ゲスト
(ka0000)
【AP】導き誘うは凛音の先
マスター:一縷

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 無し
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/04/09 19:00
- 完成日
- 2018/04/22 16:26
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●音の鳴る方へ
ふ、と気がつけば、見知らぬ場所。
「ここは、どこ、だ?」
先程まで誰かと一緒にいた気がするのに。なにかを話した気がするのに。全く思い出せない。
思い出そうと首を捻るも答えは出ず、なんとなく辺りを見渡す。
白い霧。
足元を見れば、薄っすらと道のようなものが見える。
「……どこまで、続いているんだ」
それに、どこからともなく微かに聴こえてくる小さな、――これは鈴の音だろうか。
考えるよりも先に足が動いていた。まるで、音色に導かれているかのように。
どれくらい歩き続けただろうか。時間の感覚はない。
「……っ!」
突然、背中から吹き抜けた風は、進むたびに一層濃くなっていた霧を巻き込んで去っていく。
晴れた先に視線を奪われたのは、必然だと言えるだろう。
無理もない。そこに、立っていたのは――。
「あー! みつけたー!」
今は亡き、妹。
「なん、で……」
「もー! どこに隠れてたの? おにーちゃん、隠れるの上手すぎるよ!」
こちらの姿を見つけるなり走り出した女の子は、そのまま突進して抱きついてくる。
ぷっくりと頬を膨らませて下から見上げる、大きな瞳。
ぐいぐいと服の裾を引っ張る、小さな手。
ああ、夢だ。これは、夢なんだ。
「ねえー、聞いて……っわぷ、おにーちゃん?」
思わずその小さな体を抱きしめる。優しく、そっと。強く、ぎゅっと。
夢でもいい。幻でもいい。
妹は雑魔に襲われた死んだ。あの日、冷たく感じた体温は、今は温かい。
「……痛くないか?苦しくないか?」
「え?」
「いや、なんでもない」
――もう、なんでもいい。
こうやって、もう一度、妹の笑顔を見れただけで充分だ。
「かくれんぼ、だったか?」
「そうだよ! 次は、おにーちゃんが鬼! ちゃんと10数えてね!」
妹は元気に駆け出した。それを合図に目を瞑って10を数える。
いーち。にーい。さーん―――。
りぃん。
ちょうど10数え終わった後に目を開けた瞬間、背後から響いた鈴の音。
同時に、反対側から、もういいよーと元気な声が聞こえてくる。
青年は歩みだした。
一瞬の迷いもなく、『音』のする方へ――。
●
ある日、山奥でふたつの白骨が見つかった。小さな骨と、大きな骨。
発見者は語る。
寄り添いあって繋がれた手の中には小さな鈴があったと。
そして、人を呼び、再び訪れた時には白骨は跡形なく消え、その場には鈴だけが残っていたと。
――ああ、なんて。なんて不思議なお話しだろうか。
●夢売りの小鈴
『ああ、いらっしゃい』
白い長髪を揺らしながら、着物に身を包んだ男性は振り返る。
その手には紐が握られていて、その先にあるいくつかの小さな鈴。
りぃん。りん。
男性が動くたびに。話すたびに。
小さく、でも、しっかりと鈴は音色を奏でる。
『さぁて、ここに来たってことは願いがあるんやろう? どないな夢をご所望や?』
口角だけが上がった不敵な笑み。すべてを見透かしてしまうかのような瞳。
その雰囲気に圧されて、導かれるように口にしたのは、なんだったのだろうか。
『聞き入れた。ほら、目ぇ瞑って、楽に……そうそう』
りぃん。
ひとつ。耳を澄ませば、道標となる『光』の音。
りぃん。
ひとつ。目を閉じれば、安らぎを与える『闇』の音。
『いい、夢路を。おやすみ』
りぃーん。りりん。
ふ、と気がつけば、見知らぬ場所。
「ここは、どこ、だ?」
先程まで誰かと一緒にいた気がするのに。なにかを話した気がするのに。全く思い出せない。
思い出そうと首を捻るも答えは出ず、なんとなく辺りを見渡す。
白い霧。
足元を見れば、薄っすらと道のようなものが見える。
「……どこまで、続いているんだ」
それに、どこからともなく微かに聴こえてくる小さな、――これは鈴の音だろうか。
考えるよりも先に足が動いていた。まるで、音色に導かれているかのように。
どれくらい歩き続けただろうか。時間の感覚はない。
「……っ!」
突然、背中から吹き抜けた風は、進むたびに一層濃くなっていた霧を巻き込んで去っていく。
晴れた先に視線を奪われたのは、必然だと言えるだろう。
無理もない。そこに、立っていたのは――。
「あー! みつけたー!」
今は亡き、妹。
「なん、で……」
「もー! どこに隠れてたの? おにーちゃん、隠れるの上手すぎるよ!」
