• 初心

【初心】桜の樹の下には、ゾンビがいる

マスター:くさのうえのひよこ

シナリオ形態
ショート
難易度
やや易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
LV1~LV20
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2018/03/27 22:00
完成日
2018/04/04 03:47

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


 窓の外には、桜の花びらが降っていた。
 はらはらと、泣くように。
 ――自分の心と同じように。

「……男なんて」

 バンッ、と両手で机を叩く。

「さいっていっ!!」

 つまみの枝豆やらザーサイが、皿から浮き上がり、机の上にこぼれる。
 それを、布巾でふき取る男。

「……ねぇ、エトもそうおもわらい?」
「飲みすぎだよ、ガーベラ」

 せっせと手際よくこぼれたつまみを片づけ終え、ろれつの回らないガーベラを窘めるエト。
 彼氏の愚痴をケンカの度に聞くという損な役回りの『幼馴染』のポジションを毎度続けてきた。
 ――ガーベラを好きな気持ちを抑えて。

「あー幼馴染のエトらけは違うと信じてたろにぃ」
「……毎回違う男の話を聞く、僕の身にもなってみろっつうの」
「あ? らにか言った?」
「いや、こっちの話」

 エトは手に持っていた小さな箱を、スッと上着のポケットに隠す。
 ガーベラは残っていたビールを一気に飲み干し、ダン、と勢い良くジョッキを机の上に置いた。

「あー、誠実な彼氏が欲しー! おれえさん、生を追加でっ!」

 その後もガーベラの愚痴を、酒場の閉店時間まで延々聞き続けるエトなのだった……。


 郊外にある酒場を出たエトとガーベラは、街へ帰ろうと薄暗い道を歩いていた。

「ねぇガーベラ。まっすぐ歩ける?」
「うぅ、駄目かも」
「……あの桜の樹の下で休もうか」

 エトの指の先には、大きな桜の樹があった。
 街から少し離れた場所にある小高い丘の上で、もう何十年も春を告げるために花を咲かせてきた桜の樹。
 
「あの、さ。受け取って欲しいものがあるんだ」

 エトはポケットから小さな小箱を出した。

(婚約指輪は給料の3か月分だっていうけれど、僕の少ない給料じゃ小さな宝石が付いた指輪が精一杯だ)

 けれども自分のありったけの気持ちを込めた指輪だ。
 エトはその指輪が入った小さな箱を差し出した。

「嫌ッ!」
「……っえ!?」

 強い否定の返答にエトは、驚いてその小さな箱を落としてしまう。
 その衝撃で、小箱に入っていた小さな宝石のついた指輪が地面に転がった。
 ガーベラは下を向いて叫んだ。

「――ちょっと! 足を引っ張らないれよ!」

 僕は何もしていない――と呟いて下を向くエト。
 己の視界に入ったものを、頭が一瞬否定する。

「え……手? 地面から、手ぇ!?」

 ガーベラの足首に、一本の手がまとわりついている。
 いつの間にか地面にはわらわらと無数の手が集まっていた。
 その手たちはどうやら、エトの指輪を奪い合っているようだ。

「たす、助けてぇ……!」
「ガーベラ! そいつは君のアンクレットを掴んでる! 足首から外して!」
「ダメ、これは彼からもらった……大事な……」
「命と男と、どっちが大事なんだ!?」

 エトがそう叫ぶと、ガーベラは慌てて足首につけていたアンクレットを外した。
 地面からの手は、それをスルリと掴んでガーベラを開放する。

「逃げよう!」

 エトは叫んでガーベラの手を握り、逃げ出すことに成功する。
 すっかり酔いから醒めたガーベラは、走りつつも後ろをそっと見た。

(地面の下からゾンビが……!? それも、十数体いる……!)

●ハンターオフィスにて
「はぁ、昔から桜の樹の下には死体が埋まってるって言いますものねぇ」

 オフィスの職員はうんうん、と頷きながら言った。

「しかし、ゾンビが街の近くにいるとなると危険ですねぇ」
「そう! しかも十匹以上も居たんです!」
「おやおや。数で攻めて来ましたね。そちらの新人ハンターさん、いかがですか?」

