ゲスト
(ka0000)
【幻兆】明日を壊す者
マスター:猫又ものと

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/04/12 19:00
- 完成日
- 2018/04/25 18:41
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
チュプ大神殿の探索で発覚した施設『ラメトク』。
幻獣にマテリアルを注ぎ混み強化、大型化する事が可能だという。
かつて古代文明の時代に幻獣が歪虚と戦った際、幻獣の力を引き出したとされる施設であった。
チュプ大神殿と共に封印されていたラメトクであったが、ハンターがその封印を開く事に成功。
これで対歪虚戦に利用できると色めきだったハンター達であったが、ここでヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032)がある提案を行った。
「このラメトクのマテリアルを一体の幻獣に注ぎ込む事は可能でしょうか?」
四大精霊の一人、イクタサ(kz0246)へ向けられたこの質問には大きな意味がある。
マテリアルを注ぎ込む事で幻獣が大型化するのであれば、一体に大量のマテリアルを注ぎ込めば想像以上に大きくする事ができるのか。
ヴェルナーの脳裏にあったのは、怠惰王ビックマー・ザ・ヘカトンケイル。
体長が100メートル近い巨大なサイズであり、山であっても障害物にならない程である。かつて、要塞「ノアーラ・クンタウ」もビックマーの前では何もする事ができなかった。この時、ヴェルナーは屈辱とも言える辛酸を味わっていた。
イクタサによれば、ヴェルナーの問いは可能。
神殿に貯えられたマテリアルをすべて使えば、時間制限はあるものの、大幻獣であれば大型化ができるようだ。そして、もしその大幻獣をビックマーにぶつける事ができれば、正負のマテリアルが衝突。うまくいけばビックマーを弱体化させられる。
対ビックマーにおける最終決戦兵器――ラメトク。
因縁の対決に終止符を打つことができるのだろうか。
●明日を壊す者
アルナス湖北の古城。
かつてBADDASとよばれた怠惰が根城としていた場所だ。
青木 燕太郎(kz0166)はその場所を冷ややかな目で見つめていた。
――BADDASが消えてもう随分と経つ。
別に感傷などはないが、自分が根城にしていた場所の地下に何があるかくらいは把握しておいて欲しかった。
そうすれば、こんな面倒臭いことにもならなかっただろうに……。
先日チュプ大神殿で発見された『ラメトク』。
……それはまさに、怠惰王であるビックマーの喉元に刀を突きつけるような設備だった。
それを放置しておくのは拙いと、ビックマーに件の設備の破壊を頼まれ、ここにいる。
正直面倒臭いし、あのくまのぬいぐるみに使われるのは癪だが――まあ、『ラメトク』について知っておいて損はあるまい。
上手くすれば、歪虚の強化に転用できるかもしれない。
蓬生から呼び出しの手紙を受け取ってはいたが――あれに逢いに行く前に、寄り道も悪くないだろう。
短くため息をついた青木。
古城の壁を槍で一突きすると、中に入り込み――。
その異変に気付いたのは、1人のハンターだった。
「……本当にそんな音がしたの?」
「本当だって! 確かに聞いたんだって!」
そう言いながら、地上に向かう階段を駆け上がるハンター達。
彼らは古城の地下へと向かう部隊……ヴェルナー達と同行していたが、上の方で何かが崩れるような音がして――。
この古城に何が潜んでいるか、何が起こるか分からない。
放っておいては危険だと判断した一部のハンター達が、音のした方へと向かっていた。
階段を上がり切った先。見えるのは崩れた壁。
「……来た時ここ崩れてたか?」
「ううん。普通に壁があったはずだけど何があったのかしら」
「……誰かと思えばハンターか。これは面倒なことになったな」
不意に聞こえた声に振り返るハンター達。
陰から滲み出るように現れたその姿に、ハンター達は息を飲む。
「……青木!? 何でこんなところにいる!?」
「さてね。それはお前達の方が知っているんじゃないのか」
ハンターの問いかけに、肩を竦める青木。
どこか余裕のある様子に、ハンター達は黒い歪虚を睨みつける。
「あなた、ここを破壊しにきたのね?」
「ご名答。前回は遺跡を破壊したつもりだったんだが……足りなかったようなんでな」
「お陰様でな。ちょっと手間取ったけど、チュプ大神殿は目覚めた」
「……ああ。知っている。破壊したはずのものが起動したのは俺の落ち度だ。二度と同じ失敗はしない。……今度はきっちりと、完膚なきまでに破壊してやらんとな」
ニヤリ、と残忍な笑みを浮かべて槍を構える青木。
ハンター達は距離を取りながら、その殺気を感じ取って……。
――この先では、ヴェルナーと仲間達が『ラメトク』のリミッター解除の為の謎解きをしている。
ここを突破されたら拙いことになる。
青木ほどの強敵をこの人数で相手をするのは分が悪い。
だが、援軍を呼んでいるような暇はない……!
