ゲスト
(ka0000)
明日があるなら
マスター:守崎志野

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在5人 / 3~5人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2018/07/14 15:00
- リプレイ完成予定
- 2018/07/23 15:00
オープニング
●
かつてはささやかな緑があったという土地は、既に荒れて灰色になっている。集落の真ん中に掘られた井戸も、水が涸れて久しいと思われた。
粗末な家、というより小屋の中には病人らしい者が伏せっている。聞いた話の通りだ。
「済みません、城塞都市からシャハラの使いで来た者ですが」
井戸の近くに座っている長老らしい老人に近づき、ケイカは声を掛けた。
「城塞都市から?」
「はい。この集落の、エルノという女性に渡った豆や穀物の事なのですが」
「エルノ?部族にそんな女はおらん」
「え?」
数ヶ月前、シャハラが手配して開拓を進めている土地で食事への毒物混入と収穫物の盗難が起こった。
ハンター達が赴いて調べたことが糸口となって調査が進み、その後毒物混入は予期せぬ自然交配で弱い毒性を持った変種が出来たことに気付かず、通常の作物と一緒に収穫した事による事故という結論に達した。
確かに実だけを見れば通常より少し大きい程度でそれと思って見なければ簡単には見分けられない。
一方盗難の調査は難航したものの、皮肉にもその毒性のお陰でどこに流れたかということがわかってきた。
中毒患者らしき病人が出ていないかという情報を集め、そこから逆に辿っていったのだ。
「あなた達にその回収をお願いしたいの。理由は何であれ、放っておく訳にはいかないから」
毒性種の有無にかかわらず流れた作物の回収、中毒患者が出ていた場合は被害の調査と薬草や代わりの食糧の手配。
シャハラがケイカを含む配下にそう命じたのは当然だ。故意ではない、盗難に遭ったといっても、毒性のあるものを食糧として流したとなれば信用問題だ。下手を打てば開拓そのものがあらぬ誤解で撤退に追い込まれかねない。
それに、わかったのは流れた先や仲介した行商人くらいのもので、まだわからない事も多い。今までにわかった関係者からもっと話を聞く必要がある。
ケイカが担当することになったのは小さな集落だった。モグリの行商人からエルノという女性が受け取り、持ち帰ったという。
その集落はかつて男性が狩猟、女性が畑を耕して生計を立てていたが、歪虚の影響でか獲物がいなくなり、土地は枯れた。それでも一時は男性達が傭兵のような事をして糧を得ていたのだが、戦いの主力がハンターでなければ担えなくなった事や帝国への帰属問題で揉めた事でそれも失ったという。
そんな状況で何とか生活の糧を得ようとすれば、とれる手段は多くない。彼女は行商人の仲介で末端の兵士に身体を提供し、行商人は兵士から金を、エルノは行商人から食糧を受け取ったとの事だった。
「そんな女はいない……って、どういうことですか?」
「どうもこうも、そんな女は元からここにはおらん」
この部族は男尊女卑の気風が強く残り、女性の貞操観念に厳しいという。そんな中でエルノがとった手段がわかれば追放とかも有り得るかもしれない。
「……では、その女性とは関係なく外から運び込まれた食糧の事なのですが」
「何の事か知らんが、言い掛かりは迷惑だ。帰れ」
「でも、外から食糧が入った事は事実でしょう?その中には毒があるものが混ざっているかもしれないんです」
回収した分の補償はすること、中毒患者が出ていた場合は薬等の手配はすることを説明しようとしたが、
「帰れといっておる!小娘が!」
「ちょっと!」
