ゲスト
(ka0000)
愛が生みせし愛無き悪魔
マスター:サトー

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 易しい
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2014/12/13 22:00
- リプレイ完成予定
- 2014/12/22 22:00
オープニング
「アマデオ、これを運ぶの手伝ってくれ」
「はーい」
台所に立つ男の声に、アマデオと呼ばれた六歳くらいの少年は元気に返事をして、芋と野菜のスープが並々と入った器を慎重に食卓へ運ぶ。
食卓では、アマデオの母と見られる若い女性が、その光景を微笑ましそうに眺めていた。
そこへ、先ほどの男がパンの入ったバスケットを持ってやってくる。
「よし、アマデオ。スプーンとグラスも頼む」
「はーい」
「それくらいは私がやりますよ」
女が席を立とうとすると、慌てて男は押しとどめた。
「馬鹿よせ。お前はじっとしていればいいんだ」
そう無理やり席に戻された女の腹は、破裂しないのが不思議なほどに大きく膨れていた。
「もういつ生まれてもおかしくないんだ。ゾーエは無理をするな」
男――アマデオの父にしてゾーエの夫、ウンベルトは、慈愛に満ちた瞳でそのお腹を愛でた。
「もう、あなたはでかい図体をして、何をそんなにびくついているんですか。二人目なんですから、私も心得ていますよ」
「むう、万が一ということもあるだろう」
唸るウンベルトに、スプーンとグラスの用意を終えたアマデオがとことこと駆けてくる。
「早く生まれてこないかなぁ?」
言って、アマデオは目をきらきらと輝かせて母のお腹に耳を当てる。
「弟かな? 妹かな? あぁ、楽しみだなぁ。まだかなぁ?」
「ふふふ、もうすぐよ、アマデオ。アマデオもお兄ちゃんになるんだから、頑張らないとね」
「うん! お手伝いももっと頑張るよ!」
談笑する二人に、ウンベルトは幸せそうな笑みをこぼし、しかし、はっと何かに気づいて慌てて猟銃と短剣を手に取った。
「もう行くんですか?」
ゾーエが気づかわしそうに夫を見た。
「ああ、もう約束の時間だ」
「せめて少しだけでも食べていっては?」
「そうしたいのも山々だが、最近は実入りも少なくなってきたからな……。それに――」
とウンベルトはゾーエのお腹を一瞥して、
「家族ももう一人増えるんだ。のんびりとはしていられないさ」
「……気を付けて下さいね」
「ああ、分かってる。お前も気を付けるんだぞ。産気づいたらお隣の伯母さんを呼ぶんだ。――アマデオ、お母さんをよろしく頼むな」
「はい!」
小さな家の守り手に、ウンベルトは安心して家を出て行った。
仲間と落ち合ったウンベルトは、猟銃を担いで山へと入る。
山の麓にあるこの村の男性は、ほとんどが代々続く猟師だった。無論、ウンベルトもその一人。
幼き頃より父や祖父に連れられて山に入り、罠の仕掛け方や弓矢・猟銃の使い方、獲物へと接近する方法にトドメのさし方など、多くの事を学んできた。
今や立派な一人前の猟師であるウンベルトは、この村の猟師連のリーダーも兼ねていた。
「ウンベルトさん、やっぱり変ですよね……」
若い猟師の男が心もとなげに言う。
「ああ、そうだな……」
応じるウンベルトも、男同様に気落ちしているように見える。
「一体なんだってんでしょう……。つい数ヶ月前までは、いつもと何も変わらなかったのに」
男の呟きに、周りの猟師も、若いもベテランも問わず、黙りこくる。
みな気持ちは同じだ。言わずとも、落胆を隠すことはできない。
この数ヶ月で、明らかに獲物の数が減ってきていた。
先祖代々この山で狩りをしてきただけあって、獲物となる野生動物が豊富にいるのが特徴的な場所だった。ウサギや鹿、猪や熊など、山に入れば、毎日何かしら得ることができるほどに、豊かな御山だった。
