ゲスト
(ka0000)
【幻兆】Magic Or……?
マスター:凪池シリル

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/04/12 09:00
- 完成日
- 2018/04/15 07:36
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「……以上。これらの痕跡が示す通り、現場から凶器が消えた謎はこれで説明できる」
「え……説明……確かに……いや。あれ? なんでこんなところ触っちゃったんだ犯人。必要ないのに」
「なんだ。これでも君はまだ幽霊がかかわってるとか主張するのか? だとしたら言葉通り浮かばれないな。随分間抜けな犯人に協力したもんだ……あだっ!?」
「大丈夫ですか!?」
「うん。ちょっと急に殴られたような頭痛が」
「殴られたようなっていうか殴られてましたからね実際。思い切り」
「軽い脳梗塞かもしれないな。君もこんな仕事だし水分不足睡眠不足には気を付けろ」
「えーそれで納得しちゃうんですか今のフルスイング」
舞台劇『Logic Or Ghost』は、霊能力のある刑事と現実主義者の鑑識官が中心となって紡がれる物語だ。
鑑識官によって不可思議な現象の説明はなされ、犯人も正しく指摘されるのだが、事実として超常現象は発生しており彼が指摘したトリックは使用されていないという構造で、ジャンルはメタミステリコメディと銘打たれている。
霊障によりちょいちょい酷い目に遭いつつも頑なに認めない鑑識官や、間違ってると分かっているのに立件するには黙殺するしかない刑事の葛藤などが主な見どころ。
全体的にギャグ調ながらも、事件解決に向ける刑事と鑑識官の熱意は本物で、バディ物としても楽しめるようになっている。
今月末の公開に向けて関係者一同、鋭意準備中。
──……とまあ。
インタラプタの件も、奴が仕掛けた情報戦含めて落着を見せ、その後、リアルブルーにおいて新たに俳優としての仕事が決まった伊佐美 透(kz0243)であるが。
それはそれとして、ハンターとしての仕事もこうして続けている。役者としての今の自分に、ハンターである、という事も必要だと考えているからだ。
……まあ単純に、まだ役者一本でやっていけると思うほど安定した状況ではない、という現実的な事情もあるが。
さておき、今はつまり、ハンターとしての依頼遂行中。最近になって多くの発見が成されたチュプ大神殿の、調査と監視がその内容だ。
核となる機能はもはや発見されたと目されているが、この大神殿に何か動きがあったことは歪虚ももはや掴んでいるだろう。襲撃に対する警戒もかねて、更に新たな発見が無いか、こうして未だに度々ハンターが派遣されるわけである。
「はぁー。こいつぁ面白えですなあ」
魔力で煌々と照らされる神殿内部。自動で開閉する石壁に、同行するチィ=ズヴォーがきょろきょろと辺りを見回しながら歩く。
「ん? なんかここの壁ちょっと変わってますねぃ」
と、とある、扉の横辺りにある壁の一部に……
「いや、『ちょっと変わってる』ところを躊躇いなく触るなよ!? 何があるか分からないだろうが!?」
軽く触れたつもりのところで、透が声を上げた。何か文様が描かれたプレートのようなそこに触れていたチィの掌に、思わず力が籠る。
咄嗟に身構える透に、チィも手を離して周囲を警戒して……暫く待つが、何も起こらない。
はぁ、と溜息をついて、透はチィが触れていた場所を見た。ただのドアプレートのようなものなのだろうか。滑らかな表面に文字が書かれているが、意味は分からない。撮影して読んでもらうか。
じっと見たところで、最後力を籠めたせいだろう、肉眼でも分かりそうなほどしっかりついた指紋が気になった。……今準備している役柄が役柄なだけに。
……と。
「いや。それにしたってこんなにはっきり指紋着くか?」
そう──役柄。鑑識官。その役作りのためにいくつか読んだものの中で得たばかりの話がふと頭をよぎる。指紋が付きやすい素材、そのいくつかの中の。
あるわけない。無意識にそう思っていたせいだろうか。良く磨かれた石か何かだと思っていたそれを、近づいてしっかり見てみれば。
「……え? プラスチックなのか? これ」
思わず少し大きい声が出た。
ここは、紅の世界の、古代の遺跡だろう。
そこに、そんなものが存在するのだとすれば。
……ふと、今度は、近くのドアが気になった。傍に寄り、これまでと同じように、勝手に開閉するのを確かめる。
自動ドア。まるでリアルブルーにあるような、と既に報告されたその言葉は、あくまで、自動ドアの存在そのものを分かりやすくするための説明だと思っていたが。
……動力は、マテリアルなんだろう。石造りのそれは、実際、「リアルブルーの自動ドア」そのものではない……筈だが。
上下の溝などを含めて、動く様をよく見る。扉を滑らかに動かすためのスライドさせる構造。感応させてから、開くまでの時間。その速度。
それらは。自分が知る『自動ドア』と、酷似しすぎている気も……してくる。それこそ、報告された言葉通りに。
プラスチックの存在と合わせて考えると、どういう事になる?
頭をよぎる。今自分が出演しようとしている舞台。
鑑識官は、論理的にすべてのことが説明できたと思っているが、実際には超常現象が起こっている。
逆に。
古代の、魔法文明によってのみ造られたと思われるこの遺跡に。
(先入観を取り払ってみたら……別の見え方が、ある……?)
