ゲスト
(ka0000)
【RH】誰がその手を汚すというのか
マスター:凪池シリル

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 不明
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~4人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/03/07 12:00
- 完成日
- 2018/03/11 16:41
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
鉄の箱──武装トラック「ブロート」──が蓋を開け、吐き出されるように中にいた強化人間たちが散開しながら前進してくる。
その様子を、双眼鏡から見届ける。
頑丈な鋼鉄と近寄らせぬための機銃。それらからの守りを放棄してこの位置から姿を現してきたのは何故か。
見せつけているようだと思った。鉄の箱。周囲に展開するそれら。CAM。軍用トラック。その『中身』が何であるかを。
「……我々は、貴方方の控えに回れと命を受けております」
ラズモネ・シャングリラより遣わされた兵士たちは、ハンターたちと情報を共有すると、そのように告げた。
「貴方方が目的を完遂できなかった場合、その後は我々が引き継ぐと」
静かに。
意識してだろう、感情を極力抑えたその声に、ハンターたちは何を感じるのか。
目的。今回与えられた任務。今眼前で展開したトラックが、このチームの『担当』であり、つまり今出てきた強化人間、彼らを『無力化』することが使命となる。
──それを、『完遂できなかった場合』とは、いったい何を想定しているのか。
一般的には、強化人間の能力はまだまだ、クリムゾンウェストの覚醒者であるハンターには及ばないことの方が多い。
洗脳され暴走し、統率の取れない彼らを一体一体倒せばいい。試作品のCAMといった未知数の部分も少ない。敵戦力的には、今回の戦場の中で最も楽な部類と言えるかもしれない──戦力的、には?
いちいちそんな前置きの単語が挟まることが、そんな単純な問題では無いことを示している。
鉄の箱に覆い隠されない、顔が見える相手との死合い。見えてようが見えていまいがやっていることは同じこと……と、完璧に割り切るのは、やはり難しかった。
認めて、今回依頼に応じたハンターの一人、スウィンは皮肉気に唇の端を吊り上げる。
「オレぁ腹芸ってのはどうにも好きじゃねえ。はっきりさせてえんだが、あんたらの言う『無力化』てのはどういう意味だ?」
苦々しさを隠さずに問う。兵士の表情は崩れない。
「その『解釈』はハンターに任せろと。森山艦長はそうおっしゃいました」
返答に、スウィンは挑発的な表情を一度収めた。どうやらラズモネ・シャングリラ側の意図としても、本音としてこちらに望みをかけたくないわけでは無いらしい。
説得。拘束。とにかく向こうがこちらに歯向かわなくなる状態をつくれるなら、それでもいいと。
ただ……状況を決して楽観しても居ない。
洗脳されている、つまり対象がどうあっても説得、降伏に応じない場合。その可能性も決して低くはないと見ている……というか、現実、ほぼ間違いなく彼らはそういう状態にあるだろうと目されている。
「お判りでしょうが、我々の中にも強化人間がおります」
相対する兵士が告げる。決然と。
「なればこそ、彼らに同情する以上に、その刃が友軍に、ましてや市井の人間に致命的な被害を与えるなどあってはいけないと思っております」
言葉に、スウィンは息を吐いた。認めよう。彼らの覚悟は本物だと。スウィンは意識して、己の剣に掘られた意匠の花びらに指で触れた。
分かるのは。似たような覚悟を彼もしたことがあるからだ。雑魔と化した師匠の遺体に刃を向けたとき。感情では斬りたくない相手に、刃を向ける覚悟。ただ、その時とはまた重さが違う話だ。あの時はもう、本当にどうしようもないと言い聞かせることが出来た。
今回は、どうなのか。
出来れば殺したくはない。それが真っ先に浮かぶ本音で、そのためのリスクや、自分に降りかかる被害を受け止める覚悟はある。
そこからもう一歩。
(出来そうにねえ、って分かっちまったら、オレはそこから先をどうする……?)
死ぬ気で向かってくる相手を、説得でなく無力化するなら、相応の作戦と実力差がいるだろう。そして実力差という点を、兵士たちに求めるのは難しい。
つまり自分たちが『出来ない』と認めた段階で、今回反乱を起こした強化人間たちの末路はほぼ決まる。
(分かってて、それを押し付けるってのもまあ……実に、胸糞悪ぃ話だよな。それなら。それならオレぁ……)
ぐ、と剣を引き寄せる。会敵のその瞬間まで、スウィンは覚悟を研ぎ澄ませることに決めた。相反する、二つの覚悟を。
その様子を、双眼鏡から見届ける。
頑丈な鋼鉄と近寄らせぬための機銃。それらからの守りを放棄してこの位置から姿を現してきたのは何故か。
見せつけているようだと思った。鉄の箱。周囲に展開するそれら。CAM。軍用トラック。その『中身』が何であるかを。
「……我々は、貴方方の控えに回れと命を受けております」
ラズモネ・シャングリラより遣わされた兵士たちは、ハンターたちと情報を共有すると、そのように告げた。
「貴方方が目的を完遂できなかった場合、その後は我々が引き継ぐと」
静かに。
意識してだろう、感情を極力抑えたその声に、ハンターたちは何を感じるのか。
目的。今回与えられた任務。今眼前で展開したトラックが、このチームの『担当』であり、つまり今出てきた強化人間、彼らを『無力化』することが使命となる。
──それを、『完遂できなかった場合』とは、いったい何を想定しているのか。
一般的には、強化人間の能力はまだまだ、クリムゾンウェストの覚醒者であるハンターには及ばないことの方が多い。
洗脳され暴走し、統率の取れない彼らを一体一体倒せばいい。試作品のCAMといった未知数の部分も少ない。敵戦力的には、今回の戦場の中で最も楽な部類と言えるかもしれない──戦力的、には?
