ゲスト
(ka0000)
嘘つきな羊飼い……と呼ばないで
マスター:一要・香織

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在8人 / 5~8人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 7日
- プレイング締切
- 2018/05/13 19:00
- リプレイ完成予定
- 2018/05/22 19:00
オープニング
波の様に揺れる草原に、ポツリポツリと白い毛玉が―――。
カサカサと葉が擦れあう音に混じり、メー、メーと鳴き声が聞こえる。
その白い毛玉の正体は、羊。
グランツ領西部に位置する村は綿羊の畜産が盛んで、この村の羊毛は領内のみならず評判が高い。
若きグランツの領主、レイナ・エルト・グランツ(kz0253)は、近くの川の橋修繕工事の視察に出掛けていたのだが、領主に就任してから一度も顔を出していなかったこの村の様子を見に立ち寄った。
「アポイントも取らずに来てしまい申し訳ありません。後日改めて視察に窺いますが、何か要望があればまとめておいて頂こうと思い、寄らせていただきました」
村長に向かい小さく頭を下げたレイナに、
「ああ、そうでしたか。わざわざありがとうございます。ではそれまでにまとめておきましょう」
目尻を下げた村長は、豊かな顎髭を撫でつけ頷いた。
「4日後の予定が空いていますので、その日がよろしいかと」
ドアの前に立った私兵のサイファーが口を開くと、
「わかりました。私もその日を空けておきましょう」
村長が応える。
「それでは、よろしくお願いいたします」
レイナは深く頭を下げると、背を向けた。
「あ、それから、少しだけ村の中を見てもよろしいでしょか?」
「ええ、構いません」
振り向いたレイナが尋ねると、村長は大きな笑みを浮かべ答えた。
レイナは村の中を散策し始めた。
途中、村の外で待機する兵士たちに呼ばれ、サイファーがレイナの側を離れると、華やかな男の物の貴族服を身に着けたレイナに、村人たちの視線が集まった。
その視線に気まずさを覚えながら歩いていると……、前方から話し声が聞こえてきた。
「いい迷惑だよね」
「貴族だからってお高くとまって、たいして可愛くもないのに!」
「ホント、ホント!ティアの方が何倍も可愛いし!」
「やだー! ありがと」
2人の女の子たちの会話に、レイナの足が止まった。
『貴族だから……』その言葉からすると、レイナの事を話しているのか……。
「でもさ、あんな頼りなさそうなのが領主って私達終わりだよね……」
「うん、アイザック様の時は良かったよねー」
その言葉に、心臓がドクリと大きく鳴り、彼女たちに見つからないようレイナは建物の陰に隠れた。
「……っ」
それでも彼女たちの会話は耳に届く。
「サイファーさんはなんであんな女の側に居るのかしらね?」
「大金貰ってるんじゃないのー?」
「サイファーさんカッコいいから、うちの村の自警団になってくれたらいいのに」
「ホント、そう思う!」
心を抉る様な言葉の数々に、唇を強く噛みしめ、俯いた時だった――――、
「レイナ様?」
心配そうなサイファーの声が頭上から降った。
「っ! サイファー!」
「どうされました?」
「っい、いえ。何でも……ありません」
先程の彼女たちの話がサイファーに聞こえていなかったのだと小さく安堵し、レイナは村の入り口へと駆けて行った。
「…………」
サイファーはレイナの悲しそうな背中を見つめ、そしてレイナの陰口を言っていた女の子達の背中へと視線を移し、鋭く睨みつけた。
レイナが帰った数時間後、村は騒然たる雰囲気に包まれた。
「歪虚だーーーー! 歪虚が出た!」
そう大声を出したのは、村の特産品である羊たちの飼い主。
放牧していた羊たちの近くに歪虚が出没したことに気が付き、村長の元に駆け込んだ。
「助けてくれ、羊たちが……羊たちが……」
「わかった。すぐにハンターに来てもらおう」
村長は直ぐにオフィスに依頼を出し、間もなくハンター達が歪虚の出た草原へと駆けて行った。
しかし―――――
「おいおい……歪虚なんていなかったぞ……」
ハンターの一人がボリボリと頭を掻きながら村長に報告した。
「なんだって?」
「いや、俺は見たぞ! 確かに歪虚が居たんだ」
「そうは言っても、付近の捜索もしたが見つからなかった」
ハンターは気怠そうに、息を吐く。
「そんなはずは……」
言葉を詰まらせる羊飼いに構わず、ハンターは大きなため息を残して帰っていった。
それから4日の時が経ち、再び村にレイナがやってきた。
「すみませんね、どうもバタバタしてしまって」
村長は困った様に眉を下げた。
「お忙しい所すみません」
レイナが謝ると、