息を飲むハンター達。
ここで何としても食い止めなければ……!
意を決した彼らは、武器を構えて闇黒の魔人と対峙する。
幻獣にマテリアルを注ぎ混み強化、大型化する事が可能だという。
かつて古代文明の時代に幻獣が歪虚と戦った際、幻獣の力を引き出したとされる施設であった。
チュプ大神殿と共に封印されていたラメトクであったが、ハンターがその封印を開く事に成功。
これで対歪虚戦に利用できると色めきだったハンター達であったが、ここでヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032)がある提案を行った。
「このラメトクのマテリアルを一体の幻獣に注ぎ込む事は可能でしょうか?」
四大精霊の一人、イクタサ(kz0246)へ向けられたこの質問には大きな意味がある。
マテリアルを注ぎ込む事で幻獣が大型化するのであれば、一体に大量のマテリアルを注ぎ込めば想像以上に大きくする事ができるのか。
ヴェルナーの脳裏にあったのは、怠惰王ビックマー・ザ・ヘカトンケイル。
体長が100メートル近い巨大なサイズであり、山であっても障害物にならない程である。かつて、要塞「ノアーラ・クンタウ」もビックマーの前では何もする事ができなかった。この時、ヴェルナーは屈辱とも言える辛酸を味わっていた。
イクタサによれば、ヴェルナーの問いは可能。
神殿に貯えられたマテリアルをすべて使えば、時間制限はあるものの、大幻獣であれば大型化ができるようだ。そして、もしその大幻獣をビックマーにぶつける事ができれば、正負のマテリアルが衝突。うまくいけばビックマーを弱体化させられる。
対ビックマーにおける最終決戦兵器――ラメトク。
因縁の対決に終止符を打つことができるのだろうか。
●明日を壊す者
アルナス湖北の古城。
かつてBADDASとよばれた怠惰が根城としていた場所だ。
青木 燕太郎(kz0166)はその場所を冷ややかな目で見つめていた。
――BADDASが消えてもう随分と経つ。
別に感傷などはないが、自分が根城にしていた場所の地下に何があるかくらいは把握しておいて欲しかった。
そうすれば、こんな面倒臭いことにもならなかっただろうに……。
先日チュプ大神殿で発見された『ラメトク』。
……それはまさに、怠惰王であるビックマーの喉元に刀を突きつけるような設備だった。
それを放置しておくのは拙いと、ビックマーに件の設備の破壊を頼まれ、ここにいる。
正直面倒臭いし、あのくまのぬいぐるみに使われるのは癪だが――まあ、『ラメトク』について知っておいて損はあるまい。
上手くすれば、歪虚の強化に転用できるかもしれない。
蓬生から呼び出しの手紙を受け取ってはいたが――あれに逢いに行く前に、寄り道も悪くないだろう。
短くため息をついた青木。
古城の壁を槍で一突きすると、中に入り込み――。
その異変に気付いたのは、1人のハンターだった。
「……本当にそんな音がしたの?」
「本当だって! 確かに聞いたんだって!」
そう言いながら、地上に向かう階段を駆け上がるハンター達。
彼らは古城の地下へと向かう部隊……ヴェルナー達と同行していたが、上の方で何かが崩れるような音がして――。
この古城に何が潜んでいるか、何が起こるか分からない。
放っておいては危険だと判断した一部のハンター達が、音のした方へと向かっていた。
階段を上がり切った先。見えるのは崩れた壁。
「……来た時ここ崩れてたか?」
「ううん。普通に壁があったはずだけど何があったのかしら」
「……誰かと思えばハンターか。これは面倒なことになったな」
不意に聞こえた声に振り返るハンター達。
陰から滲み出るように現れたその姿に、ハンター達は息を飲む。
「……青木!? 何でこんなところにいる!?」
「さてね。それはお前達の方が知っているんじゃないのか」
ハンターの問いかけに、肩を竦める青木。
どこか余裕のある様子に、ハンター達は黒い歪虚を睨みつける。
「あなた、ここを破壊しにきたのね?」
「ご名答。前回は遺跡を破壊したつもりだったんだが……足りなかったようなんでな」
「お陰様でな。ちょっと手間取ったけど、チュプ大神殿は目覚めた」
「……ああ。知っている。破壊したはずのものが起動したのは俺の落ち度だ。二度と同じ失敗はしない。……今度はきっちりと、完膚なきまでに破壊してやらんとな」
ニヤリ、と残忍な笑みを浮かべて槍を構える青木。
ハンター達は距離を取りながら、その殺気を感じ取って……。
――この先では、ヴェルナーと仲間達が『ラメトク』のリミッター解除の為の謎解きをしている。
ここを突破されたら拙いことになる。
青木ほどの強敵をこの人数で相手をするのは分が悪い。
だが、援軍を呼んでいるような暇はない……!
