ゲスト
(ka0000)
【界冥】名古屋クラスタ殲滅戦 「名古屋クラスタ内部突入」リプレイ


作戦2:名古屋クラスタ内部突入 リプレイ
- 鵤(ka3319)
- 大伴 鈴太郎(ka6016)
- 椿姫・T・ノーチェ(ka1225)
- セレン・コウヅキ(ka0153)
- シェリル・マイヤーズ(ka0509)
- 浅黄 小夜(ka3062)
- 神代 誠一(ka2086)
- ジャック・J・グリーヴ(ka1305)
- ヘクトル(R7エクスシア)(ka1305unit002)
- 神楽(ka2032)
- アルマ・A・エインズワース(ka4901)
- Uisca Amhran(ka0754)
- クフィン(イェジド)(ka0754unit001)
- 瀬織 怜皇(ka0684)
- 藤堂研司(ka0569)
- パリス(魔導型デュミナス)(ka0569unit002)
- 巽 宗一郎(ka3853)
- 深那・E=ヘクセ(ka6006)
- リュミア・ルクス(ka5783)
- 柊 恭也(ka0711)
- クローディオ・シャール(ka0030)
- ルナリリル・フェルフューズ(ka4108)
- パピルサグX(魔導型デュミナス)(ka4108unit001)
- クィーロ・ヴェリル(ka4122)
- 門垣 源一郎(ka6320)
- カール・フォルシアン(ka3702)
- 白夜(魔導型デュミナス)(ka3702unit001)
- 天王寺茜(ka4080)
●戦いの幕開け
砲撃が繰り出され、名古屋クラスタの侵入経路が開いた。
撃ち砕かれた壁から突入すると、内部は巨大な生物のようにも見えた。
クラスタは付近の建造物を呑み込み、同化しているようにも思えた。
……だが、すべてがVOIDによって呑み込まれた訳ではない。
完全なる存在になる前に、ハンターたちが転移してきたのだ!
「ほんじゃ、たのまー。出入り口は確保だねぇ」
鵤(ka3319)はI・G…刻令ゴーレム「Gnome」に命じて、自身は法輪「精霊馬」に騎乗してクラスタ内部へと侵入していくハンターたちを見守っていた。
I・Gは鵤の命令通り、クラスタの出入り口に立ち、チェーンアンカーを振り回していた。時折、小型狂気が迫ってくるが、I・Gは決められた通りに、ひたすらチェーンアンカーを振るだけであった。
鵤の狙いは進入路の確保だ。I・Gを配置しておくことで、鵤は他のハンターたちとも同行できるのだ。
「さてっと、おっさんは適当にやりますかねぇ。適当に」
全てのハンターを見送った後、鵤は最後尾から法輪「精霊馬」を走らせ、呑気に鼻歌を唄っていた。
先行偵察として、大伴 鈴太郎(ka6016)が試作魔導バイク「ナグルファル」を駆り、クラスタ内部の中心地を目指して走り抜ける。
「コイツを放っといたら、日本が……オレ達の国が……だから、今は帰る場所を守る為にハラ括るっきゃねぇ!」
本当は一目でも良いから父と母に会いたい……。
その想いを胸に秘め、鈴太郎は勇ましくバイクで突き進んでいく。
椿姫・T・ノーチェ(ka1225)は影の女王(スカアハ)と名付けたR7エクスシアに騎乗し、壁や地面から湧いて出てくる人型の狂気をCAMソード「ディフェンダー」で斬り払っていく。
「好き勝手にはさせないと、何度も言っているでしょう?」
「助かるぜ。オレは偵察に専念させてもらおっかな」
鈴太郎が礼を言うと、スカアハを操縦していた椿姫がトランシーバーで応じる。
『私は先行しながら露払いしていきます。仲間たちも後から来ますから、無茶しないでくださいね』
「おっし、了解だぜ。仲間がいるなら心強いからな」
喝を入れる鈴太郎。構えを取り『青龍翔咬波』を放出し、中心部までの道を切り開いていく。
だが、そう簡単に目的地までは辿り着けなかった。
セレン・コウヅキ(ka0153)は魔導型デュミナスを操縦し、援護に入った。
「まるで化け物の腹の中ですね……丸ごと燃やしたくなります」
とは言え、セレンは味方を守るため、魔導型デュミナスの マシンガン「コンステラ」で浮遊している小型狂気を撃ち落としていく。
シェリル・マイヤーズ(ka0509)は「リリ」と呼ぶリーリーに騎乗し、先行部隊として参戦していた。
時折、リリを宥めながら、シェリルはリーリーを走らせ、鈴太郎の後を追っていた。
「リリ……私も一緒に…いる……大丈夫…」
リーリーはダッシュすると、鈴太郎の乗るバイクに追いつき、並ぶように走っていた。
「LH044の時と似てる……けど、ここは名古屋……事前の地図は少し参考になるけど……クラスタに呑み込まれている箇所もあるから……気を付けて」
シェリルは手裏剣「八握剣」を構え『広角投射』で攻撃……範囲内に浮遊している小型狂気を消滅させていった。
「ここから先は……まとめて、やりましょか」
リーリーに騎乗した浅黄 小夜(ka3062)は、眼前に立ちはだかる中型狂気に狙いを定めて、『ファイアーボール』を放った。敵に命中し、周囲に浮かんでいた小型狂気も巻き込み、中型狂気が塵と化して消え去っていく。
「帰ってきた、とは、言えへんけど……護る力が、今はあるから」
と、呟く小夜。
日本に来たとは言っても、今回の目的は名古屋クラスタを撃破すること。
そのためにも、小夜は中心部へと向かう仲間たちの戦力温存のため、先行部隊に参加して、道中に湧き出す狂気VOID集団を露払いしていくことにしたのだ。
先行し道を切り開いていくことも、この作戦に取っては重要な任務だった。
椿姫のR7エクスシアにはイニシャライズフィールドがあり、狂気の影響を遮断する効果があったが、妨害効果に対しても発揮していたため、仲間たちともトランシーバーで連絡が取れた。
随時、イニシャライズフィールドを展開していたこともあり、事前に精神安定剤を使う手間も無かった。
椿姫が相手先として選んだのは、神代 誠一(ka2086)だ。恋人でもあり、椿姫が明確に相手を選択していたことが、より効果を発揮していたこともある。
『神代さん、クラスタの中心部……核を発見しました。突入部隊の流れに付いて行けば、核まで辿り着けます』
『こちら神代、了解です。ジャックさんと同行して、目的地に向かいます。椿姫さんたちも気を付けて』
誠一はエグゼクターにカスタムしたR7エクスシアに騎乗し、核へと続く経路を突き進む。
『セーイチ、俺様がいる限り負けはないっ。クラスタのデクノボーめ、覚悟しとけっ!』
ジャック・J・グリーヴ(ka1305)は自信に漲っていた。ジャックの愛機R7エクスシア「ヘクトル」は、さながら黄金騎士のような出で立ちで、誠一のR7エクスシアと並行するように移動していく。
●突入、クラスタ中心部を目指せ
「あー、ヤバいっすね」
神楽(ka2032)は溜息をついた。
蛍光塗料を用意して、クラスタ内部の壁に目印を塗るつもりでいたが、クラスタに呑み込まれた建造物は、体液が染みついたいたのか、塗料やペンキを塗っても、すぐに消えてしまうのだ。
「考えてみれば、巨大な内臓の中にいるようなものっす。壁に塗料を塗っても体液が流れて目印は消えるっすよね……」
そう言いつつも、神楽は中心部へと突入していくハンターたちを援護するため、気を取り直して、魔導バイク「ゲイル」を走らせた。
「わふっ、前方から小型狂気が接近してきますー。気を付けて」
アルマ・A・エインズワース(ka4901)は戦力を温存するため、魔導バイク「アレイオーン」を走らせ、回避に専念していた。
アルマに同行していたユグディラのリゲルは、周囲に隠れる場所がなかったのか、『あぶないにゃ!』のユグディラ式サバイバル術を使い、死んだフリをして、敵の攻撃から逃れていた。
「なんで、こんな所にユグディラが倒れてるっす?」
事情を知らない神楽は不思議に思いつつも、中型狂気のレーザーを素早く回避。
「とにかく、経路を維持するのが先決っす」
神楽は体勢を整え、戦槍「ボロフグイ」にて『クラッシュブロウ』を振り抜き、中型狂気一体を消滅させた。