いちいちそんな前置きの単語が挟まることが、そんな単純な問題では無いことを示している。
鉄の箱に覆い隠されない、顔が見える相手との死合い。見えてようが見えていまいがやっていることは同じこと……と、完璧に割り切るのは、やはり難しかった。
認めて、今回依頼に応じたハンターの一人、スウィンは皮肉気に唇の端を吊り上げる。
「オレぁ腹芸ってのはどうにも好きじゃねえ。はっきりさせてえんだが、あんたらの言う『無力化』てのはどういう意味だ?」
苦々しさを隠さずに問う。兵士の表情は崩れない。
「その『解釈』はハンターに任せろと。森山艦長はそうおっしゃいました」
返答に、スウィンは挑発的な表情を一度収めた。どうやらラズモネ・シャングリラ側の意図としても、本音としてこちらに望みをかけたくないわけでは無いらしい。
説得。拘束。とにかく向こうがこちらに歯向かわなくなる状態をつくれるなら、それでもいいと。
ただ……状況を決して楽観しても居ない。
洗脳されている、つまり対象がどうあっても説得、降伏に応じない場合。その可能性も決して低くはないと見ている……というか、現実、ほぼ間違いなく彼らはそういう状態にあるだろうと目されている。
「お判りでしょうが、我々の中にも強化人間がおります」
相対する兵士が告げる。決然と。
「なればこそ、彼らに同情する以上に、その刃が友軍に、ましてや市井の人間に致命的な被害を与えるなどあってはいけないと思っております」
言葉に、スウィンは息を吐いた。認めよう。彼らの覚悟は本物だと。スウィンは意識して、己の剣に掘られた意匠の花びらに指で触れた。
分かるのは。似たような覚悟を彼もしたことがあるからだ。雑魔と化した師匠の遺体に刃を向けたとき。感情では斬りたくない相手に、刃を向ける覚悟。ただ、その時とはまた重さが違う話だ。あの時はもう、本当にどうしようもないと言い聞かせることが出来た。
今回は、どうなのか。
出来れば殺したくはない。それが真っ先に浮かぶ本音で、そのためのリスクや、自分に降りかかる被害を受け止める覚悟はある。
そこからもう一歩。
(出来そうにねえ、って分かっちまったら、オレはそこから先をどうする……?)
死ぬ気で向かってくる相手を、説得でなく無力化するなら、相応の作戦と実力差がいるだろう。そして実力差という点を、兵士たちに求めるのは難しい。
つまり自分たちが『出来ない』と認めた段階で、今回反乱を起こした強化人間たちの末路はほぼ決まる。
(分かってて、それを押し付けるってのもまあ……実に、胸糞悪ぃ話だよな。それなら。それならオレぁ……)
ぐ、と剣を引き寄せる。会敵のその瞬間まで、スウィンは覚悟を研ぎ澄ませることに決めた。相反する、二つの覚悟を。
リプレイ本文
姿を見せた強化人間たちに、身を乗り出しかけた玉兎 小夜(ka6009)はしかし、一度振り返った。
「……ま、譲るよ。止めれるなら止めな?」
振り向いた先──
「……感謝しおる」
蜜鈴=カメーリア・ルージュ(ka4009)は頷き小さく返して、一歩前に踏み出そうとする、が。
「それなら、可能な限り対象をまとめたいところだな」
テノール(ka5676)が、その蜜鈴を更に制するように先んじて前に出た。
任せろ、と背中で告げて、彼は少年たちの元へと吶喊していく。
少年たちは怯えを見せながらも手にした武器を構えるのに躊躇いはなかった。向かってくるテノールに次々に銃撃を放つ。彼はそれを見切って躱しながら、距離を詰めていく。向こうから距離を取ろうとする相手の眼前に立ち、知らず、輪の中へと引き込んでいく。
蜜鈴は意識を集中する。
テノールを巻き込む形にはなるが、それを含めての「任せろ」なのだろうと信じて。
『凶暴なる微睡み、安寧を乱す者、彼方の敵を常夜の眠りへと誘え』
呪を紡ぐ。
固まる一群の足元に漆黒の種子が生まれる。瞬く間にそれは芽吹き、茎を伸ばし、真綿のような白い花を咲かせる。──甘い香りを纏わせて。
黄泉ノ揺籠。眠りへと誘う彼女の術。役目を終えた花弁が舞い散り、そして五人のうち三人がその場に倒れ伏す。
起きている一人はそのままテノールが相手取り、もう一人には、これで義理は果たしたとばかりに小夜が向かっていった。
……結論を述べると、これで、倒れた少年たちの無力化が適ったかと言えば、そうはならなかった。
この術の効果では、まともな拘束が適う前に彼らは目覚めてしまう。
そして、間近で自分たちに迫るハンターに叫びをあげ、恐慌を起こしたように暴れまわり彼らを振り払った。
仕切り直すしかない。ハンターたちは改めて、それぞれの目の前の相手と対峙する。