こちらの姿を見つけるなり走り出した女の子は、そのまま突進して抱きついてくる。
ぷっくりと頬を膨らませて下から見上げる、大きな瞳。
ぐいぐいと服の裾を引っ張る、小さな手。
ああ、夢だ。これは、夢なんだ。
「ねえー、聞いて……っわぷ、おにーちゃん?」
思わずその小さな体を抱きしめる。優しく、そっと。強く、ぎゅっと。
夢でもいい。幻でもいい。
妹は雑魔に襲われた死んだ。あの日、冷たく感じた体温は、今は温かい。
「……痛くないか?苦しくないか?」
「え?」
「いや、なんでもない」
――もう、なんでもいい。
こうやって、もう一度、妹の笑顔を見れただけで充分だ。
「かくれんぼ、だったか?」
「そうだよ! 次は、おにーちゃんが鬼! ちゃんと10数えてね!」
妹は元気に駆け出した。それを合図に目を瞑って10を数える。
いーち。にーい。さーん―――。
りぃん。
ちょうど10数え終わった後に目を開けた瞬間、背後から響いた鈴の音。
同時に、反対側から、もういいよーと元気な声が聞こえてくる。
青年は歩みだした。
一瞬の迷いもなく、『音』のする方へ――。
●
ある日、山奥でふたつの白骨が見つかった。小さな骨と、大きな骨。
発見者は語る。
寄り添いあって繋がれた手の中には小さな鈴があったと。
そして、人を呼び、再び訪れた時には白骨は跡形なく消え、その場には鈴だけが残っていたと。
――ああ、なんて。なんて不思議なお話しだろうか。
●夢売りの小鈴
『ああ、いらっしゃい』
白い長髪を揺らしながら、着物に身を包んだ男性は振り返る。
その手には紐が握られていて、その先にあるいくつかの小さな鈴。
りぃん。りん。
男性が動くたびに。話すたびに。
小さく、でも、しっかりと鈴は音色を奏でる。
『さぁて、ここに来たってことは願いがあるんやろう? どないな夢をご所望や?』
口角だけが上がった不敵な笑み。すべてを見透かしてしまうかのような瞳。
その雰囲気に圧されて、導かれるように口にしたのは、なんだったのだろうか。
『聞き入れた。ほら、目ぇ瞑って、楽に……そうそう』
りぃん。
ひとつ。耳を澄ませば、道標となる『光』の音。
りぃん。
ひとつ。目を閉じれば、安らぎを与える『闇』の音。
『いい、夢路を。おやすみ』
りぃーん。りりん。
リプレイ本文
●誘音
りぃん。りん。
遠くから微かに、否、しっかりと響く小さな音。
誰しもが一度は聴いたことのある、この音は――そう、鈴の音。
吸い込まれるように。惹き込まれるように。
意識のすべてが、その音色へと導かれていく――。
『ほな、ええ夢路を。お客さんの望む、その先へ』
●決意の音
『よし、いったん休憩にしようかのぅ』
老齢の女性は大きく声を張り上げる。本当にその年齢であるのか見間違うくらいの快活な女性。
『ほれ、茶の準備。今日は桜餅があったかなあ』
アーク・フォーサイス(ka6568)は、女性の言葉に今まで持っていた刀を片し、茶と桜餅を持って縁側へと帰ってくる。
茶を渡して、桜餅を置いて。ふたり並んで腰をおろした。
老齢の女性。
俺の師匠。家族を知らない俺に、家族を教えてくれた親代わり。
困ったことも、迷ったことも、悩みは全部見抜かれて、そのたびに相談して、自分なりの答えを見つけてきた。
「……師匠」
『なんだい』
暖かな日差しに包まれながら、俺は口を開く。
少しだけ、吐露したい。胸につっかえたこの想いを、聞いて欲しい。
命は等しい。
どんな命も等しく守るべきものであるはずなのに、俺は、幼馴染や友人を優先させたいと思ったことがある。
どうしたいか。わかってる。
どうすればいいか。わからない。
答えが見えなくて、迷っているんだ。ひとつの命も切り捨てたくない。
『ん、ぐ……っ』
「師匠……!」
静かに俺の言葉を聞いていた師匠が突然胸を叩いて苦しみだす。
俺は急いで茶を渡し、曲がったその背を大きく撫でた。
違う。
ぐ、と奥まで飲み込む様子。大きな深呼吸。
師匠は茶を飲み干して、焦ったわ、と眉根を寄せた。
違うな。ああ、これは夢か。
師匠はもういない。好物の餅を喉に詰まらせて亡くなった。俺は助けられなかった。
ああ、だからこれは、夢なんだ。
そって手を放して、離れて、師匠を見つめる。
豪快に笑う師匠。なんて懐かしい空気、懐かしい香り。
ここにいたい。また、師匠と一緒に鍛錬して、こうして休憩して。この日に戻れたら、と何度思っただろうか。
ずっと。――ずっと。
師匠が俺を見る。
真っ直ぐに俺を見て、にぃっと口角を上げた。
りぃん。
ああ、そうか。
ゆっくりと立ち上がる。師匠にひとつ頭を下げて、背を向けて歩き出す。
俺は師匠に背中を押して欲しかったんだ。
迷っても、悩んでも、選ぶのは自分なのだと、教えて欲しかった。
ならば、俺は選ぼう。
