ゲスト
(ka0000)
Never Give Up
マスター:凪池シリル

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2014/12/26 12:00
- リプレイ完成予定
- 2015/01/04 12:00
オープニング
どうして――こうなったのか。
悪いといえる部分は確かに幾つか存在する。
割合で言うならば、今渦中に在る少年の責任がもっとも大きいだろう。
だが幾つか、不幸な偶然、としかいえない事実が重なったのも確かだ。
ただ、一つ言えるのは。
ずれた歯車の中、少年が諦めなかったからこそ、運命は廻り続けた。
ほんの少しの不運、気まぐれ、見落とし、思い違い。
それらが重なりずれが広がっていく運命の輪は、それでも動き続けて。
そうして――こうなった。
●
「あーその依頼ですか? まあ皆さんの力なら、そこまで危険はないと思うんですけどねー」
この依頼の詳細を、と尋ねたハンターに答える受付嬢の声は軽いものだった。
実際に話を聞けば成程、それほど重大な依頼とは思えない。
とある山村を襲ってきた、雑魔化したコボルト退治。発見されたのは数匹で、村の大人たちが追い払おうとしたところ、一度は退却していったらしい。
だが、今回は幸いにも追い払うことができたものの、村人では退治するまでは出来ない。
「山に入れないってのは村人にとって死活問題なんで、なるべく早めに倒しちゃってくださいってことですねー……ってなことで、集まったんなら転移門、準備しちゃいましょうか?」
受付嬢の態度は相変らず軽薄だが、だからと言って不真面目というわけではないらしい。
早速準備を始めたのは、純粋に、今不便を感じているだろう村人を気遣っての善意だった。
そう。善意だった。
追加の情報がソサエティにもたらされたのは、このあとのことだったのだから。
●
山のふもとにあるその村は本当に小さな村だった。
だけど、幼くして親を亡くした兄妹が二人、助けられて生きていけるのも、そんな、小さな村ゆえの結びつきの強さがあってのこと。
――おじさんは、嘘をついたわけじゃない。
山道を全力で走りぬけながら、少年は反芻する。
『大丈夫。何も心配は要らないよ。雑魔化したとはいえ、基本的にはコボルトなんて卑怯で臆病な連中だ。ちょっと脅かせば逃げていっただろう? すぐにハンターたちが来てくれる、それまでは大丈夫さ』
それが本来、「だから数日間のことだから、心配しないで我慢しろ」という意図で言われた言葉だということは、少年にだって分っていた。決して、「だから下手に山に入ってコボルトに遭遇したって大丈夫」という意味ではないということは。
少し考えれば分るはずだったのだ――こんなときに、身体の弱い妹が高熱を出したりしなければ。
そう遠くない位置にある薬草を取りに行くだけ。運悪く遭遇しなければいいことだし、出会ったとしても脅して怯んだ隙に逃げればいい。
大人に相談すれば止められるだろうと、焦った頭で先走った末路がこれだ。
ギャアギャアと喚く不快な嗤い声が、すぐ後ろから追いかけてきている。
――殺セ、殺セ。奪エ、奪エ。
コボルトの言葉なんて分からないはずなのに、嫌でも意味は理解できた。
ああそうだ。おじさんは嘘を言っていない。あいつらは臆病で卑怯者だ。だからこそ、自分より弱い相手がのこのこと目の前に現れた、そんな好機を逃すわけがない!
殺戮と略奪の優越感に浸る、そのためだけにコボルトたちは少年を殺しにくるだろう。
少年が今、必死に握り締める薬草も。奴らにとって大した意味はなくても、勝利の証拠品として、強者の権利として奪い取られる。
否応無しにその結末を想像して……限界を迎え始めている身体を自覚する。
もう、駄目だ。
諦めて、楽になりたい。
苦しい。喘ぐように酸素を求める。
酷使された肺が、抗議するようにひゅう、と音を立てた。
――今寝込んで苦しんでいる、妹の呼吸の音に良く似ていた。
諦めたく、ない。
たとえ勝つ事はできなくても。生き残ることは出来なくても。
たった一人の家族を守ると誓った、その約束だけは。
痛む肺を無理矢理動かして、精一杯息を吸う。
「う……お、あぁぁあああ!」
気力が、身体を突き動かした。脅すためにと持ってきていた武器――と言っても暖炉の火かき棒だが――を、コボルトめがけて投げつける。
当たりこそしなかったけれど、予想外の反撃と気迫に驚いたのか、コボルトたちが戸惑い、顔を見合わせて足を止めるのが見えた。
(……よし!)