●
あの施設で会ったのかもしれない。もしかしたら、会話もしたかも。……名前は分からない。だから少なくとも、それを聞くほどの交流はなかったのだろう。
眼前の少女に、ヒース・R・ウォーカー(ka0145)はふとそんな感傷を覚えた。
そしてそれを、すぐに別の思考が上書きしていくのを感じる。
暴れるように少女が振るう刃を、ヒースが持つ短剣程度の長さの刃が弾く。浮かせた刃にがら空きになった懐に、手にした刃を深々と突き立てる──という、イメージは、出来た。
必要と判断すればそれが出来るだろうというイメージは。
……感情とは別にやるべき事をやる事には慣れている。
……かつて道を違えた大切な友達を殺した時の様に。
──この手は血塗れ、綺麗ごとは似合わない。
それを、自覚していてなお。
「それでも、止められるのなら止めたいんだけどねぇ」
呟く。
少女が再度、踏み込んでくる。
「……ぎゃんっ!?」
そしてその刃が振り下ろされきる前に、獣めいた悲鳴を上げて少女の身体がのけぞる。
届かないはずの間合いからの攻撃。ヒースの手にしたユナイテッド・ドライブ・ソードが、少女の身体に向けられる寸前にその形態を変えていた。
「何故と問いはしない。今はただ、お前たちを止めるのがボクの仕事なんでねぇ」
その刃に這わされていた雷撃に、再び地に伏せてのたうつ少女に、ヒースは告げる。
効果は……あった。少女の筋肉は電撃に弛緩し、上手く力をこめられずにのたのたと地面でもがいている。
だが……その眼、その気配。こちらへと向ける敵意は変わらない。
苦痛は感じているはずだった。
実力差も十分に見せたはず。
なのに……敵意は。戦う意志は。初めから、全く変わる気配がない。
むしろこちらへの憎悪を覚えた分、増したとすら。
電撃では分からないかと、手足を狙った攻撃に変える。
「ああ……ぐっ……」
腕から、脚から、血を滴らせて少女が苦悶に喘ぐ。
「手足を狙ったのはお前たちを殺すつもりがないから。武器を捨てて投降すれば命を奪いはしない。なお戦うと言うなら、結末は分かるだろ」
呼びかける。
少女の技、動き、その悲鳴に、知性はあるはずだった。
そのはずなのに、傷つき、ワイヤーに絡めとられ身動きの不自由な手足を、少女はなおも振り上げるのをやめない。
「……そうか」
ヒースは、理解して、静かに告げた。
真横に薙がれた刃を、大きく飛びのきながら避ける。その剣閃を、静かに見つめる。
開いた間合いに、少女が銃を構える。その構造を思い浮かべる。
(……分かるだろ)
ヒースは、もう一度確認する。心の中で。
振るう刃のその技は。手にしたその武器は。
それはまごうことなく、命を奪う一撃だ。奪うため代物だ。
それを分かって、あの子は止まらず己にそれを振るうのだ。それが、出来てしまう存在なのだ。
「お前は──『ボクの敵』だ」
止めるべき暴走した味方ではなく。
認識する。
正しく──認識する。
(ボクは自分の役目を果す)
戦いが始まった時より纏う、この血の如き紅がその証拠。その覚悟。
そうして、いく度目か分からない、少女とヒースの、刃の交差……──
「結局殺す事しかできない、か。変わらないな、ボクは」
●
『広がる枝葉、囲むは小さき世界、大地に跪き、己が手にした罪を識れ』
蜜鈴の言霊に応え、黄金の種子が芽吹く。枝葉を伸ばすそれが少年の身体を絡め取り、圧し潰す。
身動きの取れないうちに蜜鈴は距離を取り直した。
術師の彼女が一対一で戦うのは正直、不利でしかない。
……しかし、だからこそ出来ることもある。
その場から動けない少年は蜜鈴に銃を向け引き金を引いた。彼女から鮮血が滴る。
それに構いはしなかった。
『終息する祈り、穿つは我が怨敵…心を凍らせ、其の身を嘆け』
芽吹くは氷の種子。蕾が花開くと冷気となり少年の身体を傷つけながらその動きを鈍らせる。
……建前は有れど、本心としては傷つけたく、無い。
……先日会った強化人間の子たちの笑顔を識っている。
……この子らと変わらぬ姿の子たちを識っている。
(なればこそ妾の持てる全てを以て止めねばなるまい)
震え、膝を着く少年の動きをこのまま止められないかと蜜鈴は再び拘束を試みた。
結果は、最初の時と大きく変わらなかった。きちんとした拘束はままならぬうちに相手は動きを復帰させ、差し伸べられた手を暴力でもって振り払う。
想いは、痛みで返される。
拘束を試みるたびに蜜鈴の身体に傷が刻まれていくだけだった。
……それでいい。
──此の身が如何程に傷付こうとも、子等の心の傷には適わぬのだから。
……何故、とは。
蜜鈴も問いはしなかった。
