ゲスト
(ka0000)
【空蒼】夜叉羅刹の主
マスター:三田村 薫

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 3~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2018/09/14 22:00
- リプレイ完成予定
- 2018/09/23 22:00
オープニング
●大学生の夏休み
イクシード・アプリをインストールしたものは暴徒化しやすい。
と、言うのが美雪の周辺の共通の見解であった。東京都下にある某大学の文学部、その教室の一角。普段から顔を合わせる学生同士が、暗い顔をして窓から下を見下ろしている。
「夏休みもまだ残ってるし、里帰りして様子見ようかなって。家族も心配だし」
一人が言った。
「そう、だね」
美雪も頷く。彼女にも、帰る実家が都外にある。幼い頃美雪を引き取って面倒を見てくれた祖母は、常に美雪の身を案じてくれていた。美雪だって同じくらい心配だ。レポートの資料集めで東京に長く残っていたが、この状況を見ると、必要そうな資料を片っ端から借りて実家に帰った方が良さそうだ。
「つっても」
友人は言った。皮肉めいた笑い方だった。
「夏休み明けに学校がある保証もないんだよね」
●北の武神
「おばあちゃん?」
特急のチケットは無事に取れた。急な里帰りになる。美雪はその晩、実家の祖母に電話を掛けた。祖母の声ははつらつとしている。元気でいるようだった。
「美雪ちゃん! どうしたの?」
「うん。明日帰ろうかなって」
「ま! 嬉しい。レポートの資料は集まった?」
「集まったよ。ねえ、そっちは大丈夫? アプリの暴徒とか、VOIDとか、襲われてない?」
「こっちはねぇ、大丈夫。多聞天が守ってくれてるから」
「多聞天?」
帝釈天四天王の事だろうか。祖母はとても嬉しそうに語る。
「そう! 多聞天よ! 美雪ちゃんも帰ってきたらきっと見られるわ。もう、すごいんだから。変なのが出ても多聞天が現れてどうにかしてくれるの!」
「……と言うことはそっちにも出るんだ、VOID……」
ますます心配だが、多聞天とは何だろう?
「でもね、その多聞様がすごいから大丈夫なの」
「ふふっ」
祖母がこうして元気でいると言うことは、実家周辺は比較的安全なのだろう。美雪は安心して電話を切った。
●災いの里帰り
イクシード・アプリをインストールしたものは暴徒化しやすい。
だって力を手に入れたから。
出来なかったことをするんだ。
美雪の母は彼女を産んで早々に亡くなったが、父親には問題があった。詳しいことは紙幅の都合で省略するが、経済的な困窮を自らの娯楽で招くタイプの人間だった。
だから、彼の実母である祖母は、美雪を彼から取り上げた。
そんなの自業自得じゃん。美雪はそう思っている。
だから、イクシード・アプリをインストールした父親が報復に来ているなんて想像もしていなかった。
帰って来て、怒号に驚いて居間に駆けつけたら、にやにやしている父親がいるなんて想像もしていなかった。
祖母が、ほうきを構えてじりじりと後ずさっている。料理中に来たのだろう、割れたまな板と、大皿が転がっている。父には何カ所か裂傷があった。祖母が殴ったのだろう。けれど、それだけの怪我をしても、彼は何も動じていないように見えた。
話を聞く限り、父にそんな根性はない。それで美雪はピンと来た。彼はアプリをインストールしている。
「おばあちゃん!」
「美雪ちゃん! 駐在さん呼んでぇ!」
父がくるりとこちらを向いた。そして言った。
「美雪、迎えに来たよ。パパと一緒に暮らそう? このアプリがあればなんだってできんだからさぁ、もう苦労なんてかけないから」
「馬鹿なこと言わないで!」
美雪はハードカバーの研究書を父親に投げつけた。すぐに祖母の肩を抱いて居間を出る。