すぐに口にするのは憚られた。今の自分の思考に、逆に変なバイアスがかかっているだけの気も、する。
少し悩んでいると、仲間から連絡が入った。
──敵がこの神殿に向かってきている!
侵入してくるならここからだろう、かつて青木によって穴が開けられた場所を見張っていた仲間からだった。
十体のゴーレム。両手が瘤の付いた鉄球となっているそれは、明らかに「頑丈なものの破壊」を目的としていると見受けられる。
「なんにせよ、壊されちゃ元も子もないよな」
呟き、意識を切り替える。一先ずは現れた敵に対応すべく、透はとチィは仲間たちと連絡を取るのだった。
「え……説明……確かに……いや。あれ? なんでこんなところ触っちゃったんだ犯人。必要ないのに」
「なんだ。これでも君はまだ幽霊がかかわってるとか主張するのか? だとしたら言葉通り浮かばれないな。随分間抜けな犯人に協力したもんだ……あだっ!?」
「大丈夫ですか!?」
「うん。ちょっと急に殴られたような頭痛が」
「殴られたようなっていうか殴られてましたからね実際。思い切り」
「軽い脳梗塞かもしれないな。君もこんな仕事だし水分不足睡眠不足には気を付けろ」
「えーそれで納得しちゃうんですか今のフルスイング」
舞台劇『Logic Or Ghost』は、霊能力のある刑事と現実主義者の鑑識官が中心となって紡がれる物語だ。
鑑識官によって不可思議な現象の説明はなされ、犯人も正しく指摘されるのだが、事実として超常現象は発生しており彼が指摘したトリックは使用されていないという構造で、ジャンルはメタミステリコメディと銘打たれている。
霊障によりちょいちょい酷い目に遭いつつも頑なに認めない鑑識官や、間違ってると分かっているのに立件するには黙殺するしかない刑事の葛藤などが主な見どころ。
全体的にギャグ調ながらも、事件解決に向ける刑事と鑑識官の熱意は本物で、バディ物としても楽しめるようになっている。
今月末の公開に向けて関係者一同、鋭意準備中。
──……とまあ。
インタラプタの件も、奴が仕掛けた情報戦含めて落着を見せ、その後、リアルブルーにおいて新たに俳優としての仕事が決まった伊佐美 透(kz0243)であるが。
それはそれとして、ハンターとしての仕事もこうして続けている。役者としての今の自分に、ハンターである、という事も必要だと考えているからだ。
……まあ単純に、まだ役者一本でやっていけると思うほど安定した状況ではない、という現実的な事情もあるが。
さておき、今はつまり、ハンターとしての依頼遂行中。最近になって多くの発見が成されたチュプ大神殿の、調査と監視がその内容だ。
核となる機能はもはや発見されたと目されているが、この大神殿に何か動きがあったことは歪虚ももはや掴んでいるだろう。襲撃に対する警戒もかねて、更に新たな発見が無いか、こうして未だに度々ハンターが派遣されるわけである。
「はぁー。こいつぁ面白えですなあ」
魔力で煌々と照らされる神殿内部。自動で開閉する石壁に、同行するチィ=ズヴォーがきょろきょろと辺りを見回しながら歩く。
「ん? なんかここの壁ちょっと変わってますねぃ」
と、とある、扉の横辺りにある壁の一部に……
「いや、『ちょっと変わってる』ところを躊躇いなく触るなよ!? 何があるか分からないだろうが!?」
軽く触れたつもりのところで、透が声を上げた。何か文様が描かれたプレートのようなそこに触れていたチィの掌に、思わず力が籠る。
咄嗟に身構える透に、チィも手を離して周囲を警戒して……暫く待つが、何も起こらない。
はぁ、と溜息をついて、透はチィが触れていた場所を見た。ただのドアプレートのようなものなのだろうか。滑らかな表面に文字が書かれているが、意味は分からない。撮影して読んでもらうか。
じっと見たところで、最後力を籠めたせいだろう、肉眼でも分かりそうなほどしっかりついた指紋が気になった。……今準備している役柄が役柄なだけに。
……と。
「いや。それにしたってこんなにはっきり指紋着くか?」
そう──役柄。鑑識官。その役作りのためにいくつか読んだものの中で得たばかりの話がふと頭をよぎる。指紋が付きやすい素材、そのいくつかの中の。
あるわけない。無意識にそう思っていたせいだろうか。良く磨かれた石か何かだと思っていたそれを、近づいてしっかり見てみれば。
「……え? プラスチックなのか? これ」
思わず少し大きい声が出た。
ここは、紅の世界の、古代の遺跡だろう。
そこに、そんなものが存在するのだとすれば。
……ふと、今度は、近くのドアが気になった。傍に寄り、これまでと同じように、勝手に開閉するのを確かめる。
自動ドア。まるでリアルブルーにあるような、と既に報告されたその言葉は、あくまで、自動ドアの存在そのものを分かりやすくするための説明だと思っていたが。
……動力は、マテリアルなんだろう。石造りのそれは、実際、「リアルブルーの自動ドア」そのものではない……筈だが。
上下の溝などを含めて、動く様をよく見る。扉を滑らかに動かすためのスライドさせる構造。感応させてから、開くまでの時間。その速度。
それらは。自分が知る『自動ドア』と、酷似しすぎている気も……してくる。それこそ、報告された言葉通りに。
プラスチックの存在と合わせて考えると、どういう事になる?
