トカゲの長に引導を……!

マスター:なちゅい

シナリオ形態
イベント
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
1~25人
サポート
0~0人
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2018/04/14 12:00
完成日
2018/04/22 17:39

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


 グラズヘイム王国。
 クリムゾンウェストの半島尖端に位置する国家。王都イルダーナを中心とした千年王国なる名を冠する大国だ。
 とはいえ、国内では歪虚の侵攻など、様々な問題を抱えている状況もあって、決して穏やかとはいえぬ状況が続く。
 先日、大敵メフィストの討伐に成功したものの、疲弊する国内では新たな問題が勃発して来ている。

 王国北東にある山岳地帯。とある山が歪虚によって支配されているのも問題の一つだ。
 どこからか飛来してくる強欲の一員グラフは折を見てこの地に降り立ち、トカゲ雑魔を増やしていたと思われる。
 初期はその山全体に勢力を伸ばしていたトカゲ雑魔は、山の南にある麓の集落を襲おうとしていた。
 そこに駆けつけたエルフのハンター3人が雑魔どもを撃退し、集落民は古都アークエルスにまで避難。
 この集落がハンター達にとって、トカゲ雑魔との戦いにおける前線基地となっていく。
 トカゲ雑魔は同時に、北東にも侵攻の手を伸ばす。
 こちらは、様子を見に向かったハンター達が駆けつける形で、撃退に成功。その後、聖堂戦士団の一団が詰め、集落民を護りながらの戦いを始める。
 その後、ハンター達の助力もあり、度重なる作戦の中でトカゲ雑魔の数も減り、南北共に山へと登り始めて敵勢力の縮小に当たっていく。
 先日は五、六合目付近まで雑魔の掃討を行い、追い詰められてきているはずのグラフが宣戦布告とも取れる言葉を発している。
(本気でやらねば、こちらが滅するやもしれぬな……)
 決戦の時は近い。
 ハンター達は南北の集落に詰めるエルフ、聖堂戦士団と連携を取りながら、決戦のタイミングを図っていた。

 王都イルダーナ。のハンターズソサエティ内。
 そこには、ハンター達の他、最大の作戦の為にエルフのリーダー、アルウェスと、聖堂戦士団小隊長、ファリーナ・リッジウェイ(kz0182)の姿があった。
「……長かったな」
「はい、ようやくここまでくることができました」
 2人はこれまでの交戦を思い返しながら語った。
 ちなみに残りのメンバーはそれぞれの集落で派遣されたハンターと共に、念の為にトカゲ雑魔の襲撃に備えてくれている。
「今回決戦にのみ参加していただける方の為にー、戦況と作戦概要を説明しますねー」
 カウンターにいた糸目の女性、シェリーがこの場のハンター達へと告げ、説明を開始する。

 前回、日時を決めて南北から山を登り、それぞれ五合目付近でトカゲ雑魔と交戦した。
 その際、北側のメンバーが歪虚グラフと交戦した。
 物理攻撃にかなり耐性を持つ硬い鱗を持つ、全長4mほどのドラゴン。こいつがトカゲ雑魔を生み出していたと見られている。
 グラフは頂上付近に雑魔を集め、ハンター達の攻撃を待ち構えている。新たな雑魔を生み出していることもあり、ハンターとしてはできるだけ早く仕掛けたい状況にある。
「前回と同じくー、包囲も兼ねて南北からの侵攻作戦を決行いたしますー」
 アルウェスもファリーナも小さく頷く。
 決行は朝8時。南北から山を登れば、昼前には間違いなく交戦を開始できるだろう。
「今回、双方の距離はかなり近づくはずだ」
「通信機の類が使えるようになれば、南北チームはタイミングを合わせて雑魔達に仕掛けられるはずです」
 アルウェス、ファリーナは、そのタイミングを主力となるハンター達に一任したいと考えている。
 交戦想定となる現場は、山の登場付近。やや傾斜もあり、足場はあまりよろしくない。
 ただ、3種いるトカゲ雑魔達も、満足には戦える状況ではないはずだ。
 ただ、歪虚グラフはそうも行かない。最悪翼で飛び立つこともあり、できる限り飛行能力を先に奪っておきたい。
 そちらはCAM、幻獣を連れたメンバーに対処を任せることになるだろうが、作戦次第といったところだろう。
「これまでの作戦に参加経験のある方は、よく知った相手との交戦ですがー、歪虚、雑魔も総力戦で臨んでくるはずですのでー、くれぐれもご注意くださいー」
 改めて、シェリーは敵能力について資料を配布する。
 それを確認するハンター達の思いは様々は、傲慢の歪虚王との戦いの前に憂いを消しておきたいと考える者も多い。
 作戦について語り合ったハンター達は準備を整えてから2隊に分かれ、アルウェス、ファリーナに続く形で南北それぞれの集落へと向かっていくのである。

リプレイ本文


 グラズヘイム王国北東の山岳地帯。
 トカゲ雑魔が巣食う山の南の集落に、10人のハンターが幻獣やCAMと共にやってきていた。
「山のドラゴン退治って、すっごく物語な感じー」
 のんびりした印象を抱かせる、リアルブルー出身の葛音 水月(ka1895) はおそらく、いくつか山に住むドラゴンの物語を知っているのだろう。
 しかしながら、これは物語ではない。
 実際に麓の集落民が襲われている現実があり、彼らとしては穏やかな生活を脅かされているだけでなく、最悪、住んでいる土地すら放棄せねばならぬ状況にある。
 南の集落民などは危険と判断し、古都アークエルスにまで避難している現状があるのだ。
「この山に来るのも久しぶりだが……、遂に決戦か」
 ジーナ(ka1643)はその小さな体躯で、そびえる山を見上げる。
 幾度か彼女はこの地の依頼に参加しており、トカゲ雑魔どもとの交戦経験を持っていた。
「最近は機を逃していたが、長い戦いだった」
 トカゲ雑魔との戦いも始まってから数ヶ月経つ。
 ジーナだけでなく、多数のハンターがこの討伐依頼に参加してきていたのだ。
「いよいよ決戦か。偵察に参加したのが随分と前に思えるぜ」
 金髪碧眼の青年、ジャック・エルギン(ka1522)もその1人。
 彼が参加したタイミングでは、トカゲ雑魔は山の麓まで勢力を伸ばしていたところだった。
 それが今、雑魔どもは山頂付近に集まる個体のみにまで減少している。
 雑魔達とその生みの親と思われる強欲の歪虚、グラフを討伐できれば、この山の不浄を全て振り払うことができるはずだ。
 ここまでの戦いにおいては、エルフ達の活躍なしでは語れない。
 最初は少人数で戦い抜いていたリーダー、アルウェス。そして、皮肉屋ルイスと、寡黙なドミニクの3人のエルフの男性達。
 ハンターの助力を得て、彼らは山の南にある集落の住民達を避難させ、集落を前線基地としてしばらく耐える戦いを行っていた。
「……ようやく本当の意味で、犠牲者に安らぎを与えられる」
 残念ながらジーナが言うように、避難の際に雑魔による犠牲者が出てしまっている。
 ……後は仕事をきっちり果たす。それだけだ。
「再会をいつも嬉しく思うわ」
 そのエルフ達や見知ったハンターへ、カーミン・S・フィールズ(ka1559)が嬉しそうに声をかけていく。
 彼らと共に戦う為、カーミンは今ここにいるのだ。
「はやてにおまかせですの!」
 応じたのは、惜しげなく露出の高い衣装で豊満な体をさらす、八劒 颯(ka1804)だ。
 リアルブルー出身であるにもかかわらず、記憶のない颯はこの世界で精一杯自分探しの為にハンターとして活動している。
 トカゲ雑魔退治もまた、そうした一貫なのだろう。
「ルンルン忍法と科学ニンチョウの力を駆使して、山をトカゲ歪虚軍団から解放しちゃいます!」
「トカゲ共め、次から次へと湧いて出てきやがって……今回で終わらせてやる!!」
 関連依頼にかなりの回数参戦しているルンルン・リリカル・秋桜(ka5784) は、大一番とあって自らの忍法を披露しようと張り切っている。
 南護 炎(ka6651)もまた意気揚々と燃え上がる闘志を言葉にして、山に向けて叫びかける。
 果たして、呼びかけは雑魔や歪虚の耳に届いているだろうか。
 それを聞いていた、神秘的な雰囲気を纏う少女が思い返す。
(関わったのは一度だけ)
 アリア・セリウス(ka6424)は1度、この集落の防衛戦に参加していた。
 それでも、皆で手繰り寄せたからこそ相手を追い詰め、今こうして決戦に臨む事ができる。
「だから、その先に勝利を。それを照らす光を、切っ先に宿して」
 ――切り拓く、明日が為に。
 そう小さく、アリアは誓いを口にしていた。


