ゲスト
(ka0000)
ピクニックタイム、ランチタイム
マスター:DoLLer
このシナリオは5日間納期が延長されています。
オープニング
「うーん……わかんなくなってきた」
キッチンの椅子に腰かけたままぼやいたのはミネアだった。テーブルには数々の箱に様々な料理が詰め込まれて、色鮮やかではあったが、もはやミネアにとってはどれも同じように見えてしまっていた。
ゾンネンシュトラール帝国で昨年より魔導列車の稼働が開始している。まだ短区間ではあるが、今まで馬車を何往復もさせながら運んできたものがまとめて運べるということは非常に商人たちにとってはありがたいことで、まずまずの出だしを収めていた。
そうすると何人もの商人が、その車窓を眺めて荷物の上げ下ろしを行うわけで、彼らは移動時間中にお腹が減るのから食べ物があると嬉しいというリクエストがとんできたのである。
それを請け負ったのが、商人であり元料理人でもあるミネアであったのだが、すっかり行き詰まっていた。
「うぅぅん、もうパン買って食べたらいいじゃん」
そう思わず愚痴りたくなる。
値段は安いのがいい、日持ちするものがいい、特産品を入れろ、もちろん美味しいのがいい。どうせなら温かいスープもつけてほしい、エトセトラ、エトセトラ。
要望は試作品を作るごとに増えていき、もうすっかりどんな料理を詰め込めばいいのやらミネアにはわからなくなっていたのである。料理は好きだし、新しいものを作るのも、要望に応えてみんなが喜んでくれることを考えるのも全部好きだが……。
「むかーし、リゼリオで新作メニュー考えてた時もひどかったな……」
お腹が、もう苦しいんだ。
そろそろ舌が何がいいのか判断できなくなってくるんだ。
なにしろかれこれ2週間、弁当メニュー続きである。定時の食事という概念は崩壊したし、体重計の乗ったら色んなものが崩壊しそうである。
ぼんやりと眺めるキッチンの天井というものはとても無機質で、単調だった。
「こんなところで美味しい弁当が作れるはずがない……!」
ミネアはがばっと立ち上がると、誰もいない虚空に向かってそう叫んだ。気分はもう演劇の舞台だ。
「美味しいとはなにか。そう、それは至福の気持ちなのだ! 至福を忘れた料理人がそれを生み出せるはずがないっ」
もう長い事一人で料理ばっかりしていたのが悪いのだ。
ミネアは大股で移動するとばっと窓を開けた。
「至福を求めて、私は旅に出よう~♪」
「……大丈夫?」
すっかり舞台女優のミネアが開けた窓の向こうに、様子をうかがいに来た依頼人であるクリームヒルト姫がいるなどと、誰が想像したであろうか。
恥ずかしさで死にたくなったミネアであったが、とりあえず、休暇の申請をする手間は省けたのは間違いない。
●
「そういうわけで、ピクニックに行きたいのですが……お弁当を一緒に考えて、作って、食べてくれる人がいると嬉しいな、って」
「私が行きます」
しばらく休みを貰えていないオフィス職員が手を挙げたのはご愛嬌。
「とりあえず、お弁当に特産品を入れることは必要なので、この地域の特産品となるものがあるところがいいんですが、いい場所ありませんか?」
「帝国の特産品というと……」
「あ、帝国じゃなくて、この地域、ズューデアイセル州のことです」
ちなみにズューデアイセルはエルフハイムの南東であり、王国と同盟の境界となる山岳の尾根にあたる地域一体である。
「この辺、何が有名だろう……南方要塞?」
「食べ物にしてください」
疲れた人間同士と言うのはどうしてこう会話が成立しないのか。
「あっエルフハイムと同種のリンゴの樹が群生している所がありますよ。ただマテリアルの影響は少ないので酸っぱいですけど。結構のんびり歩けると思いますし遊んだりもできるかと思いますよ」
「本当? やったやった。じゃあそこでお願いします」
そうして、お弁当の美味しさを見つけるため、という名のピクニックの依頼が出されるのであった。
キッチンの椅子に腰かけたままぼやいたのはミネアだった。テーブルには数々の箱に様々な料理が詰め込まれて、色鮮やかではあったが、もはやミネアにとってはどれも同じように見えてしまっていた。
ゾンネンシュトラール帝国で昨年より魔導列車の稼働が開始している。まだ短区間ではあるが、今まで馬車を何往復もさせながら運んできたものがまとめて運べるということは非常に商人たちにとってはありがたいことで、まずまずの出だしを収めていた。
そうすると何人もの商人が、その車窓を眺めて荷物の上げ下ろしを行うわけで、彼らは移動時間中にお腹が減るのから食べ物があると嬉しいというリクエストがとんできたのである。