頭をよぎる。今自分が出演しようとしている舞台。
鑑識官は、論理的にすべてのことが説明できたと思っているが、実際には超常現象が起こっている。
逆に。
古代の、魔法文明によってのみ造られたと思われるこの遺跡に。
(先入観を取り払ってみたら……別の見え方が、ある……?)
すぐに口にするのは憚られた。今の自分の思考に、逆に変なバイアスがかかっているだけの気も、する。
少し悩んでいると、仲間から連絡が入った。
──敵がこの神殿に向かってきている!
侵入してくるならここからだろう、かつて青木によって穴が開けられた場所を見張っていた仲間からだった。
十体のゴーレム。両手が瘤の付いた鉄球となっているそれは、明らかに「頑丈なものの破壊」を目的としていると見受けられる。
「なんにせよ、壊されちゃ元も子もないよな」
呟き、意識を切り替える。一先ずは現れた敵に対応すべく、透はとチィは仲間たちと連絡を取るのだった。
リプレイ本文
襲撃の報告が来る少し前──
「プラスチックだと?」
透の声を聴き咎めて、龍宮 アキノ(ka6831)が振り返る。二人が立っていた所に無遠慮に割り込んで、問題のプレートの前に立った。押しのけられた透が僅かに困惑の視線を向けるがお構いなしだ。その傍若無人な態度が却って様になるような彼女だから、結局彼はなんの文句も言わずに肩を竦めるのみだったが。
「ここはまさしくクリムゾンウエストの古代遺跡。そこになぜ自動ドアやプラスチックのようなものがあるのか、実に興味深いねぇ。まさか超古代文明はリアルブルーに劣らぬ科学力に秀でたってわけじゃないだろうねぇ?」
目の前の物を彼女も認めて、彼女の唇の端に喜悦が浮かぶ。
そんな三人──まあ、厳密にはそのうちの二名なのだが──を、柱の影から見つめる視線がある。
(立場入替え転生純愛くらい盛っておけばぁ、透さんなら気付いても気が付かないふりしそうな気がしますぅ)
星野 ハナ(ka5852)である。
「つまりぃ、推しカプを世に広められるかどうかは私の腕次第ってことですよねぇ……ぐふ、ぐふふふ」
気配と声に、透は反応しない。聞こえていないのだろう多分。
その後、冒頭の緊急連絡が入って──
「異世界漂流のWアダムとか名案が浮かびそうだったのにぃ……萌えを邪魔する歪虚は全ブッコロですぅ!」
ハナ、大声上げてダッシュ。さすがに今のは聞こえていただろうが勿論意味は分からないし自分には関係のないことだろうと透は思う。遠い目で。
「透殿、今のって……」
「うん。報告された敵の数とこの神殿の構造考えたら俺らも向かった方がいいだろうな。急ぐぞ」
そうして、何か聞きたげなチィに透は一方的に告げると走り出していくのだった。
●
「わざわざ持ってきた双眼鏡をゆっくり使う暇もないとはな。勤勉な歪虚ほど度し難い物はない、そうは思わんか?」
「襲ってくるにしては、なかなかに出来過ぎたタイミングな気もするが……いや、ともかく迎え撃たねばなるまいな」
ルベーノ・バルバライン(ka6752)の言葉に応えるように、ロニ・カルディス(ka0551)が呟く。
合流までの間、少しでも時間を稼げればとロニや初月 賢四郎(ka1046)がロープなどの罠を試行するが、ゴーレムのパワーと重量もあって大きな効果はなかった。
結局、事前行動ではっきりと効果があったのはアーサー・ホーガン(ka0471)の弓撃。ソウルエッジを込めたそれは、分かりやすく近づく前にダメージを与えていた。
ルベーノは、ロニと賢四郎が後衛としての立ち位置を取ろうとしているのを認めると、アーサーと入口を封鎖すべく待ち構える。
程なくして連絡を受けた仲間たちが次々と到着した。
「穴のこっち側から前衛で封鎖して侵入を阻止するぞ! お前らも加われ!」
アーサーが呼びかける。
彼の作戦としては。入口で前衛同士連携して通過を阻止し、さらにその狭隘さを利用して近接戦闘に参加する敵の数を限定しダメージを抑えるというものだ。特に異論もなく、闘狩人二人はその作戦に乗ることにした。
突破を目指す敵は、当然、それでも可能な限りの人数を入り口に寄せることになる。逆に、これ以上は寄れないと判断したところで、残りの敵は射程距離を保って射撃距離を仕掛けてくる。
「調査の前に、あたし達と同じくこの遺跡を狙う歪虚どもをモルモットにする作業からだねぇ」
その射撃には、アキノがデルタレイで応戦した。続くように、ハンター側の後衛もそれぞれの射撃攻撃スキルで対抗していく。
ハナの五色光符陣、ロニのプルガトリオで動きを止められるもの以外は、互いに比較的後衛は自由に動ける状態だ。此方の前衛を堅牢と判断したか、壁に攻撃を加えようと前進する者が居る。
「行かせるか……」
賢四郎が、死人の手札の一枚をそちらに放つ。そして。
「……反応が変わった?」
そして、前進していたゴーレムが足を止め、攻撃手を探すように頭部を回転させる。
やがてゴーレムは賢四郎の存在を認めるが……ここで向こうにとって問題が生じた。ゴーレムの侵入経路は、前衛がきっちり塞いでいる。つまり、この状態では反撃しようにも賢四郎に射線が通らない。行動フローの見直しが必要となったゴーレムは、一瞬動きを止めたのち、壁に向けての進軍を再開した。
