• 調査

【糸迎】欠けてしまったひと

マスター:三田村 薫

シナリオ形態
ショート

関連ユニオン
魔術師協会広報室

難易度
普通
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加人数
現在4人 / 3~4人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2018/09/29 12:00
リプレイ完成予定
2018/10/08 12:00

オープニング

●退役軍人
 その日、ハンターオフィスには、数人の自由都市同盟陸軍所属の軍人が訪れていた。応対したのは中年職員だ。
「それで、ご相談と言うのは?」
「何からお話すれば良いのか」
 代表らしい女性が困惑したように呟いた。
「一番気になっていることから話してください」
 相談に来る者は皆言う。何から話して良いかわからない、と。だから彼は言うのだ。一番気になっていることを教えてくれと。そこから、こちらがわからないことを聞いて情報を引き出せば良い。
「……私たちの友人が、傷害事件に関わっているかもしれなくて」
「それは、穏やかではありませんね。ご心配でしょう」
「ええ、とても」
「どうしてそのご友人が関わっているとお思いですか?」
 そこで、ようやく彼女は順を追って説明し始めた。

 最近、フマーレ周辺で傷害事件が多発している。皆、鋭い何かで刺されたような傷を負っている。ほとんどは軽傷だが、中には重傷者もいる。幸いにも死者はまだ出ていない。
 恐らく、何かしらの精神操作を受けたのであろう、被害者たちの証言は曖昧で混乱している。しかし、一つの情報は一致していた。

「黒髪のショートヘアで、常に泣きそうな顔をしている女に連れて行かれた」

 その特徴に当てはまる人物を、彼女たちは知っている。

「黒髪のショートヘアをした女性ならたくさんいます。でも、常に泣きそうな顔って言ったらもうその人しか思いつかなくて……それで、ハンターさんたちにこのことを調べて頂きたいんです」
「なるほど」
 職員は頷いた。女性は、一枚の写真を差し出す。誰かが魔導カメラで撮ったらしい。黒いショートヘアの女性が、陸軍の制服に身を包んで笑っている。確かに、笑顔ではあるが今にも泣き出しそうな顔をしていた。元々そう言う顔立ちであるらしい。
「彼女の名前は、ザイラ・シェーヴォラ。機導師でもあって、人命救助に尽力していました。本当に優しい人よ」
「写真からも伝わるよ。今は軍属じゃないんですか?」
「退役してしまったんです。去年の春からの、同盟で頻発した歪虚事件のせいで……」
 ザイラは、覚醒者として、その身体能力やスキルを活かして人命救助に当たっていた。たくさんの人からも感謝されていて、彼女はこれこそ自分の天職であると考えていた。
 しかし、昨年春から同盟で頻発する嫉妬歪虚の侵攻の中では、救えない命があまりにも多かった。駆けつけたときには死亡。救出しても重傷で死亡。搬送先で死亡。死亡、死亡、死亡、死亡。救った命も多かったが、失った命も多かった。
「加えて……注目されるのは海軍だから」
 同行していた男性軍人が、周りを気にしながら言った。
「それで、心が折れてしまったんです、彼女。自分がやっていることの意味を見失ってしまって」
「わかるよ」
 オフィスでハンターたちを送り出す。そのハンターたちが無事で帰ってくれば良いが、時には無事で済まないこともある。そういうとき、職員は自分の説明に不備があったのではないかと悩むこともある。ずっと繰り返してきた。戦えない身の上を呪ったこともある。無事に済んだ依頼の方が圧倒的に多かったとしても。自分の仕事の意味とは何だろう。そう思うことはあった。
「私にもよくわかるよ」
「ありがとう。でも、私たちはザイラが人を傷つけるようなことをするはずがないって信じてる。きっと何か事情があるはず。それを調べて頂きたいんです」
「辛い真実が待っているかもしれないよ」
「構いません」
 彼女はきっぱりと言った。目尻に涙が溜まっている。彼はハンカチを差し出した。
「ハンターには、ザイラが関与している可能性も含めて説明します」
「ええ、お願いします。彼女が噛んでいるなら、身構えて貰わないといけないわ。人命救助は、襲われている人のところでも行なう。雑魔くらいならデルタレイでどうにかできるの、彼女」
「ますます惜しい人材だね」
「そうでしょう」
 彼女は泣き出した。
「本当にそう。お願いだから人違いであってほしいの」