実力差も、殺さず終わらせるつもりの意志も示したはずだった、それなのに、とも。
分かってくれるという事を、期待できないのは。
蜜鈴が、分かってしまっているからだろうか。
民を救えなかった己が初めて会う子を救えるなど……と。
斯様に甘い考えで全てを救えるなど……と。
故なのか。
この結果は。
幾度目かの冷気が少年を襲った、その後。
彼は二度と立ち上がることは、無くて。
「……よう生きた」
傷ついた身を抱きしめ、蜜鈴は少年の身体を撫でる。
摘んだ命の花を抱き締め、背負いて生きようと。
後ろに控えているのは彼女よりもか弱き命だ。
少年の力がそこへと振るわれればその命は奪われただろう、そうなって、彼らが心より笑えるとは思えない。
──友を殺した鬼よと恨まれても構わぬ。
──家族を殺した畜生よと罵られても構わぬ。
それでもせめて、人としての、心有る死を……。
その表情にやりきれない痛切さは浮かびつつも、彼女は決して涙を流すことは、無かった。
●
──私は兎。
敵になった以上は斬るし、甘くしたら、また大事なものを失ってしまう。
なら、徹底的に叩き潰す。
「……敵は、殺す」
意志を、言葉に乗せる。
奥底で何かが疼くのを自覚していた──嫌がる部分も、ある。
けど
「……私は、理想を棄てた」
けど
(子どもなら……地獄には関係ない、のかもなぁ)
距離を詰める小夜に、少女は迎撃の姿勢を示すように上段に構える。
「……ち」
ほんの少しだけ湧く温情に、小夜は手を、足を止めていた。
「……お前ら程度、刀を抜く必要もない。来な」
魔腕を構え、挑発。
少女はそれに、気合の声と共に踏み込み、剣を一閃させる。
さしたる苦も無く、躱す。
苛々する。
小夜と少女の実力の開きは今の一撃で明らか過ぎるくらい明らかになった。
殺せる。簡単に。
──……『余計なこと』を考えながらでも。
(ちらつく。君の顔と……)
少女が剣を振るう。並の人間なら食らっている鋭さ。死ぬかもしれない膂力。だけど遅い。小夜には。
「甘い」
剣術では敵わぬと距離を取ろうとした少女に小夜は容易く追いすがる。
「ひっ!」
怯える表情の少女の肩を掴み、乱暴に腕を引き、そして少女の身体は宙に舞い、地面に叩き付けられる。
(……温情でもね)
小夜の動きはなおも止まらない。倒れたままの少女の身体を掴み、締め上げ、極める。
「敵として現れた以上、手足の一本や二本は当たり前なんだよ!!」
叫ぶ。
締め上げる。
みしりみしりと音を立てる少女の身体。苦痛の呻き。それが。
「あがあアアああアアアあああっ!?」
ボキ、という手ごたえと共に、絶叫に変わる。
戦域全体に響き渡るような、ケダモノじみた叫び。
耳がキンとして……だからつい、腕を緩めた。転がるように少女が暴れ、小夜から離れていく。
もう戦えないはずだった。
この実力差。この苦痛。
なのに少女は立ち上がる。折れた腕を垂らしたまま。
苦痛に顔をぐしゃぐしゃにしたままで、それでもその眼に宿る意思は。
「……まどろっこしい真似はやめだ」
小夜はそれを受けてか、殺すつもりで殺気を放つ。
──心を操作されてても、生命維持の本能があるならば。
思うのに、少女は。
目の前の脅威に対し。
……飛び掛かってきた。躊躇いもなく。投降も逃走も選択肢にはなく、あるのは排除一択。それは明らかに、己を考えての行動ではない──
「……殺す」
小夜は抜いた。聖罰刃を。
そして、鋭い、本気の一撃が──
「……本当に、甘っちょろい」
吐き捨てながら、小夜は剣を収めた。
見下ろす少女は……生きている。
苦痛に、精も根も尽き果てて。開かれたままの瞳にはもはや。何の意志も感情も、見せなくて。
「心を殺すのは、殺さないけど、殺さないだけの憎しみだよ」
──その言葉は、おためごかしだけ、とは言い切れまい。
●
手際で言うならば。
テノールのそれは、見事の一言に尽きる。
相手の武器を封じながら、牽制の攻撃を幾度か行い、やがて拳の一撃が少年の腹部に深く突き刺さる。
必殺の領域まで高められた一撃に、少年は意識を奪われ昏倒する。
彼が他の者と違う結果を齎せたのは、その状態から、しっかりと関節を固めた状態で拘束を始めたことだ。
このため、少年が失神から目覚めてもすぐに抜け出されることは無かった。
激しい抵抗に流石に無傷とはいかなかったが、彼はやがて、少年の動きを封じることに成功する。
見事な手際だ。賞賛すべきものだろう。人道的観点からしても完璧である、と。
──これが、例えばただの凶悪犯が相手、だったならば。
「ううううううっ……!」
全身をがっちりとからめとられてなお、少年はそれを振りほどこうと暴れまわっていた。
