• 反影

【反影】枯れた宇宙に飛ぶ船

マスター:馬車猪

シナリオ形態
ショート
難易度
難しい
オプション
参加費
1,500
参加制限
-
参加人数
4~10人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2018/03/13 15:00
完成日
2018/03/19 21:43

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


「ダモクレスの剣!?」
 高濃度の負のマテリアルで満ちた場所から跳べる場所の再現映像である。
 それは超大型ソードオブジェクト「ダモクレス」と気配が似すぎていた。
「ハンターが見間違えた可能性は? 写真を持ち出すことも出来なかったのだろう?」
 そこは宇宙に浮かぶ巨大な船だった。
 マテリアル関連技術を除けばリアルブルーよりずっと上だ。
 スマートフォンも軍用PDAも易々クラックされた。
 調査に赴いたハンターは歪虚を排除しながら調査を進め、しかし24時間が経過した時点で転送され追い出されてしまう。
「高位覚醒者の知覚力と記憶力を元に再現した映像です。半端な機材で撮った絵よりずっと正確ですよ」
 2徹目の技術者が盛大な欠伸をしつつ説明を続ける。
「問題の領域を異界と呼称します。大部分は宇宙線有りの宇宙空間ですね」
 推定ダモクレスの姿が小さくなっていく。
 仮想のカメラはCAMが複数並んで通れる通路を延々と写し、何度も隔壁を通り抜けてまた代わり映えのない通路を映す。
「ハンターが跳ばされたのはこの建築物です。どう見ても戦闘艦ですね」
 多脚の戦車が画面に現れ、それを通り過ぎてもまた現れる。
 どう見ても100は超えていた。
 通路が延々数キロ続くとようやく外に出る。
 星の光もない黒。
 外宇宙の光景だ。
「拡大します」
 望遠モードに切り替わる。
 おそらく万倍以上拡大すると、狂気のVOIDに似通った形の大型歪虚が最低でも千単位で向かって来るのが見えた。
「この異界の広さは測定不能です。進入後24時間が迫ると狭くなるという報告もありましたが……」
 証言した本人も、次に同じ事が起こるとは断言できないと言っていた。
「そんなことはどうでもいい」
 ロッソから派遣された軍人が、怒りも苛立ちも見せずに淡々と続ける。
「この異界は破壊するしかない」
 科学者がむっとする。冷静な口調を意識して反論する。
「これが何かも分からないのにかね?」
「そうだ。ハンターによる異界の物品持ち出しは失敗している。手に入らないなら壊すしかない。歪虚が外部に持ち出せばただでさえ不利な対歪虚戦線がますます不利になる」
 科学者が機嫌を損ねるが有効な反論が思い浮かばない。
 技術者が猛烈な勢いで目配せする。
 オフィス職員が嫌そうな顔で目配せに応じ、軽く手を叩いて注意を集めた。
「ハンターズソサエティーは当該異界の制圧または破壊をハンターに依頼する予定です。皆さんからハンターに役立つ助言を頂きたいと思うわけでして」
 科学者と軍人が睨み合い、仕事を終えた技術者が眠りに落ちた。
「核だ」
「核じゃ」
 兵器としての核ではない。
 ダモクレスを思わせる灰色円柱こそがこの異界の核であり、この核を倒すことが異界の制圧または破壊に繋がると両者意見が一致しているのだ。
「はい、ですからその手段を」
 科学者と軍人が押しつけあうように睨み合い、両者全く同時にそっぽを向いた。
 どれだけ考えたところで明暗などではしない。
 これまで通り、ハンターの知恵と武力で突破するしかないのだ。


「任せて下さい!」
 聖堂教会から派遣されてきた少女が、すごくいい顔で返事をした。
 彼女はイコニア・カーナボン。
 聖堂教会の司祭であり、今のところスキルに採用されていない広範囲浄化術の使い手であり、何より歪虚討伐に熱心な人間だ。
「戦場では皆さんの指示に従います。絶対にはぐれないようタイミングをあわせて……」
 空間が微かに揺れた。
 精霊の加護を得た覚醒者を砕くには足らず、しかし引きずり込むには十分な揺れだ。
「進入します! ってあれ?」
 空気の中の酸素が薄い。
 隣にいたはずのハンターの姿のはなく、酷く未来的な倉庫の中に奇妙な乗り物がいくつかと負の気配がする人間が数人。
「歪虚……じゃなくて」
 聖堂教会的価値観では歪虚に分類される連中とはいえ今はハンター主導の作戦中だ。
 少女司祭は殺気を笑顔で隠し、これまでの調査で判明した言語を使って呼びかける。
「敵対の意思はありません」
 言い終わる前に、超高出力レーザーが少女の左胸を炭化させた。


 警報が鳴っている。
 最大の危機を告げる、母星系陥落の際にしか鳴らなかった警報だ。
「戦車を全機起動させろ!」
「非番も負傷者も叩き起こせ!」
 人類最後の軍人達が、疲れ果てた体に鞭打ち戦場に向かう。
 敵は突如艦内に現れた人型だ。
 原始的な装束の少女に見えても反応は強力な敵だ。
 放置すれば人類最後の船が落ちる。
 警報が偽りのものであることに、まだ誰も気づけていなかった。


 脳が生きているうちに治癒術が発動。
 すっかり慣れた痛みと共に心臓肺その他が復活した。
「あぶっ」
 勘に従い横に跳ねた直後三角飛びで物陰へ。
 レーザーが床とカソックの端に焦げ目をつくる。
「だから私は敵ではないです! ほら武器放しましたよほらっ」
 唯一の武器であるメイスを投げ捨てるが向けられる敵意は変わらない。
 なお、原因の半分はイコニアにある。
 歪虚人間の多くは彼女の童顔を見て戦意を萎えさせた。
 が、彼女の隠せていない殺気に気づいて攻撃を決意した者が大多数だ。
「もうっ、高位歪虚の気配が近づいて来ているのにぃっ」
 冗談じみて分厚い盾で防ぎながら後退。
 そろそろ本格的にまずい。
 だがもう少しでハンターもこの場に現れるはずだった。


●地図
 扉 扉:格納庫を閉ざす扉。扉の向こうにイコニアと軍人が多数います
 | |:長さが20メートルの通路。どの通路も20メートル級狂気が通行可能
 民 民:民間人に見える歪虚。若い親子連れ中心。44名。
 |
 |
 ハ ハ:ハンター初期位置
 |
 軍 軍:軍人に見える歪虚。8名
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 階――(略)―階―――倉  倉:多脚戦車が百機機以上待機中
 |      |   |
 |      |  (略)
 |     (略)  |
 |      |  (略)
 |      |   |
 |      外   炉  炉:動力炉区画。ボスがいます
 |
 |
 艦 艦:艦橋
   階:立体的三叉路
   外:艦外に出る隔壁



 宇宙戦艦の動力炉であるはずの灰色円柱が、自らの意思をもって浸食を開始した。
 その速度は艦の規模と比較すると酷く遅い。
 多脚戦車を支配するのはさらに大変で、支配した戦車は本来の力を発揮しなくなっている。
 この世界の断片は上位存在が獲得したもの。
 灰色円柱は絶望の24時間を繰り返すことでマテリアルを絞り出し、上位存在に送り出すだけの存在だ。
 だから役割に忠実に従う。
 2度侵入したハンターの3度目の侵入に備え、己に割当てられたわずかなマテリアルを使って戦の備えをする。
 ハンターが訪れない限り元に戻る24時間の中で、何度でも、何度でもだ。
 一度ハンターに砕かれ跡の残った表面が、淡い照明に不気味に照らされていた。