取り付く島もない。だが、遠目ではあるが小屋で伏せっているのは中毒患者ではないかと思われる。
「痛い目を見たくなかったらとっとと帰れ!」
騒ぎを聞きつけたのか、十人前後の男女が周囲に集まってきた。
「話だけでも聞いて貰えませんか……」
「失せろ!」
誰かが持っていた棒がケイカの上に振り下ろされた。
●
「それは大変だったわね」
「はい。毒物が入った事で責められる事は考えていましたが、品物の存在自体を否定されるとは思いませんでした」
「でも、あなたの事だからただ逃げ帰ってきた訳ではないわね?」
何らかの情報はあるのでしょうと促すシャハラに、ケイカは頷いた。
集落から文字通り叩き出されたケイカだったが、肩や腕の痣だけ作って戻った訳ではない。
「出てきたのはほとんどが女性で、男性は二、三人でした」
戦いを生業にしていた位だからこういう時には男性が出てくる方が自然だ。男性に優先的に食糧を分けた結果、中毒で多くの男性が伏せることになったのではないか。
「あと、外側から見た限りですが、不自然に青々した畑がありました」
盗み出されたものの中には生命力・繁殖力の強化し、枯れた土地でも収穫出来る事を目的に作り出されたものもある。それらが植え付けられたとすればその不自然さにも説明が付く。
「どうやら間違いはないと思うけど、その分ではすんなり回収できそうにないわ」
「そうですね」
答えつつ、ケイカは集落の様子を思い起こしていた。
自分に殊更敵意を持っているという風ではなかったが、集落の人間が必死だったのは間違いない。
或いは彼らは、あの作物に生き延びる唯一の可能性を見いだし、奪われまいとしたのかもしれない。
そしてエルノという女性はどこに行ったのだろう?
追い出されたのか、集落の有様に呆れて出て行ったのか、それとも…
それに、彼女はどうして集落の禁忌を犯したのだろう?
周囲の有様を見かねて自ら行動を起こしたのか、意思に反して追い込まれたのか。
「どっちにしても、その結果が存在も否定される事だった、なんてね」
立場の弱い者というのは、いつもそうなのか。
あの調子ではシャハラやフリッツが行っても同じだろう。
かといって手をこまねいていたら問題になりかねないし、手繰れるかもしれない細い糸さえ切れてしまう。
ハンターの協力を仰ぐというシャハラの判断に異存は無かった。
かつてはささやかな緑があったという土地は、既に荒れて灰色になっている。集落の真ん中に掘られた井戸も、水が涸れて久しいと思われた。
粗末な家、というより小屋の中には病人らしい者が伏せっている。聞いた話の通りだ。
「済みません、城塞都市からシャハラの使いで来た者ですが」
井戸の近くに座っている長老らしい老人に近づき、ケイカは声を掛けた。
「城塞都市から?」
「はい。この集落の、エルノという女性に渡った豆や穀物の事なのですが」
「エルノ?部族にそんな女はおらん」
「え?」
数ヶ月前、シャハラが手配して開拓を進めている土地で食事への毒物混入と収穫物の盗難が起こった。
ハンター達が赴いて調べたことが糸口となって調査が進み、その後毒物混入は予期せぬ自然交配で弱い毒性を持った変種が出来たことに気付かず、通常の作物と一緒に収穫した事による事故という結論に達した。
確かに実だけを見れば通常より少し大きい程度でそれと思って見なければ簡単には見分けられない。
一方盗難の調査は難航したものの、皮肉にもその毒性のお陰でどこに流れたかということがわかってきた。
中毒患者らしき病人が出ていないかという情報を集め、そこから逆に辿っていったのだ。
「あなた達にその回収をお願いしたいの。理由は何であれ、放っておく訳にはいかないから」
毒性種の有無にかかわらず流れた作物の回収、中毒患者が出ていた場合は被害の調査と薬草や代わりの食糧の手配。
