ゲスト
(ka0000)
【HW】冬のおとぎばなし
マスター:KINUTA

このシナリオは5日間納期が延長されています。
- シナリオ形態
- イベント
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
500
- 参加人数
- 現在16人 / 1~25人
- 報酬
- 無し
- 相談期間
- 8日
- プレイング締切
- 2018/11/04 19:00
- リプレイ完成予定
- 2018/11/18 19:00
オープニング
※このシナリオは夢シナリオです。オープニングは架空のものであり、ゲームの世界観に一切影響を与えません。
北の果てにある冬の砦。人の足では踏み入ることもならぬ長大な山脈。
天を刺す峰は一年中雪をかぶり、谷間は氷河で埋め尽くされ、夏の盛りでさえ氷が張り、雪がちらちら降りしきる。
山脈の奥には、そのうちで一番大きな山よりもまだ大きな氷の城がある。
そこには冬の王様である氷河の魔物と、その奥方様である雪の魔物が住んでいる。
冬になると奥方様は城を離れる。山や野、村や町、川辺や海岸、あばら家からお城まで冷たい綿布団で包んでやるために。
奥方様には白い一つ目のフクロウがたくさん従っている。フクロウたちは雪に紛れて飛び回り、子供を捜し回る。一人きりでいる子供を。
もし見つけたら、奥方様に知らせるのだ。
すると奥方様が来られる。そして、その子を連れて行かれる。奥方様の冬のお住まい、凍りついた海のただ中にそびえる雪の離宮へと。
そこで子供に与えられるのは、きれいな衣服、暖かい寝所、たくさんのごちそう、お菓子、おもちゃ、本。遊び相手もいる。むくむくの毛で覆われた、愉快な小鬼たちだ。
子供はあんまり楽しいので、自分がどうしてここに来たのか忘れる。親兄弟や友達のことも忘れる。最後に自分の名前も忘れてしまう。
奥方様は子供に新しい名前を与えるだろう。そのとき子供は人であることを止め、魔物になってしまう。
春が来れば子供は奥方様と一緒に、帰って行くこととなるだろう。山脈の奥へ。
●
数週間前まで金や紅の衣を纏っていた木々は、今やすっかり丸裸。山脈から吹きおろしてくる、刺すような寒風に震えている。
山の精霊カチャは雪の積もった急な斜面を駆け降りていた。手に大きなシャベルを持って。
彼女の耳には先程から叫び声が聞こえていた。人ならぬものの耳にしか聞こえない、死を目前にした魂の叫び声が。
「ええと……こっちかな」
時々足を止めては耳をすまし、行くべき方向を探り当てる。ほどなくして見えてきた。雪崩に潰されている山間の小屋が。
その小屋が、麓に住まう木こりのものであることをカチャは知っていた。どうやら泊まり込んでいる最中、この災難にあったものと見られる。
近づいてみれば木こりは、梁の下敷きになり呻いていた。カチャはそれを助けようと思った。この木こりが山を荒らしたり、そこに住む生き物を苛めたりするような悪い人間ではないと知っていたから。
「大丈夫ですか、しっかり!」
梁の下にシャベルを突っ込み持ち上げようとしたその時、見えない力に弾かれた。まばゆいほどの光が目を焼く。
「あつっ!」
思わずシャベルを取り落としたカチャは、そこでようやく目の前に、天使マリーがいるのに気づいた。
彼女は言う。
「下がって。魔物も精霊も人の魂に手出しをしてはならない。それが決まりでしょう」
格上な相手の圧に押されつつカチャは、抗弁した。
「でもこの人、まだ魂になっていません。助ければもっと生きられるかも」
しかし、相手は譲らなかった。
「ここで召されるのがこの人の定めなのよ」
そのやり取りの間に木こりが、とうとう息を引き取った。
体から抜け出した魂を天使が優しく包みこみ、天国へ連れて行く。
カチャはそれを見送った後息を吐き、来た道を引き返して行った。
●
冬の奥方様――マゴイの髪は雪のように白い。瞳は雪雲のような灰色。
ほっそりした体を白い毛皮の外套で包み、白トナカイに引かせた銀のソリに乗り、風より速く駆け巡る。だけどそれは、人の目には見えない。
「……停めてちょうだい……」
御者のスペットは白トナカイの手綱を引き、不平そうな顔をした。
