ゲスト
(ka0000)
平原地下迷宮のさらに奥へ……
マスター:なちゅい

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 少なめ
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/04/02 19:00
- 完成日
- 2018/04/06 20:30
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
グラズヘイム王国北西。
王都イルダーナと崖上都市「ピースホライズン」を繋ぐ街道の西、誰も通らぬ崖の下に、人知れず口を開けた地下迷宮がある。
この場所は久しく放棄されており、ハンターズソサエティも探索の手を伸ばすことはなかった。
しかしながら、近年のハンター達の活躍で、様々な事件、事柄が解決していく中、ハンターズソサエティにおいてこの迷宮の存在が再び注目されるようになった。
今回もまた、先日探索が開始されたばかりのこの迷宮へと、2度目の探索希望者募集を募っていたようだ。
王都イルダーナ。
そこに一旦集まったハンター達が、受付の糸目女性、シェリーに今回の状況について説明を受けていた。
「先日の探索においてはー、さらに下層へと続く階段を発見できましたー」
この為、前回探索部を第一層として、ハンター達は第二層の探索を踏まえた調査を始めることにする。
ただ、遺跡内部は雑魔の存在が確認されており、危険な状況だ。
一層目では、毒噛み付きや突進を使う全長50cmのネズミ、超音波を発しつつ飛びかかる1mのコウモリ。それに、全長2mまでに巨大化してその身を叩きつけ、あるいは相手を締め付けてくるミミズが確認されている。
「ハンター経験の浅い方にはー、あまりお勧めできない迷宮ではあるのですがー……」
似たような通路が続くこともあり、入る者を非常に惑わせ、対策なしに入れば出ることすら難しい迷宮だ。
ただ、すでにある程度探索が進んでいる一層目であれば、前回探索したハンターが記した地図を使うことで、ある程度安全に探索ができる。
また、熟練ハンターと共に行動し、彼らをうまくサポートすることで活躍はできるはずだ。遺跡探索などのノウハウも教えてもらうことができるだろう。
話を戻して、二層目に臨むのであれば、そこから先は情報がほとんど残されておらず、手探りでの探索となる。
『通路の回転に惑わされ……』
そんな文言がかすかに、ハンターズソサエティの記録に残されている。
似たような通路で回転する床。
対策を練らねばそれだけで方向感覚を惑わされ、出られなくなってしまいそうだ。
「そんなわけでー、出られなくなる危険もある迷宮ですのでー、くれぐれも対策は万全にー」
また、宝を求めて探索するのは良いが、過度な深入りは危険を招く。
最悪、探索隊を派遣するが、ハンターとして活動する以上、自己管理は大切だ。引き際を見定めて帰還することも重要だと言えるだろう。
「以上ですー、ご無理はなさらずにー」
そうして、資料配布と説明を終えたシェリーは、軽く手を振って地下迷宮に向かうハンター達を送り出すのである。
グラズヘイム王国北西。
王都イルダーナと崖上都市「ピースホライズン」を繋ぐ街道の西、誰も通らぬ崖の下に、人知れず口を開けた地下迷宮がある。
この場所は久しく放棄されており、ハンターズソサエティも探索の手を伸ばすことはなかった。
しかしながら、近年のハンター達の活躍で、様々な事件、事柄が解決していく中、ハンターズソサエティにおいてこの迷宮の存在が再び注目されるようになった。
今回もまた、先日探索が開始されたばかりのこの迷宮へと、2度目の探索希望者募集を募っていたようだ。
王都イルダーナ。
