り夜中にこっそり来られますか? また通報されてしまうのでは」
「こ、来ない! もう来るもんか! まったく、自分たちの園芸技術のなさが私の通いを招いていたと言うのに恩知らずども!」
「お花が好きな人同士でもお話し合いできると思うんですが」
「し・な・い!」
 エルフはきっぱりと言い切った。無道が宥めるように間に入る。
「まあまあ、オルガの言うことも一理あると思うぞ」
「どいつもこいつも……」
「わたくしも無理にとは言いませんけど……」
 それから一同は無言だった。やがてエルフは、
「後は自分で適当にやって帰るから、お前たちはさっさとオフィスとやらへ報告に行ってこい」
 と言って、三人と無理矢理解散してしまった。

●後日談
「あ、皆さんその節はどうもぉ」
 後日、たまたま、別件でハンターオフィスに来ていた、無道、オルガ、アンネマリーの三人は、件のおさげの職員に呼び止められた。
「こんにちは」
「あの後、エルフさんについて続報があるんですけどぉ、今お話しても大丈夫ですかぁ?」
「ええ、是非」
「私も大丈夫です!」
「もちろん、お伺いしよう」
「えっとですね、オルガさんが提案してたそうじゃないですか? あのエルフさんがおばあさんの家で暮らして花の手入れできないかって」
「はい」
 オルガが頷いた。
「あんまりあのエルフさんは乗り気ではありませんでしたが」
「実は乗り気だったんですよぉ」
 職員はにっこりと笑った。
「では……」
 無道が驚いた様に声を上げる。
「彼女は、あの家に?」
「ええ。おばあさんの介護はさすがに無理なんで、彼女一人ですけど、町の人やおばあさんとちゃんと話し合いして、彼女が人里にもいられるうちはあそこに住んでも良いことになりました。おばあさんもたまに外泊して一緒に過ごしてるみたいですよ」
 ぱちぱち、と職員は拍手をする。アンネマリーが頷いた。
「良かった。あれだけ気に掛けていらっしゃいましたし、おばあさまにとっても大事な思い出ですもの」
「このような形で収まって良かった」
「それと、オルガさんの読み通り、町の園芸好きのお姉様おば様方に引っ張りだこみたいですよ? そのお手入れ教えてくれーって」
「ふふふ」
 オルガが目を細めて笑う。
「良かった」
「ほーんと、大団円って感じです。お見事でしたぁ!」
 職員が再び手をぱちぱちと叩く。三人は挨拶を交わすと、それぞれ自分の行き先に向かって行った。

依頼結果

依頼成功度大成功
面白かった! 6
ポイントがありませんので、拍手できません

現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!

MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 探究せし雪の姫
    アンネマリー・リースロッド(ka0519
    エルフ|13才|女性|聖導士

  • オルガ(ka7107
    人間(蒼)|18才|女性|闘狩人
  • 優しき孤高の騎士
    無道(ka7139
    鬼|23才|男性|闘狩人

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
無道(ka7139
鬼|23才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2018/03/09 16:12:40
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/03/09 12:47:00