今の反応から、どういうことが考えられるのか。
「理が読めれば打てる手は増える」
賢四郎もまた、今のゴーレムの一連の動きに対する思考に一瞬の時間を割く。
「今自分が狙った敵を叩いて下さい。予想が正しければ攻撃目標が変わる筈」
やがてたどり着く一つの仮説を元に、賢四郎はアーサーへとそう声をかけると、アーサーは脇の壁へと向かい来る一体を、自身の目の前の敵ごと薙ぎ払った。
……果たして賢四郎の予測通り、そのゴーレムはアーサーへと標的を変え……。
最終的には戦局は、互いの前衛と後衛による単純かつ壮絶な打ち合いという形へと収束していった。
条件が異なる点は、火力はハンター側が上、手数はゴーレム側が上、という事。そして……入り口をふさぐべく密集しているハンター側は、完全に前衛に火力が集中する、という事。
その戦況に……。
「はっはっは!」
ルベーノが楽し気に声を上げた。メキリ、と彼の鉄爪が、ゴーレムの胴体により深くめり込んでいる。射線が彼に集中したタイミングでの金剛不壊からの一撃。……故に、今の彼にも浅からぬ傷が刻まれているのだが──
「最後まで戦い続けてこそ格闘士なのだ。最前衛で敵と渡り合って最後まで立ち続けるは身の誉。味方と言えど、こんな晴れ舞台をやすやす譲ってやる気にはなれん、そういうことだ」
高らかにそう言うとルベーノはベッと血混じりの唾を吐く。あながち強がりとも言い切れないようで、自己治癒によりその傷は徐々に塞がっていく。
「はっ。やんじゃねえか。ただな……」
口上を受けて──その傷がふさがり切らないのを確認して──アーサーが、挑発するような声で前に出る。堅守の動作に、ゴーレムたちの注目が彼に移る。接近する敵の連撃。同時に繰り出される攻撃は避けるのが困難であることは想定の上だった。受けて弾く。後衛からの弾丸には、きっちり同属性で対抗して。
「悪ぃがあんたの独壇場とはさせてやれねえなあ──ビックマーには、以前世話になったからな。あの野郎に対する兵器がある神殿を守るためとなれば、気合の入り方も一味違うぜ」
アーサーが言い放つと、彼とルベーノは視線を交わし……不敵に笑い合った。
それぞれが持てる手段で攻撃し、深く傷つく者が居ればロニと賢四郎が回復する。
作戦は、連携は、完璧だった……とは、言いきれない。攻撃目標が纏まりに欠ける。手数に劣る情勢で、倒す順番がやや非効率となる。
故に。ややアーサーとルベーノの耐久力に寄りかかる形での勝利になった。護り切ったものの、前衛の消耗は大きい。
●
「さて、じゃあ調査を再開しようか。自動ドアといいプラスチックといい、ここまで上手く出来たオーパーツに加え、歪虚が狙うとなるとさすがにただの古代遺跡ではないだろうねぇ」
アキノが言うと、ロニが、一旦敵を撃破したことだしという事でこれからは神殿内に行く面子を増やし、神殿内部の調査に本腰を入れようと提案する。
分断時の連携は、これまでと同様賢四郎の連結通話によって確保し、それぞれ交代で思いつく方法での探索を行った。
調査中、いくつかの推測を述べるアキノとルベーノに、これまでの依頼を確認してきているらしいアーサーが、分かっていることを説明する。
アキノの推測通り、この遺跡は対歪虚の前線基地でもあったらしい。そしてここには幻獣の力を強化し、巨大化するシステムが眠っていた。ゴーレムがここを破壊しに来たのは、歪虚がこの遺跡の力を感知したからだろう……等々。
それらの前提を共有したのち、探索を終えた一行はそれぞれに考察を開始する。
「特異点の中の記憶にぃ、異界の航宙船があったじゃないですかぁ? 先史の建物群よりぃ、世界を超えて民間人の命を繋ごうとした方々の船がここに墜ちて遺跡になった、の方がロマンチックな気がしますぅ」
最初にそう述べたのはハナだ。だが。
「この遺跡が、クリムゾンウェストと完全に由来を異にするとは考え辛いねぇ。満ちる力は完全にマテリアルの物だ。何より、『正のマテリアルによる属性攻撃』を起動キーにするなんてのは、完全にこの世界のものと考えるのが妥当じゃないかい?」
アキノが反論する。ロマンを否定されて、ハナがむぅ、と唇を尖らせる。
次に発言したのはアーサーだった。
「自動ドアやエレベーターの存在は、リアルブルーの科学技術を思わせるよな。時代的に矛盾するが、リアルブルーの科学技術の大元は古代文明の生き残りが齎したと考えれば説明がつく」
反応は……沈黙。彼の仮説は興味深くはあるが、現時点で推測の域は出ない。この遺跡の、そしてリアルブルーの科学技術の由来、それがどこからと考えるのは、現時点では難しい……が。
「どちらにせよ、リアルブルーの技術──ややこしいから一旦こう呼ぶよ──と魔導技術に高度な造形を持った者が作ったというのは、十中八九間違いないだろうねぇ」
アキノが言った。
「まあ、確かにぃ」
断言するようなアキノの言葉に、気を取り直したようにハナが応えた。