解けないことを理解していないのか。理解してなお、諦めるという選択肢があり得ないのか。
手際が良すぎたがゆえに体力の有り余る状態で拘束された少年は、暴れまわる。
それを見てテノールが思うのは──まず間違いないのは、今この状態ですぐ軍には引き渡せない、という事だ。
「おい。無駄だぞ。分かるだろ。諦めろ」
一応呼びかけてはいるものの、聞こえていないのか、聞く気が無いのか、変化はない。
となると、このまま体力が尽きるまで見守るのが、一旦正解か……と思う矢先。
少年の方の辺りで、ごき、と、嫌な音がした。
「あ、ああアアアあっ!?」
苦痛に、少年が混乱の声を上げる。拘束を逃れるためにわざと関節を外した……訳では、無いらしい。
涎を垂らして激痛に悶えながら、少年は……一層、動きを激しくした。瞳に、闘志を、憎悪をより滾らせて。
暴れる少年に、拘束はより食い込んでいく。血が滲む。
余計に己が傷つくことは厭わないのか?
腕が千切れたらそれで拘束が解けるとでも?
それは。
そんなのは。
もはや、人間の──まともな生き物の思考じゃ、無いだろう。
動かざるを得なかった。
このままでせっかく拘束した少年が、自分で自分を殺しかねない。
テノールは再び、少年に近づき……そしてその身に手を添えると、『適切な衝撃』を加えて、再度失神させた。
本来ならば。
初めから殺すことを厭わないかと言われれば──Yes。
自分の手で殺せるかと言われれば──Yes。
テノールは、自分の感情をそのように整理している。
だが、今回の責任者だろう森山恭子。ラズモネ・シャングリラの艦長。
個人的な言動はともかく艦を任されるほどの軍人。
それが、仲間だったとはいえ子供だったとはいえ友軍や市井の人間に害をなすものを殺せない程度の覚悟の持ち主だとは思えない。
……そんな彼女が無力化という言葉を使った。
無力化の解釈を任せると言った、殺してでも止めろとは言っていない。
つまりは出来うることなら殺さずに止めて欲しいと言ったことだろう。
ならば。
依頼主の意向になるべく沿うのがいい傭兵だ。
彼にとって。
これは、救いなどとは思っていない。
望みでもありはしない。
只の証明。傭兵としての有能さ、柔軟さの。
故に成せた。
少年が目を覚まし、体力があるならば再び失神させるというその、繰り返しを。
仕込みはあった。戦闘開始直後の数回の攻防。
あの際に、相手の防御力や耐久力は測ってある。
故に出来る。「この程度なら死なない」程度の攻撃を重ねることが。
……もし見誤ったとしても、それはそれでまあ、依頼の範囲だ。
一つ懸念があるとしたら、果たしてこれを引き渡したところで軍がこの後管理できるのか、という事だが……。
──まあ、やって見せろというからには、そちらもやって見せろ。そういう事で、良いだろう。
やがて。
少年は力尽きて、動かなくなる。
やはり、瞳は何の意志も感情も宿さなくなる、そうやって、ようやく。
●
保護二名。死亡三名。
控えに回る軍人たちが手を回すことは無く、全てハンターたちによってそれは成し遂げられた。
それに対し、軍人たちは、「……見事なものでした」というのみで、それ以上は決して語ろうとはしなかった。言えるはずもない、と。
尚、保護された二名については、極端な衰弱を見せ、意識の回復には至っていない。
「……ま、譲るよ。止めれるなら止めな?」
振り向いた先──
「……感謝しおる」
蜜鈴=カメーリア・ルージュ(ka4009)は頷き小さく返して、一歩前に踏み出そうとする、が。
「それなら、可能な限り対象をまとめたいところだな」
テノール(ka5676)が、その蜜鈴を更に制するように先んじて前に出た。
任せろ、と背中で告げて、彼は少年たちの元へと吶喊していく。
少年たちは怯えを見せながらも手にした武器を構えるのに躊躇いはなかった。向かってくるテノールに次々に銃撃を放つ。彼はそれを見切って躱しながら、距離を詰めていく。向こうから距離を取ろうとする相手の眼前に立ち、知らず、輪の中へと引き込んでいく。
蜜鈴は意識を集中する。
テノールを巻き込む形にはなるが、それを含めての「任せろ」なのだろうと信じて。
『凶暴なる微睡み、安寧を乱す者、彼方の敵を常夜の眠りへと誘え』
呪を紡ぐ。
固まる一群の足元に漆黒の種子が生まれる。瞬く間にそれは芽吹き、茎を伸ばし、真綿のような白い花を咲かせる。──甘い香りを纏わせて。
黄泉ノ揺籠。眠りへと誘う彼女の術。役目を終えた花弁が舞い散り、そして五人のうち三人がその場に倒れ伏す。