「うわー、ウジャウジャ出てくるっすねー」
中心部へと向かえば向かうほど、壁や地面から狂気VOIDが出現する頻度が増してきた。
「全てのVOIDを倒す必要はありません。邪魔な敵だけ倒して、突入していきましょう」
露払いを優先したUisca Amhran(ka0754)は、イェジドのクフィンに騎乗し、【龍閃】白龍閃光散華を繰り出した。
光の波動が周囲に広がり、衝撃とダメージを与えられた狂気VOIDの群れは粉々になり、消え去っていった。
瀬織 怜皇(ka0684)はR7エクスシアを操縦し、スキルトレース【Lv10】による『防御障壁』を発動させ、Uiscaに施した。
『イスカ。大伴さんからトランシーバーで連絡が入った。このルートを真っ直ぐ進めば、核へ辿り着ける』
怜皇が騎乗するR7エクスシアの右腕が動き、前方を指さしていた。
その合図で、Uiscaには分かった。
「この先を進めば、核まで辿り着ける……皆さん、もうすぐ目的地です。破壊部隊にいる仲間たちのためにも、経路にいる狂気VOIDを倒していきましょう」
Uiscaが、周囲にいるハンターたちに呼びかけた。
合流した須磨井 礼二(ka4575)は、R7エクスシアに乗り、核の破壊を目指していたが、道中で遭遇した狂気VOIDを見つけると、躊躇わずにマシンガン「コンステラ」で人型の狂気VOIDを撃ち抜く。
「……狂気が、人の姿に似るとは、洒落にしては虫酸が走るな」
礼二はそう呟くと、中心部へと続くルートを突き進んでいく。
「おのれっ、名古屋を狙うとは笑止千万。建造物を呑み込むとは、マジ許せん。狂気VOIDめっ、邪魔するなら、ぶっ潰す!」
藤堂研司(ka0569)は、クラスタの行為に憤慨し、迷わずに魔導型デュミナスのパリスに乗って、中心部の核を目指していた。
だが、壁や地面から次々と狂気VOIDが現れ、道を塞ごうとしていた。
「だから、邪魔だって言ってるだろ!」
パリスの放つ研司砲は、スキルトレース【Lv5】による『ターゲッティング』で中型狂気の眼を撃ち抜いた。
どうにも、今の研司は尋常ではない。それほど、クラスタの行為が許せないのだろう。
この場は突破部隊に任せ、研司は愛機パリスに騎乗して先へと進んでいった。
「……ほとんど傷が付かないな」
巽 宗一郎(ka3853)は自身が騎乗するR7エクスシアのイニシャライズフィールドのおかけでもあり、狂気の影響は受けなかった。
だが機槍「アテナ」を引き摺り、地面に傷跡を付けようとしたものの、思うような目印になる傷を付けることができなかった。
「……宗一郎、……これ以上、先に進むと……」
深那・E=ヘクセ(ka6006)は『レジスト』を自らにも施していたが、狂気の影響を肌で感じるようになってきた。
「僕たちは、もう少し入口付近まで下がって、退路を確保しよう」
彼女の様子に気付き、宗一郎は深那を連れて後方へと移動した。
「楽になったかな?」
「……ここなら、なんとか」
深那は自身に『キュア』を施すと、煌めきながら顔色も良くなってきた。
「もう、大丈夫」
いつもの笑顔で深那が言うと、宗一郎は安堵した。
●クラスタ、中心部
脈打つ核の周囲に、狂気VOIDが群がっていた。
ここはクラスタの中心部。
「……やはり、この感覚は……堪えられるかどうか……いや、ここは、何が何でも持ちこたえてみせます」
誠一はR7エクスシアの『イニシャライズオーバー』を発動させ、フィールドを周囲に展開し、結界を張り巡らせた。
故郷である日本が、狂気VOIDたちに侵略されている現状。
ここに居れば、否応なしに思い知らされる。……怒り、悲しみ……負の感情を押し殺し、誠一の心は冷えるように冴えていた。こんな時でも冷静に判断できる自分が憎いとさえ、誠一は思っていた。
そんな彼を励ますかのように、ジャックが操縦するヘクトルが『イニシャライズオーバー』を展開させる。
「ここは俺様の知る世界と違ぇ。もしかすっと、助ける理由なんてねぇのかもしんねぇ……いや違ぇだろ、ジャックよ。『俺』が『俺様』である以上、『ジャック様』である以上! 平民共を助けるのに理由なんかいるかよ!」
燃えたぎるジャックの叫びに、誠一は我に返った。
そうだ。クリムゾンウェスト人のハンターたちも、リアルブルーのために来てくれたのだ。
魔導型デュミナスの「カンナさん」に騎乗していたリュミア・ルクス(ka5783)は、コックピックを開くと、フルオープンしたまま、戦闘態勢に入った。
「スキルトレースできないなら、あたしが使えばいいんだよ!」
リュミア自身が魔法を使う場合、デュミナスを移動させることは困難だ。狂気VOIDの集団は、リュミアに狙いを定めてレーザーを放ってきた。とっさに回避するリュミア。移動できないデュミナスは、敵の集中攻撃を受けていた。
「カンナさん、ごめんね。ここは皆が核に攻撃できるようにがんばろう」
デュミナスは敵の攻撃を喰らっていたが、なんとか立ち止っていた。リュミアは攻撃体勢になるまで、とにかくレーザーを回避していた。
「ついに、この時が来た!」
愛機パリスに騎乗した研司が、最初に核へと攻撃をしかけた。
「クリムゾンウェストで鍛え、崑崙で特訓した成果、見せてやるからな!」
スキルトレース【Lv5】による『シャープシューティング』からの『跳弾』で、研司砲のマテリアル弾が発射……狂気VOIDたちを潜り抜け、パリスの放った弾が核へと命中した。
核が轟き、周囲が震撼する。狂気VOIDたちは狂ったように、ハンターたちに肉迫していく。
「みんなの邪魔するから、あたしが相手だよ」
リュミアは開いたコックピットに座り、『グラビティフォール』を解き放った。紫色の光を伴う重力波が、浮遊する小型狂気VOIDの群れを圧縮し、行動阻害したかと思うと、凄まじいダメージにより、一瞬にして消滅していった。
「天井からも、狂気VOIDが湧いてきてるぜ」
魔導型ドミニオンの安綱に騎乗しているのは、柊 恭也(ka0711)。
「優先して狙うのは、中型狂気である歪虚CAMだ。今のところ、狂気感染の影響はないようだが、面倒なことになる前に倒すぜ」
仲間の機体がイニシャライズオーバーを使い、安綱も効果範囲内にいたこともあり、狂気の影響に打ち勝つことができた。
安綱は恭也の操縦通りに斬機刀「新月」で歪虚CAMを斬りつけ、破壊していく。
マジックエンハンサーを展開させたR7エクスシアに騎乗しているのは礼二……Mライフル「イースクラW」を歪虚CAMと呼ばれる中型狂気に向けて『マテリアルライフル』による光線を放った。
攻撃を喰らい、歪虚CAMが爆発して消え去っていく。
「ここは俺たちに任せて、神代さんは核を狙ってくれ」
礼二は、R7エクスシアに装備したMライフル「イースクラW」のカートリッジをリロードさせた。
「須磨井さん、柊さん、助かります」
トランシーバーで連絡を取り合い、誠一はR7エクスシアが装備しているマテリアルライフル「セークールス」の銃口を、クラスタの核へと向けた。
「ジャックさん、良いですか?」
「いつでも良いぜ!」
ジャックは愛機ヘクトルのコックピットから相槌を打つと、スティックを握り、狙いを固定した。
核に目がけて、二つの『マテリアルライフル』の光線が迸る。
誠一とジャックの連携攻撃により、クラスタの核は凄まじいダメージを受けたが、まだ消滅する様子はなかった。周囲にいる狂気VOIDの群れが、リュミアに集中して群がり、刀やアサルトライフルなど、手持ちの武器で攻撃をしかけてきたのだ。
「わっ?!」
リュミアはコックピットを閉めようとしたが、触手が機体内部に忍びより、デュミナスを動かすことができなくなった。弾丸がリュミアの胴部を貫き、刀で全身を切り刻まれてしまった。
「……うっ」
リュミアは力尽きて、地面へと落下……その時、ママチャリの伝道師、クローディオ・シャール(ka0030)が唯一無二の相棒ヴィクトリア(ママチャリ)に乗り、走り寄ってきた。『ファーストエイド』を発動させ、リュミアに『ヒール』の術を使った。