「隙間から式符で内部を覗いてみたんですけどぉ。思った以上に機械機械してたんですよねえ。石製ではありましたけど。魔導で動かしてるならぁ、もっと文様とかそんな感じだと思ったんですけどぉ」
その発言に、賢四郎が暫く何かを考えていた。
「二つの世界の繋がりは多くはなくとも古くからある。なら過去の転移者が知識を元に別技術で再現している、その可能性はありえないか?」
クリムゾンウェストが単独で、どちらの技術も擁していたのではなく。やはり、別世界同士の知識が、ここで融合されているのではないか。根拠は? と言いたげにアーサーが視線を向けた。
「まあ……感覚ですけどね。ただ、発想というものは、1を10にするより、0から1を生み出す方がはるかに困難だ。……少なくとも、この遺跡の施工主は、高度な魔導技術を持っていた。それは間違いないですよね? それだけの魔導技術を持つ者が、『出力が足りない』『力の方向を変えたい』という課題が生じた際に、科学的なアプローチを考えるかという事です。『マテリアルを増幅する』という発想から脱却してね」
否定の声は……上がらない。言われてみれば……という顔がほとんどだ──一部話についていくことを放棄した者を除いて。
「まして、『思った以上に』機械機械している、ですか。部分的にではなく。今の魔導技術でもどうにかなる部分も、工学的に行っていませんか? それはつまり」
「そうか……なら、設計をした者の基本思想、基礎学問が、魔導文明と根本から異なると考える方が妥当に思えるねぇ」
それが、例えば時空を超えて転移したリアルブルーの技術者だったのか。あるいは後にリアルブルーの科学技術として復活することになる異界の文明だったのか。それは分からないが、やはり……この遺跡は、二つの世界の交流で生まれている。
「……愛ですねえ」
不意に、ハナがぽつりと言った。
これには一同が完全に、は? という顔を浮かべる。
「だってぇ。ここ前線基地ですよねえ? 今ほど転移者も居なくてぇ、ロッソみたいな問答無用の説得力もなかった時代にですよぉ? かたやいきなり放り出された異世界で共に戦うために技術提供してえ。かたや、自分がさっぱり理解できない技術を信じてこれほどの物を造り上げたんでしょお? そんなのぉ……愛じゃないですかぁ」
一同、沈黙。
それは。
それは正に、彼女ならではの『考察』だ。……が。
くく……と笑いが洩れた。賢四郎だった。
「確かに。愛かどうかはともかく……両技術者の間に、深い友情と尊敬があったというのは、うん、それなりに……筋が通っていますね」
頷く。理論派の彼ではあるが、一方でそんなロマンも嫌いじゃない。
「……考えてみりゃ、『正のマテリアルでのみ動かせるエレベーター』ってのは、よく出来てんだよな」
アーサーがぽつりと言った。エレベーター、自動ドア、それだけでは、敵にそれらを抑えられたときに一挙に中枢まで制圧されるという脆さを内包することになる。が、敵には絶対持ち得ない前提条件を付加できるならば、利便性はこちらだけが享受し、深さは丸ごと防御力に出来る。
……事実、故にコーリアスもこの遺跡の真の力にはたどり着けず、青木ですら中枢の破壊に至らなかった。
「『正のマテリアルに反応させる』は、クリムゾンウェストの技術でしか出来ず……しかし、エレベーター、自動ドアという発想、設計はリアルブルーの者が齎した……」
ロニが、はっとした顔で呟く。祈りを捧げるような心地で。
イクタサは言った。ここにあるものはそんなに良いものではない、と。ここに遺されたものは、過去の者が未来に託すつもりだったのではなく、単に使用する前に敗北し偶々残ったのだと。
だが。それでも。たとえ古代の者に、そのつもりがなかったのだとしても、それでもこれらがこうして今も残ったのは──
「二つの世界の、過去の友情の賜物……なのか」
そうして、半ば呆然と、透が言った。
「へぇ……そりゃ、なんか嬉しいっすねえ」
チィが言う。得意げな様子に、透が訝し気な視線を向ける。
「だってそんな、紅と蒼の遠い友情の証を、透殿と手前どもが見つけたってことですぜ?」
……ぐしゃ。
「見つけたってお前は指紋着けただけだろうが……まあそれでも、そういう事になるのかも知れないのか」
呆れながら、透は笑った。そういう事にしても……まあ、悪い気分では、無いかと。
「それで終わりか?」
言ったのはルベーノだ。
一同が振り向く。
「それでこの物語は終わりか? 否。ならばこう続くべきだろう! かくして遺された力で、今まさに、再び二つの世界の力を合わせた我らが、かの者たちの無念を討つ! これぞ、完璧な結末というやつだろう! はっはっは!」
滔々と、両腕を広げ語る彼に……気付けば一同、充足に満ちた笑顔を浮かべていた。
かくして発見された、古代遺跡のもう一つの秘められた真実。ただロマンに終わらせず、この発見を何かに生かせないかとさらに一行は考える。アーサーは、科学技術と関連性があるなら、電子回路のようなマテリアルの供給経路があるのではないか、それを辿って供給源を見つけ出し、マテリアル補充によるラメトクの効果向上を図れないか……などと考えて──。