起きている一人はそのままテノールが相手取り、もう一人には、これで義理は果たしたとばかりに小夜が向かっていった。
……結論を述べると、これで、倒れた少年たちの無力化が適ったかと言えば、そうはならなかった。
この術の効果では、まともな拘束が適う前に彼らは目覚めてしまう。
そして、間近で自分たちに迫るハンターに叫びをあげ、恐慌を起こしたように暴れまわり彼らを振り払った。
仕切り直すしかない。ハンターたちは改めて、それぞれの目の前の相手と対峙する。
●
あの施設で会ったのかもしれない。もしかしたら、会話もしたかも。……名前は分からない。だから少なくとも、それを聞くほどの交流はなかったのだろう。
眼前の少女に、ヒース・R・ウォーカー(ka0145)はふとそんな感傷を覚えた。
そしてそれを、すぐに別の思考が上書きしていくのを感じる。
暴れるように少女が振るう刃を、ヒースが持つ短剣程度の長さの刃が弾く。浮かせた刃にがら空きになった懐に、手にした刃を深々と突き立てる──という、イメージは、出来た。
必要と判断すればそれが出来るだろうというイメージは。
……感情とは別にやるべき事をやる事には慣れている。
……かつて道を違えた大切な友達を殺した時の様に。
──この手は血塗れ、綺麗ごとは似合わない。
それを、自覚していてなお。
「それでも、止められるのなら止めたいんだけどねぇ」
呟く。
少女が再度、踏み込んでくる。
「……ぎゃんっ!?」
そしてその刃が振り下ろされきる前に、獣めいた悲鳴を上げて少女の身体がのけぞる。
届かないはずの間合いからの攻撃。ヒースの手にしたユナイテッド・ドライブ・ソードが、少女の身体に向けられる寸前にその形態を変えていた。
「何故と問いはしない。今はただ、お前たちを止めるのがボクの仕事なんでねぇ」
その刃に這わされていた雷撃に、再び地に伏せてのたうつ少女に、ヒースは告げる。
効果は……あった。少女の筋肉は電撃に弛緩し、上手く力をこめられずにのたのたと地面でもがいている。
だが……その眼、その気配。こちらへと向ける敵意は変わらない。
苦痛は感じているはずだった。
実力差も十分に見せたはず。
なのに……敵意は。戦う意志は。初めから、全く変わる気配がない。
むしろこちらへの憎悪を覚えた分、増したとすら。
電撃では分からないかと、手足を狙った攻撃に変える。
「ああ……ぐっ……」
腕から、脚から、血を滴らせて少女が苦悶に喘ぐ。
「手足を狙ったのはお前たちを殺すつもりがないから。武器を捨てて投降すれば命を奪いはしない。なお戦うと言うなら、結末は分かるだろ」
呼びかける。
少女の技、動き、その悲鳴に、知性はあるはずだった。
そのはずなのに、傷つき、ワイヤーに絡めとられ身動きの不自由な手足を、少女はなおも振り上げるのをやめない。
「……そうか」
ヒースは、理解して、静かに告げた。
真横に薙がれた刃を、大きく飛びのきながら避ける。その剣閃を、静かに見つめる。
開いた間合いに、少女が銃を構える。その構造を思い浮かべる。
(……分かるだろ)
ヒースは、もう一度確認する。心の中で。
振るう刃のその技は。手にしたその武器は。
それはまごうことなく、命を奪う一撃だ。奪うため代物だ。
それを分かって、あの子は止まらず己にそれを振るうのだ。それが、出来てしまう存在なのだ。
「お前は──『ボクの敵』だ」
止めるべき暴走した味方ではなく。
認識する。
正しく──認識する。
(ボクは自分の役目を果す)
戦いが始まった時より纏う、この血の如き紅がその証拠。その覚悟。
そうして、いく度目か分からない、少女とヒースの、刃の交差……──
「結局殺す事しかできない、か。変わらないな、ボクは」
●
『広がる枝葉、囲むは小さき世界、大地に跪き、己が手にした罪を識れ』
蜜鈴の言霊に応え、黄金の種子が芽吹く。枝葉を伸ばすそれが少年の身体を絡め取り、圧し潰す。
身動きの取れないうちに蜜鈴は距離を取り直した。
術師の彼女が一対一で戦うのは正直、不利でしかない。
……しかし、だからこそ出来ることもある。
その場から動けない少年は蜜鈴に銃を向け引き金を引いた。彼女から鮮血が滴る。
それに構いはしなかった。
『終息する祈り、穿つは我が怨敵…心を凍らせ、其の身を嘆け』
芽吹くは氷の種子。蕾が花開くと冷気となり少年の身体を傷つけながらその動きを鈍らせる。
……建前は有れど、本心としては傷つけたく、無い。
……先日会った強化人間の子たちの笑顔を識っている。
……この子らと変わらぬ姿の子たちを識っている。
(なればこそ妾の持てる全てを以て止めねばなるまい)
