ゲスト
(ka0000)
【陶曲】届けメッセージ
マスター:KINUTA

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在5人 / 3~8人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 6日
- プレイング締切
- 2018/08/31 22:00
- リプレイ完成予定
- 2018/09/09 22:00
オープニング
●ポルトワール・グリーク商会
ナルシスは久方ぶりに実家へ足を運んでみた。姉のニケが性にも合わないことを始めていると小耳に挟んだので、ちょっとばかり嫌みを言いたくなったのだ。
「姉さん、身柄引き受けた孤児をあの商船学校に入れたんだって?」
「そうよ」
「残酷なことするねえ。あそこがどういう校風か姉さん知ってるじゃない。貧乏人には居場所ないよ」
「ええ。でも授業内容には間違いがないからね。あんたもあそこでようやく少しは何事かが身についたわけだし。怠け癖は全然直らなかったけど」
「人のことはほっといてよ。まあ僕が思うに、早晩嫌になって逃げちゃうね、その子」
「ならないわよ。根性のある子だったから。それよりナルシス、あんたバイトする気はない? どうせヒマでしょ。というかヒマしかないでしょ。ヒモだから」
「やだよ、僕こう見えても忙しいんだから」
「見え透いた嘘はいいからとにかくバイトしてちょうだい。ユニゾンの保養所がこの秋オープン予定だから、そこで」
「やだね」
「やんなさい」
「しつこいな、やだって言ってるじゃ」
「 や れ 」
「…………」
ナルシスが位負けしているところに、商会社員が入ってきた。
「副会長、手紙が届いています――副会長宛に」
社員が渡してきたのは、不格好な大きい封筒だった。
表には「ぐりいくしぉうかい、にけ・ぐりーくさま」。
送り主はと裏を見ると、「えんりけどおり にのななばんち えくらのいえ。しもん、なな、そのほか」
開けてみればそこには、複数の便せんが入っていた。
そのうちの一枚を取り、読んでみる。
『はいけい にけさま。まるこにいちゃんはげんきですか。おてがみしたいけど、がっこうのあるばしょ、わからんからできないです。だから、このてがみ、かわりに、とどけてください。しもん、は、えくらのいえ、で、げんきにしています。ななも、です――』
●全寮制商船学校――ベレン学院
ベレン学院は、海運業に必要な知識と実技の一切を教えてくれると評判の私立学校である。
中等、高等の2部門に分かれている。中等教育は12歳から15歳まで、高等教育は15歳から18歳までということになっているが、優秀な子には飛び級も認められている。
施される教育のレベルは高い。それだけに授業料も半端ではない。従って経済力のある家の子弟子女しか集まらない。
●べレン学院中等課1年A組
この夏急遽前ぶれなく転入してきたマルコについてクラスの面々は、情報を引き出そうと試みた。
彼が自分たちの社会においてどの位置に当てはまる人間なのか、調べるために。
「どこから来たの?」
「家は何をしているの?」
「これまでどこの初等学校にいたの」
それによってなんとか彼から、これまでどこの初等学校にも通っていなかったことを聞き出した。ついで孤児であることも。
この時点で面々は彼に対する評価を大いに下げた。恵まれた環境にいる者はそうでない者に対し、優越感と軽蔑を抱きがちなものだ。
「初等学校に行ったことない奴なんか初めて見た」
「親もいないのになんでこんなところに入ってきたんだ」
「来るところ間違えてんじゃないのか」
しかしそれでも彼らは、マルコに対しあからさまにその感情を示すことをためらった。
マルコは自分たちと同じように既製品ではなくオーダーメイドの服を着ている。高価な参考書や文具、その他諸々もきちんと揃えている。
ということはつまり、それだけの経済的支援が出来る誰かがバックにいるということになる。
それは一体誰なのか。どういう経過でそうなったのか。
そこのあたりをはっきりさせない限り、うかつなことは出来ない。
「誰か先生に聞いてみたら」
「知ってたって教えてくれないでしょ。同じ先生にならともかく、生徒には」
彼らの行動は、動かない動物の周囲を巡るカラスに似ていた。
時折おどけるように嘴で軽くつついては、これは強いのか弱いのか、生きているのか死んでいるのか、食えるものか食えないものか慎重に確かめている。
もし弱いなら、死んでいるなら、食えるなら、肉を啄んでやるのだが。目玉をほじってやるのだが。
●マルコの気持ち
今のところ、自分に対し周囲が特に何かするということはない。普通に挨拶もしてくる。