それを請け負ったのが、商人であり元料理人でもあるミネアであったのだが、すっかり行き詰まっていた。
「うぅぅん、もうパン買って食べたらいいじゃん」
そう思わず愚痴りたくなる。
値段は安いのがいい、日持ちするものがいい、特産品を入れろ、もちろん美味しいのがいい。どうせなら温かいスープもつけてほしい、エトセトラ、エトセトラ。
要望は試作品を作るごとに増えていき、もうすっかりどんな料理を詰め込めばいいのやらミネアにはわからなくなっていたのである。料理は好きだし、新しいものを作るのも、要望に応えてみんなが喜んでくれることを考えるのも全部好きだが……。
「むかーし、リゼリオで新作メニュー考えてた時もひどかったな……」
お腹が、もう苦しいんだ。
そろそろ舌が何がいいのか判断できなくなってくるんだ。
なにしろかれこれ2週間、弁当メニュー続きである。定時の食事という概念は崩壊したし、体重計の乗ったら色んなものが崩壊しそうである。
ぼんやりと眺めるキッチンの天井というものはとても無機質で、単調だった。
「こんなところで美味しい弁当が作れるはずがない……!」
ミネアはがばっと立ち上がると、誰もいない虚空に向かってそう叫んだ。気分はもう演劇の舞台だ。
「美味しいとはなにか。そう、それは至福の気持ちなのだ! 至福を忘れた料理人がそれを生み出せるはずがないっ」
もう長い事一人で料理ばっかりしていたのが悪いのだ。
ミネアは大股で移動するとばっと窓を開けた。
「至福を求めて、私は旅に出よう~♪」
「……大丈夫?」
すっかり舞台女優のミネアが開けた窓の向こうに、様子をうかがいに来た依頼人であるクリームヒルト姫がいるなどと、誰が想像したであろうか。
恥ずかしさで死にたくなったミネアであったが、とりあえず、休暇の申請をする手間は省けたのは間違いない。
●
「そういうわけで、ピクニックに行きたいのですが……お弁当を一緒に考えて、作って、食べてくれる人がいると嬉しいな、って」
「私が行きます」
しばらく休みを貰えていないオフィス職員が手を挙げたのはご愛嬌。
「とりあえず、お弁当に特産品を入れることは必要なので、この地域の特産品となるものがあるところがいいんですが、いい場所ありませんか?」
「帝国の特産品というと……」
「あ、帝国じゃなくて、この地域、ズューデアイセル州のことです」
ちなみにズューデアイセルはエルフハイムの南東であり、王国と同盟の境界となる山岳の尾根にあたる地域一体である。
「この辺、何が有名だろう……南方要塞?」
「食べ物にしてください」
疲れた人間同士と言うのはどうしてこう会話が成立しないのか。
「あっエルフハイムと同種のリンゴの樹が群生している所がありますよ。ただマテリアルの影響は少ないので酸っぱいですけど。結構のんびり歩けると思いますし遊んだりもできるかと思いますよ」
「本当? やったやった。じゃあそこでお願いします」
そうして、お弁当の美味しさを見つけるため、という名のピクニックの依頼が出されるのであった。
リプレイ本文
柔らかい陽光を返す新緑鮮やかな野道に和気藹々の声が響く。
「フキノトウ。春の定番です」
「う、ウ……ウォールナッツのメイプル掛け。美味しいわよ」
羊谷 めい(ka0669)のしりとりから、続く高瀬 未悠(ka3199)の答えに全員が噴き出した。
「フォンダンショコラ、トリュフ、ウォールナッツのメイプル掛けと全部美味しいですね」
「むしろその回答がオイしい」
彼女が答えたものをきっちりリスト化したものを読み上げる天央 観智(ka0896)に肩をすくめるシャーリーン・クリオール(ka0184)。みんなの笑いに未悠は抗議した。
「だってどうせ言葉にするなら素敵なものがいいじゃない。口に出すだけで思い返す甘い香り……ああ、よだれが溢れるわ」
「未悠。ダメ。ミネアには危険すぎるから」
「そのフォローやめてぇ!?」
ナツキ(ka2481)がいう危険とは、つまりカロリー的なものであって、ミネアは頭を抱えて悲鳴を上げた。
「お料理も楽じゃないんですね。列車で食べるお弁当を開発なんて奇縁ですね」
まさかクリームヒルトの魔導列車で利用されるお弁当の開発をミネアが担当するとは、どちらにも関わった経験を持つリラ(ka5679)にとっても奇縁という言葉がぴったりだった。
「列車で食べるのに好いお弁当って言われても、……なにすれば全然わからなくて」
「だーいじょうぶ、リラならすっごいの作れるから! リラのお料理すごいんだよ」