 こちらは北側の集落。
 湖畔にあるその場所には現在、聖堂戦士団小隊7名が詰めている。
 集落を離れられない人々を守る形で、小隊員達は時に訪れるハンターと共にトカゲ雑魔を撃退し続けている。
 エルフ達に比べれば、かなり遅い段階での常駐開始ではあったが、山に侵攻を開始したのはこちらが先だった。
「さぁ、決戦だ」
 鳥人間として戦地を駆ける岩井崎 旭(ka0234)は、愛する年上の伴侶、桃色サイドテールの髪をした岩井崎 メル(ka0520)を思う。
 もっとも、そのメルは北側に参加していたわけだが。
「そんじゃ、お互い無事にドカンと突破して、片付いた山頂で合流だな!」
 ワイバーンのロジャックに声をかけた旭が出発準備を整えるのに、メルは苦笑して本人に連絡を取っていたようだ。
 北側に集まるハンターは、13人。こちらも多くは幻獣、CAMを引き連れての参加だ。
「白龍の巫女として、人々を苦しめる悪しき竜を倒しますっ」
「頑張りましょう」
 エルフの Uisca Amhran(ka0754)が気合を入れると、同族のレオナ(ka6158)が応じる。
 もちろん、目的は歪虚グラフの撃破だ。
「トカゲ雑魔の作戦にはこれまで参加してこれなかったけど、ファリーナにはお世話になってるからね」
 気品と無邪気さを併せ持つ少女、夢路 まよい(ka1328)は聖堂戦士団小隊を率いる、ファリーナ・リッジウェイ(kz0182)とは顔見知りで、その呼びかけに応じたとのこと。
「ファリーナの頼みとなれば、張り切っちゃうよ!」
「はい、ありがとうございます!」
 こうした言葉に、ファリーナも俄然、力を漲らせている。
「聖堂戦士団の皆様方と戦えるとは、光栄なことなのでありますよ」
 一見すると清楚系闘狩人のシレークス(ka0752)は、同じ聖導士であるサクラ・エルフリード(ka2598)との参加。通称凸凹聖職者コンビとして、聖堂戦士団の救援に馳せ参じたとのこと。
 聖堂戦士団のメンバー達は非常に心強さを覚え、彼女達と握手を交わす。
「エクラ教徒、流浪の修道女シレークスが、ご助力させて頂くのですよ!!」
「にゃにゃにゃっ」
 2人ともユグディラを連れており、シレークスが同伴するインフラマラエが可愛らしく、ノリノリな主人に合わせて鳴き声を上げた。
 ちなみに、サクラのユグディラ、ヤエは彼女の頭の上にちょこんと乗っている。
(成程……例のトカゲ雑魔騒動の裏には、歪虚がいた……訳ですか)
 クールな自由人、天央 観智(ka0896) も幾度か依頼に参加していたが、黒幕の正体については今回知った様子。
「まぁ、一応少し……関わった身ですしね」
 引導を渡しに行くということで、観智はその手伝いをと考えて参戦していた。
「今回も、極大と歪虚のトカゲ野郎は俺様ちゃんがいただきじゃん」
 こちらは引導を渡す気満々の、ゾファル・G・初火(ka4407)。
 喧嘩っぱやい性格のゾファルもまた、何度目かと考えるほどこのトカゲ雑魔と戯れてきている。
 それだけ、バトルジャンキーの彼女の中で、この山はご機嫌の遊び場となっていたのだ。
 相手は巨大なトカゲとドラゴン。その対決を楽しむメンバーがいれば、簡単に討たせてはくれぬと慎重になっているメンバーもいた。
「トカゲの雑魔に強欲竜か……」
 ユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239)はそれでも、放っておくわけには行かないと考えたからこそ、この場に立っている。
「きっちり討伐出来る様に、最善を尽くすとしましょうか」
 そうして、ユーリはイェジドのオリーヴェに跨り、メンバー達と共に集落を出発していくのだった。


 南側から山を登り始めるハンター達は、逐一トランシーバーで連絡を取り合う。
「……なるほど、了解です」
 R7エクスシア「フレイヤ」に乗る水月もトランシーバー越しに返答する。
 そうして、小まめな情報交換をしながら作戦の後詰めを行うメンバー達。ゴースロンに乗るエルフ達も後ろからハンター達追いながら、状況は確認していたようだ。
 魔導レーダー「テシスソストス」で地形を探査しながら進んでいるのは魔導型デュミナス「バレル」に搭乗したジーナだ。
 頂上付近は岩場が露出していて、足場が不安定な場所もあるという。
 それもあって、ジーナは姿勢制御でカバーを試みている。現状において、問題はなさそうだ。
 足場の悪さに関しては、それぞれメンバー達も対策をとっている。
 颯は四脚である魔導アーマー量産型「Gustav」を操縦して山を登る。最悪の場合は、ウイングフレームに搭載されたフライトシステムで飛ぶなど、備えも万全だ。
「オストロ、お前の翼が頼りだぜ」
 幻獣を駆るメンバーも多く、ジャックもその1人。
 グリフォンのオストロに騎乗した彼は、上空から双眼鏡を覗き見て、敵の早期発見に努める。
 同じく、炎はコンフェッサー「GRAND SWORD」のコクピット内から周囲を見回し、トカゲ雑魔の奇襲に備えていた。
 なにせ、トカゲ雑魔は小型とはいえ、油断できない。
 グリフォンに乗っていたカーミンなどは敢えて地上で歩き、会敵に備えている。敵の移動距離と、長い舌を懸念していたのだ。
「トカゲの親玉に、ルンルン忍法をたっぷり味合わせちゃうんだから」
 気合を入れるルンルンは、リーリー「科学ニンチョウ『火の鳥』」に騎乗してこの作戦に臨んでいる。こちらも移動力重視で立ち回ろうというのが彼女の作戦だ。
 ルンルンもまた双眼鏡で隈なく周囲を見回し、敵が集団で現われて不意打ちを仕掛けてこないかと気をつける。
 現状、周囲に敵影はない。しかし、頂上付近には明らかに無数の黒いものが蠢いているのが分かった。

 北側から、ワイバーンを駆るハンター達が飛行する形で集団を率いる。
 信心深いドワーフ、ロニ・カルディス(ka0551)はラヴェンドラを駆り、空を舞う。
 上空から、彼は頂上付近にいると思われるトカゲ雑魔どもの動向を確認し続ける。
 そよ風を意味するFannanに騎乗していたのは、レオナだ。
 彼女もまた双眼鏡による索敵を怠らず、敵の強襲がないかと備える。
 Uiscaも飛竜に跨り、他のメンバーとイヤリングの通信機能で逐一情報交換を行う。また、彼女は南のメンバーと通信が入らないかともチェックをしていたようだ。
 その通信にまよいはトランシーバーを使い、グリフォン、イケロスに乗りながら受け答えする。
 目指すは頂上のボス。どうやら、敵も道中での襲撃は考えていないのか、トカゲ雑魔の気配すら感じない。
 オファニム「アカツキ」を駆って参戦するメルは空、地を行く仲間と合わせて歩を進める。こちらもトランシーバーでの連絡は怠らない。
「空を駆ける竜がいるとはいえ、上空にだけ気を取られるわけにもいきませんね」
 参加メンバーの中で数少ないハンター単騎のみの参戦、ミオレスカ(ka3496)。
 ブラウンダイヤで移動していた彼女は、ゴースロンを駆る顔見知りの聖堂戦士団メンバーの前を進む形で歩を進める。


 トカゲ雑魔との接敵が早かったのは、南側のメンバーだった。
「敵が来るぜ!」
「こちらも確認しました!」
 双眼鏡を覗きこんでいたジャックが先んじて、敵影を捉えていた。続き、ルンルンの声も通信機から響く。
 それに応じた炎が前へと飛び出し、瞳を蒼と紅に変色させる。
 目つきを鋭くした彼は、そのまま試作波動銃「アマテラス」を展開していく。
 ほぼ同じタイミングで、イェジド、コーディに乗るアリアも自らの周囲に白雪のような淡く、儚いマテリアルの光を纏わせていた。
 彼女は幻獣ミサイル「シンティッラ」の照準を、敵陣に合わせていて。
「行くぞ。みんな! 『GRAND SWORD』出撃する!!」
「さあ、開戦の号砲。その調べよ」
 敵陣目掛けて2人はそれぞれ、マテリアルビーム、プラズマバーストを発射していく。
 一直線に敵陣を駆け抜ける一条の光。
 さらに、アリアが二発連続して発射したミサイルによって、敵陣の大小雑魔を巻き込んで大規模な爆発を起こしていた。