ソリが止まった町角の裏通りにはマッチ売りの少女が座り込んでいた。雪が降るのに着ている服はぼろぼろで、裸足。痩せ衰えた顔は血の気が失せている。目は虚ろ。ひび割れた口がもごもご動いている。誰かと喋っているつもりなのだろうか。誰もいないのに。
「……まさかあのジャリ乗せろ言うんと違いますやろな」
「……保護……」
「そのうち親か何かが迎えに来ますよって」
ポウと鳴き声がした。羽音もなくすうっと、一つ目のフクロウが舞い降りてくる。
フクロウは奥方様の耳に嘴を寄せ、囁いた。
奥方様はスペットに言う。
「……日がな一日ああしている……でも誰も迎えに来ない……マッチも売れない……」
「さよですか。世の中不景気ですな。でも俺らにはまっったく関係のないこと――」
「……保護……」
「一昨日もこんなん拾うたでしょうが、奥方様! ほっとったらええんですって、ほら、早速天使が死臭嗅ぎ付けて来てますよって!」
スペットが空を指さし言った。
確かに天使が飛んでくる。新米天使のユニが。少女の命のともしびが消えるのを感じ取り駆けつけたのだ、その魂を連れて行くために。
「……これはいけない……」
奥方様は優雅にしてとろくさい身ごなしでソリから降り、少女の手を取る。
「……おいで……」
少女は立ち上がった。誘われるままソリに乗り込んだ。
スペットは大きなため息をついて鞭を鳴らす。
ソリが走りだす。風よりも早く。天使が追いつくことも出来ない程早く。
幾つもの山や野や畑や町を通り抜け凍りついた海に出て、冬の離宮の前に止まる。赤い服を着た女衛兵が出てきて、御者に聞いた。
「おやβ、奥方様はまた人の子を拾ってきたのかの?」
「せや、θ。悪いクセやでほんまに」
●
氷の壁、床、天井。霜の絨毯は踏むたび微かな音を立てる。氷柱のシャンデリアを輝かせるのは、熱のない星明かり。ステンドグラスに閉じ込められているのは、オーロラの結晶。
氷河の精霊ステーツマンの髪と目は氷底のように青白い。着ている服は冬の夜のように黒い。
彼が腰掛ける玉座の前に、赤い髪をした新米天使、ユニがいる。
「わざわざ天国から押しかけてきて、一体何なのかね」
「奥方様に子供を連れて行かないよう注意していただきたいのです」
「私は奥のすることに口を挟むつもりはないよ」
「主は私どもに、一人でも多くの魂を天国へ導くようにとおっしゃられております。その妨げになるようなことをなされては困ります。魔物も精霊も人の魂に手出しをしてはならない。それが決まりではないですか」
「奥は決まりを破っていないが? 手出ししているのは魂ではなく、生きた人間なのだから。引き取った子供に何か危害を加えるでもなし」
「それは――そうですが――」
「じゃあなんの問題もないじゃないか。帰りたまえ」
「しかし魔物となった子供の魂は、天国に行くことが出来なくなるのです。ですのでどうかそのことを奥方様に――」
「くどいね。帰りたまえ」
凍りつくような寒気が謁見の間を満たして行く。廷臣である魔物さえ歯を鳴らし身を震わせ始めた。
ユニはそれに耐え切れず、場を辞した。
北の果てにある冬の砦。人の足では踏み入ることもならぬ長大な山脈。
天を刺す峰は一年中雪をかぶり、谷間は氷河で埋め尽くされ、夏の盛りでさえ氷が張り、雪がちらちら降りしきる。
山脈の奥には、そのうちで一番大きな山よりもまだ大きな氷の城がある。
そこには冬の王様である氷河の魔物と、その奥方様である雪の魔物が住んでいる。
冬になると奥方様は城を離れる。山や野、村や町、川辺や海岸、あばら家からお城まで冷たい綿布団で包んでやるために。
奥方様には白い一つ目のフクロウがたくさん従っている。フクロウたちは雪に紛れて飛び回り、子供を捜し回る。一人きりでいる子供を。
もし見つけたら、奥方様に知らせるのだ。
すると奥方様が来られる。そして、その子を連れて行かれる。奥方様の冬のお住まい、凍りついた海のただ中にそびえる雪の離宮へと。
そこで子供に与えられるのは、きれいな衣服、暖かい寝所、たくさんのごちそう、お菓子、おもちゃ、本。遊び相手もいる。むくむくの毛で覆われた、愉快な小鬼たちだ。
