ゲスト
(ka0000)
相容れない2人
マスター:DoLLer

このシナリオは5日間納期が延長されています。
- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 3~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2018/05/26 15:00
- リプレイ完成予定
- 2018/06/09 15:00
オープニング
草を、千切っていた。
土を噛む根っこから引きはがして。可憐な花を咲き誇る花は叫んでいるのだろうか。
あいつならそれが分かるのだろうか。
自問自答しながらも、草は髭根すらも残さず取り除いた。あいつは望まないからだ。
「馬鹿野郎めが」
ギムレットはぼんやりと呟いた。
それは花を咲かせる草に対してであり、自分に対してであり、そしてこれを引き抜くように言いつけたあいつに対してであった。
心は丈夫な方だと思ってはいたが、涙がにじみそうになる。苦しいのか、悲しいのか、情けないのか、それとも苛立ちなのか。自分でもよく区別はつけられなかった。
汗と共に二の腕で拭うギムレットの視界が少しだけ暗くなった。あいつの影だ。
「悪い言葉を使うなら外へお行きなさい。小さな心の陰りも、森に影響してしまいます」
あいつ、アガスティアのローブも顔も、ギムレットと同じように土で汚れていた。むしろ細枝のような体躯の彼女ならば、蓄えた疲れはもっと大きいだろうに、
「この草むしりで十分心はまで汚れちまってるけどな」
心のトゲが自然と漏れ出てしまっていたことには気づいたが、それを留めておくことは弱った心にはできなかったし、そして言ってしまったことをどうにかできることもなかった。
アガスティアはその言葉に顔を曇らせた。
「分かっていたでしょう。ドクダミは繁殖力が強すぎると。人の手を入れれば調和は簡単に崩れてしまうのです」
「調和ってなんだよ。こうして手入れすることだって、お前が毎日祈りを捧げて正のマテリアルで森を満たす行為も調和から外れてるだろ」
わかってた。
それが言っちゃいけないことは。
だが、疲れ果てた心ではブレーキは効かない。
「ギムレット……」
「エルフは寿命が長すぎるんだ。お前の人生観からすれば調和なんだろう。森を生み出すのだって自分の一生で見届けることができる。植生が目まぐるしく変わって、やがて大きな森になっていくのを注意深く見守っているだけで果たされるんだろうけどな。ドワーフは違う。自分の一生じゃ見届けられないんだ」
そうしてギムレットはスコップを手にした。
「ドワーフの寿命は200年。だが、実際にゃもっと短い。だから自分の手で生み出すんだよ。自分の目で見届けるために工夫するんだ。努力するんだ。自然と違うさ。失敗だってある。今回みたいに種を撒きすぎて植生バランスが崩すこともあるさ。だけどそうでもしなきゃ、オレは森を見届けられない」
「ドワーフが心打つ作品を作るのは、その作品に魂を込め、想いを託すからでしょう。しかし森は生き物です。子供であり、兄弟であり、親であるのです。それをいたずらに自分の思い通りにしようとするのが道理ですか。失敗したら森は元に戻らないのですよ」
「子育てっていうなら、自分の想いと技術をきっちり伝えることもそうだろう。失敗を恐れて何ができるってんだ」
ここまで言い合いをしたのは多分初めてだった。
二人とも疲れているんだろうとは思っていたが、そんな自分の考えもどこか他人事のようで。
「失敗できるはずがないでしょう。命なんですよ」
「ああ、もういい! 御託は十分だ。結局、お前は自分の考えに固執してばかりだ」
ギムレットはスコップを投げ捨てて立ち上がった。
「お前の長い人生なら、オレなんかいる方が邪魔だってことだろ」
アガスティアが何かつぶやいた気がしたが、わざわざ聞き直すこともできなかった。
それより一刻でも早く、この森から出たい気持ちでいっぱいだった。
歪虚との戦いで消失してしまった森。
その原因の一端を作ったギムレットにとっては森の再生は贖罪の意味もこもっていた。
気が付けば森はギムレットに影を作るほどになっていた。
だが森はあくまでアガスティアの、エルフの住む領域だ。
自分は何だったのか。言い知れない憤怒が、培ってきた様々な思いを虚無に塗り替えていく。
ギムレットはその日、森を出た。
ハンターオフィスに自分の後始末だけを依頼して。
土を噛む根っこから引きはがして。可憐な花を咲き誇る花は叫んでいるのだろうか。
あいつならそれが分かるのだろうか。
自問自答しながらも、草は髭根すらも残さず取り除いた。あいつは望まないからだ。
「馬鹿野郎めが」
ギムレットはぼんやりと呟いた。
それは花を咲かせる草に対してであり、自分に対してであり、そしてこれを引き抜くように言いつけたあいつに対してであった。
心は丈夫な方だと思ってはいたが、涙がにじみそうになる。苦しいのか、悲しいのか、情けないのか、それとも苛立ちなのか。自分でもよく区別はつけられなかった。
汗と共に二の腕で拭うギムレットの視界が少しだけ暗くなった。あいつの影だ。
「悪い言葉を使うなら外へお行きなさい。小さな心の陰りも、森に影響してしまいます」
あいつ、アガスティアのローブも顔も、ギムレットと同じように土で汚れていた。むしろ細枝のような体躯の彼女ならば、蓄えた疲れはもっと大きいだろうに、
「この草むしりで十分心はまで汚れちまってるけどな」
心のトゲが自然と漏れ出てしまっていたことには気づいたが、それを留めておくことは弱った心にはできなかったし、そして言ってしまったことをどうにかできることもなかった。
アガスティアはその言葉に顔を曇らせた。
「分かっていたでしょう。ドクダミは繁殖力が強すぎると。人の手を入れれば調和は簡単に崩れてしまうのです」