「……間に合ったか。一秒、遅かったら、どうなっていたことか」
クローディオのおかげで、リュミアは命を救われたようだ。
「……どこの……だれかは…分からないけど……ありがとう」
荒い息で、礼を述べるリュミア。
「味方を回復させるのが、私の役目だ。気にしないで良い」
凛々しい声のクローディオ。乗っているのは、ママチャリ……否、ヴィクトリアだ。
「おっ? クローディオか。よくここまで来れたな」
ジャックの呼び掛けに、クローディオがヘクトル(R7エクスシア)を見上げた。
「私はジャックの無事を祈っていた。……気が付いたら、ここに辿り着いた」
「つーかな、のほほーんと話してる場合じゃねぇっての。後ろに下がってろ」
ジャックの言葉に、クローディオは相棒ヴィクトリアを走らせ、後衛へと向った。
「……ジャック、私はここで、戦い振りを見させてもらおう」
「わふ、核がダメージを受ける度に、周囲にいる狂気VOIDが増えてきてますー」
アルマは『青星の魂』を噴射させ、扇状の青い焔が舞う。範囲内にいた小型狂気VOIDたちが焼き尽くされ、消滅していく。
ユグディラのリゲルは『げんきににゃ?れ!』の回復魔法で、傍にいるハンターの傷を回復させていた。
核破壊班として参戦していたルナリリル・フェルフューズ(ka4108)は、魔導型デュミナスのパピルサグXをヘクトル機の後ろに配置させ、愛機の『通信拡張』を起動し、退路部隊へと中心部の状況を伝えていた。
『こちらルナリリル、核破壊班はクラスタの核を攻撃中。退路の確保、お願いします』
連絡を受け取ったハンターは、R7エクスシアに騎乗した宗一郎だった。
『こちら巽、現在はクラスタ侵入口付近で待機。退路の確保、了解』
宗一郎は自分の位置をルナリリルに伝えた後、魔導バイク「ユグディラ・キャリアー」に騎乗した深那と協力して、クラスタ侵入口付近に漂っている小型狂気VOIDの群れを引き付けていた。
R7エクスシアがスキルトレース【Lv10】を起動させ、『ソウルトーチ』によって機体が炎のようなオーラを纏う。宗一郎のマテリアルがR7エクスシアと連動しているのだ。
炎のオーラに引き寄せられ、小型狂気VOIDがR7エクスシアに接近してくる。
入口付近に配置されていたI・G…刻令ゴーレム「Gnome」は、鵤の命令通りに延々とチェーンアンカーを振り回していた。浮遊していた小型狂気VOIDがチェーンアンカーに命中して、勝手に消滅していく。
鵤はクラスタ中心部にいて、仲間を援護するため、『陽炎:射』を撒き散らして、周囲の狂気VOIDたちを焼き払っていた。
●タイムリミット
中心部の核が、ハンターたちの攻撃によってダメージを受ける度に、経路の壁や床から狂気VOIDたちが湧くように出現してきた。
セレンは魔導型デュミナスを操縦して、マシンガン「コンステラ」を構え、小型狂気に弾丸が命中すると、消滅していった。
「外壁を破壊しようとすると、狂気VOIDが湧いてきますね」
クラスタの壁は修復すると言うより、次から次へと狂気VOIDをハンターたちに向けて吐き出していた。
イェジドのクフィンがウォークライで周囲の敵を威圧……Uiscaは【清龍】白く猛き龍の浄歌で祈りを捧げ、周囲にいるハンターたちの状態異常さえも解除していく。
怜皇のR7エクスシアは、Uiscaを守るため、マテリアルライフルで中型狂気を撃ち抜いていった。
退路を確保するため、クィーロ・ヴェリル(ka4122)は太刀「宗三左文字」による『攻めの構え』を取り、眼前にいる小型狂気VOIDの群れを『薙ぎ払い』で斬り裂いていく。
「ははは、面白くなってきたな。もっと俺を楽しませてみろ」
クィーロの表情が少しずつ険しくなっていく。狂気の影響か、それとも別の要因か……クィーロは不敵な笑みを浮かべていた。
「はいはーい、おっさん登場ぉー」
鵤が法輪「精霊馬」に乗り、クラスタ中心部から少し離れた場所に到着した。
「身体の不調は、これが効果的ですからー」
そう言いながら、鵤は『機導浄化術・浄癒』を発動させた。
クィーロの状態異常は解除できた。それでも尚、クィーロは戦闘を楽しむかのように中型狂気へと駆けていった。
無謀にも見えるクィーロの攻撃……邪悪な笑いをしながらも、心の底では仲間たちを信じていた。
この矛盾した「クィーロ」という存在は、記憶のない自分への苛立ちなのか、恐怖を超えた故の笑いなのか……好戦的にも思える戦い振りは、どこか哀しげな側面も垣間見えた。
「くたばりやがれっ」
クィーロは『攻めの構え』から中型狂気の頭部を狙って『強打』を繰り出した。敵はダメージを受けたが、崩れることはなく、触手を伸ばしてクィーロの身体を締め付けた。
「くっ」
凄まじい激痛が、クィーロを襲う。背後にいた小型狂気VOIDたちがクィーロに目掛けてレーザー攻撃をしかけてきた。全て命中し、クィーロの全身は傷だらけになり、血に塗れていた。
「……誠一、……椿姫」
呟き、倒れるクィーロ。
と、そこへ、一台のママチャリ、否、相棒ヴィクトリアに乗ったクローディオがやってきた。
「……何故か、他人事とは思えないな」
クローディオは、クィーロに『ヒール』を施すが、彼の傷を完全に癒すことができなかった。
「応急手当はしておこう」
止血の手当てをするクローディオ。
「すまないな……」
クィーロは立ち上がろうとするが、力が入らなかった。
「おまえを一人にしておくことはできない。私も、この場にいよう」
クローディオは、重体になったクィーロを庇うため、留まることにした。
「核が破壊すれば、クラスタ全体も崩壊する。退路、確保だ」
門垣 源一郎(ka6320)が、コマンダーのカスタムを施した魔導型デュミナスの『通信拡張』を起動させ、通信の中継地点の役割を担っていた。そのおかげもあり、クラスタ内部にいたハンターたちは、トランシーバーで連絡を取り合うことができていた。
「……今更、人類の為に戦う羽目になるなどと……いや、これも俺の背負うべき十字架か」
死に場所を探すかのように、源一郎は戦いに赴く。
償い……源一郎は、その答えを求め、未だに心は彷徨っていた。
戦闘は続いていたが、源一郎は全く動じていなかった。
魔導型デュミナスの白夜…ミードナット・ソールに騎乗したカール・フォルシアン(ka3702)は、中心部に近い場所に陣取り、『通信拡張』を使って、誠一と連絡を取った。
「こちらカール、核の破壊と同時に後方へ移動して下さい。その際、僕の機体が目印になるはずです」
『了解です。俺達は核が破壊できたら、すぐに白夜の後を追いかけます』
誠一たちは、クラスタの核を狙って攻撃を続けていた。
シェリルと椿姫たちは、カールから連絡を受け、核の周囲に浮遊している小型狂気VOIDたちを撃ち落としていた。
●崩落、その果てに
「やっろー、ぜってぇ倒すぞ、おらぁっ」
ジャックはR7エクスシア「ヘクトル」のイニシャライズフィールドを展開、クラスタの核を狙い、『マテリアルライフル』を放った。
ほぼ同時に、誠一のR7エクスシアが『マテリアルライフル』で核を狙い撃つ。
クラスタの核は度重なるダメージを受けていたが、まだ消える気配がなかった。
礼二は『伝波増幅』を活性化させ、R7エクスシアのイニシャライズフィールドを発動……トランシーバーで研司に呼びかける。
「藤堂さんの武器なら、クラスタの核にダメージを与えることができる。頼む!!」
「任せとけって!!」
続いて、研司が騎乗した愛機パリスの研司砲が、スキルトレース【Lv5】の発動により『シャープシューティング』で核を狙い、『跳弾』を放った。
核が軋んでいく。ピシ……という音が響いた。
さらに、ルナリリルのパピルサグXが放った試作型スラスターライフルの銃弾が、核に命中した。
止めとばかりに、セレンの魔導型デュミナスが、200mm4連カノン砲を構えて、弾を放った。
「核、破壊、成功」
亀裂が走り、核が激しく揺らめいた。
キィィィィィィィィン……!!