距離が稼げたのを確認して、足元から手ごろな石を拾い上げてから再び走り始める。
(まだだ。まだ、諦めて、たまる、ものか――!)
その思いで、少年は必死で考える。
村の近くまで逃げることが出来れば、あいつらがそれに気付けば、向こうから逃げ出す可能性はある。
そこまで走ればいい。そこまで距離を稼げばいい。
……もし駄目でも、せめて一歩でも村の近くに。事態に気付いた誰かがすぐに僕を見つけられるように。僕が見つけた薬草を、少しでも早く妹に届けてくれるように。
諦めない。絶対に。
「……っ! やあぁっ!!」
頃合を見て、再び振り向いて、先ほど拾った石を投げる。偶然にもそれは先頭を行くコボルトの顔面に命中した。
ついてる、と思った。まだ完全に自分は幸運に見放されたわけじゃないと。悪足掻きでもすべきなんだ。諦めない限り、か細い可能性の糸はまだ垂らされていると。
必死で走る。道が開けてきたのを感じる。もうすぐ。もうすぐで、山の入り口近くまで来ているはずだった。あと少しだけ……――
ずれた歯車の中、少年が諦めなかったからこそ、運命は廻り続けた。
ほんの少しの不運、気まぐれ、見落とし、思い違い。
それらが重なりずれが広がっていく運命の輪は、それでも動き続けて。
「……がっ!?」
背中に、痛烈な痛み。
吸ったばかりの息が無理矢理押し出されて、むせる。
たまらず足がもつれ、倒れた。
……それもまた、少年の『悪足掻き』が出した結果。
コボルトによる投石。
離れた相手を足止めするには物を投げればいいと、興奮したコボルトに思い出させたのは、他ならぬ少年自身の行動だった。
後悔と痛みで目が眩む。限界を超えた疲労が身体に圧し掛かる。
これまでなのか。あがいても、駄目なのか。無駄なのか。僕が……弱いから。
涙で滲む視界で、それでも最後に妹の名前を呼ぼうと、顔を上げる。
そうして――こうなった。
その視線の先には、何も知らずに山に入ってきたばかりのハンターが居たのだ。
悪いといえる部分は確かに幾つか存在する。
割合で言うならば、今渦中に在る少年の責任がもっとも大きいだろう。
だが幾つか、不幸な偶然、としかいえない事実が重なったのも確かだ。
ただ、一つ言えるのは。
ずれた歯車の中、少年が諦めなかったからこそ、運命は廻り続けた。
ほんの少しの不運、気まぐれ、見落とし、思い違い。
それらが重なりずれが広がっていく運命の輪は、それでも動き続けて。
そうして――こうなった。
●
「あーその依頼ですか? まあ皆さんの力なら、そこまで危険はないと思うんですけどねー」
この依頼の詳細を、と尋ねたハンターに答える受付嬢の声は軽いものだった。
実際に話を聞けば成程、それほど重大な依頼とは思えない。
とある山村を襲ってきた、雑魔化したコボルト退治。発見されたのは数匹で、村の大人たちが追い払おうとしたところ、一度は退却していったらしい。
だが、今回は幸いにも追い払うことができたものの、村人では退治するまでは出来ない。
「山に入れないってのは村人にとって死活問題なんで、なるべく早めに倒しちゃってくださいってことですねー……ってなことで、集まったんなら転移門、準備しちゃいましょうか?」
受付嬢の態度は相変らず軽薄だが、だからと言って不真面目というわけではないらしい。
早速準備を始めたのは、純粋に、今不便を感じているだろう村人を気遣っての善意だった。
そう。善意だった。
追加の情報がソサエティにもたらされたのは、このあとのことだったのだから。
●
山のふもとにあるその村は本当に小さな村だった。
だけど、幼くして親を亡くした兄妹が二人、助けられて生きていけるのも、そんな、小さな村ゆえの結びつきの強さがあってのこと。
――おじさんは、嘘をついたわけじゃない。
山道を全力で走りぬけながら、少年は反芻する。
『大丈夫。何も心配は要らないよ。雑魔化したとはいえ、基本的にはコボルトなんて卑怯で臆病な連中だ。ちょっと脅かせば逃げていっただろう? すぐにハンターたちが来てくれる、それまでは大丈夫さ』