『甘ったれるな』
光ある、道を。
●誓いの音
ふわり。ふわふわ。
ひらり。ひらひら。
満開に咲き誇る桃色の花弁が、ゆっくり、ゆっくり。ふわり。ひらり。
その花弁がひとひら、大樹の根元に佇む小さな白猫の頭に舞い落ちた。
その光景に氷雨 柊(ka6302)は息をのむ。
また、……ここ。
忘れない。忘れるわけがない。忘れちゃいけない。忘れられない、場所。
「……っ、待って……!」
ぱちりと白猫と目が合って。それを合図にするかのように立ち上がった白猫が踵を返して草むらの方へ行こうとした瞬間――。
「そっちに行ったら、また……っ!」
あの子を、ここで喪った。歪虚に、連れ去られた。
――殺されてしまった。
いかないで。
いっちゃだめ。
引き留めようと走り出す。必死に、手を伸ばす。
手を伸ばして、足を止めた。
「……違う。これは、夢……」
いつも見る夢。助けられない、夢。
夢は幻で、夢は後悔の塊で、変えられない過去の、私の記憶の、一部。
立ち止まった私を、振り返った白猫は見つめる。じっと。まぁるい瞳で、真っ直ぐに。
その視線を受け入れて。込められているであろう想いを受け入れて。
私は、静かに瞼を落とす。
『にゃぁ』
わかってる。
『にゃー』
忘れない。忘れちゃいけない。
わかってる。
喪うことを恐れるのは当然のこと。
一度それを体験すれば、なおさらのこと。
でも、乗り越えたい。前を向いて生きるために。
その為には、この記憶だけに囚われているわけにはいかない。
だから――。
ぐ、っと顔を上げた瞬間、さあっと暖かな風が吹いた。
流れに乗った桃色の花弁が頬を撫ぜるようにすり抜けて、りぃん、と遠くから小さな鈴の音が響く。
「あの人のもとに、帰らなきゃ」
ごめんね。
私はまだ、そちら側には行けない。違う。行けないんじゃない、――行かない。
私の決心を感じ取ったのか、白猫は視線を落として、ゆっくりと尻尾を揺らして背を向けて歩き出す。
彼の言葉。大切な彼との、誓い。
それが今の私の、道標。
ひとつ。深呼吸をしてから、小さく、大きく踏み出した。
振り返らない。決して、振り返らない。私が帰る場所は、体温を感じさせてくれる彼の隣だから。
今じゃない。いつか。いつか、私がそちら側に行く時は必ず――
『にゃぁん』
――迎えに来てね。約束よ。
●郷愁の音
『今日はなにをして遊ぼうかー』
俺を見上げてへらへらと笑う明るい少年。
『今日は模擬戦の約束をしてたはずだぜー!』
剣を模した紙の棒を手に、熱血で少し馬鹿だった少年。
『まずはわたしが相手だよー、っわぁっ!』
勢いあまって振り上げた紙の棒をふっとばしてしまうトラブルメーカーな少女。
『まったく……少し落ち着いたらどうです?』
俺たちの中で誰よりも落ち着いてどこか大人びた雰囲気のあった少女。
覚えている。
忘れもしない。
クラン・クィールス(ka6605)は目を疑った。自分自身のいる状況を。
「どうして、お前たちが……」
『なんだー? 元気ねーなー』
ぐいっと強引に少年が俺の顔を覗き込む。
疑わずにはいられない。だって、仕方ないだろう。友人と呼んでいた彼ら彼女らは歪虚の手によって――。
『決まり! 逃げろー!』
少年は走り出す。その背を追いかけるようにひとり、少年が。またひとり、ふたり、少女らが続く。
今日の遊びは、追いかけっこに決まったらしい。相手を捕まえて10数えれば追いかける相手と逃げる相手が交代する遊び。
どうやら、追いかけるのは俺みたいだ。
はやく来いよ、と少年は叫ぶ。
こっちだよ、と少女は手を振る。
ああ、懐かしいな。
表情も。
声も。
空気も。
ぜんぶ。
でも、これはきっと夢なんだ。幻――いや、俺の未練か。
今になってこんな夢をみているんだ。未練以外になにがあるのだろうか。
俺の、未練は――。
「……ごめんな」
懐かしさに駆られながらも踏み出しかけた足を踏ん張る。
ぐ、っと踏ん張って、遠くに見える友人たちに約束をひとつ。
「ごめん。俺、見つけたんだ」
見つけた。
また。
もう二度と手に入らないだろうと思ってはいても、ずっと欲しかったもの。
「だから、行かなきゃさ」
一緒に居たい。守りたい。
そう思える大切な人を、人たちを、やっとさ……見つけたんだ。
りぃん。
小さく、小さく、大きく、鈴の音が響く。
その音を合図に俺は友人たちに背を向けて歩き出す。
友人を忘れるわけじゃない。ただ、今の大切な友人と、恋人のもとへ。
いつか俺も、そっちに行くよ。
そしたら、たくさん遊ぼう。たくさん話そう。たくさん。たくさん。
だから、それまでは――
「待っててくれ」
●贖罪の音
『兄さん』
鞍馬 真(ka5819)は振り返る。
振り返って、酷く後悔した。ただただ罪の意識に、苛まれた。
転移前の記憶のない私に彼女が誰なのかも分からない。でも。それでも、はっきりと理解していることが、ひとつ。