「ところで、星野は何故瀕死になっているのだ?」
「チィさんが天然小悪魔ですぅ……萌えがあふれすぎて生きるのがつらいですぅ……」
「プラスチックだと?」
透の声を聴き咎めて、龍宮 アキノ(ka6831)が振り返る。二人が立っていた所に無遠慮に割り込んで、問題のプレートの前に立った。押しのけられた透が僅かに困惑の視線を向けるがお構いなしだ。その傍若無人な態度が却って様になるような彼女だから、結局彼はなんの文句も言わずに肩を竦めるのみだったが。
「ここはまさしくクリムゾンウエストの古代遺跡。そこになぜ自動ドアやプラスチックのようなものがあるのか、実に興味深いねぇ。まさか超古代文明はリアルブルーに劣らぬ科学力に秀でたってわけじゃないだろうねぇ?」
目の前の物を彼女も認めて、彼女の唇の端に喜悦が浮かぶ。
そんな三人──まあ、厳密にはそのうちの二名なのだが──を、柱の影から見つめる視線がある。
(立場入替え転生純愛くらい盛っておけばぁ、透さんなら気付いても気が付かないふりしそうな気がしますぅ)
星野 ハナ(ka5852)である。
「つまりぃ、推しカプを世に広められるかどうかは私の腕次第ってことですよねぇ……ぐふ、ぐふふふ」
気配と声に、透は反応しない。聞こえていないのだろう多分。
その後、冒頭の緊急連絡が入って──
「異世界漂流のWアダムとか名案が浮かびそうだったのにぃ……萌えを邪魔する歪虚は全ブッコロですぅ!」
ハナ、大声上げてダッシュ。さすがに今のは聞こえていただろうが勿論意味は分からないし自分には関係のないことだろうと透は思う。遠い目で。
「透殿、今のって……」
「うん。報告された敵の数とこの神殿の構造考えたら俺らも向かった方がいいだろうな。急ぐぞ」
そうして、何か聞きたげなチィに透は一方的に告げると走り出していくのだった。
●
「わざわざ持ってきた双眼鏡をゆっくり使う暇もないとはな。勤勉な歪虚ほど度し難い物はない、そうは思わんか?」
「襲ってくるにしては、なかなかに出来過ぎたタイミングな気もするが……いや、ともかく迎え撃たねばなるまいな」
ルベーノ・バルバライン(ka6752)の言葉に応えるように、ロニ・カルディス(ka0551)が呟く。
合流までの間、少しでも時間を稼げればとロニや初月 賢四郎(ka1046)がロープなどの罠を試行するが、ゴーレムのパワーと重量もあって大きな効果はなかった。
結局、事前行動ではっきりと効果があったのはアーサー・ホーガン(ka0471)の弓撃。ソウルエッジを込めたそれは、分かりやすく近づく前にダメージを与えていた。
ルベーノは、ロニと賢四郎が後衛としての立ち位置を取ろうとしているのを認めると、アーサーと入口を封鎖すべく待ち構える。
程なくして連絡を受けた仲間たちが次々と到着した。
「穴のこっち側から前衛で封鎖して侵入を阻止するぞ! お前らも加われ!」
アーサーが呼びかける。
彼の作戦としては。入口で前衛同士連携して通過を阻止し、さらにその狭隘さを利用して近接戦闘に参加する敵の数を限定しダメージを抑えるというものだ。特に異論もなく、闘狩人二人はその作戦に乗ることにした。
突破を目指す敵は、当然、それでも可能な限りの人数を入り口に寄せることになる。逆に、これ以上は寄れないと判断したところで、残りの敵は射程距離を保って射撃距離を仕掛けてくる。
「調査の前に、あたし達と同じくこの遺跡を狙う歪虚どもをモルモットにする作業からだねぇ」
その射撃には、アキノがデルタレイで応戦した。続くように、ハンター側の後衛もそれぞれの射撃攻撃スキルで対抗していく。
ハナの五色光符陣、ロニのプルガトリオで動きを止められるもの以外は、互いに比較的後衛は自由に動ける状態だ。此方の前衛を堅牢と判断したか、壁に攻撃を加えようと前進する者が居る。
「行かせるか……」
賢四郎が、死人の手札の一枚をそちらに放つ。そして。
「……反応が変わった?」
そして、前進していたゴーレムが足を止め、攻撃手を探すように頭部を回転させる。
やがてゴーレムは賢四郎の存在を認めるが……ここで向こうにとって問題が生じた。ゴーレムの侵入経路は、前衛がきっちり塞いでいる。つまり、この状態では反撃しようにも賢四郎に射線が通らない。行動フローの見直しが必要となったゴーレムは、一瞬動きを止めたのち、壁に向けての進軍を再開した。
今の反応から、どういうことが考えられるのか。
「理が読めれば打てる手は増える」
賢四郎もまた、今のゴーレムの一連の動きに対する思考に一瞬の時間を割く。
「今自分が狙った敵を叩いて下さい。予想が正しければ攻撃目標が変わる筈」
やがてたどり着く一つの仮説を元に、賢四郎はアーサーへとそう声をかけると、アーサーは脇の壁へと向かい来る一体を、自身の目の前の敵ごと薙ぎ払った。
……果たして賢四郎の予測通り、そのゴーレムはアーサーへと標的を変え……。
最終的には戦局は、互いの前衛と後衛による単純かつ壮絶な打ち合いという形へと収束していった。