シャハラがケイカを含む配下にそう命じたのは当然だ。故意ではない、盗難に遭ったといっても、毒性のあるものを食糧として流したとなれば信用問題だ。下手を打てば開拓そのものがあらぬ誤解で撤退に追い込まれかねない。
それに、わかったのは流れた先や仲介した行商人くらいのもので、まだわからない事も多い。今までにわかった関係者からもっと話を聞く必要がある。
ケイカが担当することになったのは小さな集落だった。モグリの行商人からエルノという女性が受け取り、持ち帰ったという。
その集落はかつて男性が狩猟、女性が畑を耕して生計を立てていたが、歪虚の影響でか獲物がいなくなり、土地は枯れた。それでも一時は男性達が傭兵のような事をして糧を得ていたのだが、戦いの主力がハンターでなければ担えなくなった事や帝国への帰属問題で揉めた事でそれも失ったという。
そんな状況で何とか生活の糧を得ようとすれば、とれる手段は多くない。彼女は行商人の仲介で末端の兵士に身体を提供し、行商人は兵士から金を、エルノは行商人から食糧を受け取ったとの事だった。
「そんな女はいない……って、どういうことですか?」
「どうもこうも、そんな女は元からここにはおらん」
この部族は男尊女卑の気風が強く残り、女性の貞操観念に厳しいという。そんな中でエルノがとった手段がわかれば追放とかも有り得るかもしれない。
「……では、その女性とは関係なく外から運び込まれた食糧の事なのですが」
「何の事か知らんが、言い掛かりは迷惑だ。帰れ」
「でも、外から食糧が入った事は事実でしょう?その中には毒があるものが混ざっているかもしれないんです」
回収した分の補償はすること、中毒患者が出ていた場合は薬等の手配はすることを説明しようとしたが、
「帰れといっておる!小娘が!」
「ちょっと!」
取り付く島もない。だが、遠目ではあるが小屋で伏せっているのは中毒患者ではないかと思われる。
「痛い目を見たくなかったらとっとと帰れ!」
騒ぎを聞きつけたのか、十人前後の男女が周囲に集まってきた。
「話だけでも聞いて貰えませんか……」
「失せろ!」
誰かが持っていた棒がケイカの上に振り下ろされた。
●
「それは大変だったわね」
「はい。毒物が入った事で責められる事は考えていましたが、品物の存在自体を否定されるとは思いませんでした」
「でも、あなたの事だからただ逃げ帰ってきた訳ではないわね?」
何らかの情報はあるのでしょうと促すシャハラに、ケイカは頷いた。
集落から文字通り叩き出されたケイカだったが、肩や腕の痣だけ作って戻った訳ではない。
「出てきたのはほとんどが女性で、男性は二、三人でした」
戦いを生業にしていた位だからこういう時には男性が出てくる方が自然だ。男性に優先的に食糧を分けた結果、中毒で多くの男性が伏せることになったのではないか。
「あと、外側から見た限りですが、不自然に青々した畑がありました」
盗み出されたものの中には生命力・繁殖力の強化し、枯れた土地でも収穫出来る事を目的に作り出されたものもある。それらが植え付けられたとすればその不自然さにも説明が付く。
「どうやら間違いはないと思うけど、その分ではすんなり回収できそうにないわ」
「そうですね」
答えつつ、ケイカは集落の様子を思い起こしていた。
自分に殊更敵意を持っているという風ではなかったが、集落の人間が必死だったのは間違いない。
或いは彼らは、あの作物に生き延びる唯一の可能性を見いだし、奪われまいとしたのかもしれない。
そしてエルノという女性はどこに行ったのだろう?
追い出されたのか、集落の有様に呆れて出て行ったのか、それとも…
それに、彼女はどうして集落の禁忌を犯したのだろう?
