ゲスト
(ka0000)
【星籤】自律可動型機体を作ろう!
マスター:紫月紫織

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/04/19 09:00
- 完成日
- 2018/05/02 20:15
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
◆ロマンを積み込め! オート・ソルジャー!
わくわくと、期待を胸に集まったハンター達を前に、エリクシアは神妙な面持ちだった。
なぜ、私はここにいるのだろうか?
仕事だから、仕方ない。
だがもう少し、私よりも適正の高い人材はいるはずじゃないか。
いや、私より適正のない人間なんて居ないだろう、そう思わずにはいられない。
だが仕事である。
もしかしたら、あるいは以前から結構時間も経っているし、あの体質もナリを潜めているのかも知れない。
そうに違いない、そうであってくれ。
そう思い、エリクシアは参加者が全員席についた段階で
――リモコンに手を伸ばした。
電源ボタンを押し、モニターのスイッチをオンにするだけのその簡単な、ボタンさえ押せれば赤子でも出来るはずのその行為。
だが、エリクシアがボタンを押した瞬間、モニターが爆発した。
がらがらと残骸が崩れ落ち、部屋が軽くざわつく。
慣れたハンターの一部は斜め下の方向へと視線を向けてため息を吐いていた。
いつからか、誰が呼んだか"メカニックハザード"。
今日もエリクシアは健在だった。
「というわけで」
「何が"というわけで"なんですか」
「資料を配ります」
「あ、はい」
すぐに配られるということはあらかじめ用意されていたということなのだろう。
一体、モニターはなんのために殉職したというのか……。
そんな一部ハンター達の憂いをよそに、エリクシアは拳を高らかに突き上げた。
「みんな! 自律型機械ユニット、ほしいかー!」
唐突過ぎて誰もついてこず、会場はしんと静まり返る。
「というわけで」
「何が"というわけで"なんですかっ!」
「ソサエティで、開発が決まりました!」
「ヤッター!」
「でも費用に問題があるのです」
「ナ、ナンダッテー!」
合いの手に余念のないハンターも居たものである……。
「というわけで、お手元のレポートを御覧ください」
促されて集まったハンター達がそれぞれレポートをめくっていく。
一部抜粋、部外秘と書かれていたがそれはさておき。
◆◆自立可動型戦闘兵 生産計画レポート◆◆
一部抜粋
■月■■次試験
高度姿勢制御システム進捗65%。
制御にオートマトン■■■嬢の知覚・姿勢制御補助プログラムを転用、多少の改善に成功。
実用段階試験成績78。
■月■■■試験
個体識別アルゴリズム試運転、失敗。
作業員負傷多数。
無差別攻撃モードと命名、実用性はなし。
■■月■七次■験
自律行動システム試運転。
待機・索敵・補助は期待値の4割。
戦闘システムは先の試験結果の関係上未実施。
■■月第■■試験
自己診断システム試運転。
CAMシステムを応用、順調に作動中。
並列して補助システムチップ開発、武器種選定中。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「具体的に申しますと、開発費用が底をつきつつあり、現状のままでは開発完了前に計画が頓挫してしまいます」
総開発予算なども後ろに記載されており、一部のこういったことの見積もりが得意な者たちがざわつき始める。
わりとすでに足が出そうなギリギリのラインというのがわかるのだろう。
「追加資金出せやオラァ、と上を突っつくのはもちろんのこと、この手の事について権威であるトマーゾ博士に相談したところ、『エバーグリーンの自動兵器でも適当にバラして使えばいいじゃろ』とのお言葉をいただきました」
エリクシアのメガネがきらりと光る。
「開発者直々の許可です。よって……」
ぐっ、とセリフを貯めるエリクシア。
その様子に集ったハンター一同も次の句をじっと待つ。
「チキチキ! オート・パラディンとかその他諸々! 大☆回収大会をします!」
「大会なんだ?」
「いや、依頼なんですけどね? そう言ったほうが楽しくありません? エバーグリーンはほぼ機能停止状態らしいので目立った危険もなさそうですし」
そう言ってエリクシアの説明は続き、最後に地図が提示された。
ある一点に印が入れられており、転移先の予定であるらしい。
「今回の探索の目的ポイントはここ。トマーゾ博士が言うには、可動していた自動兵器などの活動拠点だそうです。『破損した部品の交換、新規装備の増設なども行っていた場所のようじゃから、一揃えは手に入るじゃろ』とのことです」
「回収にあたって意識するべきことはありますかー!」
一人のハンターから勢いよく挙手があがる。
「はいそこ! 元気がイイですね! 動いていたオート系の某、損傷が少ないものを回収していただけると安心安全です! サイズの問題もありますがそこは後ほど調整します。あとはなんかくっつけたいもの持ってきてください! ジャンクパーツもしこたまあるみたいですから試作品を作ってみるなんてのもイイんじゃないでしょうか!」
エリクシアの言葉に、数人のハンターが目を輝かせる。
「回収にはソサエティから魔導トラックを貸し出しますので好きに詰め込んでください! みんなー! 回収に行ってくれるかなー!?」
返事がある前に、エリクシアが唐突にぶっ倒れた。
◆おねんね
エリクシアは無自覚な風邪だったらしく、思いの外熱が高かったために、体力の限界を超えた途端に倒れただけらしい。
無駄にテンションが高かったのもその所為のようだ。
一人暮らしのためにひとまず友人宅に預けられた。
「というわけで私が受付代理になりました」
ちょこん、と臨時設営窓口に座るミモザを前に、一部のハンター達が胸をなでおろす。
なにせ、無事に持って帰ってきた部品をエリクシアに渡したらその場でぶっ壊れるんじゃないかという不安があったからだ。
その点彼女ならば問題はない、なにせオートマトンだし。
「えっと、回収したパーツなどは、こちらで確認した段階で納品完了という扱いになります。質問などがありましたら適宜うけつけます……」
マニュアルとレポート分厚いなぁ、と思いながら、たどたどしく受付をこなすミモザ。
応援したくなる反面、だいじょうぶかと不安にもなる光景だった。
「えっと、すぐに答えられないものについては追って回答いたしますね。よろしくおねがいいたしします」
ぺこりと小さくお辞儀をする少女を前に何人かが気合を充填し直した。
わくわくと、期待を胸に集まったハンター達を前に、エリクシアは神妙な面持ちだった。
なぜ、私はここにいるのだろうか?