震え、膝を着く少年の動きをこのまま止められないかと蜜鈴は再び拘束を試みた。
結果は、最初の時と大きく変わらなかった。きちんとした拘束はままならぬうちに相手は動きを復帰させ、差し伸べられた手を暴力でもって振り払う。
想いは、痛みで返される。
拘束を試みるたびに蜜鈴の身体に傷が刻まれていくだけだった。
……それでいい。
──此の身が如何程に傷付こうとも、子等の心の傷には適わぬのだから。
……何故、とは。
蜜鈴も問いはしなかった。
実力差も、殺さず終わらせるつもりの意志も示したはずだった、それなのに、とも。
分かってくれるという事を、期待できないのは。
蜜鈴が、分かってしまっているからだろうか。
民を救えなかった己が初めて会う子を救えるなど……と。
斯様に甘い考えで全てを救えるなど……と。
故なのか。
この結果は。
幾度目かの冷気が少年を襲った、その後。
彼は二度と立ち上がることは、無くて。
「……よう生きた」
傷ついた身を抱きしめ、蜜鈴は少年の身体を撫でる。
摘んだ命の花を抱き締め、背負いて生きようと。
後ろに控えているのは彼女よりもか弱き命だ。
少年の力がそこへと振るわれればその命は奪われただろう、そうなって、彼らが心より笑えるとは思えない。
──友を殺した鬼よと恨まれても構わぬ。
──家族を殺した畜生よと罵られても構わぬ。
それでもせめて、人としての、心有る死を……。
その表情にやりきれない痛切さは浮かびつつも、彼女は決して涙を流すことは、無かった。
●
──私は兎。
敵になった以上は斬るし、甘くしたら、また大事なものを失ってしまう。
なら、徹底的に叩き潰す。
「……敵は、殺す」
意志を、言葉に乗せる。
奥底で何かが疼くのを自覚していた──嫌がる部分も、ある。
けど
「……私は、理想を棄てた」
けど
(子どもなら……地獄には関係ない、のかもなぁ)
距離を詰める小夜に、少女は迎撃の姿勢を示すように上段に構える。
「……ち」
ほんの少しだけ湧く温情に、小夜は手を、足を止めていた。
「……お前ら程度、刀を抜く必要もない。来な」
魔腕を構え、挑発。
少女はそれに、気合の声と共に踏み込み、剣を一閃させる。
さしたる苦も無く、躱す。
苛々する。
小夜と少女の実力の開きは今の一撃で明らか過ぎるくらい明らかになった。
殺せる。簡単に。
──……『余計なこと』を考えながらでも。
(ちらつく。君の顔と……)
少女が剣を振るう。並の人間なら食らっている鋭さ。死ぬかもしれない膂力。だけど遅い。小夜には。
「甘い」
剣術では敵わぬと距離を取ろうとした少女に小夜は容易く追いすがる。
「ひっ!」
怯える表情の少女の肩を掴み、乱暴に腕を引き、そして少女の身体は宙に舞い、地面に叩き付けられる。
(……温情でもね)
小夜の動きはなおも止まらない。倒れたままの少女の身体を掴み、締め上げ、極める。
「敵として現れた以上、手足の一本や二本は当たり前なんだよ!!」
叫ぶ。
締め上げる。
みしりみしりと音を立てる少女の身体。苦痛の呻き。それが。
「あがあアアああアアアあああっ!?」
ボキ、という手ごたえと共に、絶叫に変わる。
戦域全体に響き渡るような、ケダモノじみた叫び。
耳がキンとして……だからつい、腕を緩めた。転がるように少女が暴れ、小夜から離れていく。
もう戦えないはずだった。
この実力差。この苦痛。
なのに少女は立ち上がる。折れた腕を垂らしたまま。
苦痛に顔をぐしゃぐしゃにしたままで、それでもその眼に宿る意思は。
「……まどろっこしい真似はやめだ」
小夜はそれを受けてか、殺すつもりで殺気を放つ。
──心を操作されてても、生命維持の本能があるならば。
思うのに、少女は。
目の前の脅威に対し。
……飛び掛かってきた。躊躇いもなく。投降も逃走も選択肢にはなく、あるのは排除一択。それは明らかに、己を考えての行動ではない──
「……殺す」
小夜は抜いた。聖罰刃を。
そして、鋭い、本気の一撃が──
「……本当に、甘っちょろい」
吐き捨てながら、小夜は剣を収めた。
見下ろす少女は……生きている。
苦痛に、精も根も尽き果てて。開かれたままの瞳にはもはや。何の意志も感情も、見せなくて。
「心を殺すのは、殺さないけど、殺さないだけの憎しみだよ」
──その言葉は、おためごかしだけ、とは言い切れまい。
●
手際で言うならば。
テノールのそれは、見事の一言に尽きる。
相手の武器を封じながら、牽制の攻撃を幾度か行い、やがて拳の一撃が少年の腹部に深く突き刺さる。
必殺の領域まで高められた一撃に、少年は意識を奪われ昏倒する。