彼女は、もうこの世に、いないのだと。
兄さん。そういって彼女は柔らかい笑みを浮かべながら、どこか嬉しそうに駆け寄ってくる。
その距離が近づくたびに、彼女が私の前に立った瞬間には、強い後悔と罪の意識は先程よりも、より一層――。
『なんだか疲れた顔してる……また無理して働いてるでしょう?』
つ、と彼女の指先が私の頬を滑る。
そのわずかなぬくもりが、ないはずの記憶の中から、彼女の存在を思い出せ、思い出せと押し寄せて。
彼女の死は、望まれたものではなかった。
彼女は、死ぬべきではなかった。
彼女の代わりに、私が死ぬべきだった。
私が。
わたしが。
こんなにも、強く、深く、想っているのに、どうして私は――。
ああ、逢いたかったよ。
ああ、逢いたくなかったよ。
思い出してよかった。
思い出したくなかった。
「ごめんね」
思わず零れた言葉に、彼女はきょとんと首を傾げる。
その表情が、その瞳が、その息づかいさえも。
どうして、どうして私は―――彼女のことを忘れてしまったんだろう。
「……ごめん、なんでもない」
小さく首を振って誤魔化して。
ただ、謝りたいだけなんだ。夢であっても、幻であっても、これはきっと私に導かれた贖罪の場だと感じたのだから。
『もう、兄さんはいつもそうなんだから』
くすくすと彼女は微笑む。
記憶はない。でも、記憶はある。
そっと握られた手から伝わるぬくもりは本当に温かくて懐かしい。
『お疲れの兄さんは休まないと。ホットミルクでいいかしら?』
働きすぎの私を咎めるその声に導かれるように、忘れかけていた疲れが体を侵していく。
人を助けることが彼女への贖罪だと、ただひたすら奔走してきたんだ。気づけば長い間休みなど気にしたことなんて無かったくらいに。
私の手を引いて歩き出す彼女――妹、が振り返って口を開く。
りぃん。
同時に鳴った鈴の音が、妹の音を遮る。
何を言ったのか……もう、どうでもいいね。どうでもいい。
ゆっくり眠ろう。休んでという妹の言葉に甘えて、ゆっくりと。
例え、その先が闇であろうとも。
――これが私の光なのだから。
●愚行の音
6歳の少女が15歳で成人した青年と祝言をあげる、それは20年前のこと。
子供の頃から出来のいい青年だった。ゆえに彼女の父親が青年を気に入り、村長の一人娘であった彼女の婿として候補に挙がったのだ。
村長として在るべく姿を叩き込んでいく。少女の不出来さに父親が見切りをつけたその日から。
子供だったんだ。我が儘で、癇癪持ちで。
その日も、稽古の辛さに逃げ出した。逃げ出しても変わらないと分かっていても、逃げ出さずにはいられなかった。
いつものように逃げ出して、いつものように青年が迎えにしてくれる。
あまりにも自然で。決まった流れ。
でも、違ったんだ。その日は違った。
夕闇が迫る時間になっても、青年も、誰も、迎えには来てくれなかった。
お腹も減って、ひとり哀しくなって、溢れた涙を拭いながら村に戻った彼女を待っていたのは――
非日常の世界。
崩れた村。
あまりにも言い表せないような人々の姿。
息をのむような、死体の、山。
進軍してきた歪虚の群が、ある町を襲う通り道として村が襲われたのだと知ったのは、引き取られた先でも随分と時間が経ってからのこと。
彼女は知る。そして、彼女は心を入れかえる。
歪虚を倒すために修業を重ね、一人前になったところで、村を飛び出した。
『遅かったね』
ユーレン(ka6859)は振り返る。あまりにも懐かしくて、優しい声に。
「お前……」
微笑んだ青年が立っていた。私の夫となるはずだった青年が。
『あんまりみんなを困らせちゃダメだよ。僕も一緒に謝ってあげるから』
差し出される手。
思い出すあの日々。
『ほら。――、帰ろうか』
囁かれた私の名に導かれるように繋がった手を青年が引いて歩き出した。
「お前、小さかったのだな……」
『なにか言った?』
「……いや」
りぃん。
そっか、と呟いて柔らかく微笑む青年と、遠くから響いた小さな鈴の音。
あんなにも大きいと思っていた背中が、こんなにも小さく感じるなんて。
我に名前はない。名前は捨てた。あの時、村のみんなと一緒に死んだのだ。
我は愚者だ。恩を忘れ、歪虚と戦うことを選んだのだ。なんたる愚行か。
でも、青年は私の名を呼ぶ。
私の名だ。
ああ、やっと。
やっと、帰れるのだな――みんなの、もとへ。
●落涙の音
白藤(ka3768)は走る。
走って、走って、指先に触れたその背に抱き着く。
「どこほっつき歩いとったんな、もう……!!」
兄さん。
ずっと心配で、ずっと会いたかった兄さん。
大好きな、兄さん。
『髪、短くなったな』
「せやろ? 大人っぽない? ふふん、似合うやろ」
それだけやない。料理もうんと上手くなったんやで?