仕事だから、仕方ない。
だがもう少し、私よりも適正の高い人材はいるはずじゃないか。
いや、私より適正のない人間なんて居ないだろう、そう思わずにはいられない。
だが仕事である。
もしかしたら、あるいは以前から結構時間も経っているし、あの体質もナリを潜めているのかも知れない。
そうに違いない、そうであってくれ。
そう思い、エリクシアは参加者が全員席についた段階で
――リモコンに手を伸ばした。
電源ボタンを押し、モニターのスイッチをオンにするだけのその簡単な、ボタンさえ押せれば赤子でも出来るはずのその行為。
だが、エリクシアがボタンを押した瞬間、モニターが爆発した。
がらがらと残骸が崩れ落ち、部屋が軽くざわつく。
慣れたハンターの一部は斜め下の方向へと視線を向けてため息を吐いていた。
いつからか、誰が呼んだか"メカニックハザード"。
今日もエリクシアは健在だった。
「というわけで」
「何が"というわけで"なんですか」
「資料を配ります」
「あ、はい」
すぐに配られるということはあらかじめ用意されていたということなのだろう。
一体、モニターはなんのために殉職したというのか……。
そんな一部ハンター達の憂いをよそに、エリクシアは拳を高らかに突き上げた。
「みんな! 自律型機械ユニット、ほしいかー!」
唐突過ぎて誰もついてこず、会場はしんと静まり返る。
「というわけで」
「何が"というわけで"なんですかっ!」
「ソサエティで、開発が決まりました!」
「ヤッター!」
「でも費用に問題があるのです」
「ナ、ナンダッテー!」
合いの手に余念のないハンターも居たものである……。
「というわけで、お手元のレポートを御覧ください」
促されて集まったハンター達がそれぞれレポートをめくっていく。
一部抜粋、部外秘と書かれていたがそれはさておき。
◆◆自立可動型戦闘兵 生産計画レポート◆◆
一部抜粋
■月■■次試験
高度姿勢制御システム進捗65%。
制御にオートマトン■■■嬢の知覚・姿勢制御補助プログラムを転用、多少の改善に成功。
実用段階試験成績78。
■月■■■試験
個体識別アルゴリズム試運転、失敗。
作業員負傷多数。
無差別攻撃モードと命名、実用性はなし。
■■月■七次■験
自律行動システム試運転。
待機・索敵・補助は期待値の4割。
戦闘システムは先の試験結果の関係上未実施。
■■月第■■試験
自己診断システム試運転。
CAMシステムを応用、順調に作動中。
並列して補助システムチップ開発、武器種選定中。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「具体的に申しますと、開発費用が底をつきつつあり、現状のままでは開発完了前に計画が頓挫してしまいます」
総開発予算なども後ろに記載されており、一部のこういったことの見積もりが得意な者たちがざわつき始める。
わりとすでに足が出そうなギリギリのラインというのがわかるのだろう。
「追加資金出せやオラァ、と上を突っつくのはもちろんのこと、この手の事について権威であるトマーゾ博士に相談したところ、『エバーグリーンの自動兵器でも適当にバラして使えばいいじゃろ』とのお言葉をいただきました」
エリクシアのメガネがきらりと光る。
「開発者直々の許可です。よって……」
ぐっ、とセリフを貯めるエリクシア。
その様子に集ったハンター一同も次の句をじっと待つ。
「チキチキ! オート・パラディンとかその他諸々! 大☆回収大会をします!」
「大会なんだ?」
「いや、依頼なんですけどね? そう言ったほうが楽しくありません? エバーグリーンはほぼ機能停止状態らしいので目立った危険もなさそうですし」
そう言ってエリクシアの説明は続き、最後に地図が提示された。
ある一点に印が入れられており、転移先の予定であるらしい。
「今回の探索の目的ポイントはここ。トマーゾ博士が言うには、可動していた自動兵器などの活動拠点だそうです。『破損した部品の交換、新規装備の増設なども行っていた場所のようじゃから、一揃えは手に入るじゃろ』とのことです」
「回収にあたって意識するべきことはありますかー!」
一人のハンターから勢いよく挙手があがる。
「はいそこ! 元気がイイですね! 動いていたオート系の某、損傷が少ないものを回収していただけると安心安全です! サイズの問題もありますがそこは後ほど調整します。あとはなんかくっつけたいもの持ってきてください! ジャンクパーツもしこたまあるみたいですから試作品を作ってみるなんてのもイイんじゃないでしょうか!」
エリクシアの言葉に、数人のハンターが目を輝かせる。
「回収にはソサエティから魔導トラックを貸し出しますので好きに詰め込んでください! みんなー! 回収に行ってくれるかなー!?」
返事がある前に、エリクシアが唐突にぶっ倒れた。
