ゲスト
(ka0000)
流行の怪しげな召喚術
マスター:ザント

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~4人
- サポート
- 0~20人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 少なめ
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/03/24 07:30
- 完成日
- 2018/03/31 00:33
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「朝から先生たちが歩き回ってるけど、何かあったのかな」
「生物部が飼っていた魔法生物が逃げ出したらしいよ」
「うわぁ。ちゃんとしてよ生物部」
ここは街にある魔術師学校の教室で、魔術師の弟子である生徒たちは学校と寄宿舎を日々往復し、魔術を学んでいる。
「あ、そうそう。昨日、精霊さんをやったんだよ」
「誰と?」
「ロイ君と! それでロイ君が好きな子を聞いたら……私だって!」
「嘘! それでそれで?」
「それでね……」
その教室で、同級生の話に聞き耳を立てる生徒がいた。
「精霊さん、ね」
「や、やっぱり怖いよぅ」
「何言ってるのよ。ただの遊びでしょ」
「でも、遊びでやるのはやめといたほうがいいんじゃない?」
真夜中の一室で三人の少女がランタンに火を灯し、テーブルを挟んで向かい合っていた。
彼女たちは同じ魔術師の弟子で、魔術師学校の生徒だ。
因みに強気な少女はミラ。怖がりなのはリゼッタ。真面目なのがマインだ。
「マインは相変わらず真面目ね。皆やってるし、それに師匠が魔術に限らず、型に嵌らないことも重要だって言ってたでしょ」
「確かに言ってたけど……」
マインがミラの言葉を肯定すると、ミラはリゼッタに目を向ける。
「リゼッタも。此処まで来たんだから付き合いなさいよ」
「わ、分かったよぉ」
リゼッタも頷いたのを見て、ミラは一枚の硬貨を取り出した。
テーブルの上には一枚の紙が置かれており、その紙には『はい』と『いいえ』と無数の文字、そしてツボの絵が書かれていた。
紙に硬貨を置き、三人はその硬貨に人差し指を置く。
彼女たちが今から行うのは、魔術師学校で流行している召喚術だ。
「ルールの再確認よ」
ミラがルールを再確認し、二人はそれに頷く。
「それじゃあ始めるわよ。せーのっ」
「「「精霊さん、精霊さん、どうぞおいでください。もしおいでになられましたら『はい』へお進みください」」」
言葉に反応するように硬貨がゆっくりと滑るように動き出した。
「早速来たわね!」
目を輝かせるミラの前で、硬貨が『はい』の場所で止まる。
「それじゃあ、早速質問を……」
(ん? 今、指に何か……気のせいか)
「まずは私が質問するわね」
ミラは二人に告げてから考えていた質問をした。
「あなたの名前を教えて頂戴」
ミラの質問に答えるように、硬貨が移動して幾つもの文字の前で止まっては動きを繰り返す。
「せ、い、れ、い、さ、ん。まんまね」
「挑発しないの」
「あ、次はマインねー」
それをマインに注意され、ミラは逃げるように先を促す。
「全く。戻さないとダメなんでしょ?」
「そうだった。ツボまでお戻り下さい」
硬貨が動き、絵の位置まで動く。
「さて、私は……ミラの嫌いな食べ物を教えて」
マインの質問に答えるように硬貨が動き出す。
「ま、め、る、い。ミラは豆類が嫌いなのね」
「ぐっ……なんで知ってるのよ。誰かから聞いた?」
恨めしそうに言うミラに対して、二人は首を横に振った。
「ということは、本物?」
「みたいね」
マインも戻るようにお願いし、絵の元へ硬貨を戻す。
「も、もう止めようよぉ」
「私もリゼッタに賛成。少し気味が悪くなってきた」
「……分かったわよ。リゼッタの質問で終わりにしましょう」
ミラは渋々だが、早々に終わらせる事に同意した。
「じ、じゃあ……あ、明日の朝ごはんはなんですか?」
(野菜炒めは勘弁して)
(野菜炒めはやめて)
(野菜炒めがいいなぁ)
三人がそう思う中、硬貨は答えを返した。
「や、さ、い、い、た、め。野菜炒めね」
「また野菜炒めなのね……」
うんざりした様子のミラだが、リゼッタは逆に嬉しそうに笑っていた。
「わ、私は好きだよ。野菜炒め」
「よく飽きないわね……」
「リゼッタだからしょうがないわよ」
ミラもマインもリゼッタに呆れの言葉を口にする。
「あ、戻さないと……」
リゼッタがお願いして絵の位置へと硬貨が戻ったのを確認し、終了の儀式を始める。
「せーのっ」
「「「精霊さん、精霊さん、どうぞお戻りください」」」
この言葉の後に、硬貨が『はい』に移動して絵まで戻ったらお礼を言って終了なのだが、硬貨は『いいえ』で止まる。
「精霊さんもまだ終わらせたくないみたいね」
「ミラ」
「分かってるわよ。もう一度ね」
ミラ自身はまだ続けたいが、二人に合わせて終了の儀式を続ける。
「「「精霊さん、精霊さん、どうぞお戻りください」」」
「い、いいえだよぉ!」
「もう一度!」
何度もお願いをするが、その度に『いいえ』が返ってくる。
「ど、どうしよう!」
「続けるのよ!」
リゼッタの叫びに、マインも叫ぶと同時に硬貨が先程までと違って素早く動き出した。
それに驚いたマインは反応が遅れ、動いた硬貨から指が離れた。
「あ……」
「ゆ、指が離れちゃった……」
リゼッタの呟きの直後。
「痛っ!」
「マイン!」
マインが悲鳴を上げたと思ったら、手から血が滴っていた。
「マ、マインちゃん!」
(な、何アレ。血が宙に浮いてる?)