「いやいや、私よりあなたの方が忙しいと言うのに……いやぁ、申し訳ない」
村長は散らばった机の上をガサガサと掻き回し、書類の束を手に取った。
「何か問題でもあったのですか?」
レイナが心配そうに尋ねると、村長は大きなため息を吐き口を開いた。
「それがですね……じつは、歪虚が出たと嘘をついて騒ぎ立てる者が居りましてね」
「えっ!?」
予想外の言葉にレイナは目を見開いた。
「3日連続ですよ……その度にハンターを呼んだのですが、結局歪虚の姿はなく……。もうハンターオフィスも相手にしてくれません」
村長はやれやれ……といった具合に嘲笑した。
その時――――――、バンッとドアが開き女の子が血相を変えて飛び込んで来た。
「村長、歪虚が出たの! 助けて」
真っ青な顔で、村長に縋った。
「ティア……父親の次は君か……」
村長は呆れた様に呟き首を振る。
「そんな嘘はもうたくさんだ……。いい加減にしなさい」
冷たく突き放すような言葉を口にすると、
「本当なの。本当に狼の歪虚が出たのよ」
涙を流しながら、ティアと呼ばれた女の子は叫んだ。
「っ!」
レイナはその声と名前にハッとした。
(この前の、女の子だ……)
その姿を見つめゴクリと唾を飲むと、レイナに気が付いたティアが駆け寄り、
「ねえ、あなた領主でしょ? 助けてよ!」
脅すようにレイナに迫った。
その瞬間、サイファーがサッとその間に立つ。
「…………」
サイファーが制するようにティアの顔を睨みつけると、ティアの顔が強張った。
温度を持たない冷たいサイファーの瞳に、ティアが息を飲むと、
「わかりました。私がオフィスに掛け合ってみます」
レイナの凛とした声が部屋に響いた。
「しかし……」
サイファーは振り返り眉を顰める。
きつく掌を握ったレイナは、
「急ぎましょう」
ティアの瞳をジッと見つめ、急ぎ部屋を後にした。
●ハンターオフィス
「またその話ですか? もう3回も依頼を受けてますけど、歪虚の姿はなかったと……」
受付の女性は、呆れた様に息を吐きだした。
「お願いします。もう一度、もう一度だけ……」
レイナは真摯な顔で、何度も頭を下げた。
「また嘘なんじゃないですか? 悪戯で私達を揶揄ってるんですよ」
女性が唇を尖らせ呟くと、
「私の領民に、その様な者は居りません」
怒った様にレイナは語気を強めて叫んだ。
「っ……、わかりました」
その声に驚いた女性は、眉を顰めたまましぶしぶ頷いた。
カサカサと葉が擦れあう音に混じり、メー、メーと鳴き声が聞こえる。
その白い毛玉の正体は、羊。
グランツ領西部に位置する村は綿羊の畜産が盛んで、この村の羊毛は領内のみならず評判が高い。
若きグランツの領主、レイナ・エルト・グランツ(kz0253)は、近くの川の橋修繕工事の視察に出掛けていたのだが、領主に就任してから一度も顔を出していなかったこの村の様子を見に立ち寄った。
「アポイントも取らずに来てしまい申し訳ありません。後日改めて視察に窺いますが、何か要望があればまとめておいて頂こうと思い、寄らせていただきました」
村長に向かい小さく頭を下げたレイナに、
「ああ、そうでしたか。わざわざありがとうございます。ではそれまでにまとめておきましょう」
目尻を下げた村長は、豊かな顎髭を撫でつけ頷いた。
「4日後の予定が空いていますので、その日がよろしいかと」
ドアの前に立った私兵のサイファーが口を開くと、
「わかりました。私もその日を空けておきましょう」
村長が応える。
「それでは、よろしくお願いいたします」
レイナは深く頭を下げると、背を向けた。
「あ、それから、少しだけ村の中を見てもよろしいでしょか?」
「ええ、構いません」
振り向いたレイナが尋ねると、村長は大きな笑みを浮かべ答えた。
レイナは村の中を散策し始めた。
途中、村の外で待機する兵士たちに呼ばれ、サイファーがレイナの側を離れると、華やかな男の物の貴族服を身に着けたレイナに、村人たちの視線が集まった。
その視線に気まずさを覚えながら歩いていると……、前方から話し声が聞こえてきた。
「いい迷惑だよね」
「貴族だからってお高くとまって、たいして可愛くもないのに!」
「ホント、ホント!ティアの方が何倍も可愛いし!」
「やだー! ありがと」
2人の女の子たちの会話に、レイナの足が止まった。
『貴族だから……』その言葉からすると、レイナの事を話しているのか……。
「でもさ、あんな頼りなさそうなのが領主って私達終わりだよね……」
「うん、アイザック様の時は良かったよねー」
その言葉に、心臓がドクリと大きく鳴り、彼女たちに見つからないようレイナは建物の陰に隠れた。
「……っ」
それでも彼女たちの会話は耳に届く。
「サイファーさんはなんであんな女の側に居るのかしらね?」
「大金貰ってるんじゃないのー?」
