• 冒険

ルーサー、王都への旅立ち(急流!筏下り

マスター:柏木雄馬

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
参加費
1,000
参加人数
現在8人 / 4~8人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2018/08/24 09:00
リプレイ完成予定
2018/09/02 09:00

オープニング

 グラズヘイム王国北東部、フェルダー地方── 王国の円卓会議に出席権を持つ大貴族ダフィールド侯爵家の四男坊ルーサーは、その日、旅立ちの朝を迎えていた。王都イルダーナにある王立学園に入学する為、長年住み慣れた故郷を離れるのだ。
 背嚢に背負う荷物は必要最小限──長旅をする者の心得だ。身に纏った旅装は巡礼者の装束。王国をグルリと巡る巡礼者たちの為の──即ち、『徒歩での旅』に最も適した恰好だった。
「本当に馬車は使わなくても構わんのか?」
「はい、父上。馬車には良い思い出がありませんし……それに、幸い、歩き旅には慣れておりますし」
 館の玄関前のロータリー──見送りに出た大勢の使用人たちの前で、苦笑を交えながらルーサーがそう答えると、前侯爵家当主ベルムドはそうか、と呟き、肩を落とした。
「では、ルーサー。楽しんでこい。王都での生活は……刺激的だぞ?」
「あはは…… 肝に銘じます」
 父親と使用人たちに手を振って見送られ、ルーサーは故郷を、オーサンバラを後にした。旅を共にするのは使用人ではなく、護衛として雇われたハンターたちだ。
 ルーサーたっての希望でそうなった。……少年はとある事情からハンターたちと共に旅をしたことがあった。狭い世界しか知らなかった自分に、彼らは多くのことを教えてくれた。

 オーサンバラを出たルーサーはニューオーサンの街を経由して、兄たちの仕事場に赴いて出立の挨拶をしてから、大河エリダスの船着き場へと続く川沿いの街道を上った。この場合の『上る』というのは『王都に上る』という上り下りの上りであって、川と道路自体は下流・低地に向かって下っているのでややこしい。
「オーサン川。大河エリダスに流れ込む支流の一つで、別称を『宝石の川』と言います。水深も浅く流れも急で水運には向かない川ですが、その別称が示す通り、ニューオーサンの街で研磨された宝石や宝飾品などをエリダスまで運ぶのに使われています」
 街道の傍らを流れる広い川原を示しながらルーサーがハンターたちに地元の名勝の解説を始める。
「並の船乗りにはまともに下れぬ急流ですが、とある地元の川族だけが先祖代々口伝で伝えられてきた秘密の航路を知っていたそうです。それをご先祖様が雇ったのですね。昔は山賊の跋扈する陸上を輸送するよりずっと安全でたくさんの荷物を手早く運べるとニューオーサンの宝石流通のほぼ全てを占めていて……っと、噂をすれば、ですね。見てください、あれが『宝石筏』です!」
 実際に目にするのは自分も初めてだ、とその瞳を輝かせてルーサーが指を差す。
 その指し示す先──白波が岩に砕ける急流の只中を、百足の様に幾つも連結された筏が下って来る様が見えた。手にした棒一本で器用に筏を操る船頭たち──複数の船頭たちの手によって数珠繋ぎの筏がクネクネと岩場を抜けて行く様は、見ようによっては川を下る龍の様にも見えなくもない。
「すごいすごい……まさに伝統芸……失礼、職人芸でしたね……!」
 自分たちを追い抜いて流れていく筏の群れを見送って…… ルーサーは感嘆の吐息を漏らした。
「……今は街道が整備され、山賊の類も軒並み討伐されて、昔と比べれば陸路も随分と安全になりました。知ってますか? ソード兄様が所属する広域騎馬警官隊も元々は川賊の討伐を目的に組織され、それが後にオーサン川の水運警備、街道警察を経て今の広域治安維持組織へと発展したものなんです。……いずれは宝石の流通も陸路がメインになっていくのでしょう。宝石筏の姿は消えて、船頭たちの技術の継承も途絶えて…… それはとても悲しいことです」
 でも、それはちょっともったいないなぁ、あんなに凄い技術なのに── ルーサーはぶつぶつと思索を続ける。
(──あれに乗ったらきっと楽しい。レジャー化できれば観光資源になるのではなかろうか。うん、文化遺産として技術の継承も出来るし、卒業したらカール兄様に頼んで事業化を任せてもらおうかな? その際、問題は安全面が懸念されることだけど──)
 ……王立学園への入学が決まった後。ルーサーは家庭教師を雇い直して、小さい頃は苦手で聞き流していた学問を再びやり直していた。ダフィールド侯爵領やグラズヘイム王国の歴史──ただ単語や数字を覚えるのではない、政治史としての生きた歴史を学び。その理解を支える為の広範な知識を、文学を、法律を、宗教を、社会を、国家論を、文化論を、人々の生活を、人間と言うものを改めて身に着けた。並行して身体の鍛錬も続け、以前はぽっちゃりとしていた体型も随分と引き締まっている。全てはハンターたちの教えに端を発したものだ。
「一人前の大人になる。ハンターの皆のような立派な大人に」
 それが当座のルーサーの目標だった。たとえ今後の人生がどう転ぶにせよ……