マインが怪我をした手の近くにいた何かを伝い、手から滴る血が床へと落ちていく。
「私は大丈夫だから早く終わらせて!」
「リゼッタ!」
「う、うん!」
マインの声で我に返り、終了の儀式を始める。
「「精霊さん、精霊さん、どうぞお戻りください!」」
ミラとリゼッタが声を合わせてお願いをすると、硬貨がゆっくりと動いて『はい』で止まった。
「「ありがとうございました」」
お礼を言うやいなや、ミラはテーブルの上の紙を力任せに破り捨て、マインに駆け寄った。
「その後、少女たちが魔術師学校の教員に報告したことで事態が判明しました。怪我をした少女の傷は何かに噛み千切られたような傷でしたが、すでに治療して傷跡も無く完治しているそうです。今回の敵は、恐らくインビジブルワームだと思われます」
ハンターズ・ソサエティの女性職員は、元ハンターとしての意見と敵の情報を教えてくれた。
「インビジブルワームは体色を自由に変えて擬態することが可能です。その精度は透明と言っても差支えがない程に完璧なので、ご注意を。次に、依頼の説明を……ありがとうございます」
職員は淹れたてのコーヒーを受け取ると、気を取り直して依頼内容の説明を始めた。
「依頼主は魔術師学校校長のアダムスさん。最近魔術師学校で流行っている召喚術を調査をして欲しいとのことです。具体的には生徒から聞き込みと実際に召喚術の行使をお願いしたいそうです」
説明を終えた職員がコーヒーを飲むと、口に合わなかったのか顔をしかめ。
「見えないというのはそれだけで厄介です。召喚術行使中は常に警戒を」
と、注告しながらコーヒーに砂糖を投入した。
「生物部が飼っていた魔法生物が逃げ出したらしいよ」
「うわぁ。ちゃんとしてよ生物部」
ここは街にある魔術師学校の教室で、魔術師の弟子である生徒たちは学校と寄宿舎を日々往復し、魔術を学んでいる。
「あ、そうそう。昨日、精霊さんをやったんだよ」
「誰と?」
「ロイ君と! それでロイ君が好きな子を聞いたら……私だって!」
「嘘! それでそれで?」
「それでね……」
その教室で、同級生の話に聞き耳を立てる生徒がいた。
「精霊さん、ね」
「や、やっぱり怖いよぅ」
「何言ってるのよ。ただの遊びでしょ」
「でも、遊びでやるのはやめといたほうがいいんじゃない?」
真夜中の一室で三人の少女がランタンに火を灯し、テーブルを挟んで向かい合っていた。
彼女たちは同じ魔術師の弟子で、魔術師学校の生徒だ。
因みに強気な少女はミラ。怖がりなのはリゼッタ。真面目なのがマインだ。
「マインは相変わらず真面目ね。皆やってるし、それに師匠が魔術に限らず、型に嵌らないことも重要だって言ってたでしょ」
「確かに言ってたけど……」
マインがミラの言葉を肯定すると、ミラはリゼッタに目を向ける。
「リゼッタも。此処まで来たんだから付き合いなさいよ」
「わ、分かったよぉ」
リゼッタも頷いたのを見て、ミラは一枚の硬貨を取り出した。
テーブルの上には一枚の紙が置かれており、その紙には『はい』と『いいえ』と無数の文字、そしてツボの絵が書かれていた。
紙に硬貨を置き、三人はその硬貨に人差し指を置く。
彼女たちが今から行うのは、魔術師学校で流行している召喚術だ。
「ルールの再確認よ」
ミラがルールを再確認し、二人はそれに頷く。
「それじゃあ始めるわよ。せーのっ」
「「「精霊さん、精霊さん、どうぞおいでください。もしおいでになられましたら『はい』へお進みください」」」
言葉に反応するように硬貨がゆっくりと滑るように動き出した。
「早速来たわね!」
目を輝かせるミラの前で、硬貨が『はい』の場所で止まる。
「それじゃあ、早速質問を……」
(ん? 今、指に何か……気のせいか)
「まずは私が質問するわね」
ミラは二人に告げてから考えていた質問をした。
「あなたの名前を教えて頂戴」
ミラの質問に答えるように、硬貨が移動して幾つもの文字の前で止まっては動きを繰り返す。
「せ、い、れ、い、さ、ん。まんまね」
「挑発しないの」
「あ、次はマインねー」
それをマインに注意され、ミラは逃げるように先を促す。
「全く。戻さないとダメなんでしょ?」
「そうだった。ツボまでお戻り下さい」
硬貨が動き、絵の位置まで動く。
「さて、私は……ミラの嫌いな食べ物を教えて」
マインの質問に答えるように硬貨が動き出す。
「ま、め、る、い。ミラは豆類が嫌いなのね」
「ぐっ……なんで知ってるのよ。誰かから聞いた?」
恨めしそうに言うミラに対して、二人は首を横に振った。
「ということは、本物?」
「みたいね」
マインも戻るようにお願いし、絵の元へ硬貨を戻す。
「も、もう止めようよぉ」
「私もリゼッタに賛成。少し気味が悪くなってきた」
「……分かったわよ。リゼッタの質問で終わりにしましょう」
ミラは渋々だが、早々に終わらせる事に同意した。
「じ、じゃあ……あ、明日の朝ごはんはなんですか?」
(野菜炒めは勘弁して)
(野菜炒めはやめて)
(野菜炒めがいいなぁ)
三人がそう思う中、硬貨は答えを返した。
「や、さ、い、い、た、め。野菜炒めね」
「また野菜炒めなのね……」
うんざりした様子のミラだが、リゼッタは逆に嬉しそうに笑っていた。
「わ、私は好きだよ。野菜炒め」
「よく飽きないわね……」
「リゼッタだからしょうがないわよ」
ミラもマインもリゼッタに呆れの言葉を口にする。
「あ、戻さないと……」
リゼッタがお願いして絵の位置へと硬貨が戻ったのを確認し、終了の儀式を始める。
「せーのっ」
「「「精霊さん、精霊さん、どうぞお戻りください」」」
この言葉の後に、硬貨が『はい』に移動して絵まで戻ったらお礼を言って終了なのだが、硬貨は『いいえ』で止まる。
「精霊さんもまだ終わらせたくないみたいね」
「ミラ」
「分かってるわよ。もう一度ね」
ミラ自身はまだ続けたいが、二人に合わせて終了の儀式を続ける。
「「「精霊さん、精霊さん、どうぞお戻りください」」」
「い、いいえだよぉ!」
「もう一度!」
何度もお願いをするが、その度に『いいえ』が返ってくる。
「ど、どうしよう!」
「続けるのよ!」
リゼッタの叫びに、マインも叫ぶと同時に硬貨が先程までと違って素早く動き出した。
それに驚いたマインは反応が遅れ、動いた硬貨から指が離れた。
「あ……」
「ゆ、指が離れちゃった……」
リゼッタの呟きの直後。
「痛っ!」
「マイン!」
マインが悲鳴を上げたと思ったら、手から血が滴っていた。
「マ、マインちゃん!」
(な、何アレ。血が宙に浮いてる?)