獲物を取りつくさないよう調整し、山の恵みに深く感謝し、山と共に生きるのが、この村の生き方。
それが――。
もう山に入って二時間になるというのに、全く獲物の姿が見当たらない。
昨日は皆で八時間かけて、鹿が一頭とウサギが三匹しか取れなかった。これでは、村の皆を養っていくのは難しい。このままでは、村の存続にすら関わってくる。
ウンベルトは猟師連のリーダーとして、どうにかしたいと願いながらも、どうにもできない日々をやきもきとして過ごしていた。
もうじきもう一人、我が家にも増えるのだ。何とかしなければ、と焦る心が痛ましい。
と、その時、猟師の誰かが小さく声を上げた。
「あれを見ろ!」
猟師の指さす先、四百メートルほど離れたところに、何かが動く影が見えた。
「なんだ、あれは……」
影は複数いるようで、木の陰から出たり隠れたり、見えづらいが人の形をしているように思えた。
「人……? まさか、こんなところで? 誰だ……?」
影が群がる先を見やれば、一頭の鹿が追い立てられているのが分かった。
「くそう、俺たちの獲物を――」
そう苦々しそうに呟く猟師を、ウンベルトは呆然としながらも否定した。
「違う……。あれは……コボルドだ!」
「なんだって!?」
そう言われてよくよく目を凝らしてみれば、確かに人にしてはいささか小さい上に、動きが機敏だった。弓矢や猟銃を使っているようにも見えない。
「コボルド……最悪だ」
誰かがそう零すと、肯定するように周りは沈黙を保った。
コボルドが棲みついた山からは、獲物となる動物は狩りつくされる。
ねずみ算式に増えたコボルドが次に狙うのは近くの人里……。そうなれば、妻も、子も……。
いや、野生動物が絶えるまで待たなくとも、自分たちの村が知れれば、いつ襲われてもおかしくはない。
どれだけの数が生息しているかにもよるが、悠長にしていられる状況ではなかった。
獲物が減ってきていたのはこのせいだったのか、とウンベルトはぎりぎりと奥歯を噛み鳴らす。怒りの炎が瞳を燃やし、握りしめられた拳はぷるぷると痛みに悲鳴を上げている。
今すぐにでも、あの場へ駆けつけて皆殺しにしてやりたかった。赤子の一匹たりとて逃さずに、自分たちの山を踏みにじる不心得者どもに裁きを、と。
だが、自分はリーダー。みなを統率しなければならない立場にある。
ウンベルトはみなを振り返り、一旦怒りを整えるために深呼吸すると、一人一人の目を見て言った。
「俺はこのままあいつらの後をつける。住処を探さなくちゃならん。何人かついてきてくれ。他の者は村に戻るんだ。……確実に根絶やしにするには、ハンターに頼むしかない」
みなは頷いて、各々の行動に移った。
●
「あそこが奴らの住処だ」
そう言って、ウンベルトはハンター達に指さして見せた。
「俺らも同行させてもらう。この山は俺たちの山だ。……あいつら、絶対に許さない」
一匹残らず狩りつくしてやる、と呟くウンベルトの形相は、正しく悪魔のようだった。
「はーい」
台所に立つ男の声に、アマデオと呼ばれた六歳くらいの少年は元気に返事をして、芋と野菜のスープが並々と入った器を慎重に食卓へ運ぶ。
食卓では、アマデオの母と見られる若い女性が、その光景を微笑ましそうに眺めていた。
そこへ、先ほどの男がパンの入ったバスケットを持ってやってくる。
「よし、アマデオ。スプーンとグラスも頼む」
「はーい」
「それくらいは私がやりますよ」
女が席を立とうとすると、慌てて男は押しとどめた。
「馬鹿よせ。お前はじっとしていればいいんだ」
そう無理やり席に戻された女の腹は、破裂しないのが不思議なほどに大きく膨れていた。
「もういつ生まれてもおかしくないんだ。ゾーエは無理をするな」
男――アマデオの父にしてゾーエの夫、ウンベルトは、慈愛に満ちた瞳でそのお腹を愛でた。
「もう、あなたはでかい図体をして、何をそんなにびくついているんですか。二人目なんですから、私も心得ていますよ」
「むう、万が一ということもあるだろう」