花嫁修業かやなんて、そんなんと違う。違うんよ。うちはもう、弟クンとは別れたんやから。
「……なあ、兄さん。あの子は? あの子は、一緒やないの?」
問うても答えはいつだって同じ。
大丈夫だなんて……兄さんはずっこい。いつも、いっつも。あの子のことは手放しに信用してるくせに、うちのことは事細かに言うんや。
口先を尖らせて拗ねれば、くしゃくしゃとうちの頭を撫でるんも変わらへん。
小さく笑って、オールバックの髪をかき上げる癖も、変わらへん。
『子供っぽいな』
「っ、そないなこと言わんといてよ……!」
こんなことで絆されてまう、うちもおるけど。
ほんまに、ずっこいわ。
うちは、寂しかったんやで。
あの人も、あの子も、兄さんも。だれもおらん。
ずっと、ずっと寂しかった。
子供っぽくなるもの仕方ないんや。兄さんの前やと、昔みたいになってまう。
そうさしてるんは、兄さんなんやからな。
なんか、懐かしいな。
懐かしいやりとりに、懐かしい声色。懐かしい空気。
このまま。このまま、兄さんと一緒に――
りぃん。りん。
耳元で鈴の音が響く。
どこか遠くで猫が鳴く。
……違う。
うちはもう、彼を兄さんと呼ばれへん。
せや、うちは、もう。
ふわり。
優しい風が身を包む。どこか安心する気配と、落ち着く匂い――これは、沈丁花だろうか。
ああ。堪忍。
うちは、行かんとあかんわ。
もう一度だけ彼に抱き着く。ぎゅっと、ぎゅぅっと、確かめるように忘れないように強く抱きしめる。
そして、踵を返して走り出した。
振り返らず、かわいらしい猫の声に導かれるまま、ただひたすらに走る。
滲む視界も。
頬を伝う一筋の雫も。
首元で揺れる小さな重みも。
たとえ、隣にいなくても傍にはいるのだと、彼が背中越しに伝えてくれているような気がして。
……ありがとな?
「――」
●凛音
『いらっしゃい』
振り返った長髪の男性は静かに微笑んだ。
『言わんでもええよ。分かっとるさかいにな』
手に持つ溢れんばかりの鈴がひとつ、零れ落ちては響き渡る音を奏でる。
りん。りぃぃん。
光ある道。
光なき――否、闇という名の光ある道。
輪廻は巡る。凛音は導く。
これまでの道を。これからの道を。
『そん答えは、夢の中に』
夢売りは、いつでもアナタを夢路へと――。
りぃん。りん。
遠くから微かに、否、しっかりと響く小さな音。
誰しもが一度は聴いたことのある、この音は――そう、鈴の音。
吸い込まれるように。惹き込まれるように。
意識のすべてが、その音色へと導かれていく――。
『ほな、ええ夢路を。お客さんの望む、その先へ』
●決意の音
『よし、いったん休憩にしようかのぅ』
老齢の女性は大きく声を張り上げる。本当にその年齢であるのか見間違うくらいの快活な女性。
『ほれ、茶の準備。今日は桜餅があったかなあ』
アーク・フォーサイス(ka6568)は、女性の言葉に今まで持っていた刀を片し、茶と桜餅を持って縁側へと帰ってくる。
茶を渡して、桜餅を置いて。ふたり並んで腰をおろした。
老齢の女性。
俺の師匠。家族を知らない俺に、家族を教えてくれた親代わり。
困ったことも、迷ったことも、悩みは全部見抜かれて、そのたびに相談して、自分なりの答えを見つけてきた。
「……師匠」
『なんだい』
暖かな日差しに包まれながら、俺は口を開く。
少しだけ、吐露したい。胸につっかえたこの想いを、聞いて欲しい。
命は等しい。
どんな命も等しく守るべきものであるはずなのに、俺は、幼馴染や友人を優先させたいと思ったことがある。
どうしたいか。わかってる。
どうすればいいか。わからない。
答えが見えなくて、迷っているんだ。ひとつの命も切り捨てたくない。
『ん、ぐ……っ』
「師匠……!」
静かに俺の言葉を聞いていた師匠が突然胸を叩いて苦しみだす。
俺は急いで茶を渡し、曲がったその背を大きく撫でた。
違う。
ぐ、と奥まで飲み込む様子。大きな深呼吸。
師匠は茶を飲み干して、焦ったわ、と眉根を寄せた。
違うな。ああ、これは夢か。
師匠はもういない。好物の餅を喉に詰まらせて亡くなった。俺は助けられなかった。
ああ、だからこれは、夢なんだ。
そって手を放して、離れて、師匠を見つめる。
豪快に笑う師匠。なんて懐かしい空気、懐かしい香り。