マインが怪我をした手の近くにいた何かを伝い、手から滴る血が床へと落ちていく。
「私は大丈夫だから早く終わらせて!」
「リゼッタ!」
「う、うん!」
マインの声で我に返り、終了の儀式を始める。
「「精霊さん、精霊さん、どうぞお戻りください!」」
ミラとリゼッタが声を合わせてお願いをすると、硬貨がゆっくりと動いて『はい』で止まった。
「「ありがとうございました」」
お礼を言うやいなや、ミラはテーブルの上の紙を力任せに破り捨て、マインに駆け寄った。
「その後、少女たちが魔術師学校の教員に報告したことで事態が判明しました。怪我をした少女の傷は何かに噛み千切られたような傷でしたが、すでに治療して傷跡も無く完治しているそうです。今回の敵は、恐らくインビジブルワームだと思われます」
ハンターズ・ソサエティの女性職員は、元ハンターとしての意見と敵の情報を教えてくれた。
「インビジブルワームは体色を自由に変えて擬態することが可能です。その精度は透明と言っても差支えがない程に完璧なので、ご注意を。次に、依頼の説明を……ありがとうございます」
職員は淹れたてのコーヒーを受け取ると、気を取り直して依頼内容の説明を始めた。
「依頼主は魔術師学校校長のアダムスさん。最近魔術師学校で流行っている召喚術を調査をして欲しいとのことです。具体的には生徒から聞き込みと実際に召喚術の行使をお願いしたいそうです」
説明を終えた職員がコーヒーを飲むと、口に合わなかったのか顔をしかめ。
「見えないというのはそれだけで厄介です。召喚術行使中は常に警戒を」
と、注告しながらコーヒーに砂糖を投入した。
リプレイ本文
●
街中に立つ高い塀に囲まれた大きな館の様な建物を三人の男女が見上げていた。
「ここが依頼にあった魔術師学校だな」
地図と周りを交互に見て、エメラルド・シルフィユ(ka4678)は目的地に辿り着いたのを確認する。
(魔術師学校と聞いたが思ったよりも普通だな)
「やれやれ、ようやく着いたかね」
レイア・アローネ(ka4082)は自分の想像との違いを思い、久我・御言(ka4137)は頭に手を当てながら大きくため息をついた。
「しかし、なんだか慌ただしくないか?」
「そうだな。何かを探しているような……」
レイアの言葉にエメラルドは頷き周りを見回すと、学校の敷地内を十数人の生徒らしき少年少女たちが何かを探しており、彼らを眺めていると少女が三人に気づいた。
「あっえと、私たちは探し物をしてまして! 決して怪しいことをしているわけじゃ……」
「エイル!」
鋭い声で、エイルと呼ばれた少女は肩を震わせると振り返った。
「フィックス先生……」
「捜索に戻りなさい」
「は、はい」
フィックスという男性に言われ、エイルは頭を下げるとそのまま走り去っていく。
「私は魔術師学校教員のフィックスです。当校に何か御用でしょうか」
「ハンターズ・ソサエティから依頼を受けて来た者だ。私はエメラルド・シルフィユ」
「私はレイア・アローネだ」
「私の名前は久我・御言。宜しく頼もう」
それぞれが自己紹介すると、フィックスは話を聞いていたのか頷いた。
「校長室へご案内するように言われていますので、こちらへ」
フィックスは捜索をしている生徒たちに続けるように言ってから、校長室へと三人を案内した。
●
校長からは召喚術を行う場所として寄宿舎の空き部屋を用意したと伝えられた三人は、すぐに行動を開始する。
「まずは手分けをして聞き込みをしよう」
「それがいいだろう」
「そうだな」
エメラルドがそう提案すると二人もすぐに賛同した。
「私は召喚術を行った生徒と噂だけ聞いている生徒両方から事情を聞くつもりだ」
「それは一人では手が足りないかもしれないな。私も手伝ってやろう」
「私はそれらしい被害が召喚術以外でも出てないか調べてみよう」
「では、集合場所は用意された空き部屋。時間は夕方でどうかね」
御言の提案にエメラルドとレイアは頷き、そして分かれた。
(まずは外にいた生徒たちにに話を聞くことにするか)
エメラルドが外へ出ると、先程よりは少ないがまだ生徒たちが何かを探していた。
「すまない。少しいいか?」
「あ、はい」
「私は校長の調査依頼で来た者だ。精霊さんという召喚術を知っているか?」
「はい。最近学校で流行っていますよ。流石にやったことはありませんけど」
「そうか……では、噂の発生源とかは知っているか?」
「いえ、知りません」
その後もエメラルドは生徒に様々な問いを投げかけたが、やはり噂でしか知らない為か、詳しいことは知らなかった。
(噂は学校全体に広がっていて、多くの生徒が実際にやったことがあるのか……次は)
「実際に行なった者を知っているか?」
「はい。あそこにいる女の子ですよ」
生徒が指差す先では、少女が茂みを掻き分けていた。
「ありがとう」
生徒にお礼を言うと、エメラルドはふと素朴な疑問を投げかけた。
「そういえば、何を探しているんだ?」
「あ、いえ。生物部で飼っていた生物が逃げたらしくて探しているんです」
「生物か……なんていう生物なんだ?」
「すみません。僕も詳しくは……」
「そうか。忙しい時に失礼した。捜索、頑張ってくれ」
エメラルドはそう言うと、召喚術を行ったという少女の元へ向かっていった。
「私は付き合ってた彼との相性を知りたくてぇ」