◆おねんね
エリクシアは無自覚な風邪だったらしく、思いの外熱が高かったために、体力の限界を超えた途端に倒れただけらしい。
無駄にテンションが高かったのもその所為のようだ。
一人暮らしのためにひとまず友人宅に預けられた。
「というわけで私が受付代理になりました」
ちょこん、と臨時設営窓口に座るミモザを前に、一部のハンター達が胸をなでおろす。
なにせ、無事に持って帰ってきた部品をエリクシアに渡したらその場でぶっ壊れるんじゃないかという不安があったからだ。
その点彼女ならば問題はない、なにせオートマトンだし。
「えっと、回収したパーツなどは、こちらで確認した段階で納品完了という扱いになります。質問などがありましたら適宜うけつけます……」
マニュアルとレポート分厚いなぁ、と思いながら、たどたどしく受付をこなすミモザ。
応援したくなる反面、だいじょうぶかと不安にもなる光景だった。
「えっと、すぐに答えられないものについては追って回答いたしますね。よろしくおねがいいたしします」
ぺこりと小さくお辞儀をする少女を前に何人かが気合を充填し直した。
リプレイ本文
●いってらっしゃい
ソサエティで用意された魔導トラック三台、持ち込みのサイドカー付きトライクが二台にフライングスレッド一台。
戦利品をこれでもかと持ち帰る構えである。
「そろそろ転送準備に入りますよ」
と、転送門担当の職員が確認を取る。
そんな、エバーグリーンへの転送を目前に控えたタイミングに、転がるようにミモザが駆け込んできた。
「ふあぁぁ、間に合いましたっ!」
「ミモザさん、来てくれたんですね!」
サイドカーの確認をしていたアシェ-ル(ka2983)が出迎え、それに気づいた面識のある面々も寄ってくる。
「久しぶりだな、ミモザ。元気にしていたか? シルヴァとも仲良くやれているか?」
その体躯とは裏腹に、優しくミモザの頭を撫でるルベーノ・バルバライン(ka6752)に、仲良くしてるよ、と笑顔で返すと、持っていた大きめの手提げから小さめの包みを取り出した。
「出発に間に合ってよかった、皆さんにクッキーを焼いてきたんです。向こうでの作業が長めだってきいたので、よければ食べてください」
転送の準備に急かされ、全員に手渡している時間はなく、包みを手提げに戻すとミモザはグリムバルドへとまとめて渡した。
「こいつは素敵なピクニックになりそうだ。みんなにも渡しておくよ、ありがとな」
グリムバルド・グリーンウッド(ka4409)そういわれ、笑顔でうなずく少女を前に、転送担当の職員がもういいですか、と再三の確認をしてくる。
「むう、話したいこともあったが、予定を遅らせるわけにもいかんか」
「だな、それじゃあミモザ、行ってくる」
「大漁を期待してまっていてください!」
ふんす、とガッツポーズを決めるアシェール。
「うん、みんながんばって! 待ってるね!」
●エバーグリーンの今
最初に現れたのは、しんと静まり返った廃墟都市の一角。
眼の前には巨大な――探索予定の施設がある。
動力が落ちたドーム状の都市は薄暗く、けれど差し込む光があった。
ドーム外壁の一角が、そこだけが天上から大地深くまで切り抜かれたように消失し、なにもない空間が広がっていた。
エラ・“dJehuty”・ベル(ka3142)がすぐさま軍用双眼鏡を取り出して確認するも、別段危険そうな様子はない。
「何か、断面のような有様ですね。過去の戦闘の傷跡でしょうか?」
「もしかしたら、あれがクリムゾンウェストに召喚された部分なのかもしれないな」
すぐにどうこう、ってわけじゃないが、一応留意しといたほうがいいかもだ、と続けるグリムバルドにそれぞれがうなずいて早速行動が開始された。
「……本当は、ルビーやミモザ君達の故郷のこの世界の復帰を進めれたら良いのだけど」
やたらと広い施設内をトライクに乗ったエラの先導で進みながら、ジーナ(ka1643)の運転するトラックの隣に乗り合わせた岩井崎 メル(ka0520)は、そんなことを口にする。
「そう言えば、今回の案を上申したのはメルだったか」
「うん。今は少しづつ、この世界データをサルベージ、って思って」
復帰を進める難しさ、それを理解した上で、それでも世界への思いが実を結ぶように行動する。
そんなメルの行動は確かな信念を感じさせる。
「ジーナ君は、なんで今回の依頼に参加したの?」
メルの言葉に、ジーナはエラのトライクのテールランプに視線を向けたまま、少しの間ゆるりと考えを巡らせる。
「開発も代理も大変だが……魅力的な話には違いない」
やがてでてきた言葉はそんな、ドワーフらしい答えだった。
前方でテールランプが点灯する。
エラのトライクが止まるのに合わせ、ジーナもアクセルから足を離した。
見たところ分厚い隔壁が下りる場所のようだが、現在は開け放たれたままになっているらしい。
