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【哀像】

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ハンター諸君の働きにより、無事巨神アルゴスは討伐された!
まだいくつかの懸念が残されてはいるが、被害を最小限に抑えた勝利を今は祝そう。
諸君らがいなければこの勝利は無かった。心から礼を言う。ありがとう。
きっとこれが、君たちでなければ辿り着けなかった結末だよ。

帝国皇帝:ヴィルヘルミナ・ウランゲル(kz0021

更新情報(6月1日更新)

6月1日、【哀像】グランドシナリオ「赤き血潮の啼泣」のリプレイが公開されました!
襲い掛かる巨大な剣機アルゴスとの激闘をぜひご確認ください!
グランドシナリオのリプレイと共に、特設ページも更新!
剣機、そしてペレットにまつわる物語の結末は、意外な終息を迎える。
ストーリーノベルと新たなる今回の事件をまとめた解説もお見逃しなく!
▼グランドシナリオ「赤き血潮の啼泣」▼

 
 

エピローグノベル「愛と憎しみの先へ」(6月1日更新)

●閉ざされた扉、開かれる道 前編

ゼナイド

オズワルド

ヴィルヘルミナ・ウランゲル

イズン・コスロヴァ

 監獄都市、アネリブーベ。
 その石の回廊を歩く人影が二つ。
「なーんでわたくしがこんな雑用を……」
 柔らかそうな頬を膨らましているのはここの最高責任者である第十師団師団長のゼナイド(kz0052)だ。
「このわたくし自らがあなたと対面しているという事が奇跡に近いことなんですのよ。この采配を命じたヴィルヘルミナ陛下に心から感謝なさい」
「………………」
 禿頭の男からは何の返答も無い。
 ゼナイドは男の首輪から繋がる鎖を引きながら、大きな溜息と共に無言のまま足音と衣擦れと、時折鎖の擦れる音だけを響かせて歩いて行く。
 回廊を抜けると、光が視界に満ちる。
 明るさに目が慣れた頃、目の前には大きく見るからに頑丈で荘厳な扉があることに気付く。
「……これは……」
 男の顔色はあまり良くない。
 痩けた頬に窪んだ眼窩はこの男が食事を拒否していることだけが原因では無いをゼナイドは知っている。
「あなた、わたくしの話しをちゃんと聞いていなかったわね? もう一度だけ問います」
 ビキニアーマーから覗く豊満な肉体を揺らし、ゼナイドが冷ややかに男を見下す。
「『あなた、犬はお好き?』 まぁ嫌いでもわたくしはいっこーに構わないんですけれど」

「……よくもまぁ、こんな案を思いついたもんだ」
 帝国軍第一師団長のオズワルド(kz0027)が出航手続きの書類を人差し指の爪で叩くようにして、深く身体を椅子に預けた。
「これに関しては方々に出張させられてたイズンだからこそ気づけた、としか言いようが無いな」
 帝国皇帝ヴィルヘルミナ・ウランゲル(kz0021)が苦く笑い、執務室の窓から外を窺う。
「……歪虚と戦い続ける国としては“例外”を作る事は得策では無い。だが、二度とこの国の土を踏まず、この国ではないところへ歪虚が行くのを“見逃す”事は可能だ。さらに現地の監視という名目でマスケンヴァルの兵士が行くのであれば、そこに文句を言う者も少ない」
 歪虚襲撃の事後処理のどさくさに紛れさせての極秘出航であり、恐らく剣機側もそしてヴルツァライヒ側としても気づけない、もしくは気づいたところで手の出しようがないような方策。
 それをイズン・コスロヴァ(kz0144)が『アルゴス迎撃作戦』の原案と共に持って直談判に来たのは、剣機博士の研究所から帰ってきたその当日の事だった。
「しかし、こんな飛び道具のような術はもう二度と使えないな……さて、こんな『正義』もまたありだろうか?」
 ヴィルヘルミナが小さく笑い問いかけると、机の上のサンデルマンがヴィルヘルミナに顔を向けたあとこくりと頷いたのだった。

●ひどいなぞとき
「オーラーイ、オーラーイ、ストーップ!」
「その辺崩れやすくなってるから気を付けろ!」

ナサニエル・カロッサ

高瀬 未悠

紅薔薇

水流崎トミヲ

ユリアン

「この木材は……」
 激戦から一夜明けたベルドルードの軍港、こと倉庫街では復興に向けた人々の活気ある声が響く。
 それを馬車から見るとも無しに見つめていると、馬車は第四師団詰所の車寄に付いたところで緩やかに止まった。
「あ、ナサニエル院長、お疲れ様です!」
「あぁはい、そちらもご苦労様?」
 すれ違う一般兵達にひらりと手を振り、頷き返しながら、ナサニエル・カロッサ(kz0028)は会議室の扉を開けた。