「貴様はどうかね?」
「俺は次のテストの結果を知りたくてやりました」
聞き込みの為に寄宿舎へと来た御言は、談話室にいた生徒たちに聞き込みをしていた。
「結果はどうだったのかね?」
「私は相性が良いってぇ。実際、趣味とかすっごく合ってぇ」
「俺は結果はあまり良くないって出ましたけど……そうなりたくないと思って勉強したおかげか、いい結果でした」
「つまり、努力をすれば精霊さんの答え通りになるというわけではないということかね?」
「だと思います」
そう答えた生徒たちを観察し、御言は考え込む。
(観察していたが、彼女は彼のことが本当に好きだったようだし、テストの結果を聞いた彼はテストの結果が心の底から心配だったようだね。もしかすると……いや、まだ答えを出すのは早計か)
御言は答えを出すのを保留にし、さらに情報を集めるべく口を開いた。
「召喚術で少女が怪我を負ったという日からでしたか……それから同じような怪我をする生徒が出ています」
「本当か!」
召喚術以外でも被害が出ていないか、レイアは職員室に行き、教員から話を聞いていた。
「はい。全員が何かに噛み千切られたような傷でした。治療をする為に念入りに確かめたので間違いありません」
「そうなのか……何人くらいが被害にあった?」
「被害は数人程度です。怪我をしたのも多くが魔法実習の授業の時でしたので、他の教員は特に気にしていなかったのだと思います」
「魔法実習の授業というのは、夜にやるのか?」
レイアがそう尋ねると、教員は首を横に振った。
「朝や昼が主ですね」
「魔法実習の授業の内容は?」
「生徒同士の模擬戦や魔法使用などです」
(魔法実習の授業の時に襲われたのが多いというのは、騒がしくしたから寄ってきたということだな。だが、謎なのはインビジブルワームはどこから来たかだ。召喚されたものなのか。それとも……)
レイアは目を細め、教員に尋ねてみた。
「インビジブルワームはこの学校に元々いたのか?」
「さぁ……分かりません。セラン先生は知っていますか?」
「いえ、知りませんね」
尋ねられた教員と別の教員も首を横に振った。
レイアはこれ以上は話を聞けないと判断し、ペンキの用意を教員たちにお願いした。
●
昼と夜の間の時間の証として、日が空の色を塗り替えた夕方。
茜色に染まった空き部屋に、三人は集まり自分が得た情報を交換していた。
「行った生徒や行おうとしている生徒がほとんどで、それ以外は少数。噂は学校中に広まっているようで、実際にやった生徒はその時に自分が気になっていたことを尋ねていた。召喚術中の被害は、依頼にあった怪我をした女生徒くらいなようだな」
「私もエメラルド君と概ね同じ意見だね。寄宿舎で生徒たちに話を聞いたが、少なくとも聞いた中で召喚術中に怪我をしたという話は聞かなかったね」
「私の方も収穫があった。どうやら、召喚術以外でも被害あったようだ」
そう言い、レイアは教員から聞いたことを二人に伝え、情報交換を終える。
「そろそろ夜だ。準備を始めよう」
レイアの提案で、三人は準備を始める。
集合する前にインビジブルワーム対策としてレイアは用意してもらったペンキを受け取り、御言はバケツに水を入れて持ってきており、必要な紙と硬貨は空き部屋に来たときには既に用意されていた。
「そう言えば、お前たちは精霊さんに聞きたいことはあるのか?」
準備中、エメラルドがそう尋ねると二人は頷いた。
「私は……来週の運勢とか、精霊さんは元から学校にいるのかどうかだな」
「私はそうだね……あなたの名前はなんですか。などどうかね?」
「名前は精霊さんのはずだろう」
「あぁ、そのはずだ」
「するだけさ」
二人は御言の質問の意図が分からずに首を傾げるが、御言はそう答えると準備を再開し、部屋中に水を撒かれて床が水たまりだらけになっていく。
これは床を濡らし、色ではなく水の波紋により敵の位置を特定するのだ。
そして三人は十分に準備を終えると、紙に硬貨を置き、その硬貨に指を置いた。
「では、始めるとしようかね?」
御言の目配せに二人は頷き、口を揃えて唱えた。
「「「精霊さん、精霊さん、どうぞおいでください。もしおいでになられましたら『はい』へお進みください」」」
そして、精霊さんが始まった。
少し待つが、硬貨は全く動かない。
「……全く動かないな」
「術の形跡もないな」
「……いや、硬貨を見たまえ」
硬貨を見ると少しずつ、ゆっくりとだが硬貨が動き出していた。
そして、硬貨は『はい』で止まる。
「誰から質問をする?」
「そうだね……レイア君からしてみたらどうかね」
「わ、私か?」
「私は最後でもいいからな。おまえから行くといい」
エメラルドからも勧められ、レイアは頷いて精霊さんに尋ねた。
「精霊さんは元からこの学校にいるのですか?」
レイアの質問に答えるように、ゆっくりと硬貨が移動し始める。
「い、な、い。いないか」
「やはりいないのか」
「……」
「聞き込みと同じ結果だったな……ツボまでお戻りください」
レイアは落胆しながらお願いをしてレイアの番が終わり、次は御言が名乗り出た。
「次は私がでいいかね?」
「あぁ、いいぞ」
「では、あなたの名前はなんですか?」
そして御言はエメラルドに断りを入れてから、質問をすると御言はあることを二人に伝えた。
「実は、これに似たようなものを知っているんだがね」
