ゲスト
(ka0000)
盲目の殻
マスター:鹿野やいと

このシナリオは5日間納期が延長されています。
- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 難しい
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在8人 / 4~8人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2018/11/17 12:00
- リプレイ完成予定
- 2018/12/01 12:00
オープニング
かの地方領主であるクールソン男爵が本の収集を趣味をしていることは、周辺の住民であれば幼い子供でも知っている話だ。本人は学者の気質ではなく、さりとて学者を抱えているわけでもなかったが、知識という宝物が積まれていくことに彼は無上の喜びを感じていた。彼が作り上げた書庫はさながら図書館と言って差し支えない物となっており、時にはその書庫を目当てに客人が訪れるほどでもある。
領主の書庫は城壁に囲われた領主の城の一角にある。本来は教会として使用されていた煉瓦造りの建物で、高い天井を生かして足場が無ければ届かないほどの高さの棚を設置している。領主の娘メリーベルはこの日も客人の為に地下の閉架書庫より、幾つかの貴重な本を抱えて図書室に入った。多忙な父母に代わり客人の相手を務めるのは娘としての責務。しかしこの日の彼女は恐怖によって震えていた。
客人はフルフェイスの兜を被った大柄な歪虚の男。父の配下で一番の兵士を瞬時に切り倒した彼の付き添いをもう2週間も続けている。
彼らは唐突に表れた。夜の闇に乗じて兵を乗せた騎竜が城壁を乗り越え、奇襲によってこの城を制圧した。皆殺しも覚悟した領主とその兵士達であったが、意外にも殺戮は起こらずに命令が下された。
「一切の外出を禁じる」「何もなかったようにふるまえ」
恐怖によって反抗する意思を失った者はこれに服従するしかなかった。生きていれば望みもある。反撃の目もあるかもしれない。その判断が正しかったのかどうかはわからない。彼らに与えた時間が何を意味するのか、地獄の淵に立たされた当事者達には皆目見当もつかないからだ。
「御所望の本をお持ちしました」
大きな読書用の机に座る歪虚の男にメリーベルはおそるおそる声をかけた。男は物憂げというよりは随分つまらなさそうに本に目を通している。いつもの通り返事はない。メリーベルは要求された本をそっと机の上に積み、足音が響かぬようにゆっくりとした足取りで距離をとった。男は手元に積まれた本を眺めるとうんざりしたように溜息を吐き、読んでいた本も閉じて脇へどけた。その様子を見ていたメリーベルは、思わず声をあげてしまった。
「あの……」
男の視線がメリーベルに向けられる。濁った殺意を押し隠したような目に気後れするも、出てしまった言葉を飲むわけにもいかない。意を決してメリーベルは続きの言葉を口に出した。
「何故本を御所望になるのですか? 」
知識でなく司書を必要としているのなら、この質問には価値があるはず。このまま意に沿わない本を用意できずに癇癪をぶつけられるよりは良い。
男はしばらくメリーベルを観察すると視点を逸らし手元に乱雑に置かれた本に視線を落とした。
「俺には記憶がない。この世界のどこの誰かなのかがわからない。その欠落が何の影響も無いのならいいが、俺の膨大だったであろう戦闘経験と一緒に失われている」
男は喋りながら兜を外す。兜の下は包帯を何重にも巻き付けられており、辛うじて見える口元や目元には焼けただれたような皮膚が覗いていた。
「戦闘経験や身体の修復で復活する気配が無い以上、それ以外の方法が必要だった。記憶を復活させる方法を知る手がかりが欲しい。……しかし、思った以上に読書というのはつまらんな」
元から性分でないのは傍目にもわかった。一々指摘する話でもないが。苦笑いで誤魔化すメリーベルだが、そういう作法理解しない者も居る。狙いすましたタイミングで扉を開いてきた騎竜がまさにそれだった。