リプレイ本文

●宇宙戦艦RTA
 敗残兵と避難民の船に8人のハンターが現れた。
 想像を絶する技術で造られているとはいえ乗り込んでいるのはただの人間だ。
 若い夫婦と幼い子は呆然と見上げ、疲れ切った軍人達は必死に動こうとしているのに体がついてこない。
 ハンターが動き出す。
 2度に渡る調査でこの異界の状況は把握している。
 その動きはどこまでも効率的で、特にその中の2人が飛び抜けていた。
 2頭のリーリーが跳躍。
 ぶつからないよう器用にタイミングをずらしてはばたき、高い天井ぎりぎりの高度を滑空する。
「鳥っ!?」
 完全に予想外の光景はときに思考を停止させる。
 高出力レーザー銃を構えた軍人の大部分は、銃口の向きを変えることすらできなかった。
「体の重さが違うわ」
 楽しげに駆けるリーリー【レーフォロ】の背で、コントラルト(ka4753)が静かにつぶやいた。
 レーフォロは普段と違う走りを楽しんでいる。
 散発的に現れる軍人を速度を緩めず回避。
 慌てて倒れそうになる者を軽くつついて転倒を防いでやる余裕もある。
「情報通りに歪虚じゃの」
 レーフォロと抜きつ抜かれつするリーリー【リリン】の背で、カナタ・ハテナ(ka2130)が少しだけ物憂げな表情をしている。
 軍人達も、最初にちらりと見えた親子達も、全員が負のマテリアルで構成されている。
 クリムゾンウェストであれば討たなくてはならない相手だ。
「今回が初対面で無く、前2回と繰返し関わり合いになっておれば……」
 もしそうならカナタも多少は同情していたかもしれない。
 そんなことを考えながら、カナタはリリンの背中を軽く叩いた。
 90度方向転換。
 慣性で横向きに飛びつつ思い切り通路を蹴り、立体的な三叉路を鋭角に曲がる。
 重力の角度が違和感なく変わる。
 元の通路から見て壁のはずの通路を、リリンとレーフォロが横1列で走り続ける。
「止まれ!」
「撃つぞ、クソ、これが何か分からないのか」
 威嚇のレーザーがリーリーの後方十数メートルを焼いた。
 人力で照準をあわせる銃では高位のハンターやリーリーの動きに追いつけないのだ。
「説得に何分かかるかしら」
「10分で済めば天才交渉人じゃろ。カナタも手を打っているがの」
 耐久性を重視しとはいえ十分な性能がある地球連合軍用PDAが、一切の操作を受け付けなくなっていた。
 丁度このときCICでは、あるはずのない情報を見つけて騒ぎが起きていた。
 艦内の詳細な地図その他が原始的過ぎる端末に入っていたからだ。
「そろそろ」
「ええ」
 両者の意識が切り替わる。
 それまでも気を抜いていたわけではないが、今は床に落ちる埃の1つ1つまで見分けられそうだ。
 歪虚人間の気配がまばらになる。
 人間サイズの階段をリーリーの足で登り切り、慌てて降りてくる薄い隔壁をコントラルトのデルタレイで壊す。
 元々薄ら漂っていた負のマテリアルが、今では寒気をもたらすほどに濃くなっていた。
 最後の立体三叉路を曲がる。
 そこにあったのはビルが入るほど広大な空間と、そこに散開する多脚戦車が200近く。
 予め命令を下されていた彼等は、動力炉への進入を防ぐために警告抜きでレーザーを照射した。
 跳躍するリーリー2頭。最後に踏み込んだ床をレーザーが無駄に焼く。
 レーザーは光速だ。しかし狙いをつける本体の速度はハンター2人にもリーリーにも大きく負けていた。
 リーリーが着地。
 至近距離に気配のおかしな多脚戦車が7体。
 さらに奥には不用心にも開きっぱなしの搬入口が1つ。
 カナタとリリンはそのまま奥に進む。
 コントラルトはファイアスローワーで操作パネルと上がったままの隔壁を焼いた後、すぐ側にあった大きな空き室へ入り込んだ。
「後は時間稼ぎね」
 堕杖「エグリゴリ」の機械部分が微かにうなる。
 カートリッジに汚れが吸い上げられると、威厳さえ感じられていた空間がどこか寂れて見えた。
 入り口から身を乗り出すとレーザーが着弾する。
 聖盾「コギト」を貫通するほどではないが数をくらえば無視出来ない程度には痛い。
 時折混じっている妙に遅く威力も弱い攻撃は、まだ歪虚化していないレーザー戦車による攻撃だ
「白虹の方が効率が良かったかしら」
 数歩歩くと視界が元に戻ったので、元の場所に戻って再度盾を構える。
 レーフォロは凄い勢いで顔を出しては銃を撃って下がるの繰り返しだ。
 希に被弾しても盾で受けているので深刻なダメージはない。
 だが敵の数はあまりにも多すぎ、1人と1頭は徐々に消耗していっていた。
「む」
 遠くから響く警報に気付き、リーリーを走らせ続けるカナタは思案の表情になる。
 時折響いてきた警報とは種類が違う。
「なるほどの。敵も馬鹿では無い、3度目ともなればそれなりの対策をとってきて当然じゃな」
 実際、艦の至近距離に大型歪虚が現れていた。
 前の2回の情報から正しく推測したカナタは、大胆かつ慎重に敵の中枢へ向かう。
 通路の色は艶のある黒に変わり、まるでどこかの宮殿のようにも見える。
 リリンが器用に小首を傾げる。
 遠くまで続く黒の中、奇妙な白がこちらに伸びてくる。
 黒い石の中を泳ぐ白蛇のように、動力炉の歪虚から伸びる触手がカナタ達に迫る。
 にゃ~ん、と。
 猫の鳴き声に限りなく近い何かと共に、光の波動が黒と白を照らし出す。
 細くはあっても長大な触手が広範囲に焼かれ、存在を保てず消し炭と化す。
「恐らく20m級歪虚も全部呼び寄せとるじゃろうから」
 唐突に階段が1つ。
 飛ぶように駆け上がり、戦車の倉庫よりさらに巨大な空間に入り込む。
 そこは真球に近い空間だった。
 中心を貫く灰色円柱が艦内だけでなく周囲の宇宙からのエネルギーを吸い上げている。
 最もエネルギーを吸い出せるのは、かつて人間で有りおそらく今も人間である歪虚人間達だ。
 無限に繰り返される絶滅までの24時間が、膨大なマテリアルを歪虚にもたらしていた。
「リリン」
 リーリーが斜め前へ大きく跳躍。
 数十の非実体弾が直前までリーリーがいた場所を貫く。
 カナタがリリンに乗ったまま錬金杖を振るう。
 空気が怯えたように揺れて、カナタの周囲から負のマテリアルの大部分が逃げ出した。
「届いたぞ」
 徹底して浄化してようやく、灰色円柱を直視出来ていなかったことに気づく。
 外見は何の変哲もない円柱でも存在感は桁外れだ。
 歪虚王まではいかなくても高位歪虚の頂点近くに見える。
「よそ見をしてカナタに勝てるつもりかの~?」
 にゃーんにゃーん。
 気の抜ける音からは想像もできないほど強力な波動が、灰色円柱を大きく揺るがす。
 建造物サイズなので広範囲攻撃術がとにかくよく効くのだ。
 リーリーが灰色円柱の周囲をまわって猫の声が響くたびに、膨大とはいえ限りのある生命力が目に見えて削られる。
「ぬ」
 カナタの小さな体を衝撃が突き抜ける。
 気道から鮮血が駆け上がり白い歯を赤黒く染める。
「カナタに集中したら異界の制御が甘くなるのではないかの。まーカナタはどっちでもいいんじゃが」
 リリンが転がるように横移動。
 鋭さも威力も増した非実体の散弾が強固な床を削る。
 灰色円柱の行動はそれで終わらず、広範囲に傷ついた己の体を癒やしてさえみせた。
 それに対してカナタは心からの笑みを浮かべる。
「前回の情報より強い。つまり外は前回以上に雑」
 非実体弾の豪雨に襲われ傷ついていく状況で、満足げな吐息をひとつ。
「我らの勝利で確定なのじゃ」
 灰色円柱から負の気配が噴き出す。
 その半分は憤怒。
 残り半分は、恐怖であった。

