ゲスト
(ka0000)
【落葉】Eyes On Me
マスター:神宮寺飛鳥

- シナリオ形態
- ショート
関連ユニオン
APV- 難易度
- 易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在4人 / 3~4人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 少なめ
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2018/09/26 19:00
- リプレイ完成予定
- 2018/10/05 19:00
オープニング
※このシナリオは原則として戦闘が発生しない日常的なシナリオとして設定されています。
四霊剣ナイトハルトを撃破した後、帝国にはひとときの平和が訪れた。
少なくともリンドヴルム型剣機がそこらじゅう飛び交っていた時期よりはだいぶマシだし、森都エルフハイムも随分と変わった。
今やハンターだけではなく、帝国の軍人や商人も(部分的とはいえ)出入りするようになり、外の世界の物資や話もだいぶ入ってくる。
根強い恭順派にとってもこの時代の流れには「恭順」しているのか、黙認する流れであった。
エルフハイムは神森事件で大量の死者を出して以降、その組織も規模も崩壊し、そして再生の最中にあった。
ユレイテル・エルフハイムを筆頭に少しずつ壊れた森都は元通りの静寂を取り戻しつつあったが、どうにもならない損失もあった。
その中の一つが、森都に伝わる古い言葉を読み書きできる人材の欠如である。
そもそも森都の血塗られた因習に関しては長老会の管轄であり、図書館に資料がおいてはあるが禁書扱い。
かつ、読めるのは一握りの高位巫女だけであり、その高位巫女も長老会も、先の事件でごっそり死に絶えてしまった。
帝国が過去の歴史を編纂してやり直すというから、エルフハイムもその情報収集に協力したかったのだが、重く閉じられていた図書館の扉の向こう側を、誰も理解できなかった。
「いや、俺は読めるんだけどさ~」
というのはハジャ・エルフハイムの弁である。
彼は大長老の息子であったヨハネ・エルフハイムの影武者であり、ヨハネと同等の教養を求められる存在だった。
故に古い文献に関しても読み書きができる程の知識と経験を有していたのである。
「でも、この蔵書数を俺一人で翻訳は無理っすわ~」
そして白羽の矢が立ったのが、古い言語の読み書きができる浄化の器ことアイリス・エルフハイムであった。
彼女は高位巫女ジエルデ・エルフハイムから教育を受けていた。
ジエルデは図書館の禁書を閲覧できるほどの高位権限を与えられており、後続の巫女の教育役でもあったわけだが、まさか使い捨て前提の器に読み書きを教えていたとは誰も思い至らず、その人材選出までにはいくらかの時間を要した。
こうして浄化の器は帝国軍第十師団所属の特別歴史編纂員として森都に貸し出され、図書館に籠って資料整理に努めることになったのだ。
「死ぬぅ……死んでしまうぅ……」
エルフハイムの図書館は一つしかない。情報管理を徹底するためだ。
故にこの巨大な木々の要塞とも呼ぶべき建造物は、一人の人間が一生をかけても読みつくせない程の蔵書で埋め尽くされている。
エルフが長寿であるという事も相まって、少女一人に任せるにはあまりにもあんまりだった。
「ハジャは殺す」
そこでアイリスが考えたのは、「読み」はできないが「書き」はできる幼い巫女らに「口伝」で過去を伝えることだった。
読んで聞かせるだけならばいくらか楽だろうと考えたし、実際に楽だったのだが……。
「勝手に変な解釈入れるんじゃないわよ! そんなんだから過去の歴史がおかしくなっちゃうんでしょ!?」
「だってー……器様のお話つまんないんだもん」
「お姫様とか王子様とか出てこないの?」
「森都にそんなんいるわけねぇだろ」
「器様のお顔がこわいんだもん……」
「ちっくしょう……ホリィにはそんなこと言わないくせに、こいつらぁぁぁ……」
そんなこんなで、編纂作業は至難であった。
「難航してるみたいだな」
巨大な図書館の中、専用で設けられた机にだけ明かりが灯っている。
この図書館は元々来客が読書をするための空間ではなく、突拍子もない広さの中にポツンと彼女の為だけの椅子と机が置かれていた。
ハジャは帝都での生活中にハマって以来ひそかな自慢としているコーヒーを差し入れた。
「ハジャ……あんた絶対にロクな死に方しないわよ」