御言は似ているというその術の名前を伝えると、エメラルドは精霊さんとそれの繋がりを考え出す。
(今話したということは、その術の派生系がこれだということか? そうなると、この術の名前は精霊さんではなく……)
硬貨は、そのまま重苦しく動き出すと、精霊さんではなく御言が話した術の名前を示した。
「こ、これは……」
「まさか、これは精霊さんではなく……!」
「いや、これは精霊さんだとも」
「え?」
「何?」
御言の言葉で呆けるエメラルドとレイアだが、御言は戻る様にお願いするとエメラルドに目を向けた。
「詳しくは後で説明しよう。次はエメラルド君の番だ」
「あ、あぁ。えーと……わ、私は司祭になれるでしょうか……?」
エメラルドは消え入りそうな声で尋ねると、すぐに言い訳でも言うかのように大きな声で理由を言い放つ。
「な、なんだ! ? 試しにだぞ? 実験するしかないから試しに聞いてみるだけだ!」
エメラルドの様子にレイアは保護欲を掻き立てられたのかうずうずとし出し、御言も無言だが微笑みを浮かべている。
そして硬貨は三人の様子に関係なく、動き出して答えを返す。
「し、よ、う、し、ん……精進、か?」
「恐らく、日々之精進ということではないかね?」
「まだまだ修行中の身、ということだな」
「なるほど、確かにその通りだな」
御言とレイアの解説に、エメラルドは納得したように頷き硬貨を戻す。
「これで一周したわけだが、何も起きないな」
「何か起こるまで続けてるか?」
「いや、終わらせようではないか」
「何故?」
「来たようだ」
御言の言葉に、二人は近くの水たまりを見る。
その水たまりに波紋が立っており、そこには何もいない。
だが、細長い何かが這うように、囲むように三人に向かってきているのが分かった。
「このまま終わらせても襲ってこないかどうかを調べたいのだが」
「此処まで来たら調べてしまおう」
「私も賛成だね。ただ、警戒は怠らないようにしなければね」
「もちろんだ。せーの」
「「「精霊さん、精霊さん、どうぞお戻りください」」」
ゆっくりと硬貨が移動し、『はい』で止まった。
「「「ありがとうございました」」」
再度、波紋の場所へと目を向けたが、未だに三人に向かってきていた。
それを確認した三人は、戦闘を開始する。
御言は周りにマテリアルを収束させ防御膜を形成し、レイアは近くの波紋の場所へとペンキをかけて四体のインビジブルワームの擬態を無効化にする。
そして三人は居場所を特定しつつも、誘き寄せるために動かずに待ち伏せをする。
「シャァァッ」
そこへ、擬態した個体が御言の足に噛み付いた。
「かかったね」
「ギッ!」
だが、御言が噛みつかれた場所にはいつの間にか雷撃を纏った光の障壁が形成されており、それがインビジブルワームを吹き飛ばし、そのまま壁へと叩きつけた。
「おっと」
「ペンキでバレバレだな」
レイアは噛み付きを後ろに飛んで避け、エメラルドも横に移動して噛み付きをかわした。
「今度はこちらから行くぞ」
御言は魔導機械へとマテリアルを収束させ、変換されたエネルギーが一条の光となり、壁に叩きつけられたインビジブルワームを寸分の狂いもなく貫いた。
レイアが武器にマテリアルを溜めた剣を振り抜くと、衝撃波を発生してペンキが付いたインビジブルワームを二匹がそれぞれ二つに分かれて水音を立てて水たまりに落ちて波紋が広がるが、別の波紋がそれを消していく。
突如、エメラルドから光の波動が周囲に広がり、衝撃を受けたように七つの何かが壁に激突して赤い痕を残すと床へと落ちる。
「……もう、いないか?」
「居ないようだね」
「これで全部かどうか、もう一度やってみて調べてみよう」
「一回やる度にあの数が出てくるとしたら、大変だな」
「それは思いたくもないね」
エメラルドの苦笑に、御言もレイアも苦笑しながらもう一度精霊さんを行った。
●
翌日、三人は依頼主のアダムス校長へ報告をしていた。
「召喚術を行使した結果、召喚術と少女に怪我をさせた生物との関係は一切ありませんでした」
「召喚術で召喚されたのではなかったのですか?」
校長が尋ねると、御言がその質問に答えた。
「その線でも確かめたが、違っていたよ。質問は行使者たちが無意識で動かし、強く思っていることや自分が望むことを答えとして返していたというのが精霊さんという召喚術の真実なのだよ。私の故郷で昔流行ったものと酷似しているし、聞き込みを行って導いた答えだから、間違ってはいないだろうね」
「そうですか……」
アダムスは少し残念そうにそう呟くと、感謝の言葉を伝えて来た。
三人はそれを素直に受け取り、学校の門を出た。
「後は帰るだけか」
「唯一残っている謎は、インビジブルワームはどこから来たということだがね」
「確かにそうだな……」
その謎を調べたいが、既に依頼は完了しているので調べようがない。
三人が諦めかけた時、一人の生徒が走ってきた。
「あ、あの」
「お前は確か……」
エメラルドは少し考え、その生徒が最初に聞き込みをした生徒だということを思い出した。
「どうした?」
「イ、インビジブルワームを見ませんでしたか?」
生徒の言葉に三人が驚く中、生徒は更に言葉を続ける。
「ハンターの皆さんは校内中を歩き回ったんですよね。生物部が飼育していたのが少し前に逃げ出したようで、見てないかお聞きしたくて」