子供はあんまり楽しいので、自分がどうしてここに来たのか忘れる。親兄弟や友達のことも忘れる。最後に自分の名前も忘れてしまう。
奥方様は子供に新しい名前を与えるだろう。そのとき子供は人であることを止め、魔物になってしまう。
春が来れば子供は奥方様と一緒に、帰って行くこととなるだろう。山脈の奥へ。
●
数週間前まで金や紅の衣を纏っていた木々は、今やすっかり丸裸。山脈から吹きおろしてくる、刺すような寒風に震えている。
山の精霊カチャは雪の積もった急な斜面を駆け降りていた。手に大きなシャベルを持って。
彼女の耳には先程から叫び声が聞こえていた。人ならぬものの耳にしか聞こえない、死を目前にした魂の叫び声が。
「ええと……こっちかな」
時々足を止めては耳をすまし、行くべき方向を探り当てる。ほどなくして見えてきた。雪崩に潰されている山間の小屋が。
その小屋が、麓に住まう木こりのものであることをカチャは知っていた。どうやら泊まり込んでいる最中、この災難にあったものと見られる。
近づいてみれば木こりは、梁の下敷きになり呻いていた。カチャはそれを助けようと思った。この木こりが山を荒らしたり、そこに住む生き物を苛めたりするような悪い人間ではないと知っていたから。
「大丈夫ですか、しっかり!」
梁の下にシャベルを突っ込み持ち上げようとしたその時、見えない力に弾かれた。まばゆいほどの光が目を焼く。
「あつっ!」
思わずシャベルを取り落としたカチャは、そこでようやく目の前に、天使マリーがいるのに気づいた。
彼女は言う。
「下がって。魔物も精霊も人の魂に手出しをしてはならない。それが決まりでしょう」
格上な相手の圧に押されつつカチャは、抗弁した。
「でもこの人、まだ魂になっていません。助ければもっと生きられるかも」
しかし、相手は譲らなかった。
「ここで召されるのがこの人の定めなのよ」
そのやり取りの間に木こりが、とうとう息を引き取った。
体から抜け出した魂を天使が優しく包みこみ、天国へ連れて行く。
カチャはそれを見送った後息を吐き、来た道を引き返して行った。
●
冬の奥方様――マゴイの髪は雪のように白い。瞳は雪雲のような灰色。
ほっそりした体を白い毛皮の外套で包み、白トナカイに引かせた銀のソリに乗り、風より速く駆け巡る。だけどそれは、人の目には見えない。
「……停めてちょうだい……」
御者のスペットは白トナカイの手綱を引き、不平そうな顔をした。
ソリが止まった町角の裏通りにはマッチ売りの少女が座り込んでいた。雪が降るのに着ている服はぼろぼろで、裸足。痩せ衰えた顔は血の気が失せている。目は虚ろ。ひび割れた口がもごもご動いている。誰かと喋っているつもりなのだろうか。誰もいないのに。
「……まさかあのジャリ乗せろ言うんと違いますやろな」
「……保護……」
「そのうち親か何かが迎えに来ますよって」
ポウと鳴き声がした。羽音もなくすうっと、一つ目のフクロウが舞い降りてくる。
フクロウは奥方様の耳に嘴を寄せ、囁いた。
奥方様はスペットに言う。
「……日がな一日ああしている……でも誰も迎えに来ない……マッチも売れない……」
「さよですか。世の中不景気ですな。でも俺らにはまっったく関係のないこと――」
「……保護……」
「一昨日もこんなん拾うたでしょうが、奥方様! ほっとったらええんですって、ほら、早速天使が死臭嗅ぎ付けて来てますよって!」
スペットが空を指さし言った。
確かに天使が飛んでくる。新米天使のユニが。少女の命のともしびが消えるのを感じ取り駆けつけたのだ、その魂を連れて行くために。
「……これはいけない……」
奥方様は優雅にしてとろくさい身ごなしでソリから降り、少女の手を取る。
「……おいで……」
少女は立ち上がった。誘われるままソリに乗り込んだ。
スペットは大きなため息をついて鞭を鳴らす。
ソリが走りだす。風よりも早く。天使が追いつくことも出来ない程早く。
幾つもの山や野や畑や町を通り抜け凍りついた海に出て、冬の離宮の前に止まる。赤い服を着た女衛兵が出てきて、御者に聞いた。
「おやβ、奥方様はまた人の子を拾ってきたのかの?」
「せや、θ。悪いクセやでほんまに」
●