 川沿いの道を南下していたルーサーが、その光景に気付いて脚を止めたのはそれから一時間程後のことだった。
 先程、傍らの川面を通り過ぎて行った宝石筏なのだろう。とっくにエリダスに向かって下っているはずの一繋ぎの筏が、なぜか川岸に船を寄せて止まっていた。
「何があったんです?」
 現場へ駆け寄ったルーサーが身分を明かして訊ねると、船頭たちは困ったように川下を指差した。
 そちらに目を向けると、山陰に日の入った夕方前の薄暗い急流の光景の中に── 川面の上にフワフワ漂う多数の『炎』が揺らめき、煌いていた。
「なんです、あれは…… 『空飛ぶランタン』?」
「分からんのです。まるで鬼火じゃ。幸い、早めに気付いて舟を岸に寄せれたものの、ああやって川面に浮いたままあの場から離れんのです。正体も知れん内に迂闊に近づくわけにもいかず…… まったく、荷物を届けなけりゃならんというに……」
 ルーサーはハンターたちを振り返った。皆さんであの『空飛ぶランタン』──『鬼火』たちを掃討することは出来ないか?
 ハンターたちは思案した。……オーサン川は急流だ。戦闘はおろか、生身で川に入ることもできない。船を浮かべてその上で戦おうにも、流れが早くてその場には留まれない。
「掃討は無理、か……」
 ルーサーもまた考え込んだ。……掃討は無理との判断。だが、待てよ? 今、必要なのは掃討か? あの正体不明のアレを滅ぼすのは、本格的に準備を整えて来る後続に任せてしまえばよいのではないか? 自分たちがまず考えるべきことは……この目の前で困っている人たちを助け、無事に荷を届けさせること──
 ルーサーの目が輝いた。合法的(?)に宝石筏に乗る方法を見つけてしまったのだ。
「船頭さん」
 ルーサーが興奮を隠し切れずに伝えた。
「お急ぎと言うことならアレを突破しましょう。僕たちを乗せて筏を出すことはできますか?」

解説

1.状況と目的
 PCは大貴族ダフィールド侯爵家の四男坊ルーサーに護衛を名目に旅の道連れとして雇われたハンターたちの一人となります。
 状況はOP本文の通り。白波が岩に砕ける急流を連結した筏で下りつつ、川面の上に浮かぶ『鬼火』たちから皆を守り、突破してください。
 柏木分類『戦術系』(目的達成が最優先。敵の存在も障害の一つに過ぎない)のシナリオとなります。

2.舞台
 急流オーサン川。そこを高速で流れ下る筏の上。白波蹴立てて急流を下っている為、当然のことながら足場は最悪。デフォルトでは空中戦闘以上のペナルティ。要対策。まともな戦闘は期待できない?
 ロープで連結された筏の数は七。それぞれ真ん中に宝石の入った木箱が布で包まれ筏に括りつけられている。4人の船頭が先頭から後尾までばらけて配置し、長い木の棒で操船。命綱はつけていない。
 ハンターたちは筏に命綱を結ぶこともできますが、行動の自由は制限されます。また、川に落ちた状態で運が悪いと岩に身体を叩きつけられることも。ハンターと言えど無事では済みません。

3.敵 魔法生物(?)『鬼火』×たくさん
 空中を浮遊するランタンの様な魔法生物(?)。脆そうな見た目と違って存外、耐久性は高い(というより以下略)が攻撃が『急所』に入れば一発で消える。
 攻撃手段は、閃光投射(閃光直射による視界潰し)、焦熱投射(複数の鬼火による閃光焦点照射。凄く暑い→熱い)。
 カンテラ部分が壊れた後は枷を失ったが如く火種が巨大な火球に膨れ上がり、火炎弾投射や高速体当たりを仕掛けてくるようになる。

4.ヒント
 もっとも守らなければならないのは○○の○の○○です。それ以外はハンターで代替が利きますから(その分、戦力が低下しますが)

5.今回のオチ(描写未定)
 古都アークエルスから来た二人×二組の遺跡考古学者たちが付近の遺跡で罠に掛かって防衛装置を起動させてしまったとか何とか

マスターより

 またまたお手紙ありがとうございます!
 密度に関しては柏木が字数制限を超えて書いてしまったものを無理矢理煮詰めて纏めているからですねー、多分。つまり、リプレイに取り掛かる前の柏木のプロット造りが下手なのが理由です(ぇ 毎回、心情描写や情景描写、NPCの出番から真っ先に削られていってます(

 というわけで、お久しぶりのルーサーもの。登場当初と比べてまるで別人のように生まれ変わった彼も王立学園へ入学と相成りました。
 リプレイ初頭部はOP本文内の出来事のルーサーとの掛け合いでもOKです。以降が突破部分となります。
 ルーサーは……急流下りを楽しんでいます。皆様も一緒に笑ってくだされば幸いです
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2018/09/01 03:08

参加者一覧


  • ヴァイス・エリダヌス(ka0364
    人間(紅)|31才|男性|闘狩人
  • 戦神の加護
    アデリシア・R・時音(ka0746
    人間(紅)|26才|女性|聖導士
  • 流浪の剛力修道女
    シレークス(ka0752
    ドワーフ|20才|女性|闘狩人
  • 白嶺の慧眼
    イレーヌ(ka1372
    ドワーフ|10才|女性|聖導士
  • 掲げた穂先に尊厳を
    ルーエル・ゼクシディア(ka2473
    人間(紅)|17才|男性|聖導士
  • 星を傾く者
    サクラ・エルフリード(ka2598
    人間(紅)|15才|女性|聖導士
  • それでも私はマイペース
    レイン・ゼクシディア(ka2887
    エルフ|16才|女性|機導師
  • 灯光に託す鎮魂歌
    ディーナ・フェルミ(ka5843
    人間(紅)|18才|女性|聖導士
依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/08/22 18:11:37
アイコン 急流下り
サクラ・エルフリード(ka2598
人間(クリムゾンウェスト)|15才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2018/08/23 01:51:52