怒涛の攻撃が狙い通りに当たり、核が砕け散る。そして、轟音と共に消滅していく。
「神代さん、皆さん、こちらです」
影の女王、R7エクスシアに騎乗した椿姫が、誠一たちを誘導して、殿を務める。「影の女王」のスキルトレース【Lv10】が起動……『スラッシュエッジ』による一撃を狂気VOIDに繰り出し、敵を消滅させた。
カールの白夜が、スキルトレース【Lv5】を起動させ、退路を阻む狂気VOIDを『機導砲』で撃ち抜いた。
「僕についてきてください」
白夜はアクティブスラスターを発動させ、侵入口へと続く退路を突き進んでいく。
その後を追って、R7エクスシアや魔導型ドミニオンの機体が付いてくる。
パピルサグXは、ハイパーブーストで加速し、白夜に追いついた。
「狂気VOIDたちが、混乱したみたいに動いてるよ」
天王寺茜(ka4080)は狂気の影響でしばらく身動きが取れなかったが、核が破壊されたことにより、正気を取り戻した。
「射線上の人、退避して!」
茜は『伝波増幅』を使い、トランシーバーで源一郎に呼びかけた。
『こちら門垣、白夜デュミナス機と合流次第、退避する』
「了解だよ。それまで、私は中型狂気の相手をしてるから」
通信を切り、魔導アーマー「ヘイムダル」をテールスタビライザーBにて地面に固定させる茜。
「さあ、来なさい」
歪虚CAMと対峙する魔導アーマー「ヘイムダル」は、バイクで通り過ぎるハンターたちを庇うように防御していた。鈴太郎は『チャクラ・ヒール』を自身に使い、試作魔導バイク「ナグルファル」に乗って、駆け抜けいく。
無事に鈴太郎が通り過ぎると、茜の魔導アーマー「ヘイムダル」が、軽量型スペルランチャーから青白いマテリアルの光線を放った。歪虚CAMの胴部に命中し、敵はダメージを受けるが、体勢を整えるとアサルトライフルで攻撃をしかけてきた。紙一重で魔導アーマー「ヘイムダル」は回避に成功。
「あぶなかったー。もう手加減しないから」
パイルバンカー「アグヘロ」の射出口からスペルランチャーが放たれた。歪虚CAMに命中し、爆発すると、その場から敵が消滅していた。
「みんな、急いで」
思わず、茜が叫んだ。
クラスタ全体が徐々に崩壊していく。
退路の天井が、所々で落下……。立ち上がれないクィーロを庇い、クローディオが身を挺して落ちてきた天井を支えていた。
「……彼を……助けなければ」
クローディオは『ピュリフィケーション』をクィーロに施し、状態異常を解除させた。
「……なぜ、ここまでして…」
重体のクィーロは、話すことだけでも精一杯だった。
「私自身にも、よく分からないな。だが、おまえを見ていると、放っておけなかった。それだけだ」
クローディオが、そう答えた間際、歪虚CAMの放ったアサルトライフルの銃弾が、クローディオの身体を貫いた。血が飛び散り、天井に挟まれたまま、クローディオは気を失った。
「?! ……うぉぉぉぉぉぉぉ!!」
クィーロが吠えた。
懸命にクローディオを助け起こそうとするが、思うように身体が動かなかった。
「クィーロ!!」
椿姫が叫ぶ。影の女王(R7エクスシア)がクィーロを抱え、CAMソード「ディフェンダー」で天井を払いのけた。
「クローディオっ!!」
ジャックは仲間を見つけると、ヘクトル(R7エクスシア)の腕を動かし、クローディオとママチャリを回収する。
「無茶しやがって、この野郎がっ!!」
痛々しいクローディオを見て、ジャックは心の中では泣いていたが、気丈に振舞っていた。
「ジャックさん、急ぎましょう。クローディオさんと、クィーロのためにも」
R7エクスシアに乗った誠一が、トランシーバーで呼びかけた。
退路にいるハンターたちを見かけて、愛機パリスに乗った研司が、方位磁石「導きの光」で位置を確認した後、トランシーバーでジャックに話しかけた。
「当然、見捨てねぇ! 決まってるだろ。そのために今は脱出に専念だ」
パリスは、「カンナさん」を背負い、脱出するために持てる限りの力を駆使して移動していた。
「そうだ……俺様は誰一人として、見捨てたりしねぇ!! 行くぜっ!!」
愛機ヘクトルでクローディオとママチャリを抱え、ジャックはコックピットから操縦して、侵入口を目指して駆けていった。
「皆さん、僕の機体を目印にして、付いて来て下さい」
カールが、白夜に装備したソニックフォン・ブラスターで、周囲のハンターたちに脱出するように伝えた。
「白夜機と合流、直ちに脱出する」
源一郎の魔導型デュミナス門垣機もまた殿を務め、退路にいる歪虚CAMを狙って30mmガトリングガンで撃ち抜き、アクティブスラスターを起動させ、侵入口へと目指して、移動していった。
魔導型ドミニオンの安綱は、恭也の指示でアクティブスラスターを発動させて、門垣機の後を追った。
天井が落下してくると、安綱のワークスドリルが炸裂し、道を切り開いていく。
「道を塞ぐ物は、破壊する」
安綱と門垣機が退路を突き進み、幻獣に騎乗したハンターたちが後からついてきていた。
「わふ、クラスタ内部にはまだまだ、狂気VOIDたちが蔓延ってますー」
アルマは魔導バイク「アレイオーン」を駆り、『デルタレイ』で三体の狂気VOIDを消滅させた。
リゲルと言えば、弱者の本能で周囲を警戒しながらアルマに同行していた。
シェリルは、重体のリュミアを抱え、リーリーに騎乗し、脱出するためにダッシュしていく。
本来幻獣は一人乗りだが、特別訓練で二人乗りの適性を得ている。シェリルは傷ついたリュミアを助けたい一心で、リーリーを走らせる。
「……全員で、かえる……アナタの事も、私の事も……諦めない……ッ!!」
リュミアがリーリーから落ちないように、シェリルはロープを使って自分とリュミアを繋ぎ、リーリーの幻獣鞍に固定していた。
「……」
リュミアは無言で痛みに耐えながら、必死にシェリルのリーリーにしがみ付いていた。
「大丈夫です。もうすぐ外へ出ることができます」
イェジドのクフィンに騎乗したUiscaが励ます。狂気VOIDの群れが前方から迫る。とっさにUiscaは【龍閃】白龍閃光散華を唱えて、狂気VOID数体を消滅させた。
「後方は任せてください」
R7エクスシアに騎乗した怜皇が、機体のマジックエンハンサーを展開させ、スキルトレース【Lv10】が起動し、『エレクトリックショック』の電撃が放たれ、歪虚CAMはダメージを受けて麻痺となり行動不能になった。
「このまま先へ進みましょう」
怜皇のR7エクスシアがアクティブスラスターを発動……Uiscaの乗るクフィンに追いついた。
「歪虚CAMは身動きが取れないようですし、今のうちに脱出しましょう」
Uiscaは怜皇の無事を確認すると、相棒のクフィンをクラスタ侵入口へと走らせた。
先を見れば、刻令ゴーレム「Gnome」がチェーンアンカーを振り回し、侵入口を確保していた。
「後ろの敵、足止めしときます」
リーリーに騎乗した小夜は、浮遊しながら後方から迫りくる狂気VOIDに対して、『ブリザード』を放った。凍りついた狂気VOIDたちは氷が砕けるように消滅していく。
「天井に気を付けろ!!」
頭上からの落下物に気付き、礼二のR7エクスシアがMライフル「イースクラW」を構え、非実体の弾丸を発射させ、落ちてきた天井を破壊した。
「おっしゃー、外だ!」
最初に侵入口から姿を現したのは、試作魔導バイク「ナグルファル」に乗った鈴太郎だ。
刻令ゴーレム「Gnome」を目印に、次々とハンターたちが脱出してくる。
最後に脱出したのは、ハイパーブーストを発動させ、残骸や狂気VOIDを振り切った門垣機だった。
「……クラスタが、沈んでいく……」
シャァァァァァァァァ……!
