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  • 冒険

【空蒼】通信兵は夜狂う

マスター:三田村 薫

シナリオ形態
ショート
難易度
易しい
参加費
1,000
参加人数
現在4人 / 3~4人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
プレイング締切
2018/10/11 19:00
リプレイ完成予定
2018/10/20 19:00

オープニング

●深夜のパニック
 アメリカ合衆国。
 連合軍通信担当、ヴィクター・グラスプール伍長は自分の端末の画面を見て暗澹たる気持ちに陥っていた。
 一番新しいところに収まっているのは「イクシード・アプリ」のアイコンだ。
 いくら前線に出向かない、司令室で待っているだけだからと言って安全ではない。もちろん彼とて毎日訓練はしている。だが、司令室が突然襲われたら? 逃げ帰ってきた兵士たちを追ってVOIDがやって来たら? そう思うとたまらなくて、夜中にパニックを起こしてインストールしてしまったのだ。
 いつ発狂するかわからない? どんどん生命力を吸い取られる? 馬鹿馬鹿しい。自分はとっくに発狂している。いつ自分で死んでもおかしくない。

 邪神も迫ってきていると言うのに!

 怖くて怖くて怖くて、でも自分の手では何も出来ず、通信先の兵士や民間人が死ぬのをずっと聞いている。彼が聞かなくては誰も聞く余裕がないからだ。一言一句余さず聞いて、聞いて、聞いて。それを伝える、一言に圧縮して。
 ずっと断末魔と別れの言葉と助けを求める声を聞き続けている。司令室で最初に聞くのは彼だ。

 狂わずにいられようか。司令室でもっとも狂気に近いのは自分であると言う確信は常にある。

 端末をトイレの洗面台の上に置く。鏡に映る自分の顔は肉が落ちていた。

「ああ、こちらにいらしたんですか」
 と、顔を出したのはマシュー・アーミテイジ軍曹だ。真面目で賢い若手である。
「よお、どうした軍曹殿」
「よしてください。そろそろ作戦が始まります。お戻りを。スギハラ曹長の復帰第一戦ですよ」
「ナンシーはあいつ大丈夫なのかね」
 ナンシー・スギハラ曹長は、先日のVOID事件で本人を残してチームが全滅。心に大きな傷を負ったとして休暇を与えられていた。カウンセリングなどによって徐々に心の均衡を取り戻してはいたが、その休暇中にイクシード・アプリ事件に巻き込まれてしまう。そのため復帰が延びていたのだが、悪化し続ける状況を前に、早めの復帰を本人に打診したところ、了承されたので復帰と相成った。
「グラスプールさん」
「伍長で良いんだよ」
 マシューは、自分より年上でありながら下の階級である自分を、階級で呼ぶのを嫌がった。
「自分たちに指示を伝えていただくお役目は、重い物であると思います」
「ああ」
「必ず生きて帰ります。なので何卒今回もお力添えを……」
 マシューの目が、洗面台傍の端末に釘付けになった。メッセージが来ている。ダイレクトメールの自動送信だろう。どこの会社も、システムを止める余裕なんてない。毎日どこからかメッセージが来る。
 マシューもまた、イクシード・アプリ関係の事件に関わったことがある。彼はアプリのアイコンをよく覚えていた。だから、メッセージが来て点灯した画面の一番下に表示されているそのアイコンに気付いてしまったのだ。ヴィクターも、彼が気付いたことに気付いた。マシューの腕を掴む。
「グラスプールさん」
「マシュー、違う、誤解しないでくれ、俺は」
「報告します」
「やめろ!」
 ヴィクターは踵を返したマシューの襟首を掴んで引き戻そうとした。が、既に強化人間となっていた彼は、力の加減を誤った。マシューは勢い余って洗面台に頭をぶつける。倒れてそのまま動かなくなった。
「マシュー?」
 慌ててしゃがみ込み、脈を取る。気絶しているだけのようだ。ヴィクターはしばらく考えると、彼をトイレの掃除用具入れに放り込んだ。
「すまない」
 ぶつけたであろう頭にそっと触れてから、彼はトイレを後にした。
 動揺した彼は、端末を洗面台に残している。

●暴動鎮圧
「ヴィクター、マシューに会わなかった?」
 戻ってきたヴィクターを見て、会議室前でナンシーが声を掛けた。
「あんたを探しに行ったけど」
「いや? 会わなかったぜ。もうすぐ戻ってくるんじゃ無いのか?」
「時間が無い。説明をしよう」
 責任者が時計を見て言うのが聞こえた。クリムゾンウェストから、援軍のハンターたちも来ている。ヴィクターは彼らから隠れるように、会議室から離れた。