「や、ちょっ、そんなことないですよ」
リラの背中をぽーんと叩くのはアクエリア・ルティス(ka6135)だ。
「わたしね、スパゲティにカレー乗ってるのがいい、あとデザートにはイチゴのショートね。クリームましましで!」
「もうアクアったら。列車は揺れるからカレーとかホイップクリームは難しいの」
リラの言葉にほへーっと感心して聞くアクアの純朴さが伝わってきて、ユメリア(ka7010)はくすりとほほ笑んだ。
「楽しい気持ちを詰め込むことは大切。だからこそ、こうして行楽に出向かれたのでしょう」
「そうね。誰かを幸せにしたいならまず自分が幸せにならないと。今日の幸せいっぱい詰め込みましょう」
ユメリアの言葉に未悠はしっかりと頷くとぐっと拳を握って語り掛けた。
「甘いものばかりになりませんように……。お弁当も経営も……バランスが大切……かと」
観智は片目だけ開いて、未悠のパンパンに膨らんだリュックサックを見つめた。その中身がほとんどお菓子であることは透視能力がなくとも観智には十分察知していた。
●
「リンゴ……ない」
林檎の樹にまたがり、覚醒した証の猫耳としっぽをしょんもりとさせながら未悠は呟いた。
季節は春。林檎の樹もまた若葉が眩しい。木漏れ日に白い肌をまだらにさせる未悠とアクアの元気っ娘二人組は樹の上で足をぶらぶらとさせるくらいしかすることがなかった。
「そもそも……秋の果物……でしたね」
観智の言う通り、完全に全員が、それこそミネアも忘れていた事実である。
「リンゴ……どうする?」
「そういうと思って、試作のお弁当と共に準備してきました!」
草原にぺたんとお姉さん座りのリラがリュックサックを開けると、そこにはリンゴが!
「リラ、さすがーっ!!」
真上からアクアが飛び降りざまにリラに抱き着き、そのまま草原に沈んだ。その上にシャーリーンもミネアも続いてリラをぎゅーっと抱きしめた。
「さすがはしっかり者のリラさん!!」
「どういたし……げふ……息、が」
人の団子の中から天に向かって伸ばされたぷるぷると震えていたが、リラのつぶやきと共にくたりと沈んだ。
「それじゃ早速料理だね」
シャーリーンが腕まくりする中、ミネアとユメリアのリュックサックからは肉、野菜、スパイスなどが出てくる。
「これだけあれば十分だね。それじゃクッキング開始だ。それじゃあ下ごしらえといこうか」
「あのっ、お手伝いさせて、ください」
倒木を寄せ集めて簡素なテーブルにしつらえたシャーリーンにめいが手を上げた。
そのどことなく必死な目をしばらくシャーリーンは見つめていたが、やがてにっこりと歯を見せて笑った。
「いいよ。もちろんだ。じゃあ、野菜を切ってもらおうかな。ジャガイモの皮むき」
「やった、がんばります!」
めいは目を輝かせるとジャガイモを軽く洗ってさっそくナイフを握った。
「えっと、猫の手で……あれ、あれ? えーと」
ジャガイモはころころと丸く猫の手ではなかなか抑えづらく、早速の悪戦苦闘中の様子。
「こういう時は、左手でしっかり握って、ナイフを内から外へ削るように……」
シャーリーンが後ろから包み込むようにしてめいの手を取りつつ教えると、めいも真剣な顔で危ない手つきながらもこなしていく。
「筋がいいね。誰かのために覚えようとしているのかい?」
「え、いや、その……花嫁修業に。とは思いましたけれど。でも、好きな人、親しい人の支えになれるのが嬉しいかなって。でもなかなか上手くいかなくって」
シャーリーンの質問に顔を赤らめながらも、懸命にジャガイモを剥いていくめい。
「何より大切なものはまず心。それに実直に従う心構えさ」
シャーリーンは微笑む横で悲鳴が聞こえた。めいが何事かとそちらを向くと、まず異様な香りがめいの鼻孔をくすぐった。
「なんかひどい匂いになってきたわ……これに何を足せばマシになるかしら」
どうやら臭いの元凶はマリネに使う酢にあれこれと足してしまった未悠が原因らしい。
「未悠、足し算じゃダメ。こういう時は引き算」
「引く……飲めばいいのかしら」
ナツキが少しだけ味見して震えあがりながらのヒントだったが、未悠はどうすればいいのかさっぱりだった。
やっぱり料理は向いてないのかな、と少し弱気になった瞬間。まあ、とユメリアがマリネ液を見て声を上げた。
「これだけあれば薄めて色んな使い方を楽しめますね」
「え……」
ユメリアは優しい笑顔で「これを使ってお料理しませんか」とまで言うのだから、決してフォローとして言っただけではないようで味見したナツキは信じられないような顔で尋ね返した。
