• 無し

噂を信じなかった薬師

マスター:ザント

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
参加費
1,000
参加人数
現在4人 / 3~4人
サポート
現在0人 / 0~20人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
4日
プレイング締切
2018/05/22 07:30
リプレイ完成予定
2018/05/31 07:30

オープニング

「お大事に!」
 少女が常連らしき客を笑顔で見送ると、雑談をしている男性二人に目を向ける。
「それでこの村近くの森にでっけぇ猫が居るって噂があってよ」
「そんな噂が……もし本当なら薬草採りの時は護衛を雇わないと危ないですね」
 だが、少女の視線に気づかずに二人はそのまま雑談を続ける。
「はははっただの噂だよ。この村の近くででかい猫なんて聞いたことねぇだろ?」
「確かに、聞いたこと無いですね」
「結局、噂は噂ってことさ」
「師匠!」
 二人の雑談の間を狙い、少女が怒鳴り声に近い声を上げた。
「おっと長話しちまったな。それじゃ」
「はい。また来てくださいね」
 その声で雑談を切り上げた男性が帰り、師匠と言われた男性は少女を見る。
「ごめんね、シャール。つい話に夢中になってね」
「いつもの事ですよね」
「うっ」
 シャールと呼ばれた少女のジト目に言葉に詰まる男性。
 男性はオックスといい、ジェオルジにある村の救護所で働いている薬師で、シャールはオックスに弟子入りした薬師見習いだ。
「ま、まぁ交流も薬師としてのだね」
「そうですか」
「ざ、在庫! 材料の在庫を確認してきてくれるかな」
 シャールの平坦な声にオックスは顔を引きつらせ、逃げる為に話題を変えた。
「それなら確認しましたよ。幾つか少なくなっていたので、近い内に採りに行かないといけません」
「そ、そう。じゃあ、明日にでも行こうか」
 優秀な弟子だと思いながら、オックスは弟子のご機嫌取りを始めた。

 翌日、在庫が少なくなった薬草を採取をする為に、二人はジェオルジ近くの森に来ていた。
「ふんふんふふーん」
 林道から少し外れた森の中で、シャールは鼻歌交じりに薬草を摘んで籠へと入れていた。
 そして必要な分を採り終えたシャールは立ち上がると軽く伸びをする。
「ん~っふぅ……」
「お疲れ」
「ひゃっ」
 シャールが驚きの声を上げて振り返ると、そこには予想通りにオックスがおり、シャールは口を尖らせて文句を言う。
「師匠、居たのなら言ってくださいよ」
「集中してたのか、声はかけたんだけど返事がなくてね」
「だからといって、後ろに無言で立っているのはダメですよ」
「それはすまないね……それで、どのくらい集まったんだい?」
「これくらいです」
「うん。私が集めた分も合わせればもう十分かな」
「これ位あれば少しは持ちますね」
 お互いの籠を見て二人共頷いた。
「それじゃあ、時間があるし歩いて帰ろうか」
「はいっ」
 籠を持ち、オックスとシャールは街へと足を向けた。
「ん?」
「どうかしたかい、シャール」
 その道中、シャールがそれを見つけた。
「師匠。あの爪跡って何の爪跡ですかね?」
 シャールが指差した木には、動物のものだろうか、大きな爪痕が大人の男性二人分ほどの高さの場所にあった。
「う~ん、見たことない爪跡だね……」
 オックスは困ったように唸るが、薬を作るのが薬師であるので、薬師は生物については一般人と同じ知識量しかない。
 オックスもその例には漏れず。いくら考えても分からないものは分からない。
「もしかしたら大きな猫かもしれませんね」
 冗談っぽく笑うシャールだが、それを聞いたオックスは昨日の噂を思い出す。
 その直後、少し遠くの茂みが揺れる音を耳にしてオックスの背筋に冷たいものが走った。
「……シャール」
「なんですか、師匠?」
「薬草を置いて走るよ」
「え?」
「早く!」
「は、はい!」
 オックスの言葉でシャールが走り出し、オックス自身もその後ろを走る。
「いきなりどうしたんですか、師匠!」
「私たちは狙われている!」
「えっ」
 走りながらシャールが周りを見ると、ガサガサガサッと茂みの揺れが二人を追う様に近づいて来ているのを見つけた。
「だ、誰が!」
「雑魔だ!」
 オックスの怒鳴り声に近い返答を聞き、シャールは目を見開く。
 薬師は薬を作るだけで戦闘能力は皆無に等しく、薬草の採取などで使うナイフを持ってはいるが、ほとんど役に立たたないだろう。
「ど、どう」
「足を動かせ!」
 喋ろうとするシャールを怒鳴りつけ、オックスはそのまま走り続ける。
 既に二人の耳には、先程まで聞こえていなかった獣の息遣いが聞こえてくる。
(こ、このままじゃ私だけじゃなくて師匠もっ)
 思考による隙は一瞬だったが、相手にはその一瞬の隙で十分。
 シャールへと向かって、何かが飛びかかった。
「シャール!」
 オックスの叫び声が聞こえたと思ったら、気付けばシャールは地面を転がっていた。
 オックスが後ろから突き飛ばしたのだと理解し、シャールは起き上がってオックスの方を見て固まった。
「グルルル」
 見たこともない程の大きい緑色をした猫が、そこに居た。
 そんな大きな猫と対峙しながらオックスは叫ぶ。
「早く逃げるんだ!」
「でも、師匠が!」
「私は自分で何とかする!」
「でもっ」
「早く行け!」
「っ……ぅ、ぅううう!」
 オックスの怒鳴り声にシャールは体を震わせると、泣きながら、脇目も降らずに街へと走り出した。
「お前の相手は私だ!」
「グルァ!」
 後ろから聞こえてきた声にも振り返らずに。