 今回、ハンターたちに協力を要請したのは、邪神出現によってパニックに陥っている市街地の暴動鎮圧だ。
「同行するのはスギハラ曹長とアーミテイジ軍曹だ。しかし軍曹は遅いな」
「先に行ってるのかな?」
 ナンシーは首を傾げる。
「いや、彼に限ってそれはない……と思いたいが、もう時間がないな。曹長、悪いが先に行ってくれ。軍曹は戻って来たらすぐに向かわせる」
「了解しました」
 ナンシーはハンターたちに向き直る。
「あたし、今日から戦線復帰なんだ。よろしくね」

●マシュー捜索
 暴動鎮圧はすぐに済んだ。結局、アーミテイジ軍曹は来なかった。現場にもいなかった。
「どこ行っちゃったんだよぅ、マシュー」
 ナンシーは唇を尖らせながら司令部の建物を歩き回る。心配なのだ。彼女は、一緒に暴動鎮圧をしたハンターを見かけると、声を掛けた。
「あ、ねえあんたたち。ちょっとさ、もう一仕事してくれない? マシューの奴、どこにも見当たらないんだよ。あたし一人じゃ限度があるからさ、手伝って」

解説

●目的
1.マシュー・アーミテイジ軍曹の発見

●捜索場所
司令室がある建物です。会議室が三つ、トイレ、備品庫、医務室、武器庫などがあります。

●ヴィクター
通信担当。ずっと自分の席にいます。
前日夜にイクシード・アプリをインストールしています。マシューに怪我させたことはずっと気に病んでいます。
アプリのせいでは無く、本人にかかった連日のストレスで精神が摩耗、発狂寸前です。説得して真っ当に理解するかは微妙。
ハンドガン所持。

●マシュー
三箇所にある男子トイレの内、一箇所の掃除用具入れで気絶しています。拘束はされておらず、命に別状もありません。トランシーバー、ハンドガン所持。
意識を取り戻すと、ヴィクターがアプリをインストールしていること、彼を助けてほしいことをハンターに告げます。
ヴィクターのアプリを報告すると言ったのは、そこまで追い込まれていることを察して休みを進言するためでした。

●ナンシー
マシューの捜索であちこち探し回っています。トランシーバー、ハンドガン所持。
ヴィクターが暴れるなら発砲も視野に入れます。
アプリインストール駄目絶対派ですが、自分もヴィクターに世話を掛けた一人なので少々後ろめたい模様。

●ヴィクターの端末
マシューが見つかるトイレの洗面台に置いてあります。画面を表示するとダイレクトメール受信の通知が来ており、メール本文の最初の数行に、宛名としてヴィクターのフルネームが表示されており所有者が彼であることがわかります。
イクシード・アプリのアイコンも同じ画面に表示されています。

●備考
マシューを発見できれば成功度は普通を確保できます。これによって「難易度:易しい」としています。
仮にヴィクターが死亡したとしても、現場はもうそのことでヴィクター以外に責任を追及する余力がなく、マシュー以外ではどんな結果になってもおとがめはないものとお考えください。
また、ヴィクターが死亡する可能性はかなり高いです。

マスターより

こんにちは三田村です。
ずっと人の断末魔とか助けを求める声を聞いて自分は手が出せないってどんな気持ちなんだろう、と想像してたら悲しくなってきたのでやめました。

お気づきの方もあるかもしれませんが、ヴィクターは「【空蒼】生存者の叫び声」で通信担当していた彼です。
三人とも関連シナリオがありますが、特に参加PC推奨ということではありません。過去シナリオ確認不要の独立したお話です。よろしくお願いします。

ナンシーはためらっていますが女性PCさんが捜索のために男子トイレ入る分には構いません。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2018/10/17 23:49

参加者一覧

  • 未来を示す羅針儀
    ジャック・エルギン(ka1522
    人間(紅)|20才|男性|闘狩人
  • 東方帝の正室
    アシェ-ル(ka2983
    人間(紅)|16才|女性|魔術師
  • 拳で語る男
    輝羽・零次(ka5974
    人間(蒼)|17才|男性|格闘士
  • 私は彼が好きらしい
    穂積 智里(ka6819
    人間(蒼)|18才|女性|機導師
依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
アシェ-ル(ka2983
人間(クリムゾンウェスト)|16才|女性|魔術師(マギステル)
最終発言
2018/10/11 16:18:08
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/10/10 20:58:34