●司祭超特急
 鳴り響く警報。
 駆け出すリーリー2頭。
 絶望にまみれた歪虚人間の目。
 分厚い扉越しに感じる司祭の気配。
 ユウ(ka6891)はほとんど瞬時に方法収集を終わらせ、アクセルオーバーによる加速を解除せずコンソールの前へ飛び込んだ。
「前回、前々回と同じくイコニアさんは格納庫に飛ばされた可能性が高いです」
 記憶していた通りの仕草で入力を完了。
 下ろされていた隔壁が上がり始め、緊張感に満ちた空気が入ってくる。
「ここは宜しくお願いします」
 思い切り良く足から滑り込む。
 そこでは、たった1人の少女相手に一方的な銃撃が行われていた。
「ちょっとー! 私無抵抗ですよ無抵抗!」
 かなり本気で怒った少女司祭が言葉を発するたびに、濃い正のマテリアルが口から漏れている。
 それは負のマテリアルで構成された人間にとっては有害なものだ。
 元から殺気が漏れ過ぎなので、総合すると殺人鬼あるいは人型のエイリアンとしてしか見てもらえない。
「私達は敵ではありません、お願いです話を聞いて下さい!」
 ユウはイコニアとは違い武装を解除していない。
 龍革の鎧は華やかでありながら徹底して実用的で、背中の大型剣は心得のないものでも分かるほど迫力がある。
 それでも、ユウに向けられる視線は司祭に対するものとは違い多少は暖かだ。
 少なくとも人間に対する視線であった。
「失礼します」
 加速する。
 歪虚人間との距離を格闘の間合いまで詰める。
 壊さないよう手加減に注意した上で、イコニアに向けられていた武器をはたき落とす。
 多少ひびが入ってしまった気がするが我慢してもらおう。
 イコニアの危機に焦っている人がいるし、なにより全く時間的余裕が無い。
「速いっ」
 歪虚人間が動揺する。
 ユウは明らかにイコニアより強い。
 歪虚人間である軍人がまずはイコニアを捕らえようと足を踏み出したとき、鼻と鼻が触れ合いそうな距離にユウの姿があった。
「話を聞いてもらいます。謝罪も賠償もその後です」
 澄んだ黒い瞳が真正面から見据える。
 心胆は十分に練られて武力は見ての通り。
 なのに年齢不相応に純粋だ。
 軍人の肩から力が抜ける。
 なお、ユウの実年齢は最後まで彼等に知られなかった。
「イコニアさん、ご無事でっ」
 隔壁が半ばまで上がり、修理後が目立つR7エクスシアが進入してくる。
 R7の頭部がイコニアを向いた瞬間、滑らかに動いていたはずの巨体が壊れた人形の如くになる。
 少女司祭が小首を傾げる。
 レーザーで焼かれた胸部装甲に大穴が開いている。
 体は癒やせても装備までは癒やせないわけで、つまり少し不健康に白い肌が外気に晒されていた。
「っ」
 滑らかな曲線を忘れようと、カイン・マッコール(ka5336)は何度もコクピットで首を振っている。
「イコニアさん、これを使ってください」
 ユウはマントを外して少女司祭の肩にかける。
 マントに残った体温がささくれた心に染み入るようだ。
 ユウは気づかないふりをして、無言のままマントを巻き付けている。
「うん?」
 不思議そうに何度も目を瞬かせた後、少女司祭はようやく己の状況に気づく。
 上の下着の感触が無い。
 頭を動かさず目だけで探しても、炭が落ちているのが見えるだけだ。
「申し訳ありません、遅くなりました。少しは殺気を抑える努力を方が……僕もゴブリンには殺気は隠せませんけど」
 機体のスピーカー越しにカインの声が聞こえる。
 本人は動揺や顔の熱さを消そうと必死になっている。
 しかしその姿は装甲その他に隠され誰の目にも見えない。
「……にゅぁ」
 見られたのに気づき、イコニアが胸をきつく押さえて赤面する。
 頼りがいがあるなぁとか、どこまで見られたのだろうとか、乱れた思考が元に戻るまで少し時間が必要だった。
「私達は敵ではありません」
 ユウが前に出る。
 さりげなく少女司祭を庇うのは理想の騎士像そのもので、イコニアが先程までとは別の赤面をして混乱する。
「あの敵と戦う際には協力できるはずです」
 ユウはイコニアの異常には気づかない。
 地獄に捕らわれた人々の助けになるために、悪意も、場合によっては暴力も受け止め対話と協調に漕ぎ着けるつもりだ。
 当然のように、全ての武器から手を放していた。
「瀬崎・統夜だ」
長身で恐ろしく鍛えられた体の男が口を挟む。
「この状況に疑問はないのか? 我々は言葉を理解出来て意思疎通も可能だ。それだけでも外の歪虚……敵と比べればましだろう」
 すました顔をする司祭を一瞥する。
 今は殺気は感じられないとはいえ中身は変わっていない。
 歪虚人間の大多数があからさまに警戒していた。
 ひんやりとした気配が歪虚人間の首筋を撫でる。
 落ち着かないよう周囲を警戒するが、気配の元に気づけるほど鋭くはなかった。
 少女司祭の背後を守るように立つエクスシアの中で、カインが眉間に皺を寄せていた。
 操縦桿に触れる指が神経質に動いているのに気づいていない。
 普段の彼からは考えられない状況だ。
「イコニアを撃った軍人に対しては正直に言えば腹が立つけど」
 本人は平常心のつもりでも激情が外へ漏れている。
 極細の針の如き殺気がイコニアを撃った者を貫く。
 軍人はぶるりと震えて落ち着きを無くし、イコニアに敵意を見せる余裕もなくなった。
「終わらせることのほうが大事だ」
 空気は薄く負の気配に満ちている。
 そしてそれ以上に、歪虚人間から漂う絶望の気配が濃すぎる。
「話は終わったな。こいつは貰っていくぜ」
 ボルディア・コンフラムス(ka0796)がイコニアを抱え上げる。
 左手一本で軽々と、手の平しか触れていないのに素晴らしく安定した状態でイェジドの背にイコニアを落とす。
「しっかり捕まってろよ。飛ばすぜイコニア!」
 紅のイェジドが全力で駆け出す。
 リーリーには及ばないがCAMとは比較にならない高速だ。
 元々1人乗りなのでイコニアは荷物扱い不可避。顔色は悲惨なことになっていた。