「緊急の依頼です。ジェオルジにある村近くの森で雑魔が発見されました。目撃情報からフォレストパンサーだと思われます」
 ハンターオフィスの女性職員は元ハンターとして冷静に、だが焦りからか早口で敵と敵の情報を伝えてきた。
「フォレストパンサーは森に生息している肉食の雑魔です。特徴としては鋭く尖った爪と牙。群れを成さず、森で紛れるのに適した緑色の毛並みを持ち、移動速度が凄まじく速く走ることが出来ます。これらの特徴を活かし、茂みなどに隠れて獲物を待ち伏せ、そして凄まじい速さで駆けて獲物に襲いかかり獲物を仕留めます。本来はジェオルジ周辺にはおらず、獲物も小動物などを襲うはずですが……いえ、原因を考える時間はありませんね」
 思考の海に出かけた職員は頭を振ると、依頼内容を説明し始めた。
「依頼主は薬師見習いのシャールさん。依頼主の話では森の林道を通っている途中で襲われたということですので、林道付近に潜伏しているい可能性が高いと思われます。依頼主はオックスさんの救出を最優先にして貰いたいとの事で、それには我々も同意見です。なので、今回はオックスさんの救出を最優先。フォレストパンサーの討伐はオックスさんの無事を確認してからでお願いします」
 説明を終えた職員は村の大人に寄り添われて泣き疲れて眠っているシャールを見て。
「オックスさんが亡くなっていた場合は……ご遺体だけでも連れて帰って来てあげてください」
 と、静かに呟いた。

解説

●シナリオの目的
 主な目的、薬師オックスの救出
 副次的目的、フォレストパンサーの討伐

●場所
 全体:30×30スクエアの正方形

●敵
 名前  :フォレストパンサー
 数   :1体
 姿   :緑色の瞳に緑色の毛の豹
 大きさ :頭胴3m程、尾2m程。
 特徴  :群れを成さずに単体で行動している。
      凄まじい速さで移動出来る。
      体毛は森に紛れるのに適した緑色なので、茂みなどに身を隠して獲物を待ち伏せて襲い掛かる。
 攻撃方法:鋭い爪と牙による攻撃。脚力を活かした飛びかかり。
 説明  :3m程の大きな黒豹ならぬ緑豹。ジェオルジ周辺には生息していない。
 備考  :森に生息している肉食の雑魔。

マスターより

 初めましての方は初めまして。お久しぶりの方はお久しぶりです。
 私、ザントと申します。
 以後お見知りおきを。

 今回は、救出と戦闘のシナリオとなっています。
 救出ということで、オックスさんが存命か否かなのですが……無事かどうかはさておき、シナリオ開始時はまだ生きております。
 開始後は当たり前ですが、時間が経つに連れて生存率は少なくなっていきます。
 ですので、早く発見しないとなりません。
 早く見つけられるかどうかは、直感だけでなく運にも左右されるかもしれませんね。
 私からは以上となります。

 では、私のシナリオをお楽しみください。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2018/05/28 03:32

参加者一覧

  • 聖癒の奏者
    マリエル(ka0116
    人間(蒼)|16才|女性|聖導士
  • 見極めし黒曜の瞳
    Gacrux(ka2726
    人間(紅)|25才|男性|闘狩人
  • 命無き者塵に還るべし
    星野 ハナ(ka5852
    人間(蒼)|24才|女性|符術師
  • 勇気をささえるもの
    埜月 宗人(ka6994
    人間(蒼)|28才|男性|疾影士
依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/05/20 20:53:58
アイコン 相談卓
埜月 宗人(ka6994
人間(リアルブルー)|28才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2018/05/22 04:04:56