• 日常

ぬくもりをあなたに

マスター:ことね桃

このシナリオは5日間納期が延長されています。

シナリオ形態
ショート
難易度
やや易しい
参加費
1,000
参加人数
現在5人 / 3~5人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2018/06/04 19:00
リプレイ完成予定
2018/06/18 19:00

オープニング

●精霊からの手紙

 花の精霊フィー・フローレ(kz0255)は帝都に精霊の避難所を兼ねた自然公園が完成してからというもの、精霊を受け入れてくれたコロッセオ周辺の住民に感謝を示すために街路樹や花壇の世話を行っている。
 子犬の顔の精霊が小さい手でせっせと土いじりをする姿は、今まで精霊と馴染みが薄かった帝国の人々にとってなかなか興味深いものらしい。
 最近ではフィーに気軽に声をかけ、共にガーデニングに勤しむ子供達も現れている。
 子供達が来るたびに園芸道具を収めた籠を抱えては逃げ回っていたフィーだったが、ここ数日は緊張しながらも花の育て方を丁寧に教え始めたようで……コロッセオで精霊の警護にあたる軍人達も穏やかにその様子を見守っていた。

 そんなある日のこと。

 フィーが花の手入れを終えて公園に帰ってきたところ、公園の管理人アダムが「待っていましたよ」と言ってフィーに茶色の封筒を差し出した。
「……? 私二、オ手紙?」
「ええ、里帰りした溶岩の精霊様から。山に無事に到着されたので、麓の住民に手紙を書いてもらったんだそうです」
「マァ! ソレハ良カッタノダワ!」
 早速封筒から便箋を取り出し、目を輝かせながらそれを読み始めるフィー。手紙の内容はおおむね、次のようなものだった。

 ――皆は元気にしているだろうか。
 あの日、皆が快く送り出してくれたおかげで無事に故郷へたどり着いた。ありがとう。
 そこで話は突然なのだが、よかったら近いうちにこちらに遊びに来てくれないだろうか。
 先ごろ山で悪さをしていた雑魔をあらかた退治できたので、こちらの山で人間達が温泉の事業を再開する目途を立てたらしい。
 本格的に人間達がこの山を訪れることになれば騒々しくなるだろう。
 その前に私の自慢の湯を堪能してほしいと思っている。帝都で穏やかな時間を過ごさせてもらったささやかな礼だ。
 人間達に話を通してあるので、まとまった数で来てもらっても構わない。
 それと……こちらに人間の子供が湯治に来ているんだが、どうにも扱いにくくてな。
 できればでいい。その子らにも会って楽しい話のひとつでもしてやってくれないか。
 それでは、よろしく頼む――。

「アノ子ガ元気ソウデ嬉シイケド。ンー、温泉……?」
 かつて花畑だけが自分の世界だったフィーは「温泉」という言葉にいまひとつピンと来ないらしい。小首を傾げて考え込むとアダムが小さく頷いた。
「溶岩の精霊様の故郷は保養地として有名だったところです。傷を癒す効果や疲労回復で定評のあるお湯が地面から出てくるので、人間達がお風呂を造って利用していたんですよ」
「ウワァ、ソレハスゴイノ! ネエ、ソレナラ葵モ元気二ナルカナ!?」
 わかりやすく説明されるやいなや、フィーは声を大きく弾ませた。
 ――葵とはフィーの親友である清水の精霊の愛称だ。かつてある英霊から深い傷を受けた彼女は日常生活に戻れる程度まで回復したものの、現在も療養中の身である。
 アダムは口元に手を寄せ、フィーの問いに慎重に答えを選んだ。
「そうですねぇ。火山は自然の力が集まっていそうですし、温泉なら葵さんの水のマテリアルにも悪い影響はないと思います。ただ、僕は専門家ではないのでなんとも……」
「ンー。難シイノネ」
 尖った鼻先をスンと鳴らし、腕組みをするフィー。
 その時、地表から水気が立ち昇った。清水の精霊が姿を現したのだ。
『フィーよ、妾なら構わぬぞ。汝の好意は心地よいしの。それに数日旅をする程度なら力にそう問題はないはずじゃ。溶岩にも久しぶりに会うてみたいしのう』
「ホント!? 嬉シイノ! ヨーシ、他ニモ行キタイ子ガイナイカ確認シナイト。オ出カケノ準備準備!」
 フィーが親友の積極的な言葉に早速大喜びで駆け出そうとする。その時、清水の精霊がついと呼び止めた。
『フィーよ、ハンターオフィスにも声をかけてみてはどうじゃ? 手紙によると溶岩は人間の子供に何やら悩んでおるそうじゃ。妾らが話をすることもできようが、人間の社会に類する話であれば十分な答えを返すことは難しい。そういう時に力を借りる場面もあるじゃろう』
「ワァ! ソレハ良イアイデアナノ! 皆二会イタイッテ思ッテタカラ楽シミナノッ。ソレジャ、オフィスマデ行ッテクルノー!」
 とてとてとてーっと走っていくフィーの背中を清水の精霊とアダムはまるでやんちゃな娘の冒険を見守るように、ほのぼのと眺めていた。