光なのか、それとも何かの前兆なのか……。
クラスタ全体が崩壊……塵となり、消滅していくが、建造物の残骸だけが残っていた。
I・G…刻令ゴーレム「Gnome」は転倒していたが、それでもチェーンアンカーを振り回す動作を繰り返していた。
「おやおや、なんとも律儀なヤツだねぇ」
鵤が、ひょっこりと現れた。
「ほれ、お疲れさんっと」
ようやく、I・G…刻令ゴーレム「Gnome」の動きが止まった。
ハンターたちは全員、クラスタから脱出し、皆が互いに顔を見合わせて、喜び合っていた。
Uiscaの【龍唄】聖地に坐せし白龍の守唄が、周囲を優しく包むように癒していく。
手を取り合う仲間たち。
幻獣に温かい眼差しを向けるハンターたちもいた。
これから、何が始まるのだろう。
新たな、幕開けだった。
砲撃が繰り出され、名古屋クラスタの侵入経路が開いた。
撃ち砕かれた壁から突入すると、内部は巨大な生物のようにも見えた。
クラスタは付近の建造物を呑み込み、同化しているようにも思えた。
……だが、すべてがVOIDによって呑み込まれた訳ではない。
完全なる存在になる前に、ハンターたちが転移してきたのだ!
「ほんじゃ、たのまー。出入り口は確保だねぇ」
鵤(ka3319)はI・G…刻令ゴーレム「Gnome」に命じて、自身は法輪「精霊馬」に騎乗してクラスタ内部へと侵入していくハンターたちを見守っていた。
I・Gは鵤の命令通り、クラスタの出入り口に立ち、チェーンアンカーを振り回していた。時折、小型狂気が迫ってくるが、I・Gは決められた通りに、ひたすらチェーンアンカーを振るだけであった。
鵤の狙いは進入路の確保だ。I・Gを配置しておくことで、鵤は他のハンターたちとも同行できるのだ。
「さてっと、おっさんは適当にやりますかねぇ。適当に」
全てのハンターを見送った後、鵤は最後尾から法輪「精霊馬」を走らせ、呑気に鼻歌を唄っていた。
先行偵察として、大伴 鈴太郎(ka6016)が試作魔導バイク「ナグルファル」を駆り、クラスタ内部の中心地を目指して走り抜ける。
「コイツを放っといたら、日本が……オレ達の国が……だから、今は帰る場所を守る為にハラ括るっきゃねぇ!」
本当は一目でも良いから父と母に会いたい……。
その想いを胸に秘め、鈴太郎は勇ましくバイクで突き進んでいく。
椿姫・T・ノーチェ(ka1225)は影の女王(スカアハ)と名付けたR7エクスシアに騎乗し、壁や地面から湧いて出てくる人型の狂気をCAMソード「ディフェンダー」で斬り払っていく。
「好き勝手にはさせないと、何度も言っているでしょう?」
「助かるぜ。オレは偵察に専念させてもらおっかな」
鈴太郎が礼を言うと、スカアハを操縦していた椿姫がトランシーバーで応じる。
『私は先行しながら露払いしていきます。仲間たちも後から来ますから、無茶しないでくださいね』
「おっし、了解だぜ。仲間がいるなら心強いからな」
喝を入れる鈴太郎。構えを取り『青龍翔咬波』を放出し、中心部までの道を切り開いていく。
だが、そう簡単に目的地までは辿り着けなかった。
セレン・コウヅキ(ka0153)は魔導型デュミナスを操縦し、援護に入った。
「まるで化け物の腹の中ですね……丸ごと燃やしたくなります」
とは言え、セレンは味方を守るため、魔導型デュミナスの マシンガン「コンステラ」で浮遊している小型狂気を撃ち落としていく。
シェリル・マイヤーズ(ka0509)は「リリ」と呼ぶリーリーに騎乗し、先行部隊として参戦していた。
時折、リリを宥めながら、シェリルはリーリーを走らせ、鈴太郎の後を追っていた。
「リリ……私も一緒に…いる……大丈夫…」
リーリーはダッシュすると、鈴太郎の乗るバイクに追いつき、並ぶように走っていた。
「LH044の時と似てる……けど、ここは名古屋……事前の地図は少し参考になるけど……クラスタに呑み込まれている箇所もあるから……気を付けて」
シェリルは手裏剣「八握剣」を構え『広角投射』で攻撃……範囲内に浮遊している小型狂気を消滅させていった。
「ここから先は……まとめて、やりましょか」
リーリーに騎乗した浅黄 小夜(ka3062)は、眼前に立ちはだかる中型狂気に狙いを定めて、『ファイアーボール』を放った。敵に命中し、周囲に浮かんでいた小型狂気も巻き込み、中型狂気が塵と化して消え去っていく。
「帰ってきた、とは、言えへんけど……護る力が、今はあるから」
と、呟く小夜。
日本に来たとは言っても、今回の目的は名古屋クラスタを撃破すること。
そのためにも、小夜は中心部へと向かう仲間たちの戦力温存のため、先行部隊に参加して、道中に湧き出す狂気VOID集団を露払いしていくことにしたのだ。
先行し道を切り開いていくことも、この作戦に取っては重要な任務だった。
椿姫のR7エクスシアにはイニシャライズフィールドがあり、狂気の影響を遮断する効果があったが、妨害効果に対しても発揮していたため、仲間たちともトランシーバーで連絡が取れた。
随時、イニシャライズフィールドを展開していたこともあり、事前に精神安定剤を使う手間も無かった。
椿姫が相手先として選んだのは、神代 誠一(ka2086)だ。恋人でもあり、椿姫が明確に相手を選択していたことが、より効果を発揮していたこともある。
『神代さん、クラスタの中心部……核を発見しました。突入部隊の流れに付いて行けば、核まで辿り着けます』
『こちら神代、了解です。ジャックさんと同行して、目的地に向かいます。椿姫さんたちも気を付けて』
誠一はエグゼクターにカスタムしたR7エクスシアに騎乗し、核へと続く経路を突き進む。
『セーイチ、俺様がいる限り負けはないっ。クラスタのデクノボーめ、覚悟しとけっ!』
ジャック・J・グリーヴ(ka1305)は自信に漲っていた。ジャックの愛機R7エクスシア「ヘクトル」は、さながら黄金騎士のような出で立ちで、誠一のR7エクスシアと並行するように移動していく。
●突入、クラスタ中心部を目指せ
「あー、ヤバいっすね」
神楽(ka2032)は溜息をついた。
蛍光塗料を用意して、クラスタ内部の壁に目印を塗るつもりでいたが、クラスタに呑み込まれた建造物は、体液が染みついたいたのか、塗料やペンキを塗っても、すぐに消えてしまうのだ。
「考えてみれば、巨大な内臓の中にいるようなものっす。壁に塗料を塗っても体液が流れて目印は消えるっすよね……」
そう言いつつも、神楽は中心部へと突入していくハンターたちを援護するため、気を取り直して、魔導バイク「ゲイル」を走らせた。
「わふっ、前方から小型狂気が接近してきますー。気を付けて」
アルマ・A・エインズワース(ka4901)は戦力を温存するため、魔導バイク「アレイオーン」を走らせ、回避に専念していた。
アルマに同行していたユグディラのリゲルは、周囲に隠れる場所がなかったのか、『あぶないにゃ!』のユグディラ式サバイバル術を使い、死んだフリをして、敵の攻撃から逃れていた。
「なんで、こんな所にユグディラが倒れてるっす?」
事情を知らない神楽は不思議に思いつつも、中型狂気のレーザーを素早く回避。
「とにかく、経路を維持するのが先決っす」
神楽は体勢を整え、戦槍「ボロフグイ」にて『クラッシュブロウ』を振り抜き、中型狂気一体を消滅させた。
「うわー、ウジャウジャ出てくるっすねー」
中心部へと向かえば向かうほど、壁や地面から狂気VOIDが出現する頻度が増してきた。
「全てのVOIDを倒す必要はありません。邪魔な敵だけ倒して、突入していきましょう」
露払いを優先したUisca Amhran(ka0754)は、イェジドのクフィンに騎乗し、【龍閃】白龍閃光散華を繰り出した。
光の波動が周囲に広がり、衝撃とダメージを与えられた狂気VOIDの群れは粉々になり、消え去っていった。