彼が他の者と違う結果を齎せたのは、その状態から、しっかりと関節を固めた状態で拘束を始めたことだ。
このため、少年が失神から目覚めてもすぐに抜け出されることは無かった。
激しい抵抗に流石に無傷とはいかなかったが、彼はやがて、少年の動きを封じることに成功する。
見事な手際だ。賞賛すべきものだろう。人道的観点からしても完璧である、と。
──これが、例えばただの凶悪犯が相手、だったならば。
「ううううううっ……!」
全身をがっちりとからめとられてなお、少年はそれを振りほどこうと暴れまわっていた。
解けないことを理解していないのか。理解してなお、諦めるという選択肢があり得ないのか。
手際が良すぎたがゆえに体力の有り余る状態で拘束された少年は、暴れまわる。
それを見てテノールが思うのは──まず間違いないのは、今この状態ですぐ軍には引き渡せない、という事だ。
「おい。無駄だぞ。分かるだろ。諦めろ」
一応呼びかけてはいるものの、聞こえていないのか、聞く気が無いのか、変化はない。
となると、このまま体力が尽きるまで見守るのが、一旦正解か……と思う矢先。
少年の方の辺りで、ごき、と、嫌な音がした。
「あ、ああアアアあっ!?」
苦痛に、少年が混乱の声を上げる。拘束を逃れるためにわざと関節を外した……訳では、無いらしい。
涎を垂らして激痛に悶えながら、少年は……一層、動きを激しくした。瞳に、闘志を、憎悪をより滾らせて。
暴れる少年に、拘束はより食い込んでいく。血が滲む。
余計に己が傷つくことは厭わないのか?
腕が千切れたらそれで拘束が解けるとでも?
それは。
そんなのは。
もはや、人間の──まともな生き物の思考じゃ、無いだろう。
動かざるを得なかった。
このままでせっかく拘束した少年が、自分で自分を殺しかねない。
テノールは再び、少年に近づき……そしてその身に手を添えると、『適切な衝撃』を加えて、再度失神させた。
本来ならば。
初めから殺すことを厭わないかと言われれば──Yes。
自分の手で殺せるかと言われれば──Yes。
テノールは、自分の感情をそのように整理している。
だが、今回の責任者だろう森山恭子。ラズモネ・シャングリラの艦長。
個人的な言動はともかく艦を任されるほどの軍人。
それが、仲間だったとはいえ子供だったとはいえ友軍や市井の人間に害をなすものを殺せない程度の覚悟の持ち主だとは思えない。
……そんな彼女が無力化という言葉を使った。
無力化の解釈を任せると言った、殺してでも止めろとは言っていない。
つまりは出来うることなら殺さずに止めて欲しいと言ったことだろう。
ならば。
依頼主の意向になるべく沿うのがいい傭兵だ。
彼にとって。
これは、救いなどとは思っていない。
望みでもありはしない。
只の証明。傭兵としての有能さ、柔軟さの。
故に成せた。
少年が目を覚まし、体力があるならば再び失神させるというその、繰り返しを。
仕込みはあった。戦闘開始直後の数回の攻防。
あの際に、相手の防御力や耐久力は測ってある。
故に出来る。「この程度なら死なない」程度の攻撃を重ねることが。
……もし見誤ったとしても、それはそれでまあ、依頼の範囲だ。
一つ懸念があるとしたら、果たしてこれを引き渡したところで軍がこの後管理できるのか、という事だが……。
──まあ、やって見せろというからには、そちらもやって見せろ。そういう事で、良いだろう。
やがて。
少年は力尽きて、動かなくなる。
やはり、瞳は何の意志も感情も宿さなくなる、そうやって、ようやく。
●
保護二名。死亡三名。
控えに回る軍人たちが手を回すことは無く、全てハンターたちによってそれは成し遂げられた。
それに対し、軍人たちは、「……見事なものでした」というのみで、それ以上は決して語ろうとはしなかった。言えるはずもない、と。
尚、保護された二名については、極端な衰弱を見せ、意識の回復には至っていない。
依頼結果
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テノール(ka5676)
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/03/02 14:55:53 |
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作戦相談所 ヒース・R・ウォーカー(ka0145) 人間(リアルブルー)|23才|男性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2018/03/06 12:28:31 |