• 戦闘

露と消えにし花命

マスター:一要・香織

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
参加費
1,000
参加人数
現在6人 / 4~6人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2018/11/15 07:30
リプレイ完成予定
2018/11/24 07:30

オープニング

「ふう……」
 村の外れにある畑を耕していた少女ミーニャは、小さく息を吐き出し鍬を握っていた自分の掌を見た。
 掌にはいくつものマメが出来、所々皮がむけてしまっている。
 何か月も前には、そんなものもなかったのに……。
 しかしミーニャはその掌をみて嬉しそうに微笑んだ。

 数カ月前、王国内の大きな街に住んでいたミーニャの穏やかな生活は、両親が他界して間もなく崩壊した。訳も分からぬまま家を追い出され、行く所も助けてくれる人も無く、ミーニャと妹のリシャはスラムで生活をするようになった。
 同じ年頃の子供から年寄りまで、生気を失ったような顔つきの者が細い路地に座り、只々時間が過ぎるのを待っていた。
 リシャがキューキューとお腹を鳴らせば、ミーニャは物乞いに大通りに立った。
 スラムを牛耳る怖い大人から目を付けられないように隠れ、時にはゴミを漁り、必死に生に縋りつく……。
 だけどいつからか、なぜ自分はここに居るのか……何の為に生きているのか……と考えるようになった。

 その日もミーニャは大通りに佇んだ。
 何時ものように両手を差し出し、誰かが何かを恵んでくれるのを待つ。
 通りを歩く人々の機嫌を損ねないように……、殴られないように……俯いて只々待つ……。
 じっと足元を見つめていると、そこにそっと影が差した。次いで差し出した両手を温かさが包み、ミーニャが勢いよく顔を上げると、目の前には優しそうな瞳をしたお姉さんが居た。
 視線を合わせるように腰を落し、ミーニャの手を優しく握り微笑む。
 金色の髪の毛が太陽でキラキラ光り、なんだか妖精みたい……そう思いながら見つめ返すと、お姉さんは僅かに眉尻を下げ、
「ご両親は?」
 と、聞いた。
 居ない……そう首を振ると、お姉さんは目を伏せ、それからミーニャの後ろに視線を向けた。
「妹さん?」
 首を傾げるお姉さんに、うん、と返事をすると、握る手に更に力がこもった感じがした。
「私は、レイナ・エルト・グランツです。私と一緒に行きましょう」
 そう言ってお姉さんはミーニャとリシャの手を引いた。

「一緒に行こう」
 スラムで幾度となく聞いたその甘い言葉は、いつも毒を含んでいた。
 だからいつもその甘い言葉には気を付けていた。それなのに……この人の手を振り払う事は出来なかった。


 街の外には紋章を掲げた綺麗な馬車が停まっている。
 ずっとお風呂に入っていない埃だらけで臭い二人を、少しも気にする風でもなく、お姉さんは馬車に乗せてくれた。
 フカフカの椅子にクッション……、恐る恐る腰を落す二人に微笑みを向け、
「味気ない物しかないのだけれど、沢山あるからいっぱい食べてね」
 そう言って焼き立ての白パンを手渡してくれた。
 香ばしい匂いを吸い込むだけで、リシャのお腹がキューキューと鳴る。
 本当に食べていいのか――、お姉さんをチラリと見ると、優しく目を細め頷いた。
 直ぐに頬張り噛み締めれば溶けるように広がる香りと味―――。いつも慰め程度の量しか食べられずにいたパンを、何度も何度も手を伸ばし頬張った。
 少しずづ膨らんでいくお腹―――、香ばしい香りも胸を満たし、何故だか鼻の奥がツンと痛み涙が零れた。
 いつ振りだろう……お腹いっぱいに食べられたのは……。
 いつ振りだろう……生きていると実感したのは……。
「領に着くまで時間が掛かるから、少し眠るといいわ」
 お姉さんの声に促され、お腹が膨れた事と、心地よい馬車の揺れで二人はあっという間に眠りに就いた。


 そして連れて来られたのは、林の近くにある小さな村の孤児院だった。
 和やかな村人と、厳しくも優しい院長に迎えられ、二人は孤児院で生活するようになった。
 孤児院での生活は大変だった。朝から晩まで掃除や洗濯、食事の用意と畑仕事。
 だけど、毎日お腹いっぱいご飯が食べられ、ふかふかの温かな布団で眠るとどんなにくたくたに疲れていても、朝にはまた元気になれる。
 スラムでの生活からは考えらないような、心穏やかな時間だった。