 やや遅れて北側。
 ワイバーン、ロジャックに乗る旭が敵影を確認して、警戒を強める。
「総力戦ってだけのことはあるな! 数が多いぜ!」
 その数は、大小極大雑魔を合わせて50ほど。
 前方には黒い集団が蠢き、いくつもの瞳がらんらんと輝いていた。
 だが、そこに光線が駆け抜け、2度の爆発が巻き起こって雑魔どもを吹き飛ばそうとする。南側のメンバーが仕掛けたものだろう。
「うっしゃー!!!」
 敵が現われたとあれば、シャイニングウィザードに乗るゾファルのテンションはいやが上にも高まる。
 北側メンバーの一番槍として、全身から眩いばかりのマテリアルを噴き出した彼女はトカゲどもへと突撃していく。
「おい、あんまり突っ走るな」
 やや前のめりなメンバーの姿を見て、イェジドのグレンに騎乗するヴァイス(ka0364)は小さく悪態づいて、それを追っていった。
 射撃戦仕様とした魔導型デュミナスを操縦する観智は、トランシーバーのチャンネル設定を小まめに調整する。
 どこで、南側メンバーと連絡、連携が取れるか……。
「雑音が……」
「……もしもし、聞こえるか?」
 聞こえてきた声は、南側メンバー、ジーナの声だ。
「はい、聞こえます」
 イェジド、オリーヴェで地を走るユーリは通信に応じる。
「挟撃して仕掛けましょうっ」
 同じく空からはUiscaが南側メンバーに呼びかけ、できる限り南北の隊で攻撃のタイミングを合わせようとしていく。

「始まったか! んじゃ、俺らもぶっ飛ばしに行こうぜ!」
 南側のジャックは覚醒し、赤熱した金属のようになった瞳で敵を見下ろし、上空からグリフォン、オストロで襲撃をかける。
 R7エクスシア「ジャウハラ」に搭乗するディヤー・A・バトロス(ka5743)は早速、戦闘準備に当たっていたようだ。
 そして、移動の都合で、ゴースロンを駆るエルフ達の背に途中まで乗せてもらっていた女性ながらに長身な猟撃士、コーネリア・ミラ・スペンサー(ka4561)。
「爬虫類の身でせいぜい抗うがいい。破滅という宿命にな」
 黒幕には、即引導を。
 ライフルを手にしたコーネリアは全身から赤、青、黄、緑の閃光を迸らせ、極大雑魔の姿を求めて戦場を駆け抜けていくのである。


 山の頂近辺はすぐに、混戦状態となっていく。
 歪虚グラフは表立って姿を見せないが、大小、極大のトカゲ雑魔達は生あるハンター達へと群がるように襲い来る。
 敵はそれぞれの特徴を最大限に生かして、ハンター達を攻め立ててくる。
 小はとにかく移動力と伸びる長い舌が特徴で、後方にいたとしても油断はできない。
 そして、小がその長い舌で相手の身体を縛りつけると、大型が尻尾を叩きつけ、大きな口で食らい付いてくるのだ。
 それだけで対策のない一般人ならば、命を落としてもおかしくはない。
 しかし、ハンターであれば、如何様にも対策はできる。
 バレルに乗るジーナは髪と瞳に淡い光を帯びさせていた。それは、彼女が借りた白い祖先の力によるものだ。
「紫電を纏え、バレル!」
 ジーナはマテリアルエンジンによって、全武装に光の属性を付与していく。これで、光に弱い雑魔どもを効率よく殲滅できるはずだ。
 傍の水月は黒猫のような耳と尻尾を生やし、戦いに臨む。
 彼はフレイヤを中心として、狂気の遮断を目的とした結界、イニシャライズオーバーを展開していく。
 同じく、ディヤーも身につける装飾品を淡く光らせながら、ジャウハラの周囲へと同じ結界を展開していった。
 南側のメンバーは、比較的攻撃重視のメンバーが多い。それもあって、相手の舌、のしかかりによる拘束などから守る為に対策を取っていたのだ。
 それらに守られる南側メンバー達。
 前に出て行く炎は覚醒の影響で、好戦的な性格をみせる。
 近づく敵の舌と尻尾を大壁盾「庇護者の光翼」で捌きながら、聖剣「ヴィジーリア」を携えて呼吸を整える。
「俺は歪虚を断つ剣だ!」
 彼は自分の体のようにコンフェッサーを操り、トカゲ雑魔目掛けて切りかかる。マテリアルのバリアで包まれた聖剣は大型雑魔の体を裂く。
 ただ一太刀で相手を切り伏せることができるとは、炎も思ってはいない。彼は再度、気合と共に巨大な刃で雑魔を切り伏せようとしていった。
 乱戦となる戦場でカーミンはグリフォンで低空飛行しつつ、スペルボウ「フェリメント」を手にして武器情報を読み取るように数条の光を回路状に走らせる。
 一気にグリフォンを加速させたカーミンは自らの体をマテリアルで瞬間的に満たし、素早く矢を3本番えて。
「敵の手数を減らしたいわね」
 そのまま、カーミンは小型目掛けてそれらの矢を射放ち、その身体を貫く。
 しかしながら、そいつは舌を伸ばして反撃してくる。
 カーミンは姿勢制御しつつその舌から逃れ、別方向から襲い来る大型の食らいつきを堪えてみせた。
 その近くには、同じくグリフォンに乗るジャックが全身に風を纏い、上空から襲い掛かって雑魔どもを爆風で散らしていく。
 戦意を高めており、火の粉にも似たマテリアルの光を散らすジャック。
 狙いを手近な雑魔へ定めた彼はグリフォン、オストロの風の魔法に合わせてバスタードソード「アニマ・リベラ」を振るい、相手を薙ぎ払っていく。
「人々の平和な暮らしを取り戻す為、今度こそこの戦いに終止符を打っちゃうんだからっ!」
 意気揚々とルンルンはリーリー『火の鳥』で動き回りながらも符を宙へと投げ飛ばす。
 フォトンバインダー「フロックス」は彼女にとって非常に使い勝手のよいアイテムで、投げ飛ばす符の数をいつも以上に多くできる。
「ルンルン忍法戌三集合陣! ババンババンと全員集合、GOめがね、うくれれ、おいーっす! ぺっにバカとの」
 それはリアルブルーで活躍するとある一団を思わせながらも、稲妻と化した5枚の符が雑魔数体の体を貫いていく。
 雷に打たれた雑魔達は苦しんではいたが、ギロリとルンルンを睨みつけて、再度飛びかかってきていた。
 乱戦状態の為、なかなか連携をとるのは難しい状況が続く。
 それでもメンバー達は比較的、スムーズに戦場を立ち回っているようにも見えるが、山の頂上付近は岩肌が露出しており、移動は決して楽には行かない。
 それはトカゲ達も同じようで、とりわけ、小型は麓での戦いに比べれば思うように動けずにいるようにも見える。
 だが、ハンター達はその対策を練っている者も多い。
 魔導アーマー量産型「Gustav」に乗る颯は雑魔へと接近戦を仕掛けていたが、機体が四脚アーマーである為に安定感は抜群。
 最悪、フライトシステムを起動させれば、態勢は整えられるという二段構えの対策をとっていた。
 その上で、颯は巨大ドリルを回転させ、大型雑魔目掛けて素早く突いて行く。
「びりびり電撃どりる!」
 雷撃を纏わせたドリルで雑魔の身体を穿ち、その場から離脱する。
 体内に直接雷撃を叩き込まれ、トカゲ雑魔は苦しみ悶えていたようだ。
 アリアもイェジドのコーディに足場の悪さをうまくカバーしてもらいつつ、前に出ている。
 彼女の狙いも大型。その重点的な排除を目指して。
「舞いましょう、幻月と雪嵐の如く」
 両手に持つ魔導剣「カオスウィース」で、幾度も薙ぎ払うようにトカゲ雑魔どもへと切りかかっていく。
 とはいえ、雑魔も多少の攻撃で倒れるほど柔ではない。
 後方に控えるエルフの男性達3人が援護攻撃にと弓矢、魔法の矢を飛ばして援護する。
 ハンター達が更なる攻撃をと仕掛けていく中、1人敵の狙いからうまくそれつつ、岩陰に隠れながら動いていたコーネリア。
 彼女が狙いをつけていたのは、極大雑魔。
 全長6mもある敵を見据え、コーネリアは狙撃銃で相手の顔面を狙い、マテリアルで加速させた弾丸を発射していく。
 顔面を狙撃された極大雑魔は苦しみ、狙撃手となるコーネリアの姿を乱戦の中探し、前面へと炎を吐き掛けていたのだった。