 中で待っていた高瀬 未悠(ka3199)がぱっと顔を上げ、ナサニエルの顔を見て少し目から力を落とした。
「ヴィルヘルミナ陛下じゃなくてごめんねぇ。あの人、あぁ見えて忙しいですからね」
「あ、いえ、そうでは……」
 未悠が慌てて手を振って、傷の痛みに顔をしかめた。
「大丈夫かの?」
 それを見た紅薔薇(ka4766)がそっと未悠に声をかけるが、その紅薔薇もまた満身創痍だ。
 一方で、何か声をかけた方がいいのかと水流崎トミヲ(ka4852が落ち着き無く周囲を見て、唇を震わせるが結局言葉にならず沈黙し、その横ではユリアン(ka1664)がただ静かにナサニエルを見つめている。
「まずは、あの巨神アルゴスに対して勝利おめでとう? きみたちの活躍のお陰でこのベルドルードだけじゃない、帝国の本土そのものが護られたと行っていいんじゃないですかねぇ?」
 のんびりと話すそのナサニエルの言葉に静かに片眉をつり上げたのは紅薔薇だ。
「……なんじゃ、なんぞ含みのある言い方じゃな」
「いやいやそんな。事実、きみたちハンター達の働きがなければ、とても軍だけでは被害を最小限に抑えることも出来ませんでしたでしょうし?。きみたちが護ってくれたお陰でペレットも無事です」
 “ペレット”という名前に反応を示したのはトミヲとユリアンだ。
「あの、彼女は……ペレットは今?」
 トミヲが恐る恐るという風に問うと、ナサニエルはにこやかに頷いて「大丈夫ですよぉ」と答えた。
「現在隔離して投獄中です」
 投獄、という言葉にトミヲより先にユリアンが口を開きかけ、それをナサニエルは手のひら一つで制した。
「一応、歪虚ですが人型ですし、なにぶんあんな格好であんな人の同情を引くような容姿をしていますからねぇ。“絆された”わけじゃぁないんですが……なんて言うんですかね、ばっさり殺す、という手段も取れないんですよ」
 何より理由はどうであれ『ハンターが護った』という事実がある。
 その事実がある以上、おいそれと簡単にはペレットを処刑できない。というのが軍の出した答えだ。
「まぁ、そっちの歪虚の話はまたあとでするとして。まずは巨神アルゴスの話をしましょう。えぇと、ツル……なんでしたっけ?」
「……水流崎トミヲです」
「あぁ、ではトミヲ。きみ確かとても面白いことに気付いて報告していましたよね」
「え……?」
「“ラグ”があるとか、一度命令を出したらあとは勝手に動く、とか」
「え、あ、はい」
「その報告を聞いて僕はもうね、本当に面白いなぁって! ねぇ、きみ」
 顔を向けられて、ユリアンは少し引き気味に「はい」と答える。
「きみは見つけられましたか? アルゴスだったあの液状スライムから命令の発信器のような物を?」
「……俺が見たのは、あの血水晶と同じ見た目のものだけです」
「そうでしょう、そうでしょう!」
 フフフ、と笑いながらナサニエルは正面に設置されたボードに書き付ける。
 大きな人型には胴部分に『アルゴス』と明記し、周囲にあの戦場にいた歪虚の図を書き込む。
「恐らく、アルゴスに意志が有ったか無かったかで言えば、有ったと思われます。ですが、アレには“脳”がない。脳の働きをする部分が無ければ、ほとんどの歪虚は“最初に定められたパターン通りの動きしかできない”というのが通説です」
「……そういえば生命体の形を保った歪虚はそのほとんどが自律した行動を取れますね……」
 未悠が今まで戦ってきた歪虚達を思い出して呟く。
 ……中には“人形に宿った歪虚”など『憑依型』と言われるタイプも存在するがどちらにせよ高位の歪虚は皆自律行動が取れる。
「以前ペレットが関わったと思わしき報告書は再度確認しましたが、あのスライム自体には知性がほとんどありません。今錬魔院で“飼っている”物に関しても知性のかけらは見られない」
 芸の一つも覚えません、とナサニエルは両肩を竦めて嘆いて見せる。
「ここからは私の推論ですが、恐らくアルゴスの“脳”となる予定だったのがペレットだったのでしょう」
 ただ、ペレットそのものは歪虚としては『弱すぎる』。
 アリ地獄のように、自分の元へ堕ちてくる人を待ち構え、寄生して周囲を破滅させることは出来ても、自ら獲物を狩りに行く事は出来ず、何より本人にその気が無い。
「なので、“脳”の働きだけが欲しかったんですよ。そこに人格……歪虚なのに人格はおかしいですね。性格としておきますか、それは要らない。弱体化させ、その心身を吸収して“脳”を取り込むことであのアルゴスは完成体とする予定だった、と見ています」
「ふむ……? 良くわからんが、その口ぶりからするとそれを今回阻止出来たのでめでたしめでたし……という訳では無いのか」
 紅薔薇が鋭く指摘すれば、「ご明察です」と嬉しそうにナサニエルが頷く。
「未完成だったアルゴスは、ただただ本能的に“脳”となるペレットを求めました。ですが、ここで問題です。確か、きみはあの島の研究所にも居たね?」
 問われ、ユリアンは頷く。
「あそこで剣機博士は“どんな剣機を作る”と言った?」
 ユリアンはその問いかけに首を捻りながら記憶を手繰る。
「『生まれたときから歪虚である“最強の剣機を作る”』……?」
「……そうか!」
 気付いたトミヲが声を上げ、ボードへと歩み寄る。
「僕は、鴉や他の剣機からの情報をアルゴスが受けて、アルゴスが命令を出していると思っていたんだ」
 でも、その情報を受けて、情報の取捨選択をする“脳”がアルゴスには無かったのだとしたら。
 ユリアンが見たのは“血水晶と同じ物”だけだ。
 トミヲが歪虚達から線を延ばす、その先。
 おおきな“?”を円で囲み、全ての歪虚と結んだ。
「“最強の剣機”は他にいて、そいつが命令を出していたんだ……!」
「そんな……!」
 未悠が愕然とボードを見つめ、ナサニエルを見た。
「そもそもだって、ねぇ? “鎧を着たスライム”なんて『剣機』じゃないでしょう?」
 そう嗤うナサニエルを、4人はただ呆然と見つめることしか出来なかった。
「あぁ、それと。ペレットについて、ハンターの皆さんにはお話しておきましょう」
 実は……と話し出したその内容もまた、4人の想像の範疇を超えた“処分”だった。