「ユメリア、これ使えるの?」
「無論です」
ユメリアは水で薄めると、味見をしながら、ナツメグを入れたり、コショウを足したりとで数種類の調味液を作って見せた。
「すごい……私の作ったものがこんなになるなんて。もしかして料理の天才?」
「残念ながら私は詩人です。旅は長い方なので……気持ちを強く込められて溢れてしまう方もよく見ております」
料理も心がこもる。人生にも心がこもる。
ユメリアにはそれがどのようにほぐすことができるのか、よく知っているようであった。
「なるほど。料理も人と同じ……ですか……とすると、お弁当を作るというのは……差し詰め、一人の人間像を作り上げると……似たりということでしょうかね。自分と重ね合わせた人物像と……料理が重なると……喜ばれるのでしょうか」
観智はふぅむと手を口に当てて考えた。
料理を食べてもらうだけでなく、魔導列車に乗る人々の姿をぼんやりと思い浮かべる。
「魔導列車に乗る人は……帝国の農家と……商人……食べなれないものより……馴染んだ味を……好みそうですね」
「そうですね!」
食べる人のことをターゲットとして考える観智の言葉に、ユメリアは口元で手を軽く叩いて喜んだ。彼女の言いたいことをよく理解してくれたからであろう。
「うんうん、そういう『こんせぷと』は大事なのです。猫さんには猫さんのご飯。働く人には働く人に合わせたご飯」
三毛猫のフジヨシがご飯を早く食べたいのか、テーブルに向かってジャンプするのを拾い上げて「ねー」と相槌を求めると、フジヨシも「にゃー」と鳴き返した。ただお腹空いた。という意思表示かもしれないが。
「帝国と言えばジャガイモ……手軽に食べたいはず……マッシュポテトとか……パンにはさんでとか……」
「お仕事で大変だから、気持ちを入れ直すために、さっぱりしたのもいいかもしれません。炭酸水とか」
「疲れたときには甘いものがいいわ」
そんな次々と出てくる意見にミネアは目を輝かせた。みんなで話し合える、気持ちが一つにまとまるとあれだけ悩んでいたものが、ずっと現実味を帯びてくるのだから。
「いいね、いいね。それじゃバンバン作っていこー! 試食はあたしにまっかせて!!」
アクアの言葉に触発されて、みんなは「おーっ」と拳を突き上げた。
●
「この突き抜けるような香りっ……うまい、うーまーいーぞーーーーーっ」
口から怪光線が飛び出そうな勢いのアクアの感想。
「ほ、ほんと!?」
「ほんと、ほんと。れいくらでも食べられる。リンゴのマリネって初めて食べたけどずっごく美味しい、それに他の料理とも相性いいし、また戻ってきたくなるし、色の違うので少しずつ味が違うのも楽しい!!」
震える未悠の前に断然がっつきながらレポートするアクア。
「アクアってば……ほっぺにお弁当つけて、どこいくつもり」
あまりに食べることに夢中になるアクアに悪い気はしないが、頬にご飯粒をつけるのはいただけない。リラは眉尻を下げながら呆れた顔をしてご飯粒を自分の口に放り込んだ。
「どこに行くって、そりゃリラのお嫁さん!」
からっからと笑うアクアに、顔を赤らめて俯いたのはリラではなくて、めいの方だった。自分ももしかして料理を作る人に同じことを言われるのかな、と思うと、胸が高鳴って仕方ない。
「めいさんも、未悠殿も頑張ったおかげだね。って未悠殿?」
シャーリーンは試食組の高評価に満足げだったが、それよりも止まったままの未悠に気が付いた。口元を手で覆い隠した未悠は今にも泣きそうだった。
「私の作った料理が……美味しいって……言って、もらえた……!」
「おめでとうございます」
ユメリアはそんな未悠の頭に姫林檎の花で作った花冠をそっとのせてお祝いした。
「見た目もばっちり。こんせぷともばっちり」
ナツキも肉巻きリンゴを口にしながら、それよりもパイ皮を籠のようにして作ったお弁当箱が気に入っていた。マッシュポテトがサンドしてあるパン、林檎を器にしたマリネに、肉巻きリンゴは揚げたポテトを皿にして収まっている。その間に収まる手を汚さないようにするつまようじに付けられたウサギと猫の飾りが可愛らしい。そして付け合わせはミネアカンパニー謹製の万能調味料。
「ビクトリアス。食べちゃダメです」
愛らしさと美味しさが伝わるのか、ナツキのもう一匹の愛猫ビクトリアスは盛んにお弁当の周りをくるくると回っている。ナツキは二匹の食いしん坊たちを抱きかかえるのに精いっぱいになりながらも、関わったウサギさんも、そして猫さんもモチーフに入ってるお弁当には会心の出来を感じていた。