玄関にたどり着いた二人の背後から、父親が何かを投げつける。美雪の頭を掠めて扉前に落ちたのは、居間にあった椅子だ。玄関がふさがれて、美雪と祖母はすぐ左手の廊下に駆け出した。客間に入り、襖を素早く閉める。反対側の縁側を目指した。
ここは美雪の育った家であり、祖母の自宅であるが、父の実家でもある。地の利は同じくらい。そういつまでも逃げ回っていられるとは思えない。縁側から出て、外を這っていくしかない。
その時だった。轟音がして、外からまばゆい光が差し込む。家が揺れた。美雪は祖母をかばって床に伏せる。
「大丈夫!?」
小声で尋ねると、祖母はほっとした顔を見せた。そして言った。
「多聞天よ」
「え?」
「多聞天が助けに来てくれたわ! もう大丈夫よ!」
「ババアどこ行きやがった! テメェの差し金かクソが! 美雪を返せ!」
「やだね! バチが当たったんだよこの馬鹿息子!」
「おばあちゃん!」
声で居場所がバレてしまう。
再び光と大きな音が轟いて、家が揺れた。父親は廊下で喚いている。どうやら度を失ったようだ。彼から逃げるなら今がチャンス。
早く出ないと、父親ではなくて外の何かに家ごと潰されてしまう。美雪は祖母の手を握った。
「一緒に出るからね!」
●『多聞天』降臨
一方、屋外では、光の槍と鎧で武装し、頭に光の輪を頂く人の形をした何かが上空に現れていた。何かを探すように飛ぶそれは、大きいものが一体、それに従うように、小さいものが四体。
もし、それらが目についたなら、美雪の祖母は嬉しそうにこう言うだろう。
「ほら、美雪ちゃん、あれが多聞天」
●ハンドアウト
あなたたちは、使徒出現の報せを受けて現場に駆けつけたハンターです。その道中であなたたちは嫌な話を聞きます。
「使徒が出た家の、勘当された息子に似た男がそっちに歩いて行った」
と。更によくよく話を聞けば、その家には男を勘当したおばあさんが一人で暮らしていると言うではありませんか。あなたたちは家に急ぎます。
駆けつけた家であなたたちが見たものは、半壊した玄関の家、家屋上空から何かを探し回るように飛んでいる使徒の姿でした。
イクシード・アプリをインストールしたものは暴徒化しやすい。
と、言うのが美雪の周辺の共通の見解であった。東京都下にある某大学の文学部、その教室の一角。普段から顔を合わせる学生同士が、暗い顔をして窓から下を見下ろしている。
「夏休みもまだ残ってるし、里帰りして様子見ようかなって。家族も心配だし」
一人が言った。
「そう、だね」
美雪も頷く。彼女にも、帰る実家が都外にある。幼い頃美雪を引き取って面倒を見てくれた祖母は、常に美雪の身を案じてくれていた。美雪だって同じくらい心配だ。レポートの資料集めで東京に長く残っていたが、この状況を見ると、必要そうな資料を片っ端から借りて実家に帰った方が良さそうだ。
「つっても」
友人は言った。皮肉めいた笑い方だった。
「夏休み明けに学校がある保証もないんだよね」
●北の武神
「おばあちゃん?」
特急のチケットは無事に取れた。急な里帰りになる。美雪はその晩、実家の祖母に電話を掛けた。祖母の声ははつらつとしている。元気でいるようだった。
「美雪ちゃん! どうしたの?」
「うん。明日帰ろうかなって」
「ま! 嬉しい。レポートの資料は集まった?」
「集まったよ。ねえ、そっちは大丈夫? アプリの暴徒とか、VOIDとか、襲われてない?」
「こっちはねぇ、大丈夫。多聞天が守ってくれてるから」
「多聞天?」
帝釈天四天王の事だろうか。祖母はとても嬉しそうに語る。
「そう! 多聞天よ! 美雪ちゃんも帰ってきたらきっと見られるわ。もう、すごいんだから。変なのが出ても多聞天が現れてどうにかしてくれるの!」
「……と言うことはそっちにも出るんだ、VOID……」
ますます心配だが、多聞天とは何だろう?