「あたりか?」
「第三格納庫……だそうです」
ジーナの言葉に、エラが近くにあったプレートを読み上げる。
奥へと視線を向けてみれば、2m級から6m級までの、今回のターゲットと思われる機体がずらりと並んでいた。
入って比較的すぐのところには、小型の機体が転倒し解体しやすそうな身を晒している。
その前に、ジーナは膝をついて目を閉じる。
「どうかしましたか?」
「祈りを捧げていた。教授の許可があるとはいえ、先人の遺産を軽々しく漁る気はない」
「そっか……遺産、みたなものだもんね」
話を聞いたメルが一緒になって祈りを捧げる。
シガリロがあればそれを弔いに、祈りに見立てても良かったが、あいにくと持ち合わせがなかったエラは二人に合わせるように静かに黙祷した。
見つけた魔法の発動体、それらを銃器に取り付けられないかの試行錯誤を繰り返し、それらを技術者に分かる程度に走り書きしながらエラはふむと唸る。
見つけた銃器の中にはアタッチメント式のものも存在し、発動体となるそれを用意すれば実用できそうなものも存在した。
否、研究の形跡があったと言っていい。
過去の異世界に自分と似たような発想を持つものが居たという証左を見つけ、ふふ、と思わず笑みが溢れた。
「こちらに居たか、エラ。機導師としての力を貸して欲しい」
「何かありましたか?」
「あっちにね、装備がいくつもついて戦闘痕のある機体があったんだって」
作業の手を止めたエラに、ジーナに連れられていたメルが返す。
「戦闘痕……なるほど、実際に運用されていた装備の回収と、中身――データが目当てですね?」
「そういうことだ。他の機体とも明らかに違うのでエース機の類いではないかと睨んでいてな、装備はともかく中身のデータ回収はエラやメルのほうが適切だろう?」
「分かりました、ではそちらまで移動しましょう」
移動を促しながら、エラはトランシーバーで他の仲間へと現状報告を済ますのだった。
◆オトメノナヤミ
「んー、開かないな。他の入り口でも探してみるか?」
「グリムバルド、ちょっと変われ」
エラ達とは別の少し離れた研究棟に目星をつけた面々、グリムバルドが開けようとした扉は開かず、他の入り口か、あるいは窓でも割って入ろうかというところ、ルベーノが空いた取っ手をぐっと握る。
研究棟ゆえだろうか、頑丈な扉はびくともせず、しばらく握ったまま動かなかったルベ―のがおもむろに構えをとったのを見て、グリムバルドとアシェールはさっと距離をとる。
「覇ァ!」
ばぎんっ!
おそらく強化された扉だったのだろうが、ルベーノの力と老朽化の前にあっけなく散った。
「よし、開いたぞ」
「おお! これで中を探せますね!」
開いたまま戻らなくなったドアをくぐっていくルベーノとアシェールに、少しだけ視線を泳がせて喉まで出かかった言葉を飲み込んだグリムバルドが続いた。
研究棟の中は複雑な機械と道具が並んでおり、被害も少なかったのか散らかっている程度といった様子だった。
「そういえば、二人はどんなものを探すのかもう決まってるのか?」
「う~ん、スラスターやバックパックとかですかね?」
「自爆装置だ!」
色々と思い浮かべていたアシェールとは裏腹に、自信満々に言い放つルベーノ。
「RBでは芸術は爆発だと言った芸術家が居たらしいが、戦闘の華も爆発だと思うのでな。特攻自爆のセットは積んでおきたいのだ」
そう言って嬉々として試作品群をあさり始める彼を横目に、組み上がる前から自爆の話が持ち上がる新たな仲間を思い、二人はそっと心の中で合掌するのだった。
「妄想する事は得意ですが、いざ、探すとなると、大変ですね」
「目録みたいなのがあればいいんだけどな」
グリムバルドの言葉に、そうですねと頷きながら、研究棟に並んでいる開発途中の装備やパーツ群を調べていく。
いくつかすでに回収の判断が下されたものは、すでにトライクやらフライングスレッドやらに積み込まれている。
それらの殆どは装備させるオート系ユニットの大きさに合わせた代物であるために、小さくてもアシェールの腰ほどの大きさがあった。
「どれも大物ばかりですね……」
「俺らでも使えそうではあるけど、ユニット用の装備が主な研究棟っぽいな」
足につけるのであろう、巨大なローラーを発見しひょいと抱えながら、他には何か無いかと視線を巡らせるグリムバルド。
「ミモザさん用の武器とか防具もあるといいんですが」
「ふむ、例えば?」
返しつつ、占術にでも頼ってみるかと札を取り出した彼。
「やっぱり……こう、胸が後付けで大きくなるのかな……オートマトンって」
というアシェールの言葉に札を取り落としかけた。
(これは突っ込むべきか? それともデリケートな話題と判断して合わせるべきか? そもそもオートマトンてそういう外装の換装が出来る作りなのか?)