 山の北側。
 こちらでも、ハンター達が雑魔との交戦を開始する。
 先に特攻して行ったのは、コンフェッサー「シャイニングウィザード」を駆るゾファルだ。
 飛行するメンバーと並ぶようにして彼女は特攻し、群がるトカゲ雑魔の中に入り込み、暴れ回る。
 一応、彼女は囮としての役割も果たそうと、雑魔どもへと斬機刀「新月」で片っ端から切りかかるが、その姿は単に暴れたいだけにしか見えない。
「でかいのよこすじゃーん!」
 敢えて大型雑魔を狙い、切りかかっていくゾファルには、三度の飯よりも惨事のおやつといった感じである。
「いきますっ、射線に注意してくださいね!」
 メルはオファニム「アカツキ」を操縦しつつ、クイックライフル「ウッドペッカー」からマテリアルビームを発射していく。
 打ち切り型の一手ではあるが、小回りが効く上で至近距離から比較的遠くの敵まで貫くことができるのは非常に大きい。
 射線を避けながら、イェジド、オリーヴェが幻獣としての力を解放し、オーラを纏って戦場を駆け抜ける。
 覚醒したユーリの髪は白銀に変化し、足まで伸びていく。
 その身体も20代へと成長し、周囲に轟くような雷鳴音を発してユーリの体を青白い雷のオーラが包む。
 踏み込むユーリは敵目掛け、蒼姫刀「魂奏竜胆」を突き出し、進行上にいるトカゲ雑魔どもを次々に刺し貫いていく。
「大型を狙うぞ、グレン」
 それを追うヴァイスは紅蓮のオーラを纏い、グレンの機動力を活かして駆け、手近な大型目掛けてマテリアルで強化した七支槍「大雀」を振るい、その殲滅の手を強める。
 当然、トカゲ雑魔の抵抗も大きい。
 遠くから迫って、相手を押さえつけるトカゲ雑魔達。南側メンバーはイニシャライズオーバー持ちが防いでくれる部分が多分にあったが、北側メンバーにはそれを持つ者がいない。
 その分、メンバーの癒しには聖堂戦士団のメンバー達が当たる。
 小隊長ファリーナはできる限り動きの鈍ったメンバーを見て、近くまで向かわせた隊員にスキルの行使によってハンターの不調を取り払い、その場から離脱させるのを繰り返していた。
 後方支援には、観智も当たっている。
 部隊の後方に陣取っていた彼は視界に精霊の幻を捉えながらも、マテリアルエンジンを直結させたスナイパーライフルで、近場で雑魔と戦う仲間を援護をと狙撃を行う。
「こちらも撃ちます……射線に注意を願います」
 放射されるカノン砲を受け、大型の体に風穴が開く。
 さすがに乱戦ということもあり、観智も近づく小型からの被害が皆無とはいかず、ガトリングガンを発射してその場をやり過ごしていたようだ。
 同じく、支援に当たっていたのは、ラヴェンドラで地上付近を飛んでいたロニだ。
 トカゲ雑魔には、光属性が非常に効果的だという情報はハンター同士で共有している。
「武器に光属性がついていない者はいないか」
 それもあって、ロニは無線機で仲間達へと呼びかけ、宝杖「パナケア」を手にしてメンバー達の武器に光の精霊力を付与していく。
 同時に3人を強化できるのは、宝杖の力があってこそだろう。
 その支援を受けた1人、上半身を羽毛に多い、頭部をミミズクのように変形させた旭。
 彼はワイバーンのロジャックで空を舞っていたのだが、自身の背にもミミズクの翼を思わせる幻影を纏う。
 空から強襲するロジャックは、ファイアブレスをトカゲどもへと浴びせかけていく。
 そして、旭もまた、突風の如き一撃で小型を狙い撃ち、相手を吹き飛ばす。
「やっぱ、数が多すぎるな。手分けしようぜ、ロジャック」
 敢えて彼はワイバーンから降り、ワイバーンと別々に戦闘し始めていた。
 そこを全速力で滑空していくのはグリフォン、イケロスに乗るまよいだ。
 瞳を輝かせ、髪や服を靡かせる彼女。
 風が凪いでいるタイミングでも、まよい自身から発せられる見えないオーラの影響でそれらは靡き続けていたようだ。
 そのまよいはダブルキャストによって、同時に2つの魔法を発動させていく。
 彼女はさらにフォースリングの力を借り、魔法の矢を増やしていった。
「これならどうかな」
 5本の矢が2度の詠唱で10本となった魔法の矢を、彼女は小さい相手だけでなく、やや大きめの大型雑魔にも数本を浴びせていく。
 それらをうまく調整しつつ、まよいは効率よく雑魔の数を削っていた。
 幻獣、CAMの力を活かして存分に攻撃するメンバーがほとんどだが、自らの体で戦うメンバーもいる。
 力の制御が十分にできないからか、髪から七色の髪を輝かせたミオレスカ。
 それでも、彼女は強弓「アヨールタイ」を手にして素早く破魔矢を番えて光属性の矢で雑魔達の体を貫いていく。
 さらに、ミオレスカは魔導拳銃「エア・スティーラー」を手にし、発射する弾丸をマテリアルで操作して前方の進路を確保する。
「よっしゃ、サクラぁ! わたくし達も気張っていきやがりますよっ!」
 目の前の乱戦バトルに、全身を仄かな黄金色に輝かせたシレークスもまた派手に暴れる気満々。
 いつになく燃え上がる不良系シスターの彼女。その気迫に、愛猫のインフラマラエもびくんびくんしている。
 ただ、目を輝かせているのは、主と同類というべきなのか。
「気合入ってますね」
 そんなドワーフの相方よりも小柄なサクラは表情を緩ませてしまうが、これだけの戦いの中では悠長にしているわけにも行かない。
 凸凹聖職者コンビの2人は聖堂戦士団メンバーよりもやや前に出る形で、前に攻めてくる小型をメインに対応していく。
 初めて戦う相手ではあるが、2人は息の合った連携を見せる。
 飛び出してきた小型1体へ、騎士然としたサクラがやや前に出て シールド「セラフィム・マヴェット」を構えながら、ルーンソードで切りかかっていく。
 サクラの死角に回りこもうとしてくるその雑魔。ただ、それはシレークスがやらせはしない。
 盾を持っておらず攻撃を受け流すとは行かなかったが、それでも体内のマテリアルを練り上げたシレークスは機甲拳鎚「無窮なるミザル」での攻撃をしっかりとワンツーで叩き込む。
「ヤエは回復に専念しててくれればよいですからね……。無理をするのは、私達に任せておいてください……」
 サクラの言葉通り、多少の攻撃は、彼女達のユグディラ、インフラマラエとヤエが祈りを捧げて癒してくれる。
 2人はただ襲い来る雑魔の攻撃を防ぎ、叩いていくのみだ。
 混戦が続く中、Uiscaは極大の姿を発見し、そちらへと飛ぶ。
 飛竜の翼で迫る彼女は、白竜の翼を思わせる形状をした淡い光を顕現させていた。
 イヤリングでの通信はしっかりと機能させているが、これまでグラフの目的情報は出てこない。
 ともあれ、極大の相手にするわけだが、相手の炎も食らいつきも恐ろしいが、何よりその視線には相手を石にする力がある。
「対策なしでは危険な相手ですね」
 その為、Uiscaは静かに歌を歌い始める。騎乗しながらとあって、ステップを踏むのは難しいが、マテリアルを練り上げたその歌は仲間達のマテリアルを活性化させ、仲間の抵抗力を高めていく。
 森の香りを漂わせるレオナもそのマテリアルを受け、戦場をFannanで飛ぶ。
 彼女も極大雑魔を捉えており、白龍にも似た虹色の翼を広げ、そのドラゴンブレスを再現した魔法を前方へと解き放つ。
 トカゲ雑魔数体がそれを浴びて混乱を見せていたが、さすがに極大雑魔を惑わせるには至らなかった様子だ。
 レオナにとってそれは残念なことではあったが、それよりも。
「……見つけましたわ」
 急加速し、彼女はそいつへと近づいていく。
 乱戦の中、上空から降り立ってくる歪虚。
「やはり来たか、人間ども……」
 低い声を響かせてきた非常に硬い黒の鱗で全身をドラゴン。
 その名はグラフと言った。
 こいつこそがトカゲ雑魔どもを生み出し、この山を、麓の集落を襲った元凶でもある。
 その力は、これまで交戦したハンター達は十分把握している。レオナも僅かではあったが、相手との交戦経験があった。
 現状、仲間達は雑魔と善戦している。
 だが、グラフが介入することで、戦局が大きく敵側が有利に傾くかもしれない。
「残らず、トカゲどもの餌にしてやるぞ……」
(なるべく、時間を稼ぎませんと……)
 グラフのスキルを封印することができれば。レオナはそれを狙って、黒曜封印符を手に取るのである。