ここにいたい。また、師匠と一緒に鍛錬して、こうして休憩して。この日に戻れたら、と何度思っただろうか。
ずっと。――ずっと。
師匠が俺を見る。
真っ直ぐに俺を見て、にぃっと口角を上げた。
りぃん。
ああ、そうか。
ゆっくりと立ち上がる。師匠にひとつ頭を下げて、背を向けて歩き出す。
俺は師匠に背中を押して欲しかったんだ。
迷っても、悩んでも、選ぶのは自分なのだと、教えて欲しかった。
ならば、俺は選ぼう。
『甘ったれるな』
光ある、道を。
●誓いの音
ふわり。ふわふわ。
ひらり。ひらひら。
満開に咲き誇る桃色の花弁が、ゆっくり、ゆっくり。ふわり。ひらり。
その花弁がひとひら、大樹の根元に佇む小さな白猫の頭に舞い落ちた。
その光景に氷雨 柊(ka6302)は息をのむ。
また、……ここ。
忘れない。忘れるわけがない。忘れちゃいけない。忘れられない、場所。
「……っ、待って……!」
ぱちりと白猫と目が合って。それを合図にするかのように立ち上がった白猫が踵を返して草むらの方へ行こうとした瞬間――。
「そっちに行ったら、また……っ!」
あの子を、ここで喪った。歪虚に、連れ去られた。
――殺されてしまった。
いかないで。
いっちゃだめ。
引き留めようと走り出す。必死に、手を伸ばす。
手を伸ばして、足を止めた。
「……違う。これは、夢……」
いつも見る夢。助けられない、夢。
夢は幻で、夢は後悔の塊で、変えられない過去の、私の記憶の、一部。
立ち止まった私を、振り返った白猫は見つめる。じっと。まぁるい瞳で、真っ直ぐに。
その視線を受け入れて。込められているであろう想いを受け入れて。
私は、静かに瞼を落とす。
『にゃぁ』
わかってる。
『にゃー』
忘れない。忘れちゃいけない。
わかってる。
喪うことを恐れるのは当然のこと。
一度それを体験すれば、なおさらのこと。
でも、乗り越えたい。前を向いて生きるために。
その為には、この記憶だけに囚われているわけにはいかない。
だから――。
ぐ、っと顔を上げた瞬間、さあっと暖かな風が吹いた。
流れに乗った桃色の花弁が頬を撫ぜるようにすり抜けて、りぃん、と遠くから小さな鈴の音が響く。
「あの人のもとに、帰らなきゃ」
ごめんね。
私はまだ、そちら側には行けない。違う。行けないんじゃない、――行かない。
私の決心を感じ取ったのか、白猫は視線を落として、ゆっくりと尻尾を揺らして背を向けて歩き出す。
彼の言葉。大切な彼との、誓い。
それが今の私の、道標。
ひとつ。深呼吸をしてから、小さく、大きく踏み出した。
振り返らない。決して、振り返らない。私が帰る場所は、体温を感じさせてくれる彼の隣だから。
今じゃない。いつか。いつか、私がそちら側に行く時は必ず――
『にゃぁん』
――迎えに来てね。約束よ。
●郷愁の音
『今日はなにをして遊ぼうかー』
俺を見上げてへらへらと笑う明るい少年。
『今日は模擬戦の約束をしてたはずだぜー!』
剣を模した紙の棒を手に、熱血で少し馬鹿だった少年。
『まずはわたしが相手だよー、っわぁっ!』
勢いあまって振り上げた紙の棒をふっとばしてしまうトラブルメーカーな少女。
『まったく……少し落ち着いたらどうです?』
俺たちの中で誰よりも落ち着いてどこか大人びた雰囲気のあった少女。
覚えている。
忘れもしない。
クラン・クィールス(ka6605)は目を疑った。自分自身のいる状況を。
「どうして、お前たちが……」
『なんだー? 元気ねーなー』
ぐいっと強引に少年が俺の顔を覗き込む。
疑わずにはいられない。だって、仕方ないだろう。友人と呼んでいた彼ら彼女らは歪虚の手によって――。
『決まり! 逃げろー!』
少年は走り出す。その背を追いかけるようにひとり、少年が。またひとり、ふたり、少女らが続く。
今日の遊びは、追いかけっこに決まったらしい。相手を捕まえて10数えれば追いかける相手と逃げる相手が交代する遊び。
どうやら、追いかけるのは俺みたいだ。
はやく来いよ、と少年は叫ぶ。
こっちだよ、と少女は手を振る。
ああ、懐かしいな。
表情も。
声も。
空気も。
ぜんぶ。
でも、これはきっと夢なんだ。幻――いや、俺の未練か。
今になってこんな夢をみているんだ。未練以外になにがあるのだろうか。
俺の、未練は――。