 チラリ、と職員はオフィスにいた、まだ経験が浅いであろうハンターたちの顔を見た。
 するとエトとガーベラは、ハンターたちに向かって同時に叫んだ。

「お願い! 私の大事なアンクレットを取り戻して!」
「お願いします! 僕の大事な指輪を取り戻して!」

リプレイ本文


 花瑠璃(ka6989)は、隣に立っていたシグ(ka6949)の袖を引っ張った。

「まぁ、この人たち困ってはるんやね? ほな助けましょか。シグはん」
「ええ。必ず、とは約束できませんが……奪還、最善を尽くします」

 堅甲な鎧を着込んだ無道(ka7139)が、受付のカウンターの上に置かれた依頼書を読みつつ言った。

「光り物好きなゾンビ、か。カラスよりは……もしかしたら対処しやすいかもしれないが、油断なくいこう」

 無道の隣から覗き込むリーベ・ヴァチン(ka7144)。

「光り物が好きとはまた贅沢な奴らだな」
「その特徴を教えてください。宝石や素材、大きさ、箱の色……絵など頂けると一番ですが……」

 シグがそう言うと、ガーベラは雑誌を広げてパラパラとめくり、とあるページで手を止めた。
 横で見ていた七窪 小鈴(ka0811)が目を輝かせた。

「うわぁー、可愛いアンクレットばいー」
「細い金のチェーンに赤い宝石が5個付いてて……そして特注で、私の名前が彫られた金のプレートが付いているの」
「アンクレットは今の恋人からの贈り物か」

 リーベがそう問うと、ガーベラは悩みつつも答えた。

「うん……一応、恋人、かな」

 隣にいるエトが哀しそうな顔をしたのを真田 綾乃(ka2580)は見逃さなかった。

「おまえの指輪は?」
「あ、ええと」

 エトは雑誌をめくり、隅に小さく載っている、シルバーのリングで先端に小さな赤い宝石のついた指輪を指さした。

「安い指輪なので、ハンターさんたちにお願いするのも申し訳ないんですが……」
「私のは、すっごく高いものなんだから、絶対に取り戻して欲しいのっ!」


 一行はゾンビが出るという小高い丘の上に到着した。
 丘の中心に立派な桜の樹がある。

「こんな綺麗な桜の下にゾンビが眠ってるとは思えんばい」
「ほんまやな、お花見にちょうどええ桜の樹やねえ。ゾンビはん、綺麗にしはったら、ここでお花見をしてもええどす?」
「そやね、とっても綺麗な桜やけん。ここで宴を開いたらきっと楽しかね」

 ふふ、と小鈴と花瑠璃が顔を見合わせて楽しそうに笑った。
 太陽が西の地平線へ沈み始める。

「夕暮れか、そろそろだな」

 無道がそう呟いた――と同時に、花瑠璃めがけて手が伸びてくる。
 1、2、3、4……5本。

「いややわ、このダイヤモンドリングが欲しいん? でも、渡しまへんえ」

 花瑠璃は、サッとダイヤモンドリングを懐へ引っ込める。
 すると、その5体のゾンビたちは姿を現し、花瑠璃に群がった。

「花瑠璃、逃げて下さい!」
「あらあら~」

 走る花瑠璃。
 後ろから追うゾンビたち。

「鬼さんこーちら。ああ、鬼はうちやったわあ」

 逃げる花瑠璃の前方の地面から手が伸びる。
 それに気づいた綾乃が慌てて声を掛けた。

「おいっ、前にもいるぞ!」
「ひゃあっ」

 転んだ花瑠璃の前の地面からゾンビが這い出ようとしていた。

「大丈夫ですか!?」

 シグは慌てて花瑠璃を護ろうと、懐にあったコインをまき散らす。

「私も手伝おう」

 リーベもシグに合わせコインを投げた。

 花瑠璃を追いかけていたゾンビ2体がそれぞれ、シグとリーベの投げたコインにつられて移動する。

「チッ、6体か……流石に胴体に指輪はねえだろ。私はエイミングで胴体を狙うよ」

 綾乃はエイミングを掛けつつライフルを構え、花瑠璃の側にいるゾンビの胴体へと照準を合わせた。

「――壁ならば俺に任せてもらおう」

 無道がずいっと前に進み出て、自身にソウルトーチを掛けて炎のオーラを纏わせた。
 ザッと無道に注目が集まる。
 花瑠璃へと向かっていた3体のゾンビの足が止まった。

 投げたコインへ、2体。
 花瑠璃へ、1体。
 無道へ、3体。

 ゾンビたちはそれぞれに迫ってくる。

「無道さんっ、プロテクションばい!」

 小鈴が無道の後方からプロテクションを掛ける。
 その近くにいたシグは、リトルファイアを唱えて手のひら程の大きさの火球を宙に置く。

「うちのリング渡すわけにはいきまへんえ」

 目の前にいるゾンビへ、LEDライトを当てて光らないか確認する花瑠璃。

(手首、足首……この子は持っておへんなぁ)