 混戦極まる山の頂。
 トカゲ雑魔とハンター達の戦いは激戦となっていたが、徐々に後者へとその流れは傾いていくことになる。

 南側。
 まだ敵の数は多く、ルンルンは符を投げ続け、雑魔の体に雷を叩き落とし続けている。
 持久戦になることは想定済み。
 できる限りスキルを使えるよう備えてきており、彼女は次々に符を宙に投げ飛ばす。
 繰り返される落雷に、小型がちらほら息耐えてその姿をかき消してきていた。
 撃ち漏らした分は、後方支援を行うアルウェスらエルフ達がしっかり後詰めする。彼らの矢は別の小型の体を射抜いてその歪んだ生を終わらせていたようだ。
 ジャックは手近な雑魔退治に集中、または交戦中の仲間の助成を続けている。
 群がる敵が一挙に攻撃してくると、危険極まりない。
 そのため、ジャックは相手の布陣をオストロの強襲と、バスタードソード「アニマ・リベラ」での薙ぎ払いによって、トカゲ雑魔どもを散らす。
 散ればあとは、各個撃破。
 ジャックはバスタードソードを振り上げ、小型1体の頭を砕いていた。
 そばには、水月の姿がある。
「歪虚は北ですかー」
 トランシーバーでその出現を耳にした彼。
 なればなおのこと、物理に強い歪虚と戦う為にもスキルと武器は温存せねばならないと考え、4連装カノン砲で雑魔達に砲弾を叩き込んでいく。
 傷つき、どす黒い血を流す敵は水月の機体「フレイヤ」へとのしかかろうとするが、彼はそいつの腹目掛けて愛用のパイルバンカー「フラクタリング」の杭を打ち込む。
 扱いづらい武器ではあるが、その分威力は絶大。
 R7エクスシアでなんとか制御しつつ、彼は雑魔の体を打ち貫き、その身体を霧散させた。
 目的は、歪虚グラフの撃破。
 こんなところでもたついてはいられぬと、彼は周囲の雑魔の撃破を進める。
 アリアも前に出ており、大型トカゲの排除を目指していた。
 何せ、乱戦が続く中。アリアもコーディの機動力を活かして周囲の雑魔へと一気呵成に切りかかっていく。
 やがて、大型トカゲ1体が大きく口を開けて激しく息をしているのに、彼女は気付いて。
「もらうわ」
 左手にも双龍剣「ナラク・アグニ」を握り、二刀流となったアリアはそれらの武器にマテリアルを伝達して強化していき、連続して斬りかかってからトドメに十字の斬撃を浴びせかけた。
 体に深く刃を刻み込まれた大型トカゲも一溜まりではいられず、潰れるようにその体躯を地面に横たえ、その場から消えていったのである。
 こちらも、前線で戦い続ける炎。
「俺の『制御不能な覚悟』を見せてやるぜ」
 気合十分。目の前の敵を全て殲滅する勢いで、彼は聖罰刃の一撃を相手に浴びせる。
 スキルリンカーを働かせ、「GRAND SWORD」は炎の一挙一動をしっかりと反映してくれ、大型雑魔の体を寸断していく。
 一度敵を倒せば、敵意をむき出しはするものの、炎は静かに呼吸を整えて。
「まだまだ、終わるものかよ!」
 全身にマテリアルを巡らせ、彼は再び鮮烈なる一撃を雑魔へと見舞った。
 バレルのコクピット内から、ジーナはレーダーと高性能照準装置「ベルサーリオ」 、それにプログラム「スポッター」を併用し、敵味方の識別を行う。
 その上で、敵数体を照準に定め、纏めてミサイルランチャー「ガダブタフリール」を浴びせかけていたジーナだったが。
「極大……」
 すでに、数人のハンターが集まってはいたが、身の丈6mもある極大雑魔の姿がそこにはある。
 ジーナは再度複数の敵に狙いを定めていく。
 その内の1体は当然、極大トカゲ。仲間の位置を気がけながらも、八連装のミサイルを敵へと叩き込む。
 極大雑魔に目をつけて集まるメンバー達は、敵の吐き掛けてくる火炎を堪え、スキルを使った攻撃を間断なく続けていこうとする。
 こいつの視線に、石化させる効力があることは先ほども述べたとおり。
 しかしながら、ここでもディヤーが展開するイニシャライズオーバーが絶大な力を発揮する。
「安心して立ち回るがよいのじゃ」
 それを聞き、颯は自機「Gustav」を安定させつつ、まずは仲間の支援。この場の仲間達へとマテリアルエネルギーを注ぎ込み、戦闘力の向上へと当たる。
 CAMを駆っていてなお、単体で戦うには危険な相手だ。颯の支援は非常にありがたい。
 飛んでくるカーミンは敵の頭上を飛ぶことで仲間の射線を確保しながら、スペルボウ「フェリメント」で矢を射掛ける。
 連射される矢を顔面に受け、極大雑魔は憤り、方向を上げながらカーミンへと食らいつく。
 また、どこからか飛んでくる弾丸が極大雑魔をイラつかせていた。
 それは、かなり早い段階から極大雑魔を狙っていたコーネリアだ。
 うまく敵との距離を取っていたコーネリアは、効果的に相手の顔面を狙う。幻獣やCAMを駆る仲間達が駆けつけたことで、彼女は集中して相手の顔面を狙っていた。
 彼女達が顔面を狙う理由は、至極単純だ。
 炎、食らいつき、そして石化にらみ。敵の攻撃のほとんどがその顔面から繰り出される。
 顔面さえ砕けば、極大雑魔とはいえ恐れるに足らないと考えたのだ。
 とはいえ、相手も簡単には顔面を潰させはしない。
 両腕で、翼で、時には尻尾で攻撃を凌ぐ。体力も多く、なかなか倒れてはくれない。
 その最中、周囲の敵も少しずつ減ってきている。
 大小雑魔対応を行っていたメンバーが少しずつこちらに集まり、極大雑魔目掛けて支援攻撃を行ってきていた。
 敵のヘイトを主に稼いでいたカーミンは、グリフォンを加速させながら破魔矢で相手の口元を射抜く。
 そうなれば、食らいつくにも、炎を吐き掛けるにも極大雑魔には痛みを伴う。
 苦しみ悶える敵へ、颯は正面から巨大なドリルをその体躯へと突き入れていく。
 先ほどの大型雑魔同様、極大雑魔の体内にも電撃を浴びせかけ、少しずつではあるが極大雑魔を弱らせる。
 極大雑魔も歪虚グラフほどではないが、体表は多少硬そうではある。
 それでもさすがに体内まで硬いはずもなく、内臓を焼かれて苦しそうに身悶えていた。
 そこへ、ディヤーがアクティブスラスター全開で突っ込む。
 相手が食らいつくのを、彼女はジャウハラで悠然と受け止めてみせ、ハンドガン「トリニティ」に搭載されたプラズマグレネードを爆発させる。
 周囲を巻き込みはするが、効果も大きい。
 爆炎を浴びて煙を吐いた極大の上半身が大きく揺らぎ、動きを止める。
 狙撃を続けていたコーネリアは、その最大の隙を見逃さない。
 スナイパーライフル「ルーナマーレ」でしっかりと狙う彼女は、マテリアルによって加速した弾丸で、相手の顔面を射抜く。
 それがトドメとなり、極大雑魔の目から光が消える。
 真横にその巨体は倒れていき、地面に落ちる直前にその全身を霧のようにして消してしまった。
 しかし、喜んでばかりもいられない。
 岩陰に潜んでいたコーネリアを狙うように、その背後からもう1体別の極大雑魔が攻め入ってきたのだ。
 コーネリアは射撃戦から接近戦へと武装を切り替え、鉄爪「インシネレーション」を装着して。
「言ったはずだ、爬虫類如きに私は殺せんとな。皮を剥ぎ取って鞄にしてやる……!」
「ここはまかせい!」
 前に出るディヤーがコーネリアを庇うようにして、そいつを引き付けていく。
 巨大な相手を1体倒してなお彼らに息つく暇などなく、新たな敵との戦いに突入することとなる。