条件が異なる点は、火力はハンター側が上、手数はゴーレム側が上、という事。そして……入り口をふさぐべく密集しているハンター側は、完全に前衛に火力が集中する、という事。
その戦況に……。
「はっはっは!」
ルベーノが楽し気に声を上げた。メキリ、と彼の鉄爪が、ゴーレムの胴体により深くめり込んでいる。射線が彼に集中したタイミングでの金剛不壊からの一撃。……故に、今の彼にも浅からぬ傷が刻まれているのだが──
「最後まで戦い続けてこそ格闘士なのだ。最前衛で敵と渡り合って最後まで立ち続けるは身の誉。味方と言えど、こんな晴れ舞台をやすやす譲ってやる気にはなれん、そういうことだ」
高らかにそう言うとルベーノはベッと血混じりの唾を吐く。あながち強がりとも言い切れないようで、自己治癒によりその傷は徐々に塞がっていく。
「はっ。やんじゃねえか。ただな……」
口上を受けて──その傷がふさがり切らないのを確認して──アーサーが、挑発するような声で前に出る。堅守の動作に、ゴーレムたちの注目が彼に移る。接近する敵の連撃。同時に繰り出される攻撃は避けるのが困難であることは想定の上だった。受けて弾く。後衛からの弾丸には、きっちり同属性で対抗して。
「悪ぃがあんたの独壇場とはさせてやれねえなあ──ビックマーには、以前世話になったからな。あの野郎に対する兵器がある神殿を守るためとなれば、気合の入り方も一味違うぜ」
アーサーが言い放つと、彼とルベーノは視線を交わし……不敵に笑い合った。
それぞれが持てる手段で攻撃し、深く傷つく者が居ればロニと賢四郎が回復する。
作戦は、連携は、完璧だった……とは、言いきれない。攻撃目標が纏まりに欠ける。手数に劣る情勢で、倒す順番がやや非効率となる。
故に。ややアーサーとルベーノの耐久力に寄りかかる形での勝利になった。護り切ったものの、前衛の消耗は大きい。
●
「さて、じゃあ調査を再開しようか。自動ドアといいプラスチックといい、ここまで上手く出来たオーパーツに加え、歪虚が狙うとなるとさすがにただの古代遺跡ではないだろうねぇ」
アキノが言うと、ロニが、一旦敵を撃破したことだしという事でこれからは神殿内に行く面子を増やし、神殿内部の調査に本腰を入れようと提案する。
分断時の連携は、これまでと同様賢四郎の連結通話によって確保し、それぞれ交代で思いつく方法での探索を行った。
調査中、いくつかの推測を述べるアキノとルベーノに、これまでの依頼を確認してきているらしいアーサーが、分かっていることを説明する。
アキノの推測通り、この遺跡は対歪虚の前線基地でもあったらしい。そしてここには幻獣の力を強化し、巨大化するシステムが眠っていた。ゴーレムがここを破壊しに来たのは、歪虚がこの遺跡の力を感知したからだろう……等々。
それらの前提を共有したのち、探索を終えた一行はそれぞれに考察を開始する。
「特異点の中の記憶にぃ、異界の航宙船があったじゃないですかぁ? 先史の建物群よりぃ、世界を超えて民間人の命を繋ごうとした方々の船がここに墜ちて遺跡になった、の方がロマンチックな気がしますぅ」
最初にそう述べたのはハナだ。だが。
「この遺跡が、クリムゾンウェストと完全に由来を異にするとは考え辛いねぇ。満ちる力は完全にマテリアルの物だ。何より、『正のマテリアルによる属性攻撃』を起動キーにするなんてのは、完全にこの世界のものと考えるのが妥当じゃないかい?」
アキノが反論する。ロマンを否定されて、ハナがむぅ、と唇を尖らせる。
次に発言したのはアーサーだった。
「自動ドアやエレベーターの存在は、リアルブルーの科学技術を思わせるよな。時代的に矛盾するが、リアルブルーの科学技術の大元は古代文明の生き残りが齎したと考えれば説明がつく」
反応は……沈黙。彼の仮説は興味深くはあるが、現時点で推測の域は出ない。この遺跡の、そしてリアルブルーの科学技術の由来、それがどこからと考えるのは、現時点では難しい……が。
「どちらにせよ、リアルブルーの技術──ややこしいから一旦こう呼ぶよ──と魔導技術に高度な造形を持った者が作ったというのは、十中八九間違いないだろうねぇ」
アキノが言った。
「まあ、確かにぃ」
断言するようなアキノの言葉に、気を取り直したようにハナが応えた。
「隙間から式符で内部を覗いてみたんですけどぉ。思った以上に機械機械してたんですよねえ。石製ではありましたけど。魔導で動かしてるならぁ、もっと文様とかそんな感じだと思ったんですけどぉ」
その発言に、賢四郎が暫く何かを考えていた。
「二つの世界の繋がりは多くはなくとも古くからある。なら過去の転移者が知識を元に別技術で再現している、その可能性はありえないか?」
クリムゾンウェストが単独で、どちらの技術も擁していたのではなく。やはり、別世界同士の知識が、ここで融合されているのではないか。根拠は? と言いたげにアーサーが視線を向けた。
「まあ……感覚ですけどね。ただ、発想というものは、1を10にするより、0から1を生み出す方がはるかに困難だ。……少なくとも、この遺跡の施工主は、高度な魔導技術を持っていた。それは間違いないですよね? それだけの魔導技術を持つ者が、『出力が足りない』『力の方向を変えたい』という課題が生じた際に、科学的なアプローチを考えるかという事です。『マテリアルを増幅する』という発想から脱却してね」