そこに一旦集まったハンター達が、受付の糸目女性、シェリーに今回の状況について説明を受けていた。
「先日の探索においてはー、さらに下層へと続く階段を発見できましたー」
この為、前回探索部を第一層として、ハンター達は第二層の探索を踏まえた調査を始めることにする。
ただ、遺跡内部は雑魔の存在が確認されており、危険な状況だ。
一層目では、毒噛み付きや突進を使う全長50cmのネズミ、超音波を発しつつ飛びかかる1mのコウモリ。それに、全長2mまでに巨大化してその身を叩きつけ、あるいは相手を締め付けてくるミミズが確認されている。
「ハンター経験の浅い方にはー、あまりお勧めできない迷宮ではあるのですがー……」
似たような通路が続くこともあり、入る者を非常に惑わせ、対策なしに入れば出ることすら難しい迷宮だ。
ただ、すでにある程度探索が進んでいる一層目であれば、前回探索したハンターが記した地図を使うことで、ある程度安全に探索ができる。
また、熟練ハンターと共に行動し、彼らをうまくサポートすることで活躍はできるはずだ。遺跡探索などのノウハウも教えてもらうことができるだろう。
話を戻して、二層目に臨むのであれば、そこから先は情報がほとんど残されておらず、手探りでの探索となる。
『通路の回転に惑わされ……』
そんな文言がかすかに、ハンターズソサエティの記録に残されている。
似たような通路で回転する床。
対策を練らねばそれだけで方向感覚を惑わされ、出られなくなってしまいそうだ。
「そんなわけでー、出られなくなる危険もある迷宮ですのでー、くれぐれも対策は万全にー」
また、宝を求めて探索するのは良いが、過度な深入りは危険を招く。
最悪、探索隊を派遣するが、ハンターとして活動する以上、自己管理は大切だ。引き際を見定めて帰還することも重要だと言えるだろう。
「以上ですー、ご無理はなさらずにー」
そうして、資料配布と説明を終えたシェリーは、軽く手を振って地下迷宮に向かうハンター達を送り出すのである。
リプレイ本文
●
グラズヘイム王国北西。
この地にやってきた5人のハンターが目指すは、平原に口を開く地下迷宮の入り口だ。
「さて、またこの迷宮を探索か」
そう呟いたのは、山奥の部族出身のレイア・アローネ(ka4082) 。
大きく肌を露出させた姿の彼女は、どこまで続くか分からぬ闇深き迷宮を見下ろす。
この迷宮の探索を進めることが、ハンターズソサエティの依頼である。
「マップ埋めたい病がムクムクしてきたぞぉ♪」
茶髪の青年、八島 陽(ka1442)は、気分よさ気に突入の為の準備を整える。
今回の参加人数、事前の話し合い状況を踏まえ、メンバー達は一層未踏部分の探索を進めようという方針となっていた。
「先を急ぐのも悪くないが、まずは足元を固めることからだな」
ロニ・カルディス(ka0551)は体力が完全に回復せぬ中での参加だったが、怪我を押してこの探索に臨む。
「思わぬところで後ろを突かれかねないリスクは、極力潰していこう」
下手に前のめりに下層へと探索を進めると、未踏の領域から何が現れるか分からない。今回はそれをなくす為の探索だと、ロニは位置づけている。
「こうなればとことん付き合おう。ロニ、陽、また宜しく頼む」
そんな仲間に、レイアが改めて挨拶を交わす。
ハンターズソサエティの依頼としては、2度目の探索。続けて依頼に臨む3人に、初参加の2人が加わる。
「どうぞ、よろしくお願いいたします」
リアルブルー出身の穂積 智里(ka6819)はドイツ系の日系人らしく、両目の青さと色白な肌な特徴的だ。
早期から参加を表明していた彼女だが、万全な準備ができておらず、不安要素を抱えていた様子である。
「まずは地盤固め、第一層の確実な調査ね」
神秘的な雰囲気も漂わせたアリア・セリウス(ka6424)も、すでに突入経験のあるメンバーの意向に沿うようだ。
