【AP】たそがれ城の悩みの種

マスター:狐野径

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
  • duplication
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
無し
相談期間
5日
締切
2018/04/10 12:00
完成日
2018/04/16 03:29

このシナリオは2日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 夢の中、死者が住む場所。
 そもそも歪虚って死の先で……まあ、ここは夢の世界。
 夢の世界なのだから!

●レチ人形はうめく
 死者が訪れる城とか夢の中に存在する城と言われる、たそがれ城。この名前もレチタティーヴォが勝手に言っただけで本当の名前か知らない。
 そんな城の中をレチタティーヴォ人形が歩いていた。高さ30~40センチ、布と綿と、毛糸とボタンと言ったごくありふれた素材でできた手作り風な人形。たぶん、手作りだけれど誰が作ったか知らない。初期型とか特別版とか言われている個体である。
 ただの人形だけれど、城の中では自由に動きしゃべる、おやつを食べ紅茶を飲む。
『平和だなー』
 とことこと歩くと、プエル人形(約30体)と遭遇した。一体ずつ金と銀の人形がいるのは、なぜか増えたから。
 そして、あいさつ代わりにもみくちゃにされる。プエル人形はしゃべらない。しゃべらないけれど、その分全身でしゃべるため動きがうるさい。このもみくちゃは毎度のことで挨拶なのだ。
 ――レチ様、おはよう。
 言葉にするとこんな感じ。
『ところで、最近、プエルを見ないのだが……』
 数日前、プエルは尊敬するボス・レチタティーヴォに向かって抱き着こうとダイブしていた、地面に。避けられた結果なのだけれど、なぜか彼は抱き着こうと必死だ。その上、ハンターに淹れ方を教わった珈琲を飲んでもらおうと必死だ。
 夢だろうが何だろうが食事いらないのだけど。ツッコミ役が不在だったり、説明を面倒臭がる存在が多すぎてプエルはレチタティーヴォに正面から挑む。
 プエル自体は「食べて飲んでもいいなら食べて飲む、好きなだけ」ということらしい。結果、ボス巻き込まれた。
『お前たちは見た?』
 プエル人形たちに問う。
 彼らが語るところによれば「母上に捕まった」とのこと。
『そうか……母上に……え? 母上!?』
 プエル人形はこくんとうなずく。
 表舞台から去った歪虚がここにいるのだから死者がいてもおかしくない。プエルの生前、ニコラス・クリシスの母親がいてもおかしくはない。
『プエルは母親の愛を独り占めで来たのだな』
 レチ人形はいい話だと目もとをぬぐう。拭ったところでボタンの目に涙が浮かんだりしないのだけれども。
 プエル人形が一斉に首を横に振った。
 どうやら違うらしい。レチ人形は見に行くことにした。

●ぽふぽふはノックの音
 プエルの部屋にやってきてノックをしてみた。
「どなたかしら?」
 暗い髪色のドレス姿の女性がいる。プエルや彼の妹イノア・クリシスを知っている人がいればどこか似ている雰囲気がある女性だ。
 女性は視線の前に誰もいないため扉を閉じようとした。
『ここだここだ!』
 その隙にプエル人形が中に入っていくが、丁重に女性によって追い出されていく。
「まあ……人形が、しゃべっているのね……ここは変なところだから仕方がないわね」
『プエルと遊ぼうと思うのだが』
「部屋を間違っています」
『いやいや』
「ふえええ、レサニプ助けてええ」
 奥からプエルの声が響く。
『わかった! ってレサニプって何?』
「『レ』チタティーヴォ『さ』ま『に』ん形『プ』ロトタイプの略」
 ケロリとした声でプエルが返してきた。
「駄目です! あなたはいつなんどきでもクリシス家の跡取りとしてしっかりとしないといけません」
「嫌だああ。僕は死んだ上に、歪虚になったのに、なんでえええ」
「ニコラス! そんな甘ったれた言葉遣いは許しません」
「ふええええ」
「泣くんじゃありません!」
「ふええええ。せめて、家庭教師はもっと現代を知っている人にして!」
 プエルが交換条件を出す。
「紅葉がいい! あの人なら、色々知っているし、優しい」
 プエルは大江 紅葉ならば、「可哀相」とか言って遊ばせてくれるに違いないと思っている。
「どなたですか?」
「エトファリカの符術師で優しいの」
「エトファリカ?」
「……ほら、母上は現代に弱い……う、ああ、ニコラス、なんで僕の顔ふさぐんだ!」
 プエルは平然と言ってのけるが、その直後、悲鳴を上げる。
 レチ人形から見えないけれど、冬に湧いて出たニコラス人形(プエル人形の目のボタンが違うのと口元がちょっと真っ直ぐ)はプエルの肩を定位置としている。頭に引っ付くことが多いのだが、時々顔の正面に来るらしい。
「……わかりました。そこの人形たち、その人物を探して来たら、ニコラスと遊ぶことを一時間だけ許可します」
 プエルの悲鳴を華麗に母親が流した。
 レチ人形は複雑な表情を浮かべたつもりになってプエル人形を引き連れて部屋を出た。
『しかし、紅葉なんてどうやって探せばいいんだ!!』
 レチ人形は叫んだ後、走り出す。その後ろをプエル人形たちがついていくのだった……「あ、いい匂いがする」と台所に数体消えたり、飛んでるちょうちょ見て違う方向に行ったのもいるけれどね。