●最後の子供達
 イコニアが連れ去られユニットや徒歩ハンターがその後を追う。
 すさまじく混沌とした状況だがこれでも最良に近い結果だ。
 人種どころか正負が違う集まりは、混沌で収まらず流血の事態に陥るのも珍しくない。
「ティオー、もういいですよ」
 リアリュール(ka2003)の言葉にユグディラの演奏が止まる。
 攻撃の意思を奪う曲が止まった結果、警報にせき立てられるようにして軍人達が動きを再開する。
「次の曲お願いね」
 リュートから手を放してその場に座り込んでいたティオーは、すごく情けない顔をして立ち上がる。
 人見知りのユグディラにとっては苦行に近い。
 それでもリアリュールを見捨てるつもりはなく、普段より冴えを増した音で優しい曲を弾いた。
「お話があります」
 リアリュールは迷い無く進んで1人の老人の前に立つ。
 ひょとしたら見た目よりずっと若いかもしれないが、星系単位であらゆるものを失ってきた彼は老人以上に擦り切れていた。
「この子達に害を与えないのなら、私に聞けることであれば聞こう」
 時間稼ぎだなと、リアリュールは直感的に正解に辿り着いた。
 艦の近くまで歪虚の大集団が迫っている。
 前回までより危機感が強く、精神的な余裕が全くないはずだ。
「お邪魔します」
 白いエクスシアをから降りてきたのは黒髪のエルフ。
 ほとんど非常識なレベルで整った顔と、細くそれでいて華のある体付きは男女を問わず感情を刺激する。
 もっとも本人は己の美を武器として使わない。
 子供の顔に微かな笑みが浮かぶ。
 若い男女が礼を言おうとして口ごもる。
 リュンルース・アウイン(ka1694)がとてつもなく儚く見えるのだ。
 哀れむのでも、見下げるのでもなく、己に出来る範囲ぎりぎりまで救おうとする強い意志。
「あなたは……」
 リュンルースと同年齢に見える男は最後まで口にできなかった。
 最後まで言ってしまえば、薄々感じている滅びが現実になる気がした。
「音による無力化技術か。随分進んだ技術のようだ」
「この子が皆さんを思って演奏しただけです。ね?」
 リアリュールがユグディラを抱き上げる。
 知性と愛嬌を兼ね備えた猫型幻獣は尊くさえ見え、幼子から夫婦までが穏やかな顔になる。
 ちなみに、抱き上げられたティオーは緊張で体を強ばらせていた。
 穏やかな顔で向かい合うリアリュールと歪虚人間の間に、国家間交渉じみた圧力と駆け引きの気配を感じているのだ。
「警報鳴らしたのは私達です」
 リアリュールが踏み込んだ。
 あえて自勢力の非を認めることで話題の誘導を計る。
「ここは、貴方方が思っているより危険です。非戦闘員を脱出艇に乗せて逃げて欲しい」
 焦りは表に出していないけれども、リアルブルー基準で将官にあたるこの歪虚人間には見抜かれただろう。
「見返りは?」
 時間がないのは相手も分かっている。
 返答を引き延ばすことはせず自分からも踏み込む。
 リアリュールは緊張していた。
 表情だけでなく、思考や価値観まで見られている気がする。
 目の前の老軍人は強くはない。覚醒抜きでもリアリュールなら指1本で制圧可能だ。
 が、交渉人や政治家としての経験値が違い過ぎる。
 だからリアリュールは、誠実にぶつかることで対抗する。
「私たちが敵を何とかするから隔壁を開けて邪魔しないで。できれば一緒に戦って欲しいけど」
 難しいのは分かっていると、目だけで言って話を続ける。
「この状況の原因は動力炉よ。壊れているのは艦橋で確認すれば分かるし、影響が出るから証明もすぐに終わる」
 証明が終わってから動き始めても手遅れだ。
 その程度のことは分かるでしょうと、リアリュールは口に出しては説明しない。
「どうして」
 種族最高の人材の1人が、ひび割れたような笑みを浮かべて呻いた。
 どうして滅びが確定する前に来てくれなかったのかなとど、意味の無いと分かっている言葉を脳内で空転させる。
「すまない、今のは忘れてくれ。我々に戦力が足り無いのは認めよう。脱出艇の安全確保に協力してくれると助かる」
「ではそういうことで」
 子供を今すぐ連れて行くつもりはないということだ。
 リアリュールは迷わず馬に乗り、遠未来にはクリムゾンウェストにあるかもしれない船の中を駆けだした。

●星間文明の抵抗
 複数世界に名声を博するハンターでも失敗はする。
 歪虚討伐などの困難に立ち向かっているのだから当然だ。
 不十分な情報をもとに戦い生き延びるだけでも偉業といっていい。
 そんなハンターが、同じ状況を2度繰り返し3度目になるとどうなるだろうか。
 その答えの1つがハンス・ラインフェルト(ka6750)の目の前にある。
「我々は貴官らと異なる星系から派遣されたハンターである」
 堂々と宣言するマリナ アルフェウス(ka6934)に対し、艦長である歪虚人間は動揺を隠せない。
 所属不明の、そもそも人間でもなさそうな存在がセキュリティを突破し直接艦橋に回線を繋げたのだ。
 これで人類も終わりと絶望しないだけでも十分精神が強い。
「我々は貴官らに戦力を提供する。かわりに協力・連携を要求する」
『回線を切れ!』
『艦長! 機密情報が』
 丁度このタイミングで、カナタの端末内の情報が艦長以下の元へ届いていた。
 見慣れぬ徽章を震わせ艦長がオートマトンを凝視する。
 彼女の人間より人間らしい顔は機械じみた鉄面皮だ。
 それが使い慣れない言語に全力投球しているからだと気づける人間は、残念ながらこの異界には1人にもいない。
「我々は貴官らに戦力を提供する。かわりに協力・連携を要求する」
 強引極まる交渉術。
 ハンスがちょっとひくほどだから相当だ。
 だからこそ効く。
 カナタが布石を打ち、マリナが情報で殴りつけ、取り得る手段が僅かしか残されていないことを突きつけた上でハンスが動く。
「貴方方にも見ていただきたいのです」
 ハンスが穏やかに、かつ切々と訴えかける。
 あえて間をつくることで注意を惹きつけるのも忘れない。
「この鑑はもう歪虚に侵食されかけている。多脚戦車は貴方方の管理を離れ、歪虚の手に落ちた」
 艦内が広すぎるため、倉庫や艦中枢に向かった面々とは連絡がとれていない。
 だが前回を思い出せばこの程度簡単に推測できる。
「この船と人々を守るためにも私達は動力炉に巣食った歪虚を排除しなければならない」
 微かに陰りのある目で艦長達を見る。
 自らの力不足を指摘されたと感じ、艦長はともかく部下達の感情が大きく乱れる。
 激し始める2歩手前のタイミングでハンスが穏やかな表情をつくる。
「そして通信システムから敵に制圧され始めた以上、貴方方は自分の脚で艦橋や格納庫に状況を伝えに行かなければならない」
 これも推測だ。
 前回と前々回なかった警報が激しく鳴っていることから、歪虚による回線汚染を推測しただけだ。
「私の機体は通信用でしてね、この船の大まかな内部構造や歪虚の発する負のマテリアルが分かるのです」
『貴様が、我らの最後の母船をっ』
 憤激する軍人がカメラに写らない場所に連れて行かれる。
 艦長はさすがに動揺を表に出していないが、ハンスの言葉を半分ほど信じ込んでいる。
 もちろんハンスの言葉ははったりである。
 そんな緊迫した交渉の現場に、唐突にひづめの音が響いた。
「先に向かう」
「武運を」
 マリナはこくりとうなずき、すらりとした馬を駆って通路の向こうへ消えた。
 歪虚人間は混乱している。
 生きた馬を移動手段として使うなど、彼等にとっては古代の光景だ。
「全員でついてくるのは不安でしょうから、半数で構いません。私について多脚戦車のいる倉庫まで来ていただきたい」
 魔導型デュミナスへ乗り込みマリナを追う。
 歪虚の首魁について話してもすぐには納得できないだろう。
 戦い実績を示すことで歪虚人間達を誘導する予定だった。