唸るウンベルトに、スプーンとグラスの用意を終えたアマデオがとことこと駆けてくる。
「早く生まれてこないかなぁ?」
言って、アマデオは目をきらきらと輝かせて母のお腹に耳を当てる。
「弟かな? 妹かな? あぁ、楽しみだなぁ。まだかなぁ?」
「ふふふ、もうすぐよ、アマデオ。アマデオもお兄ちゃんになるんだから、頑張らないとね」
「うん! お手伝いももっと頑張るよ!」
談笑する二人に、ウンベルトは幸せそうな笑みをこぼし、しかし、はっと何かに気づいて慌てて猟銃と短剣を手に取った。
「もう行くんですか?」
ゾーエが気づかわしそうに夫を見た。
「ああ、もう約束の時間だ」
「せめて少しだけでも食べていっては?」
「そうしたいのも山々だが、最近は実入りも少なくなってきたからな……。それに――」
とウンベルトはゾーエのお腹を一瞥して、
「家族ももう一人増えるんだ。のんびりとはしていられないさ」
「……気を付けて下さいね」
「ああ、分かってる。お前も気を付けるんだぞ。産気づいたらお隣の伯母さんを呼ぶんだ。――アマデオ、お母さんをよろしく頼むな」
「はい!」
小さな家の守り手に、ウンベルトは安心して家を出て行った。
仲間と落ち合ったウンベルトは、猟銃を担いで山へと入る。
山の麓にあるこの村の男性は、ほとんどが代々続く猟師だった。無論、ウンベルトもその一人。
幼き頃より父や祖父に連れられて山に入り、罠の仕掛け方や弓矢・猟銃の使い方、獲物へと接近する方法にトドメのさし方など、多くの事を学んできた。
今や立派な一人前の猟師であるウンベルトは、この村の猟師連のリーダーも兼ねていた。
「ウンベルトさん、やっぱり変ですよね……」
若い猟師の男が心もとなげに言う。
「ああ、そうだな……」
応じるウンベルトも、男同様に気落ちしているように見える。
「一体なんだってんでしょう……。つい数ヶ月前までは、いつもと何も変わらなかったのに」
男の呟きに、周りの猟師も、若いもベテランも問わず、黙りこくる。
みな気持ちは同じだ。言わずとも、落胆を隠すことはできない。
この数ヶ月で、明らかに獲物の数が減ってきていた。
先祖代々この山で狩りをしてきただけあって、獲物となる野生動物が豊富にいるのが特徴的な場所だった。ウサギや鹿、猪や熊など、山に入れば、毎日何かしら得ることができるほどに、豊かな御山だった。
獲物を取りつくさないよう調整し、山の恵みに深く感謝し、山と共に生きるのが、この村の生き方。
それが――。
もう山に入って二時間になるというのに、全く獲物の姿が見当たらない。
昨日は皆で八時間かけて、鹿が一頭とウサギが三匹しか取れなかった。これでは、村の皆を養っていくのは難しい。このままでは、村の存続にすら関わってくる。
ウンベルトは猟師連のリーダーとして、どうにかしたいと願いながらも、どうにもできない日々をやきもきとして過ごしていた。
もうじきもう一人、我が家にも増えるのだ。何とかしなければ、と焦る心が痛ましい。
と、その時、猟師の誰かが小さく声を上げた。
「あれを見ろ!」
猟師の指さす先、四百メートルほど離れたところに、何かが動く影が見えた。
「なんだ、あれは……」
影は複数いるようで、木の陰から出たり隠れたり、見えづらいが人の形をしているように思えた。
「人……? まさか、こんなところで? 誰だ……?」
影が群がる先を見やれば、一頭の鹿が追い立てられているのが分かった。
「くそう、俺たちの獲物を――」
そう苦々しそうに呟く猟師を、ウンベルトは呆然としながらも否定した。
「違う……。あれは……コボルドだ!」
「なんだって!?」
そう言われてよくよく目を凝らしてみれば、確かに人にしてはいささか小さい上に、動きが機敏だった。弓矢や猟銃を使っているようにも見えない。
「コボルド……最悪だ」
誰かがそう零すと、肯定するように周りは沈黙を保った。
コボルドが棲みついた山からは、獲物となる動物は狩りつくされる。