●閉ざされた扉、開かれた道 後編
 イニシャライザーに護られた船は穏やかに海域を越える。
 最短距離を突き進み、20時間あまりで船は目的の海岸へと辿り着いた。
 イズンと2名を降ろすと船は“予定通り”リゼリオを目指して走り出す。
 そこにはすでに、青い布を身体に纏った人影が待っていた。
 早朝にも関わらずすでに太陽は大地を熱消毒するように燃え上がり、砂の地表はぐんぐんと温度を上げてきている。
「イズン殿。このたびは長旅ご苦労であった」
「いえ、ケン王自らにお出迎えいただき恐縮です」
 青い布の下では長い鼻とろうそく耳が隠れている。――彼らは南方コボルドと呼ばれる亜人だ。
「……で、その者達が、例の?」
「えぇ。聖導士のアダムと、歪虚のペレットです」
 現れた初老の男は痩せた首に大きな鉄製の首輪を身につけている。
 この男に抱きかかえられている白い少女は言われなければ歪虚とは思えない程に衰弱しており、ケン達からはその表情を窺い知ることは出来ない。
「今後はこの男が、転移門を越え日報を届ける役目を負います。ペレットに関しては“あなた達に害を与えることは出来ない”ので安心して接して下さい」
「驚いたな……コボルドが人語を操るのか」
 イズンと会話をするケンを見てアダムが言葉を零す。
「アダム。彼が青の一族の王であるケンです。全てのコボルドが人語を操れる訳ではありませんが、こちら言う事は通じます」
「よろしくお願いする」
 黒く濡れたような瞳を向けるケンのシャープなその顔立ちを見て、アダムはリアルブルーの冥界の神を思い出し、静かに目を伏せた。
「……私の魂を裁くか」
「……?」
「いや、独り言だ」
 今日はこの後は『始まりのオアシス・アウローラ』にて休み、陽が沈んでからのラクダを使った移動になる。

 軍としては取り調べも終わり、これ以上の情報が出てこないアダムの処遇について考えあぐねていた。
 さらにアダムは逮捕後より、自分が研究していた『体内マテリアルの循環不全による奇形細胞増殖症』という病を発症しており、未だ適切な治療法の無いこの病は発症部位にもよるが、本人曰くもって1年。
 さらにここにきてペレットもハンターが保護してきたとなれば、そう易々と処刑出来たものではない。
 かといってペレットもまた血を吸わなければこのまま緩やかに死ぬ事は明白だった。
「捕らわれたまま生きつづけますか? それとも、環境が良いとは言えませんが、二人でその日までを生きますか?」
 イズンの言葉に、二人が選んだのは南方大陸に降りることだった。

