• 戦闘

Ram

マスター:愁水

このシナリオは5日間納期が延長されています。

シナリオ形態
ショート
難易度
難しい
オプション
参加費
1,000
参加人数
現在5人 / 3~5人
サポート
現在1人 / 0~1人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
7日
プレイング締切
2018/05/20 19:00
リプレイ完成予定
2018/06/03 19:00

オープニング

※このシナリオは難易度が高く設定されています。所持金の大幅な減少や装備アイテムの損失、場合によっては、再起不能、死亡判定が下される可能性があります。
再起不能、死亡判定の下されたキャラクターはログイン、及びコンテンツへのアクセスが制限されます。


 美しく、狂おしく。

**

 自由を謳う都市に、夜の帳が下りる。

 都市の喧騒から離れた、情趣ある静かな佇まいの地域。
 木組みや煉瓦造りの建物が連なるひっそりとした通りに、ハイヒールの音が高らかに響いていた。

「はあ……今夜も夢心地な時を過ごせましたわね。次の公演は何時かしら? 待ち遠しいですわ」

 高貴な身形や装飾は、位の高い商家の娘であることが窺える。

「足繁く通っていれば、何時かわたくしの眼差しが……声が、あの方に届くかしら……」

 頭に浮かぶのは、自由都市の郊外に何時とはなしにやって来た、とあるサーカス団。
 心に浮かぶのは、真白の軍服を纏う彼――。

 夜の闇に包まれる通りに、柔らかいオレンジ色の光が並んでいた。
 小さな橋へ差し掛かろうとした、その時。

「あら……?」

 街灯に照らされた一角に、誰かが立っていた。
 男性のようだ。

 紫を含んだ気品のある黒髪に――潔白を彩る外套。

 その後ろ姿に、円らな瞳がじわじわと瞠る。
 頬紅で染まった両頬が火照り、左の胸がときめくのを感じた。

 それはまるで、夢の続きのような心持ちであった。

「あ、あの……不躾でしたら申し訳ありません」

 引き寄せられるように、歩を運ぶ。

「もしかして、サーカス団の団長様……ですか?」

 胸に期待を弾ませて、彼の返答を待った。

 上品さが滲む端正な顔立ちが緩慢に振り返り、涼やかな目許が女性の面へ注がれる。
 隠しきれない喜びを浮かべ、女性が何かを言いかける――



「――……ぇ……?」



 ――ことは出来なかった。

 何故なら。
 彼女は自らの血で溺れていた。




 募った悪夢が覆い被さる。





 ドウシテ
 ドウシテ

 ネエ
 ドウシテ

 ――タスケテクレナカッタノ?





 その日は、一段と寝覚めの悪い朝だった。
 更に追い打ちをかけたのは、

「――……俺が、殺した?」

 その“事実”。

「正確には、ハク兄の姿をした歪虚だけどね」

 日頃のぶっきらぼうさに拍車を掛けている黒亜(kz0238)が、感情のまま、吐き捨てるように呟いた。

「……聞き捨てならんな。詳細は?」

 白亜(kz0237)は眉間に深い皺を寄せながら、ティープレスで淹れた紅茶のカップを指先に掛ける。そのまま、リビングのソファーに浅く腰を下ろした。紅茶で唇を濡らす兄を一瞥すると、黒亜は朝一で請け合ってきた依頼の資料を淡々と読み上げる。



 歪虚が出現したのは、昨夜。
 現場は都市内の閑静な住宅街。
 被害者は有数な商家の令嬢、カタリナ・ベルナルド。昨夜に開催されたサーカス――白亜達の天鵞絨サーカスを鑑賞した帰り道に、襲われた。
 偶然にも、遠目からそれを目撃したハンターが即座に救出へ向かったが、勘付いた歪虚は逃走。鋭い牙で首を噛み付かれたカタリナの身体には、血液が殆ど残っていなかったという。
 歪虚は強靱な跳躍力で空に舞うと、住宅の屋根から屋根へ飛び移り、月に誘われるように消えた。

