• 調査

クリスとマリーとルーサーと 王都の選択

マスター:柏木雄馬

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,500
参加人数
現在7人 / 6~8人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2018/11/14 07:30
リプレイ完成予定
2018/11/23 07:30

オープニング

「せっかく王都にいることですし、貴女のフィアンセに顔を見せていきましょうか、マリー?」
 聖ヴェレニウス大聖堂で他の巡礼者たちと共に教区大司教からの祝福を受け、正式に巡礼の旅を終えた貴族の娘マリーは、お付きの侍女──遠縁の親戚の娘で幼馴染で親友でもある──クリスから不意にそう提案されて、愕然とした表情で振り返った。
「え……? ちょ……なんで、そんな、唐突に……?」
「だって、目と鼻の先にいるのですよ? 会わないで行けば角が立ちます」
「そんなこと言われても、心の準備とか……」
「……マリー。ちゃんと覚悟を決めたのではなかったのですか……?」
 彼女たちが巡礼の旅に出る前。オードラン伯爵家の跡取り娘マリーに縁談話が持ち上がった。相手は分家筋のパラディール子爵家の三男坊。幼い頃に幾度か顔を合わせた間柄ではあるが、『マリーにとっては』(本人が碌に周りの話を聞いていなかっただけだが)寝耳に水の話であり…… 何とか時間を稼ごうと父に申し出たのが、王国民なら生涯に一度は巡ると言われる王国巡礼の旅だった。
 現オードラン伯爵家当主である父親は娘の希望を溜め息交じりに了承した。以来、マリーは『生涯最初で最後の自由』を満喫した。本筋を外れて寄り道を繰り返し、王国全土の観光地を巡った。ダフィールド侯爵領では騒動に巻き込まれ…… 事件ぎを通じて自分の身分──貴族というものについて考えさせられた。
「それは…… 分かってはいる、んだけど……」
 口ごもるマリーに、クリスは返事を急がせなかった。マリーは暫し自分で考え……しぶしぶながら了承した。
「……婚約者であるジョアン様は王立学園を卒業後、ハルトフォート砦勤務を経て、現在、王立学園の騎士科で講師をなさっているそうです」
 大聖堂のある第一街区から、王立学園のある第二街区へ歩きながら。しかし、クリスの説明を耳から耳へと流しながらマリーは考え続けていた。
 結婚は、したくはなかった。自由奔放に育ったマリーは、ただ自分が家というものに縛り付けられるのが嫌だった。とにかく時間を稼げば……巡礼の旅の最中に何か良い解決策が浮かぶものと思っていた。
 だが、何も思いつかなかった。ただ旅を満喫しただけで終わってしまった。……侯爵領の騒動で、貴族やその責務について考えたのは本当だ。ただ、自分の固めた『覚悟』というのは……本当に覚悟だったのか。
 ……侯爵家の騒動に片が付いた後、マリーは前侯爵家当主ベルムドと話す機会があった。彼もまた若い頃、王都留学中に父親が倒れたことで急に結婚と家督を継ぐことを強いられた過去があった。
「……ふーん。まだ子供なのに大変なことだね。まあ、自分の思うままに生きてみるのが良いのではないか?」
「……なんかクリスに対するのと口調が違うんだけど……あと、子供じゃないし! ……っていうか、あなた、自分が思うままに生きた結果が今回の騒動の原因だったんじゃないの?」
「だからさ」
「え?」
「覚悟もないまま家督を継いで、何かズレた感覚を抱いたまま当主をやってきたその結果が今の私の体たらくというわけだ。……幸い、まだ君には時間がある。本当に選択肢はないのか…… 色々なことをよくよく考えてみるといい」
 考えた。この王都に来るまでも色んなことを考えた。でも答えは出なかった。何が正しいことなのか、若いマリーには判断が付かなかった。
 そして、そのまま…… 王立学園の門の前についてしまった。事務受付で面会の手続きを取り、その場で待つ。
「マリー」
「……何、クリス?」
「悩みがあるなら相談してくださいね。私はいつだって……貴女の味方ですから」
 驚くマリーに、クリスは悪戯っぽくウィンクを一つを返して。書類を手に事務員が戻って来るのを見て慎みある淑女の姿勢と表情に戻る。
「騎士科の臨時講師として機動砲兵科に在籍していたジョアン・L・パラディールは、前期いっぱいでその任期を終え、現役武官として新たな任地へ赴きました。当学園には既におりません」
 事務的な口調で告げる事務員に礼を言い、2人は受付を離れた。
 拍子抜けだった。同時にマリーはホッとした。実際に顔を合わせたとして、何を話せばいいのかまるで分からなかったから。
(ホッと、か…… 何もかも後延ばし後延ばしにしているばっかね、私は……)
 マリーが軽く落ち込んでいると、意外な再会が訪れた。
 クリスについて出たエントランスから正門へと続く庭── 学園に戻って来た学生と思しき少年が、すれ違う二人に気付いて声を上げた。
「……あれ? もしかして、クリスと、マリー……?」
 弾む様なその声に、クリスとマリーも顔を上げて振り返る。
 学生はルーサーだった。ダフィールド侯爵家の四男坊。マリーの、ハンターたちの弟分──
「うわ、ホントにクリスとマリーだ! なんだってこんな所に?!」
「ルーサー! お久しぶりです。つつがない様子でなによりです……! 私たちは、マリーの婚約者の方と会いに」
「婚約者!? マリーに!? ホントに実在したんだ……! 都市伝説の類かと思ってた……(←信じ難きものを目の当たりにしたような瞳で)」
「どういう意味よっ!? そんなことより、ルーサー。ホントに王立学園に入学したのね…… ルーサーが騎士科とか、想像つかないんだけど!」
「トレーニングは続けているから! もう小太りじゃないから! ……でも、騎士科じゃないんだよね、僕…… 父と兄の意向で」
「? じゃあ、どこよ?」
「……。芸術科」
「芸術科!?」
 ひとしきりやり取りが済んで。思わぬ再会に旧交を温めた(?)クリスははたと気付いてポンと手を叩き、マリーに笑い掛けながらこう提案をした。
「では、ちょうど時間も空いたことですし……予定を変更して今日はルーサーの学園生活を見学させてもらいましょうか」
 クリスの提案にニンマリと笑みを浮かべるマリー。ルーサーはえ"、と絶句した。


