• 戦闘

空の館

マスター:硲銘介

シナリオ形態
ショート
難易度
やや易しい
参加費
1,000
参加人数
現在8人 / 4~8人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2015/01/06 07:30
リプレイ完成予定
2015/01/15 07:30

オープニング


 その屋敷は町の外れの小さな丘の上にある。そう町から離れていないが喧騒は届かない見晴らしのいい場所、所謂一等地に建っていた。
 屋敷の由来は複数耳にしていた。とある貴族の別荘だとか、かつての権力者の邸宅だとか、それっぽい設定が色々と語られていた。
 結局、どれが真相なのかは分からない。正直なところ、知りたく無かった。
 理由は明確、その館の話は俺の苦手分野だったからだ。
 雑多な噂話、それらはてんでバラバラに語られるくせに結末だけはどれも同じなのだ。
 ――その屋敷に住んでいた者達は皆殺しにされた。
 あぁ、ほら、なんかもう、そんなの詳しく聞きたくなんてないじゃないか。
 だが、親切にも噂というのは耳にする機会が用意されているもので、勝手に予備知識として駐在されてしまった。
 噂の中から例を一つ挙げる――文句の無い幸福な家族の話。家族は紆余曲折の末、錯乱からの大心中という結末を迎えたそうだ。
 他も似たり寄ったりで、洋館の住人達は決まって死んでしまう。
 そして遺ったのはお屋敷だけ。以降、屋敷は新たな住人を迎える事なく、取り壊される事もなく、今では立派なホラースポットとして確立した訳である。
 広い敷地がほったらかしなのは勿体無いがしょうがない。だって祟りとか怖いじゃん。
 そんな訳で、幽霊屋敷は町の誰もが知っていながら、誰も触れようとしない忌み地なのだった。
 当然、俺もそんな場所には近寄りたくない。
 だが若者にとっては肝試しに絶好な遊び場くらいの認識なのか、女の子との密着目当てに怖いもの知らずな馬鹿が突入作戦の決行を宣言した。
 最近の若い者は。なんて常套句を吐きたくなる愚かな行為。当然、俺は止めた。
 ――が、自分もまた若い男なのだという事を思い知る。肝試しに参加予定の女子を紹介された俺は気づけば馬鹿な共犯者に回っていた。
 そして下見ということで男二人、夜の洋館へ。突入直後、自身の短慮を呪った男がいたことは言うまでもない。