「礼は言わぬ」
「こちらとしても望んでいません」
 別れ際、そう交わした二人の間にペレットが白い顔を上げた。
「それでも、私はお礼を言うわ、帝国のヒト」
 血の気の無い白磁のような冷たい手がイズンに触れた。
「私、必要とされたかった。ここでなら、必要とされたまま、死ねるのね」
 その冷たさは、この灼熱の砂漠では異質すぎて、思わずイズンの肌に鳥肌が立つ。
「ありがとう、さようなら」
 その言葉にイズンは静かに頭を下げることで応え、転移門を潜ってベルドルードへと戻った。



●ひどいなぞとき 別解
 霧の孤島と言われた島がある。
 負のマテリアルで作為的に作り出した霧と幾種類もの剣機に護らせていた剣機のための研究所だ。
 巨神アルゴスが起き上がり、ペレットを追って出て行った翌日。
 この島に降り立つ黒い影があった。
「クックック……いや、派手に散らかしてくれた物である」

ヴォール

 フードが潮風に煽られ脱げると出てきたのはエルフ特有の耳。
 銀の髪が揺れて顔を打ち、邪魔くさくなって左手で掻き上げると見える瞳は海の青。
 この歪虚の名をヴォール(kz0124) と言った。
「まったく、剣機の研究は貴様だけの物では無いと常々言い聞かせてきたというのに。何だ、リンドヴルム以外はほぼ全滅なのである」
 研究所そのものもアルゴスによって踏みつぶされ入口は見る影も無い。
 だが、ヴォールは“裏口”から中へと侵入することに成功していた。
 口の中に道中で捕まえたタコの足を放り込む。
「……むぐむぐ……むっ!? 吸盤が……上顎に、くっついて……!」
 ……何やら一人でじたばたしていたが、どうやらたこの足の方がヴォールの負のマテリアルに負けたらしい。
 咀嚼して嚥下すると、ふぅと息を吐いた。
「ふっ。我を驚かせるとは……流石は海の悪魔と呼ばれるだけあるのである……!」
 気を取り直して、ヴォールはその右手に抱えている荷物に視線を移す。
「クックック……コレさえあれば我の研究に困ることは無いのである」
 大きな革の鞄に入れたそれを、ヴォールは大事そうに撫でると指笛を吹いた。
 一際大きなリンドヴルムがヴォールを背に乗せると大きく羽ばたいて飛んで行く。
「この借りはいつか返すぞ、ハンター諸君!」
 リンドヴルムの風圧に負けない高笑いを響かせながら、ヴォールは自分の棲家へと帰っていく。

 その一部始終を見つめていた人魚は、自分の見たものそのままを、後日会った帝国のヒトに報告したのだった。

(執筆:葉槻
(監修:神宮寺飛鳥
(文責:フロンティアワークス)

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関連NPC

イズン・コスロヴァ(kz0144
帝国軍第六師団、ショーフェルラッドバッガー(通称SRB)の副師団長。
口調は丁寧だが、漢前な性格で座右の銘は『今日出来る事を明日に延ばすな』『明日やろうはバカヤロウ』。
  • 帝国軍第六師団・副師団長
イラスト:紫苑西都
ナサニエル・カロッサ(kz0028
帝国技術研究機関、「ワルプルギス錬魔院」院長。六代目「ラプンツェル」。
あらゆるジャンルの術に精通する天才だが、禁忌なき知識欲の持ち主で言動には問題点が多い。
革命時に先代が死亡し、院長の座を譲り受けた。
  • ワルプルギス錬魔院院長
イラスト:咲嶋らく
                
ブリジッタ・ビットマン(kz0119
ワルプルギス錬魔院所属。
機動兵器開発室所属、魔導アーマー部門所属(この部門のリーダーではない)。
同盟出身の難民・孤児で錬金術士組合に保護された後、自分も兵器が作りたいと言って家出し今に到る。
  • 魔導アーマー開発者
イラスト:丸美甘
ユーディト・グナイゼナウ(kz0084
帝国第四師団『クロイゼルング』の師団長。
師団都市は帝国最南東の港町ベルトルードであり、同盟との外交や交易、海賊への対処や海軍の増強などを担当している。
  • 帝国軍第四師団長
イラスト:早川 忍