リプレイ本文

●クッキー
 アルマ・A・エインズワース(ka4901)は台所でクッキーを焼いていた。
「今日のおやつです……おやつ!?」
 驚きを禁じ得ない分量だ。
「どうして、ここでクッキーを焼いているんです?」
 状況を把握しようと努めつつ、窯の焼けたクッキーを取り出した。
 アルマは紫のボタンが三組見つめるのに気づかなかった。

 レイア・アローネ(ka4082)は左右上下見て確認を終える。石造りの城であり、絨毯や家具もなかなか立派である。
「で、どこだ!」
 気づいたらここにいたとしかいえない。
 カツーン、カツーン……。
 近づいてくるモノに対し、武器に手を載せ警戒する。
 しかし、相手もレイアに警戒したのか気配が消える。
 角から来たリュー・グランフェスト(ka2419)は武器から手を離した。二人は安堵の息を吐いた。
 ぽふ、かさ、ぽふ、かささと謎の音がしている庭に目をやる。
 花が咲き、ちょうちょが飛ぶ、のどかな風景。
 ちょうちょを追いかけるのは三十センチほどの三体の人形。
 一般的に人形は動かない。
 リューはプエル人形だと理解した瞬間、すべてを受け入れることにした。
「……ようするに、夢なんだな」
 目を覚ませば終わる、忘れる。

 星野 ハナ(ka5852)は城の玄関に「大江 紅葉(kz0163)を探して」という張り紙をみつけた。レチタティーヴォ人形(以下レチ人形)が困って張ったらしいが高さ一メートル以下なので見づらい。
「なるほど。今日もレチタン捕獲作戦ですぅ? 私の占いが火を噴きますよぅ」
 レチタンことレチタティーヴォの名が出てくる。これには深い意味があったのだった?

 ルベーノ・バルバライン(ka6752)は一度来た記憶のある場所だと気づいた。目の前を見覚えのある人形が十数体通り過ぎる。
「何事?」
 人形の動きが止まり、Uターンしてルベーノを囲った。
『張り紙をしたって仕方がない! こういう時はハンターに頼めばいいのだ!』
「説明しろ」
 レチ人形とプエル人形たちが喜びを分かち合っているのを、ルベーノは眺めることになる。

 和住 珀音 (ka6874)は見知らぬ所で緊張するが、様子をうかがうと安全は確保されていると感じた。
「プエル様と遊ぶか、大江 紅葉様を探すか……まずは紅葉様を探しましょう」
 把握した状況から紅葉の情報からどのあたりにいそうか考える。それは確実ではないが、個人的にも本が気になるので図書室に向かった。

●捕獲
 アルマはクッキーを焼き終えた。数が減っている上に、何かの気配も感じる。
「ネズミですか?」
 ネズミではない気がする。
 現場を見ているが動かない。片付けのためにテーブルから目をそらすとクッキーは消える。片付けるふりをして二秒で振り返った。
 テーブルの上に一体、テーブルの脚に張り付いているのが一体、床の上でクッキーを抱えているの一体、計三体のプエルぽい人形。
「あ、」
 アルマが挨拶しつつ近付く間に、それらは逃げ出した。手にそれぞれクッキーを持って。
「……クッキーはあげます、逃げなくても!」
 声は届かない。仕方がないのでクッキーを籠に入れて捜索することにした。