●湯にたゆたう少女

「どうだい、メルル。体、少しは楽になってきたかな?」
「……よく、わかんない。でも寒い感じはなくなった……と思う」
 ここは溶岩の精霊が守護する火山の洞窟。
 小さな湯舟の傍で跪く少年の問いに、メルルと呼ばれた少女がとろんとした瞳のまま言葉を返した。
「そっか。ここ、色んな病気に効くって聞いたんだけどね。でももう少しだけ頑張ってみようよ。もしかしたら温まるうちに体がよくなってくるかもしれないし。それまで僕も頑張るからさ!」
「うん……兄さん、ありがとう」
 ちゃぷん、と音を立ててメルルの肩が湯に沈む。その時、洞窟の入り口から野太い声が響いた。
「おーい、エレン! そろそろ休憩時間は終わりだぞ。早く作業に戻れ!」
 エレンと呼ばれた少年は焦った様子ですぐに立ち上がった。
「わかりました親方! すぐ戻ります! ……メルル、ちゃんとお屋敷にひとりで戻れるね? 部屋に戻ったら温かくして寝るんだよ」
「うん。兄さんも怪我しないで、無事に帰ってきてね」
「ああ。約束する。それじゃ、また!」
 そう言って慌ただしく駆け出していくエレン。はじめは彼を眩しそうに見送るメルルだったが、その背が見えなくなり――ひとりぼっちになった途端にひどく寂しげな顔で小さく呟いた。
「どうせ私なんて、長く生きられないのに……どうして兄さんはあんなに無理をするのよ」
 自分の中にある病は表にこそ出てこないが、じわじわと命を蝕んでいる。その確信が彼女にはあった。
「お医者様も匙を投げたのに……少しでも可能性があるならって、無茶な仕事ばかり請け負って高い薬を買って……。今も、この温泉で私を休ませるためだけに、宿泊所で慣れない下働きをしてる。私がいなければ、兄さんはきっともっと良い仕事ができて、幸せになっているはずなのに!」
 メルルの目から涙がぽろぽろと湯に落ちていく。本当はもう、立ち上がることすら辛い。でも「兄の笑顔を失いたくない」。その思いだけでメルルは今、生きている。

 そんな兄妹の様子をじっと眺める赤い石ころがある。かの「溶岩の精霊」が身を竦めた姿だ。彼はかつて善意からこの少女に何度も励ましの言葉をかけたが、いずれも突っぱねられ、心を痛めていた。
(人とは儚いもの。だからこそ、懸命に幸せを願い、生を喜ぶものだと思っていたのだがな)
 彼はそう考えながら、外に向かってころころと転がっていった。

解説

目標
 温泉を堪能しつつ、メルルを元気づける

物語の舞台
 ゾンネンシュトラール帝国の火山の麓にある天然温泉

登場人物
 フィー・フローレ
  のんきに温泉を楽しむつもりでいます。
 清水の精霊
  ちょっと子供達の様子が気になる模様。
  ただし基本的には湯治がメインです。
 溶岩の精霊
  子供達を心配していますが、ふたりのために自分にできることはないと思っています。
 メルル
  病気を患い、兄に連れられて湯治に来ている女の子。
  闘病生活に疲れています。
 エレン
  前向きな勤労少年。休憩時間に妹の様子を見に来ます。
  両親を歪虚に殺されているため、妹を守りたいという気持ちがとても強いです。

情報の扱いについて
 エレンとメルルの情報については温泉到着時に溶岩の精霊から簡単な説明を受けているものとします。

浴場での注意
 浴場は家族風呂レベルの小さいものが洞窟内に3つ、集団で入れるものが露天に1つあります。
 いずれも水着や湯着を着用して入浴することになります。
 えっちなことは色々な事情(お察しください)からできません。
 代わりに飲食物の持ち込みは自由です。

マスターより

 こんにちは! ことねです。
 今回はほのぼのなようでいて、ちょっとシリアスな香りがする人助けのお話です。
 フィーは初めての温泉にワクワクしているようですが、良い思い出になるかどうかは……うん、頑張ろう!
 もし確認したいことがございましたら質問卓を立ててくださいませ。
 フィーが一生懸命できる範囲でお答えします。
 (質問は出発前日の正午まででお願いします)
 ささやかな物語ではありますが、ぜひよろしくお願いします!

関連NPC

  • ふわふわふんわり
    フィー・フローレ(kz0255
    精霊|10才|女性|精霊
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2018/06/17 13:29

参加者一覧

  • アヴィドの友達
    愛梨(ka5827
    人間(紅)|18才|女性|符術師
  • 比翼連理―瞳―
    澪(ka6002
    鬼|12才|女性|舞刀士
  • 比翼連理―翼―
    濡羽 香墨(ka6760
    鬼|16才|女性|聖導士
  • 死を砕く双魂
    セイ(ka6982
    ドラグーン|27才|男性|闘狩人
  • Braveheart
    ジェスター・ルース=レイス(ka7050
    ドラグーン|14才|男性|舞刀士
依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/06/03 16:52:44
アイコン 【相談卓】
濡羽 香墨(ka6760
鬼|16才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2018/06/03 22:03:28