「でもね、その多聞様がすごいから大丈夫なの」
「ふふっ」
祖母がこうして元気でいると言うことは、実家周辺は比較的安全なのだろう。美雪は安心して電話を切った。
●災いの里帰り
イクシード・アプリをインストールしたものは暴徒化しやすい。
だって力を手に入れたから。
出来なかったことをするんだ。
美雪の母は彼女を産んで早々に亡くなったが、父親には問題があった。詳しいことは紙幅の都合で省略するが、経済的な困窮を自らの娯楽で招くタイプの人間だった。
だから、彼の実母である祖母は、美雪を彼から取り上げた。
そんなの自業自得じゃん。美雪はそう思っている。
だから、イクシード・アプリをインストールした父親が報復に来ているなんて想像もしていなかった。
帰って来て、怒号に驚いて居間に駆けつけたら、にやにやしている父親がいるなんて想像もしていなかった。
祖母が、ほうきを構えてじりじりと後ずさっている。料理中に来たのだろう、割れたまな板と、大皿が転がっている。父には何カ所か裂傷があった。祖母が殴ったのだろう。けれど、それだけの怪我をしても、彼は何も動じていないように見えた。
話を聞く限り、父にそんな根性はない。それで美雪はピンと来た。彼はアプリをインストールしている。
「おばあちゃん!」
「美雪ちゃん! 駐在さん呼んでぇ!」
父がくるりとこちらを向いた。そして言った。
「美雪、迎えに来たよ。パパと一緒に暮らそう? このアプリがあればなんだってできんだからさぁ、もう苦労なんてかけないから」
「馬鹿なこと言わないで!」
美雪はハードカバーの研究書を父親に投げつけた。すぐに祖母の肩を抱いて居間を出る。
玄関にたどり着いた二人の背後から、父親が何かを投げつける。美雪の頭を掠めて扉前に落ちたのは、居間にあった椅子だ。玄関がふさがれて、美雪と祖母はすぐ左手の廊下に駆け出した。客間に入り、襖を素早く閉める。反対側の縁側を目指した。
ここは美雪の育った家であり、祖母の自宅であるが、父の実家でもある。地の利は同じくらい。そういつまでも逃げ回っていられるとは思えない。縁側から出て、外を這っていくしかない。
その時だった。轟音がして、外からまばゆい光が差し込む。家が揺れた。美雪は祖母をかばって床に伏せる。
「大丈夫!?」
小声で尋ねると、祖母はほっとした顔を見せた。そして言った。
「多聞天よ」
「え?」
「多聞天が助けに来てくれたわ! もう大丈夫よ!」
「ババアどこ行きやがった! テメェの差し金かクソが! 美雪を返せ!」
「やだね! バチが当たったんだよこの馬鹿息子!」
「おばあちゃん!」
声で居場所がバレてしまう。
再び光と大きな音が轟いて、家が揺れた。父親は廊下で喚いている。どうやら度を失ったようだ。彼から逃げるなら今がチャンス。
早く出ないと、父親ではなくて外の何かに家ごと潰されてしまう。美雪は祖母の手を握った。
「一緒に出るからね!」
●『多聞天』降臨
一方、屋外では、光の槍と鎧で武装し、頭に光の輪を頂く人の形をした何かが上空に現れていた。何かを探すように飛ぶそれは、大きいものが一体、それに従うように、小さいものが四体。
もし、それらが目についたなら、美雪の祖母は嬉しそうにこう言うだろう。
「ほら、美雪ちゃん、あれが多聞天」
●ハンドアウト
あなたたちは、使徒出現の報せを受けて現場に駆けつけたハンターです。その道中であなたたちは嫌な話を聞きます。
「使徒が出た家の、勘当された息子に似た男がそっちに歩いて行った」
と。更によくよく話を聞けば、その家には男を勘当したおばあさんが一人で暮らしていると言うではありませんか。あなたたちは家に急ぎます。
駆けつけた家であなたたちが見たものは、半壊した玄関の家、家屋上空から何かを探し回るように飛んでいる使徒の姿でした。
解説
●目的
1.現場家屋内で襲われている民間人の保護
2.現場家屋内で暴れている美雪の父の捕縛
3.使徒の撃破or撤退に追い込む
●屋内NPCの状況
美雪:祖母を連れて客間から縁側に出ようとしています。父親がアプリをインストールしたと知っているので意地でもアプリはインストールしたくない所存。アプリインストール者を警戒しているので、人語で救助をしらせても、本物の覚醒者ではなくてインストール者と思って警戒する可能性があります。自分も祖母も生きて出たいと思っています。