ナツキの無愛想な顔もちょっと照れ隠しに感じる。
「ジャガイモとリンゴ……帝国らしいお弁当ですね……このソーダも」
それから忘れてはならないのがポットに入ったリンゴソーダ。甘くはなく香りだけを楽しんで料理を邪魔しないし、帝国のもう一つの特色である錬金術をも思わせるところが観智も納得がいっていた。
「綺麗にまとまった! これならいろんなお客さんに喜んでもらえそう」
ミネアも満足そうにお弁当を見て頷き、それじゃあ最後に。
「ここでしか、このメンバーでしかできない最高の料理だもの。みんなで食べよっか」
それでは改めて。
みんなは手を合わせて声をそろえた。食べ物をいただくことに、それを創意工夫する知恵と技術に。それを支える仲間たちに。
「いただきますっ」
●
「それじゃ、食べた分だけ動きましょう」
ナツキのいつものジト目がミネアに向けられると同時に、フジヨシとベアトリクスがわっとミネアを川へと追い立てる。暖かい日が続いたといえどもさすがに川の水はまだ冷たく、足を突っ込んだミネアはしばらく震えあがった。
「わ、ちょっ。てやーっ、お水攻撃っ」
そして始まる大反撃。水は苦手な猫たちは慌てて回れ右してナツキへと突進していく。ということは水かけ攻撃ももちろんナツキに向かう。
「意外と、あくてぃぶ!」
猛反撃にびっくりしたナツキはすぐさま逃げ惑うが、それは川べりの岩を背もたれに今日のレシピなどを再確認していた観智にも二次被害を及ぼすのだが。
「完全な静けさよりも……このくらい賑やかなのも……悪くはないですね……」
本から目を離すでもなく、指先一つを立てると観智は覚醒して風の魔力を呼び起こし、飛沫を遥か天高くへと舞い上げた。
「朝露のようですね」
「本当、綺麗……」
舞い上がった飛沫はそれぞれ水の粒となり、森の中で陽光に反射して虹色の輝きを放つのを、めいとユメリアは見上げて楽しんでいた。そんな美しい光景を楽しむのは人間だけではないようで、それにめいはすぐに気が付いた。
「あ、リスさんがいます。かわいい」
めいが見上げている中で、リスはしばらく飛沫を見上げていたが、木に登ったアクアの手がそこまで近づいて、すぐさま枝からジャンプした。リスはそのまま、めいの肩に着地してくるくる忙しそうに回る。
「あ、めいのところに行った。巡り巡って結果オーライだね」
「私のためだったんですか」
「お土産にする果物を採るつもりだったんじゃないのかい」
シャーリーンの問いかけに、アクアはまた笑って、ぽんぽんと枝を叩いた。
「リスのカリカリコツコツする音が可愛いからね、一緒に音楽を奏でてもらおうと思ったんだよ。めいならリスと雰囲気似てるし。一緒に音楽奏でてくれるかなって」
アクアの悪戯っぽい笑顔にめいではなく、リスがキーキーと怒った気もするが、めいが撫でてやるとそれも収まった。アクアの似てるという所は案外鋭い洞察なのかもしれない。
「じゃあ、一曲みんなで歌いませんか。森と一緒に」
リラの提案にアクアと、それから詩人のユメリアが一番に賛成し、ユメリアが竪琴で風の音色、水のせせらぎに合わせて、音色を紡ぎあげる。
「♪素敵な日を ありがとう」
即興の音楽だけに歌詞などあるはずもない。
だけれど、未悠はすぐさま流れを理解すると、そのメロディにのせて濡れそぼったミネアとナツキに大きなタオルをかけて拭きながら、そう歌った。
日差しは温かく、心も温かく。疲れ果てて毛布にくるまって眠るその時間まで。
今日の幸せをかみしめよう。
歌声が自然とハーモニーを作り上げるのは、みんなだけではなく、包んでくれるこの山も、一緒になって歌ってくれているのかもしれない。
「フキノトウ。春の定番です」
「う、ウ……ウォールナッツのメイプル掛け。美味しいわよ」
羊谷 めい(ka0669)のしりとりから、続く高瀬 未悠(ka3199)の答えに全員が噴き出した。
「フォンダンショコラ、トリュフ、ウォールナッツのメイプル掛けと全部美味しいですね」
「むしろその回答がオイしい」
彼女が答えたものをきっちりリスト化したものを読み上げる天央 観智(ka0896)に肩をすくめるシャーリーン・クリオール(ka0184)。みんなの笑いに未悠は抗議した。
「だってどうせ言葉にするなら素敵なものがいいじゃない。口に出すだけで思い返す甘い香り……ああ、よだれが溢れるわ」
「未悠。ダメ。ミネアには危険すぎるから」
「そのフォローやめてぇ!?」
ナツキ(ka2481)がいう危険とは、つまりカロリー的なものであって、ミネアは頭を抱えて悲鳴を上げた。
