●はた迷惑な錬金術師
　とある街の屋敷に、一人の錬金術師がいた。
　行っているのは、スライムの研究である。
　雑魔ではなく、魔法生物としてのスライムを専門に扱っていたその錬金術師は、スライムを利用して何か新たな発明ができないか考えていた。
　例えばスライムの分解吸収作用を利用して肌の老廃物を取り除く、美容用のスライムパックや、湯に入れることで湯を吸収し、浴槽いっぱいに膨れ上がって身体中の垢を食べてくれるスライム風呂など、画期的ではあるが現時点では完成の目途が立たない無駄な研究を日々続けている。
　それだけだったのならば、無駄な研究であれど他人に迷惑をかけるものではなかったかもしれないが、彼は一つ過ちを犯した。
　研究材料として用意したスライムの中に、雑魔が混じっていたのである。
　雑魔スライムは魔法生物スライムのマテリアルを貪り、巨大化増殖分裂を繰り返すとともに、魔法生物スライムを雑魔スライムへと転化させていった。
　そして研究者である錬金術師が気付いた時には、どうにもならなくなっていた。
　異変に気付いた時には、全てが手遅れだった。
　一見すると普通の屋敷に見える錬金術師の家は、スライムが蔓延るダンジョンと化していたのである。
　錬金術師は部屋を出た瞬間、天井から降ってきた巨大スライムに全身を飲み込まれ、消化された。
　それは、男が研究していたスライム風呂の成れの果てであった。
　スライムという扱いを一歩間違えれば歪虚に転ずる可能性がある魔法生物を扱っていることもあり、錬金術師は定期的に錬金術師組合と連絡を取っていた。
　その定期連絡がなくなったことで、組合は何かが起きたと判断、非常事態を踏まえハンターズソサエティに協力を要請した。

●ハンターズソサエティ
　本日も、風雲急を告げる第一声は受付嬢ジェーン・ドゥの口から紡がれた。
「事件です」
　依頼を見繕うためにたむろしていたハンターたちに、ジェーンは斡旋する依頼の説明を始める。
「とある街に住む錬金術師から定期連絡が途絶えました。錬金術師は街郊外に大きな屋敷を構えて魔法生物としてのスライムを研究していたのですが、研究用のスライムに雑魔が混じっていたことに気付かず、大増殖許してしまったようです。もしかしたら、何か事故があって身動きが取れないのかもしれません。最悪死亡している可能性もあります。屋敷の状況を確認するとともに、繁殖したスライムを駆除してください」
　説明を終えたジェーンは、最後に頭を下げた。

●概要
　冒険シナリオです。
　錬金術師の屋敷を探索し蔓延るスライムたちを根絶してください。
　スライムは通常のスライムと違い、元々の研究要素が大きく出ている特殊なスライムです。
　それぞれスライム風呂、スライムパックの特徴を残しており、それにのっとった攻撃をしてきます。

●達成条件
・スライムの全滅

●屋敷について
　一階と二階に分かれています。
　正面玄関から侵入できます。
　一階には顔面スライムが六体、二階には巨大スライムが二体いるようです。種類ごとに纏まって出てきます。

●敵(全て物理半減持ちです)
○巨大スライム……二体
　四メートルほど。人の全身を包み込むに余りある大きさのスライムです。風呂場の浴槽にいて湯に擬態しており覗き込んだ者に飛び掛かってくる他、天井に張り付いて上から降ってきます。捕まれば取り込まれてじわじわと溶かされるでしょう。
○顔面スライム……六体
　三十センチほど。顔くらいの大きさです。ボールのようにはねて顔にひっつき、窒息させてきます。同時に魔法の発動を妨害させる効果もあります。また、とても粘着質ではがしにくいです。

初めまして、こんにちは。
マスターのきりんです。
今回のシナリオではスライムダンジョンと化した錬金術師の屋敷を冒険していただきます。
巨大スライムはもちろん、小さいスライムもえげつない攻撃を仕掛けてきますので、決して小さいからといって油断しないでください。
それでは楽しんでくださいね。