「逃げ出した……それはいつなのかね?」
「僕も今朝聞いたばかりで詳しいことは全く……」
生徒の言葉で、大体のことを察した三人は魔術師学校を睨みつけ、エメラルドとレイアがそのまま無言で立ち去る。
「インビジブルワームのことは忘れるがいい」
御言は生徒にそう言うと踵を返し、歩き去っていった。
街中に立つ高い塀に囲まれた大きな館の様な建物を三人の男女が見上げていた。
「ここが依頼にあった魔術師学校だな」
地図と周りを交互に見て、エメラルド・シルフィユ(ka4678)は目的地に辿り着いたのを確認する。
(魔術師学校と聞いたが思ったよりも普通だな)
「やれやれ、ようやく着いたかね」
レイア・アローネ(ka4082)は自分の想像との違いを思い、久我・御言(ka4137)は頭に手を当てながら大きくため息をついた。
「しかし、なんだか慌ただしくないか?」
「そうだな。何かを探しているような……」
レイアの言葉にエメラルドは頷き周りを見回すと、学校の敷地内を十数人の生徒らしき少年少女たちが何かを探しており、彼らを眺めていると少女が三人に気づいた。
「あっえと、私たちは探し物をしてまして! 決して怪しいことをしているわけじゃ……」
「エイル!」
鋭い声で、エイルと呼ばれた少女は肩を震わせると振り返った。
「フィックス先生……」
「捜索に戻りなさい」
「は、はい」
フィックスという男性に言われ、エイルは頭を下げるとそのまま走り去っていく。
「私は魔術師学校教員のフィックスです。当校に何か御用でしょうか」
「ハンターズ・ソサエティから依頼を受けて来た者だ。私はエメラルド・シルフィユ」
「私はレイア・アローネだ」
「私の名前は久我・御言。宜しく頼もう」
それぞれが自己紹介すると、フィックスは話を聞いていたのか頷いた。
「校長室へご案内するように言われていますので、こちらへ」
フィックスは捜索をしている生徒たちに続けるように言ってから、校長室へと三人を案内した。
●
校長からは召喚術を行う場所として寄宿舎の空き部屋を用意したと伝えられた三人は、すぐに行動を開始する。
「まずは手分けをして聞き込みをしよう」
「それがいいだろう」
「そうだな」
エメラルドがそう提案すると二人もすぐに賛同した。
「私は召喚術を行った生徒と噂だけ聞いている生徒両方から事情を聞くつもりだ」
「それは一人では手が足りないかもしれないな。私も手伝ってやろう」
「私はそれらしい被害が召喚術以外でも出てないか調べてみよう」
「では、集合場所は用意された空き部屋。時間は夕方でどうかね」
御言の提案にエメラルドとレイアは頷き、そして分かれた。
(まずは外にいた生徒たちにに話を聞くことにするか)
エメラルドが外へ出ると、先程よりは少ないがまだ生徒たちが何かを探していた。
「すまない。少しいいか?」
「あ、はい」
「私は校長の調査依頼で来た者だ。精霊さんという召喚術を知っているか?」
「はい。最近学校で流行っていますよ。流石にやったことはありませんけど」
「そうか……では、噂の発生源とかは知っているか?」
「いえ、知りません」
その後もエメラルドは生徒に様々な問いを投げかけたが、やはり噂でしか知らない為か、詳しいことは知らなかった。
(噂は学校全体に広がっていて、多くの生徒が実際にやったことがあるのか……次は)
「実際に行なった者を知っているか?」
「はい。あそこにいる女の子ですよ」
生徒が指差す先では、少女が茂みを掻き分けていた。
「ありがとう」
生徒にお礼を言うと、エメラルドはふと素朴な疑問を投げかけた。
「そういえば、何を探しているんだ?」
「あ、いえ。生物部で飼っていた生物が逃げたらしくて探しているんです」
「生物か……なんていう生物なんだ?」
「すみません。僕も詳しくは……」
「そうか。忙しい時に失礼した。捜索、頑張ってくれ」
エメラルドはそう言うと、召喚術を行ったという少女の元へ向かっていった。
「私は付き合ってた彼との相性を知りたくてぇ」
「貴様はどうかね?」
「俺は次のテストの結果を知りたくてやりました」
聞き込みの為に寄宿舎へと来た御言は、談話室にいた生徒たちに聞き込みをしていた。
「結果はどうだったのかね?」
「私は相性が良いってぇ。実際、趣味とかすっごく合ってぇ」
「俺は結果はあまり良くないって出ましたけど……そうなりたくないと思って勉強したおかげか、いい結果でした」
「つまり、努力をすれば精霊さんの答え通りになるというわけではないということかね?」
「だと思います」
そう答えた生徒たちを観察し、御言は考え込む。
(観察していたが、彼女は彼のことが本当に好きだったようだし、テストの結果を聞いた彼はテストの結果が心の底から心配だったようだね。もしかすると……いや、まだ答えを出すのは早計か)
御言は答えを出すのを保留にし、さらに情報を集めるべく口を開いた。
「召喚術で少女が怪我を負ったという日からでしたか……それから同じような怪我をする生徒が出ています」
「本当か!」
召喚術以外でも被害が出ていないか、レイアは職員室に行き、教員から話を聞いていた。
「はい。全員が何かに噛み千切られたような傷でした。治療をする為に念入りに確かめたので間違いありません」
「そうなのか……何人くらいが被害にあった?」