 北側もまた、トカゲ雑魔の駆除が進む。
 ホバリングで戦場を飛び回るまよいは、魔法の矢を周囲へと打ち続けていた。
 マジックアローは基本1本の魔法の矢を飛ばす、魔術師にとっては初等スキルとも言える。
 しかしながら、まよいほどの実力者であれば、装備品も駆使して10本もの矢をほぼ同時に飛ばす。
 動きの素早い大小雑魔であっても、次々に降り注いでくる魔法の矢には対処できない。
「まだまだ、終わらないよ」
 無邪気に微笑むまよい。彼女はまさに、『無邪気☆ブレイカー』として戦場に君臨し、雑魔の体を躊躇なく破壊していく。
 地上付近でワイバーンに乗っていたロニは、ある程度仲間に支援を行った後は攻撃に移っていた。
 舌を伸ばす小型を纏めて消し飛ばそうと、ラヴェンドラのスキルを活かしてチャージしたマテリアルを光線のようにして敵陣へと降らす。
 ロニ自身もまた聖導士として、光の魔法で応戦する。
 相手は生ならざる相手。さすれば、彼の歌う静かな鎮魂歌は存分に力を発揮してくれる。
 動きを止めた敵を見て、彼は敢えてラヴェンドラで高度を上昇させた。
 そうすれば、相手の注意を上に向けることができ、地上からは大きな隙ができることとなる。
「すみませんが、自由を奪わせていただきます」
 ミオレスカがそちらの援護に駆けつけ、天に向かって破魔矢と飛ばす。
 それらはマテリアルを纏って光の雨となり、トカゲ雑魔どもの動きを制することになる。
 相手の動きが止まれば、凸凹聖職者コンビのシレークス、サクラらにとって格好の的だ。
 サクラは敢えて敵陣へと突入していき、複数の雑魔を捉えてから詠唱を始める。
「複数体此方に来てくれるのであれば願ったり叶ったりですね……。光の波動を……セイクリッドフラッシュ……!」
 彼女を中心として、光の波動が広がっていく。その衝撃は雑魔達にとっては深い極まりないもの。小型数体が耐えられずに消し飛んでいたようだ。
 大型には、シレークスが仕掛けていた。
 闘狩人として、拳で応戦するのを得意とする彼女。身の丈が3倍あろうかという敵にも臆することなくとびこんでいき、マテリアルで包む拳で殴打を浴びせかける。
「エクラ教修道女を舐めんじゃねぇですっ!」
 飛び上がった彼女がその顔面を強く殴りつけると、大型雑魔はなすすべなく崩れ落ちていく。
 そうした仲間達の援護を受けつつ、ロニは傷つく仲間の手当てをとマテリアルの光を発していった。
 後方からは、聖堂戦士団のメンバー達も手当てに回っている。
「お怪我はありませんか!?」
 遠くから聞こえる小隊長ファリーナの声。となれば、激戦は少しずつ収まってきているのかもしれない。
 とはいえ、観智は後方支援を続けている状況だ。
 己のマテリアルで機体のスキルを補いつつ、彼は砲撃を続けていく。
 取り付く小型雑魔を振り払えば、後は大型目掛け、プラズマシューターを撃ちこみ続ける。
「……極大雑魔、……逃すわけには行きませんね」
 通信を行う観智は、北側に現われた極大雑魔と交戦する仲間の為に、砲弾を撃ち込む。
 北側に現われた極大雑魔は最初、Uiscaが気を引き付けていたが、その姿は雑魔の付近からはなくなっている。
 代わりに、そいつへと攻めいく数人の北側メンバー。
 メルは極大雑魔を見つけて優先的に叩こうと、「マジックエンハンサー」「アルケミックパワー」でブーストさせたマテリアルライフルを撃ち込む。
 何せ大きな相手。さすがに孤軍奮闘するわけには行かない状況だったが、仲間達が徐々に駆けつけてくる。
「ようやくでかいのみつけたじゃーん!」
 大型雑魔の相手に飽きたのか、ゾファルは極大トカゲの姿を見つけて目を輝かせて飛び込む。
 彼女はまず、その動きを止めようと、ネット状のマテリアルをシャイニングウィザードから発していく。
 さらに、オリーヴェを加速させたユーリが突っ込んできた。
 そこに飛んでくる観智の砲撃。
 この機を活かして仕掛けるユーリは可能な限り、周辺の雑魔の巻き込むようにして、蒼姫刀「魂奏竜胆」で相手を刺し貫いていく。
「メルちゃん!」
 そして、この場に加勢してきたのは旭だ。
 大小雑魔を散らしていた彼は極大と戦う仲間を気がけ、祖霊を自らに憑依させつつ、マテリアルを活性化させた魔斧「モレク」で魔力を込めた一撃をその背に叩き込む。
「アサヒ君!」
 駆けつけた旭に笑みを浮かべるメルは仲間の存在を周囲に確認し、再び出力を極大にまで高めたマテリアルライフルを撃ち放つ。
「おっと、獲物は渡さないじゃーん」
 そこに再度、ゾファルが飛び込んだ。
 雑魔の弱点は光による攻撃だと、ゾファルは聞いている。
 それもあって、彼女は刀身に光を宿す斬機刀「新月」とマテリアルのバリアで包むMショットナックル「ペルセヴェランテ」による攻撃で相手を切りつけ、さらに殴打していく。
 仕掛けていくゾファルの表情は、非常に嬉々としている。
 相手を石と化し、燃やしつくし、全てを喰らおうとする巨大トカゲ。
 その極大雑魔ですらも、しっかりと攻略方法を熟知されたハンターにかかればおもちゃのような扱いと成り果てていた感もあった。
 
 そして、少し離れた場所では、レオナが空を舞うグラフの気を引く。
「こざかしい奴らめ……」
 はっきりと言葉を操るドラゴンの姿をした歪虚。そいつは周囲を飛ぶレオナ目掛けて八つ裂きにせんと鋭い爪を振るう。
 墜落してしまうわけには行かない。レオナは必至に堪え、黒曜封印符を投げ飛ばす。
 ただ、さすがに力の強い歪虚だ。あっさりとその符を弾き飛ばし、今度は鋭い牙で噛み付いてこようとする。
「ああっ……」
 全身に傷を負うレオナ。やはり、1人で戦うには無謀すぎる相手。
 それでも、彼女はさらに符を構える。
 そこに、地面を駆ける赤いイェジド。グレンに跨るヴァイスだ。
「まずは、そこから撃ち落さねばな」
 見下ろしてくる歪虚はハンター達の攻撃を意識してか、それほど高くは飛んでいない。
 攻撃によっては届くのだろうが、これまでの依頼において、敵の体表を包む黒い鱗が非常に硬く、物理に並々ならぬ耐性があることが分かっていた。
 なればこそ、ヴァイスは一直線に伸びる雷撃を撃ち放つ。
 その尖端は相手の下半身に届き、少しずつではあるが、傷を負わせる事ができた。
 さらに、極大を仲間に任せる形でUiscaがワイバーン、ウイヴルを駆ってこちらへと飛んできていた。
「龍の名を汚す者は許しませんよ!」
 グラフを優先して叩くべきだと、彼女は攻撃を仕掛けていく。
 Uiscaもまた、目下の狙いは相手を地面へと叩き落とすこと。
 魔法で無数の闇の刃を作り出した彼女は、それらを一気にグラフへと浴びせかけていく。
 刃はすぐに姿を消したが、グラフは空中に縫い付けられたように動きを止める。
「……ほう、人間にしてはやるな」
 だが、相手も強い抵抗力を持つ。すぐにその縛りから抜け出てしまうだろう。
 そこで、レオナが再び黒曜封印符を展開して、グラフの体を封印術で包み込む。
「……捉えました」
 Fannanに乗ったままで、レオナも動きを止める。
 彼女が抑え付ける限り、グラフはその動きを大きく制限されてしまう。
「おのれ、小細工を弄しおって……!」
 まだ、自身の纏わりついてくるハンターの数は少ない。
 それでも、個々の人間にそれぞれ侮れぬ力を持つことに、歪虚グラフは驚きと不快感を露わにしていたのだった。