周囲の有様を見かねて自ら行動を起こしたのか、意思に反して追い込まれたのか。
「どっちにしても、その結果が存在も否定される事だった、なんてね」
立場の弱い者というのは、いつもそうなのか。
あの調子ではシャハラやフリッツが行っても同じだろう。
かといって手をこまねいていたら問題になりかねないし、手繰れるかもしれない細い糸さえ切れてしまう。
ハンターの協力を仰ぐというシャハラの判断に異存は無かった。
解説
依頼内容:横流しされた豆類の回収
畑に植えられた作物が問題の豆類が植え付けられて育った物ならそれらも回収対象になる
その際に出来れば豆類がここに横流しされた経緯について知っていることがあれば聞き出して欲しい
場合に依っては力尽くでの回収も止むを得ないが、その際に死傷者を出すことは避けて貰いたい
後で問題にならないように事情を聞き取った上で説得が望ましい
集落の様子:三十人程の人間がいるが、そのうち六割が男性で多くが床に伏している
女性は伏せってはいないものの栄養状態が悪く弱っている模様
子供の姿が見えない
土地は荒れ、井戸の水も涸れかけているが、畑と集落の外れにある墓地には豆類が茂っている
狩りの獲物や畑の収穫が無くなり、帝国への帰属も拒否している為に困窮していたようだ
問題の豆類:開拓地で交配を繰り返して作られた新種
強い生命力と繁殖力を持ち、戦いで荒れ果てた土地でも根付き、実を結ぶ
いくらかでも養分があれば急成長し、短期に何度も収穫が可能
但し、強すぎて他の植物を駆逐して増えたり、危険な変種が出来やすい等の問題があり
まだ一般に栽培を広めるには至っていない
行商人の証言:元々小さな部族間や末端の兵士を相手に細々と商売をしていた
件の豆類は別の行商人から格安で仕入れたが、その人物にはその後会っていない
エルノという女性は向こうから取引を持ちかけてきた
エルノについて:二十代前半と思われる女性
行商人の印象では座して死を待つような部族のあり方をよく思っていなかったらしい
幼い子供がいるような事も言っていた
畑に植えられた作物が問題の豆類が植え付けられて育った物ならそれらも回収対象になる
その際に出来れば豆類がここに横流しされた経緯について知っていることがあれば聞き出して欲しい
場合に依っては力尽くでの回収も止むを得ないが、その際に死傷者を出すことは避けて貰いたい
後で問題にならないように事情を聞き取った上で説得が望ましい
集落の様子:三十人程の人間がいるが、そのうち六割が男性で多くが床に伏している
女性は伏せってはいないものの栄養状態が悪く弱っている模様
子供の姿が見えない
土地は荒れ、井戸の水も涸れかけているが、畑と集落の外れにある墓地には豆類が茂っている
狩りの獲物や畑の収穫が無くなり、帝国への帰属も拒否している為に困窮していたようだ
問題の豆類:開拓地で交配を繰り返して作られた新種
強い生命力と繁殖力を持ち、戦いで荒れ果てた土地でも根付き、実を結ぶ
いくらかでも養分があれば急成長し、短期に何度も収穫が可能
但し、強すぎて他の植物を駆逐して増えたり、危険な変種が出来やすい等の問題があり
まだ一般に栽培を広めるには至っていない
行商人の証言:元々小さな部族間や末端の兵士を相手に細々と商売をしていた
件の豆類は別の行商人から格安で仕入れたが、その人物にはその後会っていない
エルノという女性は向こうから取引を持ちかけてきた
エルノについて:二十代前半と思われる女性
行商人の印象では座して死を待つような部族のあり方をよく思っていなかったらしい
幼い子供がいるような事も言っていた
マスターより
お久しぶりです。
今回のシナリオは『千慮の一失 千愚の一慮』から続く形ですが
依頼解決の為に該当の依頼を読む必要はありません。
回収に対して部族の人間は抵抗しますが、衰弱しているのでハンターにとっては取るに足らないものです
基本的な条件を達成するだけなら易しい部類になるでしょう
ただ、畑や墓地に茂る緑は何なのか、集落の人間は何を隠しているのか
エルノはどこに行ったのか……
点と点を繋いでいくと見えてくるものがあるかもしれません
ご縁がありましたらよろしくお願いします。
今回のシナリオは『千慮の一失 千愚の一慮』から続く形ですが
依頼解決の為に該当の依頼を読む必要はありません。
回収に対して部族の人間は抵抗しますが、衰弱しているのでハンターにとっては取るに足らないものです
基本的な条件を達成するだけなら易しい部類になるでしょう
ただ、畑や墓地に茂る緑は何なのか、集落の人間は何を隠しているのか
エルノはどこに行ったのか……
点と点を繋いでいくと見えてくるものがあるかもしれません
ご縁がありましたらよろしくお願いします。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2018/07/22 03:00
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 アルマ・A・エインズワース(ka4901) エルフ|26才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2018/07/14 13:10:04 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/07/14 13:08:43 |