「……ごめんな」
懐かしさに駆られながらも踏み出しかけた足を踏ん張る。
ぐ、っと踏ん張って、遠くに見える友人たちに約束をひとつ。
「ごめん。俺、見つけたんだ」
見つけた。
また。
もう二度と手に入らないだろうと思ってはいても、ずっと欲しかったもの。
「だから、行かなきゃさ」
一緒に居たい。守りたい。
そう思える大切な人を、人たちを、やっとさ……見つけたんだ。
りぃん。
小さく、小さく、大きく、鈴の音が響く。
その音を合図に俺は友人たちに背を向けて歩き出す。
友人を忘れるわけじゃない。ただ、今の大切な友人と、恋人のもとへ。
いつか俺も、そっちに行くよ。
そしたら、たくさん遊ぼう。たくさん話そう。たくさん。たくさん。
だから、それまでは――
「待っててくれ」
●贖罪の音
『兄さん』
鞍馬 真(ka5819)は振り返る。
振り返って、酷く後悔した。ただただ罪の意識に、苛まれた。
転移前の記憶のない私に彼女が誰なのかも分からない。でも。それでも、はっきりと理解していることが、ひとつ。
彼女は、もうこの世に、いないのだと。
兄さん。そういって彼女は柔らかい笑みを浮かべながら、どこか嬉しそうに駆け寄ってくる。
その距離が近づくたびに、彼女が私の前に立った瞬間には、強い後悔と罪の意識は先程よりも、より一層――。
『なんだか疲れた顔してる……また無理して働いてるでしょう?』
つ、と彼女の指先が私の頬を滑る。
そのわずかなぬくもりが、ないはずの記憶の中から、彼女の存在を思い出せ、思い出せと押し寄せて。
彼女の死は、望まれたものではなかった。
彼女は、死ぬべきではなかった。
彼女の代わりに、私が死ぬべきだった。
私が。
わたしが。
こんなにも、強く、深く、想っているのに、どうして私は――。
ああ、逢いたかったよ。
ああ、逢いたくなかったよ。
思い出してよかった。
思い出したくなかった。
「ごめんね」
思わず零れた言葉に、彼女はきょとんと首を傾げる。
その表情が、その瞳が、その息づかいさえも。
どうして、どうして私は―――彼女のことを忘れてしまったんだろう。
「……ごめん、なんでもない」
小さく首を振って誤魔化して。
ただ、謝りたいだけなんだ。夢であっても、幻であっても、これはきっと私に導かれた贖罪の場だと感じたのだから。
『もう、兄さんはいつもそうなんだから』
くすくすと彼女は微笑む。
記憶はない。でも、記憶はある。
そっと握られた手から伝わるぬくもりは本当に温かくて懐かしい。
『お疲れの兄さんは休まないと。ホットミルクでいいかしら?』
働きすぎの私を咎めるその声に導かれるように、忘れかけていた疲れが体を侵していく。
人を助けることが彼女への贖罪だと、ただひたすら奔走してきたんだ。気づけば長い間休みなど気にしたことなんて無かったくらいに。
私の手を引いて歩き出す彼女――妹、が振り返って口を開く。
りぃん。
同時に鳴った鈴の音が、妹の音を遮る。
何を言ったのか……もう、どうでもいいね。どうでもいい。
ゆっくり眠ろう。休んでという妹の言葉に甘えて、ゆっくりと。
例え、その先が闇であろうとも。
――これが私の光なのだから。
●愚行の音
6歳の少女が15歳で成人した青年と祝言をあげる、それは20年前のこと。
子供の頃から出来のいい青年だった。ゆえに彼女の父親が青年を気に入り、村長の一人娘であった彼女の婿として候補に挙がったのだ。
村長として在るべく姿を叩き込んでいく。少女の不出来さに父親が見切りをつけたその日から。
子供だったんだ。我が儘で、癇癪持ちで。
その日も、稽古の辛さに逃げ出した。逃げ出しても変わらないと分かっていても、逃げ出さずにはいられなかった。
いつものように逃げ出して、いつものように青年が迎えにしてくれる。
あまりにも自然で。決まった流れ。
でも、違ったんだ。その日は違った。
夕闇が迫る時間になっても、青年も、誰も、迎えには来てくれなかった。
お腹も減って、ひとり哀しくなって、溢れた涙を拭いながら村に戻った彼女を待っていたのは――
非日常の世界。
崩れた村。
あまりにも言い表せないような人々の姿。
息をのむような、死体の、山。
進軍してきた歪虚の群が、ある町を襲う通り道として村が襲われたのだと知ったのは、引き取られた先でも随分と時間が経ってからのこと。