息を飲むハンター達。
ここで何としても食い止めなければ……!
意を決した彼らは、武器を構えて闇黒の魔人と対峙する。
リプレイ本文
古代文明との邂逅。
チュプ大神殿の覚醒――そして、『ラメトク』の発見。
この発見で、部族会議は対ビックマー戦の糸口を得ることとなり――。
未来への勝利を願い、ハンター達はアルナス湖北にある古城へと赴いた。
そう。本来はの任務は、『ラメトク』の制御を解除だった。
歪虚が現れる可能性も勿論あったが、今までのことを考えれば鍵となる謎を解けさえすれば問題なくクリアできる筈だったのだ。
それなのに。まさかこんなところで、よりにもよって青木 燕太郎(kz0166)に遭遇するとは――。
重傷を負った我が身を呪う夜桜 奏音(ka5754)。
――青木は優位に立つ為であれば手段を問わない。
ハンターを人質による戦略も多く利用する。
その性質からしても、真っ先に狙われるのは弱っている自分だ。
……その証拠に、青木がこちらを見て薄く笑っている。
ここは何とかして切り抜けないと……。
声を出さず、頭をフル回転させる奏音。
――まだ仕掛けるなよ。
――分かってるですよー。
目線でそんなやり取りそする仙堂 紫苑(ka5953)とアルマ・A・エインズワース(ka4901)。
2人も彼女を人質に取られる可能性を理解しているのか、音もなく奏音の盾になるように前に立つ。
大きな穴の開いた壁と、その横に立つ黒い歪虚を見てネフィリア・レインフォード(ka0444)はああああ! と大きな声をあげた。
「何か派手な音がしたと思ったら青木なのだ!! 壁に穴空いてるのだ! 壊しちゃダメなのだ!!」
「誰かと思えば……久しいな、青木よ。よもやこんな所まで出張って来るとはのう」
「俺がどこに行こうが俺の勝手だろう」
「おまえのように破壊を撒き散らすものに勝手に出歩かれては迷惑じゃ。今帰るというのであれば見逃してやらぬこともないぞ」
フラメディア・イリジア(ka2604)の剣呑な目線。青木はくつくつと笑う。
「お前も相変わらず身の程を知らんな。止めに来たという割に、弱っている者がいるようだが」
「だからどうしたというのじゃ。そうやすやすと目的を果たさせてやる気はないぞえ」
睨み合う2人。コツリ、と足音を立ててジェールトヴァ(ka3098)が歩み出る。
「青木さん、と言ったかな。随分と派手なご登場だね。ここに何か御用かな?」
「ここを破壊しに来た。……理由は、お前達も知っているだろう」
「成程。仕事という訳だね。私達と一緒だねえ」
「お前達がコーリアスとアレクサンドルを倒してくれたお陰で人手不足なんでな」
「おやおや。それは申し訳ないことをしたねえ。ところで青木さんは、ビックマーの腹心なのかい? 彼のためによく働いているようだけれど」
「……別にあれの為に働きたい訳じゃないが、一応上司なんでな」
「立場上仕方なく、というやつかな。一つ聞きたいんだけど……君は本当にここを破壊するつもりがあるのかい?」
「どういう意味だ」
「君の登場の仕方が気になってね。……何故わざわざ、私達に気付かれるような入り方をしたのかねえ」
ジェールトヴァに鋭い目線を向けつつ、無言を返す青木。彼は臆することなくそれを受け止めると、言葉を続ける。
「……ここは古城だ。別に入口が封鎖されている訳でもない。君ほどの力量があれば、誰にも気づかれぬまま奇襲することもできただろうに」
「あっ。そうですよね……!」
「ジェールトヴァさん頭良い……!」
「しー! 静かに」
感心してしきりに頷く奏音とアルマに人差し指を口に当てる合図を送る紫苑。
……そう。今回はラメトクの制御装置の鍵を解くまでの時間を稼ぐことが任務だ。
戦いが避けられるのであれば、それに越したことはない。
フラメディアとネフィリアもそれを理解しているのか、奏音と青木の直線状に立つようにしながら、いつでも動けるように様子を伺っている。
ジェールトヴァは眼鏡越しに、穏やかな目線を青木に向ける。
「これは私の推測だけど……君は、ビックマーに嫌々従っているんじゃないのかな? だからわざわざ私達に気付かれるような動きをして、あえて『邪魔』に入らせた。……どうかな」