 そして、その日の午後── クリスとマリーはもう一つ思わぬ再会を果たすことになる。
 円卓会議に出席する為、王都を訪れていた現侯爵家当主、長男カールが、大勢の護衛を引き連れて学園を訪れることになるからだ。
「ルーサー! ルーサーは無事か!?」
 事務員が止めるのも聞かず、血相を変えて教室に飛び込んで来たカールは、ルーサーと、そして、クリスとマリー、ハンターたちを見てホッと胸を撫でおろす。
「無事ならいい…… ……。ルーサー、俺はこれからオーサンバラへ帰る。お前はこのままここで学業に励め」
「え、でも、兄さん、円卓会議は……」
 ルーサーの問いには答えず、カールは急ぎ踵を返した。そして……
「ルーサーの事、よろしく頼む……!」
 クリスとハンターたちだけに聞こえるように、ただそれだけを小声でそっと囁いた。

解説

1.状況と目的
 このシナリオは柏木が展開しているショート連作の一篇です。
 時系列的には『イノセント・イビル 悪意の発芽』の直後。ただし、今シナリオの登場人物であるクリスとマリー、ルーサー、そしてハンターたちも、その惨劇を知りません。

 PCはクリスとマリーの護衛として雇われた、或いは二人の旅に同道しているハンターの一人となります。
 柏木分類『描写系』かつ『戦略系』。PCの描写自体が目的のシナリオであると同時に、今後の連作の展開が大きく変わるシナリオともなります。


2.特殊な状況
 リプレイは、OPの●以前と、●以後とに分かれます。

『●』以前
 クリス:マリーと授業参観。ルーサーを見守ったり、マリーを授業に参加させてもらったり。
 マリー:クリスと授業参観。へっぽこなルーサーを揶揄ったり、逆に授業参加で自爆ったり。内心ではOP本文の内容で悩んでいる。
 ルーサー:芸術科授業。専門に分化する前の段階。画材を持って写生に出たり、音楽の座学を受けたり、下手なポエムを作らされたり……

『●』以後
 クリスとマリー:カールの態度に何か只事ではない事が起きていると判断。それを知るべくハンターたちに調査を依頼。
 ルーサー:長兄の態度がおかしいことは感じています。故に事態を知りたがり、また知ったなら(家族の一員として正当に)行動を起こしたがります。
 カール:王立学園からそう遠くない第二街区の侯爵家別邸で故郷に帰る準備をしています。夕方、道中夜になるのも構わず、最も早い船便で帰還予定。
 カールの部下たち:カールの直属の護衛兵。侯爵領の騒動(結婚式)で顔見知りになったハンターもいるかも。
 ルーサーの護衛:カールの部下たちの中からこっそりルーサーの護衛につきます。2名ずつの交代制。王立学園にはゴリ押し済み。


 尚、今シナリオにおいて『今シナリオの登場人物以外からの情報入手』(例えば前作参加者等)は禁止とします。

マスターより

 いつもお手紙ありがとうございます!(←二つ前のシナリオのOPで言うはずだったお礼) 久方ぶりの『解説』ではない『マスターより』。こんにちは、或いはこんばんは。柏木雄馬です。
 というわけで、クリスとマリーとルーサーと侯爵家とIE(イノセント・イビル)から連なるシナリオです。割かし大切&大事なシナリオになったのでEXを付けさせていただきました。
 解説にも書かせていただきましたが、今シナリオで今後の展開(NPCの行動・状況)が変わります。
 ……明らかになる事実は、前シナリオの惨劇です。皆様、マリーやクリスやルーサーや他の面々──シナリオの中で生きている人間たちを、よろしく導いてあげてください。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2018/11/22 21:03

参加者一覧


  • ヴァイス・エリダヌス(ka0364
    人間(紅)|31才|男性|闘狩人
  • みんなトモダチ?
    レベッカ・ヘルフリッヒ(ka0617
    人間(蒼)|20才|女性|猟撃士
  • 掲げた穂先に尊厳を
    ルーエル・ゼクシディア(ka2473
    人間(紅)|17才|男性|聖導士
  • 誓槍の騎士
    ヴァルナ=エリゴス(ka2651
    人間(紅)|18才|女性|闘狩人
  • それでも私はマイペース
    レイン・ゼクシディア(ka2887
    エルフ|16才|女性|機導師
  • 能力者
    美亜・エルミナール(ka4055
    人間(蒼)|20才|女性|闘狩人
  • 笑顔で元気に前向きに
    狐中・小鳥(ka5484
    人間(紅)|12才|女性|舞刀士
依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/11/11 19:06:23
アイコン 相談だよー
狐中・小鳥(ka5484
人間(クリムゾンウェスト)|12才|女性|舞刀士(ソードダンサー)
最終発言
2018/11/14 06:56:05