「お料理も楽じゃないんですね。列車で食べるお弁当を開発なんて奇縁ですね」
まさかクリームヒルトの魔導列車で利用されるお弁当の開発をミネアが担当するとは、どちらにも関わった経験を持つリラ(ka5679)にとっても奇縁という言葉がぴったりだった。
「列車で食べるのに好いお弁当って言われても、……なにすれば全然わからなくて」
「だーいじょうぶ、リラならすっごいの作れるから! リラのお料理すごいんだよ」
「や、ちょっ、そんなことないですよ」
リラの背中をぽーんと叩くのはアクエリア・ルティス(ka6135)だ。
「わたしね、スパゲティにカレー乗ってるのがいい、あとデザートにはイチゴのショートね。クリームましましで!」
「もうアクアったら。列車は揺れるからカレーとかホイップクリームは難しいの」
リラの言葉にほへーっと感心して聞くアクアの純朴さが伝わってきて、ユメリア(ka7010)はくすりとほほ笑んだ。
「楽しい気持ちを詰め込むことは大切。だからこそ、こうして行楽に出向かれたのでしょう」
「そうね。誰かを幸せにしたいならまず自分が幸せにならないと。今日の幸せいっぱい詰め込みましょう」
ユメリアの言葉に未悠はしっかりと頷くとぐっと拳を握って語り掛けた。
「甘いものばかりになりませんように……。お弁当も経営も……バランスが大切……かと」
観智は片目だけ開いて、未悠のパンパンに膨らんだリュックサックを見つめた。その中身がほとんどお菓子であることは透視能力がなくとも観智には十分察知していた。
●
「リンゴ……ない」
林檎の樹にまたがり、覚醒した証の猫耳としっぽをしょんもりとさせながら未悠は呟いた。
季節は春。林檎の樹もまた若葉が眩しい。木漏れ日に白い肌をまだらにさせる未悠とアクアの元気っ娘二人組は樹の上で足をぶらぶらとさせるくらいしかすることがなかった。
「そもそも……秋の果物……でしたね」
観智の言う通り、完全に全員が、それこそミネアも忘れていた事実である。
「リンゴ……どうする?」
「そういうと思って、試作のお弁当と共に準備してきました!」
草原にぺたんとお姉さん座りのリラがリュックサックを開けると、そこにはリンゴが!
「リラ、さすがーっ!!」
真上からアクアが飛び降りざまにリラに抱き着き、そのまま草原に沈んだ。その上にシャーリーンもミネアも続いてリラをぎゅーっと抱きしめた。
「さすがはしっかり者のリラさん!!」
「どういたし……げふ……息、が」
人の団子の中から天に向かって伸ばされたぷるぷると震えていたが、リラのつぶやきと共にくたりと沈んだ。
「それじゃ早速料理だね」
シャーリーンが腕まくりする中、ミネアとユメリアのリュックサックからは肉、野菜、スパイスなどが出てくる。
「これだけあれば十分だね。それじゃクッキング開始だ。それじゃあ下ごしらえといこうか」
「あのっ、お手伝いさせて、ください」
倒木を寄せ集めて簡素なテーブルにしつらえたシャーリーンにめいが手を上げた。
そのどことなく必死な目をしばらくシャーリーンは見つめていたが、やがてにっこりと歯を見せて笑った。
「いいよ。もちろんだ。じゃあ、野菜を切ってもらおうかな。ジャガイモの皮むき」
「やった、がんばります!」
めいは目を輝かせるとジャガイモを軽く洗ってさっそくナイフを握った。
「えっと、猫の手で……あれ、あれ? えーと」
ジャガイモはころころと丸く猫の手ではなかなか抑えづらく、早速の悪戦苦闘中の様子。
「こういう時は、左手でしっかり握って、ナイフを内から外へ削るように……」
シャーリーンが後ろから包み込むようにしてめいの手を取りつつ教えると、めいも真剣な顔で危ない手つきながらもこなしていく。
「筋がいいね。誰かのために覚えようとしているのかい?」
「え、いや、その……花嫁修業に。とは思いましたけれど。でも、好きな人、親しい人の支えになれるのが嬉しいかなって。でもなかなか上手くいかなくって」
シャーリーンの質問に顔を赤らめながらも、懸命にジャガイモを剥いていくめい。
「何より大切なものはまず心。それに実直に従う心構えさ」
シャーリーンは微笑む横で悲鳴が聞こえた。めいが何事かとそちらを向くと、まず異様な香りがめいの鼻孔をくすぐった。
「なんかひどい匂いになってきたわ……これに何を足せばマシになるかしら」
どうやら臭いの元凶はマリネに使う酢にあれこれと足してしまった未悠が原因らしい。
「未悠、足し算じゃダメ。こういう時は引き算」
「引く……飲めばいいのかしら」
ナツキが少しだけ味見して震えあがりながらのヒントだったが、未悠はどうすればいいのかさっぱりだった。