老齢の紳士の言葉に目を見開く青木。次の瞬間、心底可笑しそうに笑い出す。
「お前はなかなか見どころがあるな。ああ、その通りだ」
「……同じ怠惰眷属なのに、仲悪いのだ?」
「歪虚は存在の性質的に、他者を排除する方向に動く。共闘するのは利害が一致した時だけだ」
「わー。歪虚の関係ってギスギスしてるのだ」
興が乗ったのか素直に問いに答える青木にウヘェ、という顔をするネフィリア。
奏音は息を潜めて、注意深く黒い歪虚を見つめる。
――青木のような男が大人しく使われているから妙だとは思っていたが、今回の話で合点が行った。
まあ、ビックマーとて見た目こそあんなにファンシーだが怠惰の王だ。
青木の力量を持ってしても勝ち目がない、ということかもしれない。
とはいえ、既に災厄の十三魔であるハイルタイを騙し討ちして吸収した実績もある。
ビックマーに対しても、そう言ったものを仕掛けてもおかしくはない……。
そんなことを考えていた彼女。その間も、ジェールトヴァの声が続く。
「お褒めに預かり光栄だよ。もう1つ、私から提案があるんだけどいいかな」
「……聞こうか」
「もし、青木さんがかの怠惰の王がお嫌いなのなら……陥れてみても、楽しいかもしれないよ。まあ、感情より優先すべき事項――従い続ける理由があるなら話は別だけども。例えば、破壊したと嘘の報告をしてみるとかね」
「あれも馬鹿ではない。遺跡の力の流れで破壊に失敗したことにすぐ気づくだろう。それは得策ではないな」
「そうか。そちらから覚られてしまうのだね。だから私達に邪魔して貰う必要があった、と。良く分かったよ。ではきみの思惑通り、私達は『邪魔をした』ことにしよう。……これなら、わざわざ私達と戦う必要はないのではないかな」
「ああ、そうだな。だが仕事をサボったと思われるのも厄介だ。……念には念を、な。ここを適当に破壊したら引こう」
ニヤリと笑って槍を構える青木。それまで黙って事態を見守っていたアルマが端正な顔に笑みを張り付けたまま歩み出る。
「……二度目は、許さないですよ?」
「……誰かと思えばアルマか。二度目とは何の話だ」
「イクタサの神殿を壊した件だと思いますよ。こいつこう見えても滅茶苦茶怒ってる筈なんで」
アルマの冷え切った低い声。それ以上語ろうとしないアルマの代わりに口を開く紫苑。それに青木は肩を竦めて――。
「お前の事情など知ったことではない、な……!」
「……させるか!! 奏音、下がるのじゃ!」
前進しようとした青木の前に割り込むフラメディア。
ぶつかり合う槍と斧。奏音が痛む身体を押して後退し……。
――これが、戦端を開く切欠となった。
「やっぱりこうなっちゃったのだ! こうなったらやるしかないのだ!」
「時間稼ぎ助かった! お陰で準備万端だ!」
響き渡るアルマのきびきびとした迫力のある歌。
ネフィリアは大剣を抜き放ち、紫苑もまたマテリアルの防御膜を形成して青木に迫る。
「どりゃあああああ!!」
ネフィの一閃。それを跳躍で避ける青木。彼女を一瞥するとフン、と鼻で笑う。
「お前の小さい身体にその大剣は荷が重いんじゃないのか?」
「うるさいのだ! 誰がつるぺたなのだ!! 大きさの問題なんて筋力で解決できるのだ!!」
「誰もつるぺたなんて言ってないよな!?」
思わずツッコむ紫苑。マテリアルを流し込み、巨大となった蒼機剣を青木目掛けて振り下ろす。
流石に避け切れなかったのか、槍で弾き返す青木。
体勢を立て直した紫苑はヒュー! と口笛を吹く。
「これ避けてくんのか……! こいつはヤベェな……!」
「どうする? まだやるのか?」
「おい、アルマ! ここちょっとくらい壊させてやってさっさとお帰り願った方が良くないか?!」
「嫌ですよ! イクタサさんの大事な場所ですよ!? これ以上壊されたら……うふふふふふふ」
青木の問いかけを飼い犬に振る紫苑。即答でお断りするアルマ。
――紫苑は知っているが、アルマは怒ると一旦無表情になるが、それを超えると笑い出す。
今は大分笑っているのでこいつはヤバい状況と言える。
その横を過る赤い風。隙を突くように閃くフラメディアの斧。
身を翻し、それを受け止めた青木。
2人は武器越しに睨み合う。
「……フラメディア、少し腕を上げたか?」