 雑魔が住む山の頂上での戦いも、大詰めを迎えていた。
 歪虚グラフが現われたとあって、南側で極大雑魔を相手にするメンバー達は全力で相手を叩き、グラフを目指そうとする。
 メインで交戦しているのは4人。
 ディヤーはガントレットで相手の視線を受けぬよう気をつけながら、前線を抑える。
 ガントレットシールドで身を固める彼は、さらにマテリアルバリアを展開し、敵の攻撃を凌ぐ。
「攻撃が難しいので、援護は大歓迎じゃー!」
 通信機で、防御で手一杯とディヤーが意図すれば、その後方から一気にメンバーが攻め込む。
 仲間で取り囲んでいる状況。だからこそ、颯はこれ以上戦いを長引かせぬように、相手の腹を穿とうと回転させて突き入れる。
 コーネリアも接近戦に臨んでおり、全身のマテリアルを練って相手を殴り、蹴り、その巨体を引き裂こうとしていく。
「慈悲など、必要ない。確実に葬り去ってやる」
 苦悶の表情を浮かべる極大雑魔。
 大小雑魔の数もだいぶ減ってきており、メンバーの攻撃は少しずつ極大雑魔に向いてきており、支援攻撃が極大雑魔へと飛んでいく。
 追い込まれてきていた敵へと畳み掛けるカーミン。
 彼女は敵の炎を避けるべく、相手の後頭部から仕掛ける。
「あんたの顔も見飽きたわ」
 スペルボウから放った幾度目かの破魔矢。それはついに相手の後頭部から顔面へと突き抜けた。
 もはや、そいつは叫びすらしない。
 事切れた極大雑魔の巨体は物言わぬ骸となり、すぐに山の空気の中へと消え去って行ったのである。

 さて、グラフを抑え続けているレオナ。その負担は決して小さくはない。
 じっと相手を抑え付ける彼女。拘束から逃れたグラフはスキルこそ封印されていたが、爪、尻尾などの直接攻撃ができないわけではない。
 ただ、身を張ったレオナの抑えは僅かな間ではあったものの、この場の仲間が攻撃する隙を与えていた。
 Uiscaは自身の周囲に光を展開していき、グラフに衝撃を与える。
 さらに、他メンバーが続々と駆けつける時間も作っていた。
「見つけたぜ、御山の大将!」
 飛び込むジャックはオストロに小型の竜巻を起こさせ、自らはバスタードソード「アニマ・リベラ」で相手の翼を狙う。
 とにかく、地上へとこいつを落とさねば、戦いは始まらない。
 ゾファルもグラフを見つけ、ターゲットをこちらに移してやってくる。
 強大な力を持つ歪虚であっても、ゾファルの笑みは崩れない。
 ただ、前回の戦いでほとんど物理攻撃が効かず、彼女は辛酸をなめさせられている。
「今度はこっちの番じゃん」
 仲間達も地面に落とそうとしていたが、ゾファルは先ほどの極大雑魔と同じようにそいつの体をマテリアルネットで包み込もうとしていく。
「出し惜しみはできんな……!」
 相手もこの戦いに、己の存亡がかかっていることを自覚している。
 やられるわけには行かぬと、周囲のハンター達へと全身を生かした強襲を仕掛けてきていた。
 レオナはすでに、封印を解いてしまっている。
 参戦メンバーが増えたことで、消耗の激しい彼女は改めて防御結界を展開してこの場を耐え凌ぐ。
 タイミングを見て、Uiscaがレオナを気遣って飛んで来る。
「白龍さまの名の下に、この者の傷を癒したまえ」
 彼女は祈りの力と共に、マテリアルの力を引き出してレオナの傷を塞いでいく。
 後方からも、聖堂戦士団メンバーが彼女の癒しの為に光を放ってくれていたようだ。
 さて、この場へと南側のメンバーも加わってくる。
 その先陣を切って来たのは、戦場を駆け抜けてきたアリアだ。
 北側メンバーとの合流を確認し、彼女は早速攻撃を仕掛けようとするのだが、地上から直接攻撃を叩き込むには、グラフの位置は高すぎた。
 ハンター達はこの為、直接攻撃を叩き込めるよう、グラフの撃ち落としに集中する。
「……いきますよ」
 通信機で一言呼びかけた観智の発する砲弾が、グラフへと叩き込まれた。
 グラフの翼には徐々に穴が開き始めており、ミオレスカも強弓からロニに強化してもらった矢で弾幕を張りつつ、敵の翼を射抜こうとしていく。
 この場のヴァイスも、相手の翼へと再度雷撃を飛ばす。
「う、うおおっ……!」
 翼に大きな穴が開き、ついにグラフが高度を維持できなくなり、落ちてくる。
 その真下に陣取っていたのは、駆けつけてきた南側メンバーのルンルンだ。
「ミッ! ミッ!」
 彼女は敵の降下地点を想定し、予め地縛符を仕掛けていたのだ。
「なん、だと……!?」
 これには、さすがのグラフも驚きを隠せない。
 足を取られた敵へ、アリアがここぞと仕掛ける。
「竜討つ月の刃を、ここに」
 小さく呟いた彼女は、両手の魔導剣と双龍剣で相手を切りつけていく。
 マテリアル出包まれた刃はグラフの鱗も切り裂き、その身体に傷を入れた。
「だが、まだ終わらぬ……!」
 劣勢を察していたグラフではあったが、それでもそいつは前方にいたハンター達めがけ、燃え上がる炎を浴びせてきたのだった。

 グラフとの交戦が激しくなる中、残るもう1体の極大雑魔との戦いは終結に向かってきていた。
 この場からはゾファルが抜けていたが、新たにまよいが加わり、多数の雑魔を屠った10本の矢を、極大雑魔へと浴びせかける。
「大きいからといって、有利とは限らないよ」
 事実、まよいが言うように、多くの矢が極大雑魔に衝撃を与えて傷を増やしていく。
 ユーリはグラフの存在を確認しながらも、目の前の極大雑魔を倒そうと、蒼姫刀を一閃させる。
 手前の極大雑魔に傷を負わせるだけでなく、奥にいた大型の体を断ち切ってしまう。
 さらに、こちらに凸凹聖職者コンビが加勢してくる。
「身体が大きいだけでも、結構厄介なものですね……」
 小柄なサクラにとっては大型ですらも3倍の体格差があったのに、極大ともなれば、4倍あまりは違う。
「ですが、好きにさせるわけにはいかないのですよ……」
 今なお暴れ狂う敵へ、サクラは魔法で作った刃を展開していく。
「動きを止めます……。闇の束縛……プルガトリオ……!」
「……!?」
 刃が消えども、極大雑魔は動きが取れない。
 そこへ、シレークスがマテリアルを練りつつ飛び込む。
「我らが神の威光。其の身に刻みやがれっ!!!」
 渾身の一撃に、極大雑魔の体が大きく揺らぐ。
 だが、相手もなかなかしぶとく、気をしっかり持ってハンターを睨みつけてくる。
 その視線の先には、マテリアルライフルを発射していたメルだ。
「あっ……」
 不意をつかれたメルがその睨みに捕らわれ、身体を硬直させる。
 その身が石に変わる恐怖を覚えるが、メルは仲間の存在を意識して立ち回っていた。
 すぐ、旭が熱砂を纏わせた魔斧で、相手の首を狙う。
 深々と食い込んだ刃。それに極大雑魔は耐えられず、傷口から砂のように少しずつその存在をかき消していく。
 駆けつける聖堂戦士団の姿を確認しながら、メルは旭と微笑み合うのだった。