一体どうなんだ、オートマトン。
そんな疑問がグリムバルドの頭を回り始める。
「情報補助が欲しいって言ってたから……胸レーダーとか無いかな」(
胸にこだわる理由は何処に、そう喉まで出かかった言葉を飲み込んで、あるといいな、なんて当たり障りのない言葉でその場を凌ぐのであった。
きっと、乙女の大切な悩みだから。
◆換装工場
「ほほぅここがエバーグリーン、初めてきたね」
藤堂 小夏(ka5489)が興味深そうに周囲を見回しながら魔導トラックを操る。
その隣ではカイン・シュミート(ka6967)が簡易のマッピングを行い位置を確かめていた。
時折速度を減速させ、様子を見て勘が反応しなければ次に行く。
そんなことを繰り返しながら、やがてたどり着いたのは、野ざらしに運ばれている最中だったらしいオートパラディンと、それを収容しようとしていた施設だった。
隔壁が開いており、そこから中へ容易に侵入ができそうだと判断し、トラックが止まる。
「どんなパーツがあるんだろうねー」
「いいものがあるといいな」
隔壁の先はドッグのようで、いくつか今後接合される予定だったパーツと思わしきものが並べられている。
仰々しいアーム型の工具が、今は動力を失い壁全体からだらりと下がっている。
その有様は虫の死骸のようで少し不気味さが漂う。
そんな中、小夏が部屋の端に並べられた金属塊を見つける。
複雑な機構が組み合わさり、外部といくつもの連結部のようなものが繋がれること無くさらされていた。
「んー何に使うかわからないけど、たぶん使えるだろうし持ってこうかな」
「どんなものがあったんだ?」
部屋の様子やその他を地図に書き込んでいたカインが興味深げに後から現れそれを視認する。
「なんか重要そうっぽいパーツ?」
見せられたそれにカインが目を細め、思考を巡らせる。
ぱりっ、と微かに静電気が走ったような感覚。
「見た感じ、動力源か、それに類するパーツっぽいな」
「ほほー、やはり機導師がいると頼りになるね。回収回収」
幸いにも運びやすいようタイヤ付きのそれに載せられていたため、嬉々として小夏はそれをトラックへと積み込んでいく。
その間奥はどんなものかと覗いてみたカインは、その光景に思わず感嘆の声が漏れた。
(見てるだけで面白ぇぞ……やっべぇ、わくわくしてきた)
おそらくここはユニットの内部機関を整備・換装する場所なのだろう。
そこかしこに並べられたむき出しの金属質、複雑な機構群は、彼の機導師としての感性を刺激するに十分なものだった。
「奥はどんな感じになってた?」
気づけばトラックへの積み込みを終えた小夏が戻ってきており、少し冷静さを取り戻す。
「すごいぜ、めちゃくちゃ面白そうだ」
そう言って奥へと促すカインに、小夏もわくわくして踏み込み、その金属の森に驚きの声を漏らした。
「何か特殊な弾とかないかなー」
「内蔵系のならこっちにありそうだよな――お?」
走るノイズが通信を知らせる。
「カインだ、なんかあったか?」
『こちらエラです、――在地は第三格――庫で出撃形跡の――エース機らしき――確保に向かっています』
若干音が途切れるあたり、距離的に通信圏内ギリギリなのかも知れない。
「こっちは動力源っぽいものを見つけたよ、あと今は内部機関の換装工場みたいなところにいる。もしかしてそっち、装甲系ある?」
『装甲ですか、それでした――ちらのほうにあります』
「わかりました、こちらの方の探索が終わったらそっちに向かいます」
小夏の探索候補である軽装甲や重装甲、それらはどうやら違う場所にあったらしい。
入れ違いになったのは惜しいが、時間はまだ十分にあるはずだ。
『了解――しました。通信終――了』
◆おかえりなさい
出発してからだいぶ長い時間探索できたこともあり、持ち帰られたパーツは過積載となって今にもこぼれそうなぐらいに潤沢であった。
崩れないうちに降ろしてそれぞれが速やかにラボの方へと運ばれていく
「みんなはどんなのが見つかったー?」
「参考になるかとおもって、設計資料をあさってきた。あとは見つけたと言うより試作だな」
そう言って資料類――紙束やタブレットを技師に渡していたエラが答える。
「ブースターとかレーダーとか、拡張性を補ってくれそうなものを中心に選んでみたよ。色んな所で活躍して欲しいからね」
「私は防御用のものを中心に選んでみた」
「自爆装置だ!」
メルやジーナが返す言葉に続いて高らかにルベーノが宣言したことで、その場に居た全員が凍りついた。
ソサエティの技師に至っては「え? そんな危険物混ざってんの?」という顔をしたものまでいる。
「それ単体で自爆する代物ではなさそうだから大丈夫だろう、見立てはグリムバルドだが」