否定の声は……上がらない。言われてみれば……という顔がほとんどだ──一部話についていくことを放棄した者を除いて。
「まして、『思った以上に』機械機械している、ですか。部分的にではなく。今の魔導技術でもどうにかなる部分も、工学的に行っていませんか? それはつまり」
「そうか……なら、設計をした者の基本思想、基礎学問が、魔導文明と根本から異なると考える方が妥当に思えるねぇ」
それが、例えば時空を超えて転移したリアルブルーの技術者だったのか。あるいは後にリアルブルーの科学技術として復活することになる異界の文明だったのか。それは分からないが、やはり……この遺跡は、二つの世界の交流で生まれている。
「……愛ですねえ」
不意に、ハナがぽつりと言った。
これには一同が完全に、は? という顔を浮かべる。
「だってぇ。ここ前線基地ですよねえ? 今ほど転移者も居なくてぇ、ロッソみたいな問答無用の説得力もなかった時代にですよぉ? かたやいきなり放り出された異世界で共に戦うために技術提供してえ。かたや、自分がさっぱり理解できない技術を信じてこれほどの物を造り上げたんでしょお? そんなのぉ……愛じゃないですかぁ」
一同、沈黙。
それは。
それは正に、彼女ならではの『考察』だ。……が。
くく……と笑いが洩れた。賢四郎だった。
「確かに。愛かどうかはともかく……両技術者の間に、深い友情と尊敬があったというのは、うん、それなりに……筋が通っていますね」
頷く。理論派の彼ではあるが、一方でそんなロマンも嫌いじゃない。
「……考えてみりゃ、『正のマテリアルでのみ動かせるエレベーター』ってのは、よく出来てんだよな」
アーサーがぽつりと言った。エレベーター、自動ドア、それだけでは、敵にそれらを抑えられたときに一挙に中枢まで制圧されるという脆さを内包することになる。が、敵には絶対持ち得ない前提条件を付加できるならば、利便性はこちらだけが享受し、深さは丸ごと防御力に出来る。
……事実、故にコーリアスもこの遺跡の真の力にはたどり着けず、青木ですら中枢の破壊に至らなかった。
「『正のマテリアルに反応させる』は、クリムゾンウェストの技術でしか出来ず……しかし、エレベーター、自動ドアという発想、設計はリアルブルーの者が齎した……」
ロニが、はっとした顔で呟く。祈りを捧げるような心地で。
イクタサは言った。ここにあるものはそんなに良いものではない、と。ここに遺されたものは、過去の者が未来に託すつもりだったのではなく、単に使用する前に敗北し偶々残ったのだと。
だが。それでも。たとえ古代の者に、そのつもりがなかったのだとしても、それでもこれらがこうして今も残ったのは──
「二つの世界の、過去の友情の賜物……なのか」
そうして、半ば呆然と、透が言った。
「へぇ……そりゃ、なんか嬉しいっすねえ」
チィが言う。得意げな様子に、透が訝し気な視線を向ける。
「だってそんな、紅と蒼の遠い友情の証を、透殿と手前どもが見つけたってことですぜ?」
……ぐしゃ。
「見つけたってお前は指紋着けただけだろうが……まあそれでも、そういう事になるのかも知れないのか」
呆れながら、透は笑った。そういう事にしても……まあ、悪い気分では、無いかと。
「それで終わりか?」
言ったのはルベーノだ。
一同が振り向く。
「それでこの物語は終わりか? 否。ならばこう続くべきだろう! かくして遺された力で、今まさに、再び二つの世界の力を合わせた我らが、かの者たちの無念を討つ! これぞ、完璧な結末というやつだろう! はっはっは!」
滔々と、両腕を広げ語る彼に……気付けば一同、充足に満ちた笑顔を浮かべていた。
かくして発見された、古代遺跡のもう一つの秘められた真実。ただロマンに終わらせず、この発見を何かに生かせないかとさらに一行は考える。アーサーは、科学技術と関連性があるなら、電子回路のようなマテリアルの供給経路があるのではないか、それを辿って供給源を見つけ出し、マテリアル補充によるラメトクの効果向上を図れないか……などと考えて──。
「ところで、星野は何故瀕死になっているのだ?」
「チィさんが天然小悪魔ですぅ……萌えがあふれすぎて生きるのがつらいですぅ……」
依頼結果
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依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 初月 賢四郎(ka1046) 人間(リアルブルー)|29才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2018/04/12 01:14:45 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/04/09 19:51:56 |