「居眠りで半日寝てる人が言うと言葉の重みが違いますね!」
暴言に空気が固まる。頭だけを部屋に差し込みへらへらと笑いながら言う台詞ではない。
「って、この女が考えてたんですよぉーーーーーー!!」
メリーベルは慌てて首を横に振る。確かに居眠りしている姿を見ていたが、客が誰であれ見ない振りをする程度には礼儀作法もマナーもある。願いもむなしく大男の目には明らかな苛立ちと怒りが宿っている。メリーベルが目を瞑り許しを請おうとする前に、大男はは手に持つのに丁度いいサイズの燭台をつかみあげると迷いなく投擲した。騎竜の、顔に。
「ぐげぇーーーー!!?」
燭台を顔にめりこませ、騎竜は扉の外に吹き飛んだ。自業自得と笑う余裕はないが、メリーベルは安堵して大きく息を吐いた。
「扉を閉めろ」
「……はい」
「閂もだ」
メリーベルは黙って男の指示に従う。外ではまた何か騎竜の叫び声を上げていたが、扉を締め切ると元の静寂が戻ってきた。
●
歪虚は時間稼ぎのために外部への情報を遮断すべく努力したが、異変を隠し通すのは不可能だ。普段と違う警戒のシフト、増大した食料の納品、休暇に帰宅しない兵士達。異常を探せばあからさまに過ぎる。異常を察した住民が密かに騎士団や冒険者協会に通報するまでさほど時間を要することはなく、2週間もしないうちに騎士団は城内の状況を正確に把握する事が出来た。
騎士団主導による襲撃は昼過ぎに起こった。城内へと入る荷馬車を正門前で検査していた折、突如として御者が馬に鞭をくれ、荷馬車を城内に突っ込ませた。慌てた兵士達が駆け寄って何事かと把握する前に、幌の中から飛び出した人物が槍を兵士の集団の中に投げ放つ。槍は狙い違わず歪虚の兵士だけを貫いた。
「何事だ!?」
歪虚の兵士達が遅まきながら動き出すが、最前線で立哨に参加していない分だけ反応に遅れが生じた。馬車からは初撃の混乱に乗じるためにハンター達が飛び降りる。驚きながらも応戦しようと抜剣する歪虚兵士に、いち早く状況を察した城の兵士達がそうはさせじと一斉に切りかかった。城内は混沌と化した。事態を把握した施設内の兵士達もすぐさま手近な歪虚兵士へと切りかかり、そこかしこで乱戦が始まっていた。歪虚は数こそ少ないが覚醒者でも無い兵士にかなう相手ではなく、一方的に取り囲みながらも徐々に包囲を崩されている。値千金の時間とはまさにこれであろう。ハンター達は混乱の脇をすり抜け、あるいは混乱の最中に突入していった。
領主の書庫は城壁に囲われた領主の城の一角にある。本来は教会として使用されていた煉瓦造りの建物で、高い天井を生かして足場が無ければ届かないほどの高さの棚を設置している。領主の娘メリーベルはこの日も客人の為に地下の閉架書庫より、幾つかの貴重な本を抱えて図書室に入った。多忙な父母に代わり客人の相手を務めるのは娘としての責務。しかしこの日の彼女は恐怖によって震えていた。
客人はフルフェイスの兜を被った大柄な歪虚の男。父の配下で一番の兵士を瞬時に切り倒した彼の付き添いをもう2週間も続けている。
彼らは唐突に表れた。夜の闇に乗じて兵を乗せた騎竜が城壁を乗り越え、奇襲によってこの城を制圧した。皆殺しも覚悟した領主とその兵士達であったが、意外にも殺戮は起こらずに命令が下された。
「一切の外出を禁じる」「何もなかったようにふるまえ」
恐怖によって反抗する意思を失った者はこれに服従するしかなかった。生きていれば望みもある。反撃の目もあるかもしれない。その判断が正しかったのかどうかはわからない。彼らに与えた時間が何を意味するのか、地獄の淵に立たされた当事者達には皆目見当もつかないからだ。
「御所望の本をお持ちしました」
大きな読書用の机に座る歪虚の男にメリーベルはおそるおそる声をかけた。男は物憂げというよりは随分つまらなさそうに本に目を通している。いつもの通り返事はない。メリーベルは要求された本をそっと机の上に積み、足音が響かぬようにゆっくりとした足取りで距離をとった。男は手元に積まれた本を眺めるとうんざりしたように溜息を吐き、読んでいた本も閉じて脇へどけた。その様子を見ていたメリーベルは、思わず声をあげてしまった。