機導師が見立てているのならだいじょうぶだろうと緊張が緩んだところに、ミモザが入ってきた。
「みんなおかえりなさ――うわ、すごい量……」
これから回収品の目録を作成する予定であったためか、その量にミモザがちょっとひるむ。
「見てください! 活きのいい? のが、沢山獲れましたよ!」
「大漁わーい!」
笑顔とテンションは大事、といった具合でハイタッチをかわす二人。
完成はまだ少し先になるだろうが、頼もしい仲間が増えることだろう。
「そういえば、ミモザは受付業務これが初めてだったっけか。どうだったかな?」
ラボへと運ばれていくパーツ類を見送りながら、そう聞く。
「エリクシアおねーちゃんが、意外とすごいってことがわかりました……」
今まではどういう評価だったんだろうか……いや、なんとなくわかる気もするが。
目録づくりのために職員に呼ばれて駆けていくミモザを見送りながら、一仕事終えた開放感と、その結実を楽しみにするのだった。
ソサエティで用意された魔導トラック三台、持ち込みのサイドカー付きトライクが二台にフライングスレッド一台。
戦利品をこれでもかと持ち帰る構えである。
「そろそろ転送準備に入りますよ」
と、転送門担当の職員が確認を取る。
そんな、エバーグリーンへの転送を目前に控えたタイミングに、転がるようにミモザが駆け込んできた。
「ふあぁぁ、間に合いましたっ!」
「ミモザさん、来てくれたんですね!」
サイドカーの確認をしていたアシェ-ル(ka2983)が出迎え、それに気づいた面識のある面々も寄ってくる。
「久しぶりだな、ミモザ。元気にしていたか? シルヴァとも仲良くやれているか?」
その体躯とは裏腹に、優しくミモザの頭を撫でるルベーノ・バルバライン(ka6752)に、仲良くしてるよ、と笑顔で返すと、持っていた大きめの手提げから小さめの包みを取り出した。
「出発に間に合ってよかった、皆さんにクッキーを焼いてきたんです。向こうでの作業が長めだってきいたので、よければ食べてください」
転送の準備に急かされ、全員に手渡している時間はなく、包みを手提げに戻すとミモザはグリムバルドへとまとめて渡した。
「こいつは素敵なピクニックになりそうだ。みんなにも渡しておくよ、ありがとな」
グリムバルド・グリーンウッド(ka4409)そういわれ、笑顔でうなずく少女を前に、転送担当の職員がもういいですか、と再三の確認をしてくる。
「むう、話したいこともあったが、予定を遅らせるわけにもいかんか」
「だな、それじゃあミモザ、行ってくる」
「大漁を期待してまっていてください!」
ふんす、とガッツポーズを決めるアシェール。
「うん、みんながんばって! 待ってるね!」
●エバーグリーンの今
最初に現れたのは、しんと静まり返った廃墟都市の一角。
眼の前には巨大な――探索予定の施設がある。
動力が落ちたドーム状の都市は薄暗く、けれど差し込む光があった。
ドーム外壁の一角が、そこだけが天上から大地深くまで切り抜かれたように消失し、なにもない空間が広がっていた。
エラ・“dJehuty”・ベル(ka3142)がすぐさま軍用双眼鏡を取り出して確認するも、別段危険そうな様子はない。
「何か、断面のような有様ですね。過去の戦闘の傷跡でしょうか?」
「もしかしたら、あれがクリムゾンウェストに召喚された部分なのかもしれないな」
すぐにどうこう、ってわけじゃないが、一応留意しといたほうがいいかもだ、と続けるグリムバルドにそれぞれがうなずいて早速行動が開始された。
「……本当は、ルビーやミモザ君達の故郷のこの世界の復帰を進めれたら良いのだけど」
やたらと広い施設内をトライクに乗ったエラの先導で進みながら、ジーナ(ka1643)の運転するトラックの隣に乗り合わせた岩井崎 メル(ka0520)は、そんなことを口にする。
「そう言えば、今回の案を上申したのはメルだったか」
「うん。今は少しづつ、この世界データをサルベージ、って思って」
復帰を進める難しさ、それを理解した上で、それでも世界への思いが実を結ぶように行動する。
そんなメルの行動は確かな信念を感じさせる。
「ジーナ君は、なんで今回の依頼に参加したの?」
メルの言葉に、ジーナはエラのトライクのテールランプに視線を向けたまま、少しの間ゆるりと考えを巡らせる。
「開発も代理も大変だが……魅力的な話には違いない」
やがてでてきた言葉はそんな、ドワーフらしい答えだった。
前方でテールランプが点灯する。
エラのトライクが止まるのに合わせ、ジーナもアクセルから足を離した。
見たところ分厚い隔壁が下りる場所のようだが、現在は開け放たれたままになっているらしい。
「あたりか?」
「第三格納庫……だそうです」