彼女は知る。そして、彼女は心を入れかえる。
歪虚を倒すために修業を重ね、一人前になったところで、村を飛び出した。
『遅かったね』
ユーレン(ka6859)は振り返る。あまりにも懐かしくて、優しい声に。
「お前……」
微笑んだ青年が立っていた。私の夫となるはずだった青年が。
『あんまりみんなを困らせちゃダメだよ。僕も一緒に謝ってあげるから』
差し出される手。
思い出すあの日々。
『ほら。――、帰ろうか』
囁かれた私の名に導かれるように繋がった手を青年が引いて歩き出した。
「お前、小さかったのだな……」
『なにか言った?』
「……いや」
りぃん。
そっか、と呟いて柔らかく微笑む青年と、遠くから響いた小さな鈴の音。
あんなにも大きいと思っていた背中が、こんなにも小さく感じるなんて。
我に名前はない。名前は捨てた。あの時、村のみんなと一緒に死んだのだ。
我は愚者だ。恩を忘れ、歪虚と戦うことを選んだのだ。なんたる愚行か。
でも、青年は私の名を呼ぶ。
私の名だ。
ああ、やっと。
やっと、帰れるのだな――みんなの、もとへ。
●落涙の音
白藤(ka3768)は走る。
走って、走って、指先に触れたその背に抱き着く。
「どこほっつき歩いとったんな、もう……!!」
兄さん。
ずっと心配で、ずっと会いたかった兄さん。
大好きな、兄さん。
『髪、短くなったな』
「せやろ? 大人っぽない? ふふん、似合うやろ」
それだけやない。料理もうんと上手くなったんやで?
花嫁修業かやなんて、そんなんと違う。違うんよ。うちはもう、弟クンとは別れたんやから。
「……なあ、兄さん。あの子は? あの子は、一緒やないの?」
問うても答えはいつだって同じ。
大丈夫だなんて……兄さんはずっこい。いつも、いっつも。あの子のことは手放しに信用してるくせに、うちのことは事細かに言うんや。
口先を尖らせて拗ねれば、くしゃくしゃとうちの頭を撫でるんも変わらへん。
小さく笑って、オールバックの髪をかき上げる癖も、変わらへん。
『子供っぽいな』
「っ、そないなこと言わんといてよ……!」
こんなことで絆されてまう、うちもおるけど。
ほんまに、ずっこいわ。
うちは、寂しかったんやで。
あの人も、あの子も、兄さんも。だれもおらん。
ずっと、ずっと寂しかった。
子供っぽくなるもの仕方ないんや。兄さんの前やと、昔みたいになってまう。
そうさしてるんは、兄さんなんやからな。
なんか、懐かしいな。
懐かしいやりとりに、懐かしい声色。懐かしい空気。
このまま。このまま、兄さんと一緒に――
りぃん。りん。
耳元で鈴の音が響く。
どこか遠くで猫が鳴く。
……違う。
うちはもう、彼を兄さんと呼ばれへん。
せや、うちは、もう。
ふわり。
優しい風が身を包む。どこか安心する気配と、落ち着く匂い――これは、沈丁花だろうか。
ああ。堪忍。
うちは、行かんとあかんわ。
もう一度だけ彼に抱き着く。ぎゅっと、ぎゅぅっと、確かめるように忘れないように強く抱きしめる。
そして、踵を返して走り出した。
振り返らず、かわいらしい猫の声に導かれるまま、ただひたすらに走る。
滲む視界も。
頬を伝う一筋の雫も。
首元で揺れる小さな重みも。
たとえ、隣にいなくても傍にはいるのだと、彼が背中越しに伝えてくれているような気がして。
……ありがとな?
「――」
●凛音
『いらっしゃい』
振り返った長髪の男性は静かに微笑んだ。
『言わんでもええよ。分かっとるさかいにな』
手に持つ溢れんばかりの鈴がひとつ、零れ落ちては響き渡る音を奏でる。
りん。りぃぃん。
光ある道。
光なき――否、闇という名の光ある道。
輪廻は巡る。凛音は導く。
これまでの道を。これからの道を。
『そん答えは、夢の中に』
夢売りは、いつでもアナタを夢路へと――。
依頼結果
依頼成功度 | 普通 |
---|
面白かった! | 11人 |
---|
ポイントがありませんので、拍手できません
現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!
MVP一覧
重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 |