「サイファーさんカッコいいから、うちの村の自警団になってくれたらいいのに」
「ホント、そう思う!」
心を抉る様な言葉の数々に、唇を強く噛みしめ、俯いた時だった――――、
「レイナ様?」
心配そうなサイファーの声が頭上から降った。
「っ! サイファー!」
「どうされました?」
「っい、いえ。何でも……ありません」
先程の彼女たちの話がサイファーに聞こえていなかったのだと小さく安堵し、レイナは村の入り口へと駆けて行った。
「…………」
サイファーはレイナの悲しそうな背中を見つめ、そしてレイナの陰口を言っていた女の子達の背中へと視線を移し、鋭く睨みつけた。
レイナが帰った数時間後、村は騒然たる雰囲気に包まれた。
「歪虚だーーーー! 歪虚が出た!」
そう大声を出したのは、村の特産品である羊たちの飼い主。
放牧していた羊たちの近くに歪虚が出没したことに気が付き、村長の元に駆け込んだ。
「助けてくれ、羊たちが……羊たちが……」
「わかった。すぐにハンターに来てもらおう」
村長は直ぐにオフィスに依頼を出し、間もなくハンター達が歪虚の出た草原へと駆けて行った。
しかし―――――
「おいおい……歪虚なんていなかったぞ……」
ハンターの一人がボリボリと頭を掻きながら村長に報告した。
「なんだって?」
「いや、俺は見たぞ! 確かに歪虚が居たんだ」
「そうは言っても、付近の捜索もしたが見つからなかった」
ハンターは気怠そうに、息を吐く。
「そんなはずは……」
言葉を詰まらせる羊飼いに構わず、ハンターは大きなため息を残して帰っていった。
それから4日の時が経ち、再び村にレイナがやってきた。
「すみませんね、どうもバタバタしてしまって」
村長は困った様に眉を下げた。
「お忙しい所すみません」
レイナが謝ると、
「いやいや、私よりあなたの方が忙しいと言うのに……いやぁ、申し訳ない」
村長は散らばった机の上をガサガサと掻き回し、書類の束を手に取った。
「何か問題でもあったのですか?」
レイナが心配そうに尋ねると、村長は大きなため息を吐き口を開いた。
「それがですね……じつは、歪虚が出たと嘘をついて騒ぎ立てる者が居りましてね」
「えっ!?」
予想外の言葉にレイナは目を見開いた。
「3日連続ですよ……その度にハンターを呼んだのですが、結局歪虚の姿はなく……。もうハンターオフィスも相手にしてくれません」
村長はやれやれ……といった具合に嘲笑した。
その時――――――、バンッとドアが開き女の子が血相を変えて飛び込んで来た。
「村長、歪虚が出たの! 助けて」
真っ青な顔で、村長に縋った。
「ティア……父親の次は君か……」
村長は呆れた様に呟き首を振る。
「そんな嘘はもうたくさんだ……。いい加減にしなさい」
冷たく突き放すような言葉を口にすると、
「本当なの。本当に狼の歪虚が出たのよ」
涙を流しながら、ティアと呼ばれた女の子は叫んだ。
「っ!」
レイナはその声と名前にハッとした。
(この前の、女の子だ……)
その姿を見つめゴクリと唾を飲むと、レイナに気が付いたティアが駆け寄り、
「ねえ、あなた領主でしょ? 助けてよ!」
脅すようにレイナに迫った。
その瞬間、サイファーがサッとその間に立つ。
「…………」
サイファーが制するようにティアの顔を睨みつけると、ティアの顔が強張った。
温度を持たない冷たいサイファーの瞳に、ティアが息を飲むと、
「わかりました。私がオフィスに掛け合ってみます」
レイナの凛とした声が部屋に響いた。
「しかし……」
サイファーは振り返り眉を顰める。
きつく掌を握ったレイナは、
「急ぎましょう」
ティアの瞳をジッと見つめ、急ぎ部屋を後にした。
●ハンターオフィス
「またその話ですか? もう3回も依頼を受けてますけど、歪虚の姿はなかったと……」
受付の女性は、呆れた様に息を吐きだした。
「お願いします。もう一度、もう一度だけ……」
レイナは真摯な顔で、何度も頭を下げた。
「また嘘なんじゃないですか? 悪戯で私達を揶揄ってるんですよ」
女性が唇を尖らせ呟くと、
「私の領民に、その様な者は居りません」
怒った様にレイナは語気を強めて叫んだ。
「っ……、わかりました」
その声に驚いた女性は、眉を顰めたまましぶしぶ頷いた。
解説
リアルブルーには、『嘘つきな羊飼いと狼』の童話があるようですね。
その物語では羊飼いが嘘をつき、狼が出たと村人に話しました。村人は羊飼いを助けるために駆けつけますが、羊飼いは嘘だったと揶揄います。
羊飼いはその後何度か嘘をつきますが、村人はその度に駆けつけてくれました。
しかし、本当に狼が現れた時、村人達はまた羊飼いが嘘をついたと思い、助けてくれませんでした。
羊達は狼に食べられ、羊飼いは全てを失ってしまうのです。
今正に、そのお話が再現されようとしています。
でも、そんな事はさせません!