「迷宮の奥に何が出てくるのか、興味は尽きないけれど」
こんな迷宮が用意されていたということは、奥底には相応のものがあるはず。
「藪蛇どころではないかもしれないけれど、何が起きるか判らない以上は……」
それを自分達の目で、確かめる必要がある。
アリアはそう考え、仲間と共に迷宮へと降りていく。
●
迷宮に降り立ち、石壁と石床に包まれた通路を見回す一行。
そこからどちらを向いても、同じような網目状の通路が続く。
不慮の事故でチームが分断される恐れもあるとロニは考え、用意した無線機をメンバーに手渡す。
「それじゃ、1階のどこに行きましょう?」
行き先を仲間に任せる智里は、灯火の水晶球での支援に当たるようだ。
「前回とは、反対側の探索だな」
レイアの言葉にアリアはなるほどと頷きながらも、魔導スマホを照明代わりに闇に覆われた通路を照らしていく。
また、レイアは、前回のマップを追記する形でマッパーを買って出ていた。
陽もまた、自前のセットでマッピングを行う。
各種便利道具にレンジャーキット。また、照明として灯火の水晶球と、探索に当たってしっかりと準備を整えている。
アリアも追記する形で、広がりを見せるマップに捕捉情報を記載していく。
ただ、それ以上にアリアは迷宮の壁、床に残る何らかの跡に注目し、迷宮の構造について注意深く調べていく。
「特に、危険なトラップがあれば、それを示す物が周囲に特徴としてあるかもしれないからね」
これだけ、似た通路の続く迷宮だ。
造られた目的は分からないが、利用していた者だけが分かる何かがあるはずだと、アリアは考えていたのだ。
「壁面など構造上で似通った部分がこの第一層にあれば、第二層にも同じものがあるかもしれないわね」
そんなふうに探索に臨むメンバーの中央から、ロニもあちらこちらを水晶球で照らし、死角がないよう立ち回る。
他メンバーがマッパーを行うこともあり、ロニは不足の事態に備える。
罠や雑魔の奇襲を警戒し、頭上や足元に違和感がないかと彼は注意を払っていた。
そのロニがメンバーに先駆け、雑魔の姿を発見することとなる。
通路前方の天井、暗がりにぶら下がる2つの黒い影。コウモリ雑魔に違いないだろう。
「第一層であれば、迷宮の強度や敵の強さは分かっているが……」
前を行くレイアも身構え、アリアも相手が掛かってこないかと剣に手をかける。
前回はいつまで探索が続くか分からなかった為、覚醒回数や疲弊状態なども想定して2交替で雑魔の対処を行っていたが、さすがにこの人数を2つに分けると交戦は厳しい。
雑魔もどうやら、こちらに気付いていない様子。いや、気付いているのに襲ってこない可能性もあるが……。
「今の状態なら、避けるほうが賢明だろうな」
「そうだな。無駄な戦いは避けたい」
ロニ、レイアの意見に反論は出ず、1本隣の通路を通ってコウモリ雑魔をやり過ごすことにする。
結局、雑魔がこちらを襲ってくることはなかった。
●
ハンター達は雑魔をやりすごしながら、探索を進めていく。
やがて、水平方向に広がる一層の端までやってくる。
前回発見した階段とは、真逆の位置にある場所。そこに、鳥かごや牢屋を思わせる何かがあった。
「なんだろう、これ」
陽がそのかごを剣の柄でコンコンと叩いてみるが、動く様子は無い。
そこで、智里がそういえばと声を出す。
「これ、エレベーター……昇降機、じゃないですかね」
リアルブルーだと、エレベーターは科学の発達により、電気を使ったものがほとんどである。
ただ、ここは科学がリアルブルーほど発達していないクリムゾンウェストだ。
どうやらマテリアルで動くようだが、移動の為のかご……乗り場はあれど、主電源に当たるものがこの場にはない。
かごの中に入ることはできるのだが、どうやっても動かないのだ。
