• 日常

ぺんたぐらむめもりあ

マスター:愁水

このシナリオは5日間納期が延長されています。

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
参加費
1,000
参加人数
現在5人 / 3~5人
サポート
現在2人 / 0~2人
マテリアルリンク
報酬
少なめ
相談期間
6日
プレイング締切
2018/11/17 22:00
リプレイ完成予定
2018/12/01 22:00

オープニング


 非日常が、終わりの鐘を響かせた。
 今宵も夢の国の扉にそっと鍵をかけ、天鵞絨の幕が下りる。



 サーカスの後片付けも終え、灯りが絞られた天幕。その隙間から、夜の闇に星を湛えるような音色が流れてきた。
 音は、声だ。流水のように清らかで、鈴の音のように繊細な歌声。二重唱は美しいハーモニーを奏で――突如、一つの唱が咳き込み、歌声は途絶えた。

「おやおや、まあ。しっかりしておくれよ、白亜」
「す、すまない」
「全く、愉楽の煙ばかり吸っているから喉が麻痺するんだよ」

 舞台の上で、桜久世 琉架(kz0265)は煙管を吸うジェスチャーを白亜(kz0237)に見せた。

「最近、多いみたいじゃないか」
「……何故」
「白亜にしては珍しく、香水が少し強いからね。煙草の香と混じり合う君の香りは、まるで“いけない薬”のようだよ」
「……」
「吐き出す煙で追い払いたい不満でもあるのかい?」

 見透かすようでいて、明らかに意地の悪さを表す琉架の笑み。見慣れたはずのその質は、相変わらず快いものではない。白亜は喉に手を当てたまま、彼からさり気なく目線を逸らす。

「わかんないの? あんたを追い払いたいんだよ」

 二人の歌声――ではなく、兄の歌声“のみ”を聴いていた黒亜(kz0238)が、観客席で頬杖をつきながら吐き捨てた。

「収穫祭に呼ばれてた吟遊旅団の連中が来れなくなったからって、なに代わりやらされてんの?」
「おや、黒亜は知らなかったのかい? 俺と白亜と……昔はもう一人いたが、軍楽隊に入っていたんだよ」
「それは知ってる。オレが言いたいのは、あんたの隊が頼まれたことをなんでウチでやってるワケ? ハク兄はもう軍人じゃないんだから関係ないでしょ」
「いいじゃないか、貸しておくれよ。俺が今所属する隊にはろくな歌唱力を持つやつがいなくてね。そうだ、よかったら君も参加するかい? 何時だって、大好きなお兄ちゃんの傍にいたいのだろう?」
「へえ……おねがいしますたすけてくださいって泣きついてきた割には随分とエラそうだね」
「おやおや、随分と三流な脚色をするじゃないか。そんなことでは、華やかなサーカスの演出も劣らせてしまうよ? お兄ちゃんの足を引っ張らないように気をつけておくれね、小さな弟くん」

 顔を合わせれば、猫蛇の仲。
 白亜は苦笑を浮かべながら二人の“引っ掻き合い”を余所にして、天鵞絨の隙間を手の甲で押し開けながら、外へ出た。










 足許が、夜色の底に沈んでいる。
 仰げば、凜とした静けさが空全体に広がっていた。

 白亜は、はらりと垂れてきた前髪を掻き上げると、月に届きそうなくらい長く、深い溜息をつく。

 日常が、非日常へと変わっていく。
 軍を抜ければ、心に平穏が訪れると思っていた。しかし、過去は消えない。何時までも纏わり付いてくるのは、悪夢と現実。

「……“逃げた”のは、俺か」

 どれほど離れようとも、同じ空の下からは逃れられない。もしも運命で繋がっているのだとしたら、何と滑稽なことだろう。

 形を成す悪夢。
 生死の確認が出来ないまま発見された、親友のドッグタグ。
 堕落した元部下のクラルス――。

 色々なことが、心の環境を変えていく。
 心の置き場を閉ざされたわけではない。只――

「――……賑やかな場で揉まれれば、少しは気も紛れるだろうか」

 少し、疲れたのかもしれない。
 白亜は誰とはなしに呟くと、思い出に置いていた歌を口ずさみ始めた。昔、“彼”に教えてもらった、優しい子守唄を――。




















 夜闇に浮かぶ、天鵞絨の星が見える。

 夜風に音を響かせて、懐かしい歌が聞こえてきた。
 あの子の夜泣きに悩んでいた白亜に、自分が教えた歌だ。あの子は――紅亜(kz0239)は、まだこの歌を憶えているだろうか。

「まあ、腰の細そうな殿方。どれほど搾り取れるかしら……ふふ。お二方。あの殿方、わたくしがいただいてもよろしいかしら?」
「どうぞ、お好きに。私の獲物にさえ手を出さないで頂ければ、貴女が何をしようと私は干渉致しませんので」
「ありがとうございます、クラルス様。そちらは?」
「……」
「まあ、相変わらずつれないお方。その沈黙は了承と見做しますわよ?」
「……いいのですか?」
「好きに、したらいい。僕は……もう、僕ではないのだから」





 堪えるように言を紡いだその瞳には、“紫の月”が悵然と帯びていた。


解説

《目的》
・収穫祭に参加する。
・収穫祭で披露する合唱に参加する(任意)

>大成功条件
・???