「あの……」
男の視線がメリーベルに向けられる。濁った殺意を押し隠したような目に気後れするも、出てしまった言葉を飲むわけにもいかない。意を決してメリーベルは続きの言葉を口に出した。
「何故本を御所望になるのですか? 」
知識でなく司書を必要としているのなら、この質問には価値があるはず。このまま意に沿わない本を用意できずに癇癪をぶつけられるよりは良い。
男はしばらくメリーベルを観察すると視点を逸らし手元に乱雑に置かれた本に視線を落とした。
「俺には記憶がない。この世界のどこの誰かなのかがわからない。その欠落が何の影響も無いのならいいが、俺の膨大だったであろう戦闘経験と一緒に失われている」
男は喋りながら兜を外す。兜の下は包帯を何重にも巻き付けられており、辛うじて見える口元や目元には焼けただれたような皮膚が覗いていた。
「戦闘経験や身体の修復で復活する気配が無い以上、それ以外の方法が必要だった。記憶を復活させる方法を知る手がかりが欲しい。……しかし、思った以上に読書というのはつまらんな」
元から性分でないのは傍目にもわかった。一々指摘する話でもないが。苦笑いで誤魔化すメリーベルだが、そういう作法理解しない者も居る。狙いすましたタイミングで扉を開いてきた騎竜がまさにそれだった。
「居眠りで半日寝てる人が言うと言葉の重みが違いますね!」
暴言に空気が固まる。頭だけを部屋に差し込みへらへらと笑いながら言う台詞ではない。
「って、この女が考えてたんですよぉーーーーーー!!」
メリーベルは慌てて首を横に振る。確かに居眠りしている姿を見ていたが、客が誰であれ見ない振りをする程度には礼儀作法もマナーもある。願いもむなしく大男の目には明らかな苛立ちと怒りが宿っている。メリーベルが目を瞑り許しを請おうとする前に、大男はは手に持つのに丁度いいサイズの燭台をつかみあげると迷いなく投擲した。騎竜の、顔に。
「ぐげぇーーーー!!?」
燭台を顔にめりこませ、騎竜は扉の外に吹き飛んだ。自業自得と笑う余裕はないが、メリーベルは安堵して大きく息を吐いた。
「扉を閉めろ」
「……はい」
「閂もだ」
メリーベルは黙って男の指示に従う。外ではまた何か騎竜の叫び声を上げていたが、扉を締め切ると元の静寂が戻ってきた。
●
歪虚は時間稼ぎのために外部への情報を遮断すべく努力したが、異変を隠し通すのは不可能だ。普段と違う警戒のシフト、増大した食料の納品、休暇に帰宅しない兵士達。異常を探せばあからさまに過ぎる。異常を察した住民が密かに騎士団や冒険者協会に通報するまでさほど時間を要することはなく、2週間もしないうちに騎士団は城内の状況を正確に把握する事が出来た。
騎士団主導による襲撃は昼過ぎに起こった。城内へと入る荷馬車を正門前で検査していた折、突如として御者が馬に鞭をくれ、荷馬車を城内に突っ込ませた。慌てた兵士達が駆け寄って何事かと把握する前に、幌の中から飛び出した人物が槍を兵士の集団の中に投げ放つ。槍は狙い違わず歪虚の兵士だけを貫いた。
「何事だ!?」
歪虚の兵士達が遅まきながら動き出すが、最前線で立哨に参加していない分だけ反応に遅れが生じた。馬車からは初撃の混乱に乗じるためにハンター達が飛び降りる。驚きながらも応戦しようと抜剣する歪虚兵士に、いち早く状況を察した城の兵士達がそうはさせじと一斉に切りかかった。城内は混沌と化した。事態を把握した施設内の兵士達もすぐさま手近な歪虚兵士へと切りかかり、そこかしこで乱戦が始まっていた。歪虚は数こそ少ないが覚醒者でも無い兵士にかなう相手ではなく、一方的に取り囲みながらも徐々に包囲を崩されている。値千金の時間とはまさにこれであろう。ハンター達は混乱の脇をすり抜け、あるいは混乱の最中に突入していった。
解説
●依頼内容
町人達の通報により今回の状況が発覚しました。
領主の城内部の歪虚を排除してください。
●PL向けシナリオの状況
城の内部への突入が成功したところから判定はスタートします。
攻略の手順から相談を始めてください。
敵は不利な状況の為、混乱から立ち直った者から撤退を始めます。
●判定基準
・敵の被害