それが本来、「だから数日間のことだから、心配しないで我慢しろ」という意図で言われた言葉だということは、少年にだって分っていた。決して、「だから下手に山に入ってコボルトに遭遇したって大丈夫」という意味ではないということは。
少し考えれば分るはずだったのだ――こんなときに、身体の弱い妹が高熱を出したりしなければ。
そう遠くない位置にある薬草を取りに行くだけ。運悪く遭遇しなければいいことだし、出会ったとしても脅して怯んだ隙に逃げればいい。
大人に相談すれば止められるだろうと、焦った頭で先走った末路がこれだ。
ギャアギャアと喚く不快な嗤い声が、すぐ後ろから追いかけてきている。
――殺セ、殺セ。奪エ、奪エ。
コボルトの言葉なんて分からないはずなのに、嫌でも意味は理解できた。
ああそうだ。おじさんは嘘を言っていない。あいつらは臆病で卑怯者だ。だからこそ、自分より弱い相手がのこのこと目の前に現れた、そんな好機を逃すわけがない!
殺戮と略奪の優越感に浸る、そのためだけにコボルトたちは少年を殺しにくるだろう。
少年が今、必死に握り締める薬草も。奴らにとって大した意味はなくても、勝利の証拠品として、強者の権利として奪い取られる。
否応無しにその結末を想像して……限界を迎え始めている身体を自覚する。
もう、駄目だ。
諦めて、楽になりたい。
苦しい。喘ぐように酸素を求める。
酷使された肺が、抗議するようにひゅう、と音を立てた。
――今寝込んで苦しんでいる、妹の呼吸の音に良く似ていた。
諦めたく、ない。
たとえ勝つ事はできなくても。生き残ることは出来なくても。
たった一人の家族を守ると誓った、その約束だけは。
痛む肺を無理矢理動かして、精一杯息を吸う。
「う……お、あぁぁあああ!」
気力が、身体を突き動かした。脅すためにと持ってきていた武器――と言っても暖炉の火かき棒だが――を、コボルトめがけて投げつける。
当たりこそしなかったけれど、予想外の反撃と気迫に驚いたのか、コボルトたちが戸惑い、顔を見合わせて足を止めるのが見えた。
(……よし!)
距離が稼げたのを確認して、足元から手ごろな石を拾い上げてから再び走り始める。
(まだだ。まだ、諦めて、たまる、ものか――!)
その思いで、少年は必死で考える。
村の近くまで逃げることが出来れば、あいつらがそれに気付けば、向こうから逃げ出す可能性はある。
そこまで走ればいい。そこまで距離を稼げばいい。
……もし駄目でも、せめて一歩でも村の近くに。事態に気付いた誰かがすぐに僕を見つけられるように。僕が見つけた薬草を、少しでも早く妹に届けてくれるように。
諦めない。絶対に。
「……っ! やあぁっ!!」
頃合を見て、再び振り向いて、先ほど拾った石を投げる。偶然にもそれは先頭を行くコボルトの顔面に命中した。
ついてる、と思った。まだ完全に自分は幸運に見放されたわけじゃないと。悪足掻きでもすべきなんだ。諦めない限り、か細い可能性の糸はまだ垂らされていると。
必死で走る。道が開けてきたのを感じる。もうすぐ。もうすぐで、山の入り口近くまで来ているはずだった。あと少しだけ……――
ずれた歯車の中、少年が諦めなかったからこそ、運命は廻り続けた。
ほんの少しの不運、気まぐれ、見落とし、思い違い。
それらが重なりずれが広がっていく運命の輪は、それでも動き続けて。
「……がっ!?」
背中に、痛烈な痛み。
吸ったばかりの息が無理矢理押し出されて、むせる。
たまらず足がもつれ、倒れた。
……それもまた、少年の『悪足掻き』が出した結果。
コボルトによる投石。
離れた相手を足止めするには物を投げればいいと、興奮したコボルトに思い出させたのは、他ならぬ少年自身の行動だった。
後悔と痛みで目が眩む。限界を超えた疲労が身体に圧し掛かる。
これまでなのか。あがいても、駄目なのか。無駄なのか。僕が……弱いから。
涙で滲む視界で、それでも最後に妹の名前を呼ぼうと、顔を上げる。
そうして――こうなった。
その視線の先には、何も知らずに山に入ってきたばかりのハンターが居たのだ。
解説
えー、皆様から見た状況を説明します。
皆様は、ソサエティから、「ちょっとめんどくせーけど山狩りしてコボルト見っけて退治してね」とそんな感じで説明をされて依頼を受けました。