 リューとレイアは出会ったプエル人形と対話を試みた。
「これから話を聞けるだろうか」
 レイアはしゃがむ。プエル人形は警戒をしているのか左右に揺れている。
「ここはどこだ」
 プエル人形たちは首をかしげ、互いに顔を見合わせた後レイアの方を向いた。
「……わからない」
「そいつらは喋っているつもりだな」
 レイアはリューを見上げる。
「知っているのか?」
「これ、プエル(kz0127)の人形だ」
「プエル?」
 リューはかくかくしかじかと話す。
「歪虚がいるのか」
「あっちにはいない」
「……?」
「つまり、ここは夢の世界なんだ」
「え」
「目を覚ますと忘れる」
 二人が話を聞いている間、プエル人形は跳ね始める。
「どうしたら戻れるんだ」
「目が覚めれば……か、目的を達成すれば」
「目的か……お前たち何か知っているか?」
 人形たちは腕を組み、左右に揺れる。たぶん、考えているポーズ。手をポンとたたいた。
 とことこと走り出すと、時々振り返って二人を見る。
「来いってことか?」
「そうだろうな……行くか」
 レイアとリューは人形の後ろを行く。

 ルベーノはレチ人形に聞いた部屋に向かった。
 ニコラスの母は人間の来訪に驚く。
「何の用ですか?」
「おじさん、助けてええ」
「お、おじ!?」
 ルベーノは部屋の奥からのプエル発言は気にしないし気になりもするが、聞き流した。
「紅葉を探すのは構わん。プエルはニコラスと同じではないぞ」
 きっぱりと言われ母親はむっとした表情を一瞬だけ作った。
「死んだあとまで好まぬことをやらされるのは必要はない。死者は生者の国を治められんのだ」
「そんなことわかっています」
「なら」
「この城以外に何かあるかもしれないですわ」
「ん」
 城は夢や死者の世界となっているが、外は誰も知らない。
「それならば、ニコラスはどこに出しても恥ずかしくないクリシス家の……」
「だから……プエルは……」
 ルベーノは母親の表情を見てハッとする。彼女は気づき、寂しかったのかもしれない、と。ニコラスとプエルは雰囲気は違うし、目の色は完全に違う。
「ひとまず、紅葉を探してくる。そのあと、プエルがいなくなった後の話でもするか……俺はプエルを送るとき、力になると約した。たとえここが夢だとしても、お前を気に掛けることは当然」
「おじさん!」
 プエルの感極まった声。
「……いいんだが」
 ルベーノは捜索に向かった。

 珀音は図書室で紅葉と話すために紅茶の本を探そうと考えた。
 図書室の扉を開けて入ると、中は広い。入ってすぐは大きなテーブルと椅子があり、調べ物ができるようになっている。書見台も壁際に何台かある。
「こんにちは」
 思わず、声をかけた。ここに来る間、人に会っていないため、少し寂しいかもしれない。
 珀音は書架を見る。分類もされており見やすいが、珀音の知らない分類法だ。
 入ってすぐの壁に分類の一覧が掲載されている。
「大分類がこれで、中分類、小分類……私が探そうとしているのはここですね」
 本棚を探すことにした。

「紅葉さんはレチタン捕まえれば出てくると思いますぅ。レチタン捕まえようとすごく変なところで休んでいるんじゃないでしょうか? そういうときこそこれです」
 ハナはタロットカードを取り出す。
「歪虚や死者は【生命感知】にかからないから探しにくいですぅ」
 紅葉の居場所を調べると早いのではないのでは、と言ってくれる人物が欠如している。
「失せモノはこっちですぅ!」
 目標に向かって一直線に走る。
「これが終わったらお茶会もいいですねぇ」
 たどり着いた。
「はっ!」
『うわあ』
 ハナはそれを見た瞬間、なぜか手に木の枝を持っていた。
 レチ人形はハナを見た瞬間、ボタンの目に恐怖の色を浮かべた?
 プエル人形たちはじっとしている。
 ハナは手にした木の枝を――。
「あ、つい、うっかりですぅ。お茶会だなと思っていたときに、まだ口はこれか、と思ったら手が滑りました」
『ぎゃああああああああああああ』
 ハナはすべてをやり切り、カワイイしぐさで弁解をしておく。
 しかし、その足元では刺繍糸で描かれた口から脳天に枝を突き刺されたレチ人形が倒れている。
 プエル人形たちはレチ人形に群がる、おろおろする、果敢にもハナに向かうモノという行動に分かれたのだった。