「調和ってなんだよ。こうして手入れすることだって、お前が毎日祈りを捧げて正のマテリアルで森を満たす行為も調和から外れてるだろ」
わかってた。
それが言っちゃいけないことは。
だが、疲れ果てた心ではブレーキは効かない。
「ギムレット……」
「エルフは寿命が長すぎるんだ。お前の人生観からすれば調和なんだろう。森を生み出すのだって自分の一生で見届けることができる。植生が目まぐるしく変わって、やがて大きな森になっていくのを注意深く見守っているだけで果たされるんだろうけどな。ドワーフは違う。自分の一生じゃ見届けられないんだ」
そうしてギムレットはスコップを手にした。
「ドワーフの寿命は200年。だが、実際にゃもっと短い。だから自分の手で生み出すんだよ。自分の目で見届けるために工夫するんだ。努力するんだ。自然と違うさ。失敗だってある。今回みたいに種を撒きすぎて植生バランスが崩すこともあるさ。だけどそうでもしなきゃ、オレは森を見届けられない」
「ドワーフが心打つ作品を作るのは、その作品に魂を込め、想いを託すからでしょう。しかし森は生き物です。子供であり、兄弟であり、親であるのです。それをいたずらに自分の思い通りにしようとするのが道理ですか。失敗したら森は元に戻らないのですよ」
「子育てっていうなら、自分の想いと技術をきっちり伝えることもそうだろう。失敗を恐れて何ができるってんだ」
ここまで言い合いをしたのは多分初めてだった。
二人とも疲れているんだろうとは思っていたが、そんな自分の考えもどこか他人事のようで。
「失敗できるはずがないでしょう。命なんですよ」
「ああ、もういい! 御託は十分だ。結局、お前は自分の考えに固執してばかりだ」
ギムレットはスコップを投げ捨てて立ち上がった。
「お前の長い人生なら、オレなんかいる方が邪魔だってことだろ」
アガスティアが何かつぶやいた気がしたが、わざわざ聞き直すこともできなかった。
それより一刻でも早く、この森から出たい気持ちでいっぱいだった。
歪虚との戦いで消失してしまった森。
その原因の一端を作ったギムレットにとっては森の再生は贖罪の意味もこもっていた。
気が付けば森はギムレットに影を作るほどになっていた。
だが森はあくまでアガスティアの、エルフの住む領域だ。
自分は何だったのか。言い知れない憤怒が、培ってきた様々な思いを虚無に塗り替えていく。
ギムレットはその日、森を出た。
ハンターオフィスに自分の後始末だけを依頼して。
解説
ドワーフのギムレットからの依頼です。
光の森と呼ばれる小さな森にドクダミが大繁茂しています。森に住むただ一人のエルフ、アガスティアだけでは対処しきれないだろうから手伝ってあげてほしい。ということです。
目的
・森を傷つけないようにドクダミを取り除く
・二人の仲直り
森について
基本的に2m程度の木々が並ぶ丘陵で、森という名称がようやく相応しくなってきた場所です。
アガスティア
焼けた森唯一の生き残りのエルフ。女性。
淡々としたところがあります。
ギムレット
森を焼いた歪虚と戦ったあと、森の再生を手伝っていたドワーフ。男性。
割と直情的です。
その他
小さな森で始まるシナリオ群がこの前身となっています。
読まなくても大丈夫ですが、ここまでの経緯をどうしても確認したい場合はそちらをご覧ください。
光の森と呼ばれる小さな森にドクダミが大繁茂しています。森に住むただ一人のエルフ、アガスティアだけでは対処しきれないだろうから手伝ってあげてほしい。ということです。
目的
・森を傷つけないようにドクダミを取り除く
・二人の仲直り
森について
基本的に2m程度の木々が並ぶ丘陵で、森という名称がようやく相応しくなってきた場所です。
アガスティア
焼けた森唯一の生き残りのエルフ。女性。
淡々としたところがあります。
ギムレット
森を焼いた歪虚と戦ったあと、森の再生を手伝っていたドワーフ。男性。
割と直情的です。
その他
小さな森で始まるシナリオ群がこの前身となっています。
読まなくても大丈夫ですが、ここまでの経緯をどうしても確認したい場合はそちらをご覧ください。
マスターより
小さな森の話の軸であったエルフとドワーフを中心に捉えてみようと考えていたお話です。
エルフとドワーフの仲が悪い、というのはファナティックブラッドではないのですが、
でも実際その根底はどこにあるのだろうと考えた結果、
物に対する捉え方、ひいては生き方の違いなのかなと至ることができました。
さて、二人は価値観を超えて一度は手を取り合ったのですが、種の考え方を超えてまた手を取り合うことができるのでしょうか。
皆さまの考える向き合い方、教えていただければと思います。
エルフとドワーフの仲が悪い、というのはファナティックブラッドではないのですが、
でも実際その根底はどこにあるのだろうと考えた結果、
物に対する捉え方、ひいては生き方の違いなのかなと至ることができました。
さて、二人は価値観を超えて一度は手を取り合ったのですが、種の考え方を超えてまた手を取り合うことができるのでしょうか。
皆さまの考える向き合い方、教えていただければと思います。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2018/05/29 10:08
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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■相談卓■ ラティナ・スランザール(ka3839) ドワーフ|19才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2018/05/26 03:40:04 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/05/22 20:17:54 |