 ハンターの証言で歪虚の姿の情報が特徴的な身形であったことから、歪虚は天鵞絨サーカス団の白亜を模したのではないか、と、ハンター本部は推測。何も知らず依頼を請け合いに来た黒亜へ、本部の受付は昨夜の白亜の所在時刻を訊いたのち、事情を説明した。形式的な聴取とはいえ、気分が良いものではない。加え、本部は歪虚と言ってはいるが――



「俺がベルナルド家の令嬢を殺していないという絶対的な証明にはならんだろうな」

 神妙な面持ちで独白する白亜。対照的に、黒亜はぴりぴりと顔を固くし、唇の両端を引き締めた。例え少ないながらも、兄に嫌疑がかかっているこの状況は、酷く癪に障った。

 しかし、歪虚の姿形は、紛うことなき真白の軍服姿であったという。外套の裏地には、彼の象徴花である椿が咲いていたらしい。
 紫を帯びたオールバックの黒髪に、“爛々”とした青い瞳――。

 歪虚でなければ、人の姿をした“化け物”ということになる。

「まあ……この依頼はオレが正式に請け合ったし、ハク兄はなにも心配しなくていいよ。この後、クーと手分けして街に出るから」
「――待て」

 白亜が、嗜めるような口調で制止を発する。

「歪虚の正体すら判明していないだろう。危険だ」
「変身能力と吸血行為がわかってるんだから、大体の当たりは付けられるよ」
「浅はかだ。歪虚に関する情報が不十分すぎる」
「は? それが足りないから調査しに行くんでしょ」
「敵が単体とは限らないだろう。行動模様や棲み処も分かっていない。俺に姿を変えていた理由もだ。不明な点が多すぎる」
「じゃあなに、次の犠牲者が出るまで待つ?」
「――。誘導されていたらどうする」

 白亜が重さを込めて指摘すると、

「……そんなの、一蹴してやるよ」

 抑揚のない呟きを泡のように掻き消し、黒亜はリビングを後にしたのであった。




「クロ……なんか……機嫌、悪い……?」
「……無駄口叩いてないで歩きなよ。今日は休む暇なんてないからね」

 遣る瀬無い心持ちをしているであろう兄を残し、黒亜は迷いのない足取りで路地をゆく。妹の紅亜(kz0239)が、「えー……」と、唇を尖らせながらも、細い足を急がせた。

 事件現場の調査。
 痕跡。
 周辺の聞き込み。
 目撃情報――。

 二人は都市内を忙しく駆けずり回ったが、大した成果は得られなかった。

 軈て太陽が傾き、空が薄い紫色に変わる。黒亜達は自分の影を引き摺りながら、カタリナの人となりや近状がどうであったかを訊く為、ベルナルド家を訪れていた。カタリナは通り掛かったところを襲われたのではなく、狙われるべくして襲われたのだとしたら――と、考えたのだ。



 そして、暗い幕が落ちてきた。










 二人はカフェで軽食を摂ったのち、黒亜は新市街、紅亜は旧市街と、手分けをして夜の街へ出る。既にローラー作戦ではあるが、歪虚が現れないとも限らない。

「……」

 黒亜は、情報の糸に絡まった“違和感”を牽引していた。

 何故、カタリナが襲われたのか。
 何故、歪虚は白亜に姿を変えていたのか。
 何故、歪虚の――

「…………」

 全ては、推測の域を出ない。だが、確固たる情報は、カタリナにとって白亜は意中の人であったということ。

「(つまり……)」

 ――“特別”であった。

「どうして歪虚の瞳は、爛々とした青い瞳だった……?」

 それは、白亜の瞳の色ではなく――





「……歪虚の瞳の色だとしたら……敵は……――ストリゴイだ」





 確証はないが、確信はあった。

「クー……」

 焦燥に駆り立てられた黒亜は、譫言のように妹の名を呟く。通信機器に手を伸ばした時には、既に――





「……ほんとに……ほんとに、“おにいちゃん”……? 帰ってきて……くれたの……?」





 遅かった。





 誘導は、罠であった。










 白亜はあなた達に助勢を求めたのち、自らも街に出ていた。
 しかし、白亜の言う通り、敵は単体ではなかった。そして、彼は“過去”と対峙することになる。





 ――ドウシテタスケテクレナカッタノ?