 噂の幽霊屋敷は随分と荒れ果てていた。
 外面は殆ど廃墟と化している。外壁にはつる草が伸び、手入れされていない庭の草木は伸び放題で小さな森のようだった。重苦しい玄関の扉は施錠されており、二人は小さな森を進む。
 先導する友人に従い、青年は草木の中を抜けていく。夜間という事もあり、草を掻き分けた際の音すら不気味に感じた。
 ランプの灯で周囲を注意深く照らしながら青年は進む。途中、草木や壁の汚れを何度も幽霊に見間違え、その度心臓が止まりそうになっていた。
 やがて友人が窓の一つを示す。見ればそこだけガラスが割れていた。どうも昼間、既に下見に来ていたらしく、慣れた動きで中へ入っていく。
 窓から入った先は廊下だった。
 意外に中はさほど荒れていない。もっと埃まみれかと覚悟していたのだが、そんな様子もない。
 二人の持つ灯りが周囲を照らす。甲冑や絵画などが並ぶ廊下を想像していた青年だったが、物は一切なく無機質な廊下だけが続いていた。
「やっぱ夜だと違うよなぁ! これはいい感じになるって!」
 暗い廊下を一人明るい友人が進む。途中幾つか扉があったが、無視していく。入らないのかと友人に尋ねると、
「鍵かかってたり壊れてたり開かない扉が多いんだわ。普通に入れるのもあったけど何にも無いつまんねー部屋ばっか」
 友人は手をフラフラ振って答えた。
 しばらく廊下を直進し、開けた場所に出る。二階への階段がある、エントランスだ。
 そこにも物が無い。噂話の一つ、強盗が入ったというパターンが浮かぶ。
 階段を上っていく途中、友人に館の構造を聞かされる。
 今いるエントランスを中心に廊下が東西へ伸びており、途中で北方向に曲がっている。中庭もあり、屋敷全体の形はシンプルなコの字型。
 自分達が入ってきたのは一回東側の廊下。玄関の方へ直進して来てしまったが、反対方向にも曲がり廊下が続いていた様だ。
 二階建てで、上も一階と殆ど同じらしい。玄関と中庭に出られない以外に違いは無いという。
 よく調べたものだと感心しながら後に続き、二階に上がった後は西の廊下を進む。
「昼間来た時に、この先の部屋にお宝を置いてきたんだよ。それを取ってくるってルールにしようか、ってさ」
「宝、そんなのあったのか?」
「俺の水着姿の絵」
 マジいらねぇ。心からの暴言をぶつけてさっさと廊下を行く。すぐに宝部屋についたのだが、
「あれ? ……俺のセクシーショットが無くなってる」
 問題発生。ゴミが無くなっているらしい。
 だが、ここに自分達意外が来るとは思えない。まして、絵を盗る奴がいるとは更に思わない。
 ならば考えられるのは一つ、部屋を間違えたのだ。
 先の話の通り、館の部屋や廊下には家具と呼べるものが何も無い。目印に乏しい場所ならその間違いもおかしくない。
「……もう一つ奥だったかなぁ」
 うーんと唸りながら、友人が部屋を出て行く。青年は追いかける前に、もう一度室内を見渡す。
 何も無い。あまりに、何も無い。長い間無人の屋敷だというのに、塵や埃すら僅かにしかない。
 空っぽの館――やはり、この館はどこかおかしい。もう臆病者だと思われてもいい。肝試しの中止を進言すると決め、青年は部屋を出て、
「――え?」
 ――館の主と対面する。
 扉を出て左方向、ランプが照らした先にそれはいた。
 半透明の体をずるずると引きずりながら身を震わせる巨体――スライムと呼ばれる怪物。
 そいつの体中には椅子や本、壷や甲冑――屋敷中の盗まれたと思っていた品々が埋まっていた。
 全て理解した。何も無い館の真相とは、何もかもを飲み込む異形が這っていただけの事だった。
 そして、その異形の体内に――苦しみもがく友人の姿があった。
 液体と個体の中間のような体に囚われた彼は溺れたように手足をバタつかせていた。化け物の出す酸に焼かれているのか、見る見るうちに皮膚が溶けていく。
 爛れた目蓋の奥、もはや焦点の定まらない眼球で青年を一瞥し、口だった部位が動く。
 た、す、け、て。
 ――弾けるように駆け出した。化け物とは逆方向、エントランスへの廊下を全力で走る。
 通路を埋め尽くす程に肥大化した怪物は、幸いにも動きは鈍重であった。すぐに相手の射程外へ逃れる。
 階段を駆け下り、扉を開こうと揺らし――鍵がかかっていた事を思い出し、東の廊下へ。侵入口の窓を見つけると、躊躇せずそこから飛び出した。
 投げ出した体がぼうぼうの草の上を転がる。打ち付けた体を省みず、すぐに再び駆け出す。
 ――最後に、館を振り返り見上げる。怪物に呑まれた友人の姿が浮かぶ。
 振り切り、走り去る。目から涙が溢れていた。怒りや後悔、悲しみがない交ぜになった感情が止まらない。
 逃げ出してしまった自分を何度も何度も責めながら走り続ける。
 向かう先は決まっている。無力な自分が友人の仇を討つ為に青年は走り続けた――――

解説

●解説
 古びた洋館に住まうスライムの駆除が今回の依頼です。
 依頼者の青年は涙ながらに友人の敵討ちを頼んでいます。

 対象は一体だけですが、スライムは分裂能力を有します。
 また軟体の性質から物理攻撃が通りにくい特性、そして多少の傷ならば意に介さない再生能力を持っています。
 今回の個体は強酸による攻撃能力に加え、周囲のものを呑みこむ性質を持っているようです。接近戦を仕掛ける場合は取り込まれないように注意してください。
 既に多くの質量を吸収したスライムは他個体に比べて巨大です。動きこそ緩慢ですが、迫る壁と戦うような形になるかもしれません。

 また、この個体は昼間には遭遇しなかった事から夜行性だと予想されます。
 作戦の参考にしてください。

マスターより

こんにちは、硲銘介です。
今回の依頼はスライム退治になります。
ファンタジーっぽくて素敵です、スライム。

楽しい日常を送るはずだった者達に起こった事件。
せめてこんなことがもう起こらないように、皆さんの協力をお待ちしております。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2015/01/12 23:13

参加者一覧

  • ゆうしゃ(山猫団認定)
    桜庭 あかり(ka0326
    人間(蒼)|13才|女性|霊闘士

  • キー=フェイス(ka0791
    人間(蒼)|25才|男性|霊闘士
  • 冥土へと還す鎮魂歌
    日下 菜摘(ka0881
    人間(蒼)|24才|女性|聖導士
  • 対触手モニター『谷』
    柏部 狭綾(ka2697
    人間(蒼)|17才|女性|猟撃士

  • 奄文 錬司(ka2722
    人間(紅)|31才|男性|聖導士

  • シエラ・R・スパーダ(ka3139
    エルフ|26才|女性|魔術師
  • 粗野で優しき姉御
    アゼル=B=スティングレイ(ka3150
    エルフ|25才|女性|聖導士
  • 笑顔のために
    ソル・アポロ(ka3325
    人間(紅)|17才|男性|闘狩人
依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/01/03 20:47:18
アイコン スライム退治の相談場所
奄文 錬司(ka2722
人間(クリムゾンウェスト)|31才|男性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2015/01/05 19:21:46