「これを使えば、迷宮探索が楽になりそうなのにね」
「ともあれ、これは記しておこう」
アリアが少し残念がると、ロニがマップにこの昇降機の位置を記す。
そうして、一行は迷宮の探索へと戻るのである。
探索領域を広げるメンバー達は、雑魔を避けつつ先に進む。
雑魔のいる場所は多少穴が開いてはいたものの、全体の構造把握に努めるメンバー達はできる限り壁などを注意深く見つめて。
「前回は、宝箱が隠されてる仕掛けがあったからなぁ。トラップとかも隠されてたりしてね」
陽は再び剣の柄でコンコンと壁を叩いていると、途中に出っ張りがあることに気付く。
それをゆっくりと彼が押すと、前方通路を塞ぐように回転した壁から隠れた宝箱を発見することができた。
「少しだけ突き出した壁があったりするのね」
アリアが感心しているうちに、陽は早速トラップに注意しつつ、箱を開く。
罠は特に仕掛けられていなかったようで、メンバー達は1万G余りと古びたコンポジットボウを手に入れる。
お金は人数で山分けすることになり、弓は発見した陽が持つことになった。
「鑑定すれば、年代などから迷宮の手がかりになるかもしれんな」
「そうだね」
その鑑定をレイアが希望していたこともあり、陽はハンターズソサエティに戻ってから依頼を考えていたようだ。
ハンター達はその後さらに、下層に続く階段も発見する。
予め決めていたとおり、一層部分の探索に力を入れるメンバー達。
全員一致でこの階段を降りないことにし、入り口方向へと戻りながら地図の記入を進めていく。
「そろそろ休憩しない?」
程なくして、懐中時計を見ていた陽がそんな提案を行う。
歩き詰めだったメンバーは遺跡の端の壁を背にし、3方向が見える交差点で休むことにする。
各自、探索はさほど長くならないと踏んでいたのか、食料は用意していなかった。
そこで、陽は用意していたバラエティーランチを振る舞って。
「代わり映えしなくて、ごめんごめん」
とはいえ、変わらぬ品だからこそ、こうした探索ではありがたくもある。
小腹を満たしたメンバー達は英気を養い、残りの領域の地図を埋めるべく歩き始めた。
●
ここまでは比較的順調だったハンター達だったが、ある一件を契機に大きく状況が崩れることとなる。
メンバー達が発見したのは、壁に寄りかかる女性ハンターと思しき者の白骨遺体。
しかし、そのそばには2mもあるミミズ雑魔が徘徊している。
しばらく、動かずに敵が去っていくのを待とうかとも考えた一行だが、なかなか相手が動く様子も無い。
「弔いの為にも、遺体を搬送したいわね」
アリアの言葉に、皆が同意する。
このまま暗い場所に放置されるよりは人の手の行き届く場所で眠りにつきたいと、この女性も願っていることだろう。
そうなれば、ミミズは排除せねばならない。
メンバー達は各自覚醒し、ミミズ雑魔の排除へと乗り出す。
率先して仲間の前に立つのは、アリア、レイアの2人だ。
白雪のようなマテリアルを漂わせるアリア。彼女はミミズを正面から見据え、双龍剣『初魄』を横薙ぎに振るう。
レイアもできる限り短期決戦でと考え、攻めの構えから魔剣「シーガルスホルム」でミミズの体を寸断しようとする。
その身を切られたミミズにも、痛覚があるのだろうか。周囲の石壁を叩きつけるようにしてそいつは暴れ狂う。
「これ以上、傷つけるわけにはいかんな」
ロニは白骨遺体を視界の端に入れながら、マテリアルで作り出した無数の闇の刃で雑魔の体を切りつけていく。
雷撃を纏わせた光の障壁を展開する陽も、相手の突撃を警戒して弾き飛ばそうとしていた。
「ええっと……」
そんな中、何かあったのか、智里は戦場となる通路でうまく立ち回れずにいる。
動きが疎かになっている彼女を、雑魔が見過ごすはずも無い。
前衛陣を押しのけるように襲い来る敵は、尻尾を智里へと叩きつけてきた。