「被害は数人程度です。怪我をしたのも多くが魔法実習の授業の時でしたので、他の教員は特に気にしていなかったのだと思います」
「魔法実習の授業というのは、夜にやるのか?」
レイアがそう尋ねると、教員は首を横に振った。
「朝や昼が主ですね」
「魔法実習の授業の内容は?」
「生徒同士の模擬戦や魔法使用などです」
(魔法実習の授業の時に襲われたのが多いというのは、騒がしくしたから寄ってきたということだな。だが、謎なのはインビジブルワームはどこから来たかだ。召喚されたものなのか。それとも……)
レイアは目を細め、教員に尋ねてみた。
「インビジブルワームはこの学校に元々いたのか?」
「さぁ……分かりません。セラン先生は知っていますか?」
「いえ、知りませんね」
尋ねられた教員と別の教員も首を横に振った。
レイアはこれ以上は話を聞けないと判断し、ペンキの用意を教員たちにお願いした。
●
昼と夜の間の時間の証として、日が空の色を塗り替えた夕方。
茜色に染まった空き部屋に、三人は集まり自分が得た情報を交換していた。
「行った生徒や行おうとしている生徒がほとんどで、それ以外は少数。噂は学校中に広まっているようで、実際にやった生徒はその時に自分が気になっていたことを尋ねていた。召喚術中の被害は、依頼にあった怪我をした女生徒くらいなようだな」
「私もエメラルド君と概ね同じ意見だね。寄宿舎で生徒たちに話を聞いたが、少なくとも聞いた中で召喚術中に怪我をしたという話は聞かなかったね」
「私の方も収穫があった。どうやら、召喚術以外でも被害あったようだ」
そう言い、レイアは教員から聞いたことを二人に伝え、情報交換を終える。
「そろそろ夜だ。準備を始めよう」
レイアの提案で、三人は準備を始める。
集合する前にインビジブルワーム対策としてレイアは用意してもらったペンキを受け取り、御言はバケツに水を入れて持ってきており、必要な紙と硬貨は空き部屋に来たときには既に用意されていた。
「そう言えば、お前たちは精霊さんに聞きたいことはあるのか?」
準備中、エメラルドがそう尋ねると二人は頷いた。
「私は……来週の運勢とか、精霊さんは元から学校にいるのかどうかだな」
「私はそうだね……あなたの名前はなんですか。などどうかね?」
「名前は精霊さんのはずだろう」
「あぁ、そのはずだ」
「するだけさ」
二人は御言の質問の意図が分からずに首を傾げるが、御言はそう答えると準備を再開し、部屋中に水を撒かれて床が水たまりだらけになっていく。
これは床を濡らし、色ではなく水の波紋により敵の位置を特定するのだ。
そして三人は十分に準備を終えると、紙に硬貨を置き、その硬貨に指を置いた。
「では、始めるとしようかね?」
御言の目配せに二人は頷き、口を揃えて唱えた。
「「「精霊さん、精霊さん、どうぞおいでください。もしおいでになられましたら『はい』へお進みください」」」
そして、精霊さんが始まった。
少し待つが、硬貨は全く動かない。
「……全く動かないな」
「術の形跡もないな」
「……いや、硬貨を見たまえ」
硬貨を見ると少しずつ、ゆっくりとだが硬貨が動き出していた。
そして、硬貨は『はい』で止まる。
「誰から質問をする?」
「そうだね……レイア君からしてみたらどうかね」
「わ、私か?」
「私は最後でもいいからな。おまえから行くといい」
エメラルドからも勧められ、レイアは頷いて精霊さんに尋ねた。
「精霊さんは元からこの学校にいるのですか?」
レイアの質問に答えるように、ゆっくりと硬貨が移動し始める。
「い、な、い。いないか」
「やはりいないのか」
「……」
「聞き込みと同じ結果だったな……ツボまでお戻りください」
レイアは落胆しながらお願いをしてレイアの番が終わり、次は御言が名乗り出た。
「次は私がでいいかね?」
「あぁ、いいぞ」
「では、あなたの名前はなんですか?」
そして御言はエメラルドに断りを入れてから、質問をすると御言はあることを二人に伝えた。
「実は、これに似たようなものを知っているんだがね」
御言は似ているというその術の名前を伝えると、エメラルドは精霊さんとそれの繋がりを考え出す。
(今話したということは、その術の派生系がこれだということか? そうなると、この術の名前は精霊さんではなく……)
硬貨は、そのまま重苦しく動き出すと、精霊さんではなく御言が話した術の名前を示した。
「こ、これは……」
「まさか、これは精霊さんではなく……!」
「いや、これは精霊さんだとも」
「え?」
「何?」
御言の言葉で呆けるエメラルドとレイアだが、御言は戻る様にお願いするとエメラルドに目を向けた。
「詳しくは後で説明しよう。次はエメラルド君の番だ」
「あ、あぁ。えーと……わ、私は司祭になれるでしょうか……?」
エメラルドは消え入りそうな声で尋ねると、すぐに言い訳でも言うかのように大きな声で理由を言い放つ。
「な、なんだ! ? 試しにだぞ? 実験するしかないから試しに聞いてみるだけだ!」
エメラルドの様子にレイアは保護欲を掻き立てられたのかうずうずとし出し、御言も無言だが微笑みを浮かべている。
そして硬貨は三人の様子に関係なく、動き出して答えを返す。
「し、よ、う、し、ん……精進、か?」
「恐らく、日々之精進ということではないかね?」
「まだまだ修行中の身、ということだな」