なぜなら、レイナは村人を信じているからです。
救いを求める手を振り払う事などしません。
どんな事を言われても、レイナにとって村人達は守るべき大切な者達なのです。
どうか、レイナのチカラになってあげて下さい。
歪虚狼はおよそ20匹。
知恵の働く狼が混ざっていたようです。
姿を見せては、直ぐに隠れ、ハンター達が駆けつけなくなる瞬間を待っていたのでしょう。
一気に村を襲うつもりです。
狼達は草原に姿を現しています。しかし、ハンターの姿に気付けば、また森の中に逃げ込んでしまうかもしれません。
その前に退路を断たなければ。
狼はあまり散らばっていません。うまくいけば囲い込めるでしょう。
攻撃手段は、飛び掛かり、噛みつき、引っ掻きです。
攻撃は大したことはありませんが、数がいるので厄介です。
連携して、狼が逃げないようにしてください。
草原には羊たちもいます。なるべく被害が出ないようにお願いします。
それでは、どうぞよろしくお願いします。
その物語では羊飼いが嘘をつき、狼が出たと村人に話しました。村人は羊飼いを助けるために駆けつけますが、羊飼いは嘘だったと揶揄います。
羊飼いはその後何度か嘘をつきますが、村人はその度に駆けつけてくれました。
しかし、本当に狼が現れた時、村人達はまた羊飼いが嘘をついたと思い、助けてくれませんでした。
羊達は狼に食べられ、羊飼いは全てを失ってしまうのです。
今正に、そのお話が再現されようとしています。
でも、そんな事はさせません!
なぜなら、レイナは村人を信じているからです。
救いを求める手を振り払う事などしません。
どんな事を言われても、レイナにとって村人達は守るべき大切な者達なのです。
どうか、レイナのチカラになってあげて下さい。
歪虚狼はおよそ20匹。
知恵の働く狼が混ざっていたようです。
姿を見せては、直ぐに隠れ、ハンター達が駆けつけなくなる瞬間を待っていたのでしょう。
一気に村を襲うつもりです。
狼達は草原に姿を現しています。しかし、ハンターの姿に気付けば、また森の中に逃げ込んでしまうかもしれません。
その前に退路を断たなければ。
狼はあまり散らばっていません。うまくいけば囲い込めるでしょう。
攻撃手段は、飛び掛かり、噛みつき、引っ掻きです。
攻撃は大したことはありませんが、数がいるので厄介です。
連携して、狼が逃げないようにしてください。
草原には羊たちもいます。なるべく被害が出ないようにお願いします。
それでは、どうぞよろしくお願いします。
マスターより
こんにちは。
あっという間に5月になってしまいましたね。
気持ちのいい季節です。
こんな気候の草原でピクニックとか、さぞかし気持ちが良いでしょう。
え? 歪虚が出た!?
ピクニックしている場合ではないですね!
どうか討伐をお願いします。
レイナのモヤモヤとした気持ちが晴れるような、スカッと爽快なプレイングをお待ちしています。
あっという間に5月になってしまいましたね。
気持ちのいい季節です。
こんな気候の草原でピクニックとか、さぞかし気持ちが良いでしょう。
え? 歪虚が出た!?
ピクニックしている場合ではないですね!
どうか討伐をお願いします。
レイナのモヤモヤとした気持ちが晴れるような、スカッと爽快なプレイングをお待ちしています。
関連NPC
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2018/05/19 11:59
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 ジャック・エルギン(ka1522) 人間(クリムゾンウェスト)|20才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2018/05/12 19:56:55 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/05/12 07:44:47 |