だが、その後ろに『探っている』という気配を強く感じる。
「そう、お父さんもお母さんもいないんだ」
「ふうん、苦労したんだね。大変だったんだね。でもさ、保護者さんはいるんだよね? この学校に入れるんだから」
「その人はおじいさん? おばあさん? それともおじさん、おばさん?」
「どこに住んでいるの? ポルトワール? それとも別のどこか?」
「教えてくれない?」
保護者だった人は歪虚に襲われて死んだ。住んでいた孤児院は買収にあって潰れた。孤児仲間は自分も含めてばらばらになってしまった。この学校に自分を入れたのはその買収相手である商会のトップである。
そんな事情口が裂けても説明したくない。
相手が信用ならないからとかいうことではない――実際信用ならないが。
そうではなくて、たとえ信用出来そうな相手であっても、話したくないのだ。
自分自身でまだ気持ちに整理がついていない。客観視して話せるほどには。
●託された手紙
「あなたがたにお使いをしに行ってもらいたいんですよ」
と言ってニケは、大きな封筒をハンターに渡した。
「彼への手紙です。同じ孤児院にいた子たちが送ってきましてね。彼のいる住所が分からないからって」
「教えてあげてないんですか?」
「ええ。でも、教えてあげてもいいですよ。彼が自分の元へ直に手紙が来てもいいという意思表示をしてくれるなら。だからこの手紙を渡すついでに、そこを聞いてきてください。ついでに……まさかもう音を上げているとは思いませんけど、一応――彼の様子も確かめてきてくれますか?」
ナルシスは久方ぶりに実家へ足を運んでみた。姉のニケが性にも合わないことを始めていると小耳に挟んだので、ちょっとばかり嫌みを言いたくなったのだ。
「姉さん、身柄引き受けた孤児をあの商船学校に入れたんだって?」
「そうよ」
「残酷なことするねえ。あそこがどういう校風か姉さん知ってるじゃない。貧乏人には居場所ないよ」
「ええ。でも授業内容には間違いがないからね。あんたもあそこでようやく少しは何事かが身についたわけだし。怠け癖は全然直らなかったけど」
「人のことはほっといてよ。まあ僕が思うに、早晩嫌になって逃げちゃうね、その子」
「ならないわよ。根性のある子だったから。それよりナルシス、あんたバイトする気はない? どうせヒマでしょ。というかヒマしかないでしょ。ヒモだから」
「やだよ、僕こう見えても忙しいんだから」
「見え透いた嘘はいいからとにかくバイトしてちょうだい。ユニゾンの保養所がこの秋オープン予定だから、そこで」
「やだね」
「やんなさい」
「しつこいな、やだって言ってるじゃ」
「 や れ 」
「…………」
ナルシスが位負けしているところに、商会社員が入ってきた。
「副会長、手紙が届いています――副会長宛に」
社員が渡してきたのは、不格好な大きい封筒だった。
表には「ぐりいくしぉうかい、にけ・ぐりーくさま」。
送り主はと裏を見ると、「えんりけどおり にのななばんち えくらのいえ。しもん、なな、そのほか」
開けてみればそこには、複数の便せんが入っていた。
そのうちの一枚を取り、読んでみる。
『はいけい にけさま。まるこにいちゃんはげんきですか。おてがみしたいけど、がっこうのあるばしょ、わからんからできないです。だから、このてがみ、かわりに、とどけてください。しもん、は、えくらのいえ、で、げんきにしています。ななも、です――』
●全寮制商船学校――ベレン学院
ベレン学院は、海運業に必要な知識と実技の一切を教えてくれると評判の私立学校である。
中等、高等の2部門に分かれている。中等教育は12歳から15歳まで、高等教育は15歳から18歳までということになっているが、優秀な子には飛び級も認められている。
施される教育のレベルは高い。それだけに授業料も半端ではない。従って経済力のある家の子弟子女しか集まらない。
●べレン学院中等課1年A組
この夏急遽前ぶれなく転入してきたマルコについてクラスの面々は、情報を引き出そうと試みた。
彼が自分たちの社会においてどの位置に当てはまる人間なのか、調べるために。
「どこから来たの?」
「家は何をしているの?」
「これまでどこの初等学校にいたの」
それによってなんとか彼から、これまでどこの初等学校にも通っていなかったことを聞き出した。ついで孤児であることも。
この時点で面々は彼に対する評価を大いに下げた。恵まれた環境にいる者はそうでない者に対し、優越感と軽蔑を抱きがちなものだ。
「初等学校に行ったことない奴なんか初めて見た」
「親もいないのになんでこんなところに入ってきたんだ」
「来るところ間違えてんじゃないのか」
