• 日常

いちかのあめいり

マスター:愁水

このシナリオは5日間納期が延長されています。

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加人数
現在5人 / 3~5人
サポート
現在1人 / 0~2人
マテリアルリンク
報酬
無し
相談期間
6日
プレイング締切
2018/06/18 22:00
リプレイ完成予定
2018/07/02 22:00

オープニング

※このシナリオは原則として戦闘が発生しない日常的なシナリオとして設定されています。


 空が、鳴く。

**

 色彩架ける、自由都市。

 処は、旧市街に在る三兄妹のアパート。
 先日の戦いで、紅亜(kz0239)が負った傷の経過を診に、一人の軍医が往診に来ていた。

「――うっし、もうでーじょうぶだろう。仕事に戻ってもえーわよ」
「えー……」
「は? えーじゃないでしょ。クー、サーカスの花形やってる自覚あるの?」

 部屋の壁に腕を組みながら凭れていた黒亜(kz0238)が、呆れを含んだジト目を向ける。

「ハク兄がどれだけ苦労してサーカス切り盛りしたと思ってんの? 抜けてた穴、とっとと埋めてよね」
「クロ」

 僅かに嗜めるような声音が振り返る。黒亜は、しれっとした顔で、白亜(kz0237)の横顔から視線を逸らした。例によって弟を持て余す白亜は、鼻から小さく息を抜くと、紅亜の前に座る男へ目線を移す。

「何度も足労をかけたな。昔から紅亜の病院嫌いには手を焼いていてな……助かったぞ」
「気にすんな。つーか、弟妹揃って悩みの種やってんなぁ、オイ。黒亜、テメェのにーちゃん困らすなよ」
「あんたに関係ないでしょ」
「クロ」
「ま、オレとお前らの仲じゃねーか。なんかあったら何時でも呼べよ。あ、礼なら身体で」
「殺すよ?」
「両手に花なら本望だぜ」

 扇情的なウインクを寄越してきた男に、黒亜は軽蔑するように半目で見据えると、「……消滅すればいいのに」と、吐き捨てたのであった。




 買い出しへ向かう白亜と連れ立ち、軍医の男がアパートを後にすると、紅亜がボレロを羽織りながら自室を出て来た。キッチンでカップの洗い物をしていた黒亜は、一瞥もせずに、「……どこか行くの?」と、声をかける。

「んー……お散歩がてら……ちょっと……天幕に……」
「は?」

 黒亜は意識するよりも早く、紅亜を見ていた。彼の表情が呆気に取られる。

「次の公演……明後日、でしょ……? 身体……なまってたら大変、だから……」

 細く開けた扉の先へ、華奢な紅亜の後ろ姿は消えていった。
 部屋の空気がふっと動き、黒亜の前髪を僅かに揺らす。伏し目に翳る柘榴が、やるせないように、鬱積するように――鈍く、色付いていた。何時も、こうだ。兄を優先するばかり、妹のことが疎かになる。兄のように、“平等”に見るということが出来ない。先日の“件”が、良い例だ。

 羨望する、
 敬慕する、
 無二の背中は、何時だって――



「……ハク兄。オレ、いつかクーを殺すかもしれない」



 その時、紅い金魚を食べてしまった黒猫を見て、白狼は何を思うのだろうか。




 石畳の路地裏を、温い風が流れていく。

「軍のみなは壮健に暮らしているか?」
「おう。少なくとも、お前の馴染みのヤツらは変わりなくやってるぜ。ああ、そういや、ジルのヤツがまぁた女にフラれてよ。修羅場ったのか、顔にでっかい青痣作ってきたぜ」
「大方、二股でもかけていたのだろう」
「それが違うのよ。今回は三股ですって、旦那」
「全く……恋多き悪癖は未だに直っていないようだな」
「そういうお前は、そろそろ身ぃ固めてもえーんじゃねぇの?」
「何を……」
「来いよ、カウンセリング。お前だって、ずっとそのままでいいとは思ってねぇだろ?」
「……」
「まあ、無理強いはしねぇよ。只、オレは――オレ達は、何時でもお前の味方だぜ」
「……ああ」

 旧市街の街並みを、静かに歩いて行く。

「なあ、白亜」
「何だ」
「軍に戻ってくる気はねぇか? 今ならオレ達の力で何とかしてやる」

 民家に咲く梔子が空気に蒸されて、芳香を伝えてきた。

「今更俺が戻ったところで、微々たる戦力にしかならんよ」
「は、中佐への昇進を断ったヤツがよく言うぜ」
「何より、クロ達と築いてきたサーカス団を無下には出来んさ。だが……その心遣いには感謝しよう」
「……おう。ま、そう言うと思ったけどな。買いもん、手ぇ貸すか?」
「いや。君も忙しい身だろう」
「あいよ。――っと、そうだ。忘れるところだったぜ」