やっぱり料理は向いてないのかな、と少し弱気になった瞬間。まあ、とユメリアがマリネ液を見て声を上げた。
「これだけあれば薄めて色んな使い方を楽しめますね」
「え……」
ユメリアは優しい笑顔で「これを使ってお料理しませんか」とまで言うのだから、決してフォローとして言っただけではないようで味見したナツキは信じられないような顔で尋ね返した。
「ユメリア、これ使えるの?」
「無論です」
ユメリアは水で薄めると、味見をしながら、ナツメグを入れたり、コショウを足したりとで数種類の調味液を作って見せた。
「すごい……私の作ったものがこんなになるなんて。もしかして料理の天才?」
「残念ながら私は詩人です。旅は長い方なので……気持ちを強く込められて溢れてしまう方もよく見ております」
料理も心がこもる。人生にも心がこもる。
ユメリアにはそれがどのようにほぐすことができるのか、よく知っているようであった。
「なるほど。料理も人と同じ……ですか……とすると、お弁当を作るというのは……差し詰め、一人の人間像を作り上げると……似たりということでしょうかね。自分と重ね合わせた人物像と……料理が重なると……喜ばれるのでしょうか」
観智はふぅむと手を口に当てて考えた。
料理を食べてもらうだけでなく、魔導列車に乗る人々の姿をぼんやりと思い浮かべる。
「魔導列車に乗る人は……帝国の農家と……商人……食べなれないものより……馴染んだ味を……好みそうですね」
「そうですね!」
食べる人のことをターゲットとして考える観智の言葉に、ユメリアは口元で手を軽く叩いて喜んだ。彼女の言いたいことをよく理解してくれたからであろう。
「うんうん、そういう『こんせぷと』は大事なのです。猫さんには猫さんのご飯。働く人には働く人に合わせたご飯」
三毛猫のフジヨシがご飯を早く食べたいのか、テーブルに向かってジャンプするのを拾い上げて「ねー」と相槌を求めると、フジヨシも「にゃー」と鳴き返した。ただお腹空いた。という意思表示かもしれないが。
「帝国と言えばジャガイモ……手軽に食べたいはず……マッシュポテトとか……パンにはさんでとか……」
「お仕事で大変だから、気持ちを入れ直すために、さっぱりしたのもいいかもしれません。炭酸水とか」
「疲れたときには甘いものがいいわ」
そんな次々と出てくる意見にミネアは目を輝かせた。みんなで話し合える、気持ちが一つにまとまるとあれだけ悩んでいたものが、ずっと現実味を帯びてくるのだから。
「いいね、いいね。それじゃバンバン作っていこー! 試食はあたしにまっかせて!!」
アクアの言葉に触発されて、みんなは「おーっ」と拳を突き上げた。
●
「この突き抜けるような香りっ……うまい、うーまーいーぞーーーーーっ」
口から怪光線が飛び出そうな勢いのアクアの感想。
「ほ、ほんと!?」
「ほんと、ほんと。れいくらでも食べられる。リンゴのマリネって初めて食べたけどずっごく美味しい、それに他の料理とも相性いいし、また戻ってきたくなるし、色の違うので少しずつ味が違うのも楽しい!!」
震える未悠の前に断然がっつきながらレポートするアクア。
「アクアってば……ほっぺにお弁当つけて、どこいくつもり」
あまりに食べることに夢中になるアクアに悪い気はしないが、頬にご飯粒をつけるのはいただけない。リラは眉尻を下げながら呆れた顔をしてご飯粒を自分の口に放り込んだ。
「どこに行くって、そりゃリラのお嫁さん!」
からっからと笑うアクアに、顔を赤らめて俯いたのはリラではなくて、めいの方だった。自分ももしかして料理を作る人に同じことを言われるのかな、と思うと、胸が高鳴って仕方ない。
「めいさんも、未悠殿も頑張ったおかげだね。って未悠殿?」
シャーリーンは試食組の高評価に満足げだったが、それよりも止まったままの未悠に気が付いた。口元を手で覆い隠した未悠は今にも泣きそうだった。
「私の作った料理が……美味しいって……言って、もらえた……!」
「おめでとうございます」
ユメリアはそんな未悠の頭に姫林檎の花で作った花冠をそっとのせてお祝いした。
「見た目もばっちり。こんせぷともばっちり」
ナツキも肉巻きリンゴを口にしながら、それよりもパイ皮を籠のようにして作ったお弁当箱が気に入っていた。マッシュポテトがサンドしてあるパン、林檎を器にしたマリネに、肉巻きリンゴは揚げたポテトを皿にして収まっている。その間に収まる手を汚さないようにするつまようじに付けられたウサギと猫の飾りが可愛らしい。そして付け合わせはミネアカンパニー謹製の万能調味料。