●レーザー飛び交う戦場で
 もとはデブリを打ち落とすためのレーザーだ。
 原始的な運動エネルギー弾など、100発百中で打ち落とせるはずだった。
 リーリーの足音が連続する。
 ほぼ勘だけで横に跳ねて戻って10近くのレーザーを回避する。
 銃声。
 防御もレーザーに全振りした多脚戦車が、装甲を抜かれ発動機を壊され沈黙した。
 レーフォロは気を抜かない。
 魔導銃へ器用に再装填しながらじりじりと下がり、牽制気味に打たれたレーザーから逃げ続ける。
 コントラルトが引き金を引く。
 こっそり回り込もうとしていた戦車を射貫いて擱座させるが、次に出てきた戦車は装甲が別物じみて厚い。
 レーザーが来る。
 負のマテリアルたっぷりのそれは光とは比べものにならないほど遅く、それでいて同程度の威力と防ぎにくさがある。
「相手が兵器なのはいいわね」
 ライフルから盾と杖に持ち替え術を使う。
 3つの光の線が分厚い装甲を無視して反対側に突き抜けた。
「手加減は普段から出来るほど強くもないし、苦手なのよね」
 歪虚化した戦車から歪虚の要素が抜ける。
 ただの残骸以下の何かに成り下がり、パーツ単位に分かれながら通路へ転がった。
「そろそろ限界?」
 狭くなった通路に立てこもり多脚戦車を20以上撃破してきたのだが、新手の戦車に占める歪虚の割合が急上昇している。
 スキルを使わない限り一撃必殺とはいかず、このままではレーフォロもろとも撃破される可能性があった。
「おらどけぇ!」
 歪虚化戦車の隊列が大きく乱れた。
 後ろから押されるように新手が現れ、いきなり巨大な刃が現れ纏めてなぎ払われる。
「ありがとよ。おかげで速く来れたぜ」
 ボルディアが獰猛な笑みを浮かべる。
 無茶をしても鎧が熱くなった程度で済んだのは、コントラルトが敵を引きつけていたからだ。
 撃墜数が勝っていても、現時点では作戦への貢献度的に大きく負けている。
「感謝は戦果でお願いしますね」
「応よ」
 ボルディアはにやりとしてイェジドを駆けさせる。
 後ろに詰まれた少女司祭が、消え入るような情けない悲鳴をあげていた。
 さらなる増援が流れ込む。
 全て歪虚化戦車でありスキルの残数が5割を切った今倒しきれる相手ではない。
「カナタさんは成功したようね」
 歪虚が軍から群れに変わる。
 人外の思考速度と悪意を煮詰めたような戦術は消え、ただ強いだけの歪虚が押し寄せる。
 この程度なら、後数分は持ち堪えられる。
「目標視認。装備換装Type-SからType-A」
 コントラルトから見て百数十の戦車を挟んだ反対側に、オートマトンと馬1頭が現れた。
 戦力比は絶望的。
 歪虚人間なら断腸の思いで決断を命じる戦況だ。
「敵戦力の排除を開始」
 マリナはなんでもないことのように宣言し、100近い歪虚の中心へと跳び込んだ。
 芋洗い状態である。
 レーザーを照射しようにも他の多脚戦車が邪魔で、無理に照射しても厚くなった装甲が邪魔でマリナまで届かない。
 いくつかは擦り抜けマリナに迫るが、1発2発当たって落ちるほど貧弱では無く3発当たるほど鈍くはない。
 非常識な勢いで連射された銃弾が戦車を貫く。
 マリナが狙ったのは歪虚化されていない戦車だ。
 スキルの性質状弱まった威力でも簡単に貫通することができ、3連射の間に大きく数を減らす。
 そして、残った歪虚戦車がマリナが来た方向へ逃げ出した。
 マリナに対する攻撃も牽制もない。
 どうやら歪虚人間が攻撃対象からマリナを外したようだ。
 マリナは戦闘用鉄面皮のまま安堵していた。
 好き好んで歪虚人間の戦力を削っていたわけではない。
 歪虚化の材料を減らすと同時に、対歪虚戦では実質役立たずの戦力を削ることで歪虚人間に圧力をかけていたのだ。
「最終段階に移行する」
 増援の当てを無くした戦車30両が、搬入口とマリナを囲む形で包囲網をつくり上げた。
「詰め将棋ですね」
 プラズマの光が歪虚化戦車を照らし出す。
 2条の光が分厚い装甲を破壊。
 マリナを焼く可能性があった負マテリアルが無意味に周囲に飛び散った。
 魔導型デュミナスがスラスターを吹かす。
 飛ぶというよりすり足じみた動きで横へ飛び、迎撃のレーザー二十数本を見事躱し切る。
 マリナが搬入口から奥へ。
 これでコントラルトに増援を送ることができた。
「結果的に英雄的になるのがハンター業、ですか」
 開発当時と比べると洗練されたインターフェースが危機を知らせる。
 直撃すればコクピットを貫く光が次々に迫り、しかしハンスの機体を捉えられない。
「悪くはないですね」
 苛立つ歪虚戦車が不用意に距離を詰める。
 近づけばプラズマライフルを使えないだろうという、浅知恵だ。
 ハンスの顔に薄い笑みが浮かぶ。
 繊細に動く指先が魔導型デュミナスを操り、レーザーを受け流した動きから斬撃の動きへ繋げる。
 それはハンスの剣術そのものだった。
 儚くもどこか禍々しさを感じさせる花びらが戦車の動きを乱し、花びらに紛れた刃が分厚い装甲ごと戦車を斬る。
「生体金属? 既に技術は失われたはず……」
「まさか現実改変系兵器? だとしたら彼等は」
 安全な後方で見守る軍人達は、全員まとはずれな感想を抱いている。
 覚醒者が兵器の力を限界以上に引き出すという発想自体がないのだ。
「良くない傾向だ」
 歪虚戦車の回避能力は並程度のCAMに匹敵する。
 花びらはそれを乱すだけでなく装甲をも弱化させ、ハンスのスコアを増やす助けになる。
「楽しくなってきた」
 3分の1を失った歪虚戦車が一斉射撃。
 ハンスは攻めから守りに切り替え斜め後ろへスラスター移動。
 肩と胸に1発ずつ被弾しつつ目的の位置へ。
 その後ろを身軽なドラグーンが駆け抜け、少し遅れてエクスシアが続く。
 どちらも目的は艦の中枢。
 カナタが時間を稼いでボルディアと他1名が参戦しているはずの動力炉だ。
「聖導士のようにはいきませんが」
 ハンス機の関節部の亀裂が内側から癒えていく。
 歪虚人間が騒ぎ出すがハンスの心は冷えている。
「自覚無しか」
 彼等は餌だ。
 負の感情により負のマテリアルを発生させ、無自覚に歪虚に献上する敵の一部だ。
「必要が無いのが一番ですね」
 1機ずつ確実に斬り捨て、遠距離戦にはプラズマの連射で応じて戦闘を継続する。
 万一彼等が絶望に陥ることがあれば、なすべきことをなすつもりだった。