●尖った脚
「被害者は皆、フマーレ近郊で、常に泣き出しそうな顔をした女性にさらわれているらしい。その時のことはよく覚えていないそうだ。連れて行かれた先のこともね。薄暗いところ、しかわからない。他にも聞き出せるようなら聞いてくれ」
 集まったハンターの前で、職員はそう言ってため息を吐いた。
「後は刺し傷について。先が鋭く、経の大きなもので踏みつけるように刺されている、と言うのが医者の見解だ。金属製であることは確かだけど……刃物なら変わった形だね」
 そう言って、彼は推定された凶器の形を見せた。尖っているというのは円錐ではなく、三角錐、四角錐のような、角張った形だ。
「踏みつけるって言う表現も妙だけど、斜め上くらいからこう、ガッといったみたいだ。勢いもある。実際に踏みつぶされる! って叫んだ被害者もいたようだ」
 彼も説明しながら、まじまじと図解を見た。人体を、上から踏みつける何か。鋭い脚。金属。
 それから彼はザイラの写真をハンターたちに見せた。
「彼女がそのザイラだ。優しい人ではあったが、デルタレイ、ファイアスローワーなんかも駆使していたようだよ。そうだろうね。迎えに行って囲まれて、連れて帰れないなんて本末転倒だからな。もし彼女が悪事に手を染めているなら、相手はそれなりの手練れ、と言うことになる」
 彼は眼鏡を外して目をこすった。そしてしみじみとした顔でハンターたちを見回す。
「充分に気をつけてくれ。私はいつだって、誰にも欠けて欲しくないと思っているよ」

解説

●目的
フマーレ近郊で発生している連れ去り・傷害事件の調査

●事件概要
フマーレ近郊で、女性に連れ去られて人が怪我をして帰ってきている。被害者たちは皆、今にも泣き出しそうな顔をしている、黒いショートヘアの女性に連れて行かれたと言うが、前後の記憶は曖昧である。
医師の見立てに寄れば、先が尖っていて、経の大きな何かで踏みつけるように刺されている、と言うことである。

●ザイラ・シェーヴォラについて
関与を疑われている女性。外見は黒いショートヘアで今にも泣きそうな顔をしている。笑っていてもそんな顔。
元自由都市同盟陸軍。覚醒者でクラスは機導師。
陸軍時代は人命救助に当たっていた。歪虚対応もあったので、戦闘は中堅ハンター程度にこなせる。

●被害者について
既に十名ほど被害者が出ており、無傷が3人、軽傷が5人、重傷が2人。
重傷者も既に回復しており、話が聞ける状態。今回は、無傷、軽傷、重傷それぞれ1人ずつから話が聞ける。
事前情報によれば、保護された際に「踏みつぶされる!」と叫んでいた被害者もいた模様。
薄暗い屋内に連れて行かれた、だとか、女性2人が会話する声がしたとかそう言う話が基本的な内容。

●現場について
いずれも、連れて行かれたのは人気の無い路地裏、町外れなど。

マスターより

こんにちは三田村です。
【糸迎】の読み方は「しごう」となります。
初めての個人タグとなります。お付き合い頂ければ幸いです。シリーズ内では激しい戦闘も予定していますが今回は調査オンリーです。

いくら他でできてたとして、できなかったことって案外心に残ってしまうものですよね。
ご参加お待ちしています。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2018/10/04 23:16

参加者一覧

  • THE "MAGE"
    フワ ハヤテ(ka0004
    エルフ|26才|男性|魔術師
  • 死者へ捧ぐ楽しき祈り
    レオン(ka5108
    人間(紅)|16才|男性|闘狩人
  • 金色のもふもふ
    パトリシア=K=ポラリス(ka5996
    人間(蒼)|19才|女性|符術師
  • 私は彼が好きらしい
    穂積 智里(ka6819
    人間(蒼)|18才|女性|機導師
依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/09/25 23:01:37
アイコン 相談するところ
パトリシア=K=ポラリス(ka5996
人間(リアルブルー)|19才|女性|符術師(カードマスター)
最終発言
2018/09/29 11:15:17