ロニが祈りの力で癒しに当たっていたのだが、さすがに集中して狙われる彼女をカバーしきれない。
「うぅっ……」
成す術なく、床に崩れ落ちる智里。
これ以上、彼女は狙われぬよう、ロニは一直線に雷撃を発して相手を牽制する。
他のメンバーも、攻撃の手は緩めていない。
両手に魔導剣と双龍剣を握ったアリアは、後ろに攻撃を通さないようにとそれぞれの刃で切りかかる。
「暗い所の生き物って、光属性の攻撃が効きそうな気がしない?」
陽は光の三角形を宙に浮かび上がらせ、頂点から光の光線を発していく。
光に射抜かれた敵は一層苦しむ。
闇に生きる雑魔にはやはり、光の術が大きな効果を発揮するようだ。
暴れ周るミミズ雑魔は、ハンター達の体を締め付けてこようとしてくる。
「地上と違う、嫌な風、ね……。これが地下で、光のない場所の、敵」
だからこそ、アリアは月の如く『初魄』の刃を煌かせて切りかかる。
ついに、その胴体が真っ二つに切り裂かれたミミズ雑魔の体が爆ぜ飛び、霧のようになって消えていく。
敵を倒しても、メンバー達の表情は険しい。智里はかろうじて歩けはするが、戦いに参加するのは難しそうだ。
また、先ほどの交戦の余波は免れたが、遺体は地上へと返したいというメンバー達の思いがある。
この女性を手厚く弔おうと、メンバー達はその遺体も搬送して地上を目指すのだった。
●
未踏領域を埋めながら、入り口へと戻るハンター達。
智里が深手を負っていること、そして、遺体も抱えていることもあって、一行は休憩前のように機敏な対処ができない。
雑魔から逃れることができず、戦いを重ねることとなる。
ネズミ雑魔3体、コウモリ雑魔2体とそれぞれ一戦交え、メンバーは出口を目指す。
無理するつもりはなかったロニだったが、交戦が続けば傷も増えてしまう。
全員がもう少し幅を持った探索方針、戦闘の立ち回りができていれば、もっと違っただろうか。
「すみません……」
「さすがに、今回はやむなしと言ったところか」
反省点も多かったと、智里が仲間達へと謝罪の言葉を口にする。
ただ、ロニも割り切って時折、彼女の手当てに当たっていたようだった。
なんとか入り口へと戻り、外へと出たハンター一行。
「あーっ、開・放・感!」
太陽の下に出た陽は大きく背伸びをする。
怪我人こそ出てしまったが、一層部分の大半を埋めることができた。
何より、昇降機の存在を発見したのは大きいと言えるだろう。
ともあれ、女性の亡骸を弔う為、そして、傷の深い智里を休ませる為、メンバー達は近場の集落へと移動していくのだった。
グラズヘイム王国北西。
この地にやってきた5人のハンターが目指すは、平原に口を開く地下迷宮の入り口だ。
「さて、またこの迷宮を探索か」
そう呟いたのは、山奥の部族出身のレイア・アローネ(ka4082) 。
大きく肌を露出させた姿の彼女は、どこまで続くか分からぬ闇深き迷宮を見下ろす。
この迷宮の探索を進めることが、ハンターズソサエティの依頼である。
「マップ埋めたい病がムクムクしてきたぞぉ♪」
茶髪の青年、八島 陽(ka1442)は、気分よさ気に突入の為の準備を整える。
今回の参加人数、事前の話し合い状況を踏まえ、メンバー達は一層未踏部分の探索を進めようという方針となっていた。
「先を急ぐのも悪くないが、まずは足元を固めることからだな」
ロニ・カルディス(ka0551)は体力が完全に回復せぬ中での参加だったが、怪我を押してこの探索に臨む。
「思わぬところで後ろを突かれかねないリスクは、極力潰していこう」
下手に前のめりに下層へと探索を進めると、未踏の領域から何が現れるか分からない。今回はそれをなくす為の探索だと、ロニは位置づけている。
「こうなればとことん付き合おう。ロニ、陽、また宜しく頼む」
そんな仲間に、レイアが改めて挨拶を交わす。
