• 無し

王都第七街区 再復興計画会議

マスター:柏木雄馬

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
参加費
1,000
参加人数
現在6人 / 4~6人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2018/10/26 19:00
リプレイ完成予定
2018/11/04 19:00

オープニング

 王都第七街区ドゥブレー地区を担当していた番頭、ジャック・ウェラーが『行方不明』となったことは、ノーサム商会会長ブライアン・ノーサムの元まで報告が届いていた。
 部下であるジャックがかの地区で『まっとうではない』手段で商会の権益拡大の為に行動していたことをブライアンは承知していた。そして、その事を危ぶんでもいた。だが、若くして番頭の一角を占めるまでに出世を果たしたジャックは聞く耳を持たなかった。そして、地区の『自治』を担う『地域の実力者』であるドニ・ドゥブレーに手を出した。
 ドニは元々、小さな賭場の主に過ぎなかったが、黒大公ベリアルの王都襲撃の際に人々を避難誘導し、その後の復興の旗振り役となったことで人望を得ていた人物だった。だが、ジャックは『成り上がり者』のドニを自分よりも下に見てしまった。彼は人間関係を上下関係でしか測れない人物だった。
 着任早々、ジャックはドニを自分のコントロール下に置こうとした。ドニが利益誘導に乗らぬ人物だと分かると、ジャックは『証拠を残さぬ脅迫』という形に手段をシフトした。だが、その悉くをドニとハンターたちに阻まれ、彼の自尊心は大きく傷つけられた。そして、かの第六城壁の歪虚襲撃事変を経て……ジャックは意のままに操れる者に頭を挿げ替えようと、ドニを直接襲撃してしまった。
 その日から、ジャックの行方は『不明』となった。恐らくはドニの手によって返り討ちに遭うなり、捕らえられたりしてしまったのだろう。
 狼狽するジャックの部下らに日常業務に戻って静観するよう指示を出し…… ブライアンはジッと審判の時を待つことにした。

 その時はそれほど遠からずやってきた。
 その日、王都の復興担当官ルパート・J・グローヴァーやドニらを交えて行われる地区の再復興計画会議に参加するべく自宅を出たブライアンは、庭の玄関先に停められた馬車の扉の前にドニ・ドゥブレーが立っているのを見て、思わず足を竦ませた。馬車に付いていたはずの護衛は一人も残っていなかった。ドニの部下らが音もなく排除したのだろう。ヒッ、と短く悲鳴を上げて屋敷に駆け込もうとした秘書は、いつの間にか背後に回り込んでいたドニの腹心アンドルーに道を阻まれ、腰を抜かしてしまった。
「おはようございます、ブライアン・ノーサム会長。なに、偶には馬車に相乗りさせていただこうかと思いまして。目的地は一緒でしょう?」
「さあ、乗ってください。何も取って食いやしませんよ」
 アンドルーの声に背を押され、ブライアンは座り込んで震える秘書に「事を荒立てるな」とだけ告げると、背筋を伸ばして馬車のワゴンに足を掛けた。
 キャビンの椅子に座ると、真横にアンドルー、向かい側にドニが座った。扉が閉まると馬車は第七街区に向かって進み出した。ブライアンは背後の窓越しに、もう二度と帰れないであろう屋敷を瞼の裏に写し取った。
「ジャック・ウェラーがうちのシマでしてかしてきたこと、その全てを自供した」
 差しさわりの無い会話で前置きをぐだぐだ述べるような趣味はドニにはないらしく、彼は一言目からブライアンに対して本題をズバッと切り出して来た。
「ノーサム商会がその権益を拡大する為にやってきたこと全て──こちらが訊いてないことまでベラベラと、ね。……ブライアンさん。あんた、相当彼に嫌われて……いや、憎まれているようですな」
 挑発的にそう告げるドニに対して、ブライアンは「……そうでしょうな」と毅然と返した。命の危険に晒されて尚、怯えた様子は一切なかった。
「で、手前どもの弱みを握ったドニさんはいったい何をお望みですかな? 地区から手を引けと? それとも、この爺の首をお望みか?」
「んなもん要らんわ。一文の得にもならん」
 その言葉を聞いた瞬間、ブライアンの背中にドッと汗が噴き出した。安堵の汗ではない。緊張の汗だった。
 ……どうやらドニは、報復ではなく『交渉』に来たらしい。となれば、死ぬのとはまた別の覚悟を定め直さねばならなくなる。
「商会が地区から手を引く必要はない。多少、後ろ暗い手段を用いるってのも……まあ、商売の範囲内だったら構わない。俺に火の粉が飛ばぬ限りはな。……俺からあんたに突きつける要求はただ一つ。地区担当の番頭の首を挿げ替えること、だけだ。自分を有能だと思い込んでいる若造の相手をいちいちさせられるのは時間の無駄だからな。仕事の話が出来る奴を連れて来い」
 ドニの言っていることはほぼ現状維持──即ち、実質的にお咎めなしという話だった。少なくとも商会に限った話では。
 意外とドニの立場は危ういものであるのかもしれない── ブライアンはそう思い至った。……元々、商人連合──地区に資本を投入している商人たちの互助組織──に参加している商人たちは、第五・第六街区に店を構える中小資本の新興商人たちで殆どが占められている。第二・第三街区の大店の権益が及んでいないフロンティアとして、地区での商売に魅力を感じて進出してきた者たちだ。ドニも意図的にこういった者たちを優遇してきたのだが…… 先の第六城壁の戦いでは地区は大きな痛手を被った。元々、体力のない中小規模の商人たちだ。中には地区からの撤退も検討している者らも多いと聞く。そんな中、連合筆頭たるオーサム商会までもが撤退を表明すれば、新興商人たちも雪崩を打ってこの地区から逃げ出してしまうだろう。……つまり、ドニの復興計画は完全に破綻する。
「……もし、私が断れば?」
「第二、第三街区辺りの大店に声を掛けることになるだろうな。新興商人たちは手つかずの新たな市場を一つ、完全に失うことになる。それに……」
 ドニはブライアンの目を真っ直ぐに見据えて、言った。
「その場合は、立場上、俺もけじめをつけなきゃならん。どこぞの商会の会長と番頭の死体が一つずつ、墓碑のない墓穴に埋まることになるだろうな」
 ……沈黙が場に舞い降りた。ガラガラと馬車が進む音だけが日の光差し込むキャビンに満ちて……やがて、御者が──ドニの部下が、第六城壁への到達を告げる。
「では、私たちはここで降りる。二人並んで会場に入ったら変に勘繰られてしまうからな。そちらの返答は復興会議での発言内容で判断させてもらう」
 そう言って立ち上がるドニたちを、ブライアンが引き留めた。
「待て。さっきの物言いだと……ジャックはまだ生きているのか?」