瀬織 怜皇(ka0684)はR7エクスシアを操縦し、スキルトレース【Lv10】による『防御障壁』を発動させ、Uiscaに施した。
『イスカ。大伴さんからトランシーバーで連絡が入った。このルートを真っ直ぐ進めば、核へ辿り着ける』
怜皇が騎乗するR7エクスシアの右腕が動き、前方を指さしていた。
その合図で、Uiscaには分かった。
「この先を進めば、核まで辿り着ける……皆さん、もうすぐ目的地です。破壊部隊にいる仲間たちのためにも、経路にいる狂気VOIDを倒していきましょう」
Uiscaが、周囲にいるハンターたちに呼びかけた。
合流した須磨井 礼二(ka4575)は、R7エクスシアに乗り、核の破壊を目指していたが、道中で遭遇した狂気VOIDを見つけると、躊躇わずにマシンガン「コンステラ」で人型の狂気VOIDを撃ち抜く。
「……狂気が、人の姿に似るとは、洒落にしては虫酸が走るな」
礼二はそう呟くと、中心部へと続くルートを突き進んでいく。
「おのれっ、名古屋を狙うとは笑止千万。建造物を呑み込むとは、マジ許せん。狂気VOIDめっ、邪魔するなら、ぶっ潰す!」
藤堂研司(ka0569)は、クラスタの行為に憤慨し、迷わずに魔導型デュミナスのパリスに乗って、中心部の核を目指していた。
だが、壁や地面から次々と狂気VOIDが現れ、道を塞ごうとしていた。
「だから、邪魔だって言ってるだろ!」
パリスの放つ研司砲は、スキルトレース【Lv5】による『ターゲッティング』で中型狂気の眼を撃ち抜いた。
どうにも、今の研司は尋常ではない。それほど、クラスタの行為が許せないのだろう。
この場は突破部隊に任せ、研司は愛機パリスに騎乗して先へと進んでいった。
「……ほとんど傷が付かないな」
巽 宗一郎(ka3853)は自身が騎乗するR7エクスシアのイニシャライズフィールドのおかけでもあり、狂気の影響は受けなかった。
だが機槍「アテナ」を引き摺り、地面に傷跡を付けようとしたものの、思うような目印になる傷を付けることができなかった。
「……宗一郎、……これ以上、先に進むと……」
深那・E=ヘクセ(ka6006)は『レジスト』を自らにも施していたが、狂気の影響を肌で感じるようになってきた。
「僕たちは、もう少し入口付近まで下がって、退路を確保しよう」
彼女の様子に気付き、宗一郎は深那を連れて後方へと移動した。
「楽になったかな?」
「……ここなら、なんとか」
深那は自身に『キュア』を施すと、煌めきながら顔色も良くなってきた。
「もう、大丈夫」
いつもの笑顔で深那が言うと、宗一郎は安堵した。
●クラスタ、中心部
脈打つ核の周囲に、狂気VOIDが群がっていた。
ここはクラスタの中心部。
「……やはり、この感覚は……堪えられるかどうか……いや、ここは、何が何でも持ちこたえてみせます」
誠一はR7エクスシアの『イニシャライズオーバー』を発動させ、フィールドを周囲に展開し、結界を張り巡らせた。
故郷である日本が、狂気VOIDたちに侵略されている現状。
ここに居れば、否応なしに思い知らされる。……怒り、悲しみ……負の感情を押し殺し、誠一の心は冷えるように冴えていた。こんな時でも冷静に判断できる自分が憎いとさえ、誠一は思っていた。
そんな彼を励ますかのように、ジャックが操縦するヘクトルが『イニシャライズオーバー』を展開させる。
「ここは俺様の知る世界と違ぇ。もしかすっと、助ける理由なんてねぇのかもしんねぇ……いや違ぇだろ、ジャックよ。『俺』が『俺様』である以上、『ジャック様』である以上! 平民共を助けるのに理由なんかいるかよ!」
燃えたぎるジャックの叫びに、誠一は我に返った。
そうだ。クリムゾンウェスト人のハンターたちも、リアルブルーのために来てくれたのだ。
魔導型デュミナスの「カンナさん」に騎乗していたリュミア・ルクス(ka5783)は、コックピックを開くと、フルオープンしたまま、戦闘態勢に入った。
「スキルトレースできないなら、あたしが使えばいいんだよ!」
リュミア自身が魔法を使う場合、デュミナスを移動させることは困難だ。狂気VOIDの集団は、リュミアに狙いを定めてレーザーを放ってきた。とっさに回避するリュミア。移動できないデュミナスは、敵の集中攻撃を受けていた。
「カンナさん、ごめんね。ここは皆が核に攻撃できるようにがんばろう」
デュミナスは敵の攻撃を喰らっていたが、なんとか立ち止っていた。リュミアは攻撃体勢になるまで、とにかくレーザーを回避していた。
「ついに、この時が来た!」
愛機パリスに騎乗した研司が、最初に核へと攻撃をしかけた。
「クリムゾンウェストで鍛え、崑崙で特訓した成果、見せてやるからな!」
スキルトレース【Lv5】による『シャープシューティング』からの『跳弾』で、研司砲のマテリアル弾が発射……狂気VOIDたちを潜り抜け、パリスの放った弾が核へと命中した。
核が轟き、周囲が震撼する。狂気VOIDたちは狂ったように、ハンターたちに肉迫していく。
「みんなの邪魔するから、あたしが相手だよ」
リュミアは開いたコックピットに座り、『グラビティフォール』を解き放った。紫色の光を伴う重力波が、浮遊する小型狂気VOIDの群れを圧縮し、行動阻害したかと思うと、凄まじいダメージにより、一瞬にして消滅していった。
「天井からも、狂気VOIDが湧いてきてるぜ」
魔導型ドミニオンの安綱に騎乗しているのは、柊 恭也(ka0711)。
「優先して狙うのは、中型狂気である歪虚CAMだ。今のところ、狂気感染の影響はないようだが、面倒なことになる前に倒すぜ」
仲間の機体がイニシャライズオーバーを使い、安綱も効果範囲内にいたこともあり、狂気の影響に打ち勝つことができた。
安綱は恭也の操縦通りに斬機刀「新月」で歪虚CAMを斬りつけ、破壊していく。
マジックエンハンサーを展開させたR7エクスシアに騎乗しているのは礼二……Mライフル「イースクラW」を歪虚CAMと呼ばれる中型狂気に向けて『マテリアルライフル』による光線を放った。
攻撃を喰らい、歪虚CAMが爆発して消え去っていく。
「ここは俺たちに任せて、神代さんは核を狙ってくれ」
礼二は、R7エクスシアに装備したMライフル「イースクラW」のカートリッジをリロードさせた。
「須磨井さん、柊さん、助かります」
トランシーバーで連絡を取り合い、誠一はR7エクスシアが装備しているマテリアルライフル「セークールス」の銃口を、クラスタの核へと向けた。
「ジャックさん、良いですか?」
「いつでも良いぜ!」
ジャックは愛機ヘクトルのコックピットから相槌を打つと、スティックを握り、狙いを固定した。
核に目がけて、二つの『マテリアルライフル』の光線が迸る。
誠一とジャックの連携攻撃により、クラスタの核は凄まじいダメージを受けたが、まだ消滅する様子はなかった。周囲にいる狂気VOIDの群れが、リュミアに集中して群がり、刀やアサルトライフルなど、手持ちの武器で攻撃をしかけてきたのだ。
「わっ?!」
リュミアはコックピットを閉めようとしたが、触手が機体内部に忍びより、デュミナスを動かすことができなくなった。弾丸がリュミアの胴部を貫き、刀で全身を切り刻まれてしまった。
「……うっ」
リュミアは力尽きて、地面へと落下……その時、ママチャリの伝道師、クローディオ・シャール(ka0030)が唯一無二の相棒ヴィクトリア(ママチャリ)に乗り、走り寄ってきた。『ファーストエイド』を発動させ、リュミアに『ヒール』の術を使った。
「……間に合ったか。一秒、遅かったら、どうなっていたことか」
クローディオのおかげで、リュミアは命を救われたようだ。
「……どこの……だれかは…分からないけど……ありがとう」