ハンターズソサエティの依頼としては、2度目の探索。続けて依頼に臨む3人に、初参加の2人が加わる。
「どうぞ、よろしくお願いいたします」
リアルブルー出身の穂積 智里(ka6819)はドイツ系の日系人らしく、両目の青さと色白な肌な特徴的だ。
早期から参加を表明していた彼女だが、万全な準備ができておらず、不安要素を抱えていた様子である。
「まずは地盤固め、第一層の確実な調査ね」
神秘的な雰囲気も漂わせたアリア・セリウス(ka6424)も、すでに突入経験のあるメンバーの意向に沿うようだ。
「迷宮の奥に何が出てくるのか、興味は尽きないけれど」
こんな迷宮が用意されていたということは、奥底には相応のものがあるはず。
「藪蛇どころではないかもしれないけれど、何が起きるか判らない以上は……」
それを自分達の目で、確かめる必要がある。
アリアはそう考え、仲間と共に迷宮へと降りていく。
●
迷宮に降り立ち、石壁と石床に包まれた通路を見回す一行。
そこからどちらを向いても、同じような網目状の通路が続く。
不慮の事故でチームが分断される恐れもあるとロニは考え、用意した無線機をメンバーに手渡す。
「それじゃ、1階のどこに行きましょう?」
行き先を仲間に任せる智里は、灯火の水晶球での支援に当たるようだ。
「前回とは、反対側の探索だな」
レイアの言葉にアリアはなるほどと頷きながらも、魔導スマホを照明代わりに闇に覆われた通路を照らしていく。
また、レイアは、前回のマップを追記する形でマッパーを買って出ていた。
陽もまた、自前のセットでマッピングを行う。
各種便利道具にレンジャーキット。また、照明として灯火の水晶球と、探索に当たってしっかりと準備を整えている。
アリアも追記する形で、広がりを見せるマップに捕捉情報を記載していく。
ただ、それ以上にアリアは迷宮の壁、床に残る何らかの跡に注目し、迷宮の構造について注意深く調べていく。
「特に、危険なトラップがあれば、それを示す物が周囲に特徴としてあるかもしれないからね」
これだけ、似た通路の続く迷宮だ。
造られた目的は分からないが、利用していた者だけが分かる何かがあるはずだと、アリアは考えていたのだ。
「壁面など構造上で似通った部分がこの第一層にあれば、第二層にも同じものがあるかもしれないわね」
そんなふうに探索に臨むメンバーの中央から、ロニもあちらこちらを水晶球で照らし、死角がないよう立ち回る。
他メンバーがマッパーを行うこともあり、ロニは不足の事態に備える。
罠や雑魔の奇襲を警戒し、頭上や足元に違和感がないかと彼は注意を払っていた。
そのロニがメンバーに先駆け、雑魔の姿を発見することとなる。
通路前方の天井、暗がりにぶら下がる2つの黒い影。コウモリ雑魔に違いないだろう。
「第一層であれば、迷宮の強度や敵の強さは分かっているが……」
前を行くレイアも身構え、アリアも相手が掛かってこないかと剣に手をかける。
前回はいつまで探索が続くか分からなかった為、覚醒回数や疲弊状態なども想定して2交替で雑魔の対処を行っていたが、さすがにこの人数を2つに分けると交戦は厳しい。
雑魔もどうやら、こちらに気付いていない様子。いや、気付いているのに襲ってこない可能性もあるが……。
「今の状態なら、避けるほうが賢明だろうな」
「そうだな。無駄な戦いは避けたい」
ロニ、レイアの意見に反論は出ず、1本隣の通路を通ってコウモリ雑魔をやり過ごすことにする。
結局、雑魔がこちらを襲ってくることはなかった。
●
ハンター達は雑魔をやりすごしながら、探索を進めていく。
やがて、水平方向に広がる一層の端までやってくる。
前回発見した階段とは、真逆の位置にある場所。そこに、鳥かごや牢屋を思わせる何かがあった。
「なんだろう、これ」
陽がそのかごを剣の柄でコンコンと叩いてみるが、動く様子は無い。