 ブライアンはドニへの協力を約した。
 復興会場へブライアンを送る馬車の背を見送りながら……アンドルーがドニへポツリと呟いた。
「……噂は本当だったんですかね? ジャックが愛人に産ませたブライアンの実の子だという噂は……」
「……さぁな」
 ドニは肩を竦めると、着替えの為に事務所へ向かった。

 各者、全ての根回しを終えて── 地区の再復興計画会議が始まる。

解説

1.状況と目的
2.舞台
(マスターよりへ)

3.以前の復興
 第七城壁建設の公共事業に加え、地区の上水道整備計画(=甘い汁)を手土産に王都の復興担当官ルパートを抱き込んで正式に自治権を得たドニは、二つの公共事業に難民たちを正規の報酬で雇い入れることで地区の経済を回し始めた。その流れを加速させるべく、ドニは既存権益の及ばぬ市場として新興商人たちを誘致した。彼らが安心して進出できるよう、ハンターたちと共に治安を改善。人々が自立できる道筋をつけたところだったのだが……


4.現在の問題点

4a.住宅の不足

4b.中小の商人たちの地区からの撤退気運

4c.住民たちの士気の低下
 幾多の災禍を乗り越えて来た住民たちの復興に掛ける熱意は高いが、家や家族を喪くした等、様々な要因により心が折れてしまった人たちも少なくない。

4d.公共サービスの質の低下
 ドゥブレー一家の徴収する税(みかじめ料とも言う)が減り、色々と回らなくなってきている。
 例えば、トイレの汲み取りやゴミの回収。ジョアニス教会は併設する建物で孤児院を運営しているが、かなりギリギリ。

4e.治安の悪化
 第六城壁戦に先立つ王女の縁談騒動の際、大勢の地方出身者が地区に流れ込んでいた。
 彼らは第六城壁戦に際して、宿に預けていた財産を寝泊まりする場所ごと失い、治安悪化の原因となっている。


5.会議に参加するNPC

5a.ドニとトトムら町会長たち
 住民代表。

5b.ブライアンと商人連合の商人たち
 地区に出資している第五・第六街区の商人たち。オーサム商会は残留表明も他の中小の商人たちは撤退気運

5c.王都の復興担当官ルパート
 鼻薬を嗅がされたのか、「第二・第三街区の老舗や大手の資本(新興商人たちとは比べ物にならない資力)を入れればいいじゃない」的主張。

マスターより

(解説より)

1.状況と目的
 先の王都第六城壁戦において大きな被害を出した第七街区・ドゥブレー地区の再復興会議が開かれます。
 PCはこれまで地区の復興・治安維持に関わって来たハンターの一人として、住人や自治体(=ドニ)側に立った復興策を提案してください。
 或いは、会議に参加せず、現場で各種復興・治安維持作業を行っていても構いません。
 柏木分類『戦略系』──今後の連作の方向性が決定されるシナリオです。

2.舞台
 王都第七街区ドゥブレー地区。元々はホロウレイドの戦いで故郷を失った人々が第六城壁の外に集まってできた難民街。
 普通の街として発展し始めたところ、先の第六城壁戦で元の木阿弥に……
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2018/11/01 16:12

参加者一覧

  • 流浪の剛力修道女
    シレークス(ka0752
    ドワーフ|20才|女性|闘狩人
  • 星を傾く者
    サクラ・エルフリード(ka2598
    人間(紅)|15才|女性|聖導士
  • 交渉人
    J・D(ka3351
    エルフ|26才|男性|猟撃士
  • 乙女の護り
    レイア・アローネ(ka4082
    人間(紅)|24才|女性|闘狩人
  • 命無き者塵に還るべし
    星野 ハナ(ka5852
    人間(蒼)|24才|女性|符術師
  • 我が辞書に躊躇の文字なし
    ルベーノ・バルバライン(ka6752
    人間(紅)|26才|男性|格闘士
依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
シレークス(ka0752
ドワーフ|20才|女性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2018/10/26 10:25:46
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/10/26 08:00:10