「……うむ。お前にいずれ引導を渡さねばならぬからのぅ」
「ハッ。まだまだ足りんぞ、小娘……!」
彼女の斧を押し返し、距離を取る青木。
その力にフラメディアは顔を顰める。
その間も、歌と踊りで高めたマテリアルを更に練り上げたアルマ。穏やかで静かな歌を続け様に歌う。
「青木よ。アルマの本気の歌が続いてる状況で技かけられたら流石のお前でも厳しいんじゃないのか? ここらで引いてくれると助かるんだが」
「だから、ここを軽く破壊させてくれれば引くと言っているだろう」
紫苑の懇願に淡々と答える青木。アルマの放った光線が、2人の間に割り込むようにして地面を焼く。
「……お断りだって言ってますよね」
「あぶねーなぁ! 当たったらどうすんだ!」
「シオンには当てません! 燕太郎さんは燃やしますけど」
「交渉決裂なのだーー!」
青木を余所に言い合う紫苑とアルマ。黒い歪虚に向かって伸びる幻影の腕。
それは青木に触れた途端に掻き消える。
「むっかーー! 何で効かないのだ!!」
「俺に小手先は通用せんぞ」
「……今日は良く喋るのう。青木よ」
「今日は興が乗ってな。お前達と遊んでやるのも悪くない」
「……そういう配慮が一番面倒なんすけどねえ」
「とっとと去れ。お前の遊びは厄介じゃ!!」
床目掛けて放たれる青木の槍。紫苑がパリィグローブで、フラメディアが盾でそれを受け止める。
仲間達の必死の戦い。傷だらけになりながらも必死で時間を稼いでいる――。
その光景を見て、奏音は唇を噛む。
「こんな状態でないのなら青木と戦えるのに……」
ぽつりと漏れた本音。後方で仲間達の回復に努めていたジェールトヴァが奏音をちらりと見る。
「……前に出ることだけが戦いではないよ。こうして堪えることも、戦いの一つだ」
「そうですね。今の私では足手まといところか、人質にされかねませんから……」
「そうだね。その時出来る、最善を」
「……でも今回、青木は私を狙うつもりはないように見えますよ」
「どうしてそう思うんだい?」
「楽しそうです。とても。水を得た魚っていうんでしょうか……」
呟き、目線を戻す奏音。
そう。別に笑っている訳ではないのだが、青木が楽しそうに見える。
大技を出さずに、ひたすら打ち合っているのはそのせいだろうか?
――跳躍し、再び距離を取る青木。追い縋るハンター達。
ぶつかり合う武器と武器。その度に飛び散る火花。
近づいては離れ、離れては近づき――。
幾度とない鍔迫り合い。
続いたアルマの短い詠唱。放たれた光線が青木を貫く。
舌打ちした青木。アルマの冷たい声が続く。
「……そろそろ帰って下さい。僕、控えめに言ってあなたのこと大っっっ嫌いなんで。これ以上目の前をウロウロしたら……殺します」
「奇遇だな。俺も同感だ」
目線で人が殺せるのであれば3回は殺せそうなそれをぶつけ合う青木とアルマ。
次の瞬間、ゴウン、と響く音。地下に続く階段から光が漏れて来て……別動隊が無事に目的を達成したことを覚る。
「下の仲間達が鍵を解除したのだ! お前の目論見は破られたのだ! ざまあみろなのだ!!」
えっへんと薄い胸を張るネフィリア。青木はため息をつくと槍を収める。
「……潮時か。引くとしよう」
「ようやっとかよ! 帰れ帰れ! 二度と来なくていいぞ」
しっしっ! と手を振る紫苑。
青木は振り返るとジェールトヴァに歩み寄る。
「私に何か用かい?」
「ああ。……お前の名は?」
「私かい? ジェールトヴァだよ」
「そうか。なかなか愉しませて貰った。覚えておくとしよう」
「それはどうも。また面白い話を考えておくよ」
「……青木よ。おまえ、よもやビックマーの吸収を目論んでいるのではあるまいな?」
「さて、な。……知りたければ追って来るといい」
青木の背中に問いかけるフラメディア。彼は振り返りもせずに去っていった。
――苦難を乗り越え、古城を守り抜いたハンター達。
ビックマーを疎んじている青木。彼の企みは気になるけれど――。
その時はまた、全力で打ち砕くまでだ。
そう誓ったハンター達は、雌伏の時を過ごすのだった。
チュプ大神殿の覚醒――そして、『ラメトク』の発見。
この発見で、部族会議は対ビックマー戦の糸口を得ることとなり――。
未来への勝利を願い、ハンター達はアルナス湖北にある古城へと赴いた。