 男は白衣の胸ポケットから何とはなしに取り出した物を、白亜の手にしっかりと握らせた。手の中に収まる、冷たい感触。視線を落とした白亜の瞳が微動する。

「一週間ほど前の辺境地での任務でな、ルカのヤツが見つけたんだ。朗報と取るか、そうでねぇかは、お前の自由だぜ。まあ……アイツには身内もいねぇし、“相棒”のお前が持ってる方がいいと思ってよ」

 男は白亜の手を覆っていた掌をゆっくりと引き、「じゃあな」と、別れの挨拶を残して立ち去っていった。

「ああ……またな、シュヴァルツ」

 白亜は草臥れたような声で呟くと、開花する花のように指先を開く。掌には、チェーンの付いた認識票が眠っていた。打刻されていた名は――





 “リュネ”





 その名が、心に重くのし掛かってくる。

 彼の顔が。
 彼との日々が。
 彼との最後の任務が。
 彼を見た、最後の表情が――

「形見としての朗報か、置き土産としての悲報か……それとも……――リュネ、君は」



 生きているのだろうか?



「……雨が降りそうだな」

**

 空が、啼く。


解説

《目的》
・基本はフリー。
 骨休め、交流、ショッピング等ご自由に。
・白亜達は各々、思うことや囚われていることがあるようです。彼等と接することで、彼等の意識を調整出来るかもしれません。

《天気・時間》
・五月雨。
・14:00頃~

《場所》
>新市街
・都市内の街は噴水広場を中心に、メルヘンな景観を美しく残している。
 木組みの家々、家や店を飾り立てる季節の花々、お洒落な吊り看板、など、童話のような街並みになっている。
・店は西洋風の飲食店が多い。ファッションやジュエリー、通りにはワゴンショップなども。
・丘の上に、小さな教会と併設している孤児院がある。
 外には滑り台やブランコなどの遊具、孤児院の裏手には畑がある。

>旧市街
・住宅街や、三兄妹のアパートがある。旧市街の外れには、時計塔や小川、季節の花が咲く公園などがある。

>近郊
・天鵞絨サーカス団の天幕がある。

《NPC》
 白亜:
 天鵞絨サーカス団の団長。猛獣使い。黒亜と紅亜の兄。
 本日の買い出し担当兼調理担当。
 だが、まだ買い出しには向かっておらず、孤児院と併設している教会にいる様子。

 黒亜:
 天鵞絨サーカス団の副団長。主に投げナイフや歌い手を担当。三兄妹の次男。
 旧市街の外れの小川で、ぼんやりと歌を口ずさんでいる。

 紅亜:
 天鵞絨サーカス団の団員。末っ子。主に空中ブランコや踊り手を担当。
 先日の戦いの傷は完治。サーカス団の天幕にいる。空中ブランコやエアリアルストラップの稽古をしている様子。

 シュヴァルツ:
 茶髪紫眼の軍医。白亜の昔馴染み。
 白亜に、とある人物の認識票を渡した。実はまだ街をふらついている。

※質問は紅亜が回答致します。

マスターより

お世話になっております、愁水です。
今回は骨休めシナリオとなっておりますが、NPCの過去に触れたい方は、積極的な行動が必要となるかもしれません。
――そして。わかる方にはわかる“ヤツ”が登場しております。NPC登録するかは検討中ですが、今後もちらほら出せたらなと。

サポート枠は2名しか設けておりませんので、皆様とご相談の上、ご利用下さい。

関連NPC

  • 天鵞絨ノ月下美人
    紅亜(kz0239
    人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|格闘士(マスターアームズ)
  • 天鵞絨ノ赤椿
    白亜(kz0237
    人間(クリムゾンウェスト)|36才|男性|猟撃士(イェーガー)
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2018/06/28 23:26

参加者一覧

  • 天鵞絨ノ空木
    白藤(ka3768
    人間(蒼)|28才|女性|猟撃士
  • 軌跡を辿った今に笑む
    ロベリア・李(ka4206
    人間(蒼)|38才|女性|機導師
  • 夜空に奏でる銀星となりて
    レナード=クーク(ka6613
    エルフ|17才|男性|魔術師
  • 天鵞絨ノ風船唐綿
    ミア(ka7035
    鬼|22才|女性|格闘士
  • Schwarzwald
    浅生 陸(ka7041
    人間(蒼)|26才|男性|機導師

サポート一覧

依頼相談掲示板
アイコン 五月雨の休日【相談卓】
白藤(ka3768
人間(リアルブルー)|28才|女性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2018/06/18 19:56:00
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/06/14 00:30:46