荒い息で、礼を述べるリュミア。
「味方を回復させるのが、私の役目だ。気にしないで良い」
凛々しい声のクローディオ。乗っているのは、ママチャリ……否、ヴィクトリアだ。
「おっ? クローディオか。よくここまで来れたな」
ジャックの呼び掛けに、クローディオがヘクトル(R7エクスシア)を見上げた。
「私はジャックの無事を祈っていた。……気が付いたら、ここに辿り着いた」
「つーかな、のほほーんと話してる場合じゃねぇっての。後ろに下がってろ」
ジャックの言葉に、クローディオは相棒ヴィクトリアを走らせ、後衛へと向った。
「……ジャック、私はここで、戦い振りを見させてもらおう」
「わふ、核がダメージを受ける度に、周囲にいる狂気VOIDが増えてきてますー」
アルマは『青星の魂』を噴射させ、扇状の青い焔が舞う。範囲内にいた小型狂気VOIDたちが焼き尽くされ、消滅していく。
ユグディラのリゲルは『げんきににゃ?れ!』の回復魔法で、傍にいるハンターの傷を回復させていた。
核破壊班として参戦していたルナリリル・フェルフューズ(ka4108)は、魔導型デュミナスのパピルサグXをヘクトル機の後ろに配置させ、愛機の『通信拡張』を起動し、退路部隊へと中心部の状況を伝えていた。
『こちらルナリリル、核破壊班はクラスタの核を攻撃中。退路の確保、お願いします』
連絡を受け取ったハンターは、R7エクスシアに騎乗した宗一郎だった。
『こちら巽、現在はクラスタ侵入口付近で待機。退路の確保、了解』
宗一郎は自分の位置をルナリリルに伝えた後、魔導バイク「ユグディラ・キャリアー」に騎乗した深那と協力して、クラスタ侵入口付近に漂っている小型狂気VOIDの群れを引き付けていた。
R7エクスシアがスキルトレース【Lv10】を起動させ、『ソウルトーチ』によって機体が炎のようなオーラを纏う。宗一郎のマテリアルがR7エクスシアと連動しているのだ。
炎のオーラに引き寄せられ、小型狂気VOIDがR7エクスシアに接近してくる。
入口付近に配置されていたI・G…刻令ゴーレム「Gnome」は、鵤の命令通りに延々とチェーンアンカーを振り回していた。浮遊していた小型狂気VOIDがチェーンアンカーに命中して、勝手に消滅していく。
鵤はクラスタ中心部にいて、仲間を援護するため、『陽炎:射』を撒き散らして、周囲の狂気VOIDたちを焼き払っていた。
●タイムリミット
中心部の核が、ハンターたちの攻撃によってダメージを受ける度に、経路の壁や床から狂気VOIDたちが湧くように出現してきた。
セレンは魔導型デュミナスを操縦して、マシンガン「コンステラ」を構え、小型狂気に弾丸が命中すると、消滅していった。
「外壁を破壊しようとすると、狂気VOIDが湧いてきますね」
クラスタの壁は修復すると言うより、次から次へと狂気VOIDをハンターたちに向けて吐き出していた。
イェジドのクフィンがウォークライで周囲の敵を威圧……Uiscaは【清龍】白く猛き龍の浄歌で祈りを捧げ、周囲にいるハンターたちの状態異常さえも解除していく。
怜皇のR7エクスシアは、Uiscaを守るため、マテリアルライフルで中型狂気を撃ち抜いていった。
退路を確保するため、クィーロ・ヴェリル(ka4122)は太刀「宗三左文字」による『攻めの構え』を取り、眼前にいる小型狂気VOIDの群れを『薙ぎ払い』で斬り裂いていく。
「ははは、面白くなってきたな。もっと俺を楽しませてみろ」
クィーロの表情が少しずつ険しくなっていく。狂気の影響か、それとも別の要因か……クィーロは不敵な笑みを浮かべていた。
「はいはーい、おっさん登場ぉー」
鵤が法輪「精霊馬」に乗り、クラスタ中心部から少し離れた場所に到着した。
「身体の不調は、これが効果的ですからー」
そう言いながら、鵤は『機導浄化術・浄癒』を発動させた。
クィーロの状態異常は解除できた。それでも尚、クィーロは戦闘を楽しむかのように中型狂気へと駆けていった。
無謀にも見えるクィーロの攻撃……邪悪な笑いをしながらも、心の底では仲間たちを信じていた。
この矛盾した「クィーロ」という存在は、記憶のない自分への苛立ちなのか、恐怖を超えた故の笑いなのか……好戦的にも思える戦い振りは、どこか哀しげな側面も垣間見えた。
「くたばりやがれっ」
クィーロは『攻めの構え』から中型狂気の頭部を狙って『強打』を繰り出した。敵はダメージを受けたが、崩れることはなく、触手を伸ばしてクィーロの身体を締め付けた。
「くっ」
凄まじい激痛が、クィーロを襲う。背後にいた小型狂気VOIDたちがクィーロに目掛けてレーザー攻撃をしかけてきた。全て命中し、クィーロの全身は傷だらけになり、血に塗れていた。
「……誠一、……椿姫」
呟き、倒れるクィーロ。
と、そこへ、一台のママチャリ、否、相棒ヴィクトリアに乗ったクローディオがやってきた。
「……何故か、他人事とは思えないな」
クローディオは、クィーロに『ヒール』を施すが、彼の傷を完全に癒すことができなかった。
「応急手当はしておこう」
止血の手当てをするクローディオ。
「すまないな……」
クィーロは立ち上がろうとするが、力が入らなかった。
「おまえを一人にしておくことはできない。私も、この場にいよう」
クローディオは、重体になったクィーロを庇うため、留まることにした。
「核が破壊すれば、クラスタ全体も崩壊する。退路、確保だ」
門垣 源一郎(ka6320)が、コマンダーのカスタムを施した魔導型デュミナスの『通信拡張』を起動させ、通信の中継地点の役割を担っていた。そのおかげもあり、クラスタ内部にいたハンターたちは、トランシーバーで連絡を取り合うことができていた。
「……今更、人類の為に戦う羽目になるなどと……いや、これも俺の背負うべき十字架か」
死に場所を探すかのように、源一郎は戦いに赴く。
償い……源一郎は、その答えを求め、未だに心は彷徨っていた。
戦闘は続いていたが、源一郎は全く動じていなかった。
魔導型デュミナスの白夜…ミードナット・ソールに騎乗したカール・フォルシアン(ka3702)は、中心部に近い場所に陣取り、『通信拡張』を使って、誠一と連絡を取った。
「こちらカール、核の破壊と同時に後方へ移動して下さい。その際、僕の機体が目印になるはずです」
『了解です。俺達は核が破壊できたら、すぐに白夜の後を追いかけます』
誠一たちは、クラスタの核を狙って攻撃を続けていた。
シェリルと椿姫たちは、カールから連絡を受け、核の周囲に浮遊している小型狂気VOIDたちを撃ち落としていた。
●崩落、その果てに
「やっろー、ぜってぇ倒すぞ、おらぁっ」
ジャックはR7エクスシア「ヘクトル」のイニシャライズフィールドを展開、クラスタの核を狙い、『マテリアルライフル』を放った。
ほぼ同時に、誠一のR7エクスシアが『マテリアルライフル』で核を狙い撃つ。
クラスタの核は度重なるダメージを受けていたが、まだ消える気配がなかった。
礼二は『伝波増幅』を活性化させ、R7エクスシアのイニシャライズフィールドを発動……トランシーバーで研司に呼びかける。
「藤堂さんの武器なら、クラスタの核にダメージを与えることができる。頼む!!」
「任せとけって!!」
続いて、研司が騎乗した愛機パリスの研司砲が、スキルトレース【Lv5】の発動により『シャープシューティング』で核を狙い、『跳弾』を放った。
核が軋んでいく。ピシ……という音が響いた。
さらに、ルナリリルのパピルサグXが放った試作型スラスターライフルの銃弾が、核に命中した。
止めとばかりに、セレンの魔導型デュミナスが、200mm4連カノン砲を構えて、弾を放った。
「核、破壊、成功」
亀裂が走り、核が激しく揺らめいた。
キィィィィィィィィン……!!