そう。本来はの任務は、『ラメトク』の制御を解除だった。
歪虚が現れる可能性も勿論あったが、今までのことを考えれば鍵となる謎を解けさえすれば問題なくクリアできる筈だったのだ。
それなのに。まさかこんなところで、よりにもよって青木 燕太郎(kz0166)に遭遇するとは――。
重傷を負った我が身を呪う夜桜 奏音(ka5754)。
――青木は優位に立つ為であれば手段を問わない。
ハンターを人質による戦略も多く利用する。
その性質からしても、真っ先に狙われるのは弱っている自分だ。
……その証拠に、青木がこちらを見て薄く笑っている。
ここは何とかして切り抜けないと……。
声を出さず、頭をフル回転させる奏音。
――まだ仕掛けるなよ。
――分かってるですよー。
目線でそんなやり取りそする仙堂 紫苑(ka5953)とアルマ・A・エインズワース(ka4901)。
2人も彼女を人質に取られる可能性を理解しているのか、音もなく奏音の盾になるように前に立つ。
大きな穴の開いた壁と、その横に立つ黒い歪虚を見てネフィリア・レインフォード(ka0444)はああああ! と大きな声をあげた。
「何か派手な音がしたと思ったら青木なのだ!! 壁に穴空いてるのだ! 壊しちゃダメなのだ!!」
「誰かと思えば……久しいな、青木よ。よもやこんな所まで出張って来るとはのう」
「俺がどこに行こうが俺の勝手だろう」
「おまえのように破壊を撒き散らすものに勝手に出歩かれては迷惑じゃ。今帰るというのであれば見逃してやらぬこともないぞ」
フラメディア・イリジア(ka2604)の剣呑な目線。青木はくつくつと笑う。
「お前も相変わらず身の程を知らんな。止めに来たという割に、弱っている者がいるようだが」
「だからどうしたというのじゃ。そうやすやすと目的を果たさせてやる気はないぞえ」
睨み合う2人。コツリ、と足音を立ててジェールトヴァ(ka3098)が歩み出る。
「青木さん、と言ったかな。随分と派手なご登場だね。ここに何か御用かな?」
「ここを破壊しに来た。……理由は、お前達も知っているだろう」
「成程。仕事という訳だね。私達と一緒だねえ」
「お前達がコーリアスとアレクサンドルを倒してくれたお陰で人手不足なんでな」
「おやおや。それは申し訳ないことをしたねえ。ところで青木さんは、ビックマーの腹心なのかい? 彼のためによく働いているようだけれど」
「……別にあれの為に働きたい訳じゃないが、一応上司なんでな」
「立場上仕方なく、というやつかな。一つ聞きたいんだけど……君は本当にここを破壊するつもりがあるのかい?」
「どういう意味だ」
「君の登場の仕方が気になってね。……何故わざわざ、私達に気付かれるような入り方をしたのかねえ」
ジェールトヴァに鋭い目線を向けつつ、無言を返す青木。彼は臆することなくそれを受け止めると、言葉を続ける。
「……ここは古城だ。別に入口が封鎖されている訳でもない。君ほどの力量があれば、誰にも気づかれぬまま奇襲することもできただろうに」
「あっ。そうですよね……!」
「ジェールトヴァさん頭良い……!」
「しー! 静かに」
感心してしきりに頷く奏音とアルマに人差し指を口に当てる合図を送る紫苑。
……そう。今回はラメトクの制御装置の鍵を解くまでの時間を稼ぐことが任務だ。
戦いが避けられるのであれば、それに越したことはない。
フラメディアとネフィリアもそれを理解しているのか、奏音と青木の直線状に立つようにしながら、いつでも動けるように様子を伺っている。
ジェールトヴァは眼鏡越しに、穏やかな目線を青木に向ける。
「これは私の推測だけど……君は、ビックマーに嫌々従っているんじゃないのかな? だからわざわざ私達に気付かれるような動きをして、あえて『邪魔』に入らせた。……どうかな」
老齢の紳士の言葉に目を見開く青木。次の瞬間、心底可笑しそうに笑い出す。
「お前はなかなか見どころがあるな。ああ、その通りだ」
「……同じ怠惰眷属なのに、仲悪いのだ?」
「歪虚は存在の性質的に、他者を排除する方向に動く。共闘するのは利害が一致した時だけだ」
「わー。歪虚の関係ってギスギスしてるのだ」