退治そのものよりも捜索が面倒そうだなーと、前情報からはそんな感じで山を登り始めたはずですが、山に入るなりいきなり倒れた少年と、怒りマックスでそれに追いすがろうとする雑魔化したコボルト4匹と遭遇。
ソサエティも村人も悪意はありません。行き違いで少年の不在をまだ知らなかっただけです。
そんな状況から始まります。
要するに現状、ソサエティでのシーン以外は全部PL情報ってやつですね。
コボルトは、ぼろっちい剣と盾を持ったのが一匹、棍棒持ちが二匹、石を抱えてるのが一匹です。ぶっちゃけまあ、大した敵ではない。
まあ、なんじゃそりゃあな状況なのはコボルトからしても同じことです。
1、2ラウンドは相手もまごついてると思います。
そこから我に返ってとりあえず少年をぼこり始めるなりどうするかは、皆様の行動次第。
重視するのはコボルトとの戦い方そのものでなく、この状況をいかに受け止め、対処するか。
皆様の設定やこれまでの経験から、どんな反応になるのか?
効率だけでなく、貴方のキャラに相応しい、魅力的なプレイングをお待ちしています。
なお皆様が受けた依頼はあくまで「山に現れた雑魔化コボルトを探し出して殲滅してください」となります。目の前の敵が全部とは限らないことに注意してください。
皆様は、ソサエティから、「ちょっとめんどくせーけど山狩りしてコボルト見っけて退治してね」とそんな感じで説明をされて依頼を受けました。
退治そのものよりも捜索が面倒そうだなーと、前情報からはそんな感じで山を登り始めたはずですが、山に入るなりいきなり倒れた少年と、怒りマックスでそれに追いすがろうとする雑魔化したコボルト4匹と遭遇。
ソサエティも村人も悪意はありません。行き違いで少年の不在をまだ知らなかっただけです。
そんな状況から始まります。
要するに現状、ソサエティでのシーン以外は全部PL情報ってやつですね。
コボルトは、ぼろっちい剣と盾を持ったのが一匹、棍棒持ちが二匹、石を抱えてるのが一匹です。ぶっちゃけまあ、大した敵ではない。
まあ、なんじゃそりゃあな状況なのはコボルトからしても同じことです。
1、2ラウンドは相手もまごついてると思います。
そこから我に返ってとりあえず少年をぼこり始めるなりどうするかは、皆様の行動次第。
重視するのはコボルトとの戦い方そのものでなく、この状況をいかに受け止め、対処するか。
皆様の設定やこれまでの経験から、どんな反応になるのか?
効率だけでなく、貴方のキャラに相応しい、魅力的なプレイングをお待ちしています。
なお皆様が受けた依頼はあくまで「山に現れた雑魔化コボルトを探し出して殲滅してください」となります。目の前の敵が全部とは限らないことに注意してください。
マスターより
のっけから面倒くさいシナリオでこんにちは。凪池シリルと申します。
少年の諦めない気持ちと決意。今回選んだ曲からはそんなイメージを膨らませてこのようなお話になりました。
ずれにずれた挙句におかしな具合に一周した運命の輪は、さてどのような話を紡ぐでしょうか?
少年の諦めない気持ちと決意。今回選んだ曲からはそんなイメージを膨らませてこのようなお話になりました。
ずれにずれた挙句におかしな具合に一周した運命の輪は、さてどのような話を紡ぐでしょうか?
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2014/12/27 06:31
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
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相談卓 マヘル・ハシバス(ka0440) 人間(リアルブルー)|22才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2014/12/26 09:53:00 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/12/22 10:21:48 |