そこで、智里がそういえばと声を出す。
「これ、エレベーター……昇降機、じゃないですかね」
リアルブルーだと、エレベーターは科学の発達により、電気を使ったものがほとんどである。
ただ、ここは科学がリアルブルーほど発達していないクリムゾンウェストだ。
どうやらマテリアルで動くようだが、移動の為のかご……乗り場はあれど、主電源に当たるものがこの場にはない。
かごの中に入ることはできるのだが、どうやっても動かないのだ。
「これを使えば、迷宮探索が楽になりそうなのにね」
「ともあれ、これは記しておこう」
アリアが少し残念がると、ロニがマップにこの昇降機の位置を記す。
そうして、一行は迷宮の探索へと戻るのである。
探索領域を広げるメンバー達は、雑魔を避けつつ先に進む。
雑魔のいる場所は多少穴が開いてはいたものの、全体の構造把握に努めるメンバー達はできる限り壁などを注意深く見つめて。
「前回は、宝箱が隠されてる仕掛けがあったからなぁ。トラップとかも隠されてたりしてね」
陽は再び剣の柄でコンコンと壁を叩いていると、途中に出っ張りがあることに気付く。
それをゆっくりと彼が押すと、前方通路を塞ぐように回転した壁から隠れた宝箱を発見することができた。
「少しだけ突き出した壁があったりするのね」
アリアが感心しているうちに、陽は早速トラップに注意しつつ、箱を開く。
罠は特に仕掛けられていなかったようで、メンバー達は1万G余りと古びたコンポジットボウを手に入れる。
お金は人数で山分けすることになり、弓は発見した陽が持つことになった。
「鑑定すれば、年代などから迷宮の手がかりになるかもしれんな」
「そうだね」
その鑑定をレイアが希望していたこともあり、陽はハンターズソサエティに戻ってから依頼を考えていたようだ。
ハンター達はその後さらに、下層に続く階段も発見する。
予め決めていたとおり、一層部分の探索に力を入れるメンバー達。
全員一致でこの階段を降りないことにし、入り口方向へと戻りながら地図の記入を進めていく。
「そろそろ休憩しない?」
程なくして、懐中時計を見ていた陽がそんな提案を行う。
歩き詰めだったメンバーは遺跡の端の壁を背にし、3方向が見える交差点で休むことにする。
各自、探索はさほど長くならないと踏んでいたのか、食料は用意していなかった。
そこで、陽は用意していたバラエティーランチを振る舞って。
「代わり映えしなくて、ごめんごめん」
とはいえ、変わらぬ品だからこそ、こうした探索ではありがたくもある。
小腹を満たしたメンバー達は英気を養い、残りの領域の地図を埋めるべく歩き始めた。
●
ここまでは比較的順調だったハンター達だったが、ある一件を契機に大きく状況が崩れることとなる。
メンバー達が発見したのは、壁に寄りかかる女性ハンターと思しき者の白骨遺体。
しかし、そのそばには2mもあるミミズ雑魔が徘徊している。
しばらく、動かずに敵が去っていくのを待とうかとも考えた一行だが、なかなか相手が動く様子も無い。
「弔いの為にも、遺体を搬送したいわね」
アリアの言葉に、皆が同意する。
このまま暗い場所に放置されるよりは人の手の行き届く場所で眠りにつきたいと、この女性も願っていることだろう。
そうなれば、ミミズは排除せねばならない。
メンバー達は各自覚醒し、ミミズ雑魔の排除へと乗り出す。
率先して仲間の前に立つのは、アリア、レイアの2人だ。
白雪のようなマテリアルを漂わせるアリア。彼女はミミズを正面から見据え、双龍剣『初魄』を横薙ぎに振るう。
レイアもできる限り短期決戦でと考え、攻めの構えから魔剣「シーガルスホルム」でミミズの体を寸断しようとする。
その身を切られたミミズにも、痛覚があるのだろうか。周囲の石壁を叩きつけるようにしてそいつは暴れ狂う。