「おまえを狙ってるぞ、注意しろよ!」

 綾乃はそう叫んで、花瑠璃の前にいるゾンビの胴体目掛けて攻撃を仕掛けた。

「グォォ」

 急所に当たり、悶え苦しむゾンビ。
 地面に潜ろうと、ゆっくりと身を沈めようとする。
 そこへリーベが飛び込んで来た。

「隠れようとしても無駄だ、胴体部分が丸見えだぞ!」

 和泉兼重を素早く鞘から抜き、ゾンビは胴体を真っ二つに斬り離されて塵となり消えた。

「まずは1体成敗、だな」
「さっきの2体が、花瑠璃さんの方へ戻って来ようとしています!」
「いつまでも鬼なんはしんどいわあ……」

 花瑠璃が逃げる足を止め、ゾンビへ向き直ってインストーラーを構えた。
 その花瑠璃の背中を庇うように、シグがストームレインを構える。

「順番にプロテクションするばいっ! 怪我をしたらヒールもするけん存分に戦ってや!」
「小鈴はん、助かるえ。ほなよろしくや。シグはん、うちらの力見せてあげましょか」
「ええ、花瑠璃さん」


 一方の無道は、3体のゾンビを抱えて自身を堅守で守り続けていた。
 そんな無道に綾乃が声を掛ける。

「おい無道、大丈夫か?」
「――ああ。皆の宝物探しの邪魔はさせんよ」

 小鈴はシャインを自身の薙刀の先に掛け、注意深く探りつつゾンビに光を当てた。

「無道さん! このゾンビ、赤い宝石のついたアンクレットを右手首に巻いとるばい!」
「でかした、小鈴!」
「アンクレットというから足元ばかりを見ていたが……手に巻いているとはな」

 無道は、鞘から白く薄い刀身を抜き、上腕部分を斬りつける。
 ゾンビはアンクレットを護るように身を屈めた。

「あたしも加勢するぜ!」

 綾乃が自身のライフル、ミーティアAT7から弾を放つ。

「ウゥオォォ」

 瀕死のダメージを受けたようで、身を捩りながら地面に潜ろうとする。
 アンクレットを追いかけるように、側のゾンビ2体もそのゾンビを追う。

「チッ、こいつら邪魔すんなよ!」

 アンクレットを身に着けたゾンビは地面に潜ってしまう。
 地上に残されたゾンビたちはアンクレットを諦めて、再び無道に向かってきた。

「このゾンビたちは、何も持っていないばい!」

 小鈴は光の灯った薙刀をかざしながら、そう言った。

「では思う存分に暴れてやろう。今まで耐えてきた分、な」


「次は、僕の番だな。悪いが容赦はしない」

 シグは目の前にいるゾンビに向って言い放つ。
 そんなシグに向って、リーベが声を掛けた。

「シグ、こいつは持ってないみたいだぞ」
「有難い……それでは、暴れさせてもらう!」

 そう言うと同時に剣を振り下ろす。

「ッオォォォ!」

 シグの攻撃が急所に命中したようで、地面に転がってのたうち回るゾンビ。
 その動きが止まる。
 風と共に、無へと還った。

「さすがシグはんやわあ。うちも頑張らんとあかんね」

 その時、懐に入れておいたハンディLEDライトの光に照らされて何かが輝いた。
 花瑠璃の動きが止まる。

「――花瑠璃さん?」

 背中で異変を感じたシグが花瑠璃に声を掛ける。
 花瑠璃は、困ったように答えた。

「いややわあ。このゾンビはん、左手の薬指に指輪をしてはるわ」
「はぁ!? エトの指輪か!?」
「……残念ながら、そのようどすなぁ」

(最初に左手の薬指にはめたのがゾンビだなんて……)