「わはは! そんなんあったりめーだろ! 俺は元々急ごしらえの管理人だからな。ユレイテルが正式にトップに立てば、長老は降りるさ」
その後は……口に出すまでもないだろう。
机の空いたスペースに腰かけるハジャ。アイリスは眠たげに瞼をこすりながら、羽ペンを置く。
「この作業、私の代じゃ終わらないわね」
「だな。次の世代に引き継がんとなー。マジで百年はかかるぜ」
「それで終わればいいけど」
ひょいと、ハジャが器の顔を覗き込む。
器の右目は閉じたり開いたり、あらぬ方向を見たりと不自然な眼球運動をしている。
「お前、もう全然目も見えてねぇだろ」
「覚醒すれば見えるけどね……お陰で全然作業が捗らないわ」
器は肉体も精神も酷使に酷使を重ね、まだ生きているのが不思議なほどであった。
もう杖を突かねば歩くことも難しい。幼い巫女らの手伝いがなければ、編纂作業は進められない。
「森の神についてはどうなの?」
「相変わらず有益な情報は引き出せてないが、以前の事を考えりゃだいぶ無害になったからなあ」
この森都にも精霊――神と崇められた存在が顕現している。
しかし精霊は己の名も知らず、故も知らず、無垢な子供のようにただ森の聖域に佇んでいた。
「一回浄化しちまってるからな。皇帝が記憶喪失になったのと同じような感じかもしれん」
「そう」
再びペンを握り、沈黙の中で作業を続ける。
疲労が溜まっている自覚はあったが、今は何かをしていたかった。
「それにしたって、蔵書の整理はもうちょっとなんとかならんのか……」
翻訳済み、そうでないもの。それぞれの中で分類されるジャンル。
大量の本の移動は力仕事で、幼い巫女には難しい。
かといって男手はラズビルナム浄化作戦といった方向に割かれている(出稼ぎなのでそれはそれで嬉しい)ので、床に平積みにされた蔵書は山となり、ちょっとした迷路を成さんとしていた。
「ハンターに片づけてもらうか」
「なんでハンターに?」
「力仕事だしさー。覚醒してパパっとやってもらってさ」
「うーん……」
「金さえ払えば何でもやってくれるのがハンターだ。ここは甘えとこうぜ」
少女の頭を優しく二度叩き、ハジャは去っていく。
再びペンを止め、自分が綴った文章を見やる。
自分の書いた文字という実感はない。ただ何となく、ジエルデの事を思い出す。
ペンの握り方からうるさく躾けられた。ちゃんとやらないと叱られた。
上手にできても褒めてはくれなかったが、お茶とお菓子が机に置いてあったのを覚えている。
「私は……あの子たちに上手く教えられるかな」
インクで汚れた手を見つめる。
瞳に映る黒ずみは、涙もないのに滲んで見えた。
四霊剣ナイトハルトを撃破した後、帝国にはひとときの平和が訪れた。
少なくともリンドヴルム型剣機がそこらじゅう飛び交っていた時期よりはだいぶマシだし、森都エルフハイムも随分と変わった。
今やハンターだけではなく、帝国の軍人や商人も(部分的とはいえ)出入りするようになり、外の世界の物資や話もだいぶ入ってくる。
根強い恭順派にとってもこの時代の流れには「恭順」しているのか、黙認する流れであった。
エルフハイムは神森事件で大量の死者を出して以降、その組織も規模も崩壊し、そして再生の最中にあった。
ユレイテル・エルフハイムを筆頭に少しずつ壊れた森都は元通りの静寂を取り戻しつつあったが、どうにもならない損失もあった。
その中の一つが、森都に伝わる古い言葉を読み書きできる人材の欠如である。
そもそも森都の血塗られた因習に関しては長老会の管轄であり、図書館に資料がおいてはあるが禁書扱い。
かつ、読めるのは一握りの高位巫女だけであり、その高位巫女も長老会も、先の事件でごっそり死に絶えてしまった。
帝国が過去の歴史を編纂してやり直すというから、エルフハイムもその情報収集に協力したかったのだが、重く閉じられていた図書館の扉の向こう側を、誰も理解できなかった。
「いや、俺は読めるんだけどさ~」
というのはハジャ・エルフハイムの弁である。
彼は大長老の息子であったヨハネ・エルフハイムの影武者であり、ヨハネと同等の教養を求められる存在だった。
故に古い文献に関しても読み書きができる程の知識と経験を有していたのである。
「でも、この蔵書数を俺一人で翻訳は無理っすわ~」
そして白羽の矢が立ったのが、古い言語の読み書きができる浄化の器ことアイリス・エルフハイムであった。
彼女は高位巫女ジエルデ・エルフハイムから教育を受けていた。