「これ以上、傷つけるわけにはいかんな」
ロニは白骨遺体を視界の端に入れながら、マテリアルで作り出した無数の闇の刃で雑魔の体を切りつけていく。
雷撃を纏わせた光の障壁を展開する陽も、相手の突撃を警戒して弾き飛ばそうとしていた。
「ええっと……」
そんな中、何かあったのか、智里は戦場となる通路でうまく立ち回れずにいる。
動きが疎かになっている彼女を、雑魔が見過ごすはずも無い。
前衛陣を押しのけるように襲い来る敵は、尻尾を智里へと叩きつけてきた。
ロニが祈りの力で癒しに当たっていたのだが、さすがに集中して狙われる彼女をカバーしきれない。
「うぅっ……」
成す術なく、床に崩れ落ちる智里。
これ以上、彼女は狙われぬよう、ロニは一直線に雷撃を発して相手を牽制する。
他のメンバーも、攻撃の手は緩めていない。
両手に魔導剣と双龍剣を握ったアリアは、後ろに攻撃を通さないようにとそれぞれの刃で切りかかる。
「暗い所の生き物って、光属性の攻撃が効きそうな気がしない?」
陽は光の三角形を宙に浮かび上がらせ、頂点から光の光線を発していく。
光に射抜かれた敵は一層苦しむ。
闇に生きる雑魔にはやはり、光の術が大きな効果を発揮するようだ。
暴れ周るミミズ雑魔は、ハンター達の体を締め付けてこようとしてくる。
「地上と違う、嫌な風、ね……。これが地下で、光のない場所の、敵」
だからこそ、アリアは月の如く『初魄』の刃を煌かせて切りかかる。
ついに、その胴体が真っ二つに切り裂かれたミミズ雑魔の体が爆ぜ飛び、霧のようになって消えていく。
敵を倒しても、メンバー達の表情は険しい。智里はかろうじて歩けはするが、戦いに参加するのは難しそうだ。
また、先ほどの交戦の余波は免れたが、遺体は地上へと返したいというメンバー達の思いがある。
この女性を手厚く弔おうと、メンバー達はその遺体も搬送して地上を目指すのだった。
●
未踏領域を埋めながら、入り口へと戻るハンター達。
智里が深手を負っていること、そして、遺体も抱えていることもあって、一行は休憩前のように機敏な対処ができない。
雑魔から逃れることができず、戦いを重ねることとなる。
ネズミ雑魔3体、コウモリ雑魔2体とそれぞれ一戦交え、メンバーは出口を目指す。
無理するつもりはなかったロニだったが、交戦が続けば傷も増えてしまう。
全員がもう少し幅を持った探索方針、戦闘の立ち回りができていれば、もっと違っただろうか。
「すみません……」
「さすがに、今回はやむなしと言ったところか」
反省点も多かったと、智里が仲間達へと謝罪の言葉を口にする。
ただ、ロニも割り切って時折、彼女の手当てに当たっていたようだった。
なんとか入り口へと戻り、外へと出たハンター一行。
「あーっ、開・放・感!」
太陽の下に出た陽は大きく背伸びをする。
怪我人こそ出てしまったが、一層部分の大半を埋めることができた。
何より、昇降機の存在を発見したのは大きいと言えるだろう。
ともあれ、女性の亡骸を弔う為、そして、傷の深い智里を休ませる為、メンバー達は近場の集落へと移動していくのだった。
依頼結果
参加者一覧
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マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/04/02 17:23:27 |
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ダンジョンハック ロニ・カルディス(ka0551) ドワーフ|20才|男性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2018/04/02 17:38:10 |