●前進
 リューとレイアは人形たちの案内でニコラス母の部屋に到着し、話を聞いた。
「勉強した方がアイツのためにも世の中のためにもなる。もっと厳しくやっていいと思う」
 リューがはっきり言った。
「ハンターは裏切り者だ」
 部屋の奥から悲鳴がする。
「いや、歪虚に言われたくない」
「リュー、あれは憐ぽいが……いいのか」
「歪虚だし」
「とはいえ、気の毒に聞こえるな……」
 レイアは現状から感じたことを告げる。
「お姉さん、素敵!」
 調子の良い声が聞こえたため、レイアは「まじめに応対すると駄目かもしれない」と気づいた。
「リューの言う通り、勉強していいかもしれない」
「だろ?」
 奥からブーイングが起きる。
「で、紅葉探すなら、顔ぐらい知らないとな。特徴とか、似顔絵とか」
 リューは一応協力を申し出ておく。部屋の奥から目のボタンが違う人形が一枚の絵を渡し引っ込んだ。
「……うまいな」
「本当だ」
 二人が素直に褒めると、ニコラスの母親は嬉しそうだった。

 アルマが中庭を歩いているとプエル人形が植え込みから出てきた。アルマを見ると、びくっと身を震わせたあと、何もなかったように歩いていく。
「これはいい子が悪いことをしたときに見つかったかもというしぐさです」
 解説の後、プエル人形が出てきたところを見てみた。
 植え込みの土は掘り返されている。掘ってみるとクッキーが出てきた。
「……犬? 烏?」
 数秒考えたが答えは出ないので本人に聞こうと探す。中庭を進むと、建物の窓に死んだ魚のような目のプエルを発見した。
「わふー! プエルさん、こんなところにいたんですね」
 プエルが窓を開けると、背後に母親が迫る。
「あなたも悪い子なら脱走の一つや二つするのですー」
「何を教えるのですか!」
「僕はいい子だ! だから、レチタティーヴォ様は僕を褒めてくれるべきだ!」
 アルマの提案に母親とプエルから即反論がある。
「えっと……お母さんも、缶詰にしちゃだめです! お外を知らない領主さんは良い子にならないですー」
「それは」
 アルマはスキルとなぜか持っているアイテムを使って、窓まで上がると、プエルを連れて逃げ出したのだった。

 珀音が本を探しているとページを繰る音が耳に入った。図書室の二階部分の椅子に女性が座っている。
 珀音は階段を上ってから声をかける。
「あの、大江 紅葉様ですか?」
「はい、そうですけど?」
 珀音はかくかくしかじかと状況を説明する。
「え、え? プエルくんの家庭教師?」
「らしいですわ」
「えー」
 ちらりちらりと紅葉は本に視線を送る。
「見たいのですね」
「そうです」
 珀音も気にならないわけではない。
「紅茶に関してのものはこの番号だと……」
「それなら、そっちです」
 紅葉は珀音を案内する。
 確かにその蔵書量はすごい。珀音は紅茶の本の種類に目を見張る。
「この本は幻の書と言われているのです」
「え?」
「発行する前に著者が飽きて書き終えなかった、とあとがきにあります」
「……え?」
 珀音が手にしてその本を見ると、内容はすべてきちんとあるように見えた。
 ルベーノが図書室に入ってきたとき、本談義をしている女性二人の声がする。声をかけてからそちらに向かおうとした。
「おーい、紅葉いるか」
「いませーん」
 ルベーノがそちらに向かうと、女性二人で楽しそうに話をしている。ルベーノが来た時点で視線が向いているので、話は自然と中断された。
「実はな、プエルの自由のために……」
 ルベーノは経緯を語った。
「母御の説得も絡むのでな」
「……ニコラスさんのお母様は寂しかったのでしょうね」
 ルベーノはうなずく。三人は部屋に向かうことにした。

 ハナは廊下をレチ人形をぶら下げて図書室に向かう途中で、紅葉問題は片付いたことを知る。
「お茶会に移行ですぅ。ぜひ、あの人たちに中庭で待つように言ってきてください」
 ハナはレチ人形を床に置いて言う。
 傷がふさがったレチ人形はコクコクと激しく首を縦に振った。その上、ハナにプエル人形が一体連れていかれたのを見送るしかできない己のふがいなさに泣き出しそうであった。
 なお、この場にいるプエル人形の半分はなぜかハナについて行った。