 極大雑魔は全て消え去り、大小雑魔のほとんど残されてはいない。
 態勢を整えなおしたレオナがFannanに装備させた獣機銃「テメリダーV3」で相手を狙い撃つ。
 ジーナも射撃でグラフを狙う。
 これまで温存していたプラズマライフル「イナードP5」に装備を換え、機体の最大火力を持って、頑丈な鱗ごと撃ち抜こうとする。
 幾度も銃弾を浴びせれば、力技で本体にもダメージが通っていく。
 水月も温存していたマジックエンハンサーの展開、そしてMライフル「イースクラW」でマテリアルの弾丸を撃ち込む。
 徐々に増えてくるハンター達。もはや、グラフが倒れるのは時間の問題となってきていた。
「で、喋る強欲竜殿。竜園の近くにいる強欲竜とお主の違いは何じゃ?」
 近づいてきたディヤーが尋ねると、敵は小さく含み笑いをしてから応える。
「昔は竜園の近くにいたがな。はぐれさすらって久しい」
 我が身の破滅が近づき、グラフは仲間を思ったのだろうか。
 だが、ディヤーは躊躇なく、イースクラの一撃を浴びせる。
「返答の礼じゃ。魔法属性攻撃はかなり貴重じゃぞ?」
 ここまでくれば、戦場は南北メンバーが入り乱れる。
 仲間達のマテリアルを活性化させるべく、Uiscaが歌声を響かせて中、ハンター達は次々に攻撃を行う。
 機動性を生かして立ち回る颯は相手の鱗の繋ぎ目を狙い、アーマードリル「轟旋」でこじ開けようとして見せる。
「これができれば、はやてのドリルも効くはず」
 確かに、仲間の傷を活かせば可能ではある。だが、魔法攻撃を仕掛けるメンバーに比べれば少し時間は掛かっていたようだ。
「南北で合わせて仕掛けるぞ」
 通信機でロニが呼びかけ、背中目掛けて幻獣砲「狼炎」を撃ち込むと、正面からは人機一体となった炎がマテリアルで包んだ聖剣でグラフの腹をかき切った。
 続き、まよいが魔術具としてマギサークレットを使い、集中シテからブリザードを発動させる。
 吹き荒れる冷気の嵐にその身を凍りつかせた歪虚へ、カーミンが仕掛けていく。
 彼女は牽制の一矢を飛ばし、グラフが身をそらそうとしたタイミングで、ジャック、アリアが合わせて切りかかってくれた。
 極大雑魔がいなくなったことで、ユーリも駆けつけ、振るった蒼姫刀から桜吹雪の幻影を舞わせる。
 その美しさに惑わされながらも、歪虚グラフは最後まで抵抗を止めない。
「やられぬ、やられはせぬぞ……!」
 強欲の一員であるこの歪虚は、全てを手に入れんとしている。
 その生が続く限り、その生き様は変わらぬのだろう。
 襲い来る全てのハンターの体を切り刻もうと、全身を生かして荒ぶるままに襲い来る歪虚。
 しかしながら、その斬撃、殴打を受けてなお、ゾファルは敵の身体へと馬乗りになって。
 Mショットナックル「ペルセヴェランテ」にマテリアルを流し込んでいき、彼女はさらに人機一体となって攻め立てる。
 ゾファルの攻撃は、「お前が死ぬまで殴るのをやめない」そう言っているように、相手をぶちのめそうとしていく。
 それでも、沈まぬグラフへ、グレンに乗ったまま飛びかかってきたヴァイスが灯火で包む七支槍「大雀」で相手の頭を切り落とした。
「見事、だ……」
 だが、その最後の力でヴァイスの体を掴み取ろうとする。
 その力を認めたのだろうが、強欲もそこまで。その身体は見る見るうちに塵と化していった。

 歪虚グラフ討伐完了。
 その知らせは、通信機を伝ってすぐ全てのハンター達の知れるところとなる。
「長き戦い、これで幕引きだ」
 ジーナの操作で、打ち上げられるバレルのミサイル。
 それは、祝砲代わりの一発となった。
 思い思いにそれを見上げるハンター達。
 とりわけ、長い戦いの終結を実感したエルフ3人は感慨深げに見つめる。
「集落の皆も見ているだろうか」
 アークエルスからだとさすがに遠すぎて確認はできないかもしれないが。
 ともあれ、ようやく集落民達によい知らせを伝える事ができると、彼らは笑顔を浮かべていたのだった。

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  • ヴァイス・エリダヌスka0364
  • 「ししょー」
    岩井崎 メルka0520
  • 花言葉の使い手
    カーミン・S・フィールズka1559
  • 非情なる狙撃手
    コーネリア・ミラ・スペンサーka4561
  • 遊演の銀指
    レオナka6158

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  • 戦地を駆ける鳥人間
    岩井崎 旭(ka0234
    人間(蒼)|20才|男性|霊闘士
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    ロジャック
    ロジャック(ka0234unit002
    ユニット|幻獣
  • 龍奏の蒼姫
    ユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239
    エルフ|15才|女性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    オリーヴェ
    オリーヴェ(ka0239unit001
    ユニット|幻獣

  • ヴァイス・エリダヌス(ka0364
    人間(紅)|31才|男性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    グレン
    グレン(ka0364unit001
    ユニット|幻獣
  • 「ししょー」
    岩井崎 メル(ka0520
    人間(蒼)|17才|女性|機導師
  • ユニットアイコン
    アカツキ
    アカツキ(ka0520unit005
    ユニット|CAM
  • 支援巧者
    ロニ・カルディス(ka0551
    ドワーフ|20才|男性|聖導士
  • ユニットアイコン
    ラヴェンドラ
    ラヴェンドラ(ka0551unit004
    ユニット|幻獣
  • 流浪の剛力修道女
    シレークス(ka0752
    ドワーフ|20才|女性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    インフラマラエ
    インフラマラエ(ka0752unit002
    ユニット|幻獣
  • 緑龍の巫女
    Uisca=S=Amhran(ka0754
    エルフ|17才|女性|聖導士
  • ユニットアイコン
    ウイヴル
    ウイヴル(ka0754unit003
    ユニット|幻獣
  • 止まらぬ探求者
    天央 観智(ka0896
    人間(蒼)|25才|男性|魔術師
  • ユニットアイコン
    マドウガタデュミナス
    魔導型デュミナス射撃戦仕様(ka0896unit003
    ユニット|CAM
  • 夢路に誘う青き魔女
    夢路 まよい(ka1328
    人間(蒼)|15才|女性|魔術師
  • ユニットアイコン
    イケロス
    イケロス(ka1328unit002
    ユニット|幻獣
  • 未来を示す羅針儀
    ジャック・エルギン(ka1522
    人間(紅)|20才|男性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    オストロ
    オストロ(ka1522unit006
    ユニット|幻獣
  • 花言葉の使い手
    カーミン・S・フィールズ(ka1559
    人間(紅)|18才|女性|疾影士
  • ユニットアイコン
    フィデル
    グリフォン(ka1559unit002
    ユニット|幻獣
  • 勝利への開拓
    ジーナ(ka1643
    ドワーフ|21才|女性|霊闘士
  • ユニットアイコン
    バレル
    バレル(ka1643unit001
    ユニット|CAM
  • びりびり電撃どりる!
    八劒 颯(ka1804
    人間(蒼)|15才|女性|機導師
  • ユニットアイコン
    グスタフ
    Gustav(ka1804unit002
    ユニット|魔導アーマー
  • 黒猫とパイルバンカー
    葛音 水月(ka1895
    人間(蒼)|19才|男性|疾影士
  • ユニットアイコン
    フレイヤ
    フレイヤ(ka1895unit006
    ユニット|CAM
  • 星を傾く者
    サクラ・エルフリード(ka2598
    人間(紅)|15才|女性|聖導士
  • ユニットアイコン
    ヤエ
    ヤエ(ka2598unit004
    ユニット|幻獣
  • 師岬の未来をつなぐ
    ミオレスカ(ka3496
    エルフ|18才|女性|猟撃士
  • ゾファル怠極拳
    ゾファル・G・初火(ka4407
    人間(蒼)|16才|女性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    コンフェッサー
    ゴンちゃん(ka4407unit006
    ユニット|CAM
  • 非情なる狙撃手
    コーネリア・ミラ・スペンサー(ka4561
    人間(蒼)|25才|女性|猟撃士
  • 鉄壁の機兵操者
    ディヤー・A・バトロス(ka5743
    人間(紅)|11才|男性|魔術師
  • ユニットアイコン
    ジャウハラ
    ジャウハラ(ka5743unit001
    ユニット|CAM
  • 忍軍創設者
    ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784
    人間(蒼)|17才|女性|符術師
  • ユニットアイコン
    カガクニンチョウヒノトリ
    科学ニンチョウ『火の鳥』(ka5784unit003
    ユニット|幻獣
  • 遊演の銀指
    レオナ(ka6158
    エルフ|20才|女性|符術師
  • ユニットアイコン
    ファンヌァン
    Fannan(ka6158unit002
    ユニット|幻獣
  • 紅の月を慈しむ乙女
    アリア・セリウス(ka6424
    人間(紅)|18才|女性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    コーディ
    コーディ(ka6424unit001
    ユニット|幻獣
  • 覚悟の漢
    南護 炎(ka6651
    人間(蒼)|18才|男性|舞刀士
  • ユニットアイコン
    グランド ソード
    GRAND SWORD(ka6651unit002
    ユニット|CAM

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン トカゲ山攻略戦相談卓
ジャック・エルギン(ka1522
人間(クリムゾンウェスト)|20才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2018/04/14 06:23:07
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/04/14 01:44:44