 花瑠璃、シグ、リーベがそれぞれ複雑な表情を浮かべた。
 そして左手を避け、花瑠璃は、胴体めがけて剣を振りぬいた。


 小鈴により、アクセサリーを装備していないと確認されたゾンビ2体。
 思う存分暴れられると悟った無道と綾乃は、お互いに頷き、

「各個撃破、だ!」

 と叫んだ。
 まずは、綾乃がライフルを構えて弾を発射し、ゾンビの足を撃ち抜いた。
 続けて、無道が迷いのない太刀筋で胴を斬りつける。

「――安らかに眠れ」

 ゾンビは塵となり、消えた。


 ゾンビはリーベに向って爪を振り下ろす。 
 その攻撃を刀の棟で受け止め、腕の力を使ってはじき返した。

「容赦なく、斬るっ!」
 
 胴体めがけて斬りつけた。
 崩れ落ちる、ゾンビ。
 そして塵となった。
 リーベは複雑な表情をしつつ、草むらに落ちていた指輪を拾った。


 今度は先に無道が動いた。

「――斬る!」

 無道の白く薄い刀身がゾンビの胴体を斬りつけた。
 さらに、綾乃が攻撃を仕掛ける。

「あたしの弾で永遠に眠りな」

 頭を狙い撃った。
 ゾンビは塵となり、他に地面に出ているゾンビはいなくなった。
 花瑠璃は、ダイヤモンドリングを夜空に掲げる。
 すると、手が地面から伸び、再びゾンビたちが姿を現わした。

「チッ、何体いるんだコイツら!」
「いち、に、さん……全部で、6体ですね」
「さっきのが6体、1体地面に戻って、また6体……合計11体か」
「そうですね。もうこれ以上いるとは考えたくないです」

 そう言って、シグはリトルファイアを唱え、火球を配置した。
 慌てて、小鈴もシャインを唱えて、薙刀の刃先に再び光を灯し、ゾンビの足元を照らし始める。

「あった! あのゾンビばい!」

 小鈴が指をさした先のゾンビの右手首に、赤い宝石のついたアンクレットがあった。

「そいつは、あたしと無道の攻撃で相当弱ってたはずだ」

 綾乃が脚に向ってライフルを撃つ。

「グガォォオオ」

 ゾンビは体をねじって苦しそうに悶えた後、静かに消えた。
 残されたアンクレットを拾い上げる綾乃。
 アンクレットは、名前の書かれたプレートの部分が無くなってしまったようだ。
 花瑠璃は小声で呟いた。