部隊に大損害。あるいは隊長に大ダメージなどで撤退する。
・味方の被害
被害が少ないほど成功度上乗せ
●城の情報
空堀と古ぼけた城壁に囲まれた城。出口は表門と裏門のみ。
内部には籠城に必要な基本的な機能を全て備えている。
食糧庫、厩、武器庫、宿舎に並んで図書館を備えているのが他と異なる点。
●敵NPC
・名無しの大男
未だに回復途上の歪虚の戦士。OPの通りの理由で一日の大半を図書館で過ごしている。
武装は剣を帯びる程度。防御は硬質化した肌などの防御点のみ。
・大男の部下の騎竜隊×9
城内の各所で兵士の監督をしていた。今は兵士達とそこかしこで斬り合いになっている。
囲まれても兵士に負けるほどではないが、慣れない状況に戸惑い手間取っている。
乗騎となる竜は厩から出て暴れようとしているが、乗り手不在でまとまりがない。
大男の使うおしゃべりな騎竜のドーピスもここ。
●味方NPC
・領主と兵士
領主一家は軟禁状態。兵士は通常通り。
兵士達は各所で各個に戦闘を開始。敗北必至だがハンターの為の時間稼ぎに奮戦している。
領主の娘はOPと同じく大男の接待中
・馬車に同乗する味方
地元に明るい兵士、御者や商人に偽装した兵士など複数名居ますが、
戦闘では城の兵士よりは強い、程度なので数に数えないでください。
町人達の通報により今回の状況が発覚しました。
領主の城内部の歪虚を排除してください。
●PL向けシナリオの状況
城の内部への突入が成功したところから判定はスタートします。
攻略の手順から相談を始めてください。
敵は不利な状況の為、混乱から立ち直った者から撤退を始めます。
●判定基準
・敵の被害
部隊に大損害。あるいは隊長に大ダメージなどで撤退する。
・味方の被害
被害が少ないほど成功度上乗せ
●城の情報
空堀と古ぼけた城壁に囲まれた城。出口は表門と裏門のみ。
内部には籠城に必要な基本的な機能を全て備えている。
食糧庫、厩、武器庫、宿舎に並んで図書館を備えているのが他と異なる点。
●敵NPC
・名無しの大男
未だに回復途上の歪虚の戦士。OPの通りの理由で一日の大半を図書館で過ごしている。
武装は剣を帯びる程度。防御は硬質化した肌などの防御点のみ。
・大男の部下の騎竜隊×9
城内の各所で兵士の監督をしていた。今は兵士達とそこかしこで斬り合いになっている。
囲まれても兵士に負けるほどではないが、慣れない状況に戸惑い手間取っている。
乗騎となる竜は厩から出て暴れようとしているが、乗り手不在でまとまりがない。
大男の使うおしゃべりな騎竜のドーピスもここ。
●味方NPC
・領主と兵士
領主一家は軟禁状態。兵士は通常通り。
兵士達は各所で各個に戦闘を開始。敗北必至だがハンターの為の時間稼ぎに奮戦している。
領主の娘はOPと同じく大男の接待中
・馬車に同乗する味方
地元に明るい兵士、御者や商人に偽装した兵士など複数名居ますが、
戦闘では城の兵士よりは強い、程度なので数に数えないでください。
マスターより
ご無沙汰していました。復帰早々ということで軽めのシナリオです。
今回は最初から追撃戦です。追い込んでるのは鼠でなく虎ですが!
選択肢が多く難しいシナリオですが、楽しんでいただければ幸いです。
今回は最初から追撃戦です。追い込んでるのは鼠でなく虎ですが!
選択肢が多く難しいシナリオですが、楽しんでいただければ幸いです。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2018/12/13 16:49
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2018/11/16 09:00:38 |
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相談卓 アルト・ヴァレンティーニ(ka3109) 人間(クリムゾンウェスト)|21才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2018/11/17 09:22:17 |