●万が一の生存
 惑星規模の天変地異に耐えるはずの外壁が、負のマテリアルに耐えられず強度を失い外側からこじ開けられた。
 淀んだ空気に動きがうまれる。
 固定されていない工具が浮かんで数十センチ開いた亀裂に消えた。
「中に急いで。ティオーは演奏を止めてこれを」
 別れを惜しむ子供を脱出艇に押し込んだ後、リュートを抱えて慌てるユグディラにはマスク状の護符を貼り付ける。
「意味はないかもしれないけど」
 搭乗口が完全に閉じたのを確認してから言葉にする。
 避難民の生存の可能性は限りなく0に近い。
 彼等を無視すればより効率よく作戦を進めることができる。
 だけど、チャンスを奪う気にはなれなかった。
 複雑な空気の流れに矢をのせる。
 拳銃弾と比べても強くは無いただの矢が、付加されたマテリアルと何よりリアリュールの技によって凶器と化す。
 2本の矢が巨大鉄クラゲの頭部を壊して核を砕く。
 残る1本は消えゆく歪虚をすり抜け後続の鉄クラゲに深手を負わせた。
「私が先行します。着いてきてください」
 白いエクスシアが風の進行方向へ走る。
 脱出艇は自ら重力を発生させて浮かび、ゆっくり加速してエクスシアを追う。
「皆さんは私が守ります」
 黒髪のエルフがスピーカー越しに語りかける。
 おそらくはもう聞こえてないだろうが言わずにいられなかった。
 絶望に心がひび割れた親子など、仮に彼等が幻に近い存在だとしてもそのままにはしたくない。
 外壁の割れ目から固体にすら思えるレーザーが降り注ぐ。
 脱出艇を守るためには回避は出来ない。
 リュンルース機は盾で防いで前進を継続。本体にも損傷を受けながら本来の出口へ向かう。
「切りが無い」
 リアリュールが金魚鉢型ヘルメットを被る。
 ワンピースの上には薄手に宇宙服。
 恐ろしく高価な品だが依頼の重要度故に無料で貸し出されている。護符もこれほどではないが高い。
 3連射を連続する。
 亀裂から入り込もうとしていた狂気VOIDもどきが次々消滅するが、新手が途切れること無く現れ続ける。
 亀裂の前をエクスシアが通過してから振り返る。
 弾数の限られた魔銃を思い切り良く使って新手を倒し、脱出艇が前を横切るための時間を稼ぐ。
「戦車と合流されたら終わりね」
 リアリュールは亀裂を覗き混んで断定した。
 星すら無い闇の中に、少なく見積もっても3桁後半の歪虚が散らばっている。
 その中の最も近い歪虚に矢を放つ。
 空気抵抗もないので素晴らしく遠くまで届く。
 反撃は激烈だ。
 数が壮絶なのでたまたま亀裂に届き、偶然にリアリュールに当たりかけ、その上で奇跡的に防御を抜くレーザーが1つ2つではない。
「痛い目は好きではないのだけどね」
 ティオーが気合いで癒やしの曲を奏でているが全く足りない。
 器用にポーションを飲み干し、リアリュールは絶望的な防衛戦に励む。
 外側から歪んだハッチを、魔術による吹雪が砕いた。
 マテリアルハルバードで残骸を処理。
 ふらつく脱出艇を外へ連れ出すと、無限の闇が出迎えた。
「これが」
 宇宙が脈打っている。
 無限遠と精々数十キロが入れ替わり、しかし色のない闇はそのままだ。
 ここは艦の中枢への進路からは外れている。
 歪虚の数は他より少なく、それでも3桁近くの鉄クラゲがこちらに向かって来ている。
「可能性が0でないのなら」
 ハルバードから雷が伸びる。
 巨体を串刺しにして中を焼き尽くす。
 歪虚は消える途中で後続の同属に押しつぶされる。
「っ」
 リュンルースには死ねない理由がある。
 脱出艇を庇いながら丁寧に躱し、防ぎ、いざというとき元の場所に戻れるようスラスターは温存する。
 流れ弾が船をかすめる。
 船の小さな揺れが、子供の悲鳴のようにも感じられる。
 きっとイコニアの意見の方が正しいのだろう。
 どんな理由があろうと歪虚は歪虚だ。
 共にあるにはあらゆる意味で害が大きすぎる。
 だがそれでも、リュンルースは心を通じた子供達を見捨てられない。
 宇宙船が徐々に遠くなる。
 サルバトーレ・ロッソを上回る船体は現実感を見失わせるほどに大きい。
 唐突に船体にひびが入る。
 質量を耐えきれなくなったようにゆがみが生じて拡大する。
 歪みは船体に留まらずに空間まで拡大。
 リュンルース機の目の前に、何かに通じる亀裂が生じた気がした。
 ありがとう。
 音も電波も精霊の加護すらない宇宙で確かにその声が聞こえた。
 脱出艇に残された超高速機関が最後の力を絞り出し、二度と帰れぬ場所へ自ら飛び込んだ。