美雪の祖母:火事場の馬鹿力を発揮した一般人です。興奮で疲れは感じていませんが体力は確実に削がれています。美雪の命を最優先にします。
使徒のことを多聞天だと思っているようです。
美雪の父:祖母(本人の母親)にまな板やら皿やらで殴られた裂傷がありますが概ね元気です。美雪と祖母を探しています。娘に危害を加えたくないとは思っていますが、アプリをインストールしている上に元々自制心のない性格でもあるのでカッとなれば何をするかわかりません。自分の母親のことは殺しても構わないと思っています。挑発には乗るでしょう。
●使徒について
甲冑を着込み、光の槍を持ったサイズ2の人型×1
サイズ1の軽装の人型×4
槍とビームを用いて屋根をぶち抜き、美雪の父を葬り去ろうと試みます。
美雪たちに当たるかは別ですが家屋倒壊の危険性はあります。
軽装の方も顔は防具で見えません。
●現場の家屋について
平屋造りの日本家屋です。庭と縁側があり、台所、居間、手洗い、風呂、客間、個人の部屋が3部屋あります。
客間と個人の部屋は廊下と縁側両方に面しています。
1.現場家屋内で襲われている民間人の保護
2.現場家屋内で暴れている美雪の父の捕縛
3.使徒の撃破or撤退に追い込む
●屋内NPCの状況
美雪:祖母を連れて客間から縁側に出ようとしています。父親がアプリをインストールしたと知っているので意地でもアプリはインストールしたくない所存。アプリインストール者を警戒しているので、人語で救助をしらせても、本物の覚醒者ではなくてインストール者と思って警戒する可能性があります。自分も祖母も生きて出たいと思っています。
美雪の祖母:火事場の馬鹿力を発揮した一般人です。興奮で疲れは感じていませんが体力は確実に削がれています。美雪の命を最優先にします。
使徒のことを多聞天だと思っているようです。
美雪の父:祖母(本人の母親)にまな板やら皿やらで殴られた裂傷がありますが概ね元気です。美雪と祖母を探しています。娘に危害を加えたくないとは思っていますが、アプリをインストールしている上に元々自制心のない性格でもあるのでカッとなれば何をするかわかりません。自分の母親のことは殺しても構わないと思っています。挑発には乗るでしょう。
●使徒について
甲冑を着込み、光の槍を持ったサイズ2の人型×1
サイズ1の軽装の人型×4
槍とビームを用いて屋根をぶち抜き、美雪の父を葬り去ろうと試みます。
美雪たちに当たるかは別ですが家屋倒壊の危険性はあります。
軽装の方も顔は防具で見えません。
●現場の家屋について
平屋造りの日本家屋です。庭と縁側があり、台所、居間、手洗い、風呂、客間、個人の部屋が3部屋あります。
客間と個人の部屋は廊下と縁側両方に面しています。
マスターより
こんにちは三田村です。
今回のシナリオを書くに当たって多聞天のことを調べてたら「仏像かっこいいな……」と新たな楽しみに目覚めてしまいました。
小説でも絵画でも立体でも、誰かが頑張って作った何かは情熱が伝わってくるので好きです。
もちろん皆様が頑張って書いてくださったプレイングもいつも楽しく拝読しています。リプレイはMSとPLさんが一緒に作るものと思っていますので、今回もどうぞよろしくお願いします。
今回のシナリオを書くに当たって多聞天のことを調べてたら「仏像かっこいいな……」と新たな楽しみに目覚めてしまいました。
小説でも絵画でも立体でも、誰かが頑張って作った何かは情熱が伝わってくるので好きです。
もちろん皆様が頑張って書いてくださったプレイングもいつも楽しく拝読しています。リプレイはMSとPLさんが一緒に作るものと思っていますので、今回もどうぞよろしくお願いします。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2018/09/21 00:32
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
相談卓 エラ・“dJehuty”・ベル(ka3142) 人間(リアルブルー)|30才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2018/09/14 20:17:46 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/09/11 01:20:20 |