ジーナの言葉に、エラが近くにあったプレートを読み上げる。
奥へと視線を向けてみれば、2m級から6m級までの、今回のターゲットと思われる機体がずらりと並んでいた。
入って比較的すぐのところには、小型の機体が転倒し解体しやすそうな身を晒している。
その前に、ジーナは膝をついて目を閉じる。
「どうかしましたか?」
「祈りを捧げていた。教授の許可があるとはいえ、先人の遺産を軽々しく漁る気はない」
「そっか……遺産、みたなものだもんね」
話を聞いたメルが一緒になって祈りを捧げる。
シガリロがあればそれを弔いに、祈りに見立てても良かったが、あいにくと持ち合わせがなかったエラは二人に合わせるように静かに黙祷した。
見つけた魔法の発動体、それらを銃器に取り付けられないかの試行錯誤を繰り返し、それらを技術者に分かる程度に走り書きしながらエラはふむと唸る。
見つけた銃器の中にはアタッチメント式のものも存在し、発動体となるそれを用意すれば実用できそうなものも存在した。
否、研究の形跡があったと言っていい。
過去の異世界に自分と似たような発想を持つものが居たという証左を見つけ、ふふ、と思わず笑みが溢れた。
「こちらに居たか、エラ。機導師としての力を貸して欲しい」
「何かありましたか?」
「あっちにね、装備がいくつもついて戦闘痕のある機体があったんだって」
作業の手を止めたエラに、ジーナに連れられていたメルが返す。
「戦闘痕……なるほど、実際に運用されていた装備の回収と、中身――データが目当てですね?」
「そういうことだ。他の機体とも明らかに違うのでエース機の類いではないかと睨んでいてな、装備はともかく中身のデータ回収はエラやメルのほうが適切だろう?」
「分かりました、ではそちらまで移動しましょう」
移動を促しながら、エラはトランシーバーで他の仲間へと現状報告を済ますのだった。
◆オトメノナヤミ
「んー、開かないな。他の入り口でも探してみるか?」
「グリムバルド、ちょっと変われ」
エラ達とは別の少し離れた研究棟に目星をつけた面々、グリムバルドが開けようとした扉は開かず、他の入り口か、あるいは窓でも割って入ろうかというところ、ルベーノが空いた取っ手をぐっと握る。
研究棟ゆえだろうか、頑丈な扉はびくともせず、しばらく握ったまま動かなかったルベ―のがおもむろに構えをとったのを見て、グリムバルドとアシェールはさっと距離をとる。
「覇ァ!」
ばぎんっ!
おそらく強化された扉だったのだろうが、ルベーノの力と老朽化の前にあっけなく散った。
「よし、開いたぞ」
「おお! これで中を探せますね!」
開いたまま戻らなくなったドアをくぐっていくルベーノとアシェールに、少しだけ視線を泳がせて喉まで出かかった言葉を飲み込んだグリムバルドが続いた。
研究棟の中は複雑な機械と道具が並んでおり、被害も少なかったのか散らかっている程度といった様子だった。
「そういえば、二人はどんなものを探すのかもう決まってるのか?」
「う~ん、スラスターやバックパックとかですかね?」
「自爆装置だ!」
色々と思い浮かべていたアシェールとは裏腹に、自信満々に言い放つルベーノ。
「RBでは芸術は爆発だと言った芸術家が居たらしいが、戦闘の華も爆発だと思うのでな。特攻自爆のセットは積んでおきたいのだ」
そう言って嬉々として試作品群をあさり始める彼を横目に、組み上がる前から自爆の話が持ち上がる新たな仲間を思い、二人はそっと心の中で合掌するのだった。
「妄想する事は得意ですが、いざ、探すとなると、大変ですね」
「目録みたいなのがあればいいんだけどな」
グリムバルドの言葉に、そうですねと頷きながら、研究棟に並んでいる開発途中の装備やパーツ群を調べていく。
いくつかすでに回収の判断が下されたものは、すでにトライクやらフライングスレッドやらに積み込まれている。
それらの殆どは装備させるオート系ユニットの大きさに合わせた代物であるために、小さくてもアシェールの腰ほどの大きさがあった。
「どれも大物ばかりですね……」
「俺らでも使えそうではあるけど、ユニット用の装備が主な研究棟っぽいな」
足につけるのであろう、巨大なローラーを発見しひょいと抱えながら、他には何か無いかと視線を巡らせるグリムバルド。
「ミモザさん用の武器とか防具もあるといいんですが」
「ふむ、例えば?」
返しつつ、占術にでも頼ってみるかと札を取り出した彼。
「やっぱり……こう、胸が後付けで大きくなるのかな……オートマトンって」
というアシェールの言葉に札を取り落としかけた。
(これは突っ込むべきか? それともデリケートな話題と判断して合わせるべきか? そもそもオートマトンてそういう外装の換装が出来る作りなのか?)