怒涛の攻撃が狙い通りに当たり、核が砕け散る。そして、轟音と共に消滅していく。
「神代さん、皆さん、こちらです」
影の女王、R7エクスシアに騎乗した椿姫が、誠一たちを誘導して、殿を務める。「影の女王」のスキルトレース【Lv10】が起動……『スラッシュエッジ』による一撃を狂気VOIDに繰り出し、敵を消滅させた。
カールの白夜が、スキルトレース【Lv5】を起動させ、退路を阻む狂気VOIDを『機導砲』で撃ち抜いた。
「僕についてきてください」
白夜はアクティブスラスターを発動させ、侵入口へと続く退路を突き進んでいく。
その後を追って、R7エクスシアや魔導型ドミニオンの機体が付いてくる。
パピルサグXは、ハイパーブーストで加速し、白夜に追いついた。
「狂気VOIDたちが、混乱したみたいに動いてるよ」
天王寺茜(ka4080)は狂気の影響でしばらく身動きが取れなかったが、核が破壊されたことにより、正気を取り戻した。
「射線上の人、退避して!」
茜は『伝波増幅』を使い、トランシーバーで源一郎に呼びかけた。
『こちら門垣、白夜デュミナス機と合流次第、退避する』
「了解だよ。それまで、私は中型狂気の相手をしてるから」
通信を切り、魔導アーマー「ヘイムダル」をテールスタビライザーBにて地面に固定させる茜。
「さあ、来なさい」
歪虚CAMと対峙する魔導アーマー「ヘイムダル」は、バイクで通り過ぎるハンターたちを庇うように防御していた。鈴太郎は『チャクラ・ヒール』を自身に使い、試作魔導バイク「ナグルファル」に乗って、駆け抜けいく。
無事に鈴太郎が通り過ぎると、茜の魔導アーマー「ヘイムダル」が、軽量型スペルランチャーから青白いマテリアルの光線を放った。歪虚CAMの胴部に命中し、敵はダメージを受けるが、体勢を整えるとアサルトライフルで攻撃をしかけてきた。紙一重で魔導アーマー「ヘイムダル」は回避に成功。
「あぶなかったー。もう手加減しないから」
パイルバンカー「アグヘロ」の射出口からスペルランチャーが放たれた。歪虚CAMに命中し、爆発すると、その場から敵が消滅していた。
「みんな、急いで」
思わず、茜が叫んだ。
クラスタ全体が徐々に崩壊していく。
退路の天井が、所々で落下……。立ち上がれないクィーロを庇い、クローディオが身を挺して落ちてきた天井を支えていた。
「……彼を……助けなければ」
クローディオは『ピュリフィケーション』をクィーロに施し、状態異常を解除させた。
「……なぜ、ここまでして…」
重体のクィーロは、話すことだけでも精一杯だった。
「私自身にも、よく分からないな。だが、おまえを見ていると、放っておけなかった。それだけだ」
クローディオが、そう答えた間際、歪虚CAMの放ったアサルトライフルの銃弾が、クローディオの身体を貫いた。血が飛び散り、天井に挟まれたまま、クローディオは気を失った。
「?! ……うぉぉぉぉぉぉぉ!!」
クィーロが吠えた。
懸命にクローディオを助け起こそうとするが、思うように身体が動かなかった。
「クィーロ!!」
椿姫が叫ぶ。影の女王(R7エクスシア)がクィーロを抱え、CAMソード「ディフェンダー」で天井を払いのけた。
「クローディオっ!!」
ジャックは仲間を見つけると、ヘクトル(R7エクスシア)の腕を動かし、クローディオとママチャリを回収する。
「無茶しやがって、この野郎がっ!!」
痛々しいクローディオを見て、ジャックは心の中では泣いていたが、気丈に振舞っていた。
「ジャックさん、急ぎましょう。クローディオさんと、クィーロのためにも」
R7エクスシアに乗った誠一が、トランシーバーで呼びかけた。
退路にいるハンターたちを見かけて、愛機パリスに乗った研司が、方位磁石「導きの光」で位置を確認した後、トランシーバーでジャックに話しかけた。
「当然、見捨てねぇ! 決まってるだろ。そのために今は脱出に専念だ」
パリスは、「カンナさん」を背負い、脱出するために持てる限りの力を駆使して移動していた。
「そうだ……俺様は誰一人として、見捨てたりしねぇ!! 行くぜっ!!」
愛機ヘクトルでクローディオとママチャリを抱え、ジャックはコックピットから操縦して、侵入口を目指して駆けていった。
「皆さん、僕の機体を目印にして、付いて来て下さい」
カールが、白夜に装備したソニックフォン・ブラスターで、周囲のハンターたちに脱出するように伝えた。
「白夜機と合流、直ちに脱出する」
源一郎の魔導型デュミナス門垣機もまた殿を務め、退路にいる歪虚CAMを狙って30mmガトリングガンで撃ち抜き、アクティブスラスターを起動させ、侵入口へと目指して、移動していった。
魔導型ドミニオンの安綱は、恭也の指示でアクティブスラスターを発動させて、門垣機の後を追った。
天井が落下してくると、安綱のワークスドリルが炸裂し、道を切り開いていく。
「道を塞ぐ物は、破壊する」
安綱と門垣機が退路を突き進み、幻獣に騎乗したハンターたちが後からついてきていた。
「わふ、クラスタ内部にはまだまだ、狂気VOIDたちが蔓延ってますー」
アルマは魔導バイク「アレイオーン」を駆り、『デルタレイ』で三体の狂気VOIDを消滅させた。
リゲルと言えば、弱者の本能で周囲を警戒しながらアルマに同行していた。
シェリルは、重体のリュミアを抱え、リーリーに騎乗し、脱出するためにダッシュしていく。
本来幻獣は一人乗りだが、特別訓練で二人乗りの適性を得ている。シェリルは傷ついたリュミアを助けたい一心で、リーリーを走らせる。
「……全員で、かえる……アナタの事も、私の事も……諦めない……ッ!!」
リュミアがリーリーから落ちないように、シェリルはロープを使って自分とリュミアを繋ぎ、リーリーの幻獣鞍に固定していた。
「……」
リュミアは無言で痛みに耐えながら、必死にシェリルのリーリーにしがみ付いていた。
「大丈夫です。もうすぐ外へ出ることができます」
イェジドのクフィンに騎乗したUiscaが励ます。狂気VOIDの群れが前方から迫る。とっさにUiscaは【龍閃】白龍閃光散華を唱えて、狂気VOID数体を消滅させた。
「後方は任せてください」
R7エクスシアに騎乗した怜皇が、機体のマジックエンハンサーを展開させ、スキルトレース【Lv10】が起動し、『エレクトリックショック』の電撃が放たれ、歪虚CAMはダメージを受けて麻痺となり行動不能になった。
「このまま先へ進みましょう」
怜皇のR7エクスシアがアクティブスラスターを発動……Uiscaの乗るクフィンに追いついた。
「歪虚CAMは身動きが取れないようですし、今のうちに脱出しましょう」
Uiscaは怜皇の無事を確認すると、相棒のクフィンをクラスタ侵入口へと走らせた。
先を見れば、刻令ゴーレム「Gnome」がチェーンアンカーを振り回し、侵入口を確保していた。
「後ろの敵、足止めしときます」
リーリーに騎乗した小夜は、浮遊しながら後方から迫りくる狂気VOIDに対して、『ブリザード』を放った。凍りついた狂気VOIDたちは氷が砕けるように消滅していく。
「天井に気を付けろ!!」
頭上からの落下物に気付き、礼二のR7エクスシアがMライフル「イースクラW」を構え、非実体の弾丸を発射させ、落ちてきた天井を破壊した。
「おっしゃー、外だ!」
最初に侵入口から姿を現したのは、試作魔導バイク「ナグルファル」に乗った鈴太郎だ。
刻令ゴーレム「Gnome」を目印に、次々とハンターたちが脱出してくる。
最後に脱出したのは、ハイパーブーストを発動させ、残骸や狂気VOIDを振り切った門垣機だった。
「……クラスタが、沈んでいく……」
シャァァァァァァァァ……!
光なのか、それとも何かの前兆なのか……。
クラスタ全体が崩壊……塵となり、消滅していくが、建造物の残骸だけが残っていた。
I・G…刻令ゴーレム「Gnome」は転倒していたが、それでもチェーンアンカーを振り回す動作を繰り返していた。
「おやおや、なんとも律儀なヤツだねぇ」
鵤が、ひょっこりと現れた。
「ほれ、お疲れさんっと」
ようやく、I・G…刻令ゴーレム「Gnome」の動きが止まった。
ハンターたちは全員、クラスタから脱出し、皆が互いに顔を見合わせて、喜び合っていた。
Uiscaの【龍唄】聖地に坐せし白龍の守唄が、周囲を優しく包むように癒していく。
手を取り合う仲間たち。
幻獣に温かい眼差しを向けるハンターたちもいた。
これから、何が始まるのだろう。
新たな、幕開けだった。
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大林さゆる | 2人 |
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