興が乗ったのか素直に問いに答える青木にウヘェ、という顔をするネフィリア。
奏音は息を潜めて、注意深く黒い歪虚を見つめる。
――青木のような男が大人しく使われているから妙だとは思っていたが、今回の話で合点が行った。
まあ、ビックマーとて見た目こそあんなにファンシーだが怠惰の王だ。
青木の力量を持ってしても勝ち目がない、ということかもしれない。
とはいえ、既に災厄の十三魔であるハイルタイを騙し討ちして吸収した実績もある。
ビックマーに対しても、そう言ったものを仕掛けてもおかしくはない……。
そんなことを考えていた彼女。その間も、ジェールトヴァの声が続く。
「お褒めに預かり光栄だよ。もう1つ、私から提案があるんだけどいいかな」
「……聞こうか」
「もし、青木さんがかの怠惰の王がお嫌いなのなら……陥れてみても、楽しいかもしれないよ。まあ、感情より優先すべき事項――従い続ける理由があるなら話は別だけども。例えば、破壊したと嘘の報告をしてみるとかね」
「あれも馬鹿ではない。遺跡の力の流れで破壊に失敗したことにすぐ気づくだろう。それは得策ではないな」
「そうか。そちらから覚られてしまうのだね。だから私達に邪魔して貰う必要があった、と。良く分かったよ。ではきみの思惑通り、私達は『邪魔をした』ことにしよう。……これなら、わざわざ私達と戦う必要はないのではないかな」
「ああ、そうだな。だが仕事をサボったと思われるのも厄介だ。……念には念を、な。ここを適当に破壊したら引こう」
ニヤリと笑って槍を構える青木。それまで黙って事態を見守っていたアルマが端正な顔に笑みを張り付けたまま歩み出る。
「……二度目は、許さないですよ?」
「……誰かと思えばアルマか。二度目とは何の話だ」
「イクタサの神殿を壊した件だと思いますよ。こいつこう見えても滅茶苦茶怒ってる筈なんで」
アルマの冷え切った低い声。それ以上語ろうとしないアルマの代わりに口を開く紫苑。それに青木は肩を竦めて――。
「お前の事情など知ったことではない、な……!」
「……させるか!! 奏音、下がるのじゃ!」
前進しようとした青木の前に割り込むフラメディア。
ぶつかり合う槍と斧。奏音が痛む身体を押して後退し……。
――これが、戦端を開く切欠となった。
「やっぱりこうなっちゃったのだ! こうなったらやるしかないのだ!」
「時間稼ぎ助かった! お陰で準備万端だ!」
響き渡るアルマのきびきびとした迫力のある歌。
ネフィリアは大剣を抜き放ち、紫苑もまたマテリアルの防御膜を形成して青木に迫る。
「どりゃあああああ!!」
ネフィの一閃。それを跳躍で避ける青木。彼女を一瞥するとフン、と鼻で笑う。
「お前の小さい身体にその大剣は荷が重いんじゃないのか?」
「うるさいのだ! 誰がつるぺたなのだ!! 大きさの問題なんて筋力で解決できるのだ!!」
「誰もつるぺたなんて言ってないよな!?」
思わずツッコむ紫苑。マテリアルを流し込み、巨大となった蒼機剣を青木目掛けて振り下ろす。
流石に避け切れなかったのか、槍で弾き返す青木。
体勢を立て直した紫苑はヒュー! と口笛を吹く。
「これ避けてくんのか……! こいつはヤベェな……!」
「どうする? まだやるのか?」
「おい、アルマ! ここちょっとくらい壊させてやってさっさとお帰り願った方が良くないか?!」
「嫌ですよ! イクタサさんの大事な場所ですよ!? これ以上壊されたら……うふふふふふふ」
青木の問いかけを飼い犬に振る紫苑。即答でお断りするアルマ。
――紫苑は知っているが、アルマは怒ると一旦無表情になるが、それを超えると笑い出す。
今は大分笑っているのでこいつはヤバい状況と言える。
その横を過る赤い風。隙を突くように閃くフラメディアの斧。
身を翻し、それを受け止めた青木。
2人は武器越しに睨み合う。
「……フラメディア、少し腕を上げたか?」
「……うむ。お前にいずれ引導を渡さねばならぬからのぅ」
「ハッ。まだまだ足りんぞ、小娘……!」
彼女の斧を押し返し、距離を取る青木。
その力にフラメディアは顔を顰める。
その間も、歌と踊りで高めたマテリアルを更に練り上げたアルマ。穏やかで静かな歌を続け様に歌う。