 この生活を与えてくれた院長やお姉さんの為に、一生懸命働こう――。
 ミーニャは今日も陽が暮れるまで、孤児院の畑を耕し続けた。

「おねーちゃん! もうご飯だよー」
 妹のリシャが、村の方から駆けてくるのが見えた。
 顔を上げると、茜と藍色が混ざり合う空に小さな星がポツポツと浮かんでいる。
 キュルルル……と空腹を訴えた自分のお腹を擦り、リシャの方へと歩き出した。
「いい子にしてた?」
「うん、いい子だよー」
 汚れた手を拭ってリシャの頭を撫でてあげれば、リシャは嬉しそうに目を細めた。
 酷く痩せていたリシャも、今では随分と健康な体つきになった。昼間は孤児院の掃除や洗濯の手伝いなどをして、夕方になると畑に居るミーニャを呼びに来る。
 ミーニャは農具を片付けて背負い込むと、リシャの手を取って歩き出した。

 しかし直後――――、
「ゲギャギャギャギャ!!」
 鳥の鳴き声よりも低く、いやに下品な声が二人の背後から響いた。
「っ!」
 驚きに振り返った二人の視界に、人型の……やけに頭が大きく、身体ががっしりした生き物の姿が二つ映った。
 暗くてもその生き物の肌が、人間の色と違う事にすぐ気が付く。
「………ゴ、……ゴブ、リン……」
 震える声で呟くとリシャの手を強く引きミーニャは走り出した。
 苦しくなる呼吸、背後から聞こえる足音はあっという間に二人に追いつき、刹那―――、息が止まる程の衝撃と痛みに襲われ、花びらが散るように赤い雫が辺りに散り、二人は地面に倒れた。


 グランツ領、領主館――
「レイナ様、……ご報告が……」
 何時もより険しい顔つきのサイファーが執務室に駆け込んで来た。
「サイファー、どうしたのです?」
 深刻そうな雰囲気に、レイナ・エルト・グランツは、眉を寄せる。
「キルケ村の孤児院に預けていた、ミーニャとリシャの姉妹が……ゴブリンに襲われ、亡くなりました」
「っ!!」
 鋭く息を飲んだレイナの顔が見る見る歪んでいき、直後――両手で顔を覆った。
 小さく肩が震え、泣いているのだと気付いたサイファーは唇を噛み締めた。
 スラムから救いだし、孤児院で生活できるよう取り計らったレイナは、あの姉妹をとても気にかけていた。その悲しみは計り知れない。

「……サイファー、直ぐにハンターオフィスに、向かって下さい」
「承知しました」
 レイナは震える声を無理に押し込んで命を出すと、サイファーは小さく頭を下げ、執務室を後にした。

解説

 スラムから脱出し、穏やかな生活をおくれる様になったミーニャとリシャ。
 日々の仕事は大変だけど、飢える事も凍える事もなくなりました。
 村の為、レイナの為に役に立とうと一所懸命働いていた、ある日――キルケ村の外れにゴブリンが出現しミーニャ達に襲い掛かったのです。
 村に現れたゴブリンは二体、手には小ぶりの剣を持っていました。
 その後ゴブリンはミーニャ達を探しに来た村人の姿に驚き、林の中に逃げてしまいました。
 林の中にはまだ他のゴブリンも居るはずです。今度は数を増やして村を襲いに来るかもしれません。捜索し、討伐をお願いいたします。

 今回のゴブリンは全部で二〇体ほど。その中には指揮を執る知恵のあるゴブリンもいる様です。

 時間帯は昼間、ゴブリンも活動している時間です。
 林の中は木がまばらで、見通しの良い場所も拓けた場所もあります。
 これは逆にゴブリンからも見えやすいという事ですので、周りには気をつけてください。

 平穏を取り戻せるよう、よろしくお願いいたします。

マスターより

こんにちは。一要です。

久し振りのシナリオになってしまいましたが、皆様お元気ですか?
寒くなってきましたね。風邪など召されませんようお気を付け下さい。

今回はゴブリン討伐です。
数は多いですが問題なく倒せると思います。

村に再びの平穏が戻る様、よろしくお願いいたします。

関連NPC

  • 若手領主
    レイナ・エルト・グランツ(kz0253
    人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2018/11/22 21:27

参加者一覧

  • 支援巧者
    ロニ・カルディス(ka0551
    ドワーフ|20才|男性|聖導士
  • 夢路に誘う青き魔女
    夢路 まよい(ka1328
    人間(蒼)|15才|女性|魔術師
  • エルフ式療法士
    ソナ(ka1352
    エルフ|19才|女性|聖導士
  • ティーマイスター
    カティス・フィルム(ka2486
    人間(紅)|12才|女性|魔術師
  • 乙女の護り
    レイア・アローネ(ka4082
    人間(紅)|24才|女性|闘狩人
  • Mr.Die-Hard
    トリプルJ(ka6653
    人間(蒼)|26才|男性|霊闘士
依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2018/11/15 02:16:09
アイコン ご相談
ソナ(ka1352
エルフ|19才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2018/11/15 07:26:26