ジエルデは図書館の禁書を閲覧できるほどの高位権限を与えられており、後続の巫女の教育役でもあったわけだが、まさか使い捨て前提の器に読み書きを教えていたとは誰も思い至らず、その人材選出までにはいくらかの時間を要した。
こうして浄化の器は帝国軍第十師団所属の特別歴史編纂員として森都に貸し出され、図書館に籠って資料整理に努めることになったのだ。
「死ぬぅ……死んでしまうぅ……」
エルフハイムの図書館は一つしかない。情報管理を徹底するためだ。
故にこの巨大な木々の要塞とも呼ぶべき建造物は、一人の人間が一生をかけても読みつくせない程の蔵書で埋め尽くされている。
エルフが長寿であるという事も相まって、少女一人に任せるにはあまりにもあんまりだった。
「ハジャは殺す」
そこでアイリスが考えたのは、「読み」はできないが「書き」はできる幼い巫女らに「口伝」で過去を伝えることだった。
読んで聞かせるだけならばいくらか楽だろうと考えたし、実際に楽だったのだが……。
「勝手に変な解釈入れるんじゃないわよ! そんなんだから過去の歴史がおかしくなっちゃうんでしょ!?」
「だってー……器様のお話つまんないんだもん」
「お姫様とか王子様とか出てこないの?」
「森都にそんなんいるわけねぇだろ」
「器様のお顔がこわいんだもん……」
「ちっくしょう……ホリィにはそんなこと言わないくせに、こいつらぁぁぁ……」
そんなこんなで、編纂作業は至難であった。
「難航してるみたいだな」
巨大な図書館の中、専用で設けられた机にだけ明かりが灯っている。
この図書館は元々来客が読書をするための空間ではなく、突拍子もない広さの中にポツンと彼女の為だけの椅子と机が置かれていた。
ハジャは帝都での生活中にハマって以来ひそかな自慢としているコーヒーを差し入れた。
「ハジャ……あんた絶対にロクな死に方しないわよ」
「わはは! そんなんあったりめーだろ! 俺は元々急ごしらえの管理人だからな。ユレイテルが正式にトップに立てば、長老は降りるさ」
その後は……口に出すまでもないだろう。
机の空いたスペースに腰かけるハジャ。アイリスは眠たげに瞼をこすりながら、羽ペンを置く。
「この作業、私の代じゃ終わらないわね」
「だな。次の世代に引き継がんとなー。マジで百年はかかるぜ」
「それで終わればいいけど」
ひょいと、ハジャが器の顔を覗き込む。
器の右目は閉じたり開いたり、あらぬ方向を見たりと不自然な眼球運動をしている。
「お前、もう全然目も見えてねぇだろ」
「覚醒すれば見えるけどね……お陰で全然作業が捗らないわ」
器は肉体も精神も酷使に酷使を重ね、まだ生きているのが不思議なほどであった。
もう杖を突かねば歩くことも難しい。幼い巫女らの手伝いがなければ、編纂作業は進められない。
「森の神についてはどうなの?」
「相変わらず有益な情報は引き出せてないが、以前の事を考えりゃだいぶ無害になったからなあ」
この森都にも精霊――神と崇められた存在が顕現している。
しかし精霊は己の名も知らず、故も知らず、無垢な子供のようにただ森の聖域に佇んでいた。
「一回浄化しちまってるからな。皇帝が記憶喪失になったのと同じような感じかもしれん」
「そう」
再びペンを握り、沈黙の中で作業を続ける。
疲労が溜まっている自覚はあったが、今は何かをしていたかった。
「それにしたって、蔵書の整理はもうちょっとなんとかならんのか……」
翻訳済み、そうでないもの。それぞれの中で分類されるジャンル。
大量の本の移動は力仕事で、幼い巫女には難しい。
かといって男手はラズビルナム浄化作戦といった方向に割かれている(出稼ぎなのでそれはそれで嬉しい)ので、床に平積みにされた蔵書は山となり、ちょっとした迷路を成さんとしていた。
「ハンターに片づけてもらうか」
「なんでハンターに?」
「力仕事だしさー。覚醒してパパっとやってもらってさ」
「うーん……」
「金さえ払えば何でもやってくれるのがハンターだ。ここは甘えとこうぜ」
少女の頭を優しく二度叩き、ハジャは去っていく。
再びペンを止め、自分が綴った文章を見やる。
自分の書いた文字という実感はない。ただ何となく、ジエルデの事を思い出す。
ペンの握り方からうるさく躾けられた。ちゃんとやらないと叱られた。
上手にできても褒めてはくれなかったが、お茶とお菓子が机に置いてあったのを覚えている。
「私は……あの子たちに上手く教えられるかな」
インクで汚れた手を見つめる。
瞳に映る黒ずみは、涙もないのに滲んで見えた。
解説
●目的
エルフハイム図書館の蔵書整理。
●概要
オッス、オラハジャ! エルフハイムのエセ長老だ!