《収穫祭について》
・秋の収穫を祝う祭り。季節は11月上旬だが、仮装OK。
・場所は都市の広場。開催時間は朝から夜の21時頃まで(好きな時間帯に来てよい)
・出店多数。
 食べ物系の出店は旬の食材を調理したメニューが多い(焼き物、揚げ物、スイーツ等、様々)
 他は、ブレスレットやネックレス、ピアスなどの装飾系の出店や、布や毛糸などを扱った雑貨系の出店などがある。

《生演奏》
・物語性の強い、繊細で幻想的な曲(メロディは主にヴァイオリン、ピアノ、ハープなどの楽器を使用)
・当日の午前中にリハーサルは行うが、描写は無し。
・曲のテーマは「追憶」。忘れられない人や想い、心に残る記憶、偲ぶ大切さ、などを題材にした歌詞となっている。
 ソロパートもある為、テーマに沿った歌詞であれば自分で考えてきてもよい。
・メンバーのトーン、曲調、テーマに合わせられる柔軟性と歌唱力が求められる。
・収穫祭の〆を飾る。仮装での参加は不可。

《NPC》
 白亜:
 天鵞絨サーカス団の団長。黒亜と紅亜の兄。元帝国軍所属。
 誘われなければ生演奏が始まるまでの間、サーカスの天幕で雑務を片付けている。
 生演奏に参加。伸びやかな声に艶のある低音の歌声。

 黒亜:
 天鵞絨サーカス団の副団長。三兄妹の次男。
 祭りは買い出しついでに見て回っている程度。
 生演奏に渋々参加。クリスタルボイスと絶対音感の持ち主。

 紅亜:
 天鵞絨サーカス団の団員。三兄妹の末っ子。
 最近リアルブルーの童話を読んだのか、「かぐや姫」の仮装をしている(ストレートの黒髪のウィッグに、着物)

 桜久世 琉架:
 帝国軍の軍人。白亜とは昔馴染み。
 割り当てられた警備時間を終えた後は自由時間。
 生演奏に参加。音域は広く、ボディーランゲージでの表現も非常に得意。

マスターより

 シュヴァルツ:
 帝国軍の軍医。白亜とは昔馴染み。
 琉架同様、警備を終えた後は自由時間。

※PCは収穫祭を盛り上げる為に参加を求められた為、僅かですが報酬が出ます。
※収穫祭をNPCと共に楽しむこともOK。時間枠が重ならないようPC同士でご相談を。
※OPの???二名とクラルスの描写シーンはPL情報。
※質問は琉架が回答致します。





お世話になっております、愁水です。
今年も出遅れました、ハロウィン。でも秋の収穫祭ということで、間違ってはいないハズ。

今回のシナリオも様々な心情が交錯しています。
誰の目線に立つか、誰の目線を見るか。一人で佇むのか、共に歩むのか。選択は自由です。
ご縁、お待ちしております。

関連NPC

  • 天鵞絨ノ赤椿
    白亜(kz0237
    人間(クリムゾンウェスト)|36才|男性|猟撃士(イェーガー)
  • 花一華ノ蛇
    桜久世 琉架(kz0265
    人間(クリムゾンウェスト)|26才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2018/11/27 01:46

参加者一覧

  • 天鵞絨ノ空木
    白藤(ka3768
    人間(蒼)|28才|女性|猟撃士
  • ヒトとして生きるもの
    蜜鈴=カメーリア・ルージュ(ka4009
    エルフ|22才|女性|魔術師
  • 軌跡を辿った今に笑む
    ロベリア・李(ka4206
    人間(蒼)|38才|女性|機導師
  • 夜空に奏でる銀星となりて
    レナード=クーク(ka6613
    エルフ|17才|男性|魔術師
  • Schwarzwald
    浅生 陸(ka7041
    人間(蒼)|26才|男性|機導師

サポート一覧

依頼相談掲示板
アイコン ☆質問卓☆
浅生 陸(ka7041
人間(リアルブルー)|26才|男性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2018/11/14 07:34:34
アイコン 【秋だ、仮装だ、収穫祭だ!】
白藤(ka3768
人間(リアルブルー)|28才|女性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2018/11/17 15:39:53
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/11/13 22:32:51