一体どうなんだ、オートマトン。
そんな疑問がグリムバルドの頭を回り始める。
「情報補助が欲しいって言ってたから……胸レーダーとか無いかな」(
胸にこだわる理由は何処に、そう喉まで出かかった言葉を飲み込んで、あるといいな、なんて当たり障りのない言葉でその場を凌ぐのであった。
きっと、乙女の大切な悩みだから。
◆換装工場
「ほほぅここがエバーグリーン、初めてきたね」
藤堂 小夏(ka5489)が興味深そうに周囲を見回しながら魔導トラックを操る。
その隣ではカイン・シュミート(ka6967)が簡易のマッピングを行い位置を確かめていた。
時折速度を減速させ、様子を見て勘が反応しなければ次に行く。
そんなことを繰り返しながら、やがてたどり着いたのは、野ざらしに運ばれている最中だったらしいオートパラディンと、それを収容しようとしていた施設だった。
隔壁が開いており、そこから中へ容易に侵入ができそうだと判断し、トラックが止まる。
「どんなパーツがあるんだろうねー」
「いいものがあるといいな」
隔壁の先はドッグのようで、いくつか今後接合される予定だったパーツと思わしきものが並べられている。
仰々しいアーム型の工具が、今は動力を失い壁全体からだらりと下がっている。
その有様は虫の死骸のようで少し不気味さが漂う。
そんな中、小夏が部屋の端に並べられた金属塊を見つける。
複雑な機構が組み合わさり、外部といくつもの連結部のようなものが繋がれること無くさらされていた。
「んー何に使うかわからないけど、たぶん使えるだろうし持ってこうかな」
「どんなものがあったんだ?」
部屋の様子やその他を地図に書き込んでいたカインが興味深げに後から現れそれを視認する。
「なんか重要そうっぽいパーツ?」
見せられたそれにカインが目を細め、思考を巡らせる。
ぱりっ、と微かに静電気が走ったような感覚。
「見た感じ、動力源か、それに類するパーツっぽいな」
「ほほー、やはり機導師がいると頼りになるね。回収回収」
幸いにも運びやすいようタイヤ付きのそれに載せられていたため、嬉々として小夏はそれをトラックへと積み込んでいく。
その間奥はどんなものかと覗いてみたカインは、その光景に思わず感嘆の声が漏れた。
(見てるだけで面白ぇぞ……やっべぇ、わくわくしてきた)
おそらくここはユニットの内部機関を整備・換装する場所なのだろう。
そこかしこに並べられたむき出しの金属質、複雑な機構群は、彼の機導師としての感性を刺激するに十分なものだった。
「奥はどんな感じになってた?」
気づけばトラックへの積み込みを終えた小夏が戻ってきており、少し冷静さを取り戻す。
「すごいぜ、めちゃくちゃ面白そうだ」
そう言って奥へと促すカインに、小夏もわくわくして踏み込み、その金属の森に驚きの声を漏らした。
「何か特殊な弾とかないかなー」
「内蔵系のならこっちにありそうだよな――お?」
走るノイズが通信を知らせる。
「カインだ、なんかあったか?」
『こちらエラです、――在地は第三格――庫で出撃形跡の――エース機らしき――確保に向かっています』
若干音が途切れるあたり、距離的に通信圏内ギリギリなのかも知れない。
「こっちは動力源っぽいものを見つけたよ、あと今は内部機関の換装工場みたいなところにいる。もしかしてそっち、装甲系ある?」
『装甲ですか、それでした――ちらのほうにあります』
「わかりました、こちらの方の探索が終わったらそっちに向かいます」
小夏の探索候補である軽装甲や重装甲、それらはどうやら違う場所にあったらしい。
入れ違いになったのは惜しいが、時間はまだ十分にあるはずだ。
『了解――しました。通信終――了』
◆おかえりなさい
出発してからだいぶ長い時間探索できたこともあり、持ち帰られたパーツは過積載となって今にもこぼれそうなぐらいに潤沢であった。
崩れないうちに降ろしてそれぞれが速やかにラボの方へと運ばれていく
「みんなはどんなのが見つかったー?」
「参考になるかとおもって、設計資料をあさってきた。あとは見つけたと言うより試作だな」
そう言って資料類――紙束やタブレットを技師に渡していたエラが答える。
「ブースターとかレーダーとか、拡張性を補ってくれそうなものを中心に選んでみたよ。色んな所で活躍して欲しいからね」
「私は防御用のものを中心に選んでみた」
「自爆装置だ!」
メルやジーナが返す言葉に続いて高らかにルベーノが宣言したことで、その場に居た全員が凍りついた。
ソサエティの技師に至っては「え? そんな危険物混ざってんの?」という顔をしたものまでいる。
「それ単体で自爆する代物ではなさそうだから大丈夫だろう、見立てはグリムバルドだが」
機導師が見立てているのならだいじょうぶだろうと緊張が緩んだところに、ミモザが入ってきた。
「みんなおかえりなさ――うわ、すごい量……」
これから回収品の目録を作成する予定であったためか、その量にミモザがちょっとひるむ。
「見てください! 活きのいい? のが、沢山獲れましたよ!」
「大漁わーい!」
笑顔とテンションは大事、といった具合でハイタッチをかわす二人。
完成はまだ少し先になるだろうが、頼もしい仲間が増えることだろう。
「そういえば、ミモザは受付業務これが初めてだったっけか。どうだったかな?」
ラボへと運ばれていくパーツ類を見送りながら、そう聞く。
「エリクシアおねーちゃんが、意外とすごいってことがわかりました……」
今まではどういう評価だったんだろうか……いや、なんとなくわかる気もするが。
目録づくりのために職員に呼ばれて駆けていくミモザを見送りながら、一仕事終えた開放感と、その結実を楽しみにするのだった。
依頼結果
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質問卓! アシェ-ル(ka2983) 人間(クリムゾンウェスト)|16才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2018/04/15 14:18:14 |
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相談卓です! アシェ-ル(ka2983) 人間(クリムゾンウェスト)|16才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2018/04/19 01:21:55 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/04/19 01:14:52 |