本物の長老であるユレイテルが庶民議員になるらしいから、お前らも応援よろしくな!
さて、今回の仕事はエルフハイム唯一の図書館の整備だ。
図書館っつっても人間のアレとは全然違う一種の禁域なんで、実は外部の人間を入れるのは歴史上初だ。
エルフハイムの古い歴史が古い言葉で綴られた本が山ほどあるんだが、一部の後継者以外サッパリ読めないので、今はアイリスに手伝わせてる。
が、アイリスはちょっと体が不自由でな。蔵書の整理に付き合ってやってほしい。
仕事はごく簡単で、お前らはその辺に散らばった本をアイリスの指示に従って動かしたり、本棚に戻したり、或いは本棚からとってくればいい。
あとは、あいつがなんか言ったらそれに従ってくれ。な? 簡単だろ?
図書館には何を持ち込んでも構わんが、一応聖域だ。本を盗んだり損傷させると外交問題に発展するので、そこだけは注意してくれよな。
●登場人物
『浄化の器』
ハジャにひとりで蔵書整理を任されて精神的に死にそう。
まとめた資料は帝国の管理官に渡すことになっているが、全然終わる目途が立っていない。
身体が徐々に不自由になっており、五感のあちこちにも障害が発生している。
覚醒している間だけ満足に活動可能。
『ハジャ』
長老のアルバイトをしている怪しい男。
ユレイテルが庶民議員になるので、色々手伝いで忙しい。
ちょっとくらいなら呼んで話をすることもできる。
エルフハイム図書館の蔵書整理。
●概要
オッス、オラハジャ! エルフハイムのエセ長老だ!
本物の長老であるユレイテルが庶民議員になるらしいから、お前らも応援よろしくな!
さて、今回の仕事はエルフハイム唯一の図書館の整備だ。
図書館っつっても人間のアレとは全然違う一種の禁域なんで、実は外部の人間を入れるのは歴史上初だ。
エルフハイムの古い歴史が古い言葉で綴られた本が山ほどあるんだが、一部の後継者以外サッパリ読めないので、今はアイリスに手伝わせてる。
が、アイリスはちょっと体が不自由でな。蔵書の整理に付き合ってやってほしい。
仕事はごく簡単で、お前らはその辺に散らばった本をアイリスの指示に従って動かしたり、本棚に戻したり、或いは本棚からとってくればいい。
あとは、あいつがなんか言ったらそれに従ってくれ。な? 簡単だろ?
図書館には何を持ち込んでも構わんが、一応聖域だ。本を盗んだり損傷させると外交問題に発展するので、そこだけは注意してくれよな。
●登場人物
『浄化の器』
ハジャにひとりで蔵書整理を任されて精神的に死にそう。
まとめた資料は帝国の管理官に渡すことになっているが、全然終わる目途が立っていない。
身体が徐々に不自由になっており、五感のあちこちにも障害が発生している。
覚醒している間だけ満足に活動可能。
『ハジャ』
長老のアルバイトをしている怪しい男。
ユレイテルが庶民議員になるので、色々手伝いで忙しい。
ちょっとくらいなら呼んで話をすることもできる。
マスターより
お世話になっております。神宮寺です。
帝国では色々な事件が起きていますが、エルフハイムはこんな感じです。
ハンターがやるにはあまりにも単純な肉体労働ですので、あえてメテオスウォームとかしなければ失敗しません。
なお、質問には浄化の器がお答えします。
それではよろしくお願い致します。
帝国では色々な事件が起きていますが、エルフハイムはこんな感じです。
ハンターがやるにはあまりにも単純な肉体労働ですので、あえてメテオスウォームとかしなければ失敗しません。
なお、質問には浄化の器がお答えします。
それではよろしくお願い致します。
関連NPC
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2018/10/06 14:27