●茶会
 なんだかんだでハンターたちとプエルと母親などが中庭に集まっていた。
 プエルがワクワクして待ちながら、レチ人形を抱いて撫でる。
「プエル、母親は大事にしろよ」
 リューはこそりとプエルに話しかけた。大事にするつもりがなければ実力行使で逃亡していたに違いない。
「悩みがあれば相談に応じるぞ」
「なら、レチタティーヴォ様にどうやったらハグしてもらえる?」
「え? 罠でも張って動けなくしてから抱き着けばいいんじゃないか?」
「罠か……」
 プエルがぶつぶつつぶやいた。
「準備完了ですぅ。おいしい紅茶とおいしいコーヒーです」
 ハナと盆を神輿のように担ぐプエル人形たちがやってきた。
「ティーソーダーやコーヒーソーダ―フロートもできますよ」
 ハナはてきぱきと用意する。
「温故知新と申しますかぁ、お茶や珈琲だって日々進化していますぅ。古いものだけでも駄目です。ニコラス君のお母さん、あまり勉強漬けだと勉強嫌いになっちゃいますぅ。逆効果じゃないですぅ?」
 ハナは普段の話し方は変えないが、ずばりといった。
 母親は無邪気にクッキーを食べているプエルを見つめる。
「クリシス領はイノアが立派に継いでいる」
 ルベーノは近況を話す。
「夫は?」
「……引責で隠居ということは聞いた」
「何のです!?」
 紅葉が横からさりげなく捕捉する。一言でいえば諸悪の根源はレチタティーヴォである。
「そうですか……変わっているのですね、もう」
 母親は寂しそうだが、プエルを見る目は優しい穏やかなものになっていた。
「このクッキー、美味し……うわっ、ニコラス、邪魔するな」
 ニコラス人形がプエルの顔に張り付いた。つまんで膝に移動させると、ニコラス人形はホッとした様子でプエルにしがみつく。
「結局、この子はなんでこんなことしているんでしょうか」
 珀音が首をかしげる。
 紅葉はプエルの後方に目を向けると豆粒ほどの距離に長身の赤毛の男がいた。彼女の視線に気づき立ち去った。
「どうかしましたか?」
「100tハンマーがあれば」
「え?」
 困惑する珀音に紅葉は曖昧に笑った。
「プエルさん、ここに来ればまた会えるです?」
「分からないけれど、ここは自由だから」
 アルマに問われプエルは曖昧に答える。
「わぅ。僕、レチさんと同じくらいの身長なんでしたっけ? 僕で良ければぎゅーしたげるです」
「お前とレチ様は別だ!」
「わう? 照れなくてもよいのですぅ」
 アルマにプエルは「照れてない!」と力強く否定した。
「照れるな」
「うわああ」
 ルベーノに頭をがしがしと荒く撫でられプエルが悲鳴を上げる。
「……僕、今も、ずっとプエルさんのこと友達と思っているのです。だからまた遊んでくださいね」
 アルマにプエルは「遊んでやらなくはない」と答えたが、ルベーノに文句を言う。
「この人形、どうやってクッキーを食べるんだ?」
 レイアは気になって観察する。プエル人形は手にクッキーを持っているが食べる気配はなく、持ったまま踊っている。一方、レチ人形は手にしたクッキーを口に運んだ。しかし、口は動いた形跡はないがクッキーは消えていく。
「なんでだ!」
 レイアは困惑するほかなかった。

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    ルベーノ・バルバラインka6752

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参加者一覧

  • 巡るスズラン
    リュー・グランフェスト(ka2419
    人間(紅)|18才|男性|闘狩人
  • 乙女の護り
    レイア・アローネ(ka4082
    人間(紅)|24才|女性|闘狩人
  • フリーデリーケの旦那様
    アルマ・A・エインズワース(ka4901
    エルフ|26才|男性|機導師
  • 命無き者塵に還るべし
    星野 ハナ(ka5852
    人間(蒼)|24才|女性|符術師
  • 我が辞書に躊躇の文字なし
    ルベーノ・バルバライン(ka6752
    人間(紅)|26才|男性|格闘士
  • ストックの守り人
    和住 珀音 (ka6874
    人間(紅)|23才|女性|符術師

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ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/04/08 15:11:15