しかしそれでも彼らは、マルコに対しあからさまにその感情を示すことをためらった。
マルコは自分たちと同じように既製品ではなくオーダーメイドの服を着ている。高価な参考書や文具、その他諸々もきちんと揃えている。
ということはつまり、それだけの経済的支援が出来る誰かがバックにいるということになる。
それは一体誰なのか。どういう経過でそうなったのか。
そこのあたりをはっきりさせない限り、うかつなことは出来ない。
「誰か先生に聞いてみたら」
「知ってたって教えてくれないでしょ。同じ先生にならともかく、生徒には」
彼らの行動は、動かない動物の周囲を巡るカラスに似ていた。
時折おどけるように嘴で軽くつついては、これは強いのか弱いのか、生きているのか死んでいるのか、食えるものか食えないものか慎重に確かめている。
もし弱いなら、死んでいるなら、食えるなら、肉を啄んでやるのだが。目玉をほじってやるのだが。
●マルコの気持ち
今のところ、自分に対し周囲が特に何かするということはない。普通に挨拶もしてくる。
だが、その後ろに『探っている』という気配を強く感じる。
「そう、お父さんもお母さんもいないんだ」
「ふうん、苦労したんだね。大変だったんだね。でもさ、保護者さんはいるんだよね? この学校に入れるんだから」
「その人はおじいさん? おばあさん? それともおじさん、おばさん?」
「どこに住んでいるの? ポルトワール? それとも別のどこか?」
「教えてくれない?」
保護者だった人は歪虚に襲われて死んだ。住んでいた孤児院は買収にあって潰れた。孤児仲間は自分も含めてばらばらになってしまった。この学校に自分を入れたのはその買収相手である商会のトップである。
そんな事情口が裂けても説明したくない。
相手が信用ならないからとかいうことではない――実際信用ならないが。
そうではなくて、たとえ信用出来そうな相手であっても、話したくないのだ。
自分自身でまだ気持ちに整理がついていない。客観視して話せるほどには。
●託された手紙
「あなたがたにお使いをしに行ってもらいたいんですよ」
と言ってニケは、大きな封筒をハンターに渡した。
「彼への手紙です。同じ孤児院にいた子たちが送ってきましてね。彼のいる住所が分からないからって」
「教えてあげてないんですか?」
「ええ。でも、教えてあげてもいいですよ。彼が自分の元へ直に手紙が来てもいいという意思表示をしてくれるなら。だからこの手紙を渡すついでに、そこを聞いてきてください。ついでに……まさかもう音を上げているとは思いませんけど、一応――彼の様子も確かめてきてくれますか?」
解説
補足説明
これはとある商船学校で寮生活をしている孤児のマルコくんに、孤児仲間からの手紙を届けるお仕事です。
彼の後見役である商会次期会長ニケは、彼の学校での様子を確かめてきてくれることを希望しています。
彼本人、周囲の生徒などに何か言いたいことなどあれば、言ってくださってかまいません。
このOPは「【陶曲】ゼンマイ仕掛けの災厄」の後日談です。
マルコくんが商船学校へ入った細かいいきさつについては、そちらを参考にしてくださいませ。
これはとある商船学校で寮生活をしている孤児のマルコくんに、孤児仲間からの手紙を届けるお仕事です。
彼の後見役である商会次期会長ニケは、彼の学校での様子を確かめてきてくれることを希望しています。
彼本人、周囲の生徒などに何か言いたいことなどあれば、言ってくださってかまいません。
このOPは「【陶曲】ゼンマイ仕掛けの災厄」の後日談です。
マルコくんが商船学校へ入った細かいいきさつについては、そちらを参考にしてくださいませ。
マスターより
KINUTAです。
【陶曲】番外編です。前回の後始末という感じです。
当シリーズレギュラー歪虚のぴょんきちは、今回お休みです。
【陶曲】番外編です。前回の後始末という感じです。
当シリーズレギュラー歪虚のぴょんきちは、今回お休みです。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2018/09/05 23:07
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/08/31 20:42:21 |
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相談卓だよ 天竜寺 詩(ka0396) 人間(リアルブルー)|18才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2018/08/31 21:01:01 |