「ビクトリアス。食べちゃダメです」
愛らしさと美味しさが伝わるのか、ナツキのもう一匹の愛猫ビクトリアスは盛んにお弁当の周りをくるくると回っている。ナツキは二匹の食いしん坊たちを抱きかかえるのに精いっぱいになりながらも、関わったウサギさんも、そして猫さんもモチーフに入ってるお弁当には会心の出来を感じていた。
ナツキの無愛想な顔もちょっと照れ隠しに感じる。
「ジャガイモとリンゴ……帝国らしいお弁当ですね……このソーダも」
それから忘れてはならないのがポットに入ったリンゴソーダ。甘くはなく香りだけを楽しんで料理を邪魔しないし、帝国のもう一つの特色である錬金術をも思わせるところが観智も納得がいっていた。
「綺麗にまとまった! これならいろんなお客さんに喜んでもらえそう」
ミネアも満足そうにお弁当を見て頷き、それじゃあ最後に。
「ここでしか、このメンバーでしかできない最高の料理だもの。みんなで食べよっか」
それでは改めて。
みんなは手を合わせて声をそろえた。食べ物をいただくことに、それを創意工夫する知恵と技術に。それを支える仲間たちに。
「いただきますっ」
●
「それじゃ、食べた分だけ動きましょう」
ナツキのいつものジト目がミネアに向けられると同時に、フジヨシとベアトリクスがわっとミネアを川へと追い立てる。暖かい日が続いたといえどもさすがに川の水はまだ冷たく、足を突っ込んだミネアはしばらく震えあがった。
「わ、ちょっ。てやーっ、お水攻撃っ」
そして始まる大反撃。水は苦手な猫たちは慌てて回れ右してナツキへと突進していく。ということは水かけ攻撃ももちろんナツキに向かう。
「意外と、あくてぃぶ!」
猛反撃にびっくりしたナツキはすぐさま逃げ惑うが、それは川べりの岩を背もたれに今日のレシピなどを再確認していた観智にも二次被害を及ぼすのだが。
「完全な静けさよりも……このくらい賑やかなのも……悪くはないですね……」
本から目を離すでもなく、指先一つを立てると観智は覚醒して風の魔力を呼び起こし、飛沫を遥か天高くへと舞い上げた。
「朝露のようですね」
「本当、綺麗……」
舞い上がった飛沫はそれぞれ水の粒となり、森の中で陽光に反射して虹色の輝きを放つのを、めいとユメリアは見上げて楽しんでいた。そんな美しい光景を楽しむのは人間だけではないようで、それにめいはすぐに気が付いた。
「あ、リスさんがいます。かわいい」
めいが見上げている中で、リスはしばらく飛沫を見上げていたが、木に登ったアクアの手がそこまで近づいて、すぐさま枝からジャンプした。リスはそのまま、めいの肩に着地してくるくる忙しそうに回る。
「あ、めいのところに行った。巡り巡って結果オーライだね」
「私のためだったんですか」
「お土産にする果物を採るつもりだったんじゃないのかい」
シャーリーンの問いかけに、アクアはまた笑って、ぽんぽんと枝を叩いた。
「リスのカリカリコツコツする音が可愛いからね、一緒に音楽を奏でてもらおうと思ったんだよ。めいならリスと雰囲気似てるし。一緒に音楽奏でてくれるかなって」
アクアの悪戯っぽい笑顔にめいではなく、リスがキーキーと怒った気もするが、めいが撫でてやるとそれも収まった。アクアの似てるという所は案外鋭い洞察なのかもしれない。
「じゃあ、一曲みんなで歌いませんか。森と一緒に」
リラの提案にアクアと、それから詩人のユメリアが一番に賛成し、ユメリアが竪琴で風の音色、水のせせらぎに合わせて、音色を紡ぎあげる。
「♪素敵な日を ありがとう」
即興の音楽だけに歌詞などあるはずもない。
だけれど、未悠はすぐさま流れを理解すると、そのメロディにのせて濡れそぼったミネアとナツキに大きなタオルをかけて拭きながら、そう歌った。
日差しは温かく、心も温かく。疲れ果てて毛布にくるまって眠るその時間まで。
今日の幸せをかみしめよう。
歌声が自然とハーモニーを作り上げるのは、みんなだけではなく、包んでくれるこの山も、一緒になって歌ってくれているのかもしれない。
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/04/01 07:52:19 |
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ピクニックへ アクエリア・ルティス(ka6135) 人間(クリムゾンウェスト)|15才|女性|舞刀士(ソードダンサー) |
最終発言 2018/04/01 16:13:58 |