氷の壁、床、天井。霜の絨毯は踏むたび微かな音を立てる。氷柱のシャンデリアを輝かせるのは、熱のない星明かり。ステンドグラスに閉じ込められているのは、オーロラの結晶。
氷河の精霊ステーツマンの髪と目は氷底のように青白い。着ている服は冬の夜のように黒い。
彼が腰掛ける玉座の前に、赤い髪をした新米天使、ユニがいる。
「わざわざ天国から押しかけてきて、一体何なのかね」
「奥方様に子供を連れて行かないよう注意していただきたいのです」
「私は奥のすることに口を挟むつもりはないよ」
「主は私どもに、一人でも多くの魂を天国へ導くようにとおっしゃられております。その妨げになるようなことをなされては困ります。魔物も精霊も人の魂に手出しをしてはならない。それが決まりではないですか」
「奥は決まりを破っていないが? 手出ししているのは魂ではなく、生きた人間なのだから。引き取った子供に何か危害を加えるでもなし」
「それは――そうですが――」
「じゃあなんの問題もないじゃないか。帰りたまえ」
「しかし魔物となった子供の魂は、天国に行くことが出来なくなるのです。ですのでどうかそのことを奥方様に――」
「くどいね。帰りたまえ」
凍りつくような寒気が謁見の間を満たして行く。廷臣である魔物さえ歯を鳴らし身を震わせ始めた。
ユニはそれに耐え切れず、場を辞した。
解説
補足説明。
これは、冬のおとぎばなし。
PCは、人間としてお話に参加することは出来ません。魔物、天使、精霊、どれか1つの立場を選んでください。
●立場についての解説
『魔物』は冬の王様と奥方様に仕える精霊。
『天使』は神様に仕える精霊。
『精霊』は誰にも仕えていない精霊です。
魔物と天使は大きな後ろ盾がいる分使える力が強くなるのですが、行動の自由が制限されます。仕える相手が命じることに従わなくてはなりません。大会社の正社員的なイメージです。
精霊は独立独歩な存在なので使える力が弱いですが、行動の自由があります。自営業者といったイメージです。個人的な考えから魔物、天使、どちらかの肩を持つ場合もありますが、大体は双方に対し中立的立場を取ります。
この世界においては精霊より、魔物、天使の方が圧倒的に立場が上です。個人的な戦闘力は、その上下関係に影響しません。
●IF内の個人設定について
自由に考えてください。髪の色を変えたり目の色を変えたりして、普段と異なる姿になってみるのも楽しいかもです。
スキル等は通常通り使えますし装備もそのまま持ち込めますが、せっかくのIF、お話に合わせた形でアレンジを加えてみるのもいいかも知れません(そのことによる各種数値の変化はおきません)。
●NPC役柄表
冬の王様――ステーツマン
冬の奥方様――マゴイ
御者――スペット
衛兵――ぴょこ
山の精霊――カチャ・タホ
天使――マリー・スラーイン
新米天使――ユニ
むくむくの毛で覆われた、愉快な小鬼たち――ワーカー・コボルド+コボちゃん
マスターより
KINUTAです。
今回のIFはアンデルセン童話が下敷きになっております。
改めて資料を読み確かめてみたら、裸の王様が実は王様ではなく皇帝だったことを知り驚いた次第です。
今回のIFはアンデルセン童話が下敷きになっております。
改めて資料を読み確かめてみたら、裸の王様が実は王様ではなく皇帝だったことを知り驚いた次第です。
関連NPC
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2018/11/13 00:18
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
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相談卓 マルカ・アニチキン(ka2542) 人間(クリムゾンウェスト)|20才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2018/11/04 17:41:00 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/11/04 15:21:45 |