「青木よ。アルマの本気の歌が続いてる状況で技かけられたら流石のお前でも厳しいんじゃないのか? ここらで引いてくれると助かるんだが」
「だから、ここを軽く破壊させてくれれば引くと言っているだろう」
紫苑の懇願に淡々と答える青木。アルマの放った光線が、2人の間に割り込むようにして地面を焼く。
「……お断りだって言ってますよね」
「あぶねーなぁ! 当たったらどうすんだ!」
「シオンには当てません! 燕太郎さんは燃やしますけど」
「交渉決裂なのだーー!」
青木を余所に言い合う紫苑とアルマ。黒い歪虚に向かって伸びる幻影の腕。
それは青木に触れた途端に掻き消える。
「むっかーー! 何で効かないのだ!!」
「俺に小手先は通用せんぞ」
「……今日は良く喋るのう。青木よ」
「今日は興が乗ってな。お前達と遊んでやるのも悪くない」
「……そういう配慮が一番面倒なんすけどねえ」
「とっとと去れ。お前の遊びは厄介じゃ!!」
床目掛けて放たれる青木の槍。紫苑がパリィグローブで、フラメディアが盾でそれを受け止める。
仲間達の必死の戦い。傷だらけになりながらも必死で時間を稼いでいる――。
その光景を見て、奏音は唇を噛む。
「こんな状態でないのなら青木と戦えるのに……」
ぽつりと漏れた本音。後方で仲間達の回復に努めていたジェールトヴァが奏音をちらりと見る。
「……前に出ることだけが戦いではないよ。こうして堪えることも、戦いの一つだ」
「そうですね。今の私では足手まといところか、人質にされかねませんから……」
「そうだね。その時出来る、最善を」
「……でも今回、青木は私を狙うつもりはないように見えますよ」
「どうしてそう思うんだい?」
「楽しそうです。とても。水を得た魚っていうんでしょうか……」
呟き、目線を戻す奏音。
そう。別に笑っている訳ではないのだが、青木が楽しそうに見える。
大技を出さずに、ひたすら打ち合っているのはそのせいだろうか?
――跳躍し、再び距離を取る青木。追い縋るハンター達。
ぶつかり合う武器と武器。その度に飛び散る火花。
近づいては離れ、離れては近づき――。
幾度とない鍔迫り合い。
続いたアルマの短い詠唱。放たれた光線が青木を貫く。
舌打ちした青木。アルマの冷たい声が続く。
「……そろそろ帰って下さい。僕、控えめに言ってあなたのこと大っっっ嫌いなんで。これ以上目の前をウロウロしたら……殺します」
「奇遇だな。俺も同感だ」
目線で人が殺せるのであれば3回は殺せそうなそれをぶつけ合う青木とアルマ。
次の瞬間、ゴウン、と響く音。地下に続く階段から光が漏れて来て……別動隊が無事に目的を達成したことを覚る。
「下の仲間達が鍵を解除したのだ! お前の目論見は破られたのだ! ざまあみろなのだ!!」
えっへんと薄い胸を張るネフィリア。青木はため息をつくと槍を収める。
「……潮時か。引くとしよう」
「ようやっとかよ! 帰れ帰れ! 二度と来なくていいぞ」
しっしっ! と手を振る紫苑。
青木は振り返るとジェールトヴァに歩み寄る。
「私に何か用かい?」
「ああ。……お前の名は?」
「私かい? ジェールトヴァだよ」
「そうか。なかなか愉しませて貰った。覚えておくとしよう」
「それはどうも。また面白い話を考えておくよ」
「……青木よ。おまえ、よもやビックマーの吸収を目論んでいるのではあるまいな?」
「さて、な。……知りたければ追って来るといい」
青木の背中に問いかけるフラメディア。彼は振り返りもせずに去っていった。
――苦難を乗り越え、古城を守り抜いたハンター達。
ビックマーを疎んじている青木。彼の企みは気になるけれど――。
その時はまた、全力で打ち砕くまでだ。
そう誓ったハンター達は、雌伏の時を過ごすのだった。
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相談なのだー♪ ネフィリア・レインフォード(ka0444) エルフ|14才|女性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2018/04/12 12:58:15 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/04/07 20:21:21 |