「特注品やのに残念やねえ」
「でも、エトにしたらチャンスかもな」

 ついエトの応援をしてしまう綾乃だった。

「残りは5体か」

 無道は再びソウルトーチを自身に掛け、オーラを身に纏う。
 それにつられて、ゾンビが無道に寄ってくる。

「花瑠璃、すまない! 1体そちらに行ってしまった!」
「ええよ。うちに任せてえな――火炎符! 何ひとつ残さんと焼き尽くしてえや」

 ゾンビの全身が炎に包まれる。
 炎がゆっくりと消えた後、そこには何も残ってはいなかった。

「ああ、うちが燃やさんでも残らへんかったんやな。堪忍なあ」
「無道! 助太刀するぞ」

 リーベが鞘から刀を抜き、ゾンビの胴を斬る。
 小さな悲鳴を上げて、ゾンビは地面に倒れこんだ。

「止めです」

 シグは黒い拳銃を放つ。
 弾は腕を打ち抜き、そのままゾンビは消えていった。

「残りは3体やな。ありがとうばい無道さん、プロテクション掛け直すけん」
「ああ、助かるよ」

 無道が顔を隠していてすっかり忘れていたが、小鈴は異性が苦手だという事を思い出した。
 慌てて顔を逸らす小鈴。

「……? ありがとう」

 不思議そうに礼を述べる無道。
 小鈴は、駆け足で離れて行った。

「次はあたしの番だな、喰らえっ」

 綾乃の弾が、1体のゾンビめがけて放たれた。
 苦しそうに呻くゾンビ。
 どうやら急所に当たったようだ。

「消えな!」

 綾乃の声と同時に、消えていく。

「残り2体か――もう俺が壁役にならなくとも大丈夫そうだな」

 無道は刀をスッと鞘から抜き、目にも止まらぬ速さで振り下ろした。
 頭に攻撃が当たり、慌てて地面に潜ろうとする。

「そうはさせないさ」

 リーベが刀を振り上げ、ゾンビの胴体を真っ二つに斬った。

「あんさんが最後やねえ」

 花瑠璃が、ふっと微笑んで符を構えた。

「痛くないようにするわあ、安心してえな――火炎符」

 残ったゾンビを焼き焦がす。
 当然、後には何も残らない。

「これで終わった、か?」

 花瑠璃は、ダイヤモンドリングを再び夜空に掲げた。
 ――静寂。
 地面からゾンビたちが出てくる気配はない。

「もう出てこへんようやね?」
「よっしゃー! 依頼完了や!」

 その後、他にも奪われた品が無いかと探してみたが、見つからなかった。
 こうして、計11体の桜の樹の下にいたゾンビたちは全て討伐されたのだった。


「私のアンクレットは……っ!?」

 オフィスへ戻ると、我先にとガーベラが駆け寄ってきた。

「ガーベラ、お礼を言うのが先だよ?」
「あ、そうね。ごめんなさい」

 エトがガーベラを窘めると、ガーベラはありがとう、とお礼を言った。

「それで、指輪とアンクレットなんだが……」

 綾乃はぐい、とエトの手を引っ張った。

「あんたが、渡してあげな。どっちもな。フラれたらあたしらが奢ってやるよ。けど……そだな、上手くいったら奢ってくれ」
「え? あ、はい」

 次に、リーベから肩を組まれる。

「それで振り向くチョロイ女に誓いたいのかと思ったんだが、違うんだろ?」
「違います! 僕は……ずっと」
「ま、励めよ男前」

 解放された途端に、無道に首根っこを掴まれるエド。

「ええっ!? 鎧!? ななな何ですか?」
「男が女に指輪を贈ることの意味は知らんわけじゃない。結果はどうあれ……頑張れ」

 そう言って、エトの背中をドンと押す。  
 エトはガーベラの前にすっ転んだ。

「この後の2人の話を盗み聞きするのは、野暮ってもんだろ。行こうぜ」

●桜の樹の下で
「まさかぁ~彼氏が迎えに来るなんてぇ。しかも、ガーベラも行っちゃうなんてぇ」

 エトはドンドンと地面を叩いて号泣する。
 一行は、無事平和になった桜の樹の下で花見をしていた。
 しかし、残念ながら、エトは『無事で平和』ではないようだ。

「ねぇ、お姉さん。僕は、ちゃんと指輪を持って伝えたんですよ! そしたらねぇ~何て言ったと思います?」
「さ、さあ?」
「『ごめん、私お金のある人の方がいい』ですよぉ、昔はそんな子じゃなかったのにぃ」
「酒癖悪いな、オマエ……」

 宴に誘った綾乃もドン引きの酒癖の悪さである。
 どうやら相手の男は、街有数の豪家の出らしい。

「まぁ、俺たちからしたら、その金持ちが女のために今回の報酬をはずんでくれたようで有難いけどな」
「しかも、アンクレットが壊れていたことも、お咎めなしでしょう?」

 エトが「それ!」と指をさした。

「それを知って、あの男、何て言ったと思います?」
「さ、さあ?」
「『もっと高いアクセサリーを買ってあげるから』ですよぉ、アイツ、庶民を、俺を、馬鹿にしてるだろぉ」

 再び、エトが地面に突っ伏して、泣き始めた。

「まぁまぁ、エトはん。それでもすっきりしはったんやろ?」
「……ええ」
「次は、いい恋ができるばい」
「……そうですね」

 エトが、むくっと顔を上げた。

「今回の件は、縁が無かったんだ。だって、その指輪は先にゾンビが左手の薬指にはめてたんだからな」

 リーベは言ってから「しまった!」と口を押さえた。
 エトはその場で固まった。

「え? ええ、もうこの指輪、使えないのぉ!?」
「ガーベラのために買った指輪を次にも使おうとするな、この馬鹿っ!」
「だってぇ」

 綾乃から盛大に叱られるエト。
 全員が楽しそうにしている彼を見て笑っていた。

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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 月下氷人
    七窪 小鈴(ka0811
    人間(蒼)|12才|女性|聖導士
  • 月下氷人
    真田 綾乃(ka2580
    人間(蒼)|19才|女性|猟撃士
  • まだ見ぬ家族を求めて
    シグ(ka6949
    オートマトン|15才|男性|疾影士
  • 百花繚乱
    花瑠璃(ka6989
    鬼|20才|女性|符術師
  • 優しき孤高の騎士
    無道(ka7139
    鬼|23才|男性|闘狩人
  • 負けない強さを
    リーベ・ヴァチン(ka7144
    ドラグーン|22才|女性|闘狩人

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ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/03/25 22:50:44
アイコン 相談卓
花瑠璃(ka6989
鬼|20才|女性|符術師(カードマスター)
最終発言
2018/03/27 21:32:43