●灰色円柱
 無色、無臭、無音の弾丸が3桁後半降り注ぐ。
 迎え撃つのは暴徒鎮圧用の盾。
 リアルブルーの現代装備とはいえ、あくまで警察活動用である。
「おいイコニア気合いを入れろ! 負マテのくっせぇ臭いが来てるぞ!」
 魔術的にもマテリアル的いも強化された盾は十数の銃弾を防ぎきる。
 他の弾丸はボルディアとイェジド【ヴァーミリオン】に追いつけずに綺麗な床を傷つける。
「ぅぷっ」
 乙女が出してはいけない声をもらしながら、強硬派とも過激派とも呼ばれる聖堂教会司祭が祈りの姿勢をとる。
 球形状の空間が悲鳴をあげる。
 満ち満ちていた負のマテリアルが外側に押しのけられ、銃弾と歪虚本体を隠していたものがなくなった。
「そっちにもいったぞ!」
「気にしないでください。カナタさんの護衛も私が……っていない?」
 浄化系技術を除けば格上のハンターは、とっくの昔に安全圏を見つけて待避をすませている。
 分厚い金属が歪む音が連続する。
 ぼろぼろの盾を構えたまま、少女司祭が必死の思いで浄化の術をかけ直していた。
「気を抜くんじゃねぇ!」
 前だけを見て突進する。
 死角から弾丸数十が迫るが、盾から持ち替えた巨大戦斧で打ち落とす。
 足下に白い触手。
 ヴァーミリオンはさらに加速することで躱し、ボルディアは斧を旋回させ一度で全て破壊する。
「焦ってるじゃねぇか、あァ?」
 犬歯を剥き出しにする。
 触手は何度全滅させてても新手が伸びて来る。
 半透明の弾丸は相変わらず躱しにくく、数が膨大故にボルディアですら全ては防げない。
 イェジドもライフリンクの支援があるからなんとか戦闘力を維持できている。
「ホントはこの"牧場"で死んだ人間の回数分殺してェが、時間がねぇ」
 足だけの力でイェジドの背に立ち、半透明弾の豪雨の中を飛び降りる。
「代わりに消滅しても忘れられねぇ痛みを刻んでやるよ!」
 正マテリアルが爆発的に燃え上がる。
 戦士として均整のとれた肢体が比率そのままに巨大化。
 炎そのものとなり輝く刃を水平に振るう。
 この船の外壁より硬い外皮が刃で裂け、膨大かつ複数種のマテリアルを含むエネルギーが刃との接触点を消し飛ばす。
 ボルディアが咆哮し四肢が一回り逞しく。
 高位歪虚本体で遮られているのに速度を緩めず最後まで振り抜く。
 灰色居円柱が大きく揺れる。
 呆気ないほど軽い音が聞こえた数秒後、床から4メートルの高さで灰色円柱が上下に切り離された。
「あン?」
 目に違和感。
 斧を90度持ち替えて下段から振り上げ、乱れる軌道を強引に修正。
 円柱の末端が2つに裂けて小さなひびが無数に入る。
 ひときわ大きく円柱が揺れる。
 上端から船全体に巨大な激震が広がった。
「ヴァーミリオン!」
 牙を振るっていたイェジドが真後ろへ跳ぶ。
 主の意に従い司祭を助けようとしたのだが、肝心の司祭は白い触手にぐるぐる巻きにされて顔を青くしていた。
 艶っぽさは皆無だ。肉どころか骨まで食い込んでいる。
 酸欠で酷い顔色のまま、浄化を再度かけようとして失敗する。
 銃弾すら撃ち落とせるはずの戦斧が空を切る。
 半透明の銃弾が透明に戻ってボルディア主従の体力を削る。
 灰色円柱がクラックして封じていたはずの扉が、内側から力任せに蹴り開けられた。
「イコニアさん、無事ですか!」
 ユウの手から手裏剣が飛んだ。
 イコニアの胸、ではなくその上に巻き付いた触手に刺さる。
 ユウは柄に込めたマテリアルを目標に己の体を加速させた。
「今いきます!」
 速度を緩めず 魔導剣を上から下へ。
 10近い触手が両断されると同時に、司祭の胸から腹にかけて盛大に血が噴き出した。
 イコニアは、心底嬉しそうに口元をほころばせる。この程度では死なないと信頼されているのが嬉しい。
 治癒にはマテリアルを回さず浄化に集中。
 最大のダメージ源であるボルディアの援護を徹底する。
「あり」
 がとうございますと言い終わる前に、鮮血が逆流して口から飛び出した。
「無事ですね。ほっとしました」
 ユウに罪悪感は皆無だ。
 高位歪虚相手ならこの程度日常茶飯事。
 重要部位を裂けて斬っただけも十分以上に優しい。
「い、イコニアさんっ!?」
 もっともそう思えるのは歪虚討伐に人生の大半を捧げている面々だけだ。
 ゴブリン全滅に人生を捧げているカインなど、激しく動揺してエクスシアを転倒させかけた。
「これで全員か」
 瀬崎・統夜(ka5046)の魔導銃が弾倉の全弾を吐き出す。
 付与されたマテリアルが光に変わって弾道をねじ曲げ、血まみれ司祭の足下まで浸食してきた白触手6つに直撃する。
 触手の動きが酷く悪くなる。半死半生のイコニアでもなんとか回避することができるほどに。
「壁歩きが必要なほどの障害物も無し。銃以下の間合いは素人か」
 上方から降ってくる灰色片を躱しながら円柱の根元へ向かう。
 異界の主は残された負マテリアルを吸い上げて己を再生。
 再生された先端部から猛烈な勢いで半透明銃弾を乱射する。
 統夜は神殿の柱ほどもある灰色片の影へ滑り込む。
 射線が通っていないが問題ない。
 脳内で素早く計算を終え、遠未来的な強度を保つ床に銃撃を浴びせた。
 跳弾が直撃して灰色円柱の集中が乱れた。
 目の前にボルディアがいるのに誰もいない後方に意識を向ける。
「3、2、今!」
 統夜が飛び出し別の灰色片の陰へ。
 灰色円柱は敵の数を減らそうと統夜に攻撃の半分を向ける。
 そのタイミングで、ボルディアとも別の方向からマテリアルの光が突き刺さる。
「よくも」
 カインの放つ殺気はゴブリンに対したときのようだ。
 容赦のない銃撃を行い、しかし灰色円柱の表面を削る程度でほとんど効いていない。
「イコニアさんを」
 司祭本人は治癒術1回で地力回復して元気にメイスを振っている。
 これが見えていなければカインは暴走していたかもしれない。
「僕が囮になります。体勢の立て直しを」
 返事は無い。
 歪虚に情報を与えるほどうかつでは無いからだ。
 銃弾を避け、避けきれないものは装甲で耐え、移動速度の低さを全力移動で補い距離を0へ。
 奥歯を噛みしめ目の前の敵へ集中する。
 CAM基準でショートソードサイズの刃が大きく振るわれ、射撃時とは大違いのダメージを与え、また反撃を受ける。
 被害は与えた被害を上回っている。
 動力に異常が生じHMDの調子も悪い。
 それでも攻撃を続ける。
 その巨大さ故に逃げられない灰色円柱を、ボルディア達とは別方向から叩いて叩いて叩き続ける。
「まだだ」
 擱座したエクスシアから飛び降りる。
 射撃戦能力を除けばCAMに匹敵する戦闘力を発揮。
 避けきれないと判断した大技は鎧で受けて被害を減らし、CAMが使った刃より長い刀で灰色を削る。
 カインの視界が一瞬赤く染まった。
 受けの比重が高いカインの戦闘スタイルは、不運な一撃による即死は防げても長時間戦えば必ず限界に達する。
 少女司祭が気づいて癒やしの術を使おうとするが、カインは身振りで激しく拒絶する。
 あからさまにショックを受けているのが見えても撤回するつもりはない。
「(イコニアさんの手前カッコつけないと)」
 積み重なるダメージはカインの内側にも及んでいる。
 五感も怪しくなってきているし衝撃を受け続けた内臓が他人のもののような感覚だ。
「(ああ、これは勝てないな、息苦しくて逆に息苦しくもなく、痛すぎて逆に痛くない)」
 激しい戦闘がぶっ続けなので酸素も足りない。
「(でも未だ動いて斬りつける余力が残っているなら!)」
「がんばれー!」
 ただの少女としての声援に、カインは兜の下で微笑んだ。
 弾倉に銃弾が送り込まれる音が、天井近くで生じた。
 灰色円柱が慌てて意識を分けて振り向けると、いつの間にか消えていた統夜が天井に張り付いていた。
「戦いは定石の応酬と創意工夫だ」
 立ち上がる。
 壁歩きのスキルと無重力空間用接地靴が天井に統夜を固定する。
「全身全霊をかけて倒す」
 最後のリトリビューション。
 とっさに出した白触手と本体の動きが乱れ、動きの制限された統夜にも攻撃が当たらない。
 統夜は無言で近づく。
 何度も力を吸い出された結果すっかり脆くなった天井との接続部分に、渾身の力を込め蹴りを繰り出した。
 最初の数センチのひびが生じ、一気に反対側まで広がった。
 ひびとひびが繋がり亀裂が急速に育っていく。
 灰色円柱の巨体と重さを考えれば落下の衝撃で崩壊しかねない。
 少しでも衝撃を防ごうと、下端部から大量の触手を伸ばす。
「テメェのツラは二度と見たくねぇ! チリも残さず燃え尽きろォ!」
 魔斧モレクが全ての、本当に全ての触手を消し飛ばした。
 床を軽く蹴っただけでボルディアの体が6メートル近く後ろへ。
 ビルディングより硬く重い灰色円柱が、もっと重く硬い炉心外壁へ勢いよく当たり、過去最大の衝撃を受けとる。
「まだ生きてやがる」
 円柱の各所が弾けて負のマテアルが噴き出す。
 状態異常攻撃ではなく血にあたるマテリアルであり、司祭が必死に張った結界により見る間に浄化される。
「はなしてっ」
「向き不向きを考えてください。下がります!」
 イコニアを小脇に抱えたユウが、制御を失い暴れる触手を切り捨てながら炉心外に向かっている。
「となると……あの辺りか」
 統夜は攻撃には参加せずそのときを待っていた。
 複雑な部品をまき散らして崩壊していく灰色円柱の上端から、翼とも骨ともいいがたい何かが浮き出て統夜に気づいて止まる。
 銃撃が当たる。
 戦闘で全ての力を使い尽くした歪虚は躱すことも防ぐこともできず、穴だらけになり崩れ落ちる。
 これが核だったのだろう。
 灰色円柱が一度だけ目映い光を放ち、最初から存在しなかったようにこの世から消えるのだった。