「なるほど、確かにその通りだな」
御言とレイアの解説に、エメラルドは納得したように頷き硬貨を戻す。
「これで一周したわけだが、何も起きないな」
「何か起こるまで続けてるか?」
「いや、終わらせようではないか」
「何故?」
「来たようだ」
御言の言葉に、二人は近くの水たまりを見る。
その水たまりに波紋が立っており、そこには何もいない。
だが、細長い何かが這うように、囲むように三人に向かってきているのが分かった。
「このまま終わらせても襲ってこないかどうかを調べたいのだが」
「此処まで来たら調べてしまおう」
「私も賛成だね。ただ、警戒は怠らないようにしなければね」
「もちろんだ。せーの」
「「「精霊さん、精霊さん、どうぞお戻りください」」」
ゆっくりと硬貨が移動し、『はい』で止まった。
「「「ありがとうございました」」」
再度、波紋の場所へと目を向けたが、未だに三人に向かってきていた。
それを確認した三人は、戦闘を開始する。
御言は周りにマテリアルを収束させ防御膜を形成し、レイアは近くの波紋の場所へとペンキをかけて四体のインビジブルワームの擬態を無効化にする。
そして三人は居場所を特定しつつも、誘き寄せるために動かずに待ち伏せをする。
「シャァァッ」
そこへ、擬態した個体が御言の足に噛み付いた。
「かかったね」
「ギッ!」
だが、御言が噛みつかれた場所にはいつの間にか雷撃を纏った光の障壁が形成されており、それがインビジブルワームを吹き飛ばし、そのまま壁へと叩きつけた。
「おっと」
「ペンキでバレバレだな」
レイアは噛み付きを後ろに飛んで避け、エメラルドも横に移動して噛み付きをかわした。
「今度はこちらから行くぞ」
御言は魔導機械へとマテリアルを収束させ、変換されたエネルギーが一条の光となり、壁に叩きつけられたインビジブルワームを寸分の狂いもなく貫いた。
レイアが武器にマテリアルを溜めた剣を振り抜くと、衝撃波を発生してペンキが付いたインビジブルワームを二匹がそれぞれ二つに分かれて水音を立てて水たまりに落ちて波紋が広がるが、別の波紋がそれを消していく。
突如、エメラルドから光の波動が周囲に広がり、衝撃を受けたように七つの何かが壁に激突して赤い痕を残すと床へと落ちる。
「……もう、いないか?」
「居ないようだね」
「これで全部かどうか、もう一度やってみて調べてみよう」
「一回やる度にあの数が出てくるとしたら、大変だな」
「それは思いたくもないね」
エメラルドの苦笑に、御言もレイアも苦笑しながらもう一度精霊さんを行った。
●
翌日、三人は依頼主のアダムス校長へ報告をしていた。
「召喚術を行使した結果、召喚術と少女に怪我をさせた生物との関係は一切ありませんでした」
「召喚術で召喚されたのではなかったのですか?」
校長が尋ねると、御言がその質問に答えた。
「その線でも確かめたが、違っていたよ。質問は行使者たちが無意識で動かし、強く思っていることや自分が望むことを答えとして返していたというのが精霊さんという召喚術の真実なのだよ。私の故郷で昔流行ったものと酷似しているし、聞き込みを行って導いた答えだから、間違ってはいないだろうね」
「そうですか……」
アダムスは少し残念そうにそう呟くと、感謝の言葉を伝えて来た。
三人はそれを素直に受け取り、学校の門を出た。
「後は帰るだけか」
「唯一残っている謎は、インビジブルワームはどこから来たということだがね」
「確かにそうだな……」
その謎を調べたいが、既に依頼は完了しているので調べようがない。
三人が諦めかけた時、一人の生徒が走ってきた。
「あ、あの」
「お前は確か……」
エメラルドは少し考え、その生徒が最初に聞き込みをした生徒だということを思い出した。
「どうした?」
「イ、インビジブルワームを見ませんでしたか?」
生徒の言葉に三人が驚く中、生徒は更に言葉を続ける。
「ハンターの皆さんは校内中を歩き回ったんですよね。生物部が飼育していたのが少し前に逃げ出したようで、見てないかお聞きしたくて」
「逃げ出した……それはいつなのかね?」
「僕も今朝聞いたばかりで詳しいことは全く……」
生徒の言葉で、大体のことを察した三人は魔術師学校を睨みつけ、エメラルドとレイアがそのまま無言で立ち去る。
「インビジブルワームのことは忘れるがいい」
御言は生徒にそう言うと踵を返し、歩き去っていった。
依頼結果
依頼成功度 | 大成功 |
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面白かった! | 4人 |
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依頼相談掲示板 | |||
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召喚術会場 レイア・アローネ(ka4082) 人間(クリムゾンウェスト)|24才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2018/03/23 23:33:29 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/03/23 23:29:49 |