ねずみ算式に増えたコボルドが次に狙うのは近くの人里……。そうなれば、妻も、子も……。
いや、野生動物が絶えるまで待たなくとも、自分たちの村が知れれば、いつ襲われてもおかしくはない。
どれだけの数が生息しているかにもよるが、悠長にしていられる状況ではなかった。
獲物が減ってきていたのはこのせいだったのか、とウンベルトはぎりぎりと奥歯を噛み鳴らす。怒りの炎が瞳を燃やし、握りしめられた拳はぷるぷると痛みに悲鳴を上げている。
今すぐにでも、あの場へ駆けつけて皆殺しにしてやりたかった。赤子の一匹たりとて逃さずに、自分たちの山を踏みにじる不心得者どもに裁きを、と。
だが、自分はリーダー。みなを統率しなければならない立場にある。
ウンベルトはみなを振り返り、一旦怒りを整えるために深呼吸すると、一人一人の目を見て言った。
「俺はこのままあいつらの後をつける。住処を探さなくちゃならん。何人かついてきてくれ。他の者は村に戻るんだ。……確実に根絶やしにするには、ハンターに頼むしかない」
みなは頷いて、各々の行動に移った。
●
「あそこが奴らの住処だ」
そう言って、ウンベルトはハンター達に指さして見せた。
「俺らも同行させてもらう。この山は俺たちの山だ。……あいつら、絶対に許さない」
一匹残らず狩りつくしてやる、と呟くウンベルトの形相は、正しく悪魔のようだった。
解説
◎コボルドの住処を強襲せよ!
目的:
山に棲みついたコボルドの抹殺。
敵:
コボルド(成体は八体、幼体は三十体ほど)
攻撃手段は鋭い爪と牙。尖った石。武器を奪われれば使われる可能性もあります。
幼体の戦闘力は人間の子供と同程度。
状況:
コボルドの住処は山の中腹にある洞窟。
入口の大きさは高さ二メートル、横幅五メートル程度。
入口に見張りはいない。
猟師が交代で、洞窟の見張りを続けている。
洞窟の内部構造は不明。
コボルドは見張りの猟師たちに気が付いていない。
備考:
猟師たちの内ウンベルトを含む四名が、コボルド討伐に帯同する。
猟師の戦闘力は一般人に毛が生えた程度。
猟師たちは基本的にはハンターの指示に従う。
目的:
山に棲みついたコボルドの抹殺。
敵:
コボルド(成体は八体、幼体は三十体ほど)
攻撃手段は鋭い爪と牙。尖った石。武器を奪われれば使われる可能性もあります。
幼体の戦闘力は人間の子供と同程度。
状況:
コボルドの住処は山の中腹にある洞窟。
入口の大きさは高さ二メートル、横幅五メートル程度。
入口に見張りはいない。
猟師が交代で、洞窟の見張りを続けている。
洞窟の内部構造は不明。
コボルドは見張りの猟師たちに気が付いていない。
備考:
猟師たちの内ウンベルトを含む四名が、コボルド討伐に帯同する。
猟師の戦闘力は一般人に毛が生えた程度。
猟師たちは基本的にはハンターの指示に従う。
マスターより
難易度が易しいということもありまして、戦闘描写はあっさりしたものになるかと思います。
討伐から帰ると、ウンベルトの子供が生まれています。
討伐から帰ると、ウンベルトの子供が生まれています。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2014/12/15 23:18
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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作戦相談卓 ユルゲンス・クリューガー(ka2335) 人間(クリムゾンウェスト)|40才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2014/12/13 21:14:49 |
|
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/12/09 09:31:50 |