●終焉を見送る
 マリナが馬に乗って駆け抜けると、軍人の体についた傷が薄くなりあるいは完治する。
「本来は衛生兵ではないが」
 口を開いた状態で一瞬動きが止まる。
 盾を無意識に動かすことで負マテリアル混じりのレーザーを受ける。
 白銀の魔導銃で反撃。狭い通路の挟まった多脚戦車が動力を破壊される。
「終わったようだ」
 負のマテリアルの流れが止まっている。
 艦内には全てあわせて30程度の多脚戦車が生き残り、艦の外には無数といえる狂気もどきが漂う。
 だがもう統率するものはいない。
 感慨の歪虚の一部は、互いに食い合いまで始めていた。
「子供達は行ったか」
 老人が安堵のため息をつく。
 最後の心残りが解消されたことで、呼吸すら苦しくなりその場にへたり込む。
「……君も行きなさい」
 心配そうにするユグディラに笑いかけて目を閉じる。
 老人だけではない。
 24時間を無限に近い回数繰り返した歪虚人間達が、すり切れた魂と体を最後に船に横たえる。
「脱出艇への協力、ありがとうざいました。ティオーも頑張ったね♪」
 静かな時間が流れ、ハンターと幻獣達以外の全てが薄れ、気づいたときには負の気配に満ちたクリムゾンウェストにいた。
「敵ながら合理的ね」
 止血を済ませたコントラルトは深刻な表情だ。
 あの異界は消えた。
 残っているのは記憶だけだ。
「何度も繰り返してマテリアルを搾り取るって」
 悪魔でも眉をしかめる悪行だ。
 だが人類も出来る環境なら似たようなこと始めるだろうし、コントラルトも反対しない。
 対歪虚戦争は戦争というのすら生ぬるい滅ぼし合いだ。倫理を大事にし過ぎて滅ぶなど絶対に我慢できない。
 唇をきつく結んで視線をずらす。
 機体から降りたリュンルースが、激情を堪え顔を伏せている。
 罪も無い子供もどこかへ消えた。
 無事である、または無事であった可能性は決して大きくはない。
「戻りましょう」
 ハンター達が帰路につく。
 待っているのは友と同胞、そして歪虚との戦いである。

依頼結果

依頼成功度大成功
面白かった! 10
ポイントがありませんので、拍手できません

現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!

MVP一覧

  • よき羊飼い
    リアリュールka2003
  • 猫の守り神
    カナタ・ハテナka2130
  • 最強守護者の妹
    コントラルトka4753

重体一覧

  • 猫の守り神
    カナタ・ハテナka2130
  • 最強守護者の妹
    コントラルトka4753

参加者一覧

  • ボルディアせんせー
    ボルディア・コンフラムス(ka0796
    人間(紅)|23才|女性|霊闘士
  • ユニットアイコン
    イェジド
    ヴァーミリオン(ka0796unit001
    ユニット|幻獣
  • 道行きに、幸あれ
    リュンルース・アウイン(ka1694
    エルフ|21才|男性|魔術師
  • ユニットアイコン
    カサブランカ
    カサブランカ(ka1694unit002
    ユニット|CAM
  • よき羊飼い
    リアリュール(ka2003
    エルフ|17才|女性|猟撃士
  • ユニットアイコン
    ティオー
    ティオー(ka2003unit001
    ユニット|幻獣
  • 猫の守り神
    カナタ・ハテナ(ka2130
    人間(蒼)|12才|女性|聖導士
  • ユニットアイコン
    リリン
    リリン(ka2130unit001
    ユニット|幻獣
  • 最強守護者の妹
    コントラルト(ka4753
    人間(紅)|21才|女性|機導師
  • ユニットアイコン
    リーリー
    レーフォロ(ka4753unit002
    ユニット|幻獣
  • 【魔装】希望への手紙
    瀬崎・統夜(ka5046
    人間(蒼)|28才|男性|猟撃士
  • イコニアの夫
    カイン・A・A・カーナボン(ka5336
    人間(紅)|18才|男性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    ムメイ
    -無銘-(ka5336unit016
    ユニット|CAM
  • 変わらぬ変わり者
    ハンス・ラインフェルト(ka6750
    人間(蒼)|21才|男性|舞刀士
  • ユニットアイコン
    マドウガタデュミナス
    魔導型デュミナス(ka6750unit003
    ユニット|CAM
  • 無垢なる守護者
    ユウ(ka6891
    ドラグーン|21才|女性|疾影士
  • 青き翼
    マリナ アルフェウス(ka6934
    オートマトン|17才|女性|猟撃士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
カイン・A・A・カーナボン(ka5336
人間(クリムゾンウェスト)|18才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2018/03/13 14:54:18
アイコン 質問卓
ボルディア・コンフラムス(ka0796
人間(クリムゾンウェスト)|23才|女性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2018/03/11 10:02:41
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/03/10 11:58:53