**

 月が、嗤う。


解説

《目的》
・敵の討伐
>大成功条件
・???

>PCはリプレイ開始時の出発点を選択。
・白亜は旧市街の時計塔付近。
・黒亜は新市街。
・紅亜は旧市街の公園。

――黒亜が白亜に伝えた情報は、PCも白亜から連絡を受けた際に伝えられているものとする――

《敵》
 ストリゴイ×2:(出発点に白亜か紅亜を選択したPCはPL情報となる)
 変身能力を持つ人狼型の上位歪虚。
 体長2m。赤い体毛に青眼。左右の胸に一つずつ心臓を持つ(片方を潰されても活動可能)
 物理攻撃力↑↑↑ 瞬発力↑↑↑ 物理防御力↑↑
(変身状態時=物理攻撃力↑↑ 瞬発力↑↑)

 近距離攻撃=出血効果のある爪や牙。

>変身能力
 対象の心底に在る“特別”な人間に姿を変え、喋り、対象の心を揺るがす。
 その姿は、恋人であったり、家族であったり、親友、仇、トラウマになっている存在――など、対象により様々な姿となるが、瞳の色だけは変えられない。

《その他》
・敵は白亜の所に1体、紅亜の所に1体出現している(PL情報)
・白亜と紅亜は変身状態のストリゴイと対峙しているが、二人の精神状態は不明。
・何かを察した黒亜は、紅亜の許へ向かっている。

《NPC》
 白亜:
 天鵞絨サーカス団の団長。黒亜と紅亜の兄。
 得物はカービンタイプの銃。体術も扱う。
 女性恐怖症の原因となった夢に、よく魘されている。

 黒亜:
 天鵞絨サーカス団の団員。次男。
 得物は刀身の長い日本刀。

 紅亜:
 天鵞絨サーカス団の団員。末っ子。
 得物はレガース。戦闘時はレッドフードを身に纏う。
 想い人がいるが、生死は不明。

※変身キャラクターの注意点として、当依頼に参加していないキャラクターの名前を出すのは不可。姿形は、髪の色や口調、雰囲気など、情報量が多いほど◎。他MSが所有しているNPCの登場は語弊が生じる可能性がある為、不可。
※サポートはあくまでサポートな為、敵の変身対象にはならない。
※質問不可。

マスターより

「あんたは、他人の“秘密”を知る覚悟があるの?」

関連NPC

  • 天鵞絨ノ赤椿
    白亜(kz0237
    人間(クリムゾンウェスト)|36才|男性|猟撃士(イェーガー)
  • 天鵞絨ノ月季花
    黒亜(kz0238
    人間(クリムゾンウェスト)|17才|男性|舞刀士(ソードダンサー)
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2018/05/31 03:05

参加者一覧

  • 和なる剣舞
    オウカ・レンヴォルト(ka0301
    人間(蒼)|26才|男性|機導師
  • 天鵞絨ノ空木
    白藤(ka3768
    人間(蒼)|28才|女性|猟撃士
  • 夜空に奏でる銀星となりて
    レナード=クーク(ka6613
    エルフ|17才|男性|魔術師
  • 天鵞絨ノ風船唐綿
    ミア(ka7035
    鬼|22才|女性|格闘士
  • Schwarzwald
    浅生 陸(ka7041
    人間(蒼)|26才|男性|機導師

サポート一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/05/14 23:50:52
アイコン 白と紅の心を追って(相談卓)
ミア(ka7035
鬼|22才